この発明は、水栓からの吐水流量を調整することによって節水効果を得る節水部材及びそれを用いた節水具に関する。特に、ハンドルコック式及びシングルレバー式のどちらの水栓に対しても吐水流量を簡単に調整することが可能であり、かつ口径の異なるいずれの水栓に対しても簡易に装着することのできるようにした節水部材及びそれを用いた節水具に関する。
一般家庭やレストランあるいはホテル等における調理場、洗面所、浴室等において調理や洗浄や入浴などのために水やお湯を使用する際、使用者は手動式の回転可能なハンドルコックを操作することによって単水栓や湯水混合栓等の自在水栓から流れ出る水やお湯などの吐水流量(吐出量)を調整することができるようになっている。すなわち、使用者によるハンドルコックの回転量に応じて前記水栓の弁開度が変わり、それに従い水栓から流れ出る水やお湯などの吐水流量が変化する。また、浴室などに設備されるシャワーにおいても、湯水混合栓から分岐したホースの根元に設けられたハンドルコックの操作によって吐水流量を調整できるようになっているのが一般的である。このようなハンドルコック式の水栓やシャワー設備では、従来から節水を図るために当該水栓出口とスパウト内との結合部や、ホースとシャワーヘッドとの結合部などに節水具を組み込むことが行われている。こうした節水具としては、例えば下記に示す特許文献1、2に開示されている節水具(節水コマ)などが従来から知られている。下記公報に記載の節水具やその他の従来知られた節水具においては、水栓本体やシャワーヘッドの内部流量を節水具内部に設けた孔で絞ることにより、水栓の弁開度にほぼ比例する吐水流量を前記孔の大きさにより調整して節水を行うようにしている。
実開昭59-158794号公報
実開昭60-21089号公報
ところで、最近では一般家庭やレストランあるいはホテルなどにおいて、レバーの上下動に応じて水栓の弁開度を変えることのできる、つまり使用者がレバーを上げ下げするだけで水栓からの吐水流量を変えることのできるようにした所謂シングルレバー式(又はワンタッチレバー式とも呼ぶ)の水栓が普及してきている。こうしたシングルレバー式の水栓においては、僅かなレバー操作が行われただけで急激に吐水流量が変化してしまう。そのため、使用者が必要とする水量に調節するためにはレバーの微調整を行わなければならずこうした操作は面倒であること、特に幼児や高齢者等の使用者にとってはこうしたレバー操作が非常に難しいこと、などからついつい水を出し過ぎた状態のままで使用してしまうことが多い。そこで、シングルレバー式の水栓においてはこうした水の出し過ぎを防止するために予め元栓を絞っておくという方法が考えられるが、こうした方法を採用すると使用者の使用感が失われるだけでなく、建物全体における水圧が落ちてしまい建物の至る場所で水の出が悪くなってしまうことが生じることから、こうした方法は実用的とは言えず採用できないものである。そこで、シングルレバー式の水栓に適した節水具が望まれるが、上述したような従来知られた節水具は水栓出口とその先のスパウトとの結合部に節水具を組み込む形式のものであったため、シングルレバー式の水栓にそれらの節水具をそのまま適用することはできなかった。すなわち、仮に従来公知の節水具を単純にシングルレバー式水栓の出口に組み込めるような何らかの構造を工夫したとしても、それだけでは単に水量を調整できるだけにすぎず、日常的に使い易い、滑らかな吐出流を生じさせるものとはならない。このように、シングルレバー式の水栓に適した節水具は従来なかったために、シングルレバー式の水栓に対して節水を施すことは非常に難しい、という問題点があった。同様の問題点はシングルレバー式水栓に限らず、水流吐出口に節水具を設けるタイプのすべての節水具において存在する。
また、従来においては、節水具内部に設けた孔の大きさがそれぞれ異なる多種類の節水具を予め用意しておき、必要とされる吐水流量にあった大きさの孔が設けられている節水具をその都度交換しながら取り付ける必要があった。さらには、取り付け対象とする水栓の口径毎に、各口径に対応した外形の大きさを持つ節水具を予め多数用意しておかなければならなかった。しかし、吐水流量に応じて孔の大きさの異なる、あるいは水栓の口径の大小に応じて外形の大きさの異なる多種類の節水具を予め用意しておくことはコストが高くなってしまい都合が悪い。さらに、単に孔の大きさの異なる節水具を交換することだけでは、感覚的に異なりうる個々のユーザ毎の使用感を満足させる吐水流量への微妙な調整が非常に難しかった。
本発明は上述の点に鑑みてなされたもので、口径の異なるシングルレバー式の水栓及びハンドルコック式の水栓のどちらに対しても取り付け可能であり、節水を施すことのできる節水部材及びそれを用いた節水具を提供しようとするものである。すなわち、シングルレバー式水栓及びハンドルコック式水栓など、適用する水栓のタイプや口径の大小、又は流路の途中若しくは出口といった配置場所の相違など、その用途に応じて、水流方向に対する上下の向きを適宜反転して使用することのできる節水部材及びそれを用いた節水具を提供しようとするものである。また、誰でもが簡単に吐水流量の調整を行うことのできるようにした、簡易な構造の節水部材及びそれを用いた節水具を提供しようとするものである。
