JP5543150B2 - 芳香族ニトロ化合物の選択的水素化触媒、その製造方法および再生方法並びにこれを用いた芳香族ニトロ化化合物の選択的水素化方法 - Google Patents

芳香族ニトロ化合物の選択的水素化触媒、その製造方法および再生方法並びにこれを用いた芳香族ニトロ化化合物の選択的水素化方法 Download PDF

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Description

本発明は、芳香族ニトロ化合物の選択的水素化触媒、その製造方法および再生方法並びにこれを用いた芳香族ニトロ化化合物の選択的水素化方法に関する。
芳香族ニトロ化合物の水素化により、種々の誘導体が得られるが、これらは、インクジェットインキの画質の向上剤の原料や、遺伝子導入剤の原料、医薬、農薬の中間体、感光性高分子化合物原料、成型用樹脂組成物原料など、機能性重合体の原料としての利用が検討されている。このような芳香族ニトロ化合物の誘導体の例としては、アミノスチレン等が知られている。
ところで、芳香族ニトロ化合物には、ニトロ基の他、水素化または水素化分解を受ける官能基を1または複数持つものも存在する。そしてこのような芳香族ニトロ化合物では、官能基のうち一部のみを選択的に水素化または水素化分解することが求められる場合があり、これに適した触媒も知られている。
例えば、官能基としてニトロ基の他、炭素−炭素二重結合を持つ芳香族ニトロ化合物は、いずれの基も比較的水素化されやすいが、これらのうちニトロ基を選択的に還元する触媒の例としては、白金担持炭素触媒を次亜リン酸およびバナジウムで修飾した触媒が知られており(非特許文献1)、他にも金のナノ粒子をチタニアに担持した触媒が知られている(非特許文献2)。
しかしながら、非特許文献1記載の触媒は、触媒金属として比較的高価なプラチナを用いるものであり、また、非特許文献2記載の触媒では、比較的高価な金を使用することで、いずれも触媒自体のコストが高くなるという問題があった。
更に、非特許文献1記載の触媒は、調製段階でリン化合物やバナジウム化合物による修飾工程が必要であるため、製造工程が複雑になるという問題もあった。
一方、芳香族ニトロ化合物の官能基の一部を選択的に水素化または水素化分解する触媒として、担体にシリカを使用し、活性種としての金属に比較的廉価な銀を使用する触媒も知られている(非特許文献3)。
しかしながら、本発明者らの試験によれば、非特許文献3の触媒は水素化反応に使用するに伴って活性が低下し、しかもその再生が困難であるものであった。
H.-U.Blaser, U. Siegrist, H. Steiner, in Aromatic Nitro Compounds: FineChemicals through Heterogeneous Catalysis, R. A. Sheldon, H. van. Bekkum, Eds.(Wiley-VCH, Weinheim, Germany, 2001), p.389 "Science", 2006, 313, 332 A. Corma, P. Serna, "Chem. Commun.", 2005, 5298-5300
従って本発明は、ニトロ基と、炭素−炭素二重結合、芳香環結合ハロゲン原子、芳香族ケトン性カルボニル基、芳香族カルボン酸エステル基、芳香族アミド性カルボニル基、芳香族ニトリル基等の基が同一化合物内に存在していても、後者の基を水素化または水素化分解することなく、ニトロ基のみを選択的、かつ経済的に水素化することのできる触媒を見出し、更に、このような触媒を使用した芳香族ニトロ化合物の選択的水素化方法の提供をその目的とするものである。
本発明者らは、芳香族ニトロ化合物の芳香環または複素環に結合したニトロ基を選択的に水素化することができる触媒を見出すべく、鋭意検討した結果、特定の粒径の銀成分をアルミナへ担持させた触媒が、上記課題を解決するものであることを見出し本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、アルミナに、銀成分として銀および/または銀酸化物を担持せしめてなり、担持された銀成分の平均粒子径が0.5〜3nmであることを特徴とする芳香族ニトロ化合物の選択的水素化触媒である。
また本発明は、アルミナに銀塩水溶液を含浸させ、乾燥した後、酸化雰囲気での焼成および還元処理を行うことを特徴とする上記選択的水素化触媒の製造方法である。
更に本発明は、芳香族ニトロ化合物、有機溶剤、前記選択的水素化触媒および水素ガスを加熱条件下混合することを特徴とする芳香族ニトロ化合物のニトロ基の選択的水素化方法である。
