しかしながら、特許文献1の歩行補助具では、後フレーム106を前フレーム104に引き寄せた場合に、言い換えれば一対のフレーム104,106を揺動させて閉脚させた場合に、ブラケット101が後方に張り出して揺動軸102が前フレーム104から離れている分だけ前フレーム104と後フレーム106との間に隙間が生じてしまうので、見栄えが損なわれるという問題がある。したがって、特許文献1の歩行補助具は、外観に優れているとは言い難い。
一方で、特許文献1の歩行補助具100において、両フレーム104,106間の隙間をなくすために前フレーム104の直近に揺動軸102を配置する構造にすると、一対のフレーム104,106を揺動軸102を中心として揺動して閉じた場合即ち閉脚させた場合に、特に揺動軸102付近において両フレーム104,106間に隙間がないために指を挟んでしまうという問題がある。すなわち、揺動軸をいずれかのフレーム上若しくはフレーム直近に配置した場合には、安全性に優れているとは言い難い。
そこで、本発明は、安全性と見栄えと快適性とを向上させることができる歩行補助具を提供することを目的とする。
かかる目的を達成するため、請求項1記載の歩行補助具は、車輪と該車輪を下端において支持すると共に上端において揺動軸によって揺動可能に連結された一対のフレームとを有し、一対のフレームのうちの一方のフレームに設けられた前後方向の長穴によって揺動軸が摺動可能に支持され、揺動軸が長穴の前端に位置して一対のフレームが閉じられた状態において当該一対のフレーム相互の間に隙間がなく全体として一本に見えるように揺動して閉じる、或いは、揺動軸が長穴の後端寄りに位置して一対のフレームが当該一対のフレーム相互の間に隙間を確保しながら揺動して閉じるようにしている。したがって、この歩行補助具によると、一対のフレームが閉じられた状態においてフレーム相互間に隙間がなくなるようにしているので、一対のフレームが閉じられた状態において全体として一本のように見える。この歩行補助具によると、さらに、一対のフレームを連結するための揺動軸を前後方向の長穴で摺動可能に支持するようにしているので、一対のフレームを連結する揺動軸の位置が前後方向に移動する。
また、請求項2記載の発明は、請求項1記載の歩行補助具において、一対のフレームの間に掛け渡されて取り付けられ、一対のフレームが揺動して閉じられる際に各フレームの軸心方向がぶれないように案内するためのアーチを有するようにしている。この場合には、一対のフレームに掛け渡されたアーチを備えるようにしているので、一対のフレームを揺動させて閉じようとした際にそれぞれの軸心位置がぶれることなく一致した状態で両フレームが揺動して閉じ合わされる。
また、請求項3記載の発明は、請求項2記載の歩行補助具において、一対のフレームに対するアーチの傾斜が増加することによって一対のフレームが揺動して閉じられるようにしている。
また、請求項4記載の発明は、請求項1記載の歩行補助具において、一対のフレームのうちの少なくとも一方の側方にグリップが取り付けられているようにしている。この場合には、グリップを備えるようにしているので、例えば買い物時などに荷物を掛けたり、歩行補助具を持ち運ぶ際や両フレームを揺動させて開いたり閉じたりする際などに使用者が握ったりして使用することができる。
また、請求項5記載の発明は、請求項1記載の歩行補助具において、一対のフレームのうちの一方のフレームの他方のフレームと対向する側に軸方向の凹部が形成され、一対のフレームが揺動して閉じられる際に凹部に他方のフレームの少なくとも一部が入り込んで収容されるようにしている。この場合には、一対のフレームのうち一方のフレームの凹部に他方のフレームを収容するようにしているので、一対のフレームが閉じられた状態においては全体として一本のように見える。
また、請求項6記載の発明は、請求項1記載の歩行補助具において、一対のフレームが前フレームと後フレームとからなり、凹部が前フレームの後側に形成されると共に後フレームの少なくとも一部が前フレームの凹部に収容されるようにしている。この場合には、一対のフレームのうち前フレームの凹部に後フレームを収容するようにしているので、一対のフレームが閉じられた状態においては全体として一本のように見える。
