次に、本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。以下では、右ハンドル車について適用される本発明の実施形態に係る車両用ブレーキシステム10の全体構成について説明した後に、入力装置14について更に詳しく説明する。
<車両用ブレーキシステムの全体構成>
本実施形態に係る車両用ブレーキシステム10においては、電気信号を伝達してブレーキを作動させるバイ・ワイヤ(By Wire)式のブレーキシステムと、フェイルセイフ時用として、油圧を伝達してブレーキを作動させる旧来の油圧式のブレーキシステムの双方を備えて構成されるものを例にとって説明する。以下の説明における前後上下左右の方向は、車両の前後上下左右の方向に一致させた、図1に示す前後上下左右の方向を基準とする。
図1に示すように、車両用ブレーキシステム10は、基本的に、運転者(操作者)によってブレーキ操作が入力される入力装置14と、少なくともブレーキ操作に応じた電気信号に基づいてブレーキ液圧を発生させるモータシリンダ装置(電動ブレーキアクチュエータ)16と、このモータシリンダ装置16で発生したブレーキ液圧に基づいて車両挙動の安定化を支援するビークルスタビリティアシスト装置18(車両挙動安定化装置、以下、VSA装置18という、VSA;登録商標)とを備え、入力装置14、モータシリンダ装置16及びVSA装置18が、車両VのエンジンルームR内に配置されて構成されている。
なお、モータシリンダ装置16は、運転者のブレーキ操作に応じた電気信号だけではなく、他の物理量に応じた電気信号に基づいて液圧を発生させる手段を更に備えていてもよい。他の物理量に応じた電気信号とは、例えば、自動ブレーキシステムのような、運転者のブレーキ操作によらずに、ECU(Electronic Control Unit)が車両Vの周囲の状況をセンサ等で判断して、車両Vの衝突を回避するための信号を意味している。
本実施形態でのエンジンルームRは、ダッシュボード2の前方において区画され、車幅方向の左右両側に車両Vの前後方向に沿って延在する一対のフロントサイドフレーム1a、1bと、前記一対のフロントサイドフレーム1a、1bの上方に所定間隔離間して車体の前後方向に沿って延在する一対のアッパメンバ1c、1dと、前記一対のフロントサイドフレーム1a、1bの前端部に連結されて複数の部材によって略矩形状の枠体からなるバルクヘッド連結体1eと、前記一対のアッパメンバ1c、1dの前後方向の後ろ寄りに図示しないストラットを支持するダンパハウジング1f、1gとで囲まれて構成されている。なお、図示しないストラットは、例えばショックを吸収するコイルスプリングと振動を低減するショックアブソーバとによって前輪ダンパとして構成されている。
また、エンジンルームRには、車両用ブレーキシステム10とともに、動力装置3などの構造物が搭載されている。動力装置3としては、例えばエンジン3aと電動機(走行モータ)3bとトランスミッション(図示省略)とが組み合わされたハイブリッド自動車用のものであり、エンジンルームR内の空間の略中央部に配置されている。なお、エンジン3a及び電動機3bによる動力は、図示しない動力伝達機構を介して左右の前輪を駆動するように構成されている。また、車両Vの車室Cの床下や車室Cの後方には、電動機3bに電力を供給し、電動機3bから電力(回生電力)を充電する図示しない高圧バッテリ(リチウムイオン電池など)が搭載されている。
なお、エンジンルームR内に搭載された動力装置3の周囲には、後記する車両用ブレーキシステム10の他に、図示しないランプ類などに電力を供給する低圧バッテリを含む電気系、吸気系、排気系、冷却系など各種の構造物(補機)が取り付けられている。
本実施形態での入力装置14は、前記した右ハンドル車に適用するものであり、ダッシュボード2の車幅方向の右側にスタッドボルト303(図3参照)を介して固定され、ブレーキペダル(ブレーキ操作子)12(図3参照)と連結されるプッシュロッド42がダッシュボード2を貫通して車室C側に突出するように構成されている。なお、入力装置14は、左ハンドル車に適用されるものであってもよい。
モータシリンダ装置16は、入力装置14とは逆側の車幅方向の左側に配置され、例えば左側のフロントサイドフレーム1aに図示しないブラケットを介して取り付けられている。具体的には、モータシリンダ装置16は、ブラケットに対して弾性(フローティング)支持され、ブラケットがフロントサイドフレーム1aに対してボルトなどの締結部材を介して締結されている。これにより、モータシリンダ装置16の作動時に発生する振動等を吸収できるようになっている。