本発明に係る節水具は、通水空間を有し、かつ外向きに突出する突出部を有する台座と、通水空間を有し、前記台座に対して着脱可能に組み合わせられる円筒部材と、前記台座と円筒部材との間に着脱可能に装着される複数枚の板状メッシュの重ね合わせからなり、前記複数枚の板状メッシュの組み合わせにより前記通水空間における吐水流量の調整をする節水部材とを具備し、水流の生じる管路の途中から吐水出口に至るまでのいずれかの箇所において、前記突出部を介して該管路内に組み込まれるようにしたことを特徴とする。この発明によると、水流の生じる管路の途中から吐水出口に至るまでのいずれかの箇所において組み込まれるようにしたタイプの節水具において、複数枚の板状メッシュを重ね合わせてなる節水部材により、水流量を絞ることができる。また、板状メッシュを複数枚重ね合わせてなる節水部材を台座と円筒部材との間で着脱可能に装着する構成であるから、節水部材を取り替えるだけで吐水流量の調整を極めて簡便に行うことができるようになる。こうした節水具は構造が簡単でありその製造コストを低く抑えることができるだけでなく、構造が簡単であるにもかかわらず、優れた節水機能を発揮させることができる。
一実施態様として、前記節水部材は、前記重ね合わせ対象とする板状メッシュの網目を異ならせることにより、前記通水空間における吐水流量を調整できるようにしたことを特徴とする。すなわち、前記重ね合わせ対象とする板状メッシュの網目を異ならせることにより、各板状メッシュの網目を通過させる水流量の絞り量を変更することができ、これにより所望の吐水流量に調整することができるようになる。
更なる実施態様として、前記節水部材の前記各板状メッシュは線材を網目状に配置してなると共に周縁部にリムを有せず、各板状メッシュ間において各板状メッシュの網目を形成する線材の線径太さに応じた空間が形成されるようにしたことを特徴とする。また、前記節水部材の前記各板状メッシュはメッシュ面に凹凸を形成してなると共に周縁部にリムを有せず、各板状メッシュ間において各板状メッシュに形成された凹凸に応じた空間が形成されるようにしたことを特徴とする。この実施態様によると、水流量を絞ること(節水)のみならず、干渉/緩衝作用による水流の調整を簡単に図ることができる。すなわち、各板状メッシュ間において各板状メッシュの網目を形成する線材の線径太さ、あるいは各板状メッシュに形成された凹凸に応じた空間が形成されるので、各板状メッシュで流量調整された水流を受圧して通過させる際に水流を出口面積に略均等に振り分けることができるようになる。
本発明に係る節水具の好ましい実施例として、前記突出部は前記台座の一端部にて設けられており、前記突出部を水流出口寄りに位置させて配置し、前記節水具を水流出口に設置するタイプの節水具として用いることを特徴とする。さらに、前記突出部の大きさが異なる台座を前記円筒部材に取り付け可能とすることによって、取り付け対象の水栓の口径が異なる場合であっても前記台座を取り替えるだけで取り付けできるようにしたことを特徴とする。このように、1又は複数の通水孔が設けられた円筒部材によっても吐水流量の調整を行うようにし、さらに前記台座の一端部にて外向きに突出する突出部の大きさが異なる台座を前記円筒部材に取り付け可能とすることによって、取り付け対象の水栓の口径が異なる場合であっても前記台座を取り替えるだけで取り付けすることができる。これにより、この節水具が、水流出口に設置するタイプの節水具として使用するのに適したものとなっている。
また、この節水具を、適用する水栓のタイプ又は流路の途中若しくは出口といった配置場所の相違など、その用途に応じて、水流方向に対する上下の向きを適宜反転して使用することを行えるものとしている。さらに、この節水具だけで複数の吐水流量に対応し、かつ誰でもが簡単に微妙な吐水流量の調整を行うことができるようになっている。一般に、シングルレバー式(ワンタッチレバー式)の水栓は、水流の途中に節水器を設置するのに適していない。この点、本発明の節水具は、蛇口出口に設置するタイプの節水具として使用するのに適するので、これをシングルレバー式(ワンタッチレバー式)の水栓の蛇口出口に設置することで、シングルレバー式(ワンタッチレバー式)の節水具として使用することができる。なお、この節水具を蛇口出口に設置するタイプの節水具として使用する場合、台座に形成された突出部を水流出口寄りに位置させて配置することで、該節水具を蛇口出口に係止させ易くなり、ねじ式キャップ等の固定手段を介した固定を容易に行うことができる。
本発明によれば、節水部材は、適宜の大きさの網目を持つ複数枚の板状メッシュを重ね合わせて構成するようにしたことから、所望の吐水流量に応じた節水部材を容易に製作することができるようになる。また、板状メッシュは薄く小さく形成することができその製造コストは非常に安いことから、節水部材の製作コストを低減することができるだけでなく、節水具を配置する際において持ち運ぶ部材が少なくて済むようになる、という優れた効果を奏する。
また、本発明に係る節水具は、節水部材を含む本体部分と台座とを分離構成することにより、前記節水部材を内部に配置して吐水流量の調整を行うことができる。すなわち、内部に配置された節水部材を容易に交換することができ、節水部材を交換するだけで異なる吐水流量に対応することのできる節水具を提供することができるようになる。また、台座を取り替えるだけで、口径の異なる水栓であっても取り付けることができる、という優れた効果を奏する。
