以下、図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。本発明は、第1現像剤に5%以下の重量比でキャリアが混合されている限りにおいて、実施形態の構成の一部または全部を、その代替的な構成で置き換えた別の実施形態でも実施できる。
従って、二成分現像剤を用いて画像形成を行う画像形成装置であれば、タンデム型/1ドラム型、中間転写型/記録材搬送型/直接転写型の区別無く実施できる。本実施形態では、トナー像の形成/転写に係る主要部のみを説明するが、本発明は、必要な機器、装備、筐体構造を加えて、プリンタ、各種印刷機、複写機、FAX、複合機等、種々の用途で実施できる。
なお、特許文献1、2に示される画像形成装置の一般的な事項については、図示を省略して重複する説明を省略する。
<画像形成装置>
図1は画像形成装置の構成の説明図である。図1に示すように、画像形成装置100は、中間転写ベルト5に沿ってイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの画像形成部Pa、Pb、Pc、Pdを配列したタンデム型中間転写方式のフルカラープリンタである。
画像形成部Paでは、感光ドラム1aにイエロートナー像が形成されて中間転写ベルト5に一次転写される。画像形成部Pbでは、感光ドラム1bにマゼンタトナー像が形成されて中間転写ベルト5上のイエロートナー像に重ねて一次転写される。画像形成部Pc、Pdでは、それぞれ感光ドラム1c、1dにシアントナー像、ブラックトナー像が形成されて、同様に中間転写ベルト5上に順次重ねて一次転写される。
中間転写ベルト5に担持された四色のトナー像は、二次転写部T2へ搬送されて記録材Pへ一括二次転写される。四色のフルカラートナー像を二次転写された記録材Pは、中間転写ベルト5から曲率分離して定着装置16へ送り込まれる。定着装置16は、記録材Pを加熱加圧して表面にトナー像を定着させる。その後、記録材Pが機体外部へ排出される。
画像形成部Pa、Pb、Pc、Pdは、現像装置4a、4b、4c、4dで用いるトナーの色がイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックと異なる以外は、実質的に同一に構成される。以下では、ブラックの画像形成部Pdについて説明し、他の画像形成部Pa、Pb、Pcについては、説明中の構成部材に付した符号の末尾のdをa、b、cに読み替えて説明されるものとする。
画像形成部Pdは、感光ドラム1dの周囲に、コロナ帯電器2d、露光装置3d、現像装置4d、一次転写ローラ6d、ドラムクリーニング装置7dを配置している。
感光ドラム1dは、帯電極性が負極性の感光層をアルミニウムシリンダの基体上に形成して構成され273mm/secのプロセススピードで矢印R1方向に回転する。コロナ帯電器2dは、コロナ放電に伴う荷電粒子を照射して感光ドラム1dの表面を、負極性の暗部電位VDに一様に帯電処理する。
露光装置3dは、ブラックの分解色画像を展開した走査線画像データをON−OFF変調したレーザービームを回転ミラーで走査して、感光ドラム1dの表面に画像の静電像を書き込む。暗部電位VDに帯電した感光ドラム1dの表面電位が露光を受けて明部電位VLに低下することで、負極性に帯電したトナーが付着可能となる。なお、露光装置3dは、レーザービームスキャナに代えて、発光ダイオード素子アレイ等他の画素列発光体を用いることもできる。
現像装置4dは、後述するように、感光ドラム1dに形成された静電像を反転現像してトナー像を形成する。一次転写ローラ6dは、中間転写ベルト5の内側面を押圧して感光ドラム1dと中間転写ベルト5の間に一次転写部を形成する。一次転写ローラ6dに正極性の電圧を印加することにより、感光ドラム1dに担持されたトナー像が中間転写ベルト5へ一次転写される。
ドラムクリーニング装置7dは、感光ドラム1dにクリーニングブレードを摺擦させて、中間転写ベルト5への一次転写を逃れて感光ドラム1dに残った転写残トナーを回収する。
中間転写ベルト5は、テンションローラ61と駆動ローラ63と対向ローラ62に掛け渡して支持され、駆動ローラ63に駆動されて273mm/secのプロセススピードで矢印R2方向に回転する。
二次転写ローラ10は、対向ローラ62によって内側面を支持された中間転写ベルト5に当接して二次転写部T2を形成する。記録材カセット12から引き出された記録材Pは、分離ローラ13で1枚ずつに分離して、レジストローラ14へ送り出される。レジストローラ14は、停止状態で記録材Pを受け入れて待機させ、中間転写ベルト5のトナー像にタイミングを合わせて二次転写部T2へ記録材Pを送り出す。
トナー像と重ねて記録材Pが二次転写部T2を挟持搬送される過程で、二次転写ローラ10に正極性の直流電圧が印加されることにより、フルカラートナー像が中間転写ベルト5から記録材Pへ二次転写される。転写されずに中間転写ベルト5の表面に残った転写残トナーは、ベルトクリーニング装置18に回収される。
なお、感光ドラム1dは、アモルファスシリコン感光体等の無機感光体を使用することもできる。また、ベルト状の感光体を用いることも可能である。帯電方式、転写方式、クリーニング方式、定着方式に関しても、上記方式に限られるものではない。
<現像装置>
図2は現像装置の構成の説明図である。図3は現像装置の平面図である。
図2に示すように、現像装置4dは、感光ドラム1d表面から所定の隙間を隔てて現像スリーブ28が対向するように設置されている。現像装置4dは、トナーとキャリアを含む現像剤(二成分現像剤)を帯電させて、回転する現像スリーブ28に担持させて、感光ドラム1dとの対向部へ搬送する。現像剤は、磁気ブラシ状態で感光ドラム1dの静電像を摺擦して、静電像にトナーを付着させて反転現像する。
図3に示すように、現像剤は、現像装置4dの現像容器22内を撹拌を受けつつ矢印で示すように循環する過程で、トナーとキャリアが摩擦して、トナーが負極性に、キャリアが正極性にそれぞれ帯電する。現像容器22の内部は、長手方向に延在する隔壁27によって、ほぼ中央で現像室23と撹拌室24とに区画されている。現像室23と撹拌室24は、隔壁27の長手方向の両端部の開口部11、12で連通している。
第1搬送路の一例である現像室23には、搬送スクリュー25が配置され、第1搬送路と一体に現像剤の循環路を形成する第2搬送路の一例である撹拌室24には、搬送スクリュー26が配置される。搬送スクリュー25は、現像スリーブ28に沿ってほぼ平行に配置され、図2に示すように、回転に伴って現像スリーブ28に現像剤を供給する。搬送スクリュー25は、矢印R5方向(時計回り方向)に回転する。時計回りとした理由は、現像スリーブ28への現像剤の上向き供給という観点で有利だからである。
搬送スクリュー26は、撹拌室24内に搬送スクリュー25とほぼ平行に配置され、搬送スクリュー25と逆方向(半時計回り)に回転する。搬送スクリュー25、26は、隔壁27を挟んで現像剤を長手方向の逆方向に搬送して、図3に示す隔壁27の開口部11、12を通じて現像剤を受け渡すことにより、現像室23と撹拌室24とに現像剤を循環させる。
図2に示すように、現像容器22の感光ドラム1dに対向した現像領域に相当する位置に開口部が設けられ、この開口部に、現像スリーブ28が感光ドラム1d方向に一部露出するように回転可能に配設されている。現像スリーブ28は、アルミニウムやステンレスのような非磁性材料で構成されて直径は20mm、感光ドラム1dの直径は80mmである。現像スリーブ28と感光ドラム1dとが最近接する現像領域における対向間隔は、現像領域に搬送した現像剤を感光ドラム1と接触させた状態で現像が行なえるように、約400μmに設定されている。