VSA装置18は、例えば、ブレーキ時の車輪ロックを防ぐABS(アンチロック・ブレーキ・システム)機能、加速時などの車輪空転を防ぐTCS(トラクション・コントロール・システム)機能、旋回時の横すべりを抑制する機能などを備えて構成され、車幅方向の右端の前側に、例えばブラケットを介して車体に取り付けられている。なお、入力装置14、モータシリンダ装置16及びVSA装置18の内部の詳細な構成については後記する。また、車両挙動安定化装置としては、VSA装置18に限定されるものではなく、ブレーキ時の車輪ロックを防ぐABS(アンチロック・ブレーキ・システム)機能のみを有するABS装置であってもよい。
これら入力装置14、モータシリンダ装置16、及び、VSA装置18は、例えば、金属製の管材で形成された液圧路によって接続されていると共に、バイ・ワイヤ式のブレーキシステムとして、入力装置14とモータシリンダ装置16とは、図示しないハーネスによってECU等の制御手段と電気的に接続されている。
すなわち、入力装置14とVSA装置18とは、第1液圧系統70a(図2参照)として、第1配管チューブ22a、ジョイント(三方の分岐管)23a、第3配管チューブ22cを介して互いに接続され、第2液圧系統70b(図2参照)として、第4配管チューブ22d、ジョイント(三方の分岐管)23b、第6配管チューブ22fを介して互いに接続されている。
また、モータシリンダ装置16は、第1液圧系統70a(図2参照)として、第2配管チューブ22bを介してジョイント23aと接続され、第2液圧系統70b(図2参照)として、第5配管チューブ22eを介してジョイント23bと接続されている。
図2を参照して液圧路について説明すると、図2中の連結点A1(ジョイント23a)を基準として、入力装置14の接続ポート20aと連結点A1とが第1配管チューブ22aによって接続され、また、モータシリンダ装置16の出力ポート24aと連結点A1とが第2配管チューブ22bによって接続され、さらに、VSA装置18の導入ポート26aと連結点A1とが第3配管チューブ22cによって接続されている。
また、図2中の他の連結点A2(ジョイント23b)を基準として、入力装置14の他の接続ポート20bと連結点A2とが第4配管チューブ22dによって接続され、また、モータシリンダ装置16の他の出力ポート24bと連結点A2とが第5配管チューブ22eによって接続され、さらに、VSA装置18の他の導入ポート26bと連結点A2とが第6配管チューブ22fによって接続されている。
VSA装置18には、複数の導出ポート28a〜28dが設けられる。第1導出ポート28aは、第7配管チューブ22gによって右側前輪に設けられたディスクブレーキ機構30aのホイールシリンダ32FRと接続される。第2導出ポート28bは、第8配管チューブ22hによって左側後輪に設けられたディスクブレーキ機構30bのホイールシリンダ32RLと接続される。第3導出ポート28cは、第9配管チューブ22iによって右側後輪に設けられたディスクブレーキ機構30cのホイールシリンダ32RRと接続される。第4導出ポート28dは、第10配管チューブ22jによって左側前輪に設けられたディスクブレーキ機構30dのホイールシリンダ32FLと接続される。
この場合、各導出ポート28a〜28dに接続される配管チューブ22g〜22jによってブレーキ液がディスクブレーキ機構30a〜30dの各ホイールシリンダ32FR、32RL、32RR、32FLに対して供給され、各ホイールシリンダ32FR、32RL、32RR、32FL内の液圧が上昇することにより、各ホイールシリンダ32FR、32RL、32RR、32FLが作動し、対応する車輪(右側前輪、左側後輪、右側後輪、左側前輪)に対して制動力が付与される。
なお、車両用ブレーキシステム10は、本実施形態で想定しているハイブリッド自動車のほか、例えば、エンジン(内燃機関)のみによって駆動される自動車、電気自動車、燃料電池自動車等を含む各種車両に対して搭載可能に設けられる。また、車両用ブレーキシステム10は、前輪駆動、後輪駆動、四輪駆動のいずれにも適用可能である。
入力装置14は、運転者によるブレーキペダル12の操作によって液圧を発生可能なタンデム式のマスタシリンダ34と、前記マスタシリンダ34に付設された第1リザーバ36とを有する。このマスタシリンダ34のシリンダチューブ38内には、前記シリンダチューブ38の軸方向に沿って所定間隔離間する2つのピストン40a、40bが摺動自在に配設される。一方のピストン40aは、ブレーキペダル12に近接して配置され、プッシュロッド42を介してブレーキペダル12と連結される。また、他方のピストン40bは、一方のピストン40aよりもブレーキペダル12から離間して配置される。