本発明の官能基選択的水素化触媒および水素化方法によれば、芳香族ニトロ化合物の芳香環または複素環に結合したニトロ基を、高い転化性と選択性をもって水素化することができる。しかも、同一化合物中に炭素−炭素二重結合、芳香環結合ハロゲン原子、芳香族ケトン性カルボニル基、芳香族カルボン酸エステル基、芳香族アミド性カルボニル基、芳香族ニトリル基が存在していてもこれらの官能基は実質的に水素化も水素化分解も受けることがない。
しかも、本発明の触媒は、ある程度の使用によって触媒の活性が低下した場合も、複雑な工程を経ることなく、再生することが可能であり、経済性の高いものである。
以下、本発明について更に詳細に説明する。なお、本願の特許請求の範囲及び明細書において、下記の用語は以下の通りの意味で用いられる。
「芳香族ニトロ基」 芳香環(芳香族の炭化水素環)または複素環に結合したニトロ基

「芳香環結合ハロゲン原子」 芳香環または複素環に結合したハロゲン原子。
「芳香族ケトン性カルボニル基」 ケトンを構成するカルボニル基であって、該カルボニル基が結合する二つの炭素原子のうちの少なくとも一方が芳香環または複素環の一員であるカルボニル基。
「芳香族カルボン酸エステル基」 カルボン酸エステルを構成するカルボニル基が結合する炭素原子が芳香環または複素環の一員であるカルボン酸エステル基。
「芳香族アミド性カルボニル基」 アミドを構成するカルボニル基であって、該カルボニル基が結合する炭素原子が芳香環または複素環の一員であるカルボニル基。
「芳香族ニトリル基」 芳香環または複素環に結合したニトリル基(−CN)。
[ 担 体 ]
本発明の芳香族ニトロ化合物の選択的水素化触媒(以下、「選択的水素化触媒」と略称することがある)の担体としては、アルミナが使用される。使用されるアルミナの種類は特に限定されないが、耐熱性が高く、比表面積値の大きなアルミナが好ましく、例えば、θアルミナ、γアルミナが用いられ、特に耐熱性の点からはθアルミナが好ましい。
また、担体として使用されるアルミナの比表面積値については特に限定されないが、30〜3000m/gが好ましく、50〜500m/gが特に好ましい。比表面積値が小さすぎると触媒の製造や再生時にシンタリングを起こし易く、出来上がった触媒が充分な活性を発揮できないことがある。一方、比表面積値が大きすぎると銀成分の分散性が悪くなり、この場合も充分な活性を発揮する触媒を得られないことがある。
更に、使用されるアルミナの粒径については特に限定されないが、そのメジアン径が0.5〜500μmの範囲であることが好ましく、5〜500μmがより好ましい。粒径が小さすぎるアルミナは、全体的にみて細孔容積が小さくなることがあり、細孔容積の小さなアルミナは触媒としての活性低下の要因となり、さらには耐毒性が低下してしまうことがある。一方、粒径が大きすぎると、アルミナ粒子の質量当たりの比表面積値が小さくなり、銀成分の分散性が低下し、充分な活性が得られないことがある。
[ 銀 粒 子 ]
本発明の選択的水素化触媒の活性種である銀成分は、銀および/または銀酸化物である。これら銀成分の担持量は特に限定されないが、アルミナ担体1g当たりの銀元素に換算して、1.0μmol〜5mmolが好ましく、10μmol〜3mmolが特に好ましく、100μmol〜2mmolが最も好ましい。重量比で見た場合の、アルミナに対する銀成分の銀換算量は10wt%以下が望ましく、特に5wt%が望ましい。銀成分の量が少なすぎると充分な活性が得られないことがあり反応にも時間がかかることがある。逆に、銀の量が多すぎると、使用量に見合った活性の向上が見られないことや、触媒の製造時や反応の過程で銀粒子がシンタリングを起こし、反応において有効な銀の表面積が相対的に小さくなってしまうことがあり、この場合も充分な活性が得られないことがある。
また、本発明の選択的水素化触媒において、担体に担持される銀成分粒子の平均粒子径は、0.5〜3nmであり、好ましくは、0.5〜2nmである。担持された銀成分の粒子径は、広域X線吸収微細構造(EXAFS)あるいは粉末X線回折により求めることができる。具体的には、AgのK殻のX線吸収微細構造(X-ray absorption fine structure:XAFS)をSPring−8、BL−01B1にて室温で測定し、そこからEXAFSのAg−Ag配位数を得、下記文献中の計算式より粒径を見積もることにより求めることができる。
* A. Jentys, Phys. Chem. Chem. Phys., 1999, vol. 1, p. 4059.
