JP5538654B2 - エレベータの制振装置 - Google Patents

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Description

この発明は、建築物の昇降路内を走行するエレベータ、特に高速走行時の横振動を低減するエレベータの制振制御技術に関するものである。
ビルの高層化により高速なエレベータに対するニーズが高まっている。エレベータのさらなる高速化を実現する上で、エレベータかごの振動低減技術の重要性が大きくなっている。
エレベータかごの横振動を低減する技術として、かごの横振動を検知するセンサと、かごに制振力を加えるアクチュエータとを備え、横振動と逆向きの力をアクチュエータによりかごに加えることで振動を低減する手法がある。(例えば、特許文献1を参照。)
特に、かごの横振動の速度に比例した逆向きの力をアクチュエータが発生させる制御を、スカイフックダンパ制御と呼ぶ。なお、スカイフックダンパ制御は、かごと空中との間に固定されたダンパ装置(振動減衰装置)が作用するのと同様の効果が有るために、スカイフックダンパ制御と呼ばれる。
また、アクチュエータで振動を抑制する力を発生させるのではなく、エレベータかごの減衰や剛性に関する物理パラメータを制御することにより振動を低減する手法もある。(例えば、特許文献2を参照。)
ダンパ装置の減衰係数を変化させることにより、スカイフックダンパ制御と同様な制御を実現する手法が、Karnoppらにより提案されている。(例えば、非特許文献1を参照。)
隣接かごや釣合い錘とのすれ違い時に大きい風圧が発生してかごが振動するため、すれ違い時の振動を低減するためにすれ違い時に自分または相手の走行速度を低減させる手法もある。(例えば、特許文献3を参照。)
特開2001−122555号公報。 特開平9−240930号公報。 特開2002−3090号公報。 潘公宇、松久寛、本田善久:「MR ダンパを用いたセミアクティブ振動制御」、 Dynamics and Design Conference 2000 講演論文集、日本機械学会、2000年9月。
アクチュエータによる制振手法は、振動が小さい場合は高い制振効果を得ることができる。しかし、アクチュエータで発生できる力には上限があり、この上限を越える力が必要となるような大きな振動は十分には抑えることができない。上限を越えない場合でも、振動が大きいと多くのエネルギーを消費する。
エレベータかごの減衰や剛性に関する物理パラメータを制御する制振手法では、必要なエネルギーは少なくてもよいが、アクチュエータによる制御と比較すると性能が低い。非特許文献1の手法では、かごとガイドレールとの間に設置されたダンパ装置によりかごの横振動の速度に比例した減衰力を発生させようとする。しかし、ダンパ装置は、かごとガイドレールとの間の距離の変化速度とは逆向きの減衰力を発生するので、発生させたいかごの横振動の速度に比例した減衰力は、かごとガイドレールとの間の距離の変化速度とかごの横振動の速度が同じ向きの場合だけしか発生できない。逆向きになる場合は、ダンパ装置の減衰力がゼロになるように制御する。減衰力をゼロにする時点またはゼロから所定の値に変化させる時点に衝撃力が発生することになり、非特許文献1の手法には、変位は小さくできるが加速度はあまり小さくできないという課題がある。
すれ違い時の風圧による横振動を低減するためにエレベータかごの走行速度を減速する方法では、エレベータのさらなる高速化を実現することが困難になるという課題が有る。ここで、すれ違い時などに発生する風圧のことを風外乱とも呼ぶ。
エレベータかごは、ロープで牽引されるかご枠と、かご枠に防振材を介して固定された乗客が入るかご室などから構成される。エレベータかごの横振動の固有振動モードには、ガイドレールとかご枠との間が振動の腹(振幅が最大になる個所)になる1次モードと、かご枠とかご室の間が振動の腹となる2次モードとが有る。2次モードの周波数の方が、1次モードの周波数よりも高い。
エレベータの横振動の主原因はガイドレールの曲がりなどであり、ガイドレールに起因する振動の周波数は、ガイドレール1本の長さとエレベータかごの走行速度により決まる。ガイドレール1本の長さはエレベータごとに決まっており、エレベータかごの走行速度によりガイドレールに起因する外乱の周波数が変化する。従来のエレベータでは、2次モードに近い周波数のガイドレールに起因する外乱が発生するほど高速ではなく、2次モードの振動を低減する対策がなくても、あまり問題にならなかった。
この発明は、エレベータかごが高速走行する際にエレベータかごの横振動を抑制できるエレベータの制振装置を得ることを目的とするものである。
かご室と該かご室を支持するかご枠との間に設けられた減衰係数を変更可能な第1ダンパ装置と、昇降路内に設置されたガイドレールにしたがって回転移動するガイドローラを前記ガイドレールに押し付ける力を制御することで前記かごに制振力を与え、しかも前記かご枠に取り付けられたアクチュエータと、前記かご枠に設置された振動センサと、自エレベータかごの走行速度を検出する速度検出手段と、自エレベータかごの位置を検出する位置検出手段と、固定的なすれ違い個所に関するデータ、前記速度検出手段で検出する速度、及び前記位置検出手段で検出する位置とを用いて自エレベータかごに加えられる風圧を予測する風圧予測手段と、該風圧予測手段の出力を入力として前記ダンパ装置への制御信号を計算して出力し、前記振動センサの信号の出力を入力として前記アクチュエータへの制御信号を計算して出力するする演算部と、前記ガイドローラが横移動する振動を減衰させる減衰係数を変更可能な前記かご枠に取り付けられた第2ダンパ装置とを備え、
前記振動センサで検出する振動を抑えるように前記演算部が前記アクチュエータを制御し、風圧の発生が予測される期間及びその前後の所定期間に前記第1ダンパ装置の減衰係数をそれ以外の期間よりも大きくするように前記演算部が前記第1ダンパ装置を制御し、
風圧の発生が予測される期間及びその前後の所定期間に、前記第2ダンパ装置の減衰係数をそれ以外の期間よりも大きくし、前記アクチュエータが発生する力をそれ以外の期間よりも小さくするように前記演算部が前記アクチュエータと前記第2ダンパ装置を制御することを特徴とするものである。
かご室と該かご室を支持するかご枠との間に設けられた減衰係数を変更可能な第1ダンパ装置と、昇降路内に設置されたガイドレールにしたがって回転移動するガイドローラを前記ガイドレールに押し付ける力を制御することで前記かごに制振力を与え、しかも前記かご枠に取り付けられたアクチュエータと、前記かご枠に設置された振動センサと、自エレベータかごの走行速度を検出する速度検出手段と、自エレベータかごの位置を検出する位置検出手段と、固定的なすれ違い個所に関するデータ、前記速度検出手段で検出する速度、及び前記位置検出手段で検出する位置とを用いて自エレベータかごに加えられる風圧を予測する風圧予測手段と、該風圧予測手段の出力を入力として前記ダンパ装置への制御信号を計算して出力し、前記振動センサの信号の出力を入力として前記アクチュエータへの制御信号を計算して出力するする演算部と、前記ガイドローラが横移動する振動を減衰させる減衰係数を変更可能な前記かご枠に取り付けられた第2ダンパ装置とを備え、
前記振動センサで検出する振動を抑えるように前記演算部が前記アクチュエータを制御し、風圧の発生が予測される期間及びその前後の所定期間に前記第1ダンパ装置の減衰係数をそれ以外の期間よりも大きくするように前記演算部が前記第1ダンパ装置を制御し、
風圧の発生が予測される期間及びその前後の所定期間に、前記第2ダンパ装置の減衰係数をそれ以外の期間よりも大きくし、前記アクチュエータが発生する力をそれ以外の期間よ
りも小さくするように前記演算部が前記アクチュエータと前記第2ダンパ装置を制御することを特徴とするものなので、風圧発生時に振動を抑制できるという効果が有る。
