本発明の様々な実施形態が、セミアクティブアクチュエータを有するエレベータシステムを制御するシステムおよび方法を開示する。いくつかの実施形態は、ある外乱の方向に少なくとも1つの外部外乱を受けるサスペンションシステムであって、対応する外乱によって誘起される質量1つの振動を最小化するために少なくとも1つのセミアクティブアクチュエータが制御される、サスペンションシステムに関する。
明瞭さのために、本開示は、一方向における外乱によって誘起される振動を最小化するためにセミアクティブアクチュエータを用いるシステムの制御方法に焦点を当てる。本システムはその方向における外部外乱を受ける。複数の方向における振動を最小化する制御方法は、開示される制御方法を一般化することにより導出される。
外乱の組とセミアクティブアクチュエータの組とが与えられると、本発明のいくつかの実施形態は、仮想外乱を補償するために配置された単一の仮想セミアクティブアクチュエータを有する仮想システムのモデルとして、システムを表す。たとえば、仮想セミアクティブアクチュエータの補償力は、セミアクティブアクチュエータの組の補償力を表し、仮想外乱は外乱の組の合成を表す。様々な実施形態において、そのような表現は、セミアクティブアクチュエータの一様性の想定(すなわち、すべてのセミアクティブアクチュエータは厳密に同一であり、動作し、同様に制御される)に基づいている。
本発明の様々な実施形態において、セミアクティブアクチュエータの制御は最適制御理論に従って導出され、システムのモデルに基づく。いくつかの実施形態では、システムのモデルは仮想システムのモデルによって表される。たとえば、一実施形態は、仮想セミアクティブアクチュエータの最適制御ポリシーに従ってセミアクティブアクチュエータの組の各アクチュエータを一様に制御する。具体的には、いくつかの実施形態は、システムの動作のパラメータを最適化する最適制御ポリシーに従ってアクチュエータの組を制御することが有利であるという理解に基づいている。
図1Aは、セミアクティブアクチュエータの組を制御するシステムおよび方法の概略図である。本制御方法は、物理システム101のモデルの表現で開始される。図1Bはこのモデルの例を示す。このモデルは、質量113、ばね111、ダンパ115およびセミアクティブアクチュエータ112の組のうち1つまたはそれらの組み合わせを含む。システムは外乱の組114を受ける。一実施形態では、すべての関連するセミアクティブアクチュエータが厳密に同一であり一様に動作するという想定に基づき、システム101は仮想システム102のモデルとして表される。図1Cに示すように、仮想システムは、質量113、ばね111、ダンパ115のうち1つまたはそれらの組み合わせを含む。また、仮想システムは、仮想セミアクティブアクチュエータ122を含み、仮想外乱123を受ける。
外乱は、一方向における質量の運動に影響を与える。ある特定方向における1つの仮想外乱は、その方向における質量の運動に対する関連する外乱をすべて合成した効果を表す。同様に、ある特定の方向における仮想外乱に対応する仮想アクチュエータは、その特定の方向における質量に対する関連するセミアクティブアクチュエータすべての効果を説明する(account for)。たとえば、仮想セミアクティブアクチュエータの補償力は、セミアクティブアクチュエータの組の合計補償力の関数として決定可能である。
センサ103は、システム101の動作状態を示す信号を測定する。仮想システムのモデルと、所定の外乱プロファイル107と、運動プロファイルと、測定された信号とが与えられると、外乱モジュール104が仮想システムの仮想外乱109を決定する。外乱プロファイル107はオフラインで決定され、物理システムの実動作に対応する仮想外乱109を再構築するためのオンライン使用のために、メモリに記憶される。仮想外乱109が与えられると、状態推定器105が仮想システムの状態110を決定する。状態は、動作中の仮想システムの振る舞いを特徴付ける変数の組を含む。仮想セミアクティブアクチュエータの様々な制御ポリシーに従って、制御装置106により制御信号131が決定される。制御信号は、電圧または電流を変化させることができてもよい。制御信号131は、セミアクティブアクチュエータ112に直接的に出力されてもよく、増幅器を介して間接的に出力されてもよい。
図1Bおよび1Cに示すように、物理システムと仮想システムとの間の相違は、仮想システムにおける仮想アクチュエータおよび仮想外乱の存在である。一実施形態は、仮想システムを決定するために、仮想外乱および仮想セミアクティブアクチュエータを決定する。1つの質量のある特定の方向における運動に対応するすべてのセミアクティブアクチュエータが一様に動作するという想定のもとでは、その質量のその特定の方向における運動に影響を与えるすべての外乱を仮想外乱として合成することができ、その質量に対するその特定の方向におけるすべての対応するセミアクティブアクチュエータの効果は、質量と仮想外乱源との間に取り付けられる仮想セミアクティブアクチュエータによって特徴付けられる。
図2は、垂直方向における4つの外部外乱w1,w2,w3,w4(それぞれ205、206、207および208と表される)によって外乱される物理システムの例を示す。外乱の組を補償するために、セミアクティブアクチュエータ201,202,203,204の組が、同一の質量113に取り付けられる。とくに、4つのセミアクティブアクチュエータの第1端(たとえば第1端221)は、質量113に取り付けられ、4つのセミアクティブアクチュエータの第2端(たとえば第2端222)は、対応する外乱w1,w2,w3,w4の源にそれぞれ取り付けられる。
たとえば、いくつかの実施形態では、各セミアクティブアクチュエータは被制御減衰係数(controlled damping coefficient)ui(ただし1≦i≦4)を有するセミアクティブダンパである。すべてのセミアクティブアクチュエータが一様に制御されると想定すると、物理システムは、仮想外乱212および仮想セミアクティブアクチュエータ211を持つ仮想システムに最小化される。とくに、仮想外乱は4つの外乱の和であり、
