(1)被衝撃体1
図1は各鍵11…に対応して設けられた被衝撃体1…の構造を示す。薄板状あるいは棒状の支持体2の一端または両端は鍵盤装置に固定されている。この支持体2は衝撃が加えられると、弾性的に変形し復帰するとともに初期衝撃を発生する。この中央下面または中央下面より自由端にやや近い位置には円柱状の当接体3が固定されている。
この当接体3は特願2007−184326号の明細書の被打撃部材12(緩衝材121、123、振動センサー122、弦断面形状部材124、金属部材1241〜1243、フレキシル部材1244など)と同じである。特願2007−184326号(特開2009−020417号)の明細書は本件明細書内にすべて記載されているものとするし、特願2007−184326号の図面も本願にすべて添付されているものとする。
当接体3の中には、ピックアップ素子、ホール素子または圧電素子などの衝撃変換素子21が内蔵されている。鍵11…のオン操作/オフ操作は、アクション機構(図示せず)を通じて、または直接ハンマーHに伝えられ、ハンマーHが回動され、ハンマーHの先端が当接体3に当たる。この衝撃変換素子21としては、フォトカプラ、レーザー光線と鏡など、光式でもよく、被衝撃体1…の初期衝撃が検出されれば、どのような手段でもよい。
被衝撃体1つまり当接体3に加えられた機械的な初期衝撃が電気信号、すなわち初期衝撃信号に変換される。衝撃変換素子21から当接体3及び支持体2の根元にかけて伝導路が形成されており、初期衝撃信号はこの伝導路を介して出力される。
当接体3の先端にはフレキシブル部材が接合され、このフレキシブル部材の表面には、3本の金属部材が接合されており、鍵盤楽器でハンマーHが3本の弦を同時に叩く状態の初期衝撃信号が実現される。
上記衝撃変換素子21は、上記当接体3の中心の中ではなく、当接体3の根元、支持体2のハンマーHが当たる付近の支持体2の中または外、支持体2の根元などに設けられていてもよく、いずれにせよハンマーHの衝撃が、初期衝撃信号に変換される。
上記支持体2または当接体3の形状は、上記板状、棒状において、側面全周囲面積が断面積の5倍乃至100倍、例えば8倍乃至50倍、さらに例えば10倍乃至25倍となり、高音になるほどこの倍数値は小さくなる。アップライトタイプの鍵盤装置であれば、上記支持体2の長さは、本体内部の奥行きより若干短くされてもよい。グランドタイプの鍵盤装置であれば、上記支持体2の長さは、本体内部の高さより若干短くされてもよい。
上記支持体2または当接体3の形状は、上記板状、棒状において、断面形状が、長方形または正方形などの方形、多角形、円形、楕円板、台形、平行四辺形、菱形、星形、曲線形状、L字形、H字形、I字形、U字形、T字形、C字形、O字形、N字形、M字形、X字形、J字形、Y字形、E字形、F字形、S字形、V字形、丸みを帯びた段差のある形状、丸みを帯びた凹凸のある形状のほか、直方体、立方体、多面体、多角形柱、板形、円柱、球体、卵形、楕円球、円板、方形枠状、円環状などでもよい。
上記支持体2または当接体3は、水平方向のほか、スピーカー直方向、斜め方向など、どのような方向に配列されてもよい。当接体3の高さは、上記支持体2または当接体3の幅/厚さより大きくても小さくても良い。支持体2または当接体3の材質は、木製、竹製、樹脂製、金属製、ガラス製、綿製、布製、糸性、繊維製、ゴム製、紙製、カーボン製、ウレタン製、発泡ウレタン製、スポンジ製、これらの混合物いずれでもよい。
このような被衝撃体1は、ハンマーHの衝撃によって、上述の初期衝撃のみの不規則な振動が発生し、すぐに減衰して、鍵に応じた音高の周波数に安定する前に、振動は消滅する。支持体2は、このような不規則な振動でダイナミックに変化する衝撃振動を発生し、しかもすぐに減衰する素材、形状、取付構造が選ばれる。この初期衝撃信号以降の楽音波形信号は、後述する共振回路20の共振によって生成される。
もし、被衝撃体1が弦のように非常に細長く弾性の高いものであれば、初期衝撃の後も振動がしばらく続き、減衰はせず、振動は継続し、楽音の発音時間は長くなる。しかし、被衝撃体1では、すぐに減衰し、初期衝撃信号(音)のみが生成される。初期衝撃信号(音)以降の変化が安定した定常音は、後述する共振回路20の共振によって生成される。
上記支持体2は省略され、当接体3が直接楽器本体内部に固定されてもよい。また、当接体3は省略され、支持体2の内部、外面、根元、中央、先端などに上記衝撃変換素子21が設けられてもよい。
「初期衝撃信号」は、楽音または人工的な音の鳴り始めの部分を指し、音の波形がかなりダイナミックに変化していて、楽音の音高以外の周波数成分を多く含む。この初期衝撃部分以降は、音の波形の変化が少なくなって、楽音の音高以外の周波数成分が少なくなり、楽音の音高の周波数に徐々に収束する。このような「初期衝撃信号」は、何らかの外的な衝撃因子によって発生し、図7に示すように、周期的な繰り返しの「振動」に入る前にすぐに減衰し、周期的な繰り返しの「振動」はほとんど無く、振動はほぼ一回のみであり、したがって振動の周期性もない。
しかし、「初期衝撃信号」の振動は二回、または三回以上でもよい。「初期衝撃信号」の発音時間は、楽音全体の発音時間の先頭から10%乃至0.0001%、10%、5%、1%、0.5%、0.1%、0.05%、0.01%、0.005%または0.0001%の長さとなり、楽音の先頭から0.01ミリ秒乃至50ミリ秒、0.05ミリ秒乃至25ミリ秒、0.1ミリ秒乃至15ミリ秒、0.5ミリ秒乃至10ミリ秒となる。
これらの初期衝撃信号の発音時間比率は、音色、音高、タッチ等の音楽的ファクタによって変化する。例えば、楽音全体の発音時間に占める初期衝撃信号の発音時間の割合は、例えばタッチが大きいほど小さく(大きく)なり、音高が低いほど小さく(大きく)なり、例えば打楽器→撥弦楽器→打弦楽器→擦弦→管楽器の順番などで大きく(小さく)なる。
上記支持体2の自由端は固定端にされてもよいし、動きにブレーキが加えられる支持端であってもよい。さらに、ひとつの支持体2に複数の固定端または支持端が構成されても良い。この場合、高音になるほど固定端または支持端の数が増えてもよい。
当接体3は、支持体2の中央下面、中央下面より自由端にやや近い位置、中央下面より固定端にやや近い位置、自由端、固定端などに設けられてもよい。当接体3または衝撃変換素子21は、支持体2の中に完全に内蔵されてもよい。
また、当接体3は、低音になるほど自由端により近い位置に設けられ、高音になるほど固定端により近い位置に設けられても良い。支持体2の長さは低音になるほど長くなり、支持体2の太さ/幅は低音になるほど太く/広くなってもよい。当接体3は、支持体2の下以外に、上、側面などに設けられてもよく、ハンマーHは上方、側方から当接体3を叩くことになる。
(2)全体回路
図2は鍵盤装置、鍵盤楽器、楽音装置、楽音制御装置、模擬ピアノまたは消音ピアノの全体回路を示す。上記鍵11ごとに設けられた上記被衝撃体1…の衝撃変換素子21…からの上記初期衝撃信号は、それぞれサンプリング回路41…でサンプリングされA−D変換器42…でデジタルデータに変換され、3つの共振回路20…に送られる。
3つの共振回路20…では、上記初期衝撃信号がデジタルの共振処理がなされ、この共振処理では初期衝撃信号が帰還されて共振され、ダンパーペダル61の操作、各鍵11の操作による共鳴などに応じた共振処理がされ、この共振された初期衝撃信号が当該鍵11…の発音操作に応じた楽音として出力される。また、この3つの共振回路20…のうち1つまたは2つでは、上記初期衝撃信号に遅延がかけられてから、上記共振処理がされる。
3つの共振回路20…のうち他の1つまたは2つ、上記初期衝撃信号の大きさが変えられてから、上記共振処理がされる。この3つの共振回路20…の間では、初期衝撃信号及び共振信号が相互に送受されて混合・合成され、1つの鍵11内の弦同士の共鳴などに応じた共振処理もされる。この3つの共振回路20…には他の鍵11…の共振回路20…からの初期衝撃信号及び共振信号が送受されて混合・合成され、弦同士の共鳴などに応じた共振処理もされる。
この3つの共振回路20…からの共振処理された全初期衝撃信号は、3つのクリッピング回路46でクリッピングされ、加算器43で加算され、D−A変換器44でアナログ信号に変換されサウンドシステム45(アンプ、スピーカー、響板26等)で放音出力される。上記クリッピング回路46では、共振処理された各初期衝撃信号のレベルが一定値以上にならないように制限されるか、増減が緩やかにされるか、または徐々に飽和される。
このクリッピング回路46として、コンバータ回路(デコーダー、エンコーダー、ROM)などが用いられ、入力値が一定値を越えると出力値が飽和するか、緩やかに増えるか、またはほとんど増えなくなる。これにより、鍵盤楽器またはその他の楽器の弦の振動振幅が一定値以上になると、ダンパーに弦が触れて、弦の一定値以上の振動振幅が押さえられる状態が実現される。
この3つのクリッピング回路46には、後述するダンパー微細動信号が入力され、ダンパー微細動信号の周期で、上記クリッピング値/飽和値/緩和増減域が変化する。これにより、鍵盤楽器またはその他の楽器のダンパーが振動によって小刻みに振動して、ダンパーが弦に近づいたり離れたりして、弦の振動振幅が押さえられる位置が変化する状態が実現される。
これら共振回路20…で共振処理された各初期衝撃信号(共振信号が付加された初期衝撃信号。以下同じ)は、他の共振回路20…に入力され、共振回路20…の共振された初期衝撃信号が相互に送受され、弦同士の相互の共鳴が実現される。なお、上記サウンドシステム45には、響板26とこの響板26に取り付けられた電磁駆動体/加振体など、音を発音できればどのようなものでもよい。
このような電磁駆動体/加振体は、特願2007−176758、特願2007−158002、特願2007−122921、特願2007−114952、特願2007−6863、特願2006−353536、特願2006−353535、特願2006−328005明細書または図面に記載されている。
上記共振回路20…には、後述するダンパー操作量回路60及び操作量データ回路30からの操作量データdが入力され、共振周波数帯域の範囲及び共振信号の大きさ/レベルが制御される。
上記鍵盤装置などのケース27、つまり、響板26、響棒、屋根、鍵盤蓋、棚、側板、骨組、足、土、腕木、上前側板、下前側板、底板、外板などには、上記衝撃変換素子21…と同じ振動変換素子28…が内蔵または表面に取り付けられている。これらケース27、響板26などでは、上記サウンドシステム45内のスピーカーまたは電磁駆動体/加振体から放音される楽音、つまり上記初期衝撃信号及び共振信号によって衝撃・振動している。なお、外板とは、響板26、側板、上前側板、下前側板、底板、屋根、蓋、鍵盤蓋など、本装置を取り囲む板部分を総称する。
上記振動変換素子28…では、これらケース27または響板26などでの衝撃・振動が電気信号に変換される。この電気信号の名称は響板・ケース信号とする。この響板・ケース信号は、それぞれサンプリング回路41…でサンプリングされA−D変換器42…でデジタルデータに変換され、共振回路20…に送られる。
共振回路20…では上記響板・ケース信号がデジタルの共振処理がなされ、ケース27、つまり、響板26、響棒、屋根、鍵盤蓋、棚、側板、骨組、足、土、腕木、上前側板、下前側板、底板、外板などにおける共鳴などに応じた共振処理、他の共振回路20…からの初期衝撃信号及び共振信号が混合・合成され、上記響板26、ケース27と弦との共鳴などに応じた共振処理がされる。
この共振回路20…からの共振処理された響板・ケース信号は、上記加算器43で加算され、D−A変換器44でアナログ信号に変換されサウンドシステム45(アンプ、スピーカー、響板26等)で放音出力される。この加算器43には、すべての共振処理された各初期衝撃信号が入力されず、一部の共振処理された各初期衝撃信号のみが加算合成されてもよい。
(3)共振回路20(第一実施例)
図3は上記共振回路20を示す。上記A−D変換器42からの初期衝撃信号は、コンバータ31及び遅延器32を通って、加算器22を経て、遅延器23で遅延されて出力される。この共振回路20は、鍵盤装置(鍵盤楽器を含む)の各鍵11に対応して設けられている。したがって、この初期衝撃信号は鍵11ごと出力され、この各鍵11の音高に応じた周波数となっているし、この初期衝撃動信号は、各鍵11の発音操作/消音操作に基づく楽音信号として出力される。
コンバータ31(乗算器)では、入力されるパラメータに応じて初期衝撃動信号の大きさが変更される。また、遅延器32では、入力されるパラメータに応じて初期衝撃動信号の大きさが変更される。これらの大きさパラメータ及び遅延パラメータは、あらかじめ固定されて供給される。
このような大きさ制御及び遅延制御は、上記1つの鍵の3つの共振回路20…のうち、2つのみで実行される。また、この2つの共振回路20…での大きさパラメータまたは/及び遅延パラメータは異なっており、変更される大きさ及び遅延量は同じではなく異なっている。また、一方の共振回路20では大きさのみが制御され、他方の共振回路20では遅延のみが制御されてもよい。
これにより、上記1つの鍵の3つの共振回路20…のうち、帰還共振は除いて、1つでは大きさ変更も遅延もされず、帰還共振は除いて、他の2つでは大きさ変更量または遅延量が互いに異なる。よって、1つの鍵における複数の弦の楽音を個別に実現できる。この1つの鍵の3つの共振回路20…は2つでもよいし、3つを越えてもよい。
大きさパラメータまたは/及び遅延パラメータは、固定値が鍵盤装置の電源投入時に、CPU(図示せず)によってメモリにストアされ、上記コンバータ31及び遅延器32に送られる。このような大きさパラメータまたは/及び遅延パラメータの値は、鍵11…、音色、音高、タッチ等の音楽的ファクタによって変更されてもよい。
この出力される初期衝撃信号は、フィルタ24、コンバータ25、クリッピング回路29を経て、上記加算器22に帰還入力され、上記A−D変換器42からの初期衝撃信号に加算される。この帰還により、初期衝撃信号は特定の周波数、特定の周波数帯域で共振する。この共振周波数は遅延器23…の遅延量によって変更され、共振周波数帯域は、フィルタ24のカットオフ周波数値によって変更される。
遅延器23に送り込まれる操作量データd(パラメータ)の値は、遅延器23の遅延によって生成される共振周波数/共鳴周波数が、対応する鍵11…の音高に応じたものとなるように設定される。コンバータ25に送り込まれる操作量データd(パラメータ)の値は、コンバータ25のレベル制御によって生成される共振レベル/共鳴レベルが、対応する鍵11…の音量に応じたものとなるように設定される。
上記フィルタ24には、ダンパーペダル61の操作量データdが入力され、上記帰還される初期衝撃信号の共振される周波数帯域が、オン操作時に高音域に向かって広がったり、オフ操作時に低音域に向かって狭められたりされ、さらにこの初期衝撃信号の位相が変更制御される。
上記コンバータ25には、ダンパーペダル61の操作量データdが入力され、上記帰還される初期衝撃信号の振幅/レベル/大きさが、オン操作時に大きくされたり、オフ操作時に小さくされたりされ、初期衝撃信号の振幅/レベル/大きさが変更制御される。
上記ダンパーペダル61の操作量データdには、上記ダンパーペダル61のオン操作と上記オフ操作との中間のハーフペダル操作の情報も含む。これにより、上記帰還される初期衝撃信号の大きさを、当該ダンパーペダル61の上記オン操作のときの大きさと上記オフ操作のときの大きさとの中間とされる。また、上記帰還される初期衝撃信号のダンパーペダル61の操作量データdが、当該ダンパーペダル61の上記オン操作のときの帯域と上記オフ操作のときの帯域の中間とされる。
上記フィルタ24には、対応する鍵11のオン、オフ、その中間の操作量データdが入力され、上記帰還される初期衝撃信号の共振される周波数帯域が、オン操作時に高音域に向かって広がったり、オフ操作時に低音域に向かって狭められたりされる。上記コンバータ25には、対応する鍵11の操作量データdが入力され、上記帰還される初期衝撃信号の振幅/レベル/大きさが、オン操作時に大きくされたり、オフ操作時に小さくされたりされる。
上記ダンパーペダル61または対応する鍵11の操作量データdが“1”を越えると大きくなり、“1”未満だと小さくなる。上記初期衝撃信号はデジタル信号であり、上記サンプリング回路41にて所定周期でサンプリングされており、上記遅延器23ではこのサンプリング周期と同じ遅延時間またはその整数倍(n倍)または整数分の1(1/n)の時間遅延される。
この遅延器23…それぞれは、各音高に応じており、この遅延時間はこの各音高に応じて決定される。遅延時間が長いと、共振周波数が低くなり、共振回路20から出力される共振信号の周波数/音高も低くなり、遅延時間が短いと、共振周波数が高くなり、共振回路20から出力される共振信号の周波数/音高も高くなり、この共振信号は上記各鍵に応じた音高となる。したがって、各共振回路20…の各遅延器23…の各遅延時間は、対応する鍵の音高に応じており、この遅延器23…の遅延時間のパラメータもこの音高に応じて決定される。
上記低音域に向かって狭められるとき、所定の周波数値以上には狭められない。この狭められないようにするため、共振回路20のカットオフ周波数が一定値以上に大きくならにように、上記操作量データdが一定値以下または一定以上に制限され、コンバータ39の変換内容または記憶内容が規制される。これにより、この周波数値は、上記鍵11のうちダンパーの無い特定の高音域の複数の鍵11に対応して実現される。
上記クリッピング回路29では、帰還され共振処理される各初期衝撃信号のレベルが一定値以上にならないように制限されるか、増減が緩やかにされるか、または徐々に飽和される。このクリッピング回路29として、コンバータ回路(デコーダー、エンコーダー、ROM)などが用いられ、入力値が一定値を越えると出力値が飽和するか、緩やかに増えるか、またはほとんど増えなくなる。これにより、鍵盤楽器またはその他の楽器の弦の帰還振幅/共振振幅が一定値以上になると、ダンパーに弦が触れて、弦の一定値以上の帰還振幅/共振振幅/共鳴振幅が押さえられる状態が実現される。