現像スリーブ28の内部にはキャリアを拘束する磁界形成部材であるマグネットローラ28mが非回転状態に設置されている。マグネットローラ28mは、感光ドラム1に対向させた現像極S2と、規制ブレード(穂切り部材)29に対向させた磁極S1と、磁極S1、S2の間の磁極N1と、現像室23に対向させた磁極N2、N3とを有する。
現像スリーブ28は、現像時に、矢印R4方向(反時計方向)に回転し、規制ブレード29による磁気ブラシの穂切りによって層厚を規制された現像剤を担持して、これを感光ドラム1dと対向する現像領域へ搬送する。現像領域では、現像極S2の磁界に応答して形成される二成分現像剤の磁気ブラシが感光ドラム1d上に形成された静電像を摺擦しつつトナーを付着させて静電像を反転現像する。
この時、現像効率、つまり、静電像へのトナー付与率を向上させるために、現像スリーブ28には、電源D4から直流電圧Vdcに交流電圧を重畳した振動電圧が印加される。本実施形態では、ピーク・ツウ・ピーク電圧Vppが1800Vで周波数fが12kHzの矩形波の交流電圧を−500Vの直流電圧Vdcに重畳して用いた。しかし、直流電圧Vdc値、交流電圧Vpp、波形は、これに限られるものではない。
このような磁気ブラシ現像法においては、交流電圧を印加すると現像効率が増して画像は高品位になるが、逆に、画像の白地部にトナーが付着する白地かぶり画像が発生し易くなる。このため、現像スリーブ28に印加する直流電圧Vdcと感光ドラム1dの帯電電位(白地部電位)との間に電位差(かぶり取りコントラスト)を設けて、白地かぶりを防止している。
磁気ブラシの穂切り部材である規制ブレード29は、感光ドラム1dよりも現像スリーブ28の回転方向上流側に配設されて、現像スリーブ28の長手方向に沿って延在している。規制ブレード29は、板状のアルミニウムなどで形成されて層厚を規制する非磁性部材29aと、キャリアを磁気的に緩く拘束して現像剤溜まりを形成するための鉄材のような磁性部材29bとで構成される。
そして、規制ブレード29の先端と現像スリーブ28との間隙を、現像剤が通過して現像領域へと送られ、この間隙を調整することによって、現像スリーブ28上に形成される磁気ブラシの穂切り量が規制されて、現像領域へ搬送される現像剤量が調整される。規制ブレード29と現像スリーブ28は、間隙を200〜1000μm、好ましくは300〜700μmに設定される。本実施形態では、500μmに設定しており、規制ブレード29によって、現像スリーブ28上の単位面積当りの現像剤コート量を30mg/cm2に規制している。
現像領域においては、現像スリーブ28は、感光ドラム1dの表面の移動方向と順方向に回転し、周速比は、感光ドラム1dとの周速比で1.75倍の周速で回転する。この周速比に関しては、0〜3.0倍の間で設定され、好ましくは、0.5〜2.0倍の間に設定されれば、何倍でも構わない。移動速度比は、大きくなればなるほど、現像効率がアップするが、大き過ぎると、トナー飛散、現像剤劣化等の問題が発生し易くなるので、上記の範囲内で設定することが好ましい。
<二成分現像剤>
現像剤は、トナー(非磁性)とキャリア(磁性)を含む二成分現像剤である。トナーは、結着樹脂、着色剤、そして、必要に応じてその他の添加剤を含む着色樹脂粒子と、コロイダルシリカ微粉末のような外添剤が外添されている着色粒子とを有している。トナーは、負帯電性のポリエステル系樹脂であり、体積平均粒径は4μm以上、10μm以下が好ましい。より好ましくは8μm以下であることが好ましい。
また、キャリアは、例えば、表面酸化或は未酸化の鉄、ニッケル、コバルト、マンガン、クロム、希土類などの金属、及びそれらの合金、或は酸化物フェライトなどが好適に使用可能であり、これらの磁性粒子の製造法は特に制限されない。キャリアは、重量平均粒径が20〜60μm、好ましくは30〜50μmであり、抵抗率が107Ωcm以上、好ましくは108Ωcm以上である。本実施形態では、108Ωcmのものを用いた。
トナーの体積平均粒径は、以下に示す装置及び方法にて測定した。測定装置としては、コールターカウンターTA−II型(コールター社製)を使用し、電解水溶液として一級塩化ナトリウムを用いて調製した1%NaCl水溶液を使用した。
測定方法は、以下に示す通りである。すなわち、上記の電解水溶液100〜150ml中に分散剤として界面活性剤、好ましくはアルキルベンゼンスルホン酸塩を0.1bl加え、測定試料を0.5〜50mg加える。
試料を懸濁した電解水溶液は、超音波分散器で約1〜3分間分散処理を行い、上記のコールターカウンターTA−II型により、アパーチャーとして100μmアパーチャーを用いて2〜40μmの粒子の粒度分布を測定して体積平均分布を求めた。こうして求めた体積平均分布より、体積平均粒径を得た。
キャリアの抵抗率は、測定電極面積4cm、電極間間隔0.4cmのサンドイッチタイプのセルを用いて測定した。セルの片方の電極に10N(1kg)の加圧下で、両電極間の印加電圧E(V/cm)を印加して、回路に流れた電流から、キャリアの抵抗率を得る方法によって測定した。
これらのトナーとキャリアを、現像剤に含まれるトナーの重量比(以後T/D比)で8%の割合で混合したものを、標準現像剤として用いた。画像の品位を保つ観点からは、T/D比としては5〜20%が適当であった。20%を超えるとキャリア表面のトナーが過剰になり、キャリアと接触しないトナーが存在しはじめるが、このようなトナーはキャリアと接触しないのでトリボが極度に低く、また、キャリアとの静電付着が極度に小さくなるので、遊離してかぶり画像となりやすい。一方、5%以下ではトナーのトリボが極度に高く、キャリアとの静電付着力が大きくなるので、トナーが現像されるときに、トナーと共にキャリアも感光ドラム上に一緒に現像され、不良画像となりやすい。
<現像剤補給装置>
電子写真方式によってフルカラーやマルチカラー画像を形成するカラー画像形成装置では、発色性や混色性といった観点から、トナーとキャリアを混合した二成分現像剤を使用している。そして、二成分現像方式において、安定した品質の画像を長期間維持するためには、安定したトナー帯電量Q/M(トリボ)をトナーに付与していくことが重要である。そのためには、トナーに対するキャリアの帯電付与能力が画像形成を累積しても安定して高く保たれている必要がある。
しかし、実際には、トナーは、画像形成に伴って消費され、補給された新しいトナーに随時置き換わっていくのに対し、キャリアは消費されずに、現像装置内に停滞して撹拌され続ける。このため、長時間使用していくと、キャリアがトナーと長時間に渡って摩擦し続けることで、キャリア表面がトナーやトナーの外添剤の付着によって汚染される可能性が高まる。その結果、キャリアのトナーに対する帯電付与性能が下がって、トナー帯電量Q/Mが低下し、トナー飛散やかぶり画像と言った画像品質の低下が発生し易くなる。
このようなキャリア劣化の問題に対する解決方法の1つは、耐久寿命を過ぎた劣化現像剤を、定期的なサービスメンテナンス時にサービスマンが新しい現像剤に全交換する方法である。しかし、この方法を採用すると、現像剤寿命がサービスメンテナンス間隔を決定付けて、頻繁なサービスメンテナンスが必要となり、画像形成装置のランニングコストを引き上げてしまう。サービスメンテナンス間隔は、サービスマンへの負担、コスト、更には画像形成装置のダウンタイムという観点からも、長く設定可能なほうが好ましい。
キャリア劣化の問題に対する別の解決方法は、長時間摩擦を続けても帯電付与性能が低下しない現像剤の開発や現像剤を劣化させない現像装置の運転方法の開発である。しかし、これらの対策を施しても、現状の現像剤寿命は、連続画像形成で3万枚から5万枚のあたりで停滞している。