かご室と該かご室を支持するかご枠との間に設けられた減衰係数を変更可能なダンパ装置と、昇降路内に設置されたガイドレールにしたがって回転移動するガイドローラを前記ガイドレールに押し付ける力を制御することで前記かごに制振力を与え、しかも前記かご枠に取り付けられたアクチュエータと、前記かご枠に設置された振動センサと、自エレベータかごの走行速度を検出する速度検出手段と、自エレベータかごの位置を検出する位置検出手段と、固定的なすれ違い個所に関するデータ、前記速度検出手段で検出する速度、及び前記位置検出手段で検出する位置とを用いて自エレベータかごに加えられる風圧を予測する風圧予測手段と、該風圧予測手段の出力入力として前記ダンパ装置への制御信号を計算して出力し、前記振動センサの信号の出力を入力として前記アクチュエータへの制御信号を計算して出力するする演算部とを備え、前記振動センサで検出する振動を抑えるように前記演算部が前記アクチュエータを制御し、風圧の発生が予測される期間及びその前後の所定期間に前記ダンパ装置の減衰係数をそれ以外の期間よりも大きくするように前記演算部が前記ダンパ装置を制御することを特徴とするものである。
かご室と該かご室を支持するかご枠との間に設けられた減衰係数を変更可能なダンパ装置と、昇降路内に設置されたガイドレールにしたがって回転移動するガイドローラを前記ガイドレールに押し付ける力を制御することで前記かごに制振力を与え、しかも前記かご枠に取り付けられたアクチュエータと、前記かご枠に設置された振動センサと、自エレベータかごの走行速度を検出する速度検出手段と、自エレベータかごの位置を検出する位置検出手段と、固定的なすれ違い個所に関するデータ、前記速度検出手段で検出する速度、及び前記位置検出手段で検出する位置とを用いて自エレベータかごに加えられる風圧を予測する風圧予測手段と、該風圧予測手段の出力入力として前記ダンパ装置への制御信号を計算して出力し、前記振動センサの信号の出力を入力として前記アクチュエータへの制御信号を計算して出力するする演算部とを備え、前記振動センサで検出する振動を抑えるように前記演算部が前記アクチュエータを制御し、風圧の発生が予測される期間及びその前後の所定期間に前記ダンパ装置の減衰係数をそれ以外の期間よりも大きくするように前記演算部が前記ダンパ装置を制御することを特徴とするものなので、風圧発生時に振動を抑制できるという効果が有る。
この発明の実施の形態1でのエレベータの制振装置の構成を説明するエレベータかごの全体図である。 この発明の実施の形態1でのガイド装置の構造を説明する図である。 この発明の実施の形態1での回転減衰装置の構造を説明する図である。 この発明の実施の形態1での直動減衰装置の構造を説明する図である。 エレベータかごの横振動の固有振動モードを説明する図である。 ガイドレールからの強制変位外乱に対するエレベータかごの変位の周波数特性の1例を説明する図である。 この発明の実施の形態1でのエレベータかごの走行速度に対する直動減衰装置の減衰係数の制御方法を説明する図である。 風圧が発生する原因を説明する図である。 この発明の実施の形態1でのすれ違い時の風圧変動による外乱に対応するためのアクチュエータ、直動減衰装置及び回転減衰装置の制御方法を説明する図である。 風圧を受けるエレベータかごの簡易図である。 この発明の実施の形態1での制振効果を従来方法と比較するためのシミュレーション結果を説明する図である。 この発明の実施の形態2での直動減衰装置の構造を説明する図である。 この発明の実施の形態3での直動減衰装置の構造を説明する図である。 この発明の実施の形態4での回転減衰装置の構造を説明する図である。 この発明の実施の形態5でのガイド装置の構造を説明する図である。 この発明の実施の形態6でのガイド装置の構造を説明する図である。 この発明の実施の形態6での制御方法と比較する従来の制御方法を説明するブロック図である。 この発明の実施の形態6での制御方法を説明するための変数を説明する図である。 この発明の実施の形態6での制御方法を説明するブロック図である。
1 :かご室 1A:突起
2 :かご枠 2A:上梁
2B:下梁 2C:縦柱
2D:突起 3 :防振材
4 :振れ止めゴム 5 :直動減衰装置(ダンパ装置)
5A:ハウジング 5B:MR流体
5C:固定側ヨーク 5D:ピストン
5E:コイル 5F:可動側ヨーク
5G:球面 5H:球面軸受け
5J:粘性流体 6 :ガイドレール
7 :ブラケット 8 :昇降路壁
9 :ガイド装置 9A:ガイドベース
9B:遥動軸 9C:ガイドレバー
9D:回転軸 9E:ガイドローラ
9F:バネ 9G:アーム
10 :ロープ 11 :釣合い錘
12 :アクチュエータ 12A:可動部
12B:固定部 12C:コイル
13 :回転減衰装置(第2ダンパ装置) 13A:ハウジング
13B:MR流体 13C:コイル
13D:ロータ 14 :振動センサ
15 :コントローラ(演算部、風圧予測手段) 16 :隣接かご
17 :風圧 18 :オリフィス機構
18A:オリフィス 18B:固定円盤
18C:オリフィス 18D:可動円盤
18E:モータ 19 :摩擦機構
19A:摺動部材 19B:バネ
19C:磁性体 19D:鉄心
19E:コイル 20 :摩擦機構
20A:鉄心 20B:コイル
20C:磁性体 20D:摺動部材
20E:バネ 21 :直動減衰装置(第2ダンパ装置)
21A:回転軸受け 21B:回転軸受け
22 :変位計(変位検出手段) 23 :帯域通過フィルター
24 :積分器 25 :微分器
26 :切替え器 27 :帯域通過フィルター
28 :乗算器 29 :加算器
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1によるエレベータの制振装置の構成を説明するエレベータかごの全体図である。エレベータかごでは、乗客が入るかご室1が、防振材3によりある程度は移動可能にかご枠2の上に支持されている。かご枠2は、上梁2Aと下梁2Bと2本の縦柱2Cとからなる長方形の形状の枠である。かご室1と縦柱2Cとの間には、かご室1の倒れこみを防ぐために振れ止めゴム4が設置されている。かご室1の底面には、かご室1とかご枠2との水平面での位置関係が変動する振動を減衰させる直動減衰装置5が有る。直動減衰装置5は、図1に示す左右方向の横振動を減衰させるためのものと、図示はしないが前後方向の横振動を減衰させるためのものとがある。図1では煩雑さを避けるために、左右方向の横振動を抑える装置だけを書いている。なお、左右方向と同様な機構により、前後方向の横振動を抑制できる。
かご枠2の両側に対向してガイドレール6がブラケット7を介して昇降路壁8上に設置されている。かご枠2は、ガイドレール6に従って走行できるようにする所定の数のガイド装置9がある。ガイド装置9は、かご枠2の上下の左右という4箇所にある。1箇所ごとにガイドレール6に内側から接触して左右方向にガイドするものが1個と、ガイドレール6を両側から挟んで前後方向にガイドするものが2個ある。図1では前述のように、左右方向のガイド装置9だけを書いている。
かご枠2はロープ10により牽引されており、図示しない巻上げ機によりロープ10を巻きとってエレベータかごを上昇させ、巻上げ機がロープ10を巻きほどいてエレベータかごを下降させる。巻上げ機の負担を軽減させるために、エレベータかごとほぼ同じ重さの釣合い錘11(図示せず)がロープ10のエレベータかごとは反対側の端に結びつけられている。エレベータかごが上昇する時には釣合い錘11は下降し、エレベータかごが下降する時には釣合い錘11は上昇する。エレベータに要するスペースをできるだけ小さくするため、エレベータかごと釣合い錘11は非常に近接して設置されている。