このクリッピング回路29には、後述するダンパー微細動信号が入力され、ダンパー微細動信号の周期で、上記クリッピング値/飽和値/緩和増減域が変化する。これにより、鍵盤楽器またはその他の楽器のダンパーが振動によって小刻みに振動して、ダンパーが弦に近づいたり離れたりして、弦の帰還振幅/共振振幅/共鳴振幅が押さえられる位置が変化する状態が実現される。
上記操作量データdの大きさは、上記のほか、細かく変化しており、この細かい変化(後述のダンパー微細動信号)の周波数は、上記各鍵11の最低音高の周波数から最高音高の周波数のほぼ間にあるか、もしくは楽器全体の最も大きいまたは大きい複数の共鳴周波数に一致する。したがって、上記初期衝撃信号の大きさが細かく変化し、上記共振される周波数帯域も細かく変化する。これにより、鍵盤楽器またはその他の楽器のダンパーが振動または共鳴によって小刻みに振動して、ダンパーが弦に接触したり離れたりする状態が実現される。
上記加算器22からの共振処理された初期衝撃信号は、他の1つまたは複数またはすべての共振回路20…の加算器22に入力される。また、この加算器22には、他の共振回路20…からの共振処理された初期衝撃信号が1つまたは複数またはすべて入力される。
このような互いに入力出力または送受される共振処理された初期衝撃信号は、互いに整数倍の音高比/周波数比にある鍵11に応じた共振回路20…が選択される。この整数倍の音高比/周波数比は、例えば、1:2、1:4、2:3、2:5、3:4、3:5などである。このような整数倍の音高比/周波数比は共鳴度が高く、鍵盤楽器の各弦の共鳴が実現される。
このような共振回路20は、上記各鍵11…ごとに設けられている。しかし、複数の共振回路20が合体され、1つの共振回路20で複数の初期衝撃信号が時分割処理によって処理され、複数の共振処理が並行して処理されてもよい。この場合、上記加算器43は累算器となる。
上記各鍵11…のうち、所定音高より高音、例えば高音側1オクターブまたは2オクターブでは、上記クリッピング回路46及び操作量データ回路30は全く設けられていない。したがって、この高音域では、上述の共鳴状態の変化などの種々の制御は全てなされない。
例えば、この高音の鍵域では、共振された初期衝撃信号のレベルがクリッピングされないし、そもそもクリッピング値/飽和値/緩和増減域も変化しない。またダンパー微細動信号によるクリッピング値/飽和値/緩和増減域の変化もない。これにより、鍵盤楽器の高音域のダンパーの無い弦の楽音が実現される。
また、所定音高より高音、例えば高音側1オクターブまたは2オクターブの鍵域では、ダンパーペダル61のオン操作またはオフ操作またはダンパーの上記機能によっては、上記ダンパー操作量データは変更されず、上記共振回路20の共振される周波数帯域は変更されない。これにより、鍵盤楽器の高音域のダンパーの無い弦の楽音が実現される。
さらに、所定音高より高音、例えば高音側1オクターブまたは2オクターブの鍵域では、鍵11の発音操作または消音操作またはダンパーの上記機能によっては、上記鍵操作量データは変更されず、この共振回路20の共振される周波数帯域は変更されない。これにより、鍵盤楽器の高音域のダンパーの無い弦の楽音が実現される。
また、所定音高より高音、例えば高音側1オクターブまたは2オクターブでは、ダンパーペダル61のオン操作またはオフ操作またはダンパーの上記機能によっては、上記ダンパー操作量データは変更されず、この共振回路20内の帰還される共振される初期衝撃信号/電気信号/共振信号の大きさ/レベルは変更されない。これにより、鍵盤楽器の高音域のダンパーの無い弦の楽音が実現される。
さらに、所定音高より高音、例えば高音側1オクターブまたは2オクターブの鍵域では、鍵11の発音操作または消音操作またはダンパーの上記機能によっては、上記鍵操作量データは変更されず、この共振回路20内の帰還される共振される初期衝撃信号/電気信号/共振信号の大きさ/レベルは変更されない。これにより、鍵盤楽器の高音域のダンパーの無い弦の楽音が実現される。
これら共振回路20…で共振された各初期衝撃信号は、他の共振回路20…に入力され、共振回路20…の共振された初期衝撃信号が相互に送受され、弦同士の相互の共鳴が実現される。したがって、ある共振回路20の共振された各初期衝撃信号には、他の共振された各初期衝撃信号が、加算器22、52で混合されつつ帰還及び共振される。
このような他の共振回路20へ送られる共振された各初期衝撃信号の波形形状(クリッピング)、大きさ/レベル、共振周波数帯域は、次述のようにダンパーペダル操作量、ハーフペダル、鍵操作量、ダンパー微細動信号の大きさ/レベル、共鳴度などの音楽的ファクタなどによって変化している。
しかし、所定音高より高音、例えば高音側1オクターブまたは2オクターブの鍵域では、上記クリッピング回路46及び操作量データ回路30は全く設けられていないので、ダンパーペダル61の操作量、ダンパーペダル61のハーフペダル、他の鍵11…の操作量、ダンパー微細動信号の大きさ/レベル、共鳴度などの音楽的ファクタなどの変化があっても、他の共振回路20…へ送り出される共振された各初期衝撃信号は変化しない。
よって、所定音高より高音では、当該高音の初期衝撃信号が、他の音高の各初期衝撃信号に全て常時合成され、ダンパーペダル61の操作量、ダンパーペダル61のハーフペダル、他の鍵11…の操作量、ダンパー微細動信号の大きさ/レベル、共鳴度などの音楽的ファクタなどの変化があっても、この合成量は変化しない。これにより、鍵盤楽器の高音域のダンパーの無い弦の楽音が実現される。
この上記コンバータ31、25に送り込まれるパラメータは、1つの鍵11における3つの共振回路20…で、少しずつ異なっており、共振レベル/共鳴レベルが、1つの鍵11における3つの共振回路20…で少しずつ異なる。また、遅延器32、23に送り込まれるパラメータは、1つの鍵11における3つの共振回路20…で、少しずつ異なっており、共振周波数/共鳴周波数/位相/遅延量が、1つの鍵11における3つの共振回路20…で少しずつ異なる。なお、遅延器32の遅延量によって初期衝撃信号の位相/遅延量が変更され、遅延器23の遅延量によって初期衝撃信号の共振周波数/共鳴周波数が変更される。
よって、被衝撃体1が1つであるにも関わらず、しかも初期衝撃信号が1つであるにもかかわらず、1つの鍵における3つ/複数の弦の楽音を3つの共振回路20で個別に実現できる。この被衝撃体1は1つの鍵11あたり2つでも、3つでも、複数でもよく、共振回路20ごとに1つの被衝撃体1が設けられてもよい。
このような1つの鍵11における3つの共振回路20おける3つの共振信号/共鳴信号の共振周波数/共鳴周波数/位相/遅延量それぞれは、互いに100分の1以下または10000分の1乃至50ほどずれている。これにより、1つの鍵11における楽音にうなり効果を出すことができる。
このような1つの鍵11における3つの共振信号/共鳴信号の共振周波数/共鳴周波数/位相/遅延量のずれは、当該鍵11の音高、当該鍵11のタッチ、音色、発音経過時間、当該鍵11と発音中の他の鍵11…との共鳴度、鍵盤装置全体の共鳴度といった音楽的ファクタに応じて変更制御される。これにより音楽的ファクタに応じて、1つの鍵11におけるうなりの状態、うなりの周波数が変化される
この場合、上記音高については、各鍵11…に対応して音高データが記憶され、操作された鍵11が検出され、この検出された鍵11に応じた音高データが読み出され、上記1つの鍵11の3つの共振回路20の遅延器23、32、コンバータ25、31に送られる操作量データd/パラメータに加算など演算合成される。
また、上記タッチについては、各鍵11…ごとに設けられたタッチセンサからのタッチデータが取り込まれ、このタッチデータは上記1つの鍵11の3つの共振回路20の遅延器23、32、コンバータ25、31に送られる操作量データd/パラメータに加算など演算合成される。
さらに、上記音色については、音色選択スイッチに対応して操作量データd/パラメータの修正データが記憶され、選択された音色選択スイッチに対応した操作量データd/パラメータの修正データが、上記1つの鍵11の3つの共振回路20の遅延器23、32、コンバータ25、31に送られる操作量データd/パラメータに加算など演算合成される。
また、上記発音経過時間については、上記鍵11のキーオンからタイムカウントがリセット/開始され、このタイムカウント値が、この鍵11の3つの共振回路20の遅延器23、32、コンバータ25、31に送られる操作量データd/パラメータに加算など演算合成される。このタイムカウントは、各鍵11…ごとに時分割に実行され、対応する鍵11のキーオフで、またはキーオフから所定時間経過後にリセット/クリアされる。
さらに、上記鍵11…相互の共鳴度については、各鍵11…相互の共鳴度を示す共鳴度データが記憶される。この共鳴度データは、各鍵11…の音高が行アドレスと列アドレスとして配置され、あらかじめ計測された各音高相互の共鳴度を示すデータが、各音高に対応して記憶される。
この各共鳴度データのうち、発音中/キーオン中のものの全音高相互の共鳴度データが読み出されて加算など演算合成され、この演算データが上記1つの鍵11の3つの共振回路20の遅延器23、32、コンバータ25、31に送られる操作量データd/パラメータに加算など演算合成される。
また、鍵盤装置全体の共鳴度については、鍵盤装置の響板、外板、枠またはケースで、共振/共鳴する複数の周波数(音高)を計測され、この計測された共振周波数/共鳴周波数(音高)につき、上記各鍵11…相互の共鳴度データと同様に、共鳴度データが求められて加算など演算合成され、この演算データが上記1つの鍵11の3つの共振回路20の遅延器23、32、コンバータ25、31に送られる操作量データd/パラメータに加算など演算合成される。
図13は、1つの鍵11ごとの3つの共振回路20…を示す。1つの鍵の3つの共振回路20…で共振された、大きさの異なるまたは遅延量の異なる3つの各初期衝撃信号は、1つの鍵11の中の他の共振回路20…に入力され、共振回路20…で共振された初期衝撃信号が相互に送受され、1つの鍵11内での弦同士の相互の共鳴が実現される。
よって、1つの鍵11の各共振回路20…で共振される初期衝撃信号相互について、初期衝撃信号の一部または全部が合成されて、複数の初期衝撃信号相互についても共振/共鳴される。したがって、ある共振回路20の共振された各初期衝撃信号には、他の共振された各初期衝撃信号が、加算器22、52で混合されつつ帰還及び共振/共鳴される。これにより、1つの鍵の3つの楽音相互の共鳴も実現される。
このような1つの鍵11ごとの各初期衝撃信号及び各共振信号/各共鳴信号の相互の共振/共鳴が実行されると、図6の共振特性/共鳴特性に示す、共鳴/共振ポイントR1c、R2c、R3c、R1b、R2b、R1d、…の数はさらに増える。また、1つの共鳴/共振ポイントR1c、R2c、R3c、R1b、R2b、R1d、…における山が3つに増える。
上記1つの鍵11の3つの共振回路20…で共振された、大きさの異なるまたは遅延量の異なる3つの各初期衝撃信号は、他の鍵11の3つの共振回路20…にも入力され、共振回路20…で共振された初期衝撃信号/共振信号が相互に送受され、鍵11…相互にわたる弦同士の相互の共鳴が実現される。
さらには、ダンパーの無い鍵11…の共振回路20…で共振された初期衝撃信号は、他の鍵11…の3つの共振回路20…にも入力され、ダンパーの無い鍵11…の共振回路20…とダンパーのある鍵11…の共振回路20…とで共振された初期衝撃信号/共振信号が相互に送受され、ダンパーの有る/無い鍵11…相互にわたる弦同士の相互の共鳴が実現される。
このような各鍵11…にわたる各初期衝撃信号及び各共振信号/各共鳴信号の相互の共振/共鳴が実行されると、図6の共振特性/共鳴特性に示す、共鳴/共振ポイントR1c、R2c、R3c、R1b、R2b、R1d、…の数はさらに増える。
また、ケース27、響板26、屋根、鍵盤蓋、棚、側板、骨組、足、土、腕木、上前側板、下前側板、底板における共振/共鳴信号は、他の鍵11…の共振回路20…にも入力され、ケース27及び響板26などの共振回路20…と上記鍵11…の共振回路20…とで共振された初期衝撃信号/共振信号が相互に送受され、ケース27及び響板26などと弦との相互の共鳴が実現される。
このような各鍵11…とケース27及び響板26の各初期衝撃信号及び各共振信号/各共鳴信号の相互の共振/共鳴が実行されると、図6の共振特性/共鳴特性に示す、共鳴/共振ポイントR1c、R2c、R3c、R1b、R2b、R1d、…の数はさらに増える。
これにより、1つの鍵11の3つの弦相互の共振/共鳴を実現できるし、各鍵11…の各弦相互の共振/共鳴を実現できる。ダンパーの無い鍵11…と他の鍵11…の各弦相互の共振/共鳴を実現できるし、上記ケース27、響板26、屋根、鍵盤蓋、棚、側板、骨組、足、土、腕木、上前側板、下前側板、底板などと上記各弦との相互の共振/共鳴を実現できる。
これらの多面的かつ複合的な共振/共鳴のうち、上記ケース27、響板26などによる空間共振/空間共鳴によって、エンベロープにおけるアタック、ディケイ、サスティーン、リリースの楽音が形成される。上記ケース27、響板26などによる共振/共鳴を除いた、鍵11での弦などの被衝撃体/発音体そのものの発音では、このようなアタック、ディケイ、サスティーン、リリースの楽音は形成されず、被衝撃体/発音体だけの共振/共鳴は形成される。そして、図13の接続関係に示すように、これら被衝撃体共振/被衝撃体共鳴/発音体共振/発音体共鳴の初期衝撃信号及び共振/共鳴信号と、空間共振/空間共鳴の共振/共鳴信号との、さらなる共振/共鳴が実現される。
(4)クリッピング回路29、46、76
図8は上記及び下記クリッピング回路29、46、76を示す。初期衝撃信号は、クリッピング変換テーブル81(コンバータ)で、入力される初期衝撃信号のレベルが一定値以上にならないように制限されるか、増減が緩やかにされるか、または徐々に飽和され出力される。
このようなクリッピング特性を実現するためのクリッピング関数f(x)はクリッピングメモリ82(テーブル)に記憶され、ダンピング量演算回路83で原点を中心として点対象な特性が作られ、さらに下記操作量データdに応じたクリッピング関数f(x+1−d)−f(1−d)に変換され、これが上記クリッピング変換テーブル71に書き込まれる。
図9は上記クリッピングメモリ82に記憶されているクリッピング関数f(x)を示す。この関数の特性は、入力信号に対して出力信号のレベルを変えて出力させる。このクリッピング関数f(x)の特性では、入力信号及び出力信号のレベルが低い部分では、ほぼ正比例関係にあり、入力信号のレベルに対してほぼ同じレベルまたはほぼ正比例関係にある信号が出力される。
このクリッピング関数f(x)の特性では、入力信号及び出力信号のレベルが高い部分では、入力信号の変化に対して出力信号が変化せず、出力信号が飽和して一定値max以上にならないように制限される。この飽和領域と上記正比例領域との間には、入力信号の増減に対して出力信号の増減が緩やかになる緩和領域が存在する。
図10はクリッピング変換テーブル81に記憶されているクリッピング関数f(x+1−d)−f(1−d)を示す。操作量データdに応じて飽和領域及び一定値maxが上下に変動する。ダンパーペダル61が踏まれず開放されて操作量データdが最小「0」の状態では、飽和領域及び一定値maxはほぼ「0」となって、クッリピング量は最大となり、出力信号のレベルはほぼ「0」となる。
次いで、ダンパーペダル61が少し踏まれて操作量データdがd2(d2>最小)になると、飽和領域及び一定値maxが大きくなって上下に拡がって、図10のf(x+1−d2)−f(1−d2)となり、完全にクリッピングされていた状態から、クリッピング量が少なくなる。
さらに、ダンパーペダル61が踏込まれて操作量データdがd1(d1>d2)まで大きくなると、飽和領域及び一定値maxがさらに大きくなって上下に拡がって、図10のf(x+1−d1)−f(1−d1)となり、クリッピング量がさらに少なくなる。
次いで、ダンパーペダル61が最大まで踏込まれて操作量データdが最大d0=「1」(最大>d2)まで大きくなると、飽和領域及び一定値maxが大きくなるまたは消失して、図10のf(x+1−d0)−f(1−d0)=f(x)-f(0)となり、クリッピング量が無くなる。
以上は、ダンパーペダル61が徐々に踏まれていくと、ダンパーが弦に接触する量が少なくなって、クリッピング量が少なくなっていくことに対応している。また、ダンパーペダル61が徐々に離されていくと、上述の逆となり、ダンパーが弦に接触する量が多くなって、クリッピング量が多くなる。これにより、鍵盤楽器またはその他の楽器の弦の帰還振幅/共振振幅が一定値以上になると、ダンパーに弦が触れて、弦の一定値以上の帰還振幅/共振振幅/共鳴振幅が押さえられる状態が実現される。
この操作量データdにはダンパー微細動信号も包含されており、ダンパーが振動によって小刻みに振動して、ダンパーが弦に近づいたり離れたりして、弦の帰還振幅/共振振幅/共鳴振幅が押さえられる位置が変化する状態が実現される。
また、ダンパーペダル61が完全に開放された状態と同じく、ダンパーが弦に完全に接触するキーオフ状態になると、操作量データdが最小値「0」になって、飽和領域及び一定値maxは「0」となって、クッリピング量は最大となり、出力信号のレベルはほぼ「0」となる。
図11は入力信号(初期衝撃信号)に対して出力信号がクリッピングされる状態を示す。操作量データd及びダンパー微細動信号の振幅に応じて、上記のようにクリッピング量が多くなったり少なくなったりする。
(5)操作量データ回路30及びダンパー操作量回路60
図4は操作量データ回路30及びダンパー操作量回路60を示す。上記ダンパーペダル61の根元にはポテンションメータなどのダンパー角度センサー62が設けられている。この角度センサー62からのダンパー操作量データは、ダンパーエンコーダー63で数値のダンパー操作量データに変換される。
ダンパーペダル61は、鍵盤楽器の弦の振動を止めるダンパーを動かすペダルであり、ダンパーペダル61が押されると、すべてのダンパーがすべての弦から離れて、弦の振動/発音が継続され、ダンパーペダル61が押されないと、すべてのダンパーがすべての弦に当接して、弦の振動/発音が止められる。