と表される。仮想セミアクティブアクチュエータは、
の被制御減衰係数を有する。すべてのセミアクティブアクチュエータが同一の非制御減衰係数を有する実施形態では、仮想セミアクティブアクチュエータは被制御減衰係数
を有し、仮想外乱は
である。
一般性を失うことなく、k個すべてのセミアクティブアクチュエータ(ダンパ装置の一種)は、変位量xで同一の質量mに取り付けられる(apply)。したがって、i番目のセミアクティブアクチュエータは、
の補償力を生成する。ただしuiはi番目のセミアクティブアクチュエータの被制御減衰係数である。セミアクティブアクチュエータの組の補償力は、
である。ただし変数の上側のドットは導関数を示す。
一実施形態では、セミアクティブアクチュエータは一様に動作し、各セミアクティブアクチュエータは同一の非制御減衰係数を有し、すべてのセミアクティブアクチュエータの補償力は、
であり、これに基づいて、仮想セミアクティブアクチュエータは、k個すべてのセミアクティブアクチュエータが決定可能であるものと同一の補償力を生成する。たとえば、仮想セミアクティブアクチュエータの被制御減衰係数はkuであり、仮想セミアクティブアクチュエータの仮想相対速度は
であり、仮想外乱は
である。
図3はエレベータシステムの一部の例を示す。この一部は、2つのガイドレール302と、フレーム303と、かご304と、4つのかご支持ラバー305と、4つのローラーガイド306とを含む。この非限定的な例では、各ローラーガイドは、3つのローラー401(センターローラー、フロントローラーおよびバックローラー)と、3つのローラーに対応する3つの回転アーム405とを含む。エレベータシステムは、センターローラー、フロントローラーおよびバックローラーをそれぞれ4つ含む。ガイドレール302は、エレベータ昇降路内301に垂直(z軸)に設置される。フレーム303は、防振ラバー305を介してかご304を支持する。フレームは、エレベータシャフトの昇降路内を垂直に運動可能である。ローラーガイド306は、ガイドレール302に沿ってフレーム303の運動をガイドする。
図4は、左右方向(x軸)におけるエレベータのかごの振動を最小化する役割を果たすセンターローラー401を持つローラーガイドアセンブリ306の一部を示す。図4に示すように、センターローラー401は、ローラーガム(roller gum)402を介してガイドレール302との接触を維持する。このローラーは、フレームのベース(base)403に取り付けられており、軸が前後方向(y軸)に沿ったピボット404の周りに回転可能である。回転アーム405は、ローラーと同じ角速度でピボット404の周りに回転する。一実施形態では、セミアクティブアクチュエータ406がフレームベース403と回転アーム405との間に設置される。回転アーム405とフレームベース403との間に、ローラーばね407が設置される。
図3に戻り、ガイドレールの水平変動(level variation)は、ローラーのピボット周りの回転を発生させる。ローラーの回転は、回転アームとフレームベースとの間のローラーばねを介した結合に起因して、フレームの横方向の運動を誘起する。すなわち、ガイドレールの水平変動は外乱源である。さらに、フレームの横方向の運動は、それらの結合305によってかごの運動を誘起する。エレベータのかごは、前後(y軸)方向および/または左右(x軸)方向に運動する。ローラーとフレームとの間(またはフレームとかごとの間)のダンパ装置は、かごの横振動を制御することができる。
回転アームの一端とベースとの間に、セミアクティブアクチュエータが設置される。セミアクティブアクチュエータは、回転アームとフレームとの間の相対的横運動に基づく力を生成する。この力は、フレームに伝達されるエネルギーを除去し(remove)、したがってフレームの振動を減衰することができる。結果として、エレベータのかごの振動が最小化される。
本発明の様々な実施形態によれば、エレベータシステムはまた、エレベータシステムの動作中のエレベータのかごの振動レベルを表すパラメータを測定するためのセンサ310も含む。たとえば、エレベータのかごの加速度は、乗客が感じる乗車の快適さを反映し、したがって、センサ310はエレベータフレーム303の加速度を測定するための、または、エレベータのかご304の加速度を直接的に測定するための、加速度計であってもよい。いくつかの実施形態では、セミアクティブアクチュエータ306は、エレベータシステムの動作中、測定された信号に基づく制御ポリシーに従い、(たとえば制御装置410によって)制御される。一実施形態では、センサの数およびシステムのコストを低減するために、エレベータフレームの加速度が測定される。
一実施形態では、図4に示すように、ローラーガイドアセンブリは、ベースと回転アームとの間に配置される線形/ロータリー流動学的アクチュエータ(rheological actuator)を含む。流動学的アクチュエータは、磁気粘性(magneto-rheological)流体(MR流体)を含んでもよく、または電気粘性(electro-rheological)流体(ER流体)を含んでもよい。一般的に、これらの流動性流体(rheological fluid)の流動率は、磁気信号または電気信号によって操作可能である。フレームと回転アームの端点との間の線形の相対速度に起因して、フィードバック信号に従って線形MRアクチュエータの減衰係数を選択的に調整することにより、フレーム振動が最小化される。別の実施形態では、エレベータシステムの運動を制御するために、クーロン摩擦に基づいて減衰力を生成するアクチュエータがローラーガイドアセンブリに取り付けられてもよい。