図2にガイド装置9の構造を説明する図を示す。ガイド装置9は、かご枠2に固定されるガイドベース9Aと、ガイドベース9Aに遥動軸9Bを介して遥動可能に取り付けられるガイドレバー9Cと、ガイドレバー9Cに回転軸9Dを介して回転可能に取り付けられるガイドローラ9Eと、ガイドローラ9Eをガイドレール6に押し付けるために一端がガイドベース9Aに対して所定の位置に固定され他端がガイドレバー9Cと接触するように配置されたバネ9Fと、ガイドレバー9Cの回転軸9Dよりも図における少し下の位置にガイドレバー9Cに対して垂直に溶接で取り付けられたアーム9Gとから構成される。なお、ガイドベース9Aは、かご枠2に固定される底面部と、遥動軸9Bが挿入される穴がある軸受け部と、バネ9Fの中を通りバネ9Fの一端を固定する棒が取り付けられる柱部とから構成される。バネ9Fの一端を固定する棒を通すために、ガイドレバー9Cの所定の位置に所定の大きさの貫通穴を設ける。
ガイドローラ9Eが左右方向に横移動すると、ガイドレバー9Cが遥動軸9Bを中心に回転して遥動し、アーム9Gが上下方向に移動する。アーム9Gとガイドベース9Aとの間には、ガイドローラ9Eをガイドレール6に押し付ける力を制御するアクチュエータ12を設ける。遥動軸9Bには、ガイドベース9Aに対するガイドレバー9Cの回転に減衰力を与える回転減衰装置13を設ける。
アクチュエータ12の構成は、特許文献1に記載のものと同様とする。アクチュエータ12の可動部12Aがアーム9Gに固定されており、ガイドベース9A側には可動部12Aと交わる磁界を発生させる固定部12Bが固定されている。可動部12Aの形状は、「コ」の字の開いた側を下に向けた形状であり、可動部12Aの下端に近い部分にはコイル12Cが巻かれている。固定部12Bにはコイル12Cが通る貫通穴があり、この貫通穴の内面にコイル12Cに直交するような磁界が発生するように永久磁石を設けておく。可動部12Aに巻かれたコイル12Cに電流を流すと、磁界中のコイル12Cにはローレンツ力が働く。コイル12Cに働くローレンツ力は、可動部12Aにも働く。ガイドローラ9Eの左右方向の振動を抑制する力が可動部12Aに働くようにコイル12Cに流す電流を制御して、コイル12Cに働くローレンツ力を制御する。
図3に、回転減衰装置13の構造を説明する縦断面図を示す。回転減衰装置13は、ガイドベース9Aに遥動軸9Bを中に通して固定されたドーナツ状の断面の空間を有するハウジング13Aと、ハウジング13A内に封入されたMR流体(Magneto−rheological fluid)13Bと、ハウジング13A内及びMR流体13B内に鎖交する磁束を発生させるハウジング13Aの内側面に固定されたコイル13Cと、遥動軸9Bに固定されMR流体13B内を回転移動する円盤状のロータ13Dとからなる。ハウジング13Aの内側の側面には、ロータ13Dが入る隙間を設けてある。この隙間には、MR流体13Bが漏れることを防止するシール材を設ける。
磁束が発生しない状態ではロータ13Dとハウジング13A及びMR流体13Bとの間の抵抗は少なくし、ロータ13Dが自由に回転移動できるようにする。コイル13Cに電流を流してMR流体13Bに磁界を加えると、MR流体13Bの粘性が増加し、MR流体13Bとロータ13Dの間の抵抗が増大し、ロータ13Dが回転しにくくなる。つまり、回転減衰装置13により、ガイドレバー9Cが遥動軸9Bを中心に回転して遥動する振動すなわちガイドローラ9Eが横移動する振動を減衰できる。
図4は、直動減衰装置5の構造を説明する図である。直動減衰装置5もMR流体を利用するものである。直動減衰装置5は、円筒状のハウジング5Aと、ハウジング5A内に封入されたMR流体5Bと、ハウジング5Aの内側面のほぼ全面に固定された固定側ヨーク5Cと、ハウジング5Aの片側の底面に設けられた円形の穴からハウジング5A内に挿入されるピストン5Dと、ピストン5Dの先端部に所定の幅で巻きつけられたコイル5Eと、コイル5Eを挟むようにピストン5Dに固定された可動側ヨーク5Fとから構成される。ピストン5Dが挿入されるハウジング5Aの穴には、MR流体5Bが漏れ出ることを防止するシール材を設ける。
コイル5E及び可動側ヨーク5Fと固定側ヨーク5Cとの間には、MR流体5Bが入り込んでいる。コイル5Eに電流を流すと、可動側ヨーク5F、固定側ヨーク5C、MR流体5Bに鎖交する磁束すなわち磁場が発生する。磁場が印加されるとMR流体5Bの粘度が上昇し、ピストン5DがMR流体5B内で移動しにくくなる。なお、磁場が印加されていない状態では、ピストン5DはMR流体5B内をほとんど抵抗なく移動できる。
ハウジング5Aとピストン5Dの端は球面5Gになっている。直動減衰装置5は、その片端の球面5Gがかご室1の下面に設けられた突起1Aに設けられた球面軸受け5Hに嵌め込まれて回転自在に取り付けられ、もう片端の球面5Gが下梁2Bの上面に設けられた突起2Dに設けられた球面軸受け5Hに嵌め込まれて回転自在に取り付けられる。直動減衰装置5が水平になるように、突起1Aと突起2Dの高さは調整する。球面5Gと球面軸受け5Hを使用するので、かご室1とかご枠2の位置関係が変化しても、突起1Aと突起2Dとを結ぶ直線上に直動減衰装置5が配置され、かご室1とかご枠2の間の距離が変化する振動を減衰させることができる。
上梁2Aの上面と下梁2Bの下面には、かご枠2の振動の加速度を検出する振動センサ14が取り付けられている。振動センサ14で検出した信号は、アクチュエータ12、直動減衰装置5及び回転減衰装置13などを制御する演算部であるコントローラ15に入力される。コントローラ15は、制御対象の装置を制御する上で適切な位置に配置する。この実施の形態1では、コントローラ15は上梁2Aの上面に配置する。
コントローラ15には、自エレベータかごの位置や走行速度などが自エレベータかごの制御装置から入力され、隣接するかごがある場合には、隣接エレベータかごの制御装置から隣接かごの位置や速度などを取得する。つまり、自エレベータかごの制御装置が速度検出手段であり、位置検出手段でもある。隣接エレベータかごの制御装置が隣接かご走行情報取得手段である。また、コントローラ15は、自エレベータかごに加えられる風圧を予測する風圧予測手段でもある。
以上で構造の説明を終了し、動作を説明する。エレベータかごの横振動の中で左右方向の振動を抑える方法について説明する。前後方向の横振動に対しても、同様な方法が適用できる。
エレベータかごに横振動を起こす主要因の一つは、ガイドレール6の曲がりや継ぎ目部分の据え付け誤差により発生する強制変位加振である。ガイドレール6に起因する強制変位加振は、ガイド装置9を介してかご枠2及びかご室1に伝えられる。このようなガイドレール6に起因する振動外乱は、ガイドレール6の1本分の長さlr[m]とエレベータかごの走行速度v[m/s]によって以下の式(1)で規定される加振周波数fr[Hz]が支配的になる特徴が有る。
fr=v/lr (1)
一方、エレベータかごの横振動の固有振動モードには、大きく分けて図5に示すような2種類のモードが有る。図5は、エレベータかごの横振動の固有振動モードを説明する図である。図5(a)に示すのが、ガイド装置9の部分が振動の腹になる1.5〜2.5[Hz]程度の周波数の1次モードである。図5(b)には、かご室1とかご枠2が逆方向に動きかご室1とかご枠2の間が振動の腹になる4〜8[Hz]程度の周波数の2次モードを示す。なお、振動の腹とは、振動の振幅が最大になる個所である。逆に振動の振幅がゼロになる個所が振動の節である。
図6に、ガイドレールからの強制変位外乱に対するエレベータかごの変位の周波数特性の1例を説明する図を示す。図6では、ガイドレール6から所定の周波数で所定の変位の振動をかご枠2に加えた場合に、振動センサ14で計測される加速度を変位で割った値の周波数に対する変化を示す。1次モードと2次モードの振動モードが存在することが分かる。
代表的な値としてガイドレール6の1本分の長さlrを4[m]とすると、エレベータかごの走行速度vが10[m/s]程度までは加振周波数frは2.5Hz程度以下であり、加振周波数frは1次モードの周波数に近くなる。16[m/s]程度を越えるような走行速度vでエレベータが走行した場合には、加振周波数frは4Hz以上になり2次モードの周波数に近くなる。