上記鍵11にオンによって、この鍵11に対応するダンパーのみが弦から離れて、この鍵11に対応する弦の振動/発音が継続され、当該鍵11にオフによって、この鍵11に対応するダンパーのみが弦に当接して、この鍵11に対応する弦の振動/発音が止められる。
このようなダンパーペダル61にはダンパー機構などが連結され、鍵11にはアクション機構、弦などが連結されているが、本装置のダンパーペダル61及び鍵11にはこのような機構は設けられていない。むろん、設けられていてもよい。
このようなダンパーペダル61はダンパーペダルと同じ機能が発揮できれば、ペダル以外に、フットスイッチ、手動または足動のレバー、ベンダー、押しボタン、キーボタン、足鍵などでもよい。また鍵11は鍵盤楽器の鍵と同じ機能が発揮できれば、鍵以外に、フットスイッチ、手動または足動のレバー、ベンダー、押しボタン、キーボタン、足鍵などでもよい。
このダンパーペダル61のダンパー操作量データは、ダンパーペダル61がハーフペダルで“0.5”または中間所定値となり、ダンパーペダル61がさらに順次踏み込まれると“1” または最大所定値になり、ダンパーペダル61がハーフペダルから順次復帰されると“0.5” または中間所定値より順次小さくなり、ダンパーペダル61が完全に開放されると“0”になる。
上記各鍵11の奥の根元にはポテンションメータなどの鍵角度センサー36…が設けられている。この鍵角度センサー36…からの鍵操作量データは、それぞれ鍵エンコーダー37…で、数値の鍵操作量データに変換される。
この各鍵11の鍵操作量データは、各鍵11が押されて発音操作されると“1” または所定値となり、各鍵11が復帰されて消音操作されると“0”となり、この中間の押鍵状態では、“1” または所定値と“0”との中間の値をとり、この値は鍵11の押し込み量に応じて“1” または所定値と“0”との間で変化する。なお、この中間の押鍵状態は、上記ダンパーの状態がハーフペダルと同じ状態になってもよいが、これは当該中間の押鍵状態の鍵11のみにおいてである。ダンパーペダル61のオン、オフ、ハーフペダルでは、全鍵11について可能となる。
この各鍵11の鍵操作量データと上記ダンパーペダル61のダンパー操作量データとは、それぞれコンバータ39…その他の演算回路で乗算等の合成がなされ、上記コンバータ25…に入力される。これにより、各鍵11の操作量/操作状態とダンパーペダル61の操作量/操作状態との両方に応じて、鍵11ごとの共振制御がなされ、共振される周波数帯域または共振の大きさが制御され、共鳴状態が変化する。
この共鳴状態の変化は、鍵11の操作量/操作状態とこの鍵11に応じた共振回路20における共鳴のほか、ある鍵11に応じた共振回路20と、他の鍵11の操作量/操作状態との間においても生じる。共振回路20…相互で共振信号が送受されているからである。
例えば、ダンパーペダル61がオン操作されると、このダンパー操作量データは、全共振回路20…に入力されるので、全鍵11…にわたって共振回路20の共振状態が大きくなりまたは広がり、共鳴が広がる。ダンパーペダル61がオフ操作されると、このダンパー操作量データは、全共振回路20…に入力されるので、全鍵11…にわたって共振回路20の共振状態が小さくなりまたは狭くなり、共鳴が狭まる。
また例えば、鍵11がオン操作されると、この鍵操作量データは、このオン操作された鍵11に対応する共振回路20…に入力されるので、オン操作された鍵11の共振回路20の共振状態が大きくなりまたは広がり、共鳴が広がる。鍵11がオフ操作されると、この鍵操作量データは、このオフ操作された鍵11に対応する共振回路20…に入力されるので、オフ操作された鍵11の共振回路20の共振状態が小さくなりまたは狭くなり、共鳴が狭まる。これにより、鍵11のオン操作/オフ操作に応じた共振/共鳴の変化が実現される。
このとき、他にもオン操作されている鍵11があると、このオン操作されている鍵11に対応する共振回路20からの共振信号が、別のオン操作されている鍵11に対応する共振回路20に入力される。したがって、オン操作されている鍵11…に応じた共振回路20…に、上記大きさが大きくされ共振帯域の広がった共振信号が加算器22(52)で加算合成され、共振信号の大きさがさらに大きくされ共振帯域がさらに広げられる。
こうして、同時にオン操作中の鍵11…相互の相乗的・相加的な共鳴が実現される。このような共鳴は、ダンパーペダル61がハーフ操作状態、鍵11…がハーフ操作状態にあれば、これに応じて、上記共鳴状態が変化する。
ダンパー微細動発信器64には、共鳴周波数信号が入力され、上記ダンパー微細動信号が出力される。この共鳴周波数信号は、本楽器/本装置全体が共鳴している共鳴周波数を示す信号であり、ダンパー微細動信号は、この共鳴周波数に応じて周期的に変動する。
上記全共振回路20から出力される共振信号が加算器(図示せず)で加算合成されて共鳴周波数信号となり、これがレベル制御され、これがそのまま上記ダンパー微細動信号として出力される。これにより、ダンパー微細動信号の周波数は、楽器全体の最も大きい共鳴周波数、大きい複数の共鳴周波数、または全共鳴周波数に一致する。
ダンパー微細動発信器64は入力されるパラメータによって、発信される周波数が変化するプログラマブルタイプのデジタル発信器でもよい。この場合、オン操作中の鍵11の音高が随時サーチされ、このオン中の全音高の周波数データが、上記発振パラメータとして上記ダンパー微細動発信器64に入力される。
このオン中の音高サーチでは、例えばアサインメントメモリ(図示せず)の中でオン中のものがサーチされ、このサーチされた中でエンベロープレベルが最も高いものがさらにサーチされ、このサーチされたトーンナンバデータの周波数ナンバデータがダンパー微細動発信器64にストアされる。このような処理はCPUとプログラムによって随時実行される。
上記コンバータ25…には、上記ダンパー微細動信号も入力される。このダンパー微細動信号は鍵盤装置のダンパーが鍵11…の操作によって振動している状態における微細動に応じた信号である。このようなダンパー微細動信号の周波数は、楽器全体の最も大きい共鳴周波数、大きい複数の共鳴周波数、または全共鳴周波数に一致し、上記各鍵11の最低音高の周波数から最高音高の周波数のほぼ間、例えば鍵盤装置の中音域にあり、複数の周波数が混合されているが、場合によって単一の周波数である。
これにより、上記初期衝撃信号/共振信号/帰還電気信号の大きさが細かく変化し、上記共振される周波数帯域も細かく変化し共振信号のレベルも変化する。また、これにより、鍵盤楽器またはその他の楽器のダンパーが振動によって小刻みに振動して、弦がダンパーに接触したり離れたりする状態が実現される。
このようなダンパー微細動信号は、本鍵盤装置電源が投入されたとき、鍵11…のいずれかがオン操作されたときに、発信器から出力されたり、またはダンパー微細動信号が記憶されたメモリから読み出されたりしてもよい。そして、本鍵盤装置電源が切られたとき、全鍵11…がオフ操作されたときに、このダンパー微細動信号の出力は停止されてもよい。
上記コンバータ25…には、音楽的ファクタデータも入力される。この音楽的ファクタは、音色データ、タッチデータ、音高データ、発音経過時間データ、共鳴度データなどである。音色データは、鍵11の操作によって発音/消音される楽音の音色であって、操作パネル(図示せず)の音色を選択するスイッチによって入力される。タッチデータは、図4の対応する当該鍵11…に設けられたフォトカプラなどのタッチセンサから供給される。
音高データは、図4の対応する当該鍵11…に応じた音高を示すデータであり、当該鍵11…の操作が検出されると出力され、上記角度センサー36…または鍵エンコーダー37殻の出力信号が転用される。発音経過時間データは、当該鍵11…のキーオン操作/発音操作からの結果時間を示し、キーオン操作/発音操作のイベントによってタイムカウントが開始され、キーオフ操作/消音操作によってリセットされる。
共鳴度データは、図4の当該鍵11の音高と、発音中の他の鍵11…の音高との共鳴度を示す。テーブル(図示せず)などに全音高の列アドレスと全音高の行アドレスごとにこの共鳴度データが記憶され、当該鍵11の音高が列アドレスに入力され、発音中の他の鍵11…の音高が行アドレスに入力され、共鳴度データが読み出される。発音中の他の鍵11…の音高が複数のときは、複数の共鳴度データが読み出され加算など演算合成されて、コンバータ39に入力される。
このような共鳴度データは、操作パネル(図示せず)から操作者の操作によってつまみなどから入力され設定され得る。この場合の、共鳴度データは、操作者が鍵盤装置全体の音響状態を共鳴の高いものにするか、共鳴の低いものにするかを決定する。このような共鳴度データは、上記プログラマブルなダンパー微細動発信器64に発信周波数を決定するパラメータとして入力されてもよい。
これにより、各鍵11…の共振回路20の帰還電気信号/共振信号/初期衝撃信号の共振帯域または/及び大きさが、音楽的ファクタ、つまり当該鍵11の音高、当該鍵11のタッチ、音色、発音経過時間、発音中の他の鍵との共鳴度、鍵盤装置全体の共鳴度状況に応じて変更制御され、共鳴状態も変化される。
このような操作量データ回路30は、上記各鍵11…ごとに設けられ、各鍵11…ごとに操作量データdが演算される。しかし、ダンパーペダル61、ダンパー角度センサー62、ダンパーエンコーダー63、ダンパー微細動発信器64は全鍵11…または複数鍵11…に共通で1つ設けられている。上記ダンパー操作量データと鍵操作量データとは、上記乗算のほか、数値の設定の仕方に応じて加算されたり、その他の演算によって合成されたりされ、上記操作量データdが算出される。
上記音楽的ファクタデータは、加算器、その他の演算回路、コンバーター(図示せず)などによって、上記クリッピング回路46…へ送られるダンパー微細動信号にも加算合成または演算合成される。これにより、上記クリッピング値/飽和値/緩和増減域、つまり増減を緩やかにするまたはクリッピングする所定値(閾値)は、音楽的ファクタ、当該鍵の音高、当該鍵のタッチ、音色、発音経過時間、当該鍵と発音中の他の鍵との共鳴度、鍵盤装置全体の共鳴度に応じて変更制御される。
上記ダンパー操作量データは、加算器、その他の演算回路、コンバーター(図示せず)などによって、上記クリッピング回路46…へ送られるダンパー微細動信号にも加算合成または演算合成される。これにより、上記クリッピング値/飽和値/緩和増減域、つまり増減を緩やかにするまたはクリッピングする所定値(閾値)は、ダンパー操作量または上記ハーフペダル操作に応じて変更制御される。
上記鍵操作量データは、加算器、その他の演算回路、コンバーター(図示せず)などによって、上記クリッピング回路46…へ送られるダンパー微細動信号にも加算合成または演算合成される。これにより、上記クリッピング値/飽和値/緩和増減域、つまり増減を緩やかにするまたはクリッピングする所定値(閾値)は、鍵11…の操作量に応じて変更制御される。
上記コンバータ25、31、39では、記憶された情報に基づいて、入力された複数のデータが変換されて合成されて出力され、乗算などその他の非線形演算または線形演算と同じ処理がされ、デコーダー、エンコーダー、ROMなどが用いられる。このコンバータの機能は、以下のコンバータ51、53、56、59、71、72でも同じである。なお、加算器43、22、52、54、57も、このようなコンバータとしてもよい。
(6)共振回路20(第二実施例)
図5は上記共振回路20の第二実施例を示す。上記A−D変換器42からの初期衝撃信号は、コンバータ72、遅延器73を通って、コンバータ51、加算器52を経て出力される。この加算器52の出力は、コンバータ53、加算器54を経て、クリッピング回路76、遅延器55を経て上記加算器52に帰還され、上記A−D変換器42からの初期衝撃信号に加算合成される。
上記加算器52の出力は、コンバータ56、加算器57を経て、遅延器58を経て上記加算器54に帰還され、上記帰還された初期衝撃信号に加算合成される。上記A−D変換器42からの初期衝撃信号は、コンバータ59を経て、上記加算器54に入力される。上記A−D変換器42からの初期衝撃信号は、コンバータ71を経て、上記加算器57に入力される。
したがって、遅延器58では、遅延されていない初期衝撃信号、帰還された初期衝撃信号の合成信号が遅延される。また、遅延器55では、遅延されていない初期衝撃信号、帰還された初期衝撃信号、遅延器58で遅延された合成信号の合成信号が遅延される。この遅延器55、58では、この上記初期衝撃信号のサンプリング周期と同じ遅延時間またはその整数倍(n倍)または整数分の1(1/n)の時間遅延される。
この遅延器55…、58…それぞれの遅延時間は、各音高に応じており、この遅延時間はこの各音高に応じて決定される。遅延時間が長いと、共振周波数が低くなり、共振回路20から出力される共振信号の周波数/音高も低くなり、遅延時間が短いと、共振周波数が高くなり、共振回路20から出力される共振信号の周波数/音高も高くなり、この共振信号は上記各鍵に応じた音高となる。したがって、各共振回路20…の各遅延器55…、58…の各遅延時間は、対応する鍵の音高に応じており、この遅延器55…、58…の遅延時間のパラメータもこの音高に応じて決定される。
上記コンバータ51、53、56、59、71には、上記ダンパーペダル61または対応する鍵11の操作量データdが入力され、上記初期衝撃信号及び上記帰還される初期衝撃信号の振幅/レベル/大きさが制御されたり、共振する周波数帯域が制御されたりされる。この共振回路20の遅延器55、58、コンバータ51、53、56、59、71、加算器52、54、57の全部または一部によってフィルタが構成される。
上記コンバータ51、53、56、59、71、72には、上記操作量データ回路30からの操作量データdが入力される。上記加算器52には、上記第一実施例の加算器52と同じく、他の共振回路20…からの共振信号/電気信号/初期衝撃信号が入力される。本実施例における他の構成、作用、動作は、上述または後述する他の実施例と同じであり、本実施例で記載されていないことは、この他の実施例が参照される。
上記コンバータ72、遅延器73は、上述の図3のコンバータ31、遅延器32と同じであり、供給される大きさパラメータ/遅延パラメータも図3におけるものと同じである。これにより、1つの鍵における3つの弦からの楽音を実現できるし、1つの鍵11における3つの弦からの楽音相互の共鳴も実現される。
この上記コンバータ72、71、51、53、56、59に送り込まれるパラメータは、1つの鍵11における3つの共振回路20…で、少しずつ異なっており、共振レベル/共鳴レベルが、1つの鍵11における3つの共振回路20…で少しずつ異なる。また、遅延器73、55、58に送り込まれるパラメータは、1つの鍵11における3つの共振回路20…で、少しずつ異なっており、共振周波数/共鳴周波数/位相/遅延量が、1つの鍵11における3つの共振回路20…で少しずつ異なる。なお、遅延器73の遅延量によって初期衝撃信号の位相/遅延量が変更され、遅延器55、58の遅延量によって初期衝撃信号の共振周波数/共鳴周波数が変更される。
この第二実施例の他の構成、作用、効果は、上記第一実施例と同じであり、これらの説明は本実施例でも記載されているものとするし、本実施例の記載内容も上記第一実施例にも記載されているものとする。第二実施例で記載されていないことは、この他の実施例が参照されるし、第一実施例で記載されていないことは、当該第一実施例以外の実施例が参照される。
この場合、上記コンバータ25、31の説明事項は、コンバータ72、51、53、56、59、71についても成立するし、上記遅延器32、23の説明事項は、遅延器73、55、58についても成立するし、クリッピング回路29の説明事項は、クリッピング回路76についても成立する。
(7)共振信号の周波数帯域と大きさの変化
図12は上記共振回路20における共振信号(帰還電気信号/初期衝撃信号)の周波数帯域/共振帯域と大きさの変化の概略、共振特性/共鳴特性を示す。図12(a)では、ある音高の鍵11aが押されると、この鍵11aにおける初期衝撃信号が共振回路20に入力され。また、操作量データ回路30からの鍵操作量データを含む操作量データdが「0」から大きくなって共振回路20に入力される。したがって、この音高に応じた周波数付近が共振して大きさが大きくなる。
次いで、図12(b)に示すように、別のある音高の鍵11bが押されると、この鍵11bにおける初期衝撃信号が共振回路20に入力される。また、操作量データ回路30からの鍵操作量データを含む操作量データdが「0」から大きくなって共振回路20に入力される。したがって、この音高に応じた周波数付近が共振して大きさが大きくなる。
このとき、この押されていない鍵11における共振回路20には、上記押されている鍵11a、11bにおける共振回路20からの共振信号(帰還電気信号/初期衝撃信号)が入力される。したがって、他の押されていない鍵11の音高に応じた周波数付近もわずかに共振して大きさが少し大きくなる。
そして、図12(c)に示すように、ダンパーペダル61が押され、次いで上記鍵11bがキーオフされると、このキーオフされた鍵11bの操作量データ回路30においてダンパー操作量データを含む操作量データdが「0」から大きくなって共振回路20に入力される。したがって、このキーオフされた鍵11bの音高に応じた周波数付近の共振は維持され、大きさも大きいまま維持される。
また、他の押されていない鍵11における初期衝撃信号は発生せず共振回路20に入力されなくても、この押されていない鍵11における共振回路20には、上記押されている鍵11a、11bにおける共振回路20からの共振信号(帰還電気信号/初期衝撃信号)が入力される。さらに、全操作量データ回路30においてダンパー操作量データを含む操作量データdが「0」から大きくなって共振回路20に入力される。したがって、他の押されていない鍵11の音高に応じた周波数付近も共振して大きさがやや大きくなる。
これにより、ダンパーペダル61が押されて、全鍵11…(各弦、各音高)相互の共振状態/共鳴状態が実現される。このとき、この押されていない鍵11における共振回路20には初期衝撃信号は入力されないので、この共振の大きさは、当該鍵11が押された時より小さい。