MRアクチュエータの場合には、制御装置は、振動に応じてMRアクチュエータをオンまたはオフに選択的に切り替え、対応する信号を増幅器に出力することができる。MRアクチュエータをオンに切り替えるために、増幅器はMRアクチュエータのコイルに電流を出力する。コイル電流が、MRアクチュエータのハウジング内部のMR流体の粘性を増加させるのに必要な磁界を確立し、したがってMRアクチュエータの減衰係数を変化させる。MRアクチュエータをオフに切り替えるためには、増幅器は電流を出力せず、したがってMRアクチュエータの減衰係数は最小となる。別の実施形態では、MRアクチュエータは継続的にオンに切り替えられていてもよい(すなわち、制御装置は、MRアクチュエータの減衰係数を継続的に調整する)。
エレベータシステムにセミアクティブアクチュエータを組み付ける多数の変形構成が存在する。一実施形態では、各ローラに対して1つのセミアクティブアクチュエータが設置される。エレベータのかごの床の加速度を最小化するためのセミアクティブサスペンションの目的を考えると、下側(lower)ローラーガイドアセンブリに設置されたセミアクティブアクチュエータは、達成可能な振動低減性能に大きな影響を与える。したがって、別の実施形態は、2つの下側ローラーガイドに関して6つのセミアクティブアクチュエータを用いる。セミアクティブアクチュエータの数はさらに低減可能である。たとえば、一実施形態は、4つのセミアクティブアクチュエータのみを用いる(下側センターローラー全体に関して2つ、下側左フロントローラーに関して1つ、下側右フロントローラーに関して1つ)。別の実施形態は、2つのセミアクティブアクチュエータを用いる(左右運動を減衰するために下側センターローラーに関して1つ、前後運動を減衰するために下側フロントローラーまたは下側バックローラーに関して残る1つ)。
上述の対称条件を満たす一実施形態では、エレベータサスペンションは8つのセミアクティブアクチュエータを含む。すなわち、各ローラーガイドのセンターローラーに1つのセミアクティブアクチュエータが設置され、各ローラーガイドのフロントローラーに1つのセミアクティブアクチュエータが設置される。いくつかの実施形態について、この対称条件が厳密には満たされない場合であっても、物理システムが対称に近い時には、単純化によって確立された仮想システムが、依然として物理システムをかなりよく表すことができる。本明細書において教示される方法は、対称条件を満たす物理システムにおける適用に限定されるべきではない。
たとえば、一実施形態は、4つのローラーガイドに8つのセミアクティブアクチュエータが設置される(すなわち、各センターローラーに対して1つのセミアクティブアクチュエータ、および、各フロントローラーに対して1つのセミアクティブアクチュエータ)エレベータシステム全体に対する、本セミアクティブ方式の制御方法を教示するためのものである。エレベータのローラーに関するセミアクティブアクチュエータの構成の例は図4に示される。本発明の様々な実施形態は、仮想システムを決定し、外乱プロファイルおよび推定仮想外乱を決定し、状態推定器を設計し、必ずしも厳密に対称条件を満たすわけではない法則を制御する。本開示において用いられる表記法のいくつかは表1に与えられる。
左右方向すなわちx軸におけるかごおよびフレームの運動と、前後方向すなわちy軸におけるかごおよびフレームの運動とが分離される。一実施形態は、左右方向におけるエレベータの振動を最小化するためのセミアクティブアクチュエータのための制御方法を考慮する。
図5Aは、エレベータシステムの例示的な外乱の概略図を示す。この例では、エレベータシステムは左右方向に4つの外乱511,512,513および514を受ける。これら4つの外乱は、4つのセンターローラーアセンブリ306を介してエレベータシステムに加えられ、左右方向におけるフレーム303の平行移動と、フレームのy軸周りの回転とを励起する。さらに、フレームの平行移動および回転は、それぞれ、かご304の左右方向における平行移動およびy軸周りの回転を励起する。かごおよびフレームの左右運動は、かごおよびフレームのy軸周りの回転と結合する。本実施形態は、かごおよびフレームのx軸における運動と、かごおよびフレームのy軸周りの回転と、4つのセンターローラーの回転とのダイナミクス(dynamics)を与える。ダイナミクスの他の部分は、同様に導出可能であるが、左右方向における振動の最小化には無関係である。
本制御方法は、センサ310によって測定されるエレベータのかごの加速度を表すパラメータに基づき、制御装置410によって実施可能である。後に論じるように、制御装置は、アクチュエータの組を表す仮想セミアクティブアクチュエータの様々な制御ポリシーに従って、セミアクティブアクチュエータの組を制御する。
エレベータのかごは、フレームとの相互作用の結果として生じる様々な力を受け得る。これらの力は、かごとフレームとの間の支持ラバーから結果として生じるばねおよび減衰力(spring and damping forces)を含み得る。ばねおよび減衰力は、まとめられた力fc xと表記され、
と書かれる。
同様に、かごのy軸周りの回転は、まとめられた力fc xに対応するまとめられたトルクによって誘起され、
Tc x=lc xfc x
と表記される。
フレームおよびすべてのローラーガイドを含むフレームの、x軸における平行移動は、かごおよびガイドレールとフレームとの相互作用からの力を受ける。これらの力はすべてばねおよび減衰力の一種である。4つのセンターローラーのローラーガムから結果として生じる、まとめられたばねおよび補償力(spring and compensating force)は、fg xと表記され、
と書かれる。ただしfg xiはi番目のセンターローラーのローラーガムから結果として生じるばねおよび減衰力を表す。したがって、フレームの左右方向における平行移動のダイナミクスは、
となる。ただしp2 xiは適切な定数である。
ローラーは、ローラーガムとガイドレールとの相互作用の結果として生じる力に対応するトルクを受ける。このトルクは、