そこで、特許文献2に示されるように、トナーにキャリアを一定割合(例えば重量比10%)で予め混合した補給現像剤を現像装置へ補給して、余剰になった現像剤を現像装置から取り出す方法が提案されている。ここでは、新しい現像剤の補給装置を現像装置に設けて、いわゆるトリクル補給を行うことにより、キャリアの帯電付与性能の低下を抑制している。新しい現像剤の補給よって過剰になった現像剤は、現像容器の壁面に設けられた排出口よりオーバーフローさせて回収している。
トリクル補給−オーバーフロー方式では、現像剤の補給に伴って新しいキャリアの補給と、古くなった現像剤の排出とが逐次繰り返されて、現像装置内のキャリアが、新たに供給されたキャリアに随時置換されていく。このため、現像装置内の現像剤の帯電付与性能の低下が抑制されて現像剤の現像特性が一定に維持され、複写画質の低下が抑制される。その結果、現像剤の全交換を行うためのサービスメンテナンス間隔が延長され、或いは現像剤の全交換自体が不要となっている。
しかし、トリクル補給−オーバーフロー方式では、トナーとキャリアを一定割合で予め混合したものを補給剤としているため、キャリアの劣化状態に即した補給が行なえないという問題がある。
例えば、1枚あたりトナー消費量が少ない(画像比率が低い)画像形成が続いた場合、現像剤の補給が少ないため、キャリアの更新が進まない一方で、現像剤が撹拌され続けるため、キャリアの平均的な帯電付与性能は低下してしまう。キャリアの補給がほとんどされないまま現像装置が稼動する結果、キャリアへのトナーのスペントが生じ、トナー帯電量Q/Mが低下する可能性がある。
一方、1枚あたりトナー消費量が多い(画像比率が高い)画像形成が続いた場合、現像剤の補給が多いため、必要以上にキャリアが供給されてしまい、帯電能力が劣化していないキャリアが排出されてしまう無駄が生じる。これは、キャリアを無駄に廃棄してランニングコストを押し上げることになる。
トリクル補給−オーバーフロー方式では、補給現像剤は、現像装置内の現像剤(5〜12重量%)に比較してトナーの重量比率が極端に高い(90重量%)。この重量比率は、平均的な画像比率の連続画像形成において、現像装置4d内のキャリアの寿命に応じて、適切にキャリアが入れ代るように設定されている。
このような、極端にトナーが多い現像剤では、キャリアより比重が軽く、キャリアに捕捉していないトナーが多数存在するために、補給現像剤を蓄えるホッパー内でトナーとキャリアが均一に混ざらないことがある。
トナーとキャリアの混合状態が不均一だと、キャリアの供給が更に不正確になり、キャリアの劣化や、キャリアの無駄な消費が更に助長されてしまう問題がある。補給現像剤の補給容器内でトナーとキャリアを均一に混合するためには、補給容器を横長にしたり、補給容器に撹拌部材を設けなくてはならず、現像装置のレイアウトが制限されたり、補給容器のコストアップをもたらしていた。
このような課題を解決するために、特許文献3では、トナーを補給する第1補給装置とは独立させてキャリアを補給する第2補給装置を設ける構成が提案されている。ここでは、トナーとキャリアとが独立に供給されるので、トナーの消費量に左右されることなく、現像剤中のキャリアの劣化状態に即したキャリアの供給を行うことができる。例えば、画像比率によらず、現像装置の運転時間に応じてキャリアを供給する制御が可能である。また、現像剤中のキャリアの劣化度合いが現像装置の温度に感度があるなら、それも加味してキャリアの補給量を制御することができる。
しかし、現像装置にキャリアを独立に供給する場合、その構成によっては、供給したキャリアが循環している既存の現像剤と十分に混ざり合う前に現像スリーブに達して担持されてしまう。混合不十分で現像剤中のトナーとキャリアの分布にムラがある状態で現像が行なわれると画像濃度ムラとなることがあった。トナー飛散やカブリといった画像不良の要因にもなる。これはトナーの消費量が多い、すなわちトナーの補給量が多いほど顕著になる。
また、キャリアの供給によって現像剤の長寿命化を図るには、新しいキャリアの供給に伴って、劣化したキャリアだけが排出口からオーバーフローすることが理想である。しかし、実際には、現像装置内の現像剤の剤面は、供給したキャリアの拡散とともに上昇するので、供給したキャリアも排出されてしまうことは免れなかった。このため、現像装置のキャリア補給位置に制限が生まれ、現像装置の構成のレイアウトの自由度が減ってしまうことがあった。
また、排出口に関しても、その配置によっては、トナーの消費に対して現像剤面が安定せず、キャリアの補給に対して排出が反応良く行なわれず、その結果、現像剤の帯電能力の改善に遅れが生じる場合がある。この現象もトナーの消費量が多いほど顕著となる。
近年、画像形成装置では、画像出力の高速化と画像品質の安定化を両立する性能が強く求められており、トナーの急激な消費量変化に対しても安定して動作する現像装置が必要とされている。また、画像形成装置の小型化に伴って現像装置の小型化も求められており、スペースの制約がある中で高速化、安定化の性能を実現することが重視されている。
以下の実施例では、トナーに3%以上5%以下の重量比でキャリアを混合した第1現像剤とキャリアに所定の重量比でトナーを混合した第2現像剤を採用することで、循環路の現像剤に対する混合性能を改善している。また、第1現像剤の補給位置と第2現像剤の補給位置との位置関係を適正化することにより、循環路の現像剤に対する混合性能を相乗的に改善している。これにより、トナーとキャリアの帯電量のばらつきを減らして、画像の濃度ムラやトナー飛散を抑制している。
<実施例1>
図3に示すように、実施例1では、現像剤担持体(28)の下流端部を通過してから現像剤担持体(28)の上流端部に到達するまでの搬送路中において、第2補給装置(31b)の補給位置よりも上流側に第1補給装置(31a)の補給位置が配置される。トナー補給用のホッパー31aとキャリア補給用のホッパー31bとを独立して設け、各々のホッパー31a、31bにトナーとキャリアの混合物を収容している。ただし、トナー補給用の第1現像剤は、トナーの重量比率をキャリアより大きくしており、通常のトナー消費に伴ってトナー補給が必要な場合などに補給動作が行われる。一方、キャリア補給用の第2現像剤は、キャリアの重量比率をトナーよりも大きくしており、1枚あたりトナー消費が少ない(画像比率が低い)画像形成が連続して現像装置4d内の現像剤の劣化が進行した場合などに補給される。
現像装置4の上部には、キャリアに対してトナーの重量比率の高い第1現像剤を収容した第1のホッパー31aと、トナーに対してキャリアの重量比率が高い第2現像剤を収容した第2のホッパー31bとが備えられている。
トナー補給用のホッパー31aの下部には、補給量を制御する補給スクリュー32aが設けられ、補給スクリュー32aの一端が現像装置4dの補給口33aに接続されている。キャリア補給用のホッパー31bの下部には、補給量を制御する補給スクリュー32bが設けられ、補給スクリュー32bの一端が現像装置4dの補給口33bに接続されている。第1のホッパー31aと第2のホッパー31bに収容された補給現像剤は、前述した現像剤のトナー、キャリアと同じものを混合して調製されているが、トナーとキャリアの混合比率が異なっている。
トナー補給用の第1のホッパー31aに収容した第1現像剤(混合供給剤)は、補給現像剤中に占めるトナーの重量比率(以下、T/D比)が50%以上必要である。トナーを補給するのは、消費されたトナーを補って現像装置4d内の現像剤のT/D比を安定させるためだが、トナーと一緒に大量にキャリアが補給されると、T/D比を安定させることが難しくなる。そのため、T/D比は、少なくとも50%以上である必要がある。より好ましくは、さらに高い程よい。しかし、トナーの重量比があまりに高くなると、供給したトナーが現像装置4d内の現像剤と十分混ざり合わずに現像スリーブ28に達し、画像濃度ムラとなることがある。そこで、実施例1では、トナー補給用の補給現像剤のT/D比を90%とした。