また、押されている鍵11a、11bの周波数付近の大きさは、ダンパーペダル61が押されることによって、さらに大きくなる。なぜなら、鍵11a、11bにおける共振回路20自身の共振に他の押されていない鍵11おける共振回路20の共振が相加相乗されるからである。
図6は、上記共振回路20における共振信号(帰還電気信号/初期衝撃信号)の周波数帯域/共振帯域と大きさの変化の概略、共振特性/共鳴特性を示す。鍵11がオン操作されていないオフ操作、ダンパーペダル61がオフ操作のときは、鍵操作量データ及びダンパー操作量データがともに“0”となる。したがって、共振信号の大きさは“0”で、共振信号の周波数帯域/共振帯域は無い。図6のAの状態である。
鍵11がオン操作されると、鍵操作量データが“1”となり、ダンパー操作量データが“0”のままである。したがって、共振信号の周波数帯域/共振帯域は低音域から高音域に向かって広がり、カットオフ周波数も高音側に移動し、共振信号の大きさは大きくなる。図6のBの状態となる。
ダンパーペダル61がさらにオン操作されると、ダンパー操作量データも“1”となり、鍵操作量データも“1”のままである。したがって、共振信号の周波数帯域/共振帯域は低音域から高音域に向かってさらに広がり、カットオフ周波数もさらに高音側に移動し、共振信号の大きさはさらに大きくなる。図6のCの状態となる。
鍵11がオフ操作のときに、ダンパーペダル61がオン操作されると、ダンパー操作量データが“1”となり、鍵操作量データが“0”となる。したがって、共振信号の周波数帯域/共振帯域は低音域から高音域に向かってさらに広がり、共振信号の大きさはさらに大きくなる。図6のDの状態となる。
この状態では、鍵11がオフ操作なので、共振状態は低く共鳴も小さい。しかし、ダンパーペダル61がオンされて、ダンパーが弦から離れている状態にあるので、オフ操作の鍵11であっても弦が共振して共鳴している状態を実現できる。ここで、鍵11がオン操作されると、上記Cの状態となる。
ここで、ダンパーペダル61がハーフ操作状態になると、鍵11がオン状態のときには、図6の上記BとCとの中間状態となり、鍵11がオフ状態のときには、図6の上記AとDとの中間状態となる。鍵11がハーフ操作状態になると、ダンパーペダル61がオフ状態のときには、図6の上記AとBとの中間状態となり、ダンパーペダル61がオン状態のときには、図6の上記CとDとの中間状態となる。
こうして、ダンパーペダル61及び鍵11がハーフ操作状態のときの共振信号の周波数帯域/共振帯域とカットオフ周波数と共振信号の大きさとが実現される。こうして、共振/共鳴できる周波数帯域が、各鍵の発音操作/消音操作ダンパーペダル61のオン操作/オフ操作によって変化させることができる。
ここにさらに、ダンパー微細動信号が供給されて、上記図6のA、B、C、Dの各特性は上下及び左右に微細に変動する。すなわち、共振信号の大きさは微妙に大きくなったり小さくなったりし、周波数帯域/共振帯域が低音域から高音域に向かって広がったり低音域に向かって狭くなったりし、カットオフ周波数も高音側に移動したり低音側に移動したりする。この微細動の変化の周期は、ダンパー微細動信号の周波数に応じている。
ここで、上記音楽的ファクタ信号が供給されて、音楽的ファクタ、つまり鍵11の音高、鍵11のタッチ、音色、発音経過時間、発音中の他の鍵との共鳴度、鍵盤装置全体の共鳴度状況に応じて、共振信号の大きさは微妙に大きくなったり小さくなったりし、周波数帯域/共振帯域が高音域に向かって広がったり低音域に向かって狭くなったりし、カットオフ周波数も高音側に移動したり低音側に移動したりする。
図6の周波数特性には上方へ膨らんで突出した箇所R1c、R2c、R3c、R1b、R2b、R1d、…がある。これは共鳴/共振によって大きさが大きくなる個所である。この共鳴/共振ポイントR1c、R2c、…は、各共振回路20…ごと、各被衝撃体1…ごと、すなわち弦ごと、音高ごとに異なっており、この各音高に応じた周波数及びその2n倍(n=1、2、3…)、逓倍または整数倍の周波数の位置にある。
この共鳴/共振ポイントR1c、R2c、…は、上記共振回路20の共振周波数に応じた位置にあるので、他の共振回路20…から当該共振回路20へ送られてくる、初期衝撃信号及び共振信号による、当該共振回路20における共振周波数に応じた位置にも形成される。これにより、他の音高/鍵/弦と当該音高/鍵/弦との共鳴が実現される。
図6の特性A→特性D→特性B→特性Cになるほど、このような共鳴/共振ポイントR1c、R2c、…の数は増加する。これは、ダンパーペダル61がオン操作されていると、共振回路20相互の共振/共鳴が増えるので、共鳴/共振ポイントR1c、R2c、…の数は増加するからである。
同様に鍵11がオン操作のときに同様のことが起きるが、ダンパーペダル61のオン操作時ほど増加しない。ダンパーペダル61がハーフペダル操作されているときには、共鳴/共振ポイントR1c、R2c、…の数は、上記各特性における数のそれぞれ中間になる。
上記共鳴/共振ポイントR1c、R2c、R3c、R1b、R2b、R1d、…それぞれは、3つの山が形成されている。これは、上記1つの鍵11…ごとの3つの共振回路20…でそれぞれ形成される共鳴/共振ポイントに対応している。これにより、1つの鍵11における複数の弦における楽音を実現できるし、この1つの鍵11の複数の楽音相互の共鳴も実現できるといえる。
ここで、この各共鳴/共振ポイントの3つの山は、周波数が異なり、レベルも異なっている。これは、上記1つの鍵11の3つの共振回路20における共振周波数/共鳴周波数の違い及び共振レベル/共鳴レベルに対応しているからである。
1つの鍵11における3つの共振回路20…の間、または複数または全部の鍵11…にわたる共振回路20…の間の相互の共振/共鳴は、非常に多くの周波数/音高にわたる。しかし、ある共振回路20で共振された初期衝撃信号が、他の共振回路20に送られた場合、受け取った共振回路20の共振周波数の整数倍または2n(n=1,2,3…)に一致または近くないと、この送られてきた共振された初期衝撃信号は減衰する。したがって、全共振回路20…の間で、共振された初期衝撃信号の送受があっても、各共振回路20…における共鳴/共振ポイントは図6に示すR1c、R2c、…などに絞り込まれる。
このような図6の周波数特性から、この上記各共振回路20…のフィルタ24のフィルタ係数、上記パラメータ、操作量データdが机上の計算で求められる。またはこれらフィルタ係数、パラメータ、操作量データdの複数の組み合わせを実際の共振回路20…に入力してみて、その周波数特性を実測することを繰り返し、図6の近い周波数特性が出るものを順次細かくして追っていく。
このように実現したい周波数特性からフィルタ係数、パラメータ、操作量データdが求められる。なお、ここで決定される操作量データdは基本的な中心値であり、上記鍵操作量データ、ダンパー操作量データ、ダンパー微細動信号、音楽的ファクタの各因子に応じて、この中心値が変動される。
なお、一つの鍵11の3つの共振回路20…のフィルタ係数、パラメータ、操作量データdそれぞれは、図6の共鳴/共振ポイントR1c、R2c、…の3つの山の一つ一つに対応して決定され、この3つの共振信号/共鳴信号が加算器43で合成されて、上記3つの山の共鳴/共振ポイントR1c、R2c、…が形成される。図6の周波数特性では、ノイズ音成分の周波数特性は除外されており、実際の計測では図6の周波数特性に多少の凹凸が増えるし、高音域にノイズ音成分の周波数特性の多少の凹凸が増える。
(8)初期衝撃信号及び共振信号/共鳴信号(実験結果)
図7は、上記被衝撃体1からの初期衝撃信号及び共振回路20における共振信号(共鳴信号)の概略の一例を示す。上記被衝撃体1からの初期衝撃信号は周期性に乏しく、不規則性が高く、変化の激しい波形となっている。この初期衝撃信号はすぐに減衰して持続性はない。被衝撃体1は、このように加えられる衝撃に対して、すぐに減衰する素材から構成され、すぐに減衰する構造となっている。
上記共振回路20における共振信号(共鳴信号)は、共振によって周期性に富み、規則性が高く、変化が落ち着いた波形となっている。この周期性が、共振周波数/共鳴周波数に対応している。この共振信号(共鳴信号)は、徐々に減衰して持続性がある。共振回路20は、このように初期衝撃信号対して対応する鍵の音高に対応する共振処理/共鳴処理が施され、この共振/共鳴を実現するために上記操作量データdの値が選択される。
このような初期衝撃信号は、エンベロープにおけるアタック部分とは異なるし、エンベロープにおけるディケイ、サスティーン、リリースとは異なるし、リリースはない。なぜなら、エンベロープにおけるアタック、ディケイ、サスティーン、リリースというのは、弦振動のほか、楽器のケース・外器・響板・弦などの間の相互の共振/共鳴によって形成される空間的かつ総合的に形成される音であるが、本件初期衝撃信号は弦などの被打撃体/被衝撃体/発音体そのものによって形成される音であって、響板などの空間によって形成される音は除外されるからである。
また、鍵11の離鍵/キーオフがあると、操作量データ回路30からの操作量データdが急激に「0」または小さくなり、共振回路20のコンバータ25、51、53、56、59、71の出力データは急速に「0」に近づく。しがって、リリースのように徐々に減衰はしない。なぜなら、上述のように共振回路20は、被衝撃体/発音体そのものによって形成される音を実現するものであって、響板などの空間によって形成される音ではないからある。しかし、楽器のケース・外器・響板などによって、リリースは形成されるし、アタック、ディケイ、サスティーンも形成される。
図7では、共振信号(共鳴信号)は短く表記されているが、実際はもっと長い。共振信号(共鳴信号)の初期遅延分遅れた開始地点は、初期衝撃信号の開始地点より、上記遅延器23、55及び58における遅延時間分遅れるか、またはこの遅延時間の数倍遅れる。初期衝撃信号の末尾部分と共振信号(共鳴信号)の先頭部分とは若干重なっているが、重ならないように、遅延器23、55及び58における遅延時間が設定されてもよい。
この共振信号(共鳴信号)の波数/レベルは、被衝撃体1…ごと、鍵11…ごとに異なっていて、鍵11…の各音高に対応した周波数となっている。また初期衝撃信号の波形/周波数/レベルは、被衝撃体1…ごと、鍵11…ごとに異なっている。場合によって、初期衝撃信号の波形/周波数/レベルは、一部または全部の被衝撃体1…ごと、一部または全部の鍵11…ごとに同じでもよい。この場合、被衝撃体1の一部は省略され、複数の鍵11…にわたって被衝撃体1が共用される。
1つの鍵11における3つの共振信号(共鳴信号)は、図7の共振信号(共鳴信号)とほぼ同じであるが、信号の開始地点は若干異なるし、信号波形の周期も若干異なり、信号のレベルも若干異なる。信号の開始地点が若干異なるのは、1つの鍵11における各共振回路20の遅延器32、73の各遅延時間が若干異なるためである。
また、信号波形の周期が若干異なるのは、1つの鍵11における3つの共振回路20…の遅延器23、55、58の各遅延時間が若干異なるためである。信号のレベルが若干異なるのは、1つの鍵11における各共振回路20のコンバータ31、25、72、51、53、56、59、71で変換されるレベルが若干異なるためである。
(9)移動平均回路90及び弦間共鳴回路100
図14〜図19は第二実施例を示す。図14は上記図2における全体回路の一部を示す。上記各A−D変換器42…からの各初期衝撃信号は、自己共振回路120でデジタルの共振処理がなされ、この共振処理では初期衝撃信号自身が帰還されて共振が付加され、ダンパーペダル61の操作、各鍵11の操作による共鳴などに応じた共振処理がされ、この共振された初期衝撃信号、つまり初期衝撃信号の共振信号が当該鍵11…の発音操作に応じた楽音として出力される。
この初期衝撃信号の共振信号は、移動平均回路90…で移動平均処理がなされて移動平均信号とされ、マルチプレクサ101を介して、弦間共鳴回路100…で、他の異なる音高の鍵の弦との間における、共鳴処理(共振処理)がなされる。
この移動平均処理では、上記初期衝撃信号のエンベロープの急激な立ち上がりまたは立ち下がりが緩和されて、緩やかな変化の信号が得られる。このような移動平均処理によって、初期衝撃信号の中の本来の本質的な衝撃成分、つまり上記被衝撃体1の衝撃の本来の本質的な衝撃成分が抽出される。
上記共鳴処理では、弦相互間の共鳴に応じた共鳴処理がなされるほか、上記ダンパーペダル61の操作状態、各鍵11の操作状態、響板26の性質等による共鳴等に応じた共鳴処理がなされる。この共鳴処理された、各初期衝撃信号(共鳴信号)は、上記加算器43を経て上記D−A変換器44に送り込まれる。
(10)自己共振回路120
図15は上記自己共振回路120を示す。この回路120は、上述の図3または図5の共振回路20…とほぼ同じである。ただし、加算器22、52における他の共振回路からの入力及び他の共振回路への出力はない。これ以外の構成、動作、作用は、図3または図5の共振回路20…とほぼ同じであるので、説明を省略する。この図3または図5の共振回路20…の説明は、ここでも記載されているものとする。
(11)移動平均回路90
図16は上記移動平均回路90を示す。上記初期衝撃信号の共振信号f(xk)は、絶対値回路91で絶対値に変換され、加算器92でMak-1が減算され、乗算器93で1/Nが乗算され、さらに乗算器93でMak-1が加算され、さらに遅延器94で遅延される。この遅延器94からの出力Mak-1は、反転器97を介して上記加算器92に帰還入力されるとともに、上記加算器94に帰還入力される。
上記反転器97はインバータ群よりなり、入力されるデータがプラスマイナス反転される。上記絶対値回路91はこのような反転器を備え、入力されるデータがプラスならそのまま出力させ、入力されるデータがマイナスなら反転器でプラス値に反転して出力させる。
この遅延器94からの出力Mak-1は、さらに乗算器96で上記初期衝撃信号の共振信号f(xk)に乗算されて、移動平均処理された共振信号、つまり移動平均信号fm(xk)として出力される。この移動平均処理は以下の演算式(A)で示される。
fm(xk)=Mak=Mak-1+(1/N){|f(xk)|−Mak-1}…(A)
f(xk):時刻kにおける初期衝撃信号の共振信号(入力信号)
N:移動平均長
Mak:時刻kにおける移動平均値
Mak-1:時刻k-1における移動平均値
上記時刻k-1における移動平均値Mak-1は、時刻kにおける移動平均値Makを上記遅延器95で遅延させた移動平均値であって、移動平均値Mak-1は移動平均値Makに対して、デジタル処理の1つ前のタイミングにおける値である。なお、移動平均値Mak-1の代わりに、場合によって2つ前のタイミングの移動平均値Mak-2、3つ前のタイミングの移動平均値Mak-3、…等が使用されてもよい。
移動平均長Nは、上記移動平均処理を行うサンプル数の区間を示す。この移動平均長Nが長いほど、初期衝撃信号の衝撃によるエンベロープの急峻な立ち上がりまたは立ち下がりの変化が取り除かれ、より滑らかでより平滑化される。移動平均長Nが短いほど、移動平均処理に要する時間が短くなり、迅速に処理される。
このような移動平均長Nは、音高、音色、タッチ、共鳴度などの音楽的ファクタに応じて変更可能である。この場合、これら音楽的ファクタごとに移動平均長Nがメモリに記憶され、このメモリに音高、音色、タッチ、共鳴度などの音楽的ファクタが読み出しアドレスとして供給され、読み出された移動平均長Nがレジスタ等を介して、上記移動平均回路90の乗算器93に送られる。
音高が高くなると、移動平均長Nは短くされ、タッチが強くなると、移動平均長Nは長くされ、音色が管楽器→弦楽器→打楽器と変化すると、移動平均長Nは長くされ、共鳴度が大きくなると移動平均長Nは短くされる。
なお場合によって、この特性は逆にされてもよい。また場合によって、これらの音楽的ファクタにかかわらず、音高の一部または全部、タッチの一部または全部、音色の一部または全部、共鳴度の一部又は全部において、移動平均長Nは一定でもよい。
上述のように移動平均長Nが、音高、音色、タッチ、共鳴度などの音楽的ファクタに応じて変更されれば、上記移動平均信号fm(xk)=Makのレベルも変化する。なぜなら、音高、音色、タッチ、共鳴度などの音楽的ファクタに応じて変更される移動平均長Nの逆数1/Nが、乗算器93で、移動平均信号fm(xk)に乗算されるからである。
音高が高くなると移動平均値(移動平均信号fm(xk)の値)のレベルは大きくなり、タッチが大きくなると移動平均値のレベルは大きくなり、音色が管楽器→弦楽器→打楽器と変化すると、移動平均値のレベルは大きくなり、共鳴度が大きくなると移動平均値のレベルは大きくなる。
なお場合によって、この特性は逆にされてもよい。また場合によって、これらの音楽的ファクタにかかわらず、音高の一部または全部、タッチの一部または全部、音色の一部または全部、共鳴度の一部又は全部において、移動平均値は一定でもよい。上記共鳴度については図24及び図25のところで説明するし、さらには本明細書末尾でも詳述する。
また、移動平均長Nは、ダンパー操作量によって変更可能である。この場合、これらダンパー操作量ごとに移動平均長Nがメモリに記憶され、このメモリにダンパー操作量データが読み出しアドレスとして供給され、読み出された移動平均長Nがレジスタ等を介して、上記移動平均回路90の乗算器93に送られる。
ダンパーペダル61が踏まれてダンパー操作量が大きくなると、移動平均長Nは長くされる。なお場合によって、この特性は逆にされてもよい。また場合によって、これらのダンパー操作量にかかわらず、ダンパー操作量の一部または全部において、移動平均長Nは一定でもよい。
上述のように移動平均長Nが、ダンパー操作量データに応じて変更されれば、上記移動平均信号fm(xk)=Makのレベルも変化する。なぜなら、ダンパー操作量データに応じて変更される移動平均長Nの逆数1/Nが、乗算器93で、移動平均値fm(xk)に乗算されるからである。
ダンパーペダル61が踏まれてダンパー操作量が大きくなると、移動平均信号fm(xk)=Makは大きくされる。なお場合によって、この特性は逆にされてもよい。また場合によって、これらのダンパー操作量にかかわらず、ダンパー操作量の一部または全部において、移動平均信号fm(xk)=Makは一定でもよい。