振動センサ14で検出された信号はコントローラ15に入力される。コントローラ15は、エレベータかごの走行速度に応じて、直動減衰装置5の減衰係数を図7に示すように変化させるように制御する。図7は、この実施の形態1でのエレベータかごの走行速度に対する直動減衰装置5の減衰係数の制御方法を説明する図である。図7(a)がエレベータかごの走行速度の時間変化である。図7(b)には、図7(a)の走行速度の時間変化に対する、直動減衰装置5の減衰係数の時間変化を示す。なお、図示はしないが、回転減衰装置13の減衰係数は走行速度によらず最小の値とする。
エレベータかごの走行速度が所定の速度(ここでは、12[m/s])以下の場合では、直動減衰装置5の減衰係数を小さくして、主にアクチュエータ12により振動を抑える。アクチュエータ12により振動を抑える方法はこの発明の本質ではないが、例えばスカイフックダンパ制御を実施する。振動センサ14で検出された加速度信号から水平方向絶対速度を計算しフィルター処理を行ったものを入力とし、それに比例する力をアクチュエータ12で発生させる。
エレベータかごの走行速度が12[m/s]を越えて増加すると、直動減衰装置5の減衰係数をしだいに増加させる。走行速度が18[m/s]以上では、直動減衰装置5の減衰係数を最大値で固定する。走行速度が18[m/s]未満に減少すると、直動減衰装置5の減衰係数をしだいに減少させる。走行速度が12[m/s]以下では、直動減衰装置5の減衰係数を最小値で固定する。なお、走行速度が12〜18[m/s]の間は、図7では直動減衰装置5の減衰係数を速度に対して線形に変化させている。速度が時間に対して線形に変化するようにしているので、減衰係数の変化も時間に対して線形に変化するようになる。なお、減衰係数の変化の開始と終了では、変化速度の微分値が不連続にならないようにしてもよい。減衰係数を変化させる方法は、図7に示す方法以外でも、エレベータかごの走行速度が所定値より大きい場合にそうでない場合よりも大きくするものであり、かご室1に衝撃が加わらない方法であれば、どのような方法でもよい。このような制御を行うための入力となるエレベータかごの走行速度は、エレベータの制御装置から入力してもよいし、ガイドローラ9Eの回転数からコントローラ15で計算により求めるようにしてもよい。
直動減衰装置5の動作についてもう少し詳しく説明する。直動減衰装置5のコイル5Eに電流が流れない時は、MR流体5Bは粘度が小さい流体特性を示すので、ハウジング5Aに対するピストン5Dの水平方向への動きはほとんど抵抗を受けない。したがって減衰係数は小さな値となる。一方、かごの走行速度信号を受け取ったコントローラ15が、図7に示す関係に従い、減衰装置5のコイル5Eに電流を流すと、可動側ヨーク5F、MR流体5B、固定側ヨーク5Eの間に磁路が形成される。MR流体5Bに磁場が印加されるとその粘度が増加するため、可動側ヨーク5Fと固定側ヨーク5Eの間をピストン5Dが移動しにくくなり、ハウジング5Aに対するピストン5Dの動きは抵抗を受けることになる。ハウジング5Aに対するピストン5Dの動きへの抵抗は減衰力として働き、コイル5Eに流す電流が大きくなると減衰係数も大きくなる。コイル5Eに流す電流と減衰係数との間に存在する関係を求めておき、その関係にしたがってコイル5Eに流す電流を制御することにより減衰係数を制御する。
図7に示すように、2次モードの振動の周波数にガイドレールからの加振周波数frが近くなる速度(超高速と呼ぶ)の時に直動減衰装置5の減衰係数を大きくすることにより、かご室1とかご枠2とが互いに逆に動く2次モードの振動を抑制する。そして、アクチュエータ12による制振制御でかご室1及びかご枠2の振動を低減する。なお、2次モードの振動ではアクチュエータ12が設置されているガイド装置9付近は振動の節に近くなるため、アクチュエータ12だけでは超高速時に発生する2次モードの振動は効率的には低減できない。低速時には加振周波数frが1次モードに近くなり、1次モードではアクチュエータ12が設置されるガイド装置9付近が振動の腹になるので、アクチュエータ12により振動を効率的に抑えることができる。低速時には直動減衰装置5及び回転減衰装置13の減衰係数が小さいので振動の高周波成分に対してもかご室1が揺れにくく、快適な乗り心地を実現できる。
エレベータかごが高速で走行する際に考慮しなければならない重要な要因として、かご室1及びかご枠2に直接加えられる風圧が想定される。風圧が発生する要因としては、釣合い錘11や隣接エレベータかごなどとのすれ違いが考えられる。図8に風圧が発生する原因を説明する図を示す。図8に示すように、エレベータの昇降路内部では釣合い錘11がかごのすぐ近くを走行している。昇降路スペースは小さい方が望ましいため、釣合い錘11とかごが上下するスペースの間隔は必要最小限にしてあり、中間階付近でかごと釣合い錘11が非常に近くですれ違うことになる。すれ違い速度が速いとかごに急激な風圧変動が加えられ、風圧変動によりかご室1に大きな横振動が発生することになる。図8に示すように隣接かご16が同一昇降路内に設置されている場合は、隣接かご16とのすれ違い時にも大きな風圧変動が発生することになる。隣接かご16の方が釣合い錘11よりも大きいので、すれ違い時の風圧変動も隣接かご16の方が大きくなる。さらに、図示はしないが、さまざまな建築物側の制限により、昇降路内に断面積の急激な変化が生じる個所がある場合にも、その個所を高速で通過する時に風圧変動によるかご振動は発生する。
エレベータが高速で走行する場合に、このような風圧変動に起因する横振動は、前述するガイドレール7の曲がりや据え付け誤差に起因する横振動と比較して非常に大きくなると想定される。したがって、このような振動をアクチュエータ12により制御しようとすると、アクチュエータ12が大型になり、かつアクチュエータ12が非常に大きな電力を必要とするため実現が困難である。
風圧による横振動の低減方法について以下で説明する。風圧による横振動を低減するために、アクチュエータ12と並列に回転減衰装置13を設置している。図9に、すれ違い時の風圧変動による外乱に対応するためのアクチュエータ12、直動減衰装置5及び回転減衰装置13の制御方法を説明する図を示す。図9(a)がエレベータかごの走行速度の時間変化であり、エレベータの加速時を主に示す。図9(b)〜図9(d)には、図9(a)の走行速度の時間変化に対する、直動減衰装置5の減衰係数、回転減衰装置13の減衰係数、アクチュエータ12が発生させる制振力の時間変化を、それぞれ示す。エレベータかごの走行速度が超高速になる場合の制御方法は、図7に示したものと同様である。それに加えて、すれ違いによる風圧が発生すると予測される期間(風圧発生期間と略す)に、直動減衰装置5及び回転減衰装置13の減衰係数を最大にする。また、同時にアクチュエータ12の制振力を小さくする。風圧発生期間の前の所定期間には、直動減衰装置5及び回転減衰装置13の減衰係数を滑らかに増加させ、アクチュエータ12の制振力と入力信号との比例係数を滑らかに減少させる。そして、風圧発生期間の後の所定期間には、直動減衰装置5及び回転減衰装置13の減衰係数を滑らかに減少させ、アクチュエータ12の制振力と入力信号との比例係数を滑らかに増加させる。
風圧発生期間は、コントローラ15で以下のようにして計算する。釣合い錘11とすれ違う個所と、昇降路内に断面積の急激な変化が生じる個所がある場合にはその個所とを、固定的なすれ違い個所と呼ぶ。ロープ10の長さや釣合い錘11の大きさや昇降路の高さや断面積などのデータすなわち自エレベータの構造に関するデータから、固定的なすれ違い個所の位置を求めて、コントローラ15などにデータとして保存しておく。固定的なすれ違い個所に関するデータは、処理に適した形式であることが望ましいが、固定的なすれ違い個所を通過する際に風圧を予測計算できればどのような形式でもよい。
自エレベータかごの位置と速度などの走行状態に関する信号を自エレベータかごの制御装置からコントローラ15が受信し、コントローラ15が、固定的なすれ違い個所を高速(所定値以上の速度)で走行する風圧発生期間を求める。風圧発生期間は、速度や位置の誤差などを吸収できるように、適切な余裕を持たせた期間とする。