キャリア補給用の第2のホッパー31bに収容した第2現像剤(混合供給剤)は、現像装置4dに初期充填した標準現像剤と同じT/D比(トナー濃度、重量比)8%に調製されている。トナー濃度制御によって調整されるトナー比率の所定範囲の中央に定めた所定比率に調製することで、現像装置4dに供給した際の既存の現像剤のトナー濃度の変動が最小限に抑制され、既存の現像剤への混合も速やかだからである。ただし、ホッパー31bに収容する補給現像剤のT/D比は必ずしも標準現像剤と同じである必要は無く、3%〜20%の範囲内であれば好適に用いることができる。
<トナー補給制御>
図4は現像装置の制御系のブロック図である。図5はトナー補給制御のフローチャートである。図6は補給現像剤のトナー濃度とトナー帯電量分布の関係の説明図である。図7は補給現像剤のトナー濃度と未帯電トナー比率との関係の説明図である。
画像形成に伴って消費されたトナーを埋め合わせるために、第1のホッパー31aから現像装置4dへT/D比の高い補給現像剤が補給される。補給現像剤は、補給スクリュー32aの回転に伴って第1のホッパー31aから補給路30aへ流れ込み、補給口33aを通して現像容器22に補給される。トナーの補給量は、搬送部材32aの回転数によっておおよそ定められるが、この回転数は、制御部110が実行するトナー補給量制御によって定められる。
図4に示すように、制御部110は、4つの画像形成部(Pa、Pb、Pc、Pd:図1)のトナー補給部8a、8b、8c、8dとキャリア補給部9a、9b、9c、9dを制御する。
図5に示すように、制御部110は、ビデオカウント出力からトナー補給量を求め(S11、S12)、トナー濃度検出センサ43の出力に基づいてそのトナー補給量を修正する(S13、S15)。
制御部110は、ビデオカウンタ113のビデオカウント出力に基づいて画像形成1枚ごとのトナー消費量を求め(S11)、1枚前の画像形成でのトナー消費量に相当するだけ搬送部材32aを回転させてトナーを現像容器22に補給する(S15)。ビデオカウント出力は、露光装置3dを作動させるための画像信号を定量化したものであり、これをCPU112において画像1枚分積算することで、今回の画像の現像で現像装置4dから取り出されたトナー量が推定される(S11)。
制御部110は、現像装置4dに付設されたトナー濃度検出センサ43の出力を検出して、撹拌室24を搬送される現像剤のトナー濃度(T/D比)を求める。トナー濃度検出センサ43は、現像剤のインダクタンスを測定することによってトナー濃度を推測する方式のものであるが、現像剤の反射率を測定する光学式のものでもかまわない。
制御部110は、測定したトナー濃度が適正範囲であれば(S13のYES)、ビデオカウンタ113で求めたトナー補給量をそのまま用いる(S15)が、適正範囲でなければ(S13のNO)、トナー補給量を補正する(S14)。これにより、トナー濃度の適正範囲を逸脱しないように、ビデオカウンタ113で求めたトナー補給量を修正する(S14)。
トナー濃度が適正範囲に満たない場合は、トナー補給量を割り増してトナー濃度を高める方向に誘導する。トナー濃度が適正範囲を超えている場合は、トナー補給量を割り引いてトナー濃度を下げる方向に誘導する。補給(S15)後は、ビデオカウンタ113の積算値を0にリセットする(S16)。
ところで、図2に示すように、第1のホッパー31aから現像装置4dへ補給される補給現像剤は、重量比で10%のキャリアを含むため、毎回の補給現像剤の補給量の10%ずつ現像装置4d内の現像剤が増えてくる。補給現像剤に含まれるトナーは、画像形成に伴って再度消費されるが、補給現像剤に含まれるキャリアは通常消費されることはない。このため、画像形成を行うごとにキャリアが蓄積して現像装置4d中の現像剤が増えてしまう。そこで、現像装置4dの壁面に現像剤排出用の排出口40が設けられている。
補給に伴う循環路の余剰現像剤は、排出口40からオーバーフローして現像装置4dから取り出され、これにより、現像装置4d内の現像剤の総重量は、350〜380g程度に維持される。現像剤が増加すると、増加量に応じて、現像剤は、排出口40から溢れるように矢印Rh方向へ排出される。排出された現像剤は、回収スクリュー41によって長手方向端部の回収現像剤貯蔵庫へ搬送される。
供給したトナーが現像剤と十分混ざり合っていることを確認するために、補給現像剤のT/D比を100%(トナーのみ)から80%まで1%きざみで変更して、補給されたトナーと現像装置4d内の現像剤の混合状態を評価した。混合状態の評価方法は、現像装置4dの補給口33aよりトナー2g相当の現像剤(100%現像剤の場合は2g、80%現像剤の場合は2.5g)を補給し、補給後に一定時間空回転させた。その後、現像スリーブ28上の現像剤を回収して、トナー帯電量Q/Mの分布を測定して、補給前のものと比較した。1回のトナー補給量は、最大でも1g以下に抑えるのが通常だが、ここでは、差を明確にするために、補給量2gで実験した。
図6の(a)に示すように、T/D比が100%の補給現像剤(トナーのみ)を補給した場合、補給後(実線)のトナー帯電量Q/Mの分布は、補給前(破線)に比べて大きく崩れてしまう。補給現像剤の補給後、既存の現像剤との攪拌がうまくいかずに、トナー帯電量Q/Mが十分に立ち上がっていないトナーが多数存在するため、トナー帯電量Q/Mが0近傍にもピークができている。
図6の(b)に示すように、T/D比が97%の補給現像剤を補給した場合、補給後(実線)のトナー帯電量Q/Mの分布は、補給前(破線)とほぼ一致しており、トナー100%の補給現像剤と比較して、トナー帯電量Q/Mが0近傍のピークが低い。キャリアが少量ながらもトナーと予め混合されていることによって、補給現像剤と既存の現像剤との混合がスムーズに行われている。
図6の(c)に示すように、T/D比が95%の補給現像剤を補給した場合、補給現像剤と現像剤の攪拌混合がさらにスムーズに行われ、トナー帯電量Q/Mが0近傍のピークはほぼなくなっていた。また、実施例で用いるT/D比が90%の補給現像剤で同様な実験を行ったところ、図6の(c)に示したT/D比が95%の場合とほぼ同じ分布であった。
これは、キャリアが物理的に間に入ることでトナー同士の凝集を防いでいるためと考えられる。キャリアがトナーに流動性を付与する役割をうまく担って、補給現像剤の流動性が、トナー100%の場合よりも高くなっているためと考えられる。
T/D比を1%刻みで異ならせた補給現像剤でトナー帯電量Q/Mが0近傍のピークに含まれるトナーの比率(帯電不良率)を評価した結果を図7に示す。ここでは、図6の(a)、(b)に示すように、トナー帯電量Q/Mが0近傍のピークに示した麓を結ぶ接線A−Bで囲まれた領域の面積Sを求めて、そのT/D比ごとにプロットしている。横軸は補給現像剤のT/D比、縦軸は0近傍のピークの面積Sである。
図7に示すように、トナー中にキャリアを混入させることで、補給されたトナーの攪拌性が急激によくなって、トナー帯電量Q/Mが0近傍のピークが急激に小さくなっていること分かる。そして、T/Dが95%以下の場合は、ほぼ問題がないほど改善している。また、上記検討において、実際に画像形成を行って画像の濃度ムラを評価した結果を表1に示す。
表1に示すように、画像の濃度ムラもキャリアを混入させることで良化する傾向であり、トリボ分布における0近傍のピークが消えるT/D比が95%以下で濃度ムラもほぼ解消している。以上から、T/Dは95%以下であることが望ましいと言える。
T/Dが95%以下であれば、補給後のトナー攪拌性に問題がない。しかし、トナーとともに補給されるキャリアの量が少なすぎると、キャリア自動交換方式の本来の目的であるキャリア交換が非常にゆっくり行われるので、場合によってはキャリア劣化の弊害が発生する可能性がある。