この銀成分の粒子が小さすぎると、反応に使用した際に触媒の活性が早く低下してしまうことがある。逆に平均粒子径が大きすぎると銀粒子の質量当たりの比表面積値が小さくなり活性が低下し水素化が促進されないことがある。
また、本発明の選択的水素化触媒において使用される銀成分は金属銀であることが好ましいが、必ずしも銀成分の全てが金属銀である必要はなく、一部が酸化銀として存在してもよい。例えば、後述する製法や再生方法においても焼成(か焼;calcination)して酸化した後、還元処理を施しているが、必ずしも銀成分の全てが金属銀になっているわけではない。このように、酸化銀と金属銀が混在する場合、金属銀の含有量が多い事が望ましいことはいうまでもないが、その金属銀含量は、実施において求められる活性に応じて適宜設定すればよい。以下、選択的水素化触媒の他、その原料となる銀成分が担持されたアルミナも含め単に銀触媒ということがあるが、ここでの銀は金属銀のみからなるものに限定されるものではない。
[ 製 法 ]
本発明の銀触媒の製造は、例えば、銀化合物を溶媒に溶解し、当該溶液中に担体としてのアルミナを投入し、銀化合物を吸着または含浸せしめることが必要である。上記銀化合物としては、触媒調製工程に使用する溶媒に可溶性であれば特に限定されず、例えば、硝酸銀、酢酸銀、過塩素酸銀などや、ビス(2,2'−ビピリジン)銀(I)硝酸塩、ビス(1,10−ファナントロリン)銀(I)過塩素酸塩やテトラキス(トリフェニルホスフィン)銀(I)硝酸塩などが挙げられ、これらのうち硝酸銀が特に好ましい。上記銀化合物のうち、硝酸銀、亜硝酸銀、酢酸銀、過塩素酸銀のような水溶性の銀化合物を利用する場合には、水を溶媒として用いることができる。また、銀化合物として、ビス(2,2'−ビピリジン)銀(I)硝酸塩、ビス(1,10−ファナントロリン)銀(I)過塩素酸塩やテトラキス(トリフェニルホスフィン)銀(I)硝酸塩などの非水溶性のものを使用する場合には、有機溶媒を溶媒として用いることができる。
担体に対する銀化合物溶液の含浸量は担体全体に銀化合物溶液が行き渡る量であることが好ましく、吸水率のほぼ100%、またはそれ以上となるように調整することが好ましい。このように含浸させることで、担体に対して銀製分を均一に担持させることができる。
このように担体の吸水率のほぼ100%となるように銀化合物水溶液を担体に含浸させる場合、銀化合物水溶液の濃度は目的とする銀成分の担持量を想定した濃度に調整されていることが望ましく、吸水率の100%以上の銀化合物溶液を含浸させる場合も同様である。なお、吸水率の100%以上の銀化合物溶液を含浸させる場合、担体に銀化合物溶液が均一に行き渡るよう、適宜溶媒の蒸発処理などを施すことがある。
こうして銀化合物を吸着または含浸などの方法で担体に担持したアルミナは、次いで、乾燥し、焼成して酸化した後、焼成により酸化状態となった銀成分に還元処理を施すことで本発明の銀触媒を得ることができる。このような、乾燥、焼成および還元処理の条件は特に限定されるものでは無いが、乾燥は水を溶媒として使用した場合は100〜200℃の範囲で乾燥すれば良く、必要に応じて減圧処理や乾燥空気流を使用してもよい。
また、銀触媒の製造における焼成温度は500〜1000℃であることが好ましく、500〜800℃であることがより好ましい。加熱温度が高すぎる場合、アルミナの相転移に伴い銀粒子のシンタリングが起こりはじめ、活性が低下することがあり望ましくない。逆に、加熱温度が低すぎる場合、表面に吸着した有機物の燃焼除去が不完全になり、触媒能力を完全に付与することができないことがあり望ましくない。
焼成時の雰囲気は、無酸素状態(酸素0vol%)では、本発明の選択的水素化触媒を得ることはできないので、酸素量が概ね20vol%程度であることが好ましい。酸素濃度が低すぎると、焼成時に金属状態のAgが形成され、後述する還元処理後の粒径が大きくなる場合があるため好ましくない。
更に、このように焼成された銀触媒は、更に還元剤を添加され、加熱されることで還元され、金属銀を含む銀成分が高度に分散された銀触媒になる。本発明の銀触媒の製造は、湿式、乾式いずれも採用できるが、乾式であることが望ましい。乾式で還元する場合にはガス状水素など気体の還元剤を用いて行うことが望ましいが、この際、ガス状水素等の気体還元剤を窒素等の不活性ガスで希釈して使用することも可能である。特にガス状水素(水素ガス)を使うことで本発明の銀触媒の製造において効率的な還元が行われ、銀成分中の金属成分の量を多くできる。一方、湿式で還元する場合の還元剤には、メタノール、ホルムアルデヒド、蟻酸など液状の還元剤を使用することができる。
上記の還元処理における加熱温度は300〜900℃であることが好ましく、400〜800℃がより好ましい。加熱温度が低すぎると、還元が充分に出来ない事があり、逆に高すぎると銀成分がシンタリングしてしまい、質量当たりの比表面積値が小さくなり活性が低下し水素化が促進されないことがある。
なお、上記した酸化、還元処理における加熱の温度によって、銀成分の粒子径の制御も可能である。例えば、還元処理における加熱温度が低い場合は、銀成分の粒子径を比較的小さくすることができ、還元処理における加熱温度が高い場合には、銀成分の粒子径を比較的大きくすることができる。また、このような還元処理における加熱温度と銀粒子の粒径の関係は、銀成分の量の変化にも影響を受ける。多くの場合、銀成分の量が多いと粒径が大きくなる傾向にあり、銀成分の量が少ないと粒径が小さくなる傾向がある。