また、昇降路内に他のエレベータかごがある場合は、隣接するエレベータかごの制御装置から走行状態に関する信号をコントローラ15が受信し、隣接エレベータかごと高速ですれ違うことによる風圧発生期間を求める。なお、隣接かごが停止している階に停止する場合、自かごの速度が所定値未満で固定的なすれ違い個所を通過する場合などは、高速ですれ違う場合には含まない。逆に、自かごが停止または低速であっても、隣接かごが高速で走行してすれ違う場合は、高速ですれ違う場合である。風圧発生期間と同時にすれ違い時の速度も求めておく。なお、すれ違い速度が高速かどうかを判断する所定値は、すれ違い速度と風圧との間の関係式を考慮して適切に決める。
風圧発生期間とすれ違い速度が求まると、所定の時間だけ風圧発生期間の始まりよりも前の時点から直動減衰装置5及び回転減衰装置13の減衰係数の増加とアクチュエータ12の係数の減少を行い、風圧発生期間の開始時点には所定の値になるようにする。風圧発生期間はこの状態を維持し、風圧発生期間後から直動減衰装置5及び回転減衰装置13の減衰係数を減衰させ、アクチュエータ12の係数を増加させる。そして、所定の時間後にすれ違い前の値に戻して、その後はその値を維持する。ただし、図9(b)に示すように、エレベータかごの走行速度の変化により直動減衰装置5の減衰係数を変化させる期間と風圧発生期間が重なる場合は、何れかの制御方法による値の中で大きい方の値を減衰係数の値とする。
風圧発生期間での減衰係数及びアクチュエータ12の係数の値は、すれ違い速度によらない所定の値としてもよいし、すれ違い速度に応じて変化させるようにしてもよい。
減衰係数などを変化させる所定の時間は、風圧発生期間の前と後で異なる値としてもよく、すれ違い速度に応じて変化させてもよい。また、直動減衰装置5、回転減衰装置13、アクチュエータ12ごとにこの所定の時間を変えてもよい。増加または減少は時間に対して線形になるようにしてもよいし、増加または減少の変化速度の最大値が所定値以下となるように変化させるようにしてもよい。風圧発生期間に減衰係数が所定値以上で、アクチュエータ12の係数が所定値以下であれば、風圧発生期間中に減衰係数などを変化させてもよい。制御する機器の応答性、振動抑制の効果などを考慮して、風圧発生期間とその前後の所定の期間での減衰係数など制御方法を決める。
図10は、風圧17を受けるエレベータかごの簡易図である。図10に示すようなかご室1またはかご枠2に直接作用する風圧17に対しては、防振材3または直動減衰装置5のどちらかまたは両方とガイド装置9に関して、剛性と減衰を大きくすることでかご室1が揺れにくくなるのは明らかである。ただし、防振材3または直動減衰装置5のどちらかまたは両方とガイド装置9の剛性と減衰を大きくすると、図5に示すガイドレールからの外乱による横振動に対しては逆に揺れ易くなる。風圧による横振動は、すれ違い時の長くても数秒の期間内に発生するものであり、ガイドレールからの外乱よりも何倍も大きな力がかご室1などに加わる。そこで、風圧が加わる期間だけ直動減衰装置5及び回転減衰装置13の減衰係数を大きくする。そうすることにより、すれ違い時の横振動を低減できる。
アクチュエータ12と回転減衰装置13は並列に設置されているため、回転減衰装置13の減衰係数が大きい間は、アクチュエータ12が制振のために力を発生させてもかご枠2はあまり動かない。風圧による横振動はガイドレールによる横振動よりも何倍も大きい力が発生するので、振動を抑えるためにアクチュエータ12で発生させるべき力はアクチュエータ12の能力を越える。アクチュエータ12は能力最大で制振力を発生させるが振動を抑制できないので、アクチュエータ12は電力を浪費することになる。このアクチュエータ12での電力の浪費を避けるために、風圧発生期間ではアクチュエータ12の係数を小さくする。風圧発生期間にアクチュエータ12が制振力を発生させないようにしてもよい。
すれ違い時の回転減衰装置13の動作についてもう少し詳しく説明する。回転減衰装置13のコイル13Cに電流を流さない時には、ハウジング13Aの中に封入されたMR流体13Bの粘度は小さく、遥動軸9Bに固定されたロータ13DはMR流体13B内でほとんど抵抗を受けずに回転でき、減衰係数は小さい。コントローラ15がすれ違いなどによる風圧変動を予測した際には、コントローラ15からの指令によりコイル13Cに電流が流される。コイル13Cに電流が流れると、ハウジング13A、MR流体13B、ロータ13Dの間で磁路が形成される。MR流体13Bに磁場が印加されるとその粘度が上昇するため、減衰係数が大きくなる。コイル13Cに流す電流が大きくなると減衰係数も大きくなる。コイル13Cに流す電流と減衰係数との間に存在する関係を求めておき、その関係にしたがってコイル13Cに流す電流を制御することにより減衰係数を制御する。
図11は、この発明の実施の形態1での制振効果を従来方法と比較するためのシミュレーション結果を説明する図である。図11では、いくつかの制御方法の場合でのかご室1の横振動波形をシミュレーションで求めたものである。図11(a)に、防振材3とガイド装置9だけの構成(基本構成と呼ぶ)の場合の波形を示す。図11(b)は、基本構成にアクチュエータ12を加えた場合である。図11(b)と図11(a)を比較すると、風圧が発生する風圧発生期間であるすれ違い時以外では、図11(b)の方の振動が小さく、アクチュエータ12により横振動を抑制できることが分かる。しかし、図11(b)ではすれ違い時の振動は小さくなっていない。
図11(c)に、基本構成に直動減衰装置5及び回転減衰装置13を追加し、すれ違い時に減衰係数を大きくする制御を行う場合を示す。図11(c)と図11(b)を比較すると、すれ違い時の振動が図11(c)で低減できていることが分かる。しかし、すれ違い時以外の振動は図11(b)の方が少ない。図11(d)が、基本構成にアクチュエータ12、直動減衰装置5及び回転減衰装置13を追加し、すれ違い時に減衰係数を大きくしアクチュエータ12の係数を小さくする制御を行う場合である。図11(d)では、通常走行時の振動は図11(b)と同様にアクチュエータ12により低減され、風圧発生期間の振動も直動減衰装置5及び回転減衰装置13により低減できることが分かる。風圧発生期間ではアクチュエータ12が無駄な電力を消費しないようにしているので、ガイドレール6からの外乱による横振動が残っているが、総合的に見ると図11(d)が最も振動を低減できることが分かる。
以上のように昇降路やエレベータの構造的な情報と自かごの走行状態をコントローラ15に入力して、釣合い錘11または昇降路の断面積が急激に変化する個所である固定的なすれ違い個所を高速で通過する期間である風圧発生期間を把握し、風圧発生期間に直動減衰装置5及び回転減衰装置13の減衰係数を大きくすることにより、固定的なすれ違い個所を高速で通過する際の風圧変動による外乱の影響によるかご室1の横振動を低減できる。なお、直動減衰装置5または回転減衰装置13のどちらかの減衰係数を常に大きくしておき、もう一方の装置の減衰係数だけを風圧発生期間に大きくするようにしてもよい。
さらに、同一昇降路内に複数のかごが走行する場合は、隣接かごの走行状態をコントローラ15に入力して、隣接かごと高速ですれ違うタイミングを把握し、釣合い錘11などとすれ違う際と同様な制御を行うと、隣接かごとの高速でのすれ違い時にも風圧変動による外乱の影響によるかご室1の横振動を低減できる。風圧発生期間にはアクチュエータ12が出す制振力が小さくなるように制御することにより、風圧発生期間にアクチュエータ12が動作して電力を浪費することを防止できる。
MR流体は低電圧、低電流で大きな減衰力を得ることができるため、他の手段による場合よりも低消費電力で大きな制振力を得ることができる。また、MR流体はコイルに流す制御電流と発生する減衰係数との間の再現係数が他の手段よりも高く、減衰係数の制御が容易であるという利点も有る。
以上のことは、他の実施の形態でもあてはまる。
実施の形態2.