さらに、本発明によれば、水流出口に設置し易く、また、水流出口に設置した場合に水量制限と干渉/緩衝作用による水流調整とを実現する構造からなる節水具が提供される、という優れた効果を奏する。これにより、水流出口に設置した場合に、日常的に使い易い性能を持つ、つまり使用感のよい節水具を提供することができることとなり、従来は良いものがなかったシングルレバー式(ワンタッチレバー式)の水栓に適した節水具を提供することができる。また、本発明に係る節水具は、水流方向に対する上下の向きをどちらにも設定できるので、シングルレバー式水栓又はハンドルコック式水栓などの適用する水栓のタイプ、又は流路の途中若しくは出口といった配置場所の相違など、その用途に応じて、水流方向に対する上下の向きを適宜反転して使用できる、という優れた効果を奏する。
以下、この発明の実施の形態を添付図面に従って詳細に説明する。
まず、本発明に係る節水具の一実施形態について、図1を用いて説明する。図1は本発明に係る節水具1の一実施例を示す略図であって、図1(a)は同節水具1の全体構造を示す分解斜視図、図1(b)は同節水具1の縦断面図である。この実施例に示す節水具1は節水及び整流を行うための複数の部材からなる本体部分と、該本体部分を支持して水栓に取り付けるための台座部分とに大きく分けることができる。この図1に示す実施例において本体部分を構成する複数部材とは流量調整部材2、円筒部材3、節水部材4の3つの部材であって、これら複数の部材を適宜に組み合わせることでユーザ所望の節水量に応じた節水具1を形成することができる。また、該本体部分に適宜の台座5を組み合わせることによって、取り付け対象の水栓の口径に合致する節水具1を形成することができるようにもなっている。以下、説明する。
この実施例に示す節水具1は、円筒部材3の側面壁に形成された通水孔3aと台座5の端部に形成された開口部5aとが水流の出入り口となるように、各部材が組み合されて形成されたものである。また、この節水具1の外部形状は、シングルレバー式水栓における水やお湯などを吐出する出口である水栓吐出部(蛇口の出口)Sに既設されているキャップCや板状メッシュ部Mなどを利用して該水栓吐出部S内に着脱可能に装着することのできるように(後述する図3参照)、該水栓吐出部S内部の形状に略フィットする形状となっている。勿論、節水具1の断面形状は真円に限ることなく、楕円や面取りされた多角形など適用する水栓流路の断面に適したものであればよく、要するに節水具1は概して筒状をなしていればよい。そうなるように、流量調整部材2、円筒部材3、節水部材4及び台座5の外形形状はそれぞれ形成されている。
円筒部材3はその一部の外形形状がスクリュー形状に形成された一種のネジに似たものであって、該円筒部材3自体を回転させることに応じて該円筒部材3をその両端部が開口した円筒形状の台座5の内部へと挿入することができ、これにより円筒部材3を台座5に固定して支持させることができる。この実施例においては、例えば円筒部材3の外周に雄ネジが、台座5の内周に雌ネジがそれぞれ切ってあり、円筒部材3自体を台座5の一方の端から締め込むことにより円筒部材3そのものを台座5に固定することができる(このような円筒部材3の外部に台座5を取り付けるようにしたものを、ここでは外ねじ方式と呼ぶ)。台座5の一端の開口部5a(図示例では水流吐出口側)には、台座5の本体円筒の径よりも幾分大径のフランジ(突出部)6が一体的に形成されている。このフランジ(突出部)6は、水栓の吐出部S(後述する図3参照)の端部に当該節水具1を係止するためのものである。台座5としては、フランジ6を含む部分の直径が例えば11〜25mm(ミリメートル)などの大きさを持つものが用意される。つまり、取り付ける水栓の口径の大きさにあわせて異なるサイズのフランジ6を具えた台座5が複数種類用意されており、ユーザは取り付け対象としたい水栓の口径にあわせて、該当するサイズのフランジ6が形成されている台座5を選ぶだけで、該水栓に合致するようにして節水具1を適切に取り付けることができる。このように節水具1を本体部分と台座5との取り外し可能な別体物として構成しておき、複数のサイズの台座5を予め用意しておくことによって、誰でもが簡単に取り付け対象の水栓の口径に合致する節水具1を取り付け可能となる。なお、このフランジ(突出部)6は完全な円形のものに限らず、要するに水栓に係止可能なように、台座5本体から外向きに突出しているものであればどのようなものであってもよい。また、フランジ6は台座5と一体形成される例に限らず、別体からなっていて、ねじ係合等により着脱されるようになっていてもよいし、あるいはゴム等で圧接させて係合する構成であってもよい。
上記台座5に支持される円筒部材3はその両端部が開口した円筒形状であって、さらにこの円筒部材3の側面壁には複数の通水孔3aが形成されている。この図1に示す実施例においては、90度の間隔で所定の大きさの開口部をもつ4つの長方形状の通水孔3aが形成されたものを示している。この構成では、流量調整部材2の上下動により流量調整がおこなわれる。流量調整部材2は円筒部材3に対して一方の開口部から着脱可能に装着することができるように、また円筒部材3内部の形状に略フィットする形状に形成される。この実施例に示す流量調整部材2は軸部がスクリュー形状に形成された一種のネジであって、そのヘッド部2aにはドライバーなどの取付器具を嵌め込むための溝が形成されている。例えば、流量調整部材2の軸部の外周に雄ネジ、円筒部材3の内周に雌ネジがそれぞれ切ってあり、ヘッド部2aに嵌め込んだ取付器具により該流量調整部材2をネジ廻して締め込むことに応じて、流量調整部材2の軸部を円筒部材3の内部に入り込ませ、円筒部材3内の任意の位置に流量調整部材2を固定することができる。