そこで、実施例1においては、第1のホッパー31aで補給する第1現像剤のT/D比を90%とした。このような構成で、2万枚の画像形成を行ったが、トナーの攪拌ムラによる濃度ムラも、キャリア劣化による弊害も発生することがなかった。
<キャリア補給制御>
図8はキャリア補給制御のフローチャートである。図9はキャリア補給制御の効果の説明図である。
排出口40を通じて劣化キャリアを排出させるために、キャリアを所定量含む第1現像剤が第1のホッパー31aから補給される。しかし、上述したように、第1現像剤のみでキャリア補給を賄おうとすると、必要なときに必要なだけのキャリアを補給することが難しい。
ここで言う必要なときとは、現像装置4d内の現像剤量が減ってしまってキャリアを緊急に補給したい場合や、現像装置4d内のキャリアの劣化が進行して入れ替えの速度を高めたい場合等である。このとき、トナー消費量の少ない画像形成(画像比率の低い画像)が続いてトナー補給が低調だと、必要なだけのキャリアを補給できない。
そこで、実施例1では、キャリア自動交換を行うためのキャリア補給は、第1現像剤で行うが、上述したような別の理由でキャリアを補給する場合は、第2のホッパー31bより、キャリアの重量比率が高い第2現像剤でキャリア補給を行う。これにより、トナー補給が低調でも、必要なだけのキャリアを機動的に補給できる。
図2に示すように、キャリア補給部9dは、補給スクリュー32bの回転量に応じた量の補給現像剤をホッパー31bから取り出して現像装置4dの補給口33bに補給する。補給によって現像装置4d内で増加した現像剤が排出口40を通じてオーバーフローする。
第2のホッパー31bに蓄積されたキャリアを主成分とする第2現像剤は、補給スクリュー32bの回転力とキャリアの重力によって第2のホッパー31bから補給路30bを経由し補給剤補給口33bを通して現像容器22に補給される。
図4を参照して図8に示すように、制御部110は、ビデオカウンタ113、タイマー114、CPU112を用いてキャリア補給制御を実行する。ビデオカウンタ113は、先述のとおり、画像信号を定量化したものであり、これをCPU112において積算することで、画像形成における消費トナー量が推定される。タイマー114は、現像装置4dの運転時間の累積値を積算する。
制御部110は、ビデオカウンタ113の出力を読み込んで消費トナー量を予測して積算するとともに現像装置4dの運転時間を積算する(S21)。現像装置4dの運転時間の積算値が5分間に達すると(S22のYES)、制御部110は、消費トナー量の積算値を現像装置4dの運転時間の積算値で割って単位時間あたりの平均画像比率を求める(S23)。そして、単位時間あたりの平均画像比率が5%以下の場合(S23のYES)、第2現像剤の補給を実行する(S24)。補給後は、タイマー113及びビデオカウンタ111をリセットして(S25)、次の5分間の測定を開始する。
実施例1では、タイマー114で測定される運転時間が5分経過する毎に、ビデオカウントによる画像比率の積算値を現像装置4dの運転時間で割って単位時間あたりの平均画像比率を演算する。平均画像比率が低くてトナー消費量が少ない状態が5分間続くと、時間当たりトナー消費量が所定値を割り込み、通常のトナー補給制御によってはキャリアがあまり補給されないので、現像装置4d中の現像剤が少なくなり易い。そして、平均画像比率が一定量以下(本実施例においては5%以下)であれば、第2現像剤つまりキャリアを補給するようにして、現像剤量の減少を防止している。
実施例1では、第2現像剤の1回あたり補給量を10gとした。これは、以下の検討結果をもとに算出したものである。まず、画像比率が0%の画像を5分間連続画像形成した後の現像容器22中の現像剤量を測定した。次に、画像比率が0%の画像を5分間連続画像形成した後の現像容器22中の現像剤量を測定した。そして、当該5分間における現像剤量の減少量を演算したところ、実施例1においては3gであった。このため、実施例1では、3gよりも多い10gを1回あたりの補給量とした。このように1回あたりの補給量を決定すれば、画像比率が0%の画像形成が続いても現像容器22内の現像剤量が減少することはない。
また、キャリア補給制御を行うか否かの判定に際して、平均画像比率を指標とした理由は、単位時間辺りのトナー補給量が少ないと現像容器22内の現像剤が劣化し易く、現像剤の流動性が悪化して、現像剤量が減り易くなるからである。また、現像剤量が減ってもキャリアが補われにくいことを反映させるためである。
結果的に、トナー補給量が一定量以下の状態が5分間続くと、トナー補給制御とは独立にキャリア補給制御が実行されて第2現像剤が現像容器22に補給される。これにより、現像装置4dの現像剤が少なくなる不具合が解消される。
ここで、第2のホッパー31bに収容した第2現像剤は、T/D比が50%以下である。これは、第2現像剤の主な補給目的がキャリア補給のためだからである。キャリアと共にトナーが大量に補給されると、現像装置4中の現像剤のT/D比を安定させることが難しくなる。そのため、第2現像剤のT/D比は50%以下とする必要がある。
ただし、T/D比があまりに低くなると、供給したキャリアが現像容器22内を循環する現像剤と十分混ざり合う前に現像スリーブ28に達してしまい、画像濃度ムラとなることがある。しかし、第2現像剤が現像容器22内を循環する現像剤に近いT/D比に調整されていれば、第2現像剤の供給に伴う濃度ムラを抑えることができる。
現像容器22内の現像剤のT/D比は必ずしも一定に制御されていないが、T/D比には適正範囲があり、通常はトナー濃度検出センサ43の出力に基づいてT/D比の適正範囲を逸脱しないようにトナー補給制御が行なわれている。
<実験1>
実施例1のキャリア補給制御を実行する場合と実行しない場合とで、連続大量の画像形成を行って運転時間の累積に伴う現像剤量の変化を比較した。実験では、画像比率が1%の試験画像を1000枚連続画像形成する毎に現像装置4dを取り外して重量測定することにより現像剤量を求めた。平均画像比率が5%以下で第2現像剤が補給されるので、実施例1においては第2現像剤が5分ごとに毎回補給される。
図9に示すように、実施例1では、比較例よりも運転時間の累積に伴う現像剤の減少が少なくなる。第2現像剤の補給が行われない比較例では、運転時間の累積と共に、徐々に現像容器22内の現像剤量が減少していくのに対して、第2現像剤の補給が行われる実施例においては、現像装置中の現像剤量の減少が抑えられる。このことから、実施例1のキャリア補給制御によれば、現像装置の現像剤量が安定することが判明した。実験中、実施例1では、補給したトナーと現像剤の攪拌が不十分であるときに生じる画像濃度ムラが発生しなかったが、比較例1では運転時間の累積に伴って頻発した。これは、現像剤の劣化によって比較例では、現像剤の流動性及び補給トナーとの攪拌混合性が低下したためと考えられる。
実施例1では、トナー消費量が少ない画像形成が続くと、キャリア補給制御を実行する。これにより、現像装置中の現像剤量を安定させると共に、補給したキャリアやトナーと現像剤の攪拌が不十分であるときに生じる画像濃度ムラを防止することができる。トナーとキャリアを独立に補給し、排出口より余剰の現像剤を排出する構成において、現像装置の現像剤量を安定させると共に、補給したキャリアやトナーと循環する現像剤との攪拌混合が不十分であるときに生じる画像濃度ムラを防止できる。
実施例1では、補給用トナーに予めキャリアを混合、および、補給用キャリアに予めトナーを混合させる。これにより、現像装置の現像剤量を安定させると共に、補給したキャリアやトナーと循環する現像剤の攪拌混合が不十分であるときに生じる画像濃度ムラを防止することができる。