この一方及び他方のピストン40a、40bの外周面には、環状段部を介して一対のピストンパッキン44a、44bがそれぞれ装着される。一対のピストンパッキン44a、44bの間には、それぞれ、後記するサプライポート46a、46bと連通する背室48a、48bが形成される。また、一方及び他方のピストン40a、40bとの間には、ばね部材50aが配設され、他方のピストン40bとシリンダチューブ38の側端部との間には、他のばね部材50bが配設される。なお、ピストン40a、40bの外周面にピストンパッキン44a、44bを設ける代わりに、シリンダチューブ38の内周面にパッキンを配設してもよい。
マスタシリンダ34のシリンダチューブ38には、2つのサプライポート46a、46bと、2つのリリーフポート52a、52bと、2つの出力ポート54a、54bとが設けられる。この場合、各サプライポート46a(46b)及び各リリーフポート52a(52b)は、それぞれ合流して第1リザーバ36内の図示しないリザーバ室と連通するように設けられる。
また、マスタシリンダ34のシリンダチューブ38内には、運転者がブレーキペダル12を踏み込む踏力に対応したブレーキ液圧を制御する第1圧力室56a及び第2圧力室56bが設けられる。第1圧力室56aは、第1液圧路58aを介して接続ポート20aと連通するように設けられ、第2圧力室56bは、第2液圧路58bを介して他の接続ポート20bと連通するように設けられる。
マスタシリンダ34と接続ポート20aとの間であって、第1液圧路58aの上流側には圧力センサPmが配設されると共に、第1液圧路58aの下流側には、ノーマルオープンタイプ(常開型)のソレノイドバルブからなる第1遮断弁60aが設けられる。この圧力センサPmは、第1液圧路58a上において、第1遮断弁60aよりもマスタシリンダ34側の上流の液圧を検知するものである。
マスタシリンダ34と他の接続ポート20bとの間であって、第2液圧路58bの上流側には、ノーマルオープンタイプ(常開型)のソレノイドバルブからなる第2遮断弁60bが設けられると共に、第2液圧路58bの下流側には、圧力センサPpが設けられる。この圧力センサPpは、第2液圧路58b上において、第2遮断弁60bよりもホイールシリンダ32FR、32RL、32RR、32FL側の下流側の液圧を検知するものである。
この第1遮断弁60a及び第2遮断弁60bにおけるノーマルオープンとは、ノーマル位置(非通電時の弁体の位置)が開位置の状態(常時開)となるように構成されたバルブをいう。なお、図2において、第1遮断弁60a及び第2遮断弁60bは、通電時(励磁時)の状態を示している(後記する第3遮断弁62も同様)。
マスタシリンダ34と第2遮断弁60bとの間の第2液圧路58bには、前記第2液圧路58bから分岐する分岐液圧路58cが設けられ、前記分岐液圧路58cには、ノーマルクローズタイプ(常閉型)のソレノイドバルブからなる第3遮断弁62と、ストロークシミュレータ64とが直列に接続される。この第3遮断弁62におけるノーマルクローズとは、ノーマル位置(非通電時の弁体の位置)が閉位置の状態となるように構成されたバルブをいう。
このストロークシミュレータ64は、第1遮断弁60a及び第2遮断弁60bの遮断時に、ブレーキペダル12の操作に応じた操作反力とストロークを生じさせる装置である。このストロークシミュレータ64は、第2遮断弁60bよりもマスタシリンダ34側で第2液圧路58bから分岐する分岐液圧路58cを介して設けられている。つまり、ストロークシミュレータ64の液圧室65には、マスタシリンダ34の第2圧力室56bから導出されるブレーキ液(ブレーキフルード)が、第2液圧路58b、分岐液圧路58cを介して供給されるようになっている。
また、ストロークシミュレータ64は、互いに直列に配置されたばね定数の高い第1リターンスプリング66aとばね定数の低い第2リターンスプリング66bと、前記第1及び第2リターンスプリング66a、66bによって付勢されるシミュレータピストン68とを備え、ブレーキペダル12の踏み込み前期時にペダル反力の増加勾配を低く設定し、踏み込み後期時にペダル反力を高く設定してブレーキペダル12のペダルフィーリングを既存のマスタシリンダと同等となるように設けられている。
液圧路は、大別すると、マスタシリンダ34の第1圧力室56aと複数のホイールシリンダ32FR、32RLとを接続する第1液圧系統70aと、マスタシリンダ34の第2圧力室56bと複数のホイールシリンダ32RR、32FLとを接続する第2液圧系統70bとから構成される。