と表記される。
ローラーばねのばねおよび減衰力に対応する、ピボットアーム周りのトルクは、
と表記される。
セミアクティブアクチュエータの補償力に対応するトルクは、
である。
左右方向におけるかごおよびフレームの平行移動および回転と、各センターローラーの各ピボット周りの回転とを含むエレベータのダイナミクスは、
である。ただし、p3 xiは定数であり、Ir yはピボットに対する回転アームおよびセンターローラーの慣性(inertial)である。
一実施形態では、結合項
については、ダイナミクスの他の項が支配的なため無視される。したがって、式(8〜11)によって表される物理システムモデルは、p2 xi=0,p3 xi=0と考えることにより単純化できる。
仮想システムは、物理システムのダイナミクスを操作することにより決定される。すべてのセミアクティブアクチュエータが一様に動作するという想定では、1≦i≦4についての式(11)の和は
であり、これによって、減衰係数
と、仮想外乱
と、対応する仮想相対速度
とを持つ仮想セミアクティブアクチュエータの定義が可能となる。
このように、仮想外乱516と、仮想セミアクティブアクチュエータを含む仮想センターローラーアセンブリ515と、フレーム303と、かご304とを含む仮想システムが導出され、図5Bに示される。
仮想システムモデルと、仮想セミアクティブアクチュエータに対する制約と、最適制御理論とに基づき、本実施形態は、左右方向におけるエレベータのかごの振動を最小化するための最適制御ポリシーを、以下のように決定する。
ただし、φ(x,y,t)は状態関数であり、xは共状態および状態変数(かごおよびフレームの平行移動量および速度と、回転アームの角変位量および速度とを含む)からなるベクトルを表し、yはセンサ103からの測定された信号を示し、tは仮想外乱への依存性を表す。
エレベータの、開示されるセミアクティブサスペンションの制御方法は、システムの状態および共状態の状態関数φ(x,y,t)の近似と、変位量
または仮想相対速度の関数の近似とを用いる。
いくつかの実施形態は、最適制御ポリシーにおいて、状態関数および変位の関数それぞれの値を近似する。これらの関数の近似は測定に依存する。とくに、変位の関数の近似は、セミアクティブアクチュエータの構成にも関連する。
図6Aは、本発明の一実施形態による、外乱プロファイル107を決定する方法600の概略図を示す。本方法600は、エレベータを少なくとも一度走行させる(run)ことによりオフラインで実行可能である。エレベータシステムはアクチュエータ112を用いることなく走行可能である。センサ103は、測定された信号(たとえば加速度)を外乱推定器602に出力する。外乱推定器602は、時間の関数として推定外乱605を生成する。運動プロファイル108は、時間の関数としてエレベータのかごの位置を定義する垂直位置軌跡606を出力する。軌跡606は、垂直位置の関数として外乱プロファイル107を生成するために、推定外乱605と組み合わせられてもよい。外乱プロファイルブロック107は、時間領域における仮想外乱と、運動プロファイルによって決定される時間および垂直位置の間のマッピングとに基づき、仮想外乱プロファイルを決定する。
図6Bおよび図6Cは、外乱推定器602の実装の、2通りの実施形態を例示する。いずれの実施形態も、センサとしては加速度計のみが必要である。図6Bに示す一実施形態では、センサ103は、左右方向におけるフレームの平行移動加速度を、第1のフィルタ611、第2のフィルタ612および第4のフィルタ614に出力する。第1および第2のフィルタは、加速度信号を処理して、仮想アクチュエータの2つの端部の間の推定仮想相対位置616を生成する。仮想相対位置の例は
として定式化できる。ただし、
は推定仮想外乱を表し、
は左右方向に沿ったフレームの推定平行移動量を表す。第4のフィルタは、加速度信号を処理して、左右方向に沿ったフレームの推定平行移動量
617を生成する。信号616と信号617とを加算すると推定仮想外乱
が得られる。
図6Cは、第5のフィルタ615を用いて加速度信号を処理し、直接的に推定仮想外乱
を生成する実施形態を示す。推定仮想外乱は、垂直位置プロファイルと組み合わせられ、仮想外乱プロファイルにマッピングされる。これらのフィルタの様々な実装の例は、後により詳しく記載する。
図6Dおよび6Eは、エレベータの各動作について仮想外乱を決定する方法のブロック図を示す。異なる動作ごとに(たとえばエレベータのかごの異なるトリップ(trip)ごとに)仮想外乱は異なり得る。有利なことに、本発明の様々な実施形態は、エレベータシステムの様々な外乱(ガイドレールの変形を含むがこれに限定されない)に対応できる。
図6Dに示す一実施形態では、外乱プロファイルブロック107によって提供される仮想外乱プロファイル625と、エレベータシステムの動作前に決定されたエレベータのかごのトリップに対する垂直位置軌跡606とが与えられると、動作の全期間中の仮想外乱109がトリップ前に決定可能である(104)。垂直位置軌跡606は運動プロファイル108によって決定される。これはエレベータの場合にはモーションプランナー(motion planner)であってもよい。
図6Eは別の実施形態の図を示す。この実施形態では、エレベータの各動作の全期間にわたって外乱をプレビューするために、かつプレビューされた仮想外乱をリアルタイムで修正するために、センサ103からの加速度信号が用いられる。エレベータが動作を実行する前に各動作の全期間にわたって仮想外乱をプレビューするために垂直位置軌跡606が用いられる一方で、エレベータが動作を実行している間は垂直位置軌跡の精度を改善するために垂直位置軌跡606にセンサ103からの加速度信号が融合され、このようにして残りの動作時間(rest operation time)にわたって仮想外乱を修正する。