このようにして流量調整部材2を円筒部材3内で上下動すると、該流量調整部材2の外周面が円筒部材3の側面壁に形成された複数の通水孔3aを部分的に塞ぐことになって、各通水孔3aの開口面積が変化することになる。こうした複数の通水孔3aの開口面積が変化することに伴って円筒部材3の外部から内部へと入り込む水量が変化することになるので、流量調整部材2を上下動することによる流量調整を実現することができるようになっている。図1(a)に示すように、円筒部材3の側面壁に形成された通水孔3aを水流入口とし、台座5の端部に形成された開口部5aを水流出口とした場合(水流の向きは矢印X方向である)、図示で上から来る水流Xは円筒部材3の外側と管路の内壁(図示しない)との間に入り込み、さらに円筒部材3の側面壁に形成された複数の通水孔3aから円筒部材3内部に入り込み、円筒部材3内部を通って最終的に台座5の開口部5aから吐出される。そこで、流量調整部材2を上下動して複数の通水孔3aの開口面積を調整することに伴い、円筒部材3内部に入り込む水量が調整されて最終的に吐出される水流の流量調整が行われる。
なお、流量調整の具体的な作用は、円筒部材3に設ける複数の通水孔3aの形状及び個数、開口面積及び配置等、あるいは水流の向きによって異なり得ることは言うまでもない。例えば、上記したような流量調整部材2を上下動することに応じて変化する円筒部材3の通水孔3aの実質的な開口面積の大小による流量調整においては、通水孔3aの口径の大小やその数や形状などに応じて制御できる流量の範囲が決まる。そのため、特に節水割合や使用者の使用感などを大きく変えるには、通水孔3aの口径の大小やその数や形状などが大きく異なって構成された円筒部材3を用いるようにするとよい。すなわち、使用者が求める減水量や使用感などに応じてだけでなく、取り付ける箇所における水量や水圧などにも応じて、円筒部材3の構成を決定するとよい。例えば、高層ビルやマンションなどにおいて、ビル上層部用として大径(開口面積大)、ビル中層部用として中径(開口面積中)、ビル下層部用として小径(開口面積小)にすれば、高さの違いによる水圧の相違に伴って異なる吐水流量(吐出量)に調整・制御することができる。
なお、一般的には、ステンレスあるいは真鍮などの耐腐食性金属素材を切削加工することで、所望の構造/形状の節水具1を構成する流量調整部材2、円筒部材3及び台座5(さらにはフランジ6)を製造するのがよいが、これに限らず、適宜の素材及び製造法により節水具1を構成する流量調整部材2、円筒部材3及び台座5(さらにはフランジ6)を製造してよい。
次に、節水具1内に配置される節水部材4について、図2を用いて説明する。図2は、節水部材の全体構成の一実施例を示す概念図である。図1に示す節水具1においては、上記したように円筒部材3の通水孔3aの開口面積を流量調整部材2によって調整することにより流量調整を行うことができるが、それだけでなく円筒部材3内の所定位置に配置した節水部材4によっても流量を調整することができるようにしている。節水部材4では、円筒部材3の通水孔3aで水流を絞ることによって生じるかもしれない好ましくないジェット流のような急勢な水流が蛇口から出る恐れを軽減しながら流量を調整する。さらに、節水作用によって水流量が減少されても、使用者の使用感が損なわれることがないようにしている。すなわち、節水部材4は水流量を絞る(節水)作用をもたらすのみならず、水流が節水部材4に当たることによる緩衝作用による水流の調整を図ることによって、使用者が使いやすく、かつ使用者に対して視覚的にも感覚的にも水量の少なさを感じさせない作用をもたらす。以下、説明する。
上記したように円筒部材3を台座5に取り付ける際には、節水具1内の所定位置、具体的には円筒部材3の側面壁に形成された通水孔3aから流入された水を受ける位置に節水部材4を配置する(図1参照)。この節水部材4は着脱可能な別体物として形成されており、図1に示す実施例においては台座5内に形成された突起部5b上に載置した状態に着脱可能に載置することができるようになっている。すなわち、該節水部材4は取り外し可能な円筒部材3と台座5との間に載置可能となっていることから、所望の節水量及び減圧若しくは整流作用が得られる節水部材4への交換を、円筒部材3と台座5とを取り外すだけで簡単に行うことができる。この節水部材4は、多数の線材がそれぞれ適切な形状及び個数、配置及び寸法で網目状に張り巡らされた板状メッシュが複数枚重ね合わせて形成されている。該節水部材4を構成する複数枚の板状メッシュは、追って説明するように、所望の節水量及び減圧若しくは整流作用が得られるように適宜設計して調整した規格の異なるものを重ね合わせている。
図2に示すように、この実施例に示す節水部材4は網目状に線材が張り巡らされた、リム部を有しない(つまり網部分の厚みと外周の厚みとがほぼ同じ)、かつ所定の規格毎に網目の大きさが異なる複数枚の板状メッシュ4a、4b、4cを重ね合わせて一体的に構成したものである。すなわち、個々の板状メッシュ4a、4b、4cには異なる線径を持つ線材が網目状に配置されており、これらの各板状メッシュ4a、4b、4cが例えば燒結や溶接あるいは接着などの適宜の方法に応じてその外周部分の一部又は全部が固定されて一体化されている。個々の板状メッシュ4a、4b、4cは、円筒部材3内に台座5との取り付け側から略ぴたりと嵌め込まれるような外形形状に形成されており、またそのような嵌め込みに適した寸法を持つ。