この実施の形態2は、MR流体の替わりにオリフィス機構を利用するように直動減衰装置5の構造を変更した場合である。直動減衰装置5の構造以外は、実施の形態1の場合と同じである。
図12は、実施の形態2における直動減衰装置5の構造を説明する図である。図12(a)にピストン5Dの中心を通る位置でのピストン5Dに平行な平面での縦断面図を示し、図12(b)に横断面図を示す。なお、図12(b)のAA断面が図12(a)に対応し、図12(a)のBB断面が図12(b)に対応する。
円筒状のハウジング5Aと、ハウジング5Aに水平移動可能に挿入されるピストン5Dと、ハウジング5A内に充填された粘度がほぼ一定の粘性流体5Jと、ピストン5Dの先端に取り付けられたオリフィス機構18を有する。ハウジング5Aにピストン5Dを挿入する穴には、図示しないが粘性流体5Jが外部に漏れることを防止する適切な部材を備える。ハウジング5Aとピストン5Dをかご室1またはかご枠2に回転自在に固定する方法は、実施の形態1の場合と同様である。
オリフィス機構18は、所定の数で所定の径のオリフィス18Aを有する固定円盤18Bと、固定円盤18Bと同様なオリフィス18Cを有する可動円盤18Dと、可動円盤18Dを回転させるモータ18Eとを有する。固定円盤18Bと可動円盤18Dは互いに密着しており、固定円盤18B、可動円盤18D及びモータ18Eの回転軸の中心はピストン5Dの断面の中心と一致している。オリフィス18Aとオリフィス18Cの径と数は、可動円盤18Dが回転するとオリフィス18Aが可動円盤18Dにより遮断されオリフィス18Cが固定円盤18Bにより遮断されるように調整する。
次に動作を説明する。直動減衰装置5、回転減衰装置13及びアクチュエータ12の制御は実施の形態1の場合と同様に行う。直動減衰装置5での減衰係数を変化させる動作だけが、実施の形態1とは異なる。
減衰係数を最小にする通常時の状態では、オリフィス18Aとオリフィス18Cとを一致させる。この状態では粘性流体5Jはオリフィス18A及びオリフィス18Cを容易に通過できるので、ピストン5Dが水平方向に移動するのにほとんど抵抗を受けない。つまり、直動減衰装置5の減衰係数が最小になる。
減衰係数を大きくする場合には、モータ18Eにより可動円盤18Dを回転させてオリフィス18Aとオリフィス18Cとが重なる面積すなわち通液孔を小さくする。図12(b)は、この状態を示す。通液孔が小さい状態では、粘性流体5Jが通液孔を通過する際に抵抗を受け、ピストン5Dが水平方向に移動しにくくなる。すなわち、直動減衰装置5の減衰係数が大きくなる。このようにモータ18Eにより可動円盤18Dを回転させて通液孔の面積を変化させることにより、直動減衰装置5の減衰係数を制御できる。可動円盤18Dの回転角度と減衰係数の大きさとの間の関係を事前に求めておき、その関係にしたがって所定の減衰係数になるように可動円盤18Dの回転角度を制御する。
この実施の形態2でも、実施の形態1と同様な効果が有る。
粘度がほぼ一定の粘性流体はさまざまな分野での使用実績が多く、粘性流体とオリフィス機構を用いた減衰装置は、寿命などの信頼性の面でMR流体よりも優れているという効果が有る。ただし、粘性流体とオリフィス機構を用いた減衰装置は、MR流体を利用する場合よりも減衰係数の制御が難しい。
実施の形態3.
この実施の形態3は、MR流体の替わりに摩擦機構を利用するように直動減衰装置5の構造を変更した場合である。直動減衰装置5の構造以外は、実施の形態1の場合と同じである。
図13は、実施の形態3における直動減衰装置5の構造を説明する図である。図13(a)にハウジング5Aのすぐ内側での縦断面図を示し、図13(b)に横断面図を示し、図13(c)に別の位置での横断面図を示す。なお、図13(b)のAA断面が図3(a)に対応し、図13(a)のBB断面が図13(b)に対応し、図13(a)のCC断面が図13(c)に対応する。
図13から分かるように、摩擦機構を使用する直動減衰装置5は、直方体の外形のハウジング5Aと、ハウジング5Aに挿入される断面が円形の棒状のピストン5Dと、ピストン5Dを水平方向に移動可能に保持するハウジング5A内の所定の位置に設置された2個の滑り軸受け5Kと、滑り軸受け5Kの間に配置されたピストン5Dに摩擦力を与える摩擦機構19とを有する。図13(b)が摩擦機構19のすぐ横から摩擦機構19を見る方向の直動減衰装置5の横断面図であり、図13(c)が摩擦機構19の中央での直動減衰装置5の横断面図である。
摩擦機構19は、ピストン5Dに摩擦力を与える半円状の溝を下面に有する直方体の外形の摺動部材19Aと、摺動部材19Aがピストン5Dと接触しないように下から摺動部材19Aを保持する片端がハウジング5Aに固定された4個のバネ19Bと、摺動部材19Aの中央の上面及び両側面に設けられた溝に上から嵌めこまれる磁性体19Cと、磁性体19Cと対向するようにハウジング5Aに固定された鉄心19Dと、鉄心19Dに巻かれたコイル19Eとを有する。鉄心19Dと磁性体19Cの間の間隔は、コイル19Eに電流を流すと鉄心19Dが磁性体19Cを吸引でき、鉄心19Dが磁性体19Cを吸引する状態では摺動部材19Aがピストン5Dに押し付けられるようにする。その他の構造は、実施の形態1と同様である。
次に動作を説明する。直動減衰装置5、回転減衰装置13及びアクチュエータ12の制御は実施の形態1の場合と同様に行う。直動減衰装置5での減衰係数を変化させる動作だけが、実施の形態1とは異なる。
減衰係数を最小にする通常時の状態では、摺動部材19Aはピストン5Dに接触しないようにバネ19Bにより保持される。コントローラ15から減衰係数を大きくするような指令を受けた場合は、コイル19Eに電流が流される。コイル19Eに電流が流れると、鉄心19Dと磁性体19Cの間に磁路が形成され、磁性体19Cと摺動部材19Aとが鉄心19Cに吸引される。すると、摺動部材19Aがピストン5Dに押し付けられ、摺動部材19Aとピストン5Dとの間に摩擦力が発生し、この摩擦力がピストン5Dの水平方向の移動を妨げる減衰力として作用する。摩擦力はコイル19Eに流れる電流が大きいほど大きくなり、摩擦力が大きいほど減衰力も大きくなる。つまり、コイル19Eに流す電流を制御することにより、減衰係数を制御できる。
この実施の形態3でも、実施の形態1と同様な効果が有る。
摩擦機構を使用した減衰装置は、MR流体や粘性流体をハウジング内に封入する必要がなく、構造が簡単になるという効果が有る。ただし、MR流体や粘性流体を利用する場合よりも減衰係数の制御は難しくなる。
実施の形態4.