実施例1では、トナーとキャリアを独立に補給し、排出口より余剰の現像剤の排出を行う構成において、供給したキャリアがすぐに排出されてしまうことを防ぎ、キャリア補給によって現像剤寿命を維持する効果を最大限に発揮させることができる。
実施例1では、5%〜20%の範囲でT/D比が制御されているため、第2現像剤も5%〜20%にT/D比が設定されていれば、第2現像剤補給によって、現像容器22内の現像剤のT/D比が適正範囲を逸脱することはない。実施例1では、現像装置4dに初期充填される標準現像剤のT/D比である8%を、第2現像剤のT/D比としている。両者のT/D比を等しくして共通に利用可能とすれば、T/D比の異なる現像剤を多数作る手間が省ける製造上のメリットがある。
実施例1では、現像装置にキャリアを補給するための第2現像剤にトナーを3重量%以上含ませている。これにより、キャリアとキャリアとの間にトナーが介在して転がるため、キャリアの流動性、攪拌性、既存の現像剤との混合性が改善され、塊状態の第2現像剤が攪拌によってほぐれ易くなる。また、キャリア100%の場合に比較して、循環する現像剤の組成(5〜12%)に近いため、第2搬送路を搬送される過程で現像剤のトナー濃度が一様に収束するまでの搬送距離及び時間が短くなる。現像剤担持体へ到達した際の現像剤中のキャリアの濃度分布、帯電量分布のばらつきが小さくなる。
なお、実施例1においては、2種類の補給現像剤を別々の補給口より補給している。これは、2種類の補給現像剤を一つの補給口より補給するためには、両者を搬送経路上で予め混合しておく構成を要するからである。そのような構成を追加する煩雑さを避けるためである。2種類の補給現像剤を別々に補給する場合には、実施例1のような順番に配置することで、より効果的に発明の効果を得ることが可能である。
また、実施例1においては、第1現像剤としてトナーに3%以上5%以下の重量比率のキャリアを混合している。その理由は、図7及び表1を参照して説明したように、3%以上である程度の効果が得られることと、5%以上では、高画像比率の画像形成が連続した場合に排出口40から排出される現像剤が想定以上となることである。しかし、5%の場合でも、従来の10%の場合に比較すれば、排出口40から過剰に排出される現像剤は飛躍的に減少する。
また、実施例1においては、第2現像剤として、循環路を搬送される現像剤とほぼ等しいトナー比率が5%〜20%のものを用いたが、トナー比率0%(キャリア100%)の第2現像剤を使用してもよい。
<現像剤の攪拌混合性>
実施例1では、第1補給装置の一例である第1のホッパー31aは、画像形成に伴うトナー消費を補うようにトナーを主成分とする第1現像剤を現像剤の循環路に補給する。第2補給装置の一例である第2のホッパー31bは、運転に伴って劣化したキャリアを置き換えるためにキャリアを主成分とする第2現像剤を現像剤の循環路に補給する。そして、排出口40は、第2搬送路の下流側に配置されて、第2現像剤の補給に伴って増加した現像剤を現像剤の循環路から排出する。制御部110は、循環路を循環する現像剤のトナー比率を所定範囲に制御するトナー濃度制御を実行する。第2現像剤は、トナー濃度制御によるT/D比の制御範囲である所定範囲内にトナー比率を設定されている。
図3に示すように、実施例1では、第1のホッパー31aからトナー主体の第1現像剤を補給する補給口33aの下流側に、第2のホッパー31bからキャリア主体の第2現像剤を補給する補給口33aを配置している。これは、第1現像剤のほうが第2現像剤に比べて現像容器22内での攪拌混合性が低いため、均一混合されるまでに長い攪拌搬送距離を要するからである。第1現像剤と第2現像剤の攪拌混合性について以下に説明する。
キャリアとトナー混ぜて補給する場合、その後の攪拌工程において最も適切な状態は、キャリアの表面全体をトナーが1層分、最密に覆った状態である。それよりトナーが多いと、キャリアを覆いきれない余剰トナーが生じてしまい、逆にキャリアが多いと、キャリアが余剰となってしまう。
ここで、キャリアの表面全体をトナーが1層分、最密に覆った状態となるT/D比を求めるために、まず、キャリア1個をトナーが1層分最密に覆った場合のトナー個数Aを求める。トナー半径をRtとし、キャリア半径をRcとすると、キャリア表面積Scは次式で求められる。
Sc=4πRt2
球形のトナーが平面を最密に覆った場合、1辺がトナー直径2Rtの正方形の中に1個のトナーを入れることができる。そこで、キャリア1個をトナーが1層分、最密に覆った場合のトナー個数Aは次式で求められる。
A=Sc/(2Rt)2=π(Rc/Rt)2 ・・式(1)
次に、現像剤のT/D比(トナーの重量比率)がXの場合のトナーとキャリアの個数比率B(キャリア1個あたりのトナーの個数)を求める。トナーの比重をGt、キャリアの比重をGcとすれば、トナー1個の重さMt、キャリア1個の重さMcはそれぞれ次式となる。
Mt=(4/3)πRt3×Gt
Mc=(4/3)πRc3×Gc
これにより、トナーとキャリアの個数比率Bは次式のように表される。
B=(トナー個数)/(キャリアの個数)={X/Mt}/{(1−X)/Mc}=X/(1−X)×(Rc/Rt)3×(Gc/Gt) ・・式(2)
そして、キャリアの表面全体をトナーが1層分最密に覆った状態では、次式が成立する。
A=B ・・式(3)
式(1)、(2)、(3)が成立するXを求めれば、それがキャリアの表面全体をトナーが1層分最密に覆った状態でのT/D比となる。
実施例1では、トナーの平均半径Rt=3μm(直径6μm)、キャリアの平均半径Rc=17.5μm(直径35μm)、トナーの比重Gt=1.0g/ml、キャリアの比重Gc=3.8g/mlである。ここから、X=14〜15%と求まる。
ここで、トナーの余剰を表す指数としてB/Aを定義すると、B/A=1(つまりA=B)の場合はトナーとキャリアの個数の釣り合いがとれている。しかし、B/Aの値が1より大きくなると、その定義から、キャリアの表面全体を1層分覆う以上にトナーが余剰に存在しており、トナー余剰指数B/Aの値が大きいほどトナーが余剰であることを示す。
一方、キャリアの余剰を表す指数としてA/Bを定義すると、A/B=1(つまりA=B)の場合はトナーとキャリアの個数の釣り合いがとれている。しかし、A/Bの値が1より大きくなるとキャリアの表面全体を覆うほどには現像剤中にトナーが存在しておらず、A/Bの値が大きいほどキャリアが余剰であることを示す。
実施例1では、第1現像剤、第2現像剤は、それぞれの補給目的により、T/D比を14〜15%には設定できない。上述したように、第1現像剤は、そのT/D比が90%で、トナーが余剰な状態である。一方、第2現像剤は、そのT/D比が8%で、キャリアが余剰な状態である。
第1現像剤のトナー余剰指数B/Aを計算すると、B/A=約54となる。一方、第2現像剤のキャリア余剰指数A/Bを計算すると、A/B=約2となる。トナーのみやキャリアのみの場合、余剰指数は∞となるので、それに比べれば値は小さく、各々理想的な状態に近付いているといえる。しかし、実施例1の場合は、第2現像剤の方が特に理想的な状態に近づいているため、補給時の攪拌混合性が第1現像剤よりも優れている。このため、第1現像剤の補給位置よりも下流に補給位置を設定して補給後の攪拌搬送距離を短くしても、トナー濃度ムラを引き起しにくい。
トナー余剰係数B/Aが54である第1現像剤の補給位置を、キャリア余剰係数A/Bが2である第2現像剤の補給位置よりも現像剤の搬送方向上流に配置して、それぞれの補給時の攪拌混合性性を確保している。図3に示すように、第1現像剤の補給後の攪拌搬送経路がなるべく長くなるように、現像スリーブ28への現像剤供給位置28aを基準にして、上流側で第1現像剤の補給を行い、その下流側で第2現像剤を補給する構成とした。このような構成とすることで、補給後の現像剤の攪拌不十分に起因する濃度ムラを、より抑制することができる。