本発明の選択的水素化触媒調製のための好ましい条件としては以下の組み合わせが挙げられる。
・アルミナに対するAgの量が10wt%以下。
・焼成温度が500〜1000℃(現実的には600〜800℃)。
・焼成時の酸素濃度が20wt%以上(実際には20wt%で充分)。
・還元雰囲気が水素
・還元温度が300〜900℃
前述のように、本発明の選択的水素化触媒では、担持された銀成分の平均粒子径が重要であるので、実験的に還元処理温度と銀成分の平均粒子径の関係あるいは銀成分の量と銀成分の平均粒子径の関係を求め、これを基に希望する触媒活性を有する選択的水素化触媒を調製すればよい。以上のような還元時の加熱温度と粒子径の関係等が生じる理由は定かではないが、本発明者らの検証したところでは、還元処理における加熱温度による銀成分の粒子径の変化はシリカなど他の担体では見られない、アルミナと銀成分との間で生じる特異な相互作用であった。
[ 選択的水素化反応 ]
以上のようにして調製された本発明の選択的水素化触媒は、芳香族ニトロ化合物のニトロ基の選択的水素化に利用することができる。
上記の選択的水素化反応は、加熱条件下、有機溶剤中で、芳香族ニトロ化合物、前記選択的水素化触媒および水素ガスとを混合させることにより行うことができる。この選択水素化反応に用いる有機溶剤としては、特に制限されないが、溶剤として触媒の被毒が少なく、添加率を維持できるものの中から選択することができ、好ましくは、テトラヒドロフラン、メタノール、エタノール、トルエンなどの溶媒またはこれらの組み合わせが挙げられる。
本発明の選択的水素化方法は特に限定するものではないが、水素の存在は必須である。水素は遊離の状態の水素であり、通常、水素ガスとして反応中にあるいは反応に先んじて反応系に供給すればよい。例えば、攪拌下の反応液の上部気相部に供給してもよいし、通気してもよい。水素は例えば窒素などの不活性気体との混合ガスとして供給してもよい。
供給される水素の圧力は特に限定されるものではないが、水素分圧として0.005〜30Maが好適であり、0.05〜10MPaが特に好適である。この水素化反応は、通常、湿式にて水素ガス雰囲気中で行われる。また、反応温度は120〜200℃の温度範囲が好適である。
更に、上記選択的水素化方法に使用される選択的水素化触媒の量は、反応に使用する芳香族ニトロ化合物に対して、当該触媒に担持される銀成分を基準に、金属銀換算で0.01〜20モル%の範囲の量で使用されることが好ましく、0.1〜10モル%の範囲で使用されることがより好ましく、0.5〜5モル%の範囲で使用されることが最も好ましい。選択的水素化触媒の使用量が少なすぎると、充分な活性が得られないことがあり、反応にも時間がかかることがある。一方、選択的水素化触媒の銀の量が多すぎると、銀成分の分散度が低下して活性が低下したり、また使用量に見合った活性の向上が見られないことがある。
上記選択的水素化反応は、芳香族ニトロ化合物の芳香環または複素環に結合したニトロ基が水素化され、アミノ基となるまで行われる。その反応時間は、触媒の量とも相関するが、一般的には、0.1ないし48時間程度であり、好ましくは、0.5ないし8時間程度である。
このようにすることにより、芳香族ニトロ化合物中のニトロ基は水素化されるが、それ以外の基、例えば、芳香環または複素環に結合した炭素−炭素二重結合、ハロゲン原子、ケトン性カルボニル基、カルボン酸エステル基、アミド性カルボニル基、ニトリル基等は水素化されず、ニトロ基の選択的水素化が可能となる。なお、使用した選択的水素化触媒は、反応終了後、ろ過等の簡便な方法で生成物を含む溶液から容易に分離し、繰り返し使用することができる。
[ 触媒の再生 ]
上記のように反応系から分離した選択的水素化触媒は、再び選択的水素化反応に繰返し使用されるが、繰返し使用することで徐々に失活する。本発明の選択的水素化触媒の大きな特徴は、このように失活した場合も比較的簡単な方法で再生させることができ、再生された触媒も失活前とほぼ同等の性能を発揮することができることである。
この、失活した選択的水素化触媒を再生は、生成物を含む溶液から分離した触媒を水と有機溶剤の混合溶媒で洗浄し、乾燥後に酸化雰囲気で焼成し、続いて還元処理することによりおこなわれる。
洗浄に使用される混合溶媒は適宜選択されるが、具体的には蒸留水とエタノール等の有機溶剤の混合溶媒が使用でき、それらの好ましい混合割合としては、有機溶剤と蒸留水とが体積比1:1のものが挙げられる。
洗浄後、乾燥する温度も適宜設定されるが、概ね100℃前後であることが望ましい。
乾燥された使用済み触媒の焼成温度は500℃〜1000℃であることが好ましく、500℃〜800℃であることがより好ましい。焼成温度が高すぎる場合、アルミナの相転移に伴い銀粒子のシンタリングが起こりはじめ、活性が低下することがあり望ましくない。また、焼成温度が低すぎる場合、表面に吸着した有機物の燃焼除去が不完全になり、触媒を完全に再生することができないことがあり望ましくない。