図7Aは、第1、第2および第5のフィルタの例示的な実装を示す。一実施形態では、第1のフィルタはかご加速度フィルタ702として実装される。かご加速度フィルタ702は、フレームの加速度信号711(加速度計103によって感知される)を処理して、左右方向におけるかごの推定平行移動加速度信号712を生成する。第2のフィルタは仮想相対位置推定器703として実装される。仮想相対位置推定器703は、加速度信号711と推定かご平行移動加速度712とを処理して、推定仮想相対位置および速度714を生成する。
一実施形態では、x軸における振動を最小化するために、4つのセミアクティブアクチュエータが、4つのセンターローラーすべてに設置される。この実施形態は、式(8)、(10)および(12)によって与えられる仮想システムに基づいて第1および第2のフィルタを設計する。各セミアクティブアクチュエータが同一の作用(action)を実行すると想定すると、
として表記される仮想相対位置のモデルは、
によって与えられる。ただしux=ui x(ただし1≦i≦4)は仮想セミアクティブアクチュエータの被制御減衰係数である。仮想相対位置のダイナミクスは、仮想相対位置と、仮想相対速度と、仮想制御と、ローラーガムからのトルクTg xとに依存する線形時変微分方程式として記述される。変数Tg xと仮想相対位置のダイナミクス(13)とが与えられると、仮想相対位置を推定するための第2のフィルタは、
として決定される。ただしz1は推定仮想相対位置を表し、z2は推定仮想相対速度を表し、Ir yはピボットに対する回転アームの慣性であり、Lはピボットとアクチュエータの力点(force point)との間の長さであり、uxは仮想セミアクティブアクチュエータの粘性減衰係数であり、h1はピボットとローラーばねとの間の高さであり、b1はローラーばねの減衰係数であり、k1はローラーばねのばね定数(stiffness)であり、Tg xはピボット周りのトルクを表す。第2のフィルタの出力z2は仮想相対速度
を近似する。仮想相対速度z2の近似値は、指数関数的に仮想相対速度
の真の値に収束する。仮想相対位置z1の近似値は、指数関数的に仮想相対位置
の真の値に収束する。
別の実施形態では、x軸における振動を最小化するために、セミアクティブアクチュエータが2つだけ、4つのセンターローラーのうち2つに設置される。この実施形態は、仮想システムに基づいて第2のフィルタを設計し、この第2のフィルタは直前の実施形態のフィルタに類似している。
Tg xの値は、第1のフィルタの出力を用いて取得可能である。たとえば、一実施形態は、フレームの平行移動加速度および角加速度が測定されると想定する。式(8)〜(9)のかごダイナミクスは、測定されたフレーム加速度からかご加速度を推定するために再構成され、
である。
式(14)のラプラス変換は
である。ただし、
は
のラプラス変換であり、
は
のラプラス変換であり、sは複素周波数であり、Mc,Bc,Kcは適切な行列である。かご加速度は、続く第1のフィルタ(その伝達関数は
で与えられる)を通してフレーム加速度をフィルタリングすることにより推定可能である。
かご加速度の推定値によれば、まとめられた力fc xの値は既知である。したがって、ローラーガムからのまとめられた力fg xの値は式(10)に従って計算可能であり、これはトルクTg xの値を暗示する。このように第2のフィルタが設計される。
第1のフィルタの一実施形態は、トルクTg xの値の推定をさらに単純化する。この実施形態は、フレームの(たとえばx軸に沿った)平行移動加速度のみを測定する。上述のように、x軸に沿ったエレベータのかごの加速度の推定には、x軸に沿ったフレームの平行移動加速度と、y軸周りの回転加速度との知識が必要である。かごおよびフレームの回転のダイナミクスは、その効果が無視できるので、平行移動のダイナミクスから分離可能であり、式(14)は
として単純化される。
式(15)から、x軸におけるかご加速度が、続く第1のフィルタ
の出力として推定可能である。第1のフィルタの入力は、x軸におけるフレーム加速度である。
G(s)は第1のフィルタの伝達関数であり、その入力はエレベータフレームの(たとえば左右方向における)平行移動加速度であり、その出力は、エレベータのかごの(たとえば左右方向における)推定平行移動加速度である。また、sは複素周波数であり、mcはエレベータのかごの質量であり、kc xはかご保持ダンパの重み付けられたばね定数であり、bc xはかご保持ダンパの重み付けられた減衰(damping)である。推定かご加速度が与えられると、ローラーガムからのまとめられた力fg xの値は式(10)に従って計算可能であり、これはトルクTg xの値を暗示する。仮想相対位置および速度は、同一の第2のフィルタによって近似可能である。したがって、加速度の測定のみに基づいてエレベータのかごの振動が最小化される。
図7Bおよび図7Cは、第5のフィルタ615と、第5のフィルタ615の第1のバンドパスフィルタ723を設計するための手順との概略図を示す。図7Bは、第1のバンドパスフィルタ723が入力信号(典型的には加速度信号)を処理して仮想外乱の二次時間導関数を表す信号733を出力し、その後、第2のバンドパスフィルタ724が信号733を処理し、第5のフィルタの出力として推定仮想外乱を生成するということを示す。
図7Cは、第1のバンドパスフィルタを設計する手順方法(procedure method)を例示する。この方法は、仮想外乱とその時間導関数とを未知の関数として含む、仮想システム102のモデルで開始される。仮想システムのモデルは、初めから(originally)、エレベータフレーム、かご、および仮想ローラーガイドアセンブリの運動を記述する状態変数を含む。仮想システムのモデルは、2つの追加状態変数として仮想外乱およびその時間導関数を含むことにより拡大されて、拡大仮想システム721を生成する。これは、