なお、加算器92から加算器94の間に別の乗算器が設けられ、この乗算器に音高、音色、タッチなどの音楽的ファクタに応じたデータが入力されてもよい。また、この乗算器に上記ダンパー操作量回路60からのダンパー操作量データが入力されてもよい。これにより、移動平均長Nは音楽的ファクタとダンパー操作量とから連動ではなく個別に制御されるし、移動平均信号fm(xk)=Makは音楽的ファクタとダンパー操作量とから連動ではなく個別に制御される。
図17は、移動平均処理される前の初期衝撃信号と、移動平均処理された後の初期衝撃信号とを示す。移動平均処理される前の初期衝撃信号のエンベロープは、立ち上がりまたは立ち下がりが急峻な変化の激しい波形であるが、移動平均処理された後の初期衝撃信号のエンベロープは、急激な立ち上がりまたは立ち下がりが緩和されて、変化が緩やかな波形となっている。移動平均長Nが長くなると、変化はより緩やかになり、移動平均長Nが短くなると、より変化に富むようになる。
このような移動平均処理によって、初期衝撃信号のエンベロープの急峻性は緩和され緩やかな変化の信号が得られる。これにより、初期衝撃信号または上記共振信号の中の本来の本質的な衝撃成分、つまり上記被衝撃体1の衝撃の本来の本質的な衝撃成分または共振成分が抽出され、より本質的な衝撃による共鳴/共振が実現される。
上記移動平均回路90…は、複数の初期衝撃信号、例えば3つの初期衝撃信号につき、時分割に処理されてもよい。これにより、マルチプレクサ101は省略できる。このような移動平均回路90…は図16に示される以外の回路でもよく、移動平均処理できれば他の回路でもよいし、コンピュータプログラムによっても実現可能である。このような移動平均処理は、ローパスフィルタ処理とは全くことなり、周期性のない初期衝撃信号の共振信号に対して行われ、平滑化だけでなく位相が変化したりする。
このような移動平均処理は、上述の初期衝撃信号自身につき共振を付加する処理の後で実行され、次述する他の異なる音高の鍵の弦との間における共鳴を付加する処理の前で実行される。これにより、初期衝撃信号自身の共振は激しい変化で実行され、他の異なる音高の鍵の弦との間における共鳴は緩やかな変化で実行され、初期衝撃信号自身の共振と弦間共鳴とが異なる変化で実行され得る。
(12)弦間共鳴回路100
図18は上記弦間共鳴回路100を示す。上記移動平均回路90…からの移動平均処理された複数の共振信号(移動平均信号)fmi(xk)(ここで鍵識別番号をiとする。以下同じ)は、マルチプレクサ101を介して、パラレルな状態からシリアルな状態に変換され、共振信号RAM102に順次書き込まれ、乗算器103で順次レベル制御され、累算器104で累算されて、上記加算器43を経て上記D−A変換器44に送り込まれる。
この図18では、3つの鍵についての、弦共鳴の例を示しているが、4つ以上、2つ以下の鍵の弦共鳴についても可能である。上記共振信号RAM102は、3つの鍵に対応した3つのエリア(i)に分かれており、各エリアには3つの鍵の1サンプリング周期分(k)の、上記移動平均処理された複数の共振信号(移動平均信号)fmi(xk)が順次時分割に書き込まれる。
この1サンプリング周期が128サンプルポイントからなると、ポインタkは0<k<127となる。このポインタkを下位アドレス、上記エリアiを上位アドレスとして、共振信号RAM102の書き込みアドレスwaikが決定される。上記時分割は1つのサンプリング時間をさらに3分割して実行される。
この共振信号RAM102の上記のような書き込みアドレスデータwaikは、アドレスジェネレータ106より供給される。この書き込みアドレスデータwaikは、上記サンプリング周期の3倍の速度でインクリメントされる。この書き込みアドレスデータwaikは、上記サンプリング周期の3倍の速度でインクリメントされ、時分割に発生される。一方、次述する読み出しアドレスデータwaikのエリア周期のさらに3倍、上記サンプリング周期の9倍の周期で時分割に発生される。
ディレイテーブル105には、移動平均処理されたそれぞれの共振信号(移動平均信号)fmi(xk)を個別に遅延させるためのディレイデータd11、d12、d13、d21、d22、d23、d31、d32、d33が記憶されている。
このディレイデータd11、d21、d31、d12、d22、d32、d13、d23、d33は、時分割にこの順番で順次読み出され、上記アドレスジェネレータ106を通じて、下記の読み出しアドレスデータrajiに変換されて、上記共振信号RAM102に供給される。
raji=waik−dji…(B)
waikは、上記サンプルポインタkを下位アドレス、上記エリアiを上位アドレスとしたものである。jは、1エリア周期の3倍でインクリメントされたものである。
このような読み出しアドレスデータrajiは、上記書き込みアドレスデータwaikに対して、ディレイデータdji分減算されて遅れており、ディレイデータdji分遅延されて、上記書き込まれた移動平均処理されたそれぞれの共振信号(移動平均信号)fmi(xk)は、ディレイデータdji分遅れて読み出される。
レベルデータテーブル107には、上記移動平均処理されたそれぞれの共振信号(移動平均信号)fmi(xk)を個別にレベル制御するためのレベルデータl11、l12、l13、l21、l22、l23、l31、l32、l33が記憶されている。
このレベルデータl11、l21、l31、l12、l22、l32、l13、l23、l33は、時分割にこの順番で順次読み出され、上記乗算器103に供給される。これにより、移動平均処理され遅延されたそれぞれの共振信号と乗算され、
l11×fm1(xk-d11)、l21×fm2(xk-d21)、l31×fm3(xk-d31)、
l12×fm1(xk-d12)、l22×fm2(xk-d22)、l32×fm3(xk-d32)、
l13×fm1(xk-d13)、l23×fm2(xk-d23)、l33×fm3(xk-d33)
のレベルが、個別に時分割に各サンプルタイミングごとに制御されていく。
上記アドレスジェネレータ106から上記累算器104にラッチパルスlpが送られ、上記3つの鍵について1サンプリング周期分の共鳴信号gi(xk)が累算されるごとに、上記加算器43を経て上記D−A変換器44に送り込まれる。
これらディレイデータd11、d12、d13、d21、d22、d23、d31、d32、d33、及びレベルデータl11、l12、l13、l21、l22、l23、l31、l32、l33は、3つの鍵における弦相互間の共鳴の大きさと共鳴周波数に基づいて、実際のアコーステックピアノの3つの鍵の楽音を録音し、分析して、決定される。
この分析では、サンプリング処理、デジタルフィルタ処理などによって、弦そのものの楽音成分以外の共鳴音部分につき、その周波数から各ディレイデータdが決定され、そのレベルから各レベルデータlが決定される。また、この弦間共鳴回路100において、ディレイデータd及びレベルデータlを1つずつ変化させていって、上記アコーステックピアノの実際の共鳴周波数及び共鳴レベルに近くなったときに決定される。
上述の共鳴処理の結果、移動平均処理されたそれぞれの共振信号(移動平均信号)fmi(xk)が、遅延及びレベル制御されて、全体として3つの鍵相互間の共鳴処理がなされる。この共鳴処理された共鳴信号gi(xk)は、以下の演算式で示される。
g1(xk)=fm1(xk-d11)×l11+fm2(xk-d21)×l21+fm3(xk-d31)×l31…(C)
g2(xk)=fm1(xk-d12)×l12+fm2(xk-d22)×l22+fm3(xk-d32)×l32…(D)
g3(xk)=fm1(xk-d13)×l13+fm2(xk-d23)×l23+fm3(xk-d33)×l33…(E)
なお、上記レベルデータl11、l22、l33はゼロである。なぜなら、レベルデータl11、l22、l33は、ある音高の弦から他の音高の弦に対する共鳴レベルではなく、ある音高の弦における自分自身の共鳴レベルを意味し、通常はゼロだからである。したがって、上記演算式(C)(D)(E)は以下のとおりとなる。なお場合によって、このレベルデータl11、l22、l33もゼロ以外の値であってもよい。
g1(xk)=fm2(xk-d21)×l21+fm3(xk-d31)×l31…(F)
g2(xk)=fm1(xk-d12)×l12+fm3(xk-d32)×l32…(G)
g3(xk)=fm1(xk-d13)×l13+fm2(xk-d23)×l23…(H)
また、遅延記号をZ(-dji)であらわすと、上記演算式は以下のとおりとなる。
g1(xk)=fm2(xk)Z(-d21)×l21+fm3(xk)Z(-d31)×l31…(I)
g2(xk)=fm1(xk)Z(-d12)×l12+fm3(xk)Z(-d32)×l32…(J)
g3(xk)=fm1(xk)Z(-d13)×l13+fm2(xk)Z(-d23)×l23…(K)
また上記演算式(C)(D)(E)は、図19の(L)に示す演算式で表すことができる。なお、ここで、図19の行列演算式(M)(N)による置き換えが成立することが条件となる。
さらに、上記ディレイテーブル105のディレイデータd11、d12、d13、d21、d22、d23、d31、d32、d33は、図19の行列演算式(P)であらわされる。また、上記レベルテーブル107のレベルデータl11、l12、l13、l21、l22、l23、l31、l32、l33は、図19の行列演算式(Q)であらわされる。ここで、図19の行列演算式(R)による置き換えが成立することが条件となる。
このような弦間共鳴回路100は、3つの鍵11…ごとに多数設けられ、他の鍵11…についても、3つごとに弦間共鳴回路100が多数設けられる。これらの多数の弦間共鳴回路100からの、共鳴信号gi(xk)は、いずれも上記加算器43で加算合成されて、上記D−A変換器44へ送られる。
この弦間共鳴回路100は、3つの鍵にわたる自身及び相互の共鳴処理が実行されるが、4つ以上の鍵、2つ以下の鍵にわたる弦共鳴処理が行われてもよい。これに応じて、記憶されるディレイデータd及びレベルデータlが、9個から、16個、25個、36個…と増えていき、共振信号RAM102に記憶される移動平均処理されたそれぞれの共振信号(移動平均信号)fmi(xk)の数及び時分割処理チャンネル数も、3、4、5、6…と増える。
上記3つの鍵は、半音ずつ異なる隣り合う音高の異なる鍵である。しかし、和音を構成できる、隣合わない離れた音高どうしの間でもよい。またはこの3つの鍵は、一部は隣合う音高どうしの鍵、他の一部は隣合わない離れた音高どうしの鍵でもよい。「弦共鳴」という名称が付いているが、この共鳴処理で実現される共鳴は、打弦楽器に限らず、擦弦楽器、管楽器、打楽器などの共鳴でもよい。
上記ディレイデータdij及びレベルデータlijは、ダンパー操作量、音高、音色、タッチなどの音楽的ファクタに応じて変更可能である。この場合、これらダンパー操作量、音楽的ファクタごとにディレイデータdij及びレベルデータlijが上記でディレイテーブル105及びレベルテーブル107に記憶され、このテーブル105、107にダンパー操作量データ、音高、音色、タッチなどの音楽的ファクタが読み出しアドレスとして供給される。これにより、ダンパー操作量及び音楽的ファクタに応じて、共鳴量及び共鳴周波数が変化する。
音高が高くなると、共鳴量は小さく共鳴周波数は高くされ、ダンパー操作量が大きくなると、共鳴量は大きく共鳴周波数は変化せず、タッチが強くなると、共鳴量は大きく共鳴周波数は高くされ、音色が管楽器→弦楽器→打楽器と変化すると、共鳴量は大きく共鳴周波数は高くされる。なお場合によって、この特性は逆にされてもよい。また場合によって、これらのダンパー操作量及び音楽的ファクタにかかわらず、ダンパー操作量の一部または全部、音高の一部または全部、タッチの一部または全部、音色の一部または全部において、共鳴量及び共鳴周波数は一定でもよい。
上述のように初期衝撃信号自身につき共振が付加され、さらに移動平均処理されてエンベロープの急峻な変化が緩やかにされてから、上記他の異なる音高の鍵の弦との間における弦共鳴処理が行われれば、共鳴に余分な成分が入らず、付加される弦共鳴がより純粋になる。このような弦間共鳴回路100…は図18に示される以外の回路でもよく、例えば上述の図3または図5の共振回路20…でもよく、共鳴処理できれば他の回路でもよいし、コンピュータプログラムによっても実現可能である。
上記初期衝撃信号自身の共振処理された信号は共振信号、移動平均処理された信号は移動平均信号、共鳴処理された信号は共鳴信号としているが、これらの信号の基の信号は上記初期衝撃信号である。
(13)全体回路の一部(第三実施例)
図20は第三実施例を示す。図20は上記図2における全体回路の一部を示す。上記各A−D変換器42…からの各初期衝撃信号は、弦振動合成回路130…でデジタルの共振処理がなされ、この共振処理では初期衝撃信号自身が帰還されて共振が付加され、上記ダンパーペダル61の操作、各鍵11の操作による共鳴などに応じた共振処理がされ、この共振された初期衝撃信号、つまり初期衝撃信号の共振信号が当該鍵11…の発音操作に応じた楽音として出力される。
この弦振動合成回路130…では、上述の移動平均処理もなされて移動平均信号とされ、さらに、他の異なる音高の鍵の弦との間における、共鳴処理(共振処理)がなされる。この移動平均処理では、初期衝撃信号のエンベロープの急激な立ち上がりまたは立ち下がりが緩和されて、緩やかな変化の信号が得られる。このような移動平均処理によって、初期衝撃信号の中の本来の本質的な衝撃成分、つまり上記被衝撃体1の衝撃の本来の本質的な衝撃成分が抽出される。
上記共鳴処理では、弦相互間の共鳴に応じた共鳴処理がなされるほか、上記ダンパーペダル61の操作状態、各鍵11の操作状態、響板26の性質等による共鳴等に応じた共鳴処理がなされる。この共鳴処理された、各初期衝撃信号(共鳴信号)は、上記加算器43を経て上記D−A変換器44に送り込まれる。
上記ダンパーペダル61のダンパー操作量データ、上記鍵操作量データがアナログデータまたはサンプリングデータの場合には、上記A−D変換器42でデジタルデータに変換されて、各弦振動合成回路130…に送り込まれる。
上記弦振動合成回路130…は、4つ設けられており、F6〜C8、F5〜E6、A4〜E5、D#4〜G#4の4つの音域ごとに分担されて、上記自己共振、移動平均、共鳴の処理が実行される。これら弦振動合成回路130…は時分割処理によって、上記各音域にわたる複数の鍵/音高につき並行して自己共振、移動平均、共鳴が実行される。時分割処理速度が速ければ、弦振動合成回路130…は少なくても1つでもよい。また、弦振動合成回路130…が安価であれば、弦振動合成回路130…の数は多くなっても良い。
上記弦振動合成回路130…の出力は、後処理回路131でリバーブ、エコーなどのエフェクト処理が全体、音域別または音高別に実行され、上記D−A変換器44に送り込まれる。
(14)弦振動合成回路130及びその周辺回路
図21は上記弦振動合成回路130…及びその周辺回路を示す。この図21は1つの鍵/音高当たりの回路を示し、この図21のような回路が全鍵分他に設けられている、この図21の回路には3つの同じ弦振動回路140…が設けられている。この3つの弦振動回路140…は、ピアノの一つの鍵/音高当たり3つずつ設けられている弦の振動音を実現するものである。
上記衝撃変換素子21…からの各鍵ごとの各初期衝撃信号は、フォルマントディレイバッファ132(RAM)に順次書き込まれていく。フォルマントディレイバッファ132には全鍵分の初期衝撃信号が時分割された状態で書きこまれる。このフォルマントディレイバッファ132には、タップデータメモリ134からのフォルマント波形の補正データが入力され、この補正データに応じた時間分、フォルマントの時間長が延ばされたり縮められたりされる。この時間長が変更制御された初期衝撃信号は、乗算累算器135で、インパルス応答波形(データ)と畳込演算が実行される。
このフォルマントが制御された上記初期衝撃信号は、弦振動回路140…の中の乗算器141、加算器142、加算器143を経て、上記後処理回路131へ送られる。この乗算器141には、レベルメモリ144からレベルデータが送られ、初期衝撃信号のレベルが制御される。このレベル制御では、初期衝撃信号が大き過ぎず小さすぎず、鍵盤装置に合った大きさとされる。
加算器142では、後述する自己共振、共鳴の処理がされた初期衝撃信号、つまり共振共鳴信号が加算合成され、初期衝撃信号にこの初期衝撃信号に基づく共振共鳴信号が合成され、初期衝撃信号と共振共鳴信号とが整合される。加算器143では、同じ鍵/音高の他の弦からの自己共振、移動平均、共鳴の処理がされた初期衝撃信号が加算合成され、一つの鍵/音高の初期衝撃信号及び共振共鳴信号(1鍵3弦合成信号)が出力される。
また、上記フォルマント処理された上記初期衝撃信号は、加算器146を経てハーモニックディレイバッファ147(フィルタ、RAM)に順次書き込まれ、ディレイデータに応じた遅延がなされ、さらに乗算累算器148に送られる。この乗算累算器148には、ハーモニックレベルメモリ149(フィルタ、ROM)からのレベルデータが送り込まれ、レベル制御がされる。
ハーモニックディレイバッファ147ではディレイデータに応じた時間分遅延され、ハーモニックレベルメモリ149からのレベルデータに応じた大きさとされ、乗算累算器148ではこの大きさのために乗算され、これらの遅延かつ乗算が繰り返されて累算され、自分自身の弦に共振に応じた自己共振処理が実行される。
これらハーモニックディレイバッファ147、ハーモニックレベルメモリ149、乗算累算器148によって、上述の図15の自己共振回路120、図18の弦間共鳴回路100と同じ自己共振及び他弦との共鳴処理が実行される。したがって、これらの回路は図15の自己共振回路120及び図18の弦間共鳴回路100の回路に置き換え可能である。これら自己共振及び他弦共鳴の内容は後述する。