そして、T/D比が異なる場合も、余剰指数を比較することで、余剰指数の値が大きな補給現像剤を上流側で補給する構成とすれば同様な効果が得られる。第1現像剤のトナー余剰係数B/Aと第2現像剤のキャリア余剰係数A/Bとを比較し、余剰係数値の大きな補給現像剤の補給位置が、余剰係数値の小さな補給現像剤の補給位置よりも搬送方向上流に配置する。これにより、補給後の補給現像剤の攪拌不十分に起因する濃度ムラを、より効果的に抑制できる。
すなわち、1個のキャリアの表面全体を最密状態でトナーが1層分覆うために必要なトナーの平均個数をAとし、それぞれの補給現像剤に含まれる1個のキャリアあたりのトナー個数をBとする。そして、第1現像剤のトナー余剰係数をB/A=C1と定義し、第2現像剤のキャリア余剰係数をA/B=C2と定義する。
実施例1では、C1がC2より大きく設定されるとともに、第1現像剤の補給位置よりも搬送方向下流側に第2現像剤の補給位置が配置される。しかし、実施例2では、 C1がC2より大きく設定されるとともに、第1現像剤の補給位置よりも搬送方向下流側に第2現像剤の補給位置が配置される。
<実施例2>
図10は実施例2の現像装置の平面図である。実施例2では、第1現像剤のトナー余剰係数よりも第2現像剤のキャリア余剰係数のほうが大きい。そのため、図10に示すように、現像装置4dは、第2現像剤の補給位置33bを第1現像剤の補給位置33aよりも搬送方向上流側に配置している。それ以外の構成は実施例1と同様であるため、図10中、実施例1と共通する構成には図3と共通の符号を付して重複する説明を省略する。
実施例2では、第1のホッパー31aには、実施例1と同様に、T/D比が50%以上の第1現像剤を充填している。そして、実施例1と同様なトナー補給制御を実行しており、そのトナー補給に伴って所定比率のキャリア補充も実行される。そして、実施例1と同様に、連続画像形成において画像比率の低い画像形成が連続して、所定時間内のトナー消費量が所定値を割り込むと、第2のホッパー31bを作動させてキャリアを主成分とする第2現像剤を現像容器22に補給する。
しかし、第2のホッパー31bには、キャリア100%の補給現像剤を充填してあるので、キャリア補給制御に伴って現像容器22にキャリアのみが補給される。この場合、第2現像剤のキャリア余剰指数は∞であるので、補給後の混合攪拌が不十分になる可能性がある。
そこで、実施例2においては、第2現像剤の補給位置33bを、第1現像剤の補給位置33aよりも搬送方向上流側に設けて、補給されたキャリアの攪拌経路を長く確保している。第2現像剤の補給後、現像スリーブ28に到達するまでの混合攪拌経路が長いほど、現像スリーブ28に到達した際の現像剤のT/D比ムラが解消される。これにより、現像スリーブ28に担持された現像剤の帯電量ムラが減って画像濃度ムラが軽減される。
特許文献1に示されるように、トナー100%の補給現像剤とキャリア100%の補給現像剤とを個別に補給する場合、トナー補給、キャリア補給の双方で攪拌混合不良が気になる。しかし、トナー補給、キャリア補給の両方について攪拌搬送経路を長くしようとすると、現像装置4dが大型化し、構造も複雑化するため、コストや設置スペース面で制約が生じる可能性が高い。しかし、実施例2においては、キャリア補給時のみ攪拌混合不良が気になる構成なので、第1現像剤の補給位置33aはそれほど気にしなくても良い。
<実施例3>
実施例3では、第1現像剤のトナー余剰係数よりも第2現像剤のキャリア余剰係数のほうが大きい。そのため、図3に示すように、現像装置4dは、第1現像剤の補給位置33aを第1現像剤の補給位置33bよりも搬送方向上流側に配置している。
実施例3では、第2のホッパー31bには、実施例1と同様に、T/D比が50%以下の第2現像剤を充填している。そして、第2のホッパー31bからトナーを混入したキャリアが充填されることで、実施例1と同様に、キャリア補給に伴うT/D比ムラ、帯電量ムラ、出力画像の濃度ムラを軽減している。
しかし、実施例3では、第1のホッパー31aには、トナー100%の第1現像剤を充填しているため、この場合の第1現像剤のトナー余剰指数は∞となるため、補給後の攪拌混合が不十分になる懸念が残る。そこで、図3に示すように、実施例3では、トナーのみである第1現像剤の補給位置33aを、第2現像剤の補給位置33bよりも搬送方向上流側に設けている。これにより、補給された第1現像剤の攪拌搬送経路がなるべく長くなるようにしている。
<実施例4>
図11は実施例4のキャリア補給制御のフローチャートである。図12は実施例4の制御の効果の説明図である。
図4に示すように、制御部110は、タイマー114、DCコントローラー115、CPU112からなる。タイマー114は、現像装置4dの回転時間の合計を積算するものである。実施例4では、現像装置4dの累積運転時間が5分に達するごとにキャリアを主成分とする第2現像剤を補給している。
この理由は、以下の通りである。キャリアの帯電能が低下する原因として、様々な要因が考えられるが、そのうち最も大きいのは、トナーを構成する樹脂がキャリアの表面に融着するいわゆるトナースペントである。トナースペントが起きると、融着部分はトナーを摩擦帯電できないため、トナーに対するキャリアの帯電性能が低下する。トナースペントは、現像剤に圧力が加わった状態でトナーとキャリアが強くこすれ合うことで、トナーの樹脂が削り取られ、キャリアに付着するのが主原因と考えられている。
実施例4の現像装置4dにおいて、現像剤に最も圧力が掛かるのは現像剤規制部である規制ブレード29の上流近傍である。現像剤は、ここを通過した回数だけトナースペントが進行すると考えられる。現像剤は、全体がほぼ一定周期で現像装置4d内を循環しているので、現像装置4dの累積運転時間がトナースペントのレベル、ひいてはキャリアの帯電能力に対応していると考えられる。
さらに、トナースペントのレベルは、トナー消費量によっても影響される。一般的な傾向としては、トナーの消費量が少ない方が、多い場合に較べてトナースペントが進行し易い。この理由としては、トナー消費量が少ない方が、キャリア上のトナーが同じ場所に留まり易くトナースペントが進み易い。また、トナー消費量が多いと、キャリア上からトナーが除去される機会が多いために、同じ場所でのトナースペントが進み難いためと推測される。
また、現像剤の帯電性能の低下要因としては、キャリアのトナーに対する帯電性能の低下だけではなく、攪拌継続に伴う現像剤の流動性の低下にも考えられる。実施例4のように、現像剤の排出口40を備える現像装置4dにおいては、現像剤の流動性が低下すると局所的に現像剤の剤面が高くなって排出口40を通じた排出量が多くなる傾向が出てくる。排出量が増えてしまうと、現像容器22内を循環する現像剤の総量が減少してしまい、その結果として、現像スリーブ28上に供給される現像剤の量が不足して、画像濃度が低下する場合も有る。
そこで、実施例4では、ピデオカウンタにより予測された消費トナー量を現像装置の回転時間で割った値に応じて、補給剤を補給している。消費トナー量を現像装置の回転時間で割った値は単位時間あたりの平均画像比率を表す。この画像比率を稼働時間が5分経過するたびに確認し、画像比率に応じた量の補給剤を補給する。
図2を参照して図11に示すように、画像形成動作が開始すると、制御部110は、タイマー114を作動させて、現像装置4dの駆動時間を積算する(S31)。現像装置4dの累積運転時間が5分に達したと判断すると(S32)、過去5分間の平均画像比率を計算する(S33)。
制御部110は、計算した平均画像比率から、表2のテーブルを参照して補給量を決定する(S34)。これにより、単純に、現像装置4dの累積運転時間が5分経過するごとに、第2のホッパー31bから現像容器22へ20gのキャリアを補給する場合よりも第2現像剤の使用量が節約される。