また、請求項7記載の発明は、請求項1記載の歩行補助具において、一対のフレームの間に掛け渡されて両端が一対のフレームのそれぞれに対して揺動可能であると共に少なくとも一端が一対のフレームのうちの一方に対して摺動可能であるように取り付けられ且つ摺動可能である端部に吊り上げ部材が繋がれているアーチを有し、吊り上げ部材を介して摺動可能である端部が吊り上げられるようにしている。この場合には、吊り上げ部材を用いてアーチを傾斜させることによって両フレームを引き寄せる力を加えるようにしているので、一対のフレームを揺動して閉じようとする動作・変形が助勢される。
また、請求項8記載の発明は、請求項1記載の歩行補助具において、一対のフレームの上端にブレーキレバーが備えられると共にフレームの下端に支持される車輪を制動するためのブレーキとブレーキレバーの操作をブレーキに伝達するためのブレーキ操作伝達部材とを有し、ブレーキを備える車輪を支持するフレームを筒状に形成すると共にブレーキ操作伝達部材を筒状のフレームの内部を通過させるようにしている。この場合には、ブレーキ操作伝達部材が露出することがなく外観として現れない。
請求項1記載の歩行補助具によれば、一対のフレームが閉じられた状態において全体として一本のように見えるので、外観をスマートにして見栄えの向上を図ることが可能になる。請求項1記載の歩行補助具によれば、また、一対のフレームを揺動させて閉じたときのフレーム間の隙間が通常はないようにすると共に指などを挟んでしまった場合にはフレーム間に隙間を確保するようにすることができ、安全性を損ねることなく一対のフレームを揺動させて閉じた場合のフレーム間の隙間をなくすようにすることができるので、安全性と共に見栄えの向上を図ることが可能になる。請求項1記載の歩行補助具によれば、さらに、一対のフレームを連結する揺動軸の位置を前後方向に移動させることができるので、一対のフレームを開脚した状態から揺動軸を中心として揺動させて閉脚させる際にフレーム間に指などを挟んでしまったとしても揺動軸が後方に移動してフレーム間に隙間を確保しながらフレーム同士を揺動させて閉じることができ、安全性の向上を図ることが可能になる。
請求項2記載の歩行補助具によれば、一対のフレームを揺動させて閉じようとした際にそれぞれの軸心位置がぶれることなく一致した状態で両フレームを閉じ合わせることができるので、両フレームの閉脚操作の快適性の向上を図ることが可能になる。また、アーチが突っ支いの役割を果たすので両フレームの開脚の範囲が制限される。さらに、揺動連結された両フレームの捻れによる変形を防止することができ、強度の向上が可能になる。
請求項4記載の歩行補助具によれば、荷物をかけたり歩行補助具を操作等する際に握ったりすることができるグリップを備えるようにしているので、快適性の向上を図ることが可能になる。
請求項5記載の歩行補助具によれば、一対のフレームが閉じられた状態においては全体として一本のように見えるので、外観をスマートにして見栄えの向上を図ることが可能になる。
請求項6記載の歩行補助具によれば、一対のフレームが閉じられた状態においては全体として一本のように見えるので、外観をスマートにして見栄えの向上を図ることが可能になる。
請求項7記載の歩行補助具によれば、一対のフレームを揺動させて閉じようとする動作・変形が助勢されるので、両フレームの閉脚操作の快適性の向上を図ることが可能になる。
請求項8記載の歩行補助具によれば、ブレーキ操作伝達部材をフレームの内部に収容するようにしているので、使用中にブレーキケーブルが例えば周辺物に引っ掛かってしまって急な方向転換をしたり急な制動がかかったりするなどの危険が発生する虞やブレーキケーブルが伸びてしまう虞がなく、安全性の向上を図ることが可能になる。
以下、本発明の構成を図面に示す形態に基づいて詳細に説明する。
図1から図11に、本発明の歩行補助具の実施形態の一例を示す。なお、本実施形態では、図4に全体構造を示す前フレーム2と後フレーム3とを有する歩行補助具1を例に挙げて説明する。ここで、本明細書においては、歩行補助具1の使用者を基準にして上下、前後、左右を定義する。具体的には、図4〜6に示す矢印31の向きを前、反対向きを後、また、矢印32の向きを上、反対向きを下、さらに、これら矢印31及び矢印32に垂直な矢印33の向きを右、反対向きを左とする。