第1液圧系統70aは、入力装置14におけるマスタシリンダ34(シリンダチューブ38)の出力ポート54aと接続ポート20aとを接続する第1液圧路58aと、入力装置14の接続ポート20aとモータシリンダ装置16の出力ポート24aとを接続する配管チューブ22a、22bと、モータシリンダ装置16の出力ポート24aとVSA装置18の導入ポート26aとを接続する配管チューブ22b、22cと、VSA装置18の導出ポート28a、28bと各ホイールシリンダ32FR、32RLとをそれぞれ接続する配管チューブ22g、22hとによって構成される。
第2液圧系統70bは、入力装置14におけるマスタシリンダ34(シリンダチューブ38)の出力ポート54bと他の接続ポート20bとを接続する第2液圧路58bと、入力装置14の他の接続ポート20bとモータシリンダ装置16の出力ポート24bとを接続する配管チューブ22d、22eと、モータシリンダ装置16の出力ポート24bとVSA装置18の導入ポート26bとを接続する配管チューブ22e、22fと、VSA装置18の導出ポート28c、28dと各ホイールシリンダ32RR、32FLとをそれぞれ接続する配管チューブ22i、22jとを有する。
この結果、液圧路が第1液圧系統70aと第2液圧系統70bとによって構成されることにより、各ホイールシリンダ32FR、32RLと各ホイールシリンダ32RR、32FLとをそれぞれ独立して作動させ、相互に独立した制動力を発生させることができる。
モータシリンダ装置16は、電動モータ72を含むアクチュエータ機構74と、前記アクチュエータ機構74によって付勢されるシリンダ機構76とを有する。
アクチュエータ機構74は、電動モータ72の出力軸側に設けられ、複数のギヤが噛合して電動モータ72の回転駆動力を伝達するギヤ機構(減速機構)78と、前記ギヤ機構78を介して前記回転駆動力が伝達されることにより軸方向に沿って進退動作するボールねじ軸80a及びボール80bを含むボールねじ構造体80とを有する。
シリンダ機構76は、略円筒状のシリンダ本体82と、前記シリンダ本体82に付設された第2リザーバ84とを有する。第2リザーバ84は、入力装置14のマスタシリンダ34に付設された第1リザーバ36と配管チューブ86で接続され、第1リザーバ36内に貯留されたブレーキ液が配管チューブ86を介して第2リザーバ84内に供給されるように設けられる。
シリンダ本体82内には、前記シリンダ本体82の軸方向に沿って所定間隔離間する第1スレーブピストン88a及び第2スレーブピストン88bが摺動自在に配設される。第1スレーブピストン88aは、ボールねじ構造体80側に近接して配置され、ボールねじ軸80aの一端部に当接して前記ボールねじ軸80aと一体的に矢印X1又はX2方向に変位する。また、第2スレーブピストン88bは、第1スレーブピストン88aよりもボールねじ構造体80側から離間して配置される。
この第1及び第2スレーブピストン88a、88bの外周面には、環状段部を介して一対のスレーブピストンパッキン90a、90bがそれぞれ装着される。一対のスレーブピストンパッキン90a、90bの間には、それぞれ、後記するリザーバポート92a、92bとそれぞれ連通する第1背室94a及び第2背室94bが形成される。また、第1及び第2スレーブピストン88a、88bとの間には、第1リターンスプリング96aが配設され、第2スレーブピストン88bとシリンダ本体82の側端部と間には、第2リターンスプリング96bが配設される。
シリンダ機構76のシリンダ本体82には、2つのリザーバポート92a、92bと、2つの出力ポート24a、24bとが設けられる。この場合、リザーバポート92a(92b)は、第2リザーバ84内の図示しないリザーバ室と連通するように設けられる。
また、シリンダ本体82内には、出力ポート24aからホイールシリンダ32FR、32RL側へ出力されるブレーキ液圧を制御する第1液圧室98aと、他の出力ポート24bからホイールシリンダ32RR、32FL側へ出力されるブレーキ液圧を制御する第2液圧室98bが設けられる。
なお、第1スレーブピストン88aと第2スレーブピストン88bとの間には、第1スレーブピストン88aと第2スレーブピストン88bの最大距離と最小距離とを規制する規制手段100が設けられ、さらに、第2スレーブピストン88bには、前記第2スレーブピストン88bの摺動範囲を規制して、第1スレーブピストン88a側へのオーバーリターンを阻止するストッパピン102が設けられ、これによって、特に、マスタシリンダ34で発生したブレーキ液圧で制動するバックアップ時において、1系統の失陥時に他系統の失陥が防止される。
VSA装置18は、周知のものからなり、右側前輪及び左側後輪のディスクブレーキ機構30a、30b(ホイールシリンダ32FR、ホイールシリンダ32RL)に接続された第1液圧系統70aを制御する第1ブレーキ系110aと、右側後輪及び左側前輪のディスクブレーキ機構30c、30d(ホイールシリンダ