制御部110は、計算した補給量を補給する(S35)。制御部110からの信号に基づいて、第2のホッパー31bに蓄積された補給現像剤は、補給スクリュー32bの回転力とキャリアの重力によって第2のホッパー31bから補給路30bを経由し、補給口33bを通じて現像容器22に補給される。
実施例4では、標準現像剤に近い組成の補給現像剤をキャリアの帯電能維持のために供給する。タイマー114を用いて判断したキャリアの劣化度合いに応じて、実施例1と同様に、最初に現像装置4dに充填される標準現像剤とほぼ同一組成、同一T/D比の補給現像剤を補給する。このため、供給した新しい補給現像剤が循環する現像剤と十分混ざり合わない状態で、現像スリーブ28に達したとしても、補給現像剤は標準現像剤に近いT/D比に調製されているので濃度ムラが発生しにくい。
現像装置4の壁面には、排出口40が設けられており、排出口40より劣化現像剤が矢印Rhにしたがって排出される。補給現像剤の補給工程によって現像装置4d内の現像剤が増加すると、増加量に応じて、現像剤は、排出口40より溢れ出るように排出される。第1のホッパー31aからトナーを主成分とする補給現像剤が補給された場合にも、補給量に応じた現像剤が排出されることがある。排出された現像剤は、回収スクリュー41によって長手方向端部の回収現像剤貯蔵庫へ搬送される。このようなメカニズムが作用することで、現像容器22内の現像剤量はほぼ一定に保たれる。
計算した補給量の補給後、制御部110は、5分に達したと判断した時点までの積算時間をリセットして(S36)、5分に達したと判断した時点からの運転時間の積算を再び開始する(S31)。
図12に示すように、実施例4のキャリア補給制御を行なった場合と、キャリア補給制御を行わなかった比較例1とで、トナー帯電量Q/M(μC/g)の推移を測定して比較した。実施例4のキャリア補給制御では、トナー帯電量Q/Mの低下がほとんど無く、一定に保たれている事が分かる。
実施例4によれば、キャリアの帯電性能維持の目的で供給した補給現像剤が、現像容器内を循環する現像剤との攪拌が不十分であるときに生じる画像濃度ムラを防止することができる。
<実施例5>
図13は実施例5のキャリア補給モードのフローチャートである。図14は実施例5のキャリア補給モードの効果の説明図である。
図2に示すように、実施例5では、第2現像剤を現像容器22へ補給する際に、現像装置4d内の搬送スクリュー25、26を停止して、一定量の第2現像剤を補給した後に再度搬送スクリュー25、26を駆動開始する。これにより、補給したばかりの第2現像剤が排出口40から排出されにくくして、第2現像剤を効率良く活用してキャリアの帯電性能の低下を最小限に止めている。
図2を参照して図13に示すように、現像容器22内を循環する現像剤のキャリアが劣化して帯電性能の回復が必要となった場合、制御部110は、画像形成の終了を待ってリフレッシュモードのシーケンスを実行する。
制御部110は、リフレッシュモードを開始すると(S21)、搬送スクリュー25、26を停止して(S22)、第2のホッパー31bから第2現像剤の供給を行なう。第2現像剤の補給量が80gに達した時点で、第2現像剤の供給を停止し(S23)、その後、搬送スクリュー25、26を回転させて補給現像剤の循環を再開する。このとき、補給によって余剰になった現像剤は、循環の再開後に排出口40から排出される。
図14は、現像剤の循環状態を一次停止させて行う実施例4のキャリア補給制御と、現像剤の循環状態で行う比較例のキャリア補給制御とで補給現像剤の残留率を比較した実験結果である。実験方法としては、現像剤にはイエロートナー、補給現像剤としてマゼンタトナーで調製した。そして、上記2つのシーケンスで動作させた後の、現像装置4d容器内の給剤補給箇所から現像排出口40までの距離と、そこに存在する現像剤のマゼンタトナーの重量比率の関係を調べた。第2現像剤は、キャリアにマゼンタトナーをT/D比8%相当で混合して用いた。
比較例では、搬送スクリュー25、26を回転させながら、80gの第2現像剤を第2のホッパー31aから補給して、補給後、現像容器22内の剤面高さが略均一になった時点で搬送スクリュー25、26を停止させた。そして、搬送スクリュー26に沿った各位置で現像剤をサンプリングして、顕微鏡測定によりマゼンタ補給材の存在割合分布を測定した。
実施例4では、搬送スクリュー25、26を止めた状態で80gの第2現像剤を第2のホッパー31aから補給して、補給後、搬送スクリュー25、26を回転させて現像容器22内の剤面高さが略均一になった時点で停止させた。そして、搬送スクリュー26に沿った各位置で現像剤をサンプリングして、顕微鏡測定によりマゼンタ補給材の存在割合分布を測定した。
リフレッシュモードの効果について説明する。図14に示すように、実施例5のキャリア補給制御の場合、比較例に比較して排出口40に到達した時点で、マゼンタトナー(補給現像剤)の存在比率が高くなる。実施例5のキャリア補給制御では、比較例に較べて、剤面高さが略均一になったときの排出口40の位置でのマゼンタトナーの割合が少なかった。すなわち、実施例5のキャリア補給制御のほうが、比較例よりも、供給した補給現像剤の排出が少なくなる。剤面が略均一高さになるまでに排出口40から排出された補給現像剤の割合が少なくて済むため、現像容器22内に効率的に補給現像剤を残して、劣化した古い現像剤をより多く排出口40から排出できる。
補給現像剤を補給した後の現像容器22内の剤面高さの変化を観察すると、通常モードである搬送スクリュー25、26回転時は、補給時には補給口33bの近くで現像剤の剤面が最も高くなる。そして、補給現像剤が拡散するに従って全体の剤面が高くなり、やがて略均一な高さとなる。
これに対して、実施例5のキャリア補給制御の場合、補給現像剤の拡散の速さと、剤面高さが均一になるまでのならし時間の差によって、多くの古い現像剤が補給現像剤が排出口40へ到達する前に排出口40から排出されている。
搬送スクリュー25、26を回転させながらの補給では補給現像剤の拡散が速く、剤面が均一高さになるころには補給現像剤は広く拡散している。それに比べ、ある程度まとまった剤量で補給現像剤を小さい領域に溜めておいて、それから搬送スクリュー25、26を動作させると、補給現像剤が、既にある現像剤を押しのけながら拡散していく形となる。剤面高さが略均一になった時点でも、補給現像剤の拡散がそれほど進んでいないため、図14に示す差が現れたと思われる。
現像容器22内の剤面が略均一に高くなると、現像剤は排出口40から排出される。剤面が標準状態に戻った後の補給現像剤の割合を比較すると、実施例5のほうが比較例よりも補給現像剤の割合が高かった。このことは、実施例5のキャリア補給制御のほうが、補給量に対する現像剤の帯電性能の回復が効率良く行なわれ、同じ補給量に対して、現像剤をより長寿命化できることを示している。
<実施例6>
実施例6では、実施例5のキャリア補給モードを複数回続けて実行して、現像容器22内の現像剤をほぼ全量入れ替える。このモードシーケンスは、ある何らかのトラブルで予想外にトナー帯電量が下がった場合に有効な構成である。ユーザーが画像品質の低下を感じた場合に、操作パネルを通じてメンテナンス画面を開いて、選択実行実施できるようにしてある。
現像容器22内の現像剤をほぼ全量入れ替えるようなトラブルとは、機体内のエアーフローの異常による想定外の現像装置4dの温度上昇、規格外の設置環境で放置されたことによる想定外の機体温度上昇等がある。このような理由で、キャリアのトナースペントが異常に進行した場合、ユーザーまたはサービスマンが判断して、現像剤の全量を入れ替えるシーケンスを行なうことが望ましい。