本実施形態の歩行補助具1は、上端部同士が揺動可能に連結された前フレーム2及び後フレーム3と、左右対向配置された一対の前輪タイヤ4a,4aを有し前フレーム2の下端に軸回転可能に支持される前輪4と、左右対向配置された一対の後輪タイヤ5a,5aを有し後フレーム3の下端部に軸回転可能に支持される後輪5と、前フレーム2の上端に設けられるハンドル6と、当該ハンドル6の下方に取り付けられるブレーキレバー7と、前フレーム2と後フレーム3との間に掛け渡されて取り付けられるアーチ8とを備える。
本実施形態では、前フレーム2は、軸心方向の貫通孔2bを有する筒部2cと、当該筒部2cの左右両側から対向して後方に延出する後部側壁2d,2dとを有する。そして、これら対向する一対の後部側壁2d,2dによって、前フレーム2の後フレーム3と対向する側即ち後側に軸心方向の凹部が形成される。
前フレーム2の貫通孔2bの下端部には、左右対向配置された一対の前輪タイヤ4a,4a間に備えられた車軸を摺動可能に保持して前輪4を軸回転可能に支持するための車軸ホルダー17が取り付けられる。なお、本実施形態では、車軸ホルダー17の上端面から突出した円柱形状の突起が貫通孔2b内に設けられたパイプ9に差し込まれて両者がねじ止めされることによって車軸ホルダー17が前フレーム2に対して固定され取り付けられる。
なお、パイプ9内には、ハンドル6の下方に取り付けられたブレーキレバー7と連結して前輪4に対してブレーキ操作を伝達するための、即ちブレーキ操作伝達部材としてのブレーキケーブル11が貫通している。ブレーキレバー7は、ハンドル6の握り部6aの前端部分の下側に、前端部に備えられた揺動軸7aを介してハンドル6に対して揺動可能に取り付けられる。なお、ブレーキレバー7とブレーキケーブル11とは、これらを有する通常のブレーキの構造と同様に、ブレーキレバー7の前端部が揺動軸7aを介してハンドル6に対して揺動可能に連結されると共に、ブレーキレバー7の揺動軸7aの後方の位置にブレーキケーブル11の上端部が連結され、ハンドル6とブレーキレバー7とを握り締めることによってブレーキレバー7を引き上げるとブレーキケーブル11も引き上げられる。なお、本実施形態のブレーキケーブル11は、左右方向の貫通孔を有する円筒部11aを上端に有し、当該円筒部11aがピンを介してブレーキレバー7に揺動可能に連結されて取り付けられる。
後フレーム3は軸心方向の貫通孔3dを有する筒状に形成される。また、後フレーム3は、周壁前面が下端から軸心方向上側に向かって切り込まれて形成された細長貫通孔のガイド3bと、周壁後面の上下中央位置より上側に設けられた貫通孔とを有する。
また、後フレーム3の下端部には、後輪5を支持するための後輪ホルダー5cが取り付けられる。そして、後輪ホルダー5cに対して左右対向配置された一対の後輪タイヤ5a,5aが軸回転可能に取り付けられる。
ハンドル6は、握り部6aと、当該握り部6aの前端から連続して形成される主軸6bと、当該主軸6bの下端に設けられ主軸6bに対して後方に張り出す板状の連結ユニットカバー部6cと、当該連結ユニットカバー部6cの下端面から主軸6bと同軸方向に延出して設けられる円筒状の差込部6dとからなる。なお、本実施形態では、握り部6a・主軸6bと連結ユニットカバー部6c・差込部6dとは別体のものとして構成されている。
また、主軸6bは下端面に開口を有してパイプ9が差し込まれる軸心方向の凹部を有する。差込部6dはパイプ9の外周面に沿う周壁として形成される。
ハンドル6は前フレーム2の貫通孔2b内を貫通して設けられるパイプ9の上端に取り付けられる。具体的には、パイプ9を前フレーム2の貫通孔2bに挿入して上端部分を前フレーム2の上端から突出させた状態でパイプ9の外周面と前フレーム2の貫通孔2bの内周面との間の間隙に差込部6dを差し込みながら主軸6bの凹部にパイプ9を差し込む。そして、主軸6bの周壁とパイプ9の周壁とを貫通する螺子によってパイプ9の上端部分に主軸6bが固定されてハンドル6が前フレーム2の上端に取り付けられる。