により与えられる。ただし、ξ7,ξ8はそれぞれ仮想外乱およびその時間導関数を表し、νは仮想外乱の二次時間導関数を表す。拡大仮想システムは、ただ1つの未知の外部入力関数ν(仮想外乱の二次時間導関数)を有する。
一実施形態では、仮想セミアクティブアクチュエータはオフに切り替えられ、拡大仮想システムは線形時不変である。
で表される拡大仮想システムの伝達関数は、拡大仮想システムの入力νおよび出力yにラプラス変換を適用することにより計算可能であり、ゼロ極相殺(zero-poles cancellation)を有し、それより後ではすべてのゼロおよび極が複素平面の左半分に位置する。拡大仮想システムは逆転可能であり、したがって、逆転されることによって、伝達関数が
で与えられる逆拡大仮想システム722を生成する。
逆拡大仮想システムに基づき、第1のバンドパスフィルタは、逆拡大仮想システム(その入力は測定された加速度信号であり、出力は仮想外乱の推定二次時間導関数733である)のコピーとして決定可能である。
逆拡大仮想システムのコピーとは、第1のバンドパスフィルタが逆拡大仮想システムと厳密に同一の伝達関数を有するということを意味する。仮想外乱の推定二次時間導関数733は、指数関数的に、仮想外乱の二次時間導関数に収束する。
第2のバンドパスフィルタは、仮想外乱の推定二次時間導関数733から信頼性をもって(reliably)推定仮想外乱が再構築可能となるような、二重積分器を近似するよう設計される。二重積分器を近似するための第2のバンドパスフィルタの設計は、当業者には簡単である。第1のバンドパスフィルタを設計する方法は、線形時不変でなければならない拡大仮想システムのラプラス変換に依存する。仮想セミアクティブアクチュエータが時間とともにオンおよびオフに切り替えられる(拡大仮想システムが時間変化性であることを意味する)場合には、拡大仮想システムの伝達関数は存在しない可能性がある。この方法は、仮想セミアクティブアクチュエータの良好なモデルを有している場合には、伝達関数を用いることなく上記がこの場合にも依然として当てはまるということを教示し、したがって、仮想セミアクティブアクチュエータによって生成される補償力は既知信号であり、出力に対するその影響が除去されて仮想外乱のみに依存する新たな出力が生成可能である。
たとえば、仮想セミアクティブアクチュエータの補償力F(t)を既知の入力として扱うことにより、拡大仮想システムが線形時不変となり、その出力のラプラス変換は
によって与えられる。ただしF(s)は仮想セミアクティブアクチュエータの補償力のラプラス変換であり、Gyuは補償力から出力への伝達関数である。伝達関数が
で与えられる新たな出力
を再定義してもよく、これに従ってその時間領域プロファイルが再構築可能である。新たな出力
を第5のフィルタの入力とすると、仮想外乱の推定二次時間導関数が得られる。
いくつかの実施形態は、最初に、仮想システムが仮想外乱のみに起因する力を受け拡大仮想システムのラプラス変換が常に可能となるよう、セミアクティブアクチュエータをオフ位置にしてエレベータを走行させることが有益であるという理解に基づく。この実施形態は、様々な不確定要素を同時に扱うことの困難を最小化する。しかしながら、セミアクティブアクチュエータをオン位置にすることは、セミアクティブアクチュエータについての適合性の高い知識を有しながら本方法を適用することを妨げるものではない。
図8は、仮想システムの完全状態推定(full state estimation)を提供することを目的とする状態推定器105の概略図である。仮想システムを観測不可能にする測定方式の制限のため、フレームの平行移動加速度を測定する仮想システムの状態推定は解決困難な場合がある。いくつかの実施形態は、一連の実験を行って状態推定問題を2つの下位問題(仮想外乱を推定することに関する問題および状態を推定することに関する問題)に分解することにより、状態推定が可能になるという理解に基づく。図8に示すように、仮想システムの状態を推定することは、外乱モジュール104からの推定仮想外乱と、制御装置106によって生成された制御作用(control action)と、センサ103によって感知された加速度信号と、第2のフィルタ612からの推定仮想相対速度とを必要とする。言い換えると、完全状態仮想システム(full state virtual system)は、これらの信号から推論可能である。状態推定器は、様々な技術(カルマンフィルタおよびルーエンバーガー観測器を含むがこれに限定されない)を用いて設計可能である。
仮想システムの推定仮想外乱と推定完全状態とが与えられると、様々な実施形態により様々な制御ポリシーが設計され実装される。有利なことに、状態推定と結合した仮想外乱の事前知識(advance knowledge)は、そうでなければ実装困難な様々な高度な制御ポリシーを実装可能にする。
図9Aは、一実施形態による閉ループ制御システムの概略的アーキテクチャ(general architecture)のブロック図を示す。制御装置106は、仮想外乱と、仮想システムの状態と、センサ103からの信号とに基づき、アクチュエータ112の組を制御する。このアーキテクチャの様々なモジュールは、(たとえばメモリおよび/または入出力インタフェースに)接続されたプロセッサを用いて実装可能である。
一実施形態では、仮想システム102のモデルが与えられると、最適制御理論940の原理に基づき、仮想セミアクティブアクチュエータの制御ポリシーが定義される(902)。たとえば、制御ポリシー902は、動作のパラメータの関数930(たとえば質量加速度の2ノルム(two norm))が最適化(たとえば最小化)されるように、仮想システムの動作を表すコスト関数920を最適化する。コスト関数は、様々な制約925(セミアクティブアクチュエータに対する制約(たとえば最大および最小減衰係数)等)を受ける。
仮想システムにおける仮想セミアクティブアクチュエータの制御ポリシー902の構造904は、たとえば最適制御理論の最小値原理(minimum principle)を適用することにより決定可能である。たとえば、仮想セミアクティブアクチュエータが調整可能な粘性減衰係数を持つダンパである時には、アクチュエータを制御するための制御信号