上記構成からなる節水部材4の作用について、簡単に説明する。この節水部材4では水流量を絞る(節水)作用をもたらすのみならず、重ね合わせた板状メッシュ4a〜4cの開口以外の個所(線材)に当たることによる緩衝作用による水流の調整を図ることができる。すなわち、規格の異なる板状メッシュ4a〜4cを重ね合わせることによって、各板状メッシュ4a〜4cによる段階的な水流量の絞り込みを図ることができる。具体的な作用は、節水部材4を構成する各板状メッシュ4a〜4cの形状及び個数等によって異なり得る。各板状メッシュ4a〜4cの網目が粗過ぎる場合には、円筒部材3の通水孔3aで絞られた水流が節水部材4であまり干渉されることなくそのまま通過してしまうことから、水流量を絞ることができない。そこで、ここでは目の細かいものを用いることによって水流を絞る。重ね合わせる各板状メッシュ4a〜4cの具体例を挙げると、例えば3段構成の節水部材4である場合には上段に線径(線材の太さ)0.18mm、厚さ0.36mm、空間0.46mm、開口率52%の板状メッシュ4aを、中段に線径0.22mm、厚さ0.44mm、空間0.28mm、開口率32%の板状メッシュ4bを、下段に線径0.14mm、厚さ0.28mm、空間0.28mm、開口率45%の板状メッシュ4cなどがある。勿論、重ね合わせる各板状メッシュ4a〜4cは上記規格のものに限らない。
また、節水部材4は、円筒部材3の通水孔3aから吐き出された水流を受圧する。すなわち、円筒部材3の通水孔3aから吐き出された水流は線材部分に当接することから、円筒部材3において調整された水流は減圧される。また、個々の板状メッシュ4a〜4cは異なる線径を持つ線材を網目状に配置した形状であることから、これを重ね合わせることによって各板状メッシュ4a〜4c間の全域にわたって適宜の空間をそれぞれ存在させることになる。この空間により、個々の板状メッシュ4a〜4cを通過した水流は各板状メッシュ4a〜4c全域にわたって広がる。この実施例では3枚の板状メッシュ4a〜4cを設け、各板状メッシュ4a〜4cによる整流効果を相加的若しくは相乗的に高めている。上段の板状メッシュ4aを通過した水流は、2段目の板状メッシュ4bの全域にわたる隙間に入り、該板状メッシュ4bの全域にわたって広がる。さらに、2段目の板状メッシュ4bを通過した水流は、3段目の板状メッシュ4cの全域にわたる隙間に入り、該板状メッシュ4cの全域にわたって広がる。こうして、円筒部材3の通水孔3aから出る水流が蛇口出口面積の全体にわたって更に均等に振り分けられるようにされる。蛇口出口面積の全体にわたって一層均等に振り分けられた水流は、板状メッシュ4cの全域にわたって略均等に設けられた多数のメッシュを通過し、落下する。このようにして、最終的に吐き出される水流が蛇口出口一杯により一層均等に広がるようにする整流効果が実現される。明らかなように、3枚の各板状メッシュ4a〜4cがそれぞれ同規格で開口部が同位置で重なったのでは、相加的若しくは相乗的な整流効果は薄れる。よって、複数枚の板状メッシュ4a〜4cを重ねて配置する場合には、異なる規格の板状メッシュを、各板状メッシュに形成された複数のメッシュの位置がすべて一致することのないように、それぞれが適宜ずれた状態となるようにして配置するとよい。また、このような整流効果をより効果的に得るために、節水部材4を構成する板状メッシュ4a〜4cに対してエンボス加工等を施すことによってそのメッシュ面を凹凸状に形成するとよい。このようにすると、メッシュ面に形成された凹凸の高さに応じて、重ね合わせた各板状メッシュ4a〜4c間の全域にわたって適宜の空間を線径によるよりも大きく存在させることができ、また凹凸の高さはエンボス加工等の加工の程度に応じて調整することができることから、整流効果の異なる節水部材4を容易に形成することができるようになる。なお、各板状メッシュ4a〜4cの網目を形成する線材の線径を異ならせることによって、メッシュ面を凹凸状に形成するようにしてもよい。
このようにして、節水部材4では円筒部材3の通水孔3aから出る水流を板状メッシュ4a〜4cの全体にわたって略均等に振り分け、最終的に吐き出される水流が蛇口出口一杯に広がるように整流効果を実現する。したがって、節水作用によって水流量が減少されても、蛇口出口一杯に広がるよう整流された吐出水流によって、感覚的にも視覚的にも、使用者の使用感が損なわれることがない、という優れた効果を奏する。
なお、上述した実施例においては上段から下段へと次第に目が細かくなっていくように、目の細かさの異なる(規格の異なる)板状メッシュ4a〜4cを順に重ね合わせるようにするとよいがこれに限らない。例えば、水圧が低いような場合には反対に下段から上段へと次第に目が細かくなっていくように、板状メッシュ4a〜4cを順に重ね合わせるようにするとよい。また、次第に目が細かくなっていくように重ね合わせなくてもよいし、必ずしも目の細かさが全て異なる板状メッシュ4a〜4cを重ね合わせなくてもよい。すなわち、水圧や水流の絞り具合などに応じて、適宜の板状メッシュ4a〜4cを重ね合わせて節水部材4を形成するとよい。