そして、本実施形態の歩行補助具1は、車輪4,5とこれら車輪4,5を下端において支持すると共に上端において揺動可能に連結された一対のフレーム2,3とを有する歩行補助具1において用いられる一対のフレーム2,3の連結構造であって、一対のフレーム2,3を揺動可能に連結するための摺動揺動軸2aを有すると共に該摺動揺動軸2aを前後方向の長穴20aで摺動可能に支持する連結構造を有する。
本実施形態では、後フレーム3の上端部に、後フレーム3を前フレーム2と連結させるためのジョイント部材3fが取り付けられる。ジョイント部材3fは、後フレーム3の貫通孔3dに差し込まれる差込部3hと、当該差込部3hの上部に縦に立てられた板状に形成されて貫通孔3gを有する連結部3iとからなる。なお、ジョイント部材3fは、差込部3hにねじ穴を有し、当該差込部3hが貫通孔3dの上端部に差し込まれた状態でねじ止めされて後フレーム3に取り付けられる。また、ジョイント部材3fは、板状の連結部3iが前後方向に配置された状態で後フレーム3に取り付けられる(すなわち、貫通孔3gは左右方向になる)。
また、本実施形態の歩行補助具1は、摺動揺動軸2aを備えると共に前フレーム2の上端部に取り付けられて前フレーム2と後フレーム3とを揺動可能に、言い換えれば摺動揺動軸2aを中心として揺動開脚及び閉脚自在に連結するフレームジョイント20を有する。
フレームジョイント20は、前フレーム2の両後部側壁2d,2dの間に差し込まれる取付部20eと、当該取付部20eの上側部分から後方に延出する保持部20fとからなる。そして、フレームジョイント20は、取付部20e及び保持部20fを前後方向に貫通して設けられる間隙20gを有する。さらに、フレームジョイント20は、取付部20eの下端寄りの位置に左右方向のグリップ軸貫通孔20bを有し、また、保持部20fの上端から突起した部分に左右方向の固定螺子貫通孔20cを有する。
間隙20gには後フレーム3のジョイント部材3fの板状の連結部3iが挿入される。そして、間隙20gは、連結部3iを左右両側から挟んで摺動可能に保持する。
また、保持部20fにおける間隙20gを形成する左右両側の側壁には、左右方向に配置される摺動揺動軸2aの両端部を前後方向に摺動可能に支持するための揺動軸支持長穴20aが前後方向に形成される。本実施形態では、揺動軸支持長穴20aは、フレームジョイント20の間隙20gを形成する左右一対の側壁のそれぞれに、取付部20eから保持部20fに亘って対向する前後方向の凹部として形成される。なお、本実施形態では、揺動軸支持長穴20aは、取付部20eにおいては、間隙20gを形成する左右両側の側壁を貫通する孔として形成される。
そして、後フレーム3は、ジョイント部材3fの連結部3iがフレームジョイント20の間隙20gに差し込まれ、連結部3iに設けられた貫通孔3gを貫通すると共にフレームジョイント20の揺動軸支持長穴20aに両端部が支持される摺動揺動軸2aを介してフレームジョイント20に対して揺動且つ摺動可能に軸支される。
また、フレームジョイント20は、取付部20eが前フレーム2の両後部側壁2d,2dの間に差し込まれると共に取付部20eに形成されたグリップ軸貫通孔20bと両後部側壁2d,2dに形成された左右方向の貫通孔2e,2eとを貫通するグリップ軸23aが挿入され、当該グリップ軸23aの両端部に形成された螺子部分にグリップ23,23が嵌められることによって前フレーム2の上端部に取り付けられる。
なお、グリップ23は、例えば買い物時などに荷物を掛けたり、歩行補助具1を持ち運ぶ際や前フレーム2と後フレーム3とを揺動させて開いたり閉じたりする際などに使用者が握ったりするためのものである。
また、ハンドル6は、主軸6bに対して後方に張り出した板状の連結ユニットカバー部6cの下面に、左右方向の貫通孔が形成された突起部を有する。そして、当該突起部の貫通孔とフレームジョイント20の固定螺子貫通孔20cとを貫通する螺子20dによって連結ユニットカバー部6cとフレームジョイント20とが互いに固定される。