上記乗算累算器148からの共振共鳴信号は、乗算器152、加算器153を経て、上記加算器146を通じて、上記ハーモニックディレイバッファ147に帰還入力される。これにより、共振共鳴信号(初期衝撃信号)自身が帰還されて共振が付加され、この共振共鳴信号が対応する鍵11…の発音操作に応じた、この同じ鍵の異なる弦の一つの弦の楽音として出力される。
上記乗算器152には、ゲインテーブル154からのダンパーゲインデータが入力されて、上記共振共鳴信号のレベルが変更制御される。このゲインテーブル154には、上記ダンパー操作量回路60からの操作量データ回路30を経た操作量データdが入力され、このダンパーゲインデータが読み出される。これにより、上記自己共振及び他弦との共鳴が、ダンパーペダル61の操作に応じたものとされる。
上記乗算累算器148から乗算器152を経た共振共鳴信号は、移動平均回路151で移動平均処理がされる。この移動平均回路151は、上述の移動平均回路90と同じであり、この移動平均回路151では、初期衝撃信号のエンベロープの急激な立ち上がりまたは立ち下がりが緩和されて、緩やかな変化の信号が得られる。
この移動平均回路151で移動平均処理された共振共鳴信号、つまりこのような自己共振、他弦共鳴、移動平均された初期衝撃信号、つまり移動平均された共振共鳴信号は、乗算器155を経て、上記同じ鍵で他の弦の弦振動回路140の上記加算器146に入力される。
これにより、上記自己共振に他の弦からの共振共鳴信号が加算合成され、同じ鍵の3つの弦相互間の共鳴に応じた共鳴処理が行われる。上記乗算器155には、レベルバッファ156からの同鍵共鳴レベルデータが入力されて、同じ鍵の異なる弦の間の共鳴量が変更制御される。
上記移動平均回路151からの同鍵3つの弦の共振共鳴信号は、乗算器157、マルチプレクサ158を経て、時分割にシリアルにされ、共鳴ディレイRAM161に順次書き込まれる。上記乗算器157には、レベルバッファ159からの他鍵共鳴レベルデータが入力されて、他の鍵の異なる弦の間の共鳴量が変更制御される。
上記共鳴ディレイRAM161には共鳴ディレイROM162からのディレイデータが入力され、このディレイデータに応じた時間分遅延される。この共鳴ディレイRAM161からの遅延された共振共鳴信号は、乗算累算器163で、共鳴レベルROM164からのレベルデータが乗算され、これらが共鳴する他の音高/鍵ごとに時分割に実行されて累算されて、全音高/全鍵にわたって弦相互間の共鳴処理が実行される。
この乗算累算器163からの弦相互間の共振共鳴信号(鍵間共鳴信号)は、上記加算器153、146を経て、上記ハーモニックディレイバッファ147に帰還入力される。したがって、自己の弦における自己共振に、他の鍵/音高との共鳴も加味される。
そして、この共鳴処理される共振共鳴信号には、上記乗算器152でダンパーの操作量データdが乗算されているので、上記ダンパーペダル61の操作状態による共鳴等に応じた共鳴処理がなされる。上記乗算累算器163からの共振共鳴信号(鍵間共鳴信号)は、他の鍵の共鳴ディレイRAM161へ送られる。
この他の鍵からの共振共鳴信号は、上記マルチプレクサ158を経て、上記共鳴ディレイRAM161に書き込まれ、他の鍵の共振共鳴信号に合成される。したがって、全音高/全鍵にわたって弦相互間の共鳴処理が実行される。
上記マルチプレクサ158には、上記加算器143からの同じ鍵の3つの弦における、合成された初期衝撃信号(1鍵3弦合成信号)も入力されてもよい。これにより、同じ鍵の3つの弦における、つまり一つの鍵/音高の初期衝撃信号についても、他の鍵/音高にわたる弦相互間の共鳴処理が実行される。
なお、上記移動平均回路151は、上記乗算器152の出力側だけではなく、以下の種々の箇所に設けられてもよい。移動平均回路151は特定または全部の乗算器152と加算器153の間または乗算器152の入力側に設けられてもよい。これにより、ある弦の自己共振を他の弦の自己共振や共鳴と区別して、特有の移動平均を付加でき、特定の弦の自己共振における移動平均処理の内容は、他の弦の自己共振における移動平均処理の内容とは異なるようにできる。
移動平均回路151は特定または全部の乗算器155の入力側または出力側に設けられてもよい。これにより、特定の弦間の共鳴を、他の共振共鳴と区別して、特有の移動平均を付加でき、特定の弦間の共鳴における移動平均処理の内容は、他の弦間の共鳴における移動平均処理の内容とは異なるようにできる。
移動平均回路151は特定または全部の乗算器157の入力側または出力側に設けられてもよい。これにより、他の鍵/音高との共鳴に、他の共振共鳴とは区別して、特有の移動平均を付加でき、特定の弦から他の音高/他の鍵への共鳴における移動平均処理の内容は、他の弦または他の音高/鍵の共振/共鳴における移動平均処理の内容とは異なるようにできる。
移動平均回路151は特定または全部の加算器153の入力側または出力側に設けられてもよい。これにより、同じ鍵の自己の弦の他からの共鳴に、他の共振共鳴とは区別して、特有の移動平均を付加でき、他の音高/他の鍵から特定の弦への共鳴における移動平均処理の内容は、他の弦または他の音高/鍵の共振/共鳴における移動平均処理の内容とは異なるようにできる。
移動平均回路151は特定または全部の加算器142、143、乗算器141の入力側または出力側に設けられてもよい。これにより、特定の弦の初期衝撃信号に、他の弦/鍵/音高の共振共鳴とは区別して、特有の移動平均を付加でき、特定の弦の初期衝撃信号における移動平均処理の内容は、他の弦/音高/鍵の初期衝撃信号または共振共鳴における移動平均処理の内容とは異なるようにできる。
移動平均回路151は特定または全部の加算器143の出力側に設けられてもよい。これにより、特定の3弦/鍵/音高の初期衝撃信号に、他の3弦/鍵/音高の初期衝撃信号または共振共鳴とは区別して、特有の移動平均を付加でき、特定の3弦/鍵/音高の初期衝撃信号における移動平均処理の内容は、他の弦/音高/鍵の初期衝撃信号または共振共鳴における移動平均処理の内容とは異なるようにできる。
移動平均回路151が特定または全部の乗算器152と加算器142との間に設けられてもよい。これにより、ある鍵の1つの弦における初期衝撃信号の共振共鳴に、他の弦/鍵/音高の初期衝撃信号または共振共鳴とは区別して、特有の移動平均を付加でき、特定の弦の初期衝撃信号の共振における移動平均処理の内容は、他の弦/音高/鍵の初期衝撃信号または共振共鳴における移動平均処理の内容とは異なるようにできる。
加算器143の出力がマルチプレクサ158に入力され、移動平均回路151が特定または全部の加算器143とマルチプレクサ158との間に設けられてもよい。これにより、同じ鍵の3つの弦における、つまり一つの鍵/音高の初期衝撃信号に、他の共振共鳴とは区別して、特有の移動平均を付加でき、特定の音高/鍵間の共鳴における移動平均処理の内容は、他の音高/鍵間の共鳴における移動平均処理の内容とは異なるようにできる。
移動平均回路151が特定または全部の乗算累算器163の出力側に設けられてもよい。これにより、特定の弦から他の鍵/他の音高への共鳴を他の共振共鳴とは区別して、特有の移動平均を付加でき、特定の音高/鍵間の共鳴における移動平均処理の内容は、他の音高/鍵間の共鳴における移動平均処理の内容とは異なるようにできる。
以上のような図21の弦振動回路140…は、3つ設けられており、これら3つの弦振動回路140は、互いに異なる共振、異なる移動平均、異なる共鳴の処理が行われ、同じ初期衝撃信号から異なる共振共鳴信号が生成される。この各弦振動回路140…からの各共振共鳴信号は互いに送受され、同じ鍵/音高の3つの弦の間の共鳴が実現される。
このような弦振動回路140の出力は、後述する図27〜図32に示す響板駆動機構171に送られても良い。これにより、移動平均処理された共振共鳴信号で響板26が駆動放音される。弦振動回路140の数は4つ以上でも、2つ以下でもよい。弦振動回路140及び弦振動合成回路130などの図20の、図21の回路は、ピアノの弦に対応したもののほか、チェンバロ、弦楽器、管楽器、打楽器に対応したものでもよい。
(15)フォルマントディレイバッファ132、フォルマントレベルメモリ133、タップデータメモリ134
図22は、上記フォルマントディレイバッファ132、フォルマントレベルメモリ133、タップデータメモリ134のデータ構造を示す。
フォルマントディレイバッファ132(RAM)は、1ワード32ビットの初期衝撃信号が、1024ワード分順次記憶される。図22(1)において、右側が新しく、左側が古い。そして、フォルマントの時間長を変更する部分に対応したワードが読み出される。
フォルマントレベルメモリ133(ROM)は、1ワード32ビットのレベルデータが、1024ワード分記憶される。そして、上記フォルマントの時間長が変更されるレベルに対応したレベルデータが読み出される。
タップデータメモリ134は、1ワード16ビットのディレイデータが、1024ワード分記憶される。そして、上記フォルマントの時間長が変更される時間長に対応したディレイデータが読み出される。
(16)ハーモニックディレイバッファ147、ハーモニックレベルメモリ149
図23は、上記ハーモニックディレイバッファ147、ハーモニックレベルメモリ149のデータ構造を示す。
ハーモニックディレイバッファ147は、1ワード32ビットの共振共鳴信号が、2048ワード分記憶される。このハーモニックディレイバッファ147には、C5からE6までの12音分の共振共鳴信号が順次書き込まれる。この他の鍵/音高の共振共鳴信号は、上記乗算累算器163から送られ、順次ディレイされて出力される。
ハーモニックレベルメモリ149は、1ワード32ビットのレベルデータが、1024ワード分記憶される。このハーモニックレベルメモリ149には、C5からE6までの12音分のレベルデータが記憶される。この鍵/高ごとのレベルデータは、上記各鍵/音高ごとの共振共鳴信号に順次乗算されていく。この共振共鳴信号は、帰還されるため、レベルデータの2倍の容量となる。
(17)共鳴ディレイRAM161、共鳴ディレイROM162、共鳴レベルROM164
図24は共鳴ディレイROM162のデータ構造を示す。図25は共鳴レベルROM164のデータ構造を示す。図26は共鳴ディレイRAM161のデータ構造を示す。
図24の共鳴ディレイROM162には、C5からE6までの12音個々相互の共鳴を実現するための12×12=144個のディレイデータが記憶され、さらに、他のオクターブ(音域)との共鳴を実現するための12+12+1=25個のディレイデータも記憶される。各音高同士の共鳴度が高くなるとこのディレイデータの各値も小さくなり、遅延量が少なくなる。
図24において、縦の列が上縁の各音高に与えられるディレイデータを示す。例えば、上縁左から三番目のD5の音高には、左縁のC5からE6の各音高から当該D5への共鳴に応じたディレイデータD02、D12、…が記憶されている。また、右上の他のオクターブ(音域)には、左縁のC5からE6の各音高から当該他のオクターブ(音域)への共鳴に応じたディレイデータD0C、D1C、…が記憶されている。
図24において、横の行が左縁の各音高が他に与えるディレイデータを示す。例えば、左縁上から五番目のF5の音高は、上縁のC5からE6の各音高に対する当該F5からの共鳴に応じたディレイデータD40、D41、…が記憶されている。また、左下の他のオクターブ(音域)は、上縁のC5からE6の各音高に対する当該他のオクターブ(音域)からの共鳴に応じたディレイデータDC0、DC1、…が記憶されている。
これらのうち、同じ音高同士、及び同じ他のオクターブ(音域)同士には共鳴はないので「0」となっている。しかし場合によって「0」以外の値が記憶されてもよい。このような144+25個のレベルデータは他のオクターブについても多重的に記憶されている。このようなディレイデータDは上記共鳴度を表す。
図25の共鳴レベルROM164には、C5からE6までの12音個々相互の共鳴を実現するための12×12=144個のレベルデータが記憶され、さらに、他のオクターブ(音域)との共鳴を実現するための12+12+1=25個のレベルデータも記憶される。各音高同士の共鳴度が高くなるとこのレベルデータの各値も大きくなり、共鳴レベルが大きくなる。
図25おいて、縦の列が上縁の各音高に与えられるレベルデータを示す。例えば、上縁左から三番目のD5の音高には、左縁のC5からE6の各音高から当該D5への共鳴に応じたレベルデータL02、L12、…が記憶されている。また、右上の他のオクターブ(音域)には、左縁のC5からE6の各音高から当該他のオクターブ(音域)への共鳴に応じたレベルデータL0C、L1C、…が記憶されている。
図25において、横の行が左縁の各音高が他に与えるレベルデータを示す。例えば、左縁上から五番目のF5の音高は、上縁のC5からE6の各音高に対する当該F5からの共鳴に応じたレベルデータL40、L41、…が記憶されている。また、左下の他のオクターブ(音域)は、上縁のC5からE6の各音高に対する当該他のオクターブ(音域)からの共鳴に応じたレベルデータLC0、LC1、…が記憶されている。
これらのうち、同じ音高同士、及び同じ他のオクターブ(音域)同士には共鳴はないので「0」となっている。しかし場合によって「0」以外の値が記憶されてもよい。このような144+25個のレベルデータは他のオクターブについても多重的に記憶されている。このようなレベルデータLは上記共鳴度を表す。
このような共鳴のレベルデータLは、キーオン中/発音中であれば、上記レベルデータLが読み出されて使用されるが、キーオフ中/消音中でも、上記レベルデータLが読み出されて使用される。しかし、上記レベルデータLが「0」でなくても、キーオフ中/消音中には、「0」とされてもよい。
この場合、共鳴レベルROM164の各レベルデータに対して、乗算器によって、キーオン信号=1、キーオフ信号=0が乗算される。これにより、キーオフ中/消音中であれば、共鳴はされない。このような共鳴のオン/オフの切り換えが、キーオン/オフ、発音/消音によって切り換えられることになる。
図26の共鳴ディレイRAM161には、1ワード32ビットの共振共鳴信号が2048ワード記憶される。これらの共鳴では、上記C5からE6までの12音分の共鳴状況の共振共鳴信号と他のオクターブとの共鳴状況の共振共鳴信号とが処理される。このうち1つの音高については128ワードが割り当てられ、C5からE6までの12音分と他のオクターブにつき、他の128音との共鳴状態を示す共振共鳴信号が割り当てられる。
上記他のオクターブとの共鳴状況の共振共鳴信号は、他のオクターブつまり他のブロックからマルチプレクサ158へ送られてくる上述の鍵間共鳴信号である。このような他のオクターブ(音域)からの鍵間共鳴信号に基づいても、共鳴処理が実行される。しかも、この鍵間共鳴信号は上述の移動平均回路151で移動平均処理されている。
したがって、上記鍵間共鳴においては、異なる音域間(オクターブ間)で共鳴が実行され、しかもこの鍵間共鳴は上記移動平均処理されて実行されるので、急峻なエンベロープではなく緩やかなエンベロープによって、異なる音域間(オクターブ間)の共鳴が実現される。
したがって、上記共鳴は、複数の異なる音域相互の間で実行され、これらの音域相互の共鳴において上記移動平均処理が実行されるといえる。なお、このオクターブごとの共鳴は、3音ずつ、半オクターブ6音ずつ、9音ずつ、18音ずつ、2オクターブ24音ずつの音域ごとに実行されても良い。
なお、上記出力されるまたは入力される鍵間共鳴信号の一部または全部に対して、移動平均回路151を経由して移動平均処理が実行されてもよい。これにより、特定の音域間の共鳴における上記移動平均処理の内容は、他の音域間の共鳴における上記移動平均処理の内容とは異なるようにできる。
図26の式は、これらの各音高/鍵間の共鳴処理の演算式を示す。現時点における共振共鳴信号masitn(t)に対して上述のディレイデータDtn,i分前の共振共鳴信号masitn(t−Dtn,i)と上述のレベルデータLtn,iとが乗算され、これがC5からE6までのi=0から11までの12音分につき累算される。これが他鍵/他音高との共振共鳴信号masotn(t)となる。
(18)響板26を駆動させる回路群
図27は上記図20〜図26の第三実施例に付加される回路群であり、上記響板26を電磁駆動体/加振体などで振動させて音を響板26から放音させる回路群を示す。上記フォルマントフィルタバッファ132に入力される初期衝撃信号と、上記ゲインテーブル154に入力されるダンパーペダル61からの操作量データdとは、響板駆動信号生成回路170に入力されて響板駆動信号が生成される。
この響板駆動信号は響板駆動機構171に入力されて機械的振動が生成されて響板26(サウンドシステム45)に伝わり響板26から楽音が放音される。上記響板駆動機構171は上記電磁駆動体/加振体等であり、響板26に接合/接着され、それ自身は放音せず、上記響版駆動信号によって機械的振動を発生し、これにより響板26から楽音が放音される。
なお、響板駆動信号生成回路170には、上記図21の鍵間共鳴信号または1鍵3弦合成信号が入力されてもよい。これにより、上記共振処理され、移動平均処理され、共鳴処理された初期衝撃信号が、この響板駆動信号生成回路170に入力されて、当該初期衝撃信号に応じた楽音が当該響板26から放音されることになる。
図28は上記響板駆動信号生成回路170を示す。上記初期衝撃信号は、フォルマント補正回路176でフォルマントの時間長及びレベルが補正され、加算器177を経てディレイRAM178で遅延され、畳込演算回路180で畳込演算される。この演算結果は、乗算器179でダンパーペダル61からの操作量データdが乗算され、上記加算器177に帰還入力される。
これにより、初期衝撃信号に応じた共振がダンパーペダル61の操作量に応じた自己共振とされ、加算器177からの出力が響板駆動信号として、響板駆動機構171へ送られ、響板26から共振共鳴された楽音が放音される。この図28の回路は、上記ハーモニックディレイバッファ147、乗算累算器148、ハーモニックレベルメモリ149とほぼ同じ処理がなされ、これらの回路と置き換え可能である。
図29は上記響板駆動信号生成回路170の別の例を示す。上記初期衝撃信号は乗算器186及び加算器187を経て、上記響板駆動信号として出力される。乗算器186には、レベルデータが入力されて、初期衝撃信号のレベルが変更制御される。