上述したように、円筒部材3を用いた場合において節水割合や使用者の使用感などを大きく変えるためには、通水孔3aの口径の大小やその数や形状などが大きく異なって構成された円筒部材3を用いるようにするとよいが、こうした円筒部材3を節水量等に応じて多数用意するには非常にコストがかかり都合が悪い。これに比べて、節水部材4は薄く小さく形成することができ、またその製造コストは非常に安い。したがって、節水量等に応じて円筒部材3を多数用意するよりも、節水部材4を多数用意してこれを適宜に用いるようにした方が有利である。こうしたことは、節水具1を製作する際にかかるコストを低減することができるだけでなく、実際に節水具を配置する際に持ち運ぶ部材が少なくて済む、などの点でも有利である。ただし、図1に示したように、円筒部材3と節水部材4とを併用する節水具1を用いた場合には、大まかな調整を節水部材4で、細かな調整を円筒部材3で、必要に応じてそれぞれを用いて流量調整を実現することができるので非常に便利である。勿論、細かな調整を行わなくてもよい場合には円筒部材3を配置する必要はなく、台座5内に配置される節水部材4のみで大まかな節水効果を得ることができる。すなわち、台座5と節水部材4のみで節水具1を構成することができる。こうした構成はよりシンプルであるにも関わらず大きな節水効果を得ることができ、また製造コストを非常に低くすることができるので有利である。
なお、節水部材4を構成する各板状メッシュの数やこれらを形成する線材の太さや密度、あるいは各板状メッシュの組み合わせ方などは適宜のものであってよい。3枚重ねに限らず、2枚だけであってもよいし、あるいは3枚以上重ねてもよい。例えば節水部材4を4段構成で実現する場合には、上記した3段構成の下段の板状メッシュの下に上段と同様の線径0.18mm、厚さ0.36mm、空間0.46mm、開口率52%の板状メッシュをさらに配置して、サンドイッチ構造とするなどしてよい。この場合、相対的に目の粗い板状メッシュで目の細かい板状メッシュを挟み込むようにするとよい。
なお、節水部材4を構成する各板状メッシュはステンレスなどの耐腐食性金属素材を用いて製造するのがよいがこれに限らず、樹脂などの素材を用いて製造してもよい。例えば、平板状の樹脂板に対してパンチするなどして網目を形成したものであってもよい。
なお、円筒部材3は、必ずしも流量調整部材2を上下動することに応じて通水孔3aの実質的な開口面積の大小による流量調整を行えるようになっていなくてもよい。この場合には、異なる大きさの通水孔3aを持つ円筒部材3に必要に応じて適宜に取り替えることによって、円筒部材3による流量調整を行うようにすればよい。
次に、上記節水具1をシングルレバー式水栓の節水装置に適用する実施例について、図3により説明する。図3は、図1に示した節水具1をシングルレバー式水栓の蛇口出口に取り付けるようにした節水装置10の一実施例を示す断面図である。
シングルレバー式水栓においては、水栓吐出部(蛇口出口)Sの外周に雄ネジ、キャップCの内周に雌ネジがそれぞれ切ってあり、複数枚のメッシュ部MをキャップCと吐出部(蛇口出口)Sとの間に挟み込み、キャップCをネジ廻して締め込むようになっているものがある。図3に示す節水装置10は、そのようなタイプのシングルレバー式水栓において、上記節水具1を台座5のフランジ6側の端部5aが水流の下流寄りになるように配置し、その円筒部材3を該シングルレバー式水栓の水栓吐出部S内部に嵌め入れ、適宜のパッキンPを介在させて水栓吐出部Sの端部にフランジ6を当接させ、その下流に複数枚のメッシュ部Mを配置し、キャップCをネジ廻して締め込むことで、これら全体をキャップCと水栓吐出部Sの端部との間に挟み込んで固定するようにしたものである。この構成によれば、上述の節水具1にパッキンPを付加するだけで、既存の蛇口出口にメッシュ部M及びキャップC付きのシングルレバー式水栓に容易に適用できる節水装置10が提供される。
なお、こうした節水装置10は、流れ出る水に対して空気を含ませることのできる泡沫水栓用のキャップ内にも同様に取り付けることができることは言うまでもない。
節水具1の具体的構成は上述したものに限らず、種々に変形可能である。すなわち、この発明に係る節水具1においては円筒部材3や台座5としてそれぞれ異なる種類の部材を適宜に組み合わせることによって、ユーザ所望の節水量や取り付け対象の水栓の口径にあわせた節水具1を簡単に構成することができる。図4は、節水具1の変形例を示す断面図である。図4に示すように、円筒部材3の側面壁に形成する複数の通水孔3aは、水流方向に対して垂直ではなく、適宜斜めを成して形成した構成であってよい。また、ここに示す実施例の節水具1は、円筒部材3と台座5との取付を上記した外ねじ方式ではなく、例えば円筒部材3の内周に雌ネジが、台座5の開口部5a側の外周に雄ネジがそれぞれ切ってあり、台座5を円筒部材3内に締め込むようにして固定することのできる方式(このような円筒部材3の内部に台座5を取り付けるようにしたものを、ここでは内ねじ方式と呼ぶ)で実現するようにしてもよい。こうした場合には、図4から理解できるように節水部材4を台座5内に配置するのではなく、台座5の上面に配置するようにしてよい。
なお、流量調整部材2の軸部に側面から底面へと抜ける所定の大きさ・形状の複数の孔を設けておき、この孔と円筒部材3の側面壁に形成する複数の通水孔3aとの重ね合わせにより、実質的な開口面積(つまり流路の大きさ)を決定して流量を調整することができるようにしてあってもよい。こうした場合には、流量調整部材2が円筒部材3の通水孔3aをほぼ完全に塞ぐ位置まで下降したとしても、所定の吐水流量を確保することができることから都合がよい。