アーチ8は、前フレーム2と後フレーム3との間に掛け渡され、後フレーム3の下端寄りの位置に設けられたストッパブロック3aと共に両フレーム2,3の開脚の程度を制限するものである。
具体的には、アーチ8の前端部が、前フレーム2の両後部側壁2d,2dの間に差し込まれ、前端寄りの位置に形成された左右方向の貫通孔8aと両後部側壁2d,2dの下端寄りの位置に形成された左右方向の貫通孔2f,2fとを貫通するボルト8c並びにナット8dによって前フレーム2に対して揺動可能に軸支される。
また、アーチ8の後端部には、左右方向の貫通孔8eが形成されたジョイント部8bが取り付けられる。そして、ジョイント部8bの貫通孔8eにスライダー軸8fが挿入されると共に、スライダー軸8fの両端部にジョイント部8bを挟んで左右一対のガイドローラー8g,8gが取り付けられる。
そして、スライダー軸8f及び一対のガイドローラー8g,8gが取り付けられた状態でジョイント部8bが後フレーム3の下端開口から貫通孔3dに挿入される。このとき、ジョイント部8bの、スライダー軸8fが挿入された貫通孔8eよりも前側の部分がガイド3bを貫通する。これによって、アーチ8の後端部が後フレーム3に対して摺動可能且つ揺動可能に連結される。
また、ジョイント部8bを貫通孔3dに挿入した後、貫通孔3dの軸直角断面形状に合わせた軸直角断面形状に形成された柱状のストッパブロック3aが後フレーム3の下端開口から貫通孔3dに挿入される。ストッパブロック3aは、後フレーム3の下端寄りの位置に、ストッパブロック3aと後フレーム3の後面周壁とを貫通して後輪ホルダー5c内に嵌入するボルト3cによって固定される。
そして、アーチ8のジョイント部8bがストッパブロック3aの上端面に当接することによって前フレーム2と後フレーム3との開脚の程度が固定される。また、前フレーム2と後フレーム3とが揺動して閉脚する際には、スライダー軸8f及び一対のガイドローラー8g,8gの働きによってガイド3bを貫通するジョイント部8bが後フレーム3の貫通孔3d内を摺動して上に向かって移動する。
また、本実施形態の歩行補助具1は、アーチ8のジョイント部8bを吊り上げて後フレーム3の貫通孔3d内を上に向かって移動させることによって前フレーム2と後フレーム3との揺動を助勢して閉脚させ易くするために、ボール21とワイヤ22とを備える。
具体的には、吊り上げ部材としてのワイヤ22の下端部がアーチ8のジョイント部8bに形成された貫通孔8hに結ばれ、中間部分が後フレーム3の貫通孔3d内に配置され、上端部が後フレーム3の周壁後面の貫通孔から後フレーム3の外に出てボール21に結ばれる。
この構成により、ボール21を持ち上げると吊り上げ部材としてのワイヤ22を介してアーチ8のジョイント部8bが吊り上げられ、これによりアーチ8前端部と前フレーム2との連結点を中心としてアーチ8の傾斜が増加してアーチ8後端のジョイント部8bが前フレーム2側に引き寄せられて後フレーム3が前フレーム2に引き寄せられる。すなわち、ボール21を持ち上げることによって前フレーム2と後フレーム3との揺動を助勢して閉脚させることができる。
このとき、本実施形態では、前フレーム2の両後部側壁2d,2dによって形成される軸心方向の凹部に後フレーム3の前側部分が入り込んで収容されると共に、左右対向する前輪タイヤ4a,4aの間に後輪タイヤ5a,5aの前側部分が入り込む。また、このとき、アーチ8の働きによって後フレーム3の軸心の方向はぶれることがなく、即ち前フレーム2の軸心と後フレーム3の軸心とは方向が一致した状態で引き寄せられるので、後フレーム3は前フレーム2の軸心方向の凹部に確実に入り込むことになる。
これによって、本実施形態の歩行補助具1は、両フレーム2,3を閉脚させたときに全体がより細身になる。また、両フレーム2,3の間に隙間がないので全体として一本に見えて見栄えが良好なものになる。なお、両フレーム2,3を閉脚させた状態でも歩行補助具1は自立する。
なお、ボール21を持ち上げた状態、そして前フレーム2と後フレーム3とを閉脚させた状態を維持させるため、ボール21は係止部材としての働きをすると共に、ハンドル6の前フレーム2との連結部分に後方に張り出して設けられる連結ユニットカバー部6cの上面に係止受部としてのボール受けフック15が取り付けられる。