上記乗算器179からの自己共振された共振共鳴信号は乗算器188を経て上記加算器187に入力される。これにより、初期衝撃信号に自己共振された共振共鳴信号が加算合成される。上記乗算器188にはレベルデータが入力されて、初期衝撃信号に加算合成される共振共鳴信号の割合が変更制御される。
図30は、上記畳込演算回路180を示す。上記ディレイRAM178からの自己共振される初期衝撃信号は、多数の遅延器191…を経て順次遅延される。これら各遅延器191…の各出力は、それぞれ乗算器192…を経て、加算器193…で順次加算(累算)されていく。乗算器192…には、レベルを変更制御するための係数が入力される。この畳込演算回路180はFIR型であるが、IIR型でもよい。
(19)響板26を駆動させる回路群
図31は響板26(サウンドシステム45)を駆動させる回路群の別の実施例を示し、1鍵3弦による響板駆動信号を生成する例を示す。上記初期衝撃信号は3つの響板駆動信号生成回路170…にそれぞれ入力され、3つの響板駆動信号が出力される。この3つの響板駆動信号は加算器196で合成され、上記響板駆動機構171へ送られる。この3つの響板駆動信号生成回路170には、上記ダンパーペダル61からの操作量データdも入力される。
この響板駆動信号生成回路170は、上記図28、図29に示される。3つの響板駆動信号生成回路170では、1鍵3弦に対応して異なる自己共振処理、つまり異なる畳込演算が実行される。これにより、1鍵3弦に対応した異なる3つの自己共振が実行され、この異なる自己共振に応じた響板26の駆動及び放音が実行される。
図32は響板26(サウンドシステム45)を駆動させる回路群のさらに別の実施例を示し、多数の鍵/音高による響板駆動信号を生成する例を示す。上記初期衝撃信号は各音高/各鍵ごとに設けられた響板駆動信号生成回路170…にそれぞれ入力され、それぞれ響板駆動信号が出力される。この響板駆動信号生成回路170…それぞれには、上記ダンパーペダル61からの操作量データdも入力される。
この各音高/各鍵ごとの響板駆動信号は、複合マルチプレクサ197で複数の響板駆動機構171…に振り分けられて出力される。複合マルチプレクサ197はマルチプレクサを複数組み合わせたもので、複数の入力を複数の所望の出力とするものである。これら図31及び図32の響板駆動信号生成回路170…は相互に出力/入力を送受してもよく、これにより1鍵3弦の各弦間の共鳴、各音高/各鍵間の共鳴が実現される。
(20)他の実施の形態
本件発明は上記実施例に限定されず、本件発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、図21の各回路の一部が省略されて、自己共振の一部または全部が無くてもよいし、弦共振の一部または全部が無くてもよいし、鍵/音高間共鳴の一部または全部が無くてもよいし、音域間共鳴の一部または全部が無くてもよいし、弦共振と鍵/音高間共鳴と音域間共鳴との相互共鳴の一部または全部が無くてもよい。
図21の各回路の間の任意の個所に、乗算器、加算器または演算器が挿入され、これら乗算器、加算器または演算器に、音高、音色、タッチ、ダンパーペダルの操作量が入力されてもよい。これにより、移動平均処理における移動平均長、移動平均処理された初期衝撃信号のレベルは、音高、音色、タッチ、ダンパーペダルの操作量によって変化される。
上記移動平均回路90…、151…は、図16に示される以外の回路でもよく、移動平均処理できれば他の回路でもよいし、コンピュータプログラムによっても実現可能である。
移動平均処理における移動平均長は、音高、音色、タッチのほか、以下の音楽的ファクタ(因子)情報に基づいて変更されても良い。例えば、発音経過時間情報、エフェクト情報、演奏分野情報、発音数情報、共鳴度情報などである。発音時間情報は楽音の発音開始(キーオン)からの経過時間を示す。演奏分野情報は、演奏パート情報、楽音パート情報、楽器パート情報等を示し、例えばメロディ、伴奏、コード、ベース、リズム、MIDI等に対応したり、または上鍵盤、下鍵盤、足鍵盤、ソロ鍵盤、MIDI等に対応したりしている。
エフェクト情報は、ビブラート、ポルタメント、グライド、グリッサンド、トリル、トレモロ、マンドリンなどの音高変更エフェクトまたは音量変更エフェクト、コーラス、エコー、リバーブなどの残響エフェクト、サスティーン、残響などの発音時間変更エフェクト、高調波成分含有率変更、楽音波形変更、エンベロープ波形変更、エンベロープレベル変更、エンベロープスピード変更、エンベロープレート変更などの音色変更エフェクト、タッチ感度、アフタータッチ、イニシャルタッチ、ベロシティなどのタッチ変更エフェクト、共鳴のエフェクトなどである。
発音数情報は、同時に発音している鍵/音高の数を示し、アサインメントメモリ(図示せず)内のキーオンが「1」になっているチャンネル数、または上記図4の鍵エンコーダー37からの鍵操作量データが「0」ではないものの数がカウントされる。
共鳴度情報は、上記図25の共鳴レベルROM164内の、キーオン中/発音中または全ての音高どうしのレベルデータLが累算されて、これが移動平均長Nに乗算等の演算がされ、さらに逆数1/Nにされ、上記移動平均回路90の乗算器93に入力される。これにより、共鳴度に応じて移動平均長Nが変更される。
また共鳴度情報は、上記図24の共鳴ディレイROM162内の、キーオン中/発音中または全ての音高どうしのディレイデータDが累算されて、これが移動平均長Nに乗算等の演算がされ、さらに逆数1/Nにされ、上記移動平均回路90の乗算器93に入力される。これにより、共鳴度に応じて移動平均長Nが変更される。
ダンパーペダル61、ダンパー角度センサー62、ダンパーエンコーダー63、ダンパー微細動発信器64は、全鍵11…につき1つではなく、分割された鍵域、例えば上鍵盤、下鍵盤、足鍵盤、ソロ鍵盤ごとに、設けられてもよい。
また、鍵角度センサー36、鍵エンコーダー37は、鍵11…ごとではなく、複数の鍵11…ごと、鍵域ごと、オクターブごとにまとめられてもよい。この場合、この複数鍵11…、鍵域またはオクターブごとの中で一番先に操作された鍵の操作量または一番大きく操作された鍵の操作量が、鍵操作量データとして取り込まれる。
上記共振回路20は、図3、図5に示す以外の構成の回路が用いられてもよい。この場合でも、ダンパーペダル61の操作または各鍵11…の操作に応じて、共振される周波数帯域が変更されるし、ダンパーペダル61の操作または各鍵11…の操作に応じて帰還される電気信号/共振信号/初期衝撃信号の大きさは変更される。
上記共振回路20はデジタル回路ではなくアナログ回路でもよい。この場合サンプリング回路41、A−D変換器42、D−A変換器44などは省略される。共振回路20は、電気信号/共振信号/初期衝撃信号を帰還させて共振させるほか、帰還させないで共振させるタイプでもよく、IIRタイプ、再帰システムのほか、FIRタイプ、非再帰システムなど、どのようなタイプでもよい。
場合によって、鍵11…またはダンパーペダル61のいずれか一方はなくてもよい。鍵盤操作量データまたはダンパー操作量データのいずれか一方も省略されても良い。鍵盤操作量データ及びダンパー操作量データからなる操作量データdは、共振される周波数帯域を変更するだけに設定されてもよいし、電気信号/共振信号/初期衝撃信号の大きさを変更するだけに設定されてもよい。
上記共振回路20及びクリッピング回路46は、上記高音域まですべて設けられてもよいし、この高音域の共振回路20では、他の中音域・低音域と同様に、鍵11またはダンパーペダル61のオン操作またはオフ操作によって、上記鍵操作量データまたはダンパー操作量データが変更されてもよいし、この共振回路20の共振される周波数帯域または/及び共振信号/帰還電気信号/初期衝撃信号の大きさが変更されてもよい。この高音域の共振回路20のクリッピング回路29、76は省略されてもよい。
また、所定音高より高音、例えば高音側1オクターブまたは2オクターブの鍵域では、鍵11の発音操作または消音操作によって、上記鍵操作量データが変更され、この共振回路20の共振される周波数帯域または/及び共振信号/帰還電気信号/初期衝撃信号の大きさは変更されてもよい。
図4のコンバータ39には、上記音楽的ファクタデータは入力されなくてもよい。これにより、当該鍵11の音高、当該鍵11のタッチ、音色、発音経過時間、発音中の他の鍵との共鳴度、鍵盤装置全体の共鳴度状況に応じて、共振回路20の共振される周波数帯域または/及び共振信号/帰還電気信号/初期衝撃信号の大きさは変更されなくなる。また図4のコンバータ39には、ダンパー微細動信号は入力されなくてもよい。これにより、ダンパーの微細動による共鳴変化は無くなる。
各鍵11…の共振回路20…からの各電気信号/共振信号/初期衝撃信号は、他の鍵11…の各共振回路20…の各電気信号/共振信号/初期衝撃信号に合成されなくてもよい。これにより、鍵11…同士、弦同士の共振・共鳴の要素はなくなる。上記鍵エンコーダー37または/及びダンパーエンコーダー33からの信号はオン“1”オフ“0”のみで、中間の値は除外されても良い。これにより、ダンパーペダル61、鍵11…のハーフ操作状態/中間操作状態のデータはなくなるし、ダンパーの細かい微妙な変化の実現もなくなる。
上記1つの鍵の3つの共振回路20…のコンバータ31、72、遅延器32、73は、1つの共振回路20…については省略されるが、3つの共振回路20…すべてにコンバータ31、72、遅延器32、73が設けられてもよい。これにより、1つの初期衝撃信号から大きさ及び位相/遅延量の異なる3つの初期衝撃信号が形成/生成される。このようなコンバータ31、72、遅延器32、73に、さらにフィルタが付加されてもよい。
これにより、3つの初期衝撃信号の周波数特性/波形形状もそれぞれ異なることになる。このフィルタのフィルタ係数/パラメータは、上記コンバータ31、72、遅延器32、73へのパラメータと同様に音楽的ファクタによって変更されてもよい。これにより、3つの初期衝撃信号の周波数特性/波形形状のずれ/差が上記音楽的ファクタに応じて変化する。
図2のクリッピング回路46、図3のクリッピング回路29、図5のクリッピング回路76の一部または全部は省略されてもよい。図2のクリッピング回路46は、共振回路20とA−D変換器42との間などに設けられてもよい。図3のクリッピング回路29は、コンバータ25とフィルタ24との間、フィルタ24と遅延器23との間、遅延器23と加算器22との間などに設けられてもよい。
図5のクリッピング回路76は、遅延器55と加算器52との間、遅延器58と加算器54との間、加算器57と遅延器58との間、コンバータ53またはコンバータ59と加算器54との間、コンバータ56またはコンバータ71と加算器57との間、コンバータ51と加算器52との間、コンバータ53と加算器52との間などに設けられてもよい。
ハンマーHは、被衝撃体1に衝撃を与えることができれば、ハンマーのほか、木槌などの槌、撥(ばち)、桴(ばち)、ステック、シリンダー内の落下する錘、振り子の錘などでもよい。上記帰還される初期衝撃号の共振される周波数帯域は、上記各鍵11…の発音操作またはダンパーペダル61のオン操作によって、低音域に向かって広がり、当該各鍵11…の消音操作またはダンパーペダル61のオフ操作によって、高音域に向かって狭められてもよい。
また、上記帰還される初期衝撃号の共振される周波数帯域は、上記各鍵11…の発音操作またはダンパーペダル61のオン操作によって、中音域から低音域及び高音域に向かって広がり、当該各鍵11…の消音操作またはダンパーペダル61のオフ操作によって、中音域に向かって狭められてもよい。上記帰還される初期衝撃号の共振される周波数帯域は、上記各鍵11…の発音操作またはダンパーペダル61のオン操作によって、中音域に向かって狭められ、当該各鍵11…の消音操作またはダンパーペダル61のオフ操作によって、中音域から低音域及び高音域に向かって広がってもよい。
上述のように、上記増減を緩やかにするまたはクリッピングする所定値(閾値)は、上記ダンパーペダル61の上記オン操作のときの大きさと上記オフ操作のときの大きさとの中間とされ、また、上記帰還され共振される初期衝撃信号の大きさは、ダンパーペダル61の上記オン操作のときの大きさと上記オフ操作のときの大きさとの中間とされ、また、上記帰還される初期衝撃信号の共振される周波数帯域は、ダンパーペダル61の上記オン操作のときの帯域と上記オフ操作のときの帯域の中間とされる。この中間は、完全な平均値を指すのではなく、一方に片寄っていたり、他方に片寄っていたりする。
上記図6及び図12の共振の「大きさ」は、減衰量、減衰量の絶対値、信号のレベルと置き換えてもよい。被衝撃体/被打撃体/発音体としては弦楽器の弦、管楽器の管、各種打楽器の被衝撃体/被打撃体/発音体でもよい。
本発明の鍵盤装置は、アップライトピアノのほか、グランドピアノ、オルガン、電子ピアノ、電子オルガン、チェンバロなどの鍵盤楽器でも適用される。上記鍵11…は、電子弦楽器の弦、電子吹奏(管)楽器の管、電子打楽器(パッド等)の打、コンピュータのキーボードで代用されてもよい。
また、鍵11…をソレノイドなどで駆動する自動演奏ピアノ、自動演奏鍵盤楽器でも本発明は実現できる。このような自動演奏ピアノ、自動演奏鍵盤楽器では、自動演奏情報に基づいて、ソレノイドなどで鍵11…またはアクション機構が駆動するが、このような自動演奏でも上記共鳴が実現される。
本発明は電子楽器またはコンピュータなどにおいて実施され得る。上記各図の回路の機能はソフトウエア(フローチャート)によって実施されても良いし、上記各図のフローチャートの機能はハードウエア(回路)によって実施されてもよい。各請求項記載の発明は、当該発明をコンピュータに実行させるコンピュータプログラムを記憶した媒体、コンピュータプログラムの通信装置(方法)、楽音発生装置(方法)、楽音制御装置(方法)としても実現可能である。上記図2、図3、図4、図5の回路の全部または一部は省略されてもよい。
図1の機構の一部、図2の全体回路の一部、図3及び図5の共振回路20の一部、図4の操作量データ回路30の一部、図4のダンパー操作量回路60の一部、操作量データ回路30の一部または全部、ダンパー操作量回路60の一部または全部、クリッピング回路46の一部または全部、被衝撃体1の一部または全部、衝撃変換素子21の一部または全部、ダンパー微細動発信器64の一部または全部、ダンパー微細動信号の一部または全部、ダンパー操作量データの一部または全部、鍵操作量データの一部または全部は省略されてもよい。
(21)他の発明の効果
[1]複数の鍵の各鍵に対応して設けられた、棒状または板状の複数の被衝撃体であって、当該各鍵の発音操作によってそれぞれ衝撃が与えられ、周期的な繰り返しの振動に入る前にすぐに減衰し、周期的な繰り返しの振動がほとんど無い初期衝撃を発生する複数の被衝撃体を備えた鍵盤装置において、 上記鍵ごとに、この被衝撃体からの初期衝撃を電気信号に変換し、この変換された初期衝撃信号自身につき共振を付加する処理を行って移動平均処理を行い、 この移動平均処理された信号を他の異なる音高の鍵の弦との間における共鳴を付加する処理を行って出力することを特徴とする鍵盤制御方法。
[2]複数の鍵の各鍵に対応して設けられた、棒状または板状の複数の被衝撃体であって、当該各鍵の発音操作によってそれぞれ衝撃が与えられ、周期的な繰り返しの振動に入る前にすぐに減衰し、周期的な繰り返しの振動がほとんど無い初期衝撃を発生する複数の被衝撃体を備えた鍵盤装置において、 上記鍵ごとに、この被衝撃体からの初期衝撃を電気信号に変換し、この変換された初期衝撃信号自身につき共振を付加する処理を行って移動平均処理を行う移動平均手段と、 この移動平均処理された信号を他の異なる音高の鍵の弦との間における共鳴を付加する共鳴手段と、を備えたことを特徴とする鍵盤装置。
[3]上記移動平均処理における移動平均長は、音高、音色、タッチ、共鳴度に応じて変更されることを特徴とする請求項2記載の鍵盤装置。これにより、音高、音色、タッチ、共鳴度に応じて移動平均長が変わり、初期衝撃信号の急峻なエンベロープを緩やかにする度合いを音高、音色、タッチ、共鳴度に応じて変化させることができる。
[4]上記移動平均処理における移動平均長は、ダンパーペダルの操作量によって変更されることを特徴とする請求項2または3記載の鍵盤装置。これにより、ダンパーペダルの操作量に応じて移動平均長が変わり、初期衝撃信号のエンベロープを緩やかにする度合いをダンパーペダルの操作量に応じて変化させることができる。
[5]上記移動平均処理における移動平均処理された初期衝撃信号のレベルは、音高、音色、タッチに応じて変更されることを特徴とする請求項2、3または4記載の鍵盤装置。これにより、音高、音色、タッチに応じて移動平均処理された初期衝撃信号のレベルを変えることができる。
[6]上記共振されて移動平均処理された初期衝撃信号のレベルは、ダンパーペダルの操作量によって変更されることを特徴とする請求項2、3、4または5記載の鍵盤装置。これにより、ダンパーペダルの操作量に応じて移動平均処理された初期衝撃信号のレベルを変えることができる。
[7]上記移動平均処理された初期衝撃信号は、機械的振動に変換され、この機械的振動が響板に伝えられて、響板から楽音が放音されることを特徴とする請求項2、3、4、5または6記載の鍵盤装置。これにより、急峻なエンベロープが緩やかにされた初期衝撃信号によって響板から楽音が放音されることができる。
[8]特定の弦の自己共振における移動平均処理の内容は、他の弦の自己共振における移動平均処理の内容とは異なることを特徴とする請求項2、3、4、5、6または7記載の鍵盤装置。これにより、特定の弦の自己共振におけるエンベロープを緩やかにする度合いを、他の自己共振におけるエンベロープから際立たせることができる。
[9]特定の弦間の共鳴における移動平均処理の内容は、他の弦間の共鳴における移動平均処理の内容とは異なることを特徴とする請求項2、3、4、5、6または7記載の鍵盤装置。これにより、特定の弦の自己共振におけるエンベロープを緩やかにする度合いを、他の自己共振におけるエンベロープから際立たせることができる。これにより、特定の弦間の共鳴におけるエンベロープを緩やかにする度合いを、他の弦間の共鳴におけるエンベロープから際立たせることができる。