図5は、節水具1の別の変形例を示す断面図である。図5に示す実施例では円筒部材3の内部ではなく、円筒部材3の外部に流量調整部材Rを配置している。上記した節水具1と同様に、この実施例においても複数の通水孔3aが円筒部材3の側面壁に形成されており、図示で上から来る水流はこうした該円筒部材3の側面壁の複数の通水孔3aから円筒部材3の内部に入り込む。この構成では、円筒部材3の外部にネジ式に取付可能なリング状の流量調整リングRを上下動することにより、流量調整を行う。すなわち、流量調整リングRを上下動すると該流量調整リングRにおける内周面が複数の通水孔3aを部分的に塞いでいくことになるので、これにより通水孔3aの実質的な開口面積(つまり流路の大きさ)が変化する。こうした複数の通水孔3aの実質的な開口面積が変化することに伴い、複数の通水孔3aから円筒部材3内部に入り込む水量が変化する。つまり、流量調整を実現することができる。なお、この場合には円筒部材3の内部に配置された流量調整部材2は所定位置に固定することで流量調整機能を持たせないようにしてもよいし、円筒部材3内を上下動することで外部に配置された流量調整リングRと共に流量調整機能を持たせるようにしてもよい。流量調整部材2に流量調整機能を持たせない場合には、流量調整部材2を適宜の位置でポンチ打ちして固定しておくか、あるいは予め円筒部材3と一体形成しておいてもよい。
なお、円筒部材3の外部に配置する流量調整リングRの側面に通水孔(図示せず)を設けておき、この通水孔と円筒部材3の側面壁の通水孔3aとの重ね合わせ具合により、流量を調整することができるようにしてよい。この場合には、円筒部材3の外周に沿ってリング状の流量調整リングRを自在に回転すると、円筒部材3の側壁面の通水孔3aの位置と流量調整リングRの通水孔の位置との相対的な位置が変化して重ね合わせ状態が変わる。すなわち、通水孔3aの実質的な開口面積(つまり流路の大きさ)が変化する。この開口面積の大小によって、水流量の絞り込みがなされ、スムーズな流量調整が行われる。
図6は、節水具1の更なる別の変形例を示す断面図である。上記した各実施例においては円筒部材3の側壁面に通水孔3aが形成されているものを例に説明したが、この図6に示す節水具1は円筒部材3内に隔壁状の水流調整部7を一体的に形成したものである。上下段に形成された各水流調整部7には、1又は複数の通水孔7a又は7bがそれぞれ適切な形状、配置及び寸法で開口形成されている。ここでは、4つの通水孔7aを有する上段の水流調整部7と、中央部に1つの通水孔7bを有する下段の水流調整部7とを具えたものを例に示している。この節水具1においては、円筒部材3内にそれぞれ一体形成された上下段の水流調整部7の通水孔7a、7bの開口面積の大きさ(つまり流路の大きさ)に応じた水流量の絞り込みがなされることから、開口間隔の大小を調整することによりスムーズな流量調整を行うことができる。また、上段の水流調整部7の通水孔7aから流れ出る水流が下段の水流調整部7の通水孔7b以外の部分に当たることにより、干渉/緩衝作用が生じ、水流を調整することができるようにもなっている。また、この場合には各水流調整部7の通水孔7a、7bの厚さを考慮して調整するとよい。すなわち、絞り量を相対的に大きくすると、水の勢いが相対的に減ぜられて、使用者の使用感を損なうことがあり得る。そこで、絞り孔の厚さを増すとそれに応じて水の勢いが増すことが知られているので、水流調整部7の通水孔7a、7bの厚さ(つまり、各水流調整部7の厚さ)を適宜の厚み加減に調整することによって、使用者の使用感を損なわないように調整水流に勢いをつけることができる。なお、水流調整部7に設ける通水孔7aは図中において一点鎖線で示すように斜め方向を向く傾斜上に形成してもよい。この図6に示した例では、水流絞り量を調整する上段の水流調整部7の通水孔7aを、水流方向に平行ではなく、適宜斜めを成して形成した構成を示している(好ましくは下面側で外側寄りとなり、その反対側で中心寄りとなっているような斜め方向)。
図7は、節水具1の更なるまた別の変形例を示す断面図である。図7に示す節水具1では、円筒部材3に対して1段の水流調整部7のみを板(あるいは隔壁)状に一体的に形成してあり、この円筒部材3と節水部材4を載置可能な台座5との間に流量調整部材8を配置している。この実施例に示す台座5は2つに分離することができ、フランジを有する台座5cに他方の台座5bを載置することができる。流量調整部材8は図示のような台座5b内に形成された突起部に着脱可能に装着することのできるように、円筒部材3及び台座5b及び台座5cとは別体物として構成され、その外部形状は台座5b内部の形状に略フィットする形状に形成される。水流調整部7及び流量調整部材8には1又は複数の通水孔7a、8aが開口形成されており、これらの各通水孔7a、8aは適宜の形状及び個数であってよく、またその開口面積及び配置は所望の節水量及び減圧若しくは緩衝作用が得られるように適宜設計して調整される。すなわち、流量調整部材8は円筒部材3を台座5bに取り付ける際に台座5b内に先に挿入され、その後円筒部材3を締めまわすことによって台座5bと円筒部材3とで該流量調整部材8を挟み込むようにして固定される。この際に、水流調整部7と流量調整部材8のそれぞれを相対的に回転すると、該回転量に応じた分だけ水流調整部7の通水孔7aの位置と流量調整部材8の通水孔8aとの相対的な位置が変わり、図において上から下へと流れる水の流路となる実質的な開口面積が変化する。この開口面積の大小(つまり、水流調整部7の通水孔7aと流量調整部材8の通水孔8aとの重ね合わせ状態により形成される流路の大きさ)によって水流の絞り込み量が決まり、流量調整が行われる。また、水流調整部7の通水孔7aと流量調整部材8の通水孔8aとの相対的な位置が変化すると、水流が開口部以外の個所(障害物)に当たる面積も変わることから、これにより生ずる干渉/緩衝作用による水流の調整を行うこともできる。なお、最終的な節水量(絞り量)は、上記のように水流調整部7と流量調整部材8とが重ね合わされたときの通水孔7a、8aの開口面積の大小によって決まるので、所望の節水量(絞り量)が得られるように水流調整部7と流量調整部材8の各通水孔7a、8aのサイズを設計・加工時において適宜調整すればよい。また、この場合においても水流調整部7と流量調整部材8の厚さを適宜の厚み加減に調整することによって、使用者の使用感を損なわないように、調整水流に勢いをつけることができる。