を決定するための最適制御ポリシーは次の構造を有する。
ただし
は状態関数903であり、
は仮想システムの推定状態であり、yはセンサからの信号であり、νは仮想セミアクティブアクチュエータの仮想相対速度または変位の関数905であり、bmaxは仮想セミアクティブアクチュエータの最大減衰係数であり、bminは仮想セミアクティブアクチュエータの最小減衰係数である。
セミアクティブアクチュエータが減衰力を直接生成するダンパである、別の実施形態では、最適制御ポリシーは次の構造を有する。
ただしfmaxは仮想セミアクティブアクチュエータの最大減衰力であり、fminは仮想セミアクティブアクチュエータの最小減衰力である。
図9Cは、本発明の一実施形態によるセミアクティブアクチュエータの組を制御する別の実施形態を開示する。閉じた形式の制御ポリシーがオフラインで導出される図9Bの制御方法とは異なり、図9Cが表す制御方法において、制御装置953は、推定仮想外乱と、仮想システムのモデルと、仮想システムの最適動作を表すコスト関数と、物理システムに対する制約(たとえばセミアクティブアクチュエータの最大および最小電流または電圧)と、仮想システムの推定完全状態との知識に基づき、最適化をリアルタイムで解くことによって制御ポリシーを計算する。制御装置953は、最適化問題を解くことにより、セミアクティブアクチュエータの作用を決定する。
図9Dは、本発明の一実施形態によるセミアクティブアクチュエータの組を制御する別の実施形態を開示する。スイッチ制御装置961が、外乱マッパーの出力に基づきセミアクティブアクチュエータの作用を決定する。調整可能な減衰係数を持つセミアクティブアクチュエータに対しては、スイッチ制御装置961において実装される制御ポリシーは次の形式を取り得る。
ただしαはエレベータの主共振周波数(dominant resonant frequency)に対応する定数であり、
は仮想外乱の推定時間導関数である。同様に、力を直接生成するセミアクティブアクチュエータに対しては、スイッチ制御装置961において実装される制御ポリシーは次の形式を取り得る。
図9Eは、本発明の別の実施形態によるセミアクティブアクチュエータの組を制御する制御アーキテクチャを開示する。図9A、9Bおよび9Dに関連して記載される実施形態(実装される制御ポリシーがオフラインで設計され、エレベータの動作中固定されたパラメータを有する)とは異なり、図9Eに示す実施形態では、実装される制御ポリシーのパラメータが制御装置チューナ971によって調整される。各動作は個別の垂直位置軌跡を有するので、仮想システムが受ける仮想外乱はそれぞれ異なり、異なる特徴(パワースペクトルおよび帯域等)を有する。各動作の全期間にわたる推定仮想外乱が与えられると、制御装置チューナは、推定仮想外乱を処理して、制御装置106における実装された制御ポリシーのパラメータの組を再選択する。一例として、制御装置チューナは、推定仮想外乱のパワースペクトルを、各動作の全期間にわたるそのプロファイルに基づいて予測可能であり、推定仮想外乱のパワースペクトルを仮想外乱に組み込んで制御装置106のパラメータを決定するか、または、パワースペクトルに基づきルックアップテーブルから所定のパラメータの組を選択する。
[例示的な実施形態]
図10は、質量中心に加わる外乱を受ける質量−ばね−減衰システム(mass-spring-damping system)1000として表されるシステムの概略を示す。一般性を失うことなく、質量の平行移動は水平方向のものとする。開示される方法は、垂直方向の運動(たとえば自動車のサスペンション)にも適用可能である。
システム1000において、wは振動源または外部外乱1010であり、m1およびm2はそれぞれエレベータのかご1030およびエレベータフレーム1020の質量を表し、k1 1025およびb1 1035はかごとフレームとの間の支持ラバーのまとめられたばね定数および減衰であり、k2 1045およびb2 1055はフレームとガイドレールとの間のばねのばね定数および減衰であり、x1およびx3はそれぞれかごおよびフレームの水平方向変位量1040および1050であり、
は、それぞれかごおよびフレームの水平方向速度である。
外乱を受ける質量−ばね−減衰システムの式(1)で表されるモデルは、次のように書かれる。
ただし、uはセミアクティブアクチュエータの被制御減衰係数であり、yは動作の測定されたパラメータ(すなわちフレームの加速度)を表す。制御信号uは、かご加速度
を最小化するために設計される。外乱はただ1つしか存在しないので、物理的セミアクティブアクチュエータが仮想セミアクティブアクチュエータとなり、仮想外乱が物理的外乱となる。このように、式(1)に基づくシステムモデルもまた仮想システムモデルを表す。自動車のサスペンションの場合には、車両(car)サスペンションは同様にモデル化されるが、質量の運動は垂直方向であり、ガイドレールは道路で置き換えられる。
本実施形態は、フレームの加速度のみを測定するためにセンサ103を用い(すなわち、動作のパラメータはフレーム加速度であり、すなわち
である)、したがって状態xおよび相対速度
の真の値は測定されない。加速度測定に伴う固有の観測可能性問題のため、本実施形態は、
に従う近似最適制御を考慮する。ただし
は、変位の関数
の近似である。本実施形態の一変形例では、次の近似最適制御を用いる。
ただしc1およびc2は定数であり、
は推定かご加速度であり、
はフレームの推定速度である。
図11に対応して、かご加速度の近似値は第1のフィルタ611の出力となり、仮想相対速度の近似値が第2のフィルタ612の出力となり、フレーム速度の近似値が第3のフィルタ613の出力となる。ブロック1104において、近似制御ポリシーの第1の関数が評価される。