係止受部としてのボール受けフック15は、ボール21の外周面の形状に合わせた凹部が上面に形成されていると共に後側に切り込みが形成されている。そして、当該切り込みにワイヤ22を通しながら係止部材としてのボール21が凹部に載置される。このとき、前フレーム2と後フレーム3とが開脚しようとしてアーチ8のジョイント部8bが後フレーム3の貫通孔3d内を下に向かって移動しようとすることによってワイヤ22には下向きの張力が働き、これによってボール21にはボール受けフック15の凹部に押し付けられる力が働くので、ボール21がボール受けフック15に載置された状態が維持されて両フレーム2,3を閉脚させた状態が維持される。
以上の構成を有する本発明の歩行補助具によれば、通常の場合には、前フレーム2と後フレーム3とを揺動させて閉脚させる際には両フレーム2,3を引き寄せ合わせる力が働くので摺動揺動軸2aが揺動軸支持長穴20aの前端に押し付けられながら両フレーム2,3が閉脚する(図8,図9)。
一方、両フレーム2,3を揺動させて閉脚させる際に両フレーム2,3の間に手の指などが挟まってしまった場合には、摺動揺動軸2aが揺動軸支持長穴20aの後端寄りの位置に移動して両フレーム2,3の間に隙間を確保しながら後フレーム3は前フレーム2に対して揺動を続けて両フレーム2,3は間に隙間を確保しながら閉脚する(図10,11)。
したがって、以上の構成を有する本発明の歩行補助具によれば、一対のフレーム2,3を連結する揺動軸2aの位置を前後方向に移動させることができるので、一対のフレーム2,3を揺動軸2aを中心として揺動させて閉じた場合に両フレーム2,3間に指などを挟んでしまったとしても揺動軸2aが後方に移動して両フレーム2,3間に隙間を生じさせながらフレーム同士を閉じることができ、安全性の向上を図ることができる。
また、以上の構成を有する本発明の歩行補助具によれば、安全性を損ねることなく一対のフレームを揺動させて閉じた場合のフレーム間の隙間をなくすようにすることができるので、安全性と共に見栄えの向上を図ることができる。
なお、上述の形態は本発明の好適な形態の一例ではあるがこれに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。例えば、本実施形態では、前フレーム2に対して後フレーム3を連結させる軸を前後方向に摺動可能にするものとして構成されているが、これに限られず、後フレーム3に対して前フレーム2を連結させる軸を前後方向に摺動可能にするものとして構成しても良い。
また、本実施形態では、左右対向配置された一対の車輪を前後二箇所に備える歩行補助具を例に挙げて説明したが、これに限られず、一対の車輪を前後二箇所ずつ合計四箇所に備える歩行補助具に対して本発明を適用するようにしても良い。
また、本実施形態では、本発明の歩行補助具に係るフレーム連結構造を構成するために前フレーム2とは別体のフレームジョイント20を備えるようにしているが、一対のフレームを連結するための別体の部品の形状は本実施形態のフレームジョイント20に限られるものではなく、また、一対のフレームとは別体の部品を用いるようにすることは本発明の必須要件ではない。
すなわち、一対のフレームとは別体の部品を用いる場合には、本実施形態の摺動揺動軸2aに相当する揺動軸と、当該揺動軸を前後方向に摺動可能に支持する長孔とを少なくとも有するものであればどのような形状であっても構わない。
また、一対のフレームとは別体の部品を用いることなく、一対のフレーム2,3のうちのいずれか一方に本実施形態における間隙20gに相当する間隙と揺動軸支持長穴とを直接形成するようにしても良いし、いずれか一方に間隙20gに相当する間隙と摺動揺動軸を設けると共に他方に揺動軸支持長穴を直接形成するようにしても良い。
また、本実施形態では、ボール21を持ち上げることによってアーチ8の傾斜を増加させて後フレーム3が前フレーム2に引き寄せられるようにしているが、ボール21とワイヤ22とは本発明の必須の構成ではなく、これらを備えない構成としても良い。