[10]特定の弦から他の音高/他の鍵への共鳴における移動平均処理の内容は、他の弦または他の音高/鍵の共振/共鳴における移動平均処理の内容とは異なることを特徴とする請求項2、3、4、5、6または7記載の鍵盤装置。これにより、特定の弦から他の音高/他の鍵への共鳴におけるエンベロープを緩やかにする度合いを、他の弦または他の音高/鍵の共振/共鳴におけるエンベロープから際立たせることができる。
[11]他の音高/他の鍵から特定の弦への共鳴における移動平均処理の内容は、他の弦または他の音高/鍵の共振/共鳴における移動平均処理の内容とは異なることを特徴とする請求項2、3、4、5、6または7記載の鍵盤装置。これにより、他の音高/他の鍵から特定の弦への共鳴におけるエンベロープを緩やかにする度合いを、他の弦または他の音高/鍵の共振/共鳴におけるエンベロープから際立たせることができる。
[12]特定の音高/鍵間の共鳴における上記移動平均処理の内容は、他の音高/鍵間の共鳴における上記移動平均処理の内容とは異なることを特徴とする請求項2、3、4、5、6または7記載の鍵盤装置。これにより、特定の音高/鍵間の共鳴におけるエンベロープを緩やかにする度合いを、他の音高/鍵間の共鳴におけるエンベロープから際立たせることができる。
[13]特定の音高/鍵の初期衝撃信号における移動平均処理の内容は、他の音高/鍵/弦の初期衝撃信号または共鳴における移動平均処理の内容とは異なることを特徴とする請求項2、3、4、5、6または7記載の鍵盤装置。これにより、特定の音高/鍵の初期衝撃信号におけるエンベロープを緩やかにする度合いを、他の音高/鍵/弦の初期衝撃信号または共鳴におけるエンベロープから際立たせることができる。
[14]特定の弦の初期衝撃信号における移動平均処理の内容は、他の弦/音高/鍵の初期衝撃信号または共鳴における移動平均処理の内容とは異なることを特徴とする請求項2、3、4、5、6または7記載の鍵盤装置。これにより、特定の弦の初期衝撃信号におけるエンベロープを緩やかにする度合いを、他の弦/音高/鍵の初期衝撃信号または共鳴におけるエンベロープから際立たせることができる。
[15]特定の音域間の共鳴における上記移動平均処理の内容は、他の音域間の共鳴における上記移動平均処理の内容とは異なることを特徴とする請求項2、3、4、5、6または7記載の鍵盤装置。これにより、特定の音域間の共鳴におけるエンベロープを緩やかにする度合いを、他の音域間の共鳴におけるエンベロープから際立たせることができる。
[16]上記共鳴は、複数の異なる音域相互の間で実行され、これらの音域相互の共鳴の一部または全部において上記移動平均処理が実行されることを特徴とする請求項2、3、4、5、6または7記載の鍵盤装置。これにより、特定の音域間の共鳴におけるエンベロープを緩やかにする度合いを、他の音域間の共鳴におけるエンベロープから際立たせることができる。
[17]上響板に取り付けられた電磁駆動体であって、それ自身は放音せず、取り付けた響板を機械的に振動させて響板から放音させる電磁駆動体に対して、 上記共振処理され、移動平均処理され、共鳴処理された初期衝撃信号が入力されて、当該初期衝撃信号に応じた楽音が当該響板から放音されることを特徴とする請求項2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15または16記載の鍵盤装置。これにより、急峻なエンベロープが緩やかにされた初期衝撃信号によって響板から楽音が放音されることができる。
[21]複数の鍵の各鍵に対応して設けられた、棒状または板状の複数の被衝撃体であって、当該各鍵の発音操作によってそれぞれ衝撃が与えられ、周期的な繰り返しの振動に入る前にすぐに減衰し、周期的な繰り返しの振動がほとんど無い初期衝撃を発生する複数の被衝撃体を備えた鍵盤装置において、 上記鍵ごとに、この被衝撃体からの初期衝撃を電気信号に変換して、この初期衝撃信号を帰還させて共振させ、この共振された初期衝撃信号を当該鍵の発音操作に応じた楽音として出力させるとともに、この初期衝撃信号に遅延かけるまたは大きさを変えて別の初期衝撃信号を生成し、この別の初期衝撃信号についても帰還させて共振させ、これら共振される初期衝撃信号相互についても一部または全部を合成して、複数の初期衝撃信号相互についても共振させることを特徴とする鍵盤制御方法。
[22]複数の鍵の各鍵に対応して設けられた、棒状または板状の複数の被衝撃体であって、当該各鍵の発音操作によってそれぞれ衝撃が与えられ、周期的な繰り返しの振動に入る前にすぐに減衰し、周期的な繰り返しの振動がほとんど無い初期衝撃を発生する複数の被衝撃体と、 上記鍵ごとに、この被衝撃体からの初期衝撃を電気信号に変換し、この初期衝撃信号を帰還させて共振させる、上記各鍵に対応して設けられた共振手段であって、 上記鍵ごとに、この被衝撃体からの初期衝撃を電気信号に変換して、この初期衝撃信号を帰還させて共振させ、この共振された初期衝撃信号を当該鍵の発音操作に応じた楽音として出力させるとともに、この初期衝撃信号に遅延かけるまたは大きさを変えて別の初期衝撃信号を生成し、この別の初期衝撃信号についても帰還させて共振させ、これら共振される初期衝撃信号相互についても一部または全部を合成して、複数の初期衝撃信号相互についても共振させる共振手段と、を備えたことを特徴とする鍵盤装置。
[23]上記帰還される初期衝撃号の共振される周波数帯域は、上記各鍵の発音操作によって、高音域に向かって広がり、当該各鍵の消音操作によって、低音域に向かって狭められることを特徴とする請求項22記載の鍵盤装置。これにより、共振/共鳴できる周波数帯域が、各鍵の発音操作/消音操作によって変化させることができる。
[24]上記共振手段における、1つの鍵において生成される複数の初期衝撃信号の共振周波数は、当該共振周波数の100分の1以下または10000分の1乃至50ほどずれていることを特徴とする請求項22または23記載の鍵盤装置。これにより、1つの鍵におけるうなり効果を実現できる。
[25]上記請求項4におけるずれは、音楽的ファクタ、当該鍵の音高、当該鍵のタッチ、音色、発音経過時間、当該鍵と発音中の他の鍵との共鳴度、鍵盤装置全体の共鳴度に応じて変更制御されることを特徴とする請求項24記載の鍵盤装置。これにより、上記うなり効果の内容を音楽的ファクタに応じて変化させることができる。
[26]上記鍵盤装置の響板、外板、枠またはケースからの振動信号を帰還して共振させ、この共振信号と上記初期衝撃信号とにつき、これらの信号の一部または全部を合成して共振させることを特徴とする請求項22、23、24または25記載の鍵盤装置。これにより、響板、外板、枠またはケースというエンベロープを形成する空間共振信号/空間共鳴信号と弦などの被衝撃体共振信号/被衝撃体共鳴信号/発音体共振信号/発音体共鳴信号と共振/共鳴が実現される。
[27]上記各鍵の共振手段からの各初期衝撃信号は、他の鍵の各共振手段の各初期衝撃信号に合成され、所定音高より高音では、当該高音の初期衝撃信号が、他の音高の各初期衝撃信号に全て常時合成され、上記ダンパーペダルの操作量、ダンパーペダルのハーフペダル、他の鍵の操作量、上記初期衝撃信号の大きさの細かい変化、共鳴度などの音楽的ファクタなどの変化があっても、この合成量は変化せず、所定音高より高音では、当該高音の初期衝撃信号に、他の音高の各初期衝撃信号が全て常時合成されることを特徴とする請求項22、23、24、25または26記載の鍵盤装置。これにより、ダンパーペダルのハーフペダル状態などの共鳴を実現できる。また、部分的にダンパーのない鍵の構造の共鳴を実現できる。
[31]複数の鍵の各鍵に対応して設けられた、棒状または板状の複数の被衝撃体であって、当該各鍵の発音操作によってそれぞれ衝撃が与えられ、周期的な繰り返しの振動に入る前にすぐに減衰し、周期的な繰り返しの振動がほとんど無い初期衝撃を発生する複数の被衝撃体を備えた鍵盤装置において、 上記鍵ごとに、この被衝撃体からの初期衝撃を電気信号に変換し、この初期衝撃信号を帰還させて共振させ、この共振された初期衝撃信号を当該鍵の発音操作に応じた楽音として出力させ、 この帰還される初期衝撃信号の大きさを、ダンパーペダルのオン操作によって大きくし、当該ダンパーペダルのオフ操作によって小さくすることを特徴とする鍵盤制御方法。
[32]複数の鍵の各鍵に対応して設けられた、棒状または板状の複数の被衝撃体であって、当該各鍵の発音操作によってそれぞれ衝撃が与えられ、周期的な繰り返しの振動に入る前にすぐに減衰し、周期的な繰り返しの振動がほとんど無い初期衝撃を発生する複数の被衝撃体を備えた鍵盤装置において、 上記鍵ごとに、この被衝撃体からの初期衝撃を電気信号に変換し、この初期衝撃信号を帰還させて共振させ、この共振された初期衝撃信号を当該鍵の発音操作に応じた楽音として出力させ、 この帰還される初期衝撃信号の共振される周波数帯域を、上記各鍵の発音操作によって、高音域に向かって広がり、当該各鍵の消音操作によって、低音域に向かって狭めることを特徴とする鍵盤制御方法。
[33]複数の鍵の各鍵に対応して設けられた、棒状または板状の複数の被衝撃体であって、当該各鍵の発音操作によってそれぞれ衝撃が与えられ、周期的な繰り返しの振動に入る前にすぐに減衰し、周期的な繰り返しの振動がほとんど無い初期衝撃を発生する複数の被衝撃体を備えた鍵盤装置において、 上記鍵ごとに、この被衝撃体からの初期衝撃を電気信号に変換し、この初期衝撃信号を帰還させて共振させ、この共振された初期衝撃信号を当該鍵の発音操作に応じた楽音として出力させ、この帰還されて共振される初期衝撃信号の大きさ/レベルを、所定値以上では増減を緩やかにするまたはクリッピングすることを特徴とする鍵盤制御方法。
[34]複数の鍵の各鍵に対応して設けられた、棒状または板状の複数の被衝撃体であって、当該各鍵の発音操作によってそれぞれ衝撃が与えられ、周期的な繰り返しの振動に入る前にすぐに減衰し、周期的な繰り返しの振動がほとんど無い初期衝撃を発生する複数の被衝撃体と、 この被衝撃体からの初期衝撃を電気信号に変換し、この初期衝撃信号を帰還させて共振させ、この共振された初期衝撃信号を当該鍵の発音操作に応じた楽音として出力させる、上記各鍵に対応して設けられた共振手段と、 この帰還される初期衝撃信号の大きさを、ダンパーペダルのオン操作によって大きくし、当該ダンパーペダルのオフ操作によって小さくする制御手段と、を備えたことを特徴とする鍵盤装置。
[35]複数の鍵の各鍵に対応して設けられた、棒状または板状の複数の被衝撃体であって、当該各鍵の発音操作によってそれぞれ衝撃が与えられ、周期的な繰り返しの振動に入る前にすぐに減衰し、周期的な繰り返しの振動がほとんど無い初期衝撃を発生する複数の被衝撃体と、 この被衝撃体からの初期衝撃を電気信号に変換し、この初期衝撃信号を帰還させて共振させ、この共振された初期衝撃信号を当該鍵の発音操作に応じた楽音として出力させる、上記各鍵に対応して設けられた共振手段と、 この帰還される初期衝撃信号の共振される周波数帯域は、ダンパーペダルのオン操作によって、高音域に向かって広がり、当該ダンパーペダルのオフ操作によって、低音域に向かって狭める制御手段と、を備えたことを特徴とする鍵盤装置。
[36]複数の鍵の各鍵に対応して設けられた、棒状または板状の複数の被衝撃体であって、当該各鍵の発音操作によってそれぞれ衝撃が与えられ、周期的な繰り返しの振動に入る前にすぐに減衰し、周期的な繰り返しの振動がほとんど無い初期衝撃を発生する複数の被衝撃体と、 この被衝撃体からの初期衝撃を電気信号に変換し、この初期衝撃信号を帰還させて共振させ、この共振された初期衝撃信号を当該鍵の発音操作に応じた楽音として出力させる、上記各鍵に対応して設けられた共振手段と、この帰還されて共振される初期衝撃信号の大きさ/レベルを、所定値以上では増減を緩やかにするまたはクリッピングする制御手段と、を備えたことを特徴とする鍵盤装置。
[37]複数の鍵の各鍵に対応して設けられた、棒状または板状の複数の被衝撃体であって、当該各鍵の発音操作によってそれぞれ衝撃が与えられ、周期的な繰り返しの振動に入る前にすぐに減衰し、周期的な繰り返しの振動がほとんど無い初期衝撃を発生する複数の被衝撃体と、 この被衝撃体からの初期衝撃を電気信号に変換し、この初期衝撃信号を帰還させて共振させ、この共振された初期衝撃信号を当該鍵の発音操作に応じた楽音として出力させる、上記各鍵に対応して設けられた共振手段と、 この帰還される初期衝撃信号の大きさを、上記各鍵の発音操作によって大きくし、当該各鍵の消音操作によって小さくする制御手段と、を備えたことを特徴とする鍵盤装置。これにより、鍵操作による共鳴状態の変化を実現でき、しかもこの実現を初期衝撃信号(電気信号)上において実現でき、鍵のオン操作ばかりでなく、オフ操作に応じた共振/共鳴の変化が実現される。
[38]複数の鍵の各鍵に対応して設けられた、棒状または板状の複数の被衝撃体であって、当該各鍵の発音操作によってそれぞれ衝撃が与えられ、周期的な繰り返しの振動に入る前にすぐに減衰し、周期的な繰り返しの振動がほとんど無い初期衝撃を発生する複数の被衝撃体と、 この被衝撃体からの初期衝撃を電気信号に変換し、この初期衝撃信号を帰還させて共振させ、この共振された初期衝撃信号を当該鍵の発音操作に応じた楽音として出力させる、上記各鍵に対応して設けられた共振手段と、 この帰還される初期衝撃号の共振される周波数帯域は、上記各鍵の発音操作によって、高音域に向かって広がり、当該各鍵の消音操作によって、低音域に向かって狭める制御手段と、を備えたことを特徴とする鍵盤装置。
以上により、被衝撃体で弦の発音をシミュレーションする鍵盤装置において、ダンパーの機能を実現でき、またはダンパーによる共鳴状態の変化を実現でき、しかもこの実現を初期衝撃信号(電気信号)上において実現できる。また、被衝撃体で弦の初期衝撃をシミュレーションする鍵盤装置において、鍵操作による共鳴状態の変化を実現でき、しかもこの実現を初期衝撃信号(電気信号)上において実現でき、鍵のオン操作/オフ操作に応じた共振/共鳴の変化が実現される。
[39]上記請求項34記載の被衝撃体および各手段、上記請求項35記載の被衝撃体および各手段、上記請求項36記載の被衝撃体および各手段を、上記請求項37記載の被衝撃体および各手段、上記請求項38記載の被衝撃体および各手段、のいずれか2組以上を備えたことを特徴とする鍵盤装置。これにより、共鳴内容を共鳴信号の大きさの制御と共振する周波数帯域の制御と初期衝撃信号及び共振信号のクリッピング値の変化を複合的に実現できる。
[40]上記帰還されて共振される初期衝撃信号の大きさ/レベルを、所定値以上では増減を緩やかにするまたはクリッピングし、 所定音高より高音では、 この所定値以上で増減を緩やかにするまたはクリッピングすることは行われず、 または上記共振される周波数帯域は、ダンパーペダルのオン操作またはオフ操作または当該鍵の発音操作または消音操作によっては変更されず、 または帰還される初期衝撃信号の大きさはダンパーペダルのオン操作またはオフ操作または当該鍵の発音操作または消音操作によっては変更されないことを特徴とする請求項34、35、36、37、38または39記載の鍵盤装置。これにより、部分的にダンパーのない鍵の構造の共鳴を実現できる。
[41]上記帰還されて共振される初期衝撃信号の大きさ/レベルを、所定値以上では増減を緩やかにするまたはクリッピングし、 上記増減を緩やかにするまたはクリッピングする所定値、上記初期衝撃信号の共振される周波数帯域の変化、または上記帰還される初期衝撃信号の大きさは細かく変化しており、 この細かい変化の周波数は、上記鍵盤装置の共鳴周波数に対応している、または各鍵の最低音高の周波数から最高音高の周波数のほぼ間にあることを特徴とする請求項34、35、36、37、38、39または40記載の鍵盤装置。これにより、ダンパーが微細振動している状態の共鳴を実現でき、しかも共鳴の周期を実際の発音楽音の周波数に対応したものにできる。
[42]上記帰還されて共振される初期衝撃信号の大きさ/レベルを、所定値以上では増減を緩やかにするまたはクリッピングし、 上記ダンパーペダルは上記オン操作と上記オフ操作との中間のハーフペダル操作も可能であり、 このハーフペダル操作を示す情報に基づいて、 上記増減を緩やかにするまたはクリッピングする所定値を、当該ダンパーペダルの上記オン操作のときの大きさと上記オフ操作のときの大きさとの中間とする、 または上記帰還される初期衝撃信号の大きさを、当該ダンパーペダルの上記オン操作のときの大きさと上記オフ操作のときの大きさとの中間とする、 または上記帰還される初期衝撃信号の共振される周波数帯域を、当該ダンパーペダルの上記オン操作のときの帯域と上記オフ操作のときの帯域の中間とすることを特徴とする請求項34、36、38、39、40または41記載の鍵盤装置。これにより、ダンパーペダルのハーフペダル状態などの共鳴を実現できる。
[43]上記各鍵の共振手段からの各初期衝撃信号は、他の鍵の各共振手段の各初期衝撃信号に合成され、 所定音高より高音では、当該高音の初期衝撃信号が、他の音高の各初期衝撃信号に全て常時合成され、上記ダンパーペダルの操作量、ダンパーペダルのハーフペダル、他の鍵の操作量、上記初期衝撃信号の大きさの細かい変化、共鳴度などの音楽的ファクタなどの変化があっても、この合成量は変化せず、 所定音高より高音では、当該高音の初期衝撃信号に、他の音高の各初期衝撃信号が全て常時合成されることを特徴とする請求項34、35、36、37、38、39、40、41または42記載の鍵盤装置。これにより、複数の鍵/弦相互の共鳴を実現できる。
[44]上記帰還されて共振される初期衝撃信号の大きさ/レベルを、所定値以上では増減を緩やかにするまたはクリッピングし、 上記増減を緩やかにするまたはクリッピングする所定値、または上記鍵ごとの共振される初期衝撃信号の共振帯域または/及び大きさは、音楽的ファクタ、当該鍵の音高、当該鍵のタッチ、音色、発音経過時間、当該鍵と発音中の他の鍵との共鳴度、鍵盤装置全体の共鳴度に応じて変更制御されることを特徴とする請求項34、35、36、37、38、39、40、41、42または43記載の鍵盤装置。これにより、当該鍵の音高、当該鍵のタッチ、音色、発音経過時間、当該鍵と発音中の他の鍵との共鳴度、鍵盤装置全体の共鳴度に応じて、当該鍵の共鳴状態が変化する。