式(1)において表される仮想システムモデルが与えられ、測定された信号yを既知の変数として扱い、仮想相対位置をηと表すと、仮想相対位置のダイナミクスは次のように導出される。
ただし、かご加速度
は、第1のフィルタ
により推定可能である。
第1のフィルタ(22)は、その入力としてフレーム加速度を処理し、かご加速度の推定値を出力する。第1のフィルタ(22)の出力(
と表す)は、かご加速度
の真の値に収束する。この推定かご加速度を用いて、仮想相対位置のダイナミクス(21)が、線形時変一次微分方程式(その右辺は仮想相対位置の関数である)と、既知の変数(測定信号および推定かご加速度を含む)とによって記述される。
第2のフィルタは、
に従って仮想アクチュエータの仮想相対速度を推定する。ただし
は仮想相対位置の推定値であり、zは仮想相対速度の推定値または変位の関数の値の近似値を表す。第2のフィルタは、変位の関数の漸近的な近似を提供する。すなわち、第2のフィルタの出力は、時刻が無限大になると変位の関数の真の値に収束し、その収束スピードは指数関数的である。
本明細書に開示される各フィルタは、相対速度およびかご加速度の大域的・指数関数的に収束する推定値を提供する。この手法は、かごとフレームとの間の相対速度を推定するために容易に採用することができ、したがって、セミアクティブアクチュエータがかごとフレームとの間に配置される時には、開示される制御方法もまた適用可能である。
システム1000に対する第5のフィルタ615は、上記で教示された手順に従って決定可能である。システム1000のモデルは、2つの追加状態変数として仮想外乱およびその一次時間導関数を含むように拡大される。拡大仮想システムは次のように書かれる。
ただし
は仮想外乱の二次時間導関数であり、
は仮想外乱の一次時間導関数である。二次時間導関数を外部未知入力として扱い、簡単のためu=0とすると、外部未知入力から測定信号yへの伝達関数は、
として計算し表記することができる。ただしY(s)およびV(s)は、それぞれ信号y(t)およびv(t)のラプラス変換である。この伝達関数は、2つのゼロ極相殺を有するが、これは外部未知入力の再構築には影響しない。逆拡大仮想システムの伝達関数は、伝達関数Gν(s)を逆転させることにより容易に取得可能である。このように、バンドパスフィルタ1は次の伝達関数を有する。
外部未知入力は、
として再構築可能である。ただし*は畳み込みを表す。
本発明の上述の各実施形態は、多数の態様のいずれにおいても実装可能である。たとえば、各実施形態は、ハードウェアを用いて実装してもよく、ソフトウェアを用いて実装してもよく、それらの組み合わせを用いて実装してもよい。ソフトウェアで実装する時には、ソフトウェアコードは、任意の適切なプロセッサまたはプロセッサの集合(単一のコンピュータにおいて提供されるものまたは複数のコンピュータに分散されるもの)で実行可能である。そのようなプロセッサは、集積回路部品(integrated circuit component)内の1つ以上のプロセッサを持つ集積回路として実装されてもよい。しかしながら、プロセッサは任意の適切な形式の回路(circuitry)を用いて実装可能である。
さらに、コンピュータは、ラックマウントされたコンピュータ、デスクトップコンピュータ、ラップトップコンピュータ、ミニコンピュータ、またはタブレットコンピュータのような、いくつかの形式のいずれにおいて実現されてもよいということが理解される。そのようなコンピュータは、ローカルエリアネットワークまたはワイドエリアネットワーク(企業ネットワークまたはインターネット等)を含む任意の適切な形式で、1つ以上のネットワークによって相互接続されてもよい。そのようなネットワークは、任意の適切な技術に基づいてよく、任意の適切なプロトコルに従って動作してよく、無線ネットワーク、有線ネットワークまたは光ファイバネットワークを含んでもよい。
また、本明細書に概略が示される様々な方法または処理は、様々なオペレーティングシステムまたはプラットフォームの任意のものを採用する1つ以上のプロセッサ上で実行可能なソフトウェアとしてコーディングされてもよい。加えて、そのようなソフトウェアは、いくつかの適切なプログラミング言語および/またはプログラミングツールまたはスクリプティングツールの任意のものを用いて書かれてもよく、また、フレームワークまたは仮想マシン上で実行される実行可能マシン語コードまたは中間コードとしてコンパイルされてもよい。
これに関して、本発明は、一時的でないコンピュータ可読媒体または複数のコンピュータ可読媒体(たとえば、コンピュータメモリ、コンパクトディスク(CD)、光ディスク、ディジタルビデオディスク(DVD)、磁気テープ、およびフラッシュメモリ)として実現されてもよい。「プログラム」または「ソフトウェア」という用語は、本明細書では、任意の種類のコンピュータコードまたはコンピュータ実行可能命令の組(上記で議論した本発明の様々な態様を実施するために、コンピュータまたは他のプロセッサをプログラムするために採用され得るもの)を参照する一般的な意味で用いられる。
コンピュータ可読命令は、1つ以上のコンピュータまたは他の装置によって実行される多数の形式(プログラムモジュール等)であってもよい。一般的には、プログラムモジュールは、特定のタスクを実行するかまたは特定の抽象的データタイプを実装するルーチン、プログラム、オブジェクト、コンポーネント、データ構造を含む。典型的には、プログラムモジュールの機能性は、様々な実施形態において望まれるように組み合わせてもよく分散してもよい。
また、本発明の各実施形態は、例が提供された方法として実現されてもよい。本方法の一部として実行される各作用は、任意の適切な態様で順序付けられてもよい。したがって、実施形態は、作用が例示とは異なる順序で実行されるもの(例示の実施形態では逐次の作用として示されているが、いくつかの作用を同時に実行することを含み得る)として構築されてもよい。