焼成時の雰囲気は、無酸素状態(酸素0vol%)では、本発明の選択的水素化触媒を得ることはできないので、酸素量が概ね20vol%程度であることが好ましい。酸素濃度が低すぎると、焼成時に金属状態のAgが形成され、後述する還元処理後の粒径が大きくなる場合があるため好ましくない。
焼成された触媒は、銀粒子の表面が酸化されていることがあるため還元処理を行う。還元処理についても適宜選択可能であるが、還元剤として水素ガスを使用し、300℃で5分程度還元することにより還元することも、また、前記製造時と同様の条件で還元することもできる。
すなわち、還元方法は湿式、乾式いずれも採用できるが、乾式であることが望ましい。乾式で還元する場合にはガス状水素など気体の還元剤を用いて行うことが望ましいが、この際、ガス状水素等の気体還元剤を窒素等の不活性ガスで希釈して使用することも可能である。特にガス状水素(水素ガス)を使うことで本発明の銀触媒の製造において効率的な還元が行われ、銀成分中の金属成分の量を多くできる。一方、湿式で還元する場合の還元剤には、メタノール、ホルムアルデヒド、蟻酸など液状の還元剤を使用することができる。
上記の還元処理における加熱温度は300〜900℃であることが好ましく、400〜800℃がより好ましい。加熱温度が低すぎると、還元が充分に出来ない事があり、逆に高すぎると銀成分がシンタリングしてしまい、質量当たりの比表面積値が小さくなり活性が低下し水素化が促進されないことがある。
なお、ここでも前述の選択的水素化触媒の製造と同様、還元処理における加熱温度の制御によって銀成分の粒子径の制御が可能である。反応に使用した結果や、再生処理の過程で銀成分粒子が肥大化した場合でも、焼成による酸化あるいは水素を還元剤とした加熱還元を経ることで選択的水素化触媒上の銀成分の粒子径を微細に制御することができる。
このように再生された選択的水素化触媒は、再び前述同様の水素化に使用することができ、芳香族ニトロ化合物の選択的水素化を経済的に有利に行うことができる。
以下に本発明の実施例、比較例および参考例を示し、本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例等に何ら制約されるものではない。
実 施 例 1
銀を担持した触媒の調製:
下記方法により、表1に示す銀含有量および金属平均粒子径の銀を担持した銀触媒を調製した。
すなわち、触媒1ないし5については、担体としてγ-アルミナ(Sasol製アルミナ「CatapalB」)を1000℃にて3時間焼成することによって得たθ-アルミナ粉末を用い、これを0.5Mの硝酸銀水溶液に浸漬した。その後、減圧下80℃で3時間乾燥し、表1に示す温度で3時間焼成した。更に水素気流下、表1に示した温度で10分間処理することにより、アルミナ担持銀触媒として触媒1ないし5を得た。
一方触媒9および10については、担体であるセリア、マグネシアとして、触媒学会が提供する参照触媒(それぞれJRC-CEO-1、JRC-MGO-1)を使用し、触媒11については、担体であるシリカとして富士シリシア製「Q−15」を使用した。また、触媒6ないし8については、担体であるジルコニア、酸化スズ、酸化タングステンとして、それぞれジルコニウムオキシ硝酸塩・2水和物、四塩化スズ・6水和物、パラタングステン酸アンモニウム塩を、蒸留水中にて水酸化アンモニウム水溶液(1.0mol/L)を加えることによって生じる沈殿を蒸留水で3回洗浄し、さらに100℃で乾燥することによって得たものを使用した。
これらの担体を、0.5Mの硝酸銀水溶液に浸漬した。その後、減圧下80℃で3時間乾燥し、表1に示す温度で3時間焼成した。更に、水素気流下、表1に示した温度で10分間処理することにより、触媒6ないし11を得た。
以上、各触媒の担体、銀平均粒子径、銀含有量、焼成温度および還元温度をまとめて表1に示した、なお、担持された銀の平均粒子径は、EXAFSにより求めた。
Figure 0005543150
実 施 例 1
銀平均粒子径が0.7nmである銀担持アルミナ粉末触媒(触媒1)を用いた
4−ニトロスチレンの水素化反応:
内容積30ccのオートクレーブに、4−ニトロスチレン0.30g(2mmol)、触媒1 0.5g(触媒中の銀含有量1wt%、銀使用量は基質に対し2mol%)、および溶媒としてテトラヒドロフラン15mlを取り、さらに攪拌子を入れ密閉した。水素により反応器内をパージした後、160℃まで加温し、さらに水素圧3MPaまで加圧し、1時間反応した。攪拌はマグネチックスターラーを用いた。
生成物は、株式会社島津製作所製ガスクロマトグラフ質量分析計GCMS−QP5000を用いて同定し、反応後の生成物の収率は、n−ドデカンを内部標準物質としてガスクロマトグラフィーにて決定した。この結果、原料である4−ニトロスチレンの転化率は99%で、目的生成物である4−アミノスチレンの選択率は88%であり、副生成物である4−エチルアニリンの選択率は3.9%であった。
実 施 例 2
銀平均粒子径が0.9nmである銀担持アルミナ粉末触媒(触媒2)を用いた
4−ニトロスチレンの水素化反応:
実施例1において、銀平均粒子径が0.7nmの触媒1の代わりに、銀平均粒子径が0.9nmである触媒2 0.1g(触媒中の銀含有量5wt%、銀使用量は基質に対し2mol%)を用いた以外は実施例1と同様にして、4−ニトロスチレンの水素化を行った。反応の結果、原料である4−ニトロスチレンの転化率は100%で、目的生成物である4−アミノスチレンの選択率は96%であり、副生成物である4−エチルアニリンの選択率は3.0%であった。
実 施 例 3
銀平均粒子径が1.1nmである銀担持アルミナ粉末触媒(触媒3)を用いた
4−ニトロスチレンの水素化反応:
実施例1において、銀平均粒子径が0.7nmの触媒1の代わりに、銀平均粒子径が1.1nmである触媒3 0.1g(触媒中の銀含有量5wt%、銀使用量は基質に対し2mol%)を用いた以外は実施例1と同様にして、4−ニトロスチレンの水素化を行った。反応の結果、原料である4−ニトロスチレンの転化率は100%で、目的生成物である4−アミノスチレンの選択率は95%であり、副生成物である4−エチルアニリンの選択率は2.9%であった。
比 較 例 1
銀平均粒子径が3.4nmである銀担持アルミナ粉末触媒(触媒4)を用いた
4−ニトロスチレンの水素化反応:
実施例1において、銀平均粒子径が0.7nmの触媒1の代わりに、銀平均粒子径が3.4nmである触媒4 0.1g(触媒中の銀含有量5wt%、銀使用量は基質に対し2mol%)を用いた以外は実施例1と同様にして、4−ニトロスチレンの水素化を行った。反応の結果、原料である4−ニトロスチレンの転化率は31%で、目的生成物である4−アミノスチレンの選択率は73%であり、副生成物である4−エチルアニリンの選択率は2.6%であった。
比 較 例 2
銀平均粒子径が25nmである銀担持アルミナ粉末触媒(触媒5)を用いた4−ニ
トロスチレンの水素化反応:
実施例1において、銀平均粒子径が0.7nmの触媒1の代わりに、銀平均粒子径が25nmである触媒5 0.1g(触媒中の銀含有量5wt%、銀使用量は基質に対し2mol%)を用いた以外は実施例1と同様にして、4−ニトロスチレンの水素化を行った。反応の結果、原料である4−ニトロスチレンの転化率は31%であったが、予想される水素化生成物である4−アミノスチレンおよび4−エチルアニリンはいずれも全く生成しなかった。
比 較 例 3
銀平均粒子径2.6nmである銀担持酸化タングステン粉末触媒(触媒6)
を用いた4−ニトロスチレンの水素化反応:
実施例1において、銀平均粒子径が0.7nmの銀担持アルミナ粉末触媒(触媒1)の代わりに、銀平均粒子径が2.6nmである触媒6 0.1g(触媒中の銀含有量5wt%、銀使用量は基質に対し2mol%)を用いた以外は実施例1と同様にして、4−ニトロスチレンの水素化を行った。反応の結果、原料である4−ニトロスチレンの転化率は11%で、目的生成物である4−アミノスチレンの選択率は98%であり、副生成物である4−エチルアニリンの選択率は0%であった。
比 較 例 4
銀平均粒子径2.4nmである銀担持酸化スズ粉末触媒(触媒7)を用いた
4−ニトロスチレンの水素化反応:
実施例1において、銀平均粒子径が0.7nmの銀担持アルミナ粉末触媒(触媒1)の代わりに、銀平均粒子径が2.4nmである触媒7 0.1g(触媒中の銀含有量5wt%、銀使用量は基質に対し2mol%)を用いた以外は実施例1と同様にして、4−ニトロスチレンの水素化を行った。反応の結果、原料である4−ニトロスチレンの転化率は3%で、目的生成物である4−アミノスチレンの選択率は79%であり、副生成物である4−エチルアニリンの選択率は0%であった。
比 較 例 5
銀平均粒子径1.6nmである銀担持ジルコニア粉末触媒(触媒8)を用いた
4−ニトロスチレンの水素化反応:
実施例1において、銀平均粒子径が0.7nmの銀担持アルミナ粉末触媒(触媒1)の代わりに、銀平均粒子径が1.6nmである触媒8 0.1g(触媒中の銀含有量5wt%、銀使用量は基質に対し2mol%)を用いた以外は実施例1と同様にして、4−ニトロスチレンの水素化を行った。反応の結果、原料である4−ニトロスチレンの転化率は61%で、目的生成物である4−アミノスチレンの選択率は73%であり、副生成物である4−エチルアニリンの選択率は3.0%であった。
比 較 例 6
銀平均粒子径0.9nm銀担持セリア粉末触媒(触媒9)を用いた4−ニトロ
スチレンの水素化反応:
実施例1において、銀平均粒子径が0.7nmの銀担持アルミナ粉末触媒(触媒1)の代わりに、銀平均粒子径が0.9nmである触媒9 0.1g(触媒中の銀含有量5wt%、銀使用量は基質に対し2mol%)を用いた以外は実施例1と同様にして、4−ニトロスチレンの水素化を行った。反応の結果、原料である4−ニトロスチレンの転化率は59%で、目的生成物である4−アミノスチレンの選択率は74%であり、副生成物である4−エチルアニリンの選択率は0%であった。
比 較 例 7
銀平均粒子径3.0nmの銀担持酸化マグネシウム粉末触媒(触媒10)を用いた
4−ニトロスチレンの水素化反応:
実施例1において、銀平均粒子径が0.7nmの銀担持アルミナ粉末触媒(触媒1)の代わりに、銀平均粒子径が3.0nmである触媒10 0.1g(触媒中の銀含有量5wt%、銀使用量は基質に対し2mol%)を用いた以外は実施例1と同様にして、4−ニトロスチレンの水素化を行った。反応の結果、原料である4−ニトロスチレンの転化率は3%で、目的生成物である4−アミノスチレンの選択率は21%であり、副生成物である4−エチルアニリンの選択率は0%であった。