この実施の形態4は、MR流体の替わりに摩擦機構を利用するように回転減衰装置13の構造を変更した場合である。回転減衰装置13の構造以外は、実施の形態1の場合と同じである。
図14は、実施の形態4における回転減衰装置13の構造を説明する図である。図14(a)に遥動軸9Bの中心を通る位置での縦断面図を示し、図14(b)に横断面図を示す。なお、図14(b)のAA断面が図3(a)に対応し、図14(a)のBB断面が図3(b)に対応する。
図14から分かるように、摩擦機構を使用する回転減衰装置13には、MR流体13B及びコイル13Cの替わりに摩擦機構20が有る。ハウジング13Aとロータ13Dは、実施の形態1の場合と同様な構造である。摩擦機構20は、ハウジング13Aに固定される面の形状が遥動軸9Bを通す穴を有する円形の上下に長方形をつなげた形状であり、上下の長方形の端に90度折れ曲がった所定の長さの部分を有する鉄心20Aと、この鉄心20Aに巻かれたコイル20Bと、コイル20Bに電流を流すと鉄心20Aに吸引される磁性体20Cと、磁性体20Cのロータ13D側に取り付けたロータ13Dに接触して摩擦力を発生させる2個の摺動部材20Dと、コイル20Bに電流を流さない状態では摺動部材20Dがロータ13Dに接触しないように、磁性体20C及び摺動部材20Dを保持する4個のバネ20Eとから構成される。磁性体20Cは、バネ20Eと接触する4箇所と鉄心20Aに吸着される上下の部分がロータ13Dの径よりも外側に見える形状である。鉄心20Aに吸着される上下の部分は、鉄心9Aと同様に他の部分に対して90度折れ曲がっている。鉄心20Aと磁性体20Cの間の間隔は、コイル20Bに電流を流すと鉄心20Aが磁性体20Cを吸引でき、鉄心20Aが磁性体20Cを吸引する状態では摺動部材20Dがロータ13Dに押し付けられるようにする。その他の構造は、実施の形態1と同様である。
次に動作を説明する。直動減衰装置5、回転減衰装置13及びアクチュエータ12の制御は実施の形態1の場合と同様に行う。回転減衰装置13での減衰係数を変化させる動作だけが、実施の形態1とは異なる。
減衰係数を最小にする通常時の状態では、摺動部材20Dはロータ13Dに接触しないようにバネ20Eにより保持される。コントローラ15から減衰係数を大きくするような指令を受けた場合は、コイル20Bに電流が流される。コイル20Bに電流が流れると、鉄心20Aと磁性体20Cの間に磁路が形成され、磁性体20Cと摺動部材20Dとが鉄心20Cに吸引される。すると、摺動部材20Dがロータ13Dに押し付けられ、摺動部材20Dとロータ13Dとの間に摩擦力が発生し、この摩擦力がロータ13Dの回転を妨げる減衰力として作用する。摩擦力はコイル20Bに流れる電流が大きいほど大きくなり、摩擦力が大きいほど減衰力も大きくなる。つまり、コイル20Bに流す電流を制御することにより、減衰係数を制御できる。
この実施の形態4でも、実施の形態1と同様な効果が有る。
直動減衰装置5と同様に回転減衰装置13でも、摩擦機構を使用した減衰装置は、MR流体や粘性流体をハウジング内に封入する必要がなく、構造が簡単になるという効果が有る。ただし、MR流体や粘性流体を利用する場合よりも減衰係数の制御は難しくなる。
実施の形態5.
この実施の形態5は、ガイドローラ9Eとかご枠2の間の振動を減衰するために、回転減衰装置13の替わりに直動減衰装置を備えるように、実施の形態1を変更した場合である。
図15は、実施の形態5におけるガイド装置の構造を説明する図である。ガイド装置9のアーム9Gとガイドベース9Aとの間に、ガイドローラ9Eがガイドレール6から押されて移動する振動を減衰する直動減衰装置21がアクチュエータ12と並列に設置され、回転減衰装置13が無い。直動減衰装置21の両端は、アーム9Gとは回転軸受け21Aによりガイドベース9Aとは回転軸受け21Bにより、回転可能に接続されている。直動減衰装置21の構造は、かご枠2とかご室1の間の振動を減衰させる直動減衰装置5と同様とする。そうすることにより、部品点数を削減できるという効果がある。
この実施の形態5でも、実施の形態1と同様な効果が有る。
直動減衰装置21及び直動減衰装置5の構造は、実施の形態1のようにMR流体を使用したものでも、実施の形態2のように粘性流体を使用したものでも、実施の形態3のように摩擦機構を用いたものの何れでもよい。
実施の形態6.