台座5cは筒状部を有し、前記筒状部の内周に複数枚の板状メッシュからなる節水部材4の周縁を支持するためのへこみ部を有しており、ここに節水部材4を配置することができる。この節水部材4をへこみ部に配置した台座5cに対して、上記円筒部材3及び流量調整部材8を取り付けた台座5bを組み合わせることによって節水具1が形成される。なお、ここでは台座5cのへこみ部に節水部材4を配置する例を示したがこれに限らず、節水部材4を台座5cの筒上部上面に配置するようにしてもよい。
図8は、節水具1のまた別の変形例を示す断面図である。図8に示す実施例では、図6に示した節水具の上段に形成した水流調整部7の変わりに、下段の水流調整部7上に節水部材4´を配置したものである。すなわち、図示のように節水部材4を上下段の2段に配置した2段構成の節水具1である。この場合には、上下段に配置されたそれぞれの節水部材4´、4及び中央部に1つの通水孔7bを有する水流調整部7において、水流調整が行われる。
上記各実施例では、本実施例に係る節水具1を蛇口出口に設置するタイプの節水装置10に適用する例、例えばシングルレバー式水栓の蛇口出口に設置する節水装置10に適用する例について説明したがこれに限らず、該節水具1をハンドルコック式水栓用節水器あるいはシャワー用節水器などのように流路の途中に設置するタイプの節水器としても使用することができる。その場合、該節水具1の水流方向に対する上下の向きを反転して使用する。以下、この場合の実施例について図8を用いて説明する。図9は、上記節水具1をハンドルコック式水栓用節水器あるいはシャワー用節水器などのように流路の途中に設置するタイプの節水器としても使用する場合を示す側断面図である。
図9に示すように、本実施例に係る上述の節水具1をハンドルコック式水栓用節水器あるいはシャワー用節水器などのように流路の途中に設置するタイプの節水器として使用する場合には、シングルレバー式水栓用節水器として使用する場合とは逆に、該節水具1の上下を反対にして、台座5のフランジ6側の端部5aを上流寄りに配置し、該フランジ6をスパウトZの上端に係止させ、該スパウトZを締め付け固定するためのキャップネジ等の手段によって固定する。このように流路途中のスパウトZの上端に節水具1を設置するための構造は公知のものを適宜用いればよいため、その詳細は特に説明しない。
この構成によると、まず節水部材4により水流が絞られて、その後に流量調整部材2によって干渉/緩衝されて水流調整がなされる。この際に、流量調整部材2の底面は斜度を持つように形成されていることから、節水部材4から吐出された水流は流量調整部材2の底面に沿って円筒部材3の通水孔3aから滑らかに吐出される。また、この場合には円筒部材3の通水孔3aから蛇口出口までに或る程度の距離が存在するので、この距離分のスパウトZの内側壁が水流ガイド壁(若しくはスリーブ)となり、整流作用を得ることができる。これによっても、調整部材3において水流を絞ることによって生じるかもしれない好ましくないジェット流のような急勢な水流が蛇口から出る恐れを軽減することができる。すなわち、調整部材3において絞られた水流が勢いよく飛び出したとしても、該飛び出した水はスパウトZの内側壁に衝突することから水の整流が行われてスパウトZ内を水が滑らかに流れていくようになる。このように、流路の途中に節水具1を配置する場合は、スパウトZ等の流路の存在によって水流の整流化が図れる。このように、本発明に係る節水具1はシングルレバー式水栓に用いることができるだけでなく、ハンドルコック式水栓にも用いることができるようになっている。こうしたことは、節水具1を製作する際にかかるコストを低減することができる、実際に節水具を配置する際に持ち運ぶ部材が少なくて済む、などの点で有利である。
本発明に係る節水具の全体構造の一実施例を示す分解斜視図である。
本発明に係る節水具の一実施例を示す縦断面図である。
節水部材の全体構成の一実施例を示す概念図である。
同節水具をシングルレバー式水栓の蛇口出口に取り付けるようにした節水装置の一実施例を示す断面図である。
節水具の変形例を示す断面図である。
節水具の別の変形例を示す断面図である。
節水具の更なる別の変形例を示す断面図である。
節水具の更なるまた別の変形例を示す断面図である。
節水具のまた別の変形例を示す断面図である。
節水具をハンドルコック式水栓用節水器あるいはシャワー用節水器などのように流路の途中に設置するタイプの節水器としても使用する場合を示す側断面図である。
符号の説明
1…節水具
2…流量調整部
3…円筒部材
3a、7a、7b、8a…通水孔
4、4´…節水部材
5、5b、5c…台座
5a…開口部
6…フランジ
7、7´…水量調整部
8…流量調整部材
10…節水装置
C…キャップ
M…板状メッシュ部
P…パッキン
S…水栓吐出部
Z…スパウト