比 較 例 8
銀平均粒子径2.4nmの銀担持シリカ粉末触媒(触媒11)を用いた4−
ニトロスチレンの水素化反応:
実施例1において、銀平均粒子径が0.7nmの銀担持アルミナ粉末触媒(触媒1)の代わりに、銀平均粒子径が2.4nmである触媒11 0.1g(触媒中の銀含有量5wt%、銀使用量は基質に対し2mol%)を用いた以外は実施例1と同様にして、4−ニトロスチレンの水素化を行った。反応の結果、原料である4−ニトロスチレンの転化率は100%で、目的生成物である4−アミノスチレンの選択率は97%であり、副生成物である4−エチルアニリンの選択率は2.0%であった。
以上、実施例1ないし3および比較例1ないし8の結果を表2にまとめて示す。
Figure 0005543150
比 較 例 9
銀パウダーを用いた4−ニトロスチレンの水素化反応:
実施例1において、銀平均粒子径が0.7nmの銀担持アルミナ粉末触媒(触媒1)の代わりに、銀パウダー(銀使用量は基質に対し40mol%)を用いた以外は実施例1と同様にして、4−ニトロスチレンの水素化を行った。反応の結果、原料である4−ニトロスチレンの転化率は1%であり、予想される水素化生成物である4−アミノスチレンおよび4−エチルアニリンはいずれも全く生成しなかった。
比 較 例 10
白金担持アルミナ粉末触媒を用いた4−ニトロスチレンの水素化反応:
硝酸白金をθ−アルミナ粉末に含浸し、減圧下80℃にて12時間乾燥後、500℃にて2時間焼成し、さらに水素気流中300℃にて0.5時間処理して白金担持アルミナ粉末触媒を得た。白金粒子径は25℃にてCO含有ヘリウム中のCOパルス吸着法により求めた。
このようにして得られた白金担持アルミナ粉末触媒(白金使用量は基質に対し0.04mol%、白金平均粒子径が0.7nm)を、実施例1において、銀担持アルミナ粉末触媒(銀平均粒子径:0.7nm)の代わりに用いた以外は同様にして、4−ニトロスチレンの水素化を行った。反応の結果、原料である4−ニトロスチレンの転化率は100%であった。目的とする水素化生成物である4−アミノスチレンはまったく生成せず、4−エチルアニリンのみが選択率100%で生成した。
以上の実施例および比較例から明らかなように、本発明の触媒は芳香族ニトロ化合物の水素化に対して優れた転化率と共に、高い選択率を有し、副生成物の生成率も少ないことがわかる。なお、本発明の触媒による芳香族ニトロ化合物の水素化にあたっての特性は、上記実施例に記載された4−ニトロスチレンに限られる物ではなく、他の置換基を持つ芳香族ニトロ化合物においても発揮される。以下その例を挙げる。
実 施 例 4
銀平均粒子径0.9nmの銀担持アルミナ粉末触媒(触媒2)を用いた4'−
ニトロアセトフェノンの水素化反応:
実施例2において、4−ニトロスチレンの代わりに、基質として4'−ニトロアセトフェノンを用いた以外は実施例2と同様にして、4'−ニトロアセトフェノンの水素化を行った。反応の結果、原料である4'−ニトロアセトフェノンの転化率は100%で、目的生成物である4'−アミノアセトフェノンの選択率は97%であった。副生成物である4−エチルアニリンは生成しなかった。
実 施 例 5
銀平均粒子径0.9nmの銀担持アルミナ粉末触媒(触媒2)を用いた4−ニトロ
ベンズアミドの水素化反応:
実施例2において、4−ニトロスチレンの代わりに、基質として4−ニトロベンズアミドを用い、反応時間を20時間に延長した以外は実施例2と同様にして、4−ニトロベンズアミドの水素化を行った。反応の結果、原料である4−ニトロベンズアミドの転化率は100%で、目的生成物である4−アミノベンズアミドの選択率は98%であった。副生成物である4−アミノベンジルアミンは生成しなかった。
実施例4および実施例5の結果をまとめて表3に示す。
Figure 0005543150
本発明の触媒は、連続する水素化反応により失活した場合にも、比較的簡単な方法で再生が可能である。以下その実施例を示す。
実 施 例 6 および 比 較 例 11
選択的水素化触媒の再生試験:
実施例2に記載の4−ニトロスチレンの水素化反応を繰返し行なった結果、添加率、収率共に活性を示さなくなった銀平均粒子径0.9nmの銀担持アルミナ粉末触媒(触媒2)を、生成物を含む溶液から濾過により分離した。これを、蒸留水とエタノール体積比1:1の混合溶媒を用いて洗浄し、100℃で乾燥し、500℃、600℃、700℃で焼成し、続いて還元剤として水素ガスを使用し、300℃で5分程度還元することで触媒の再生処理を行い、再度実施例2に記載の4−ニトロスチレンの水素化反応を行ない、4−ニトロスチレンの転化率と4−アミノスチレンの選択率を測定した(実施例6)。
同様、比較例8に記載の4−ニトロスチレンの水素化反応を繰返し行なった結果、添加率、収率共に活性を示さなくなった銀平均粒子径2.4nmの銀担持シリカ粉末触媒(触媒11)についても、上記と同様再生処理を行い、再度比較例8に記載の4−ニトロスチレンの水素化反応を行なって4−ニトロスチレンの転化率と4−アミノスチレンの選択率を測定した(比較例11)。
これら実施例6および比較例11の結果を、表4にまとめて示す。
Figure 0005543150