この実施の形態6は、ガイドレール6とかご枠2の間の距離すなわち変位を計測する変位検出手段である変位計を備えて、減衰係数の制御に利用するように実施の形態1を変更した場合である。図16に、この実施の形態6でのエレベータの制振装置におけるガイド装置9の構成を説明する図である。変位を計測する変位計22がガイドレバー9Cの上部に設置されている。また、コントローラ15での制御方法が異なり、制御方法を実現するために必要な演算器などを変更している。その他の構造は、実施の形態1と同様である。
次に動作を説明する。まず、減衰装置を使用してスカイフックダンパ制御を実現しようとする従来の制御方法について簡単に説明する。減衰装置を使用してスカイフックダンパ制御を実現しようとする従来の制御方法を説明するブロック図を、図17に示す。また、制御方法を説明するための変数を説明する図を、図18に示す。ガイドレール6の横方向の位置を変数x0で表現し、かご枠2の横方向の位置を変数x1で表現する。
コントローラ15の内部で、振動センサ14で計測されるかご枠2の水平方向絶対加速度(dx1/dt)を、帯域通過フィルター23により制御に不要な低周波及び高周波の成分を除去する。帯域通過フィルター23の出力信号を積分器24により積分して、かご枠2の水平方向絶対速度信号(dx1/dt)を生成し、これに比例して速度を減じるような制振力が回転減衰装置13で発生できるように、回転減衰装置13の減衰係数を制御する。ただし、回転減衰装置13では、かご枠2とガイドレール6との間の距離すなわち変位の変化速度(dx1/dt−dx0/dt)を減衰させる減衰力を発生させるので、変位の変化速度が加えたい制振力とが同じ向きの場合だけ、振動を抑えるような制振力f=c・(dx1/dt)をかご枠2に加えることができるように、変位計22で計測されたご枠2とガイドレール6との間の距離すなわち変位(x1−x0)を微分器25で微分して、変位の変化速度信号(dx1/dt−dx0/dt)を生成する。
切替え器26は、かご枠2の水平方向絶対速度信号(dx1/dt)と変位の変化速度(dx1/dt−dx0/dt)とを入力として、以下のように場合分けして、回転減衰装置13の減衰係数cgを計算するものである。なお、(B)の場合の切替え器26の出力を意味する矢印の右にある2本の縦線は、切替え器26の出力信号が使用されずに終端されることを意味しており、(B)の場合は回転減衰装置13が減衰力を発生させない。
(A)(dx1/dt−dx0/dt)・(dx1/dt)>0の場合
=c・(dx1/dt) (2) cg=c・((dx1/dt)/(dx1/dt−dx0/dt)) (3)(B)(dx1/dt−dx0/dt)・(dx1/dt)≦0の場合
=0 (4) cg=0 (5)
このような手法では、(dx1/dt)≠0で、(dx1/dt−dx0/dt)=0となって、(A)から(B)または(B)から(A)に変化する場合には、回転減衰装置13が発生する制振力が瞬時に大きく変化することになる。そのため、かご枠2の振動の変位は小さく抑えることができるが、振動の加速度は小さくならないという課題が、図17にブロック図を示すような制御方法にはある。
この実施の形態6で使用する制御方法はこの課題を解決するためのもので、そのブロック図を図19に示す。図17の従来の場合と、以下の点だけが異なる。(1)回転減衰装置13で制振力を発生できない(B)の場合に、アクチュエータ12で制振力を発生させる。(2)振動センサ14で計測するかご枠2の加速度信号からノイズや制御に不要な低周波成分を除く帯域通過フィルター27と帯域通過フィルター27を通過した信号を所定倍する乗算器28と、切替え器26の(B)の場合の出力信号と乗算器28の出力信号を加える加算器29とを追加し、帯域通過フィルター27を通過した加速度信号に比例した制振力を、アクチュエータ12で常に発生させる。
なお、帯域通過フィルター27を追加せず、帯域通過フィルター23の出力を乗算器28に入力するようにしてもよい。帯域通過フィルター27を追加すると、加速度をそのまま使用する場合と速度に変換して使用する場合とで、異なる周波数帯域を利用することが可能になるという効果がある。
図19のブロック図では、回転減衰装置13とアクチュエータ12で発生する制振力の和は、以下のようになる。ここで、アクチュエータ12で発生する制振力を変数fで表現する。なお、アクチュエータ12での比例係数c2とc3は、適切な値とする。乗算器28では、c2とc3の比が適切な値になるような所定値をかける。
(A)(dx1/dt−dx0/dt)・(dx1/dt)>0の場合
+f=c・(dx1/dt)+c3・(dx1/dt) (6)
cg=c・((dx1/dt)/(dx1/dt−dx0/dt)) (7)
(B)(dx1/dt−dx0/dt)・(dx1/dt)≦0の場合
+f=c2・(dx1/dt)+c3・(dx1/dt) (8)
cg=0 (9)
回転減衰装置13が発生する制振力が瞬時に大きく変化する場合でも、アクチュエータ12でその変化を軽減させるように制振力を発生させるので、制振力の変化幅が小さくなる。また、アクチュエータ12で加速度信号に比例した制振力を発生させるので、加速度の変化を抑えることができる。なお、回転減衰装置13が制振力を発生できない時にアクチュエータ12で制振力を発生すること、加速度信号に比例した制御力をアクチュエータ12で発生することの、どちらかだけを実施しても、それぞれに関して同様の効果が得られる。
実施の形態1では、大きな風圧変動がかご室1及びかご枠2に加えられる時に直動減衰装置5と回転減衰装置13の減衰係数を大きくした。直動減衰装置5と回転減衰装置13の減衰係数が大きくなると、かご室1及びかご枠2はガイドレール6に対して移動しにくくなるが、このことはかご室1にガイドレール6からの外乱がそのまま伝わることを意味する。大きな風圧変動が発生する際にもかご室1にガイドレール6からの外乱がそのまま伝わることを防止しより快適な乗り心地を実現することが、この実施の形態6の目的である。
一般に風圧変動によって生じる外乱では、最初に大きな強制加振力が一方向に働く。この大きな加振力が働く最初の状態では、変位の変化速度(dx1/dt−dx0/dt)とかご枠2の水平方向絶対速度(dx1/dt)は同じ向きであり、その積は正になることが予測される。したがって、最初の大きな制振力を要する状態では、回転減衰装置13により減衰力が発生する。この減衰力をかご枠2の水平方向絶対速度に比例させるので、かご枠2の振動を抑える効果は、実施の形態1の場合での減衰係数を最大で一定にする場合よりも大きい。
その後の振動は最初ほど大きくないと想定され、回転減衰装置13とアクチュエータ12とを併用して振動を低減する。この際にもスカイフックダンパ制御を実施し、かつ回転減衰装置13とアクチュエータ12とが切り替る際に制振力の大きな変化が発生しない対策を取っているので、かご枠2の振動を抑える効果は、実施の形態1の場合での減衰係数を最大で一定にする場合よりも大きい。ただし、アクチュエータ12を動作させるので、消費電力は実施の形態1の場合よりも大きくなる。
このように、この実施の形態6では、隣接かご16とのすれ違いなどによる大きな風圧変動に対してかご枠2の振動を抑えるとともに、ガイドレール6からの振動も同時に抑えることができるという効果がある。
大きな風圧変動が発生する時だけでなく、アクチュエータ12と回転減衰装置13が発生させる制振力の和を、かご室1の絶対速度に比例してかご室1の移動を抑える方向になるように制御することにより、アクチュエータ12だけの場合よりも少ない消費電力でアクチュエータ12と同様に横振動を低減することが可能になる。

Claims (4)

  1. かご室と該かご室を支持するかご枠との間に設けられた減衰係数を変更可能な第1ダンパ装置と、昇降路内に設置されたガイドレールにしたがって回転移動するガイドローラを前記ガイドレールに押し付ける力を制御することで前記かごに制振力を与え、しかも前記かご枠に取り付けられたアクチュエータと、前記かご枠に設置された振動センサと、自エレベータかごの走行速度を検出する速度検出手段と、自エレベータかごの位置を検出する位置検出手段と、固定的なすれ違い個所に関するデータ、前記速度検出手段で検出する速度、及び前記位置検出手段で検出する位置とを用いて自エレベータかごに加えられる風圧を予測する風圧予測手段と、該風圧予測手段の出力を入力として前記第1ダンパ装置への制御信号を計算して出力し、前記振動センサの信号の出力を入力として前記アクチュエータへの制御信号を計算して出力するする演算部と、前記ガイドローラが横移動する振動を減衰させる減衰係数を変更可能な前記かご枠に取り付けられた第2ダンパ装置とを備え、前記振動センサで検出する振動を抑えるように前記演算部が前記アクチュエータを制御し、風圧の発生が予測される期間及びその前後の所定期間に前記第1ダンパ装置の減衰係数をそれ以外の期間よりも大きくするように前記演算部が前記第1ダンパ装置を制御し、
    風圧の発生が予測される期間及びその前後の所定期間に、前記第2ダンパ装置の減衰係数をそれ以外の期間よりも大きくし、前記アクチュエータが発生する力をそれ以外の期間よりも小さくするように前記演算部が前記アクチュエータと前記第2ダンパ装置を制御することを特徴とするエレベータの制振装置。
  2. 隣接するエレベータかごの位置と速度を取得する隣接かご走行情報取得手段を備え、前記風圧予測手段が前記隣接かご走行情報取得手段により取得される隣接するエレベータかごの位置及び速度も入力とすることを特徴とする請求項1に記載のエレベータの制振装置。
  3. 前記第1ダンパ装置にMR流体を利用することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のエレベータの制振装置。
  4. 前記第2ダンパ装置にMR流体を利用することを特徴とする請求項1ないし請求項3の何れか1項に記載のエレベータの制振装置。
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