表4からわかるように、本発明の触媒は再生後でも優れた性能を発揮していることがわかる。
これに対し比較例11の銀担持シリカ粉末触媒(触媒11)では、再生前のフレッシュな状態の性能は銀担持アルミナ粉末触媒に勝るものの、失活後は本発明の再生処理を施しても活性を取り戻すことが出来なかった。
参 考 例 1
水素化反応を繰り返し行った結果、活性を失った触媒2および触媒11について、焼成温度を400℃とした以外は実施例6と同様にして再生処理をおこなった。この再生処理を行った触媒について、実施例6と同様に4−ニトロスチレンの水素化反応を行ない、4−ニトロスチレンの転化率と4−アミノスチレンの選択率を測定した。
また、活性を失った触媒を混合溶媒で洗浄しただけのものについても、上記と同様、4−ニトロスチレンの水素化反応を行ない、4−ニトロスチレンの転化率と4−アミノスチレンの選択率を測定した。これらの結果を表5に示す。
Figure 0005543150
本発明の選択的水素化触媒による優れた結果は、芳香族ニトロ化合物として上記実施例の4−ニトロスチレン、4'−ニトロアセトフェノンおよび4−ニトロベンズアミドを用いた場合の他、3−ビニルニトロベンゼン、1−クロロ−2−ニトロベンゼン、4’−ニトロアセトフェノン、4−ニトロベンゾニトリル、4−ニトロ安息香酸メチルを使用した場合でも同様に得ることができる。
本発明の選択的水素化触媒を用いる水素化方法によれば、芳香族ニトロ化合物中に存在する芳香環または複素環に結合したニトロ基のみを、高い転化性と選択性をもって水素化することができ、同一化合物中に存在する他の官能基、例えば、炭素−炭素二重結合、芳香環結合ハロゲン原子、芳香族ケトン性カルボニル基、芳香族カルボン酸エステル基、芳香族アミド性カルボニル基、芳香族ニトリル基等を水素化することはない。
しかも、本発明の触媒は、ある程度の使用によって触媒の活性が低下した場合も、複雑な工程を経ることなく、再生することが可能であり、経済性の高いものである。
従って、本発明の水素化方法は、芳香族ニトロ化合物のニトロ基のみを選択的に水素化する方法として、工業的に極めて価値の高いものである。

Claims (17)

  1. アルミナに、銀成分として金属銀を担持せしめてなり、担持された銀成分の広域X線吸収微細構造(EXAFS)により求めた平均粒子径が0.5〜3nmであることを特徴とする、ニトロベンゼンのパラ位が、ビニル基、アセチル基またはアミド基で置換された芳香族ニトロ化合物のニトロ基を選択的水素化してアミノ基にするための触媒。
  2. アルミナのメジアン径が、0.5〜500μmである請求項1記載の触媒。
  3. アルミナの比表面積が、30〜3000m/gである請求項1または2記載の触媒。
  4. 銀成分の担持量が、アルミナ担体1g当たり銀元素に換算して1.0μmol〜5mmolである請求項1ないしの何れかの項記載の触媒。
  5. アルミナに銀塩溶液を含浸させ、乾燥した後、酸化雰囲気での焼成および還元処理を行うことを特徴とする請求項1ないしの何れかの項記載の触媒の製造方法。
  6. 酸化雰囲気下での焼成が、500〜1000℃の温度で行われる請求項記載の触媒の製造方法。
  7. 還元処理が、300〜900℃の温度で行われるものである請求項または記載の触媒の製造方法。
  8. 還元処理が、ガス状水素の存在下で行われる請求項ないしの何れかの項記載の触媒の製造方法。
  9. 還元処理が、メタノール、ホルムアルデヒドまたは蟻酸ガスの存在下で行われる請求項ないしの何れかの項記載の触媒の製造方法。
  10. 銀塩溶液が、硝酸銀、酢酸銀、過塩素酸銀、ビス(2,2'−ビピリジン)銀(I)硝酸塩、ビス(1,10−ファナントロリン)銀(I)過塩素酸塩またはテトラキス(トリフェニルホスフィン)銀(I)硝酸塩の溶液である請求項ないしの何れかの項記載の触媒の製造方法。
  11. ニトロベンゼンのパラ位が、ビニル基、アセチル基またはアミド基で置換された芳香族ニトロ化合物、有機溶剤、請求項1ないしの何れかの項記載の触媒および水素ガスを加熱条件下混合することを特徴とするニトロベンゼンのパラ位が、ビニル基、アセチル基またはアミド基で置換された芳香族ニトロ化合物のニトロ基選択的水素化してアミノ基にする方法。
  12. 水素ガスを、その分圧として0.005〜30Maで供給する請求項11記載の方法。
  13. 加熱温度が、120〜200℃の範囲である請求項11または12記載の方法。
  14. 触媒の量が、芳香族ニトロ化合物に対して、当該触媒に担持される銀成分を基準として金属銀換算で0.01〜20モル%の範囲である請求項11ないし13記載の何れかの項記載の方法。
  15. 触媒的に失活した請求項1ないしの何れかの項記載の触媒を、有機溶媒と水を含有する溶媒で洗浄し、次いで、酸化雰囲気で焼成し、更に還元処理することを特徴とする触媒の再生方法。
  16. 酸化雰囲気下での焼成を、500℃〜1000℃の温度で行う請求項15記載の触媒の再生方法。
  17. 還元処理を、水素雰囲気中、300〜900℃の温度で行う請求項15または16記載の触媒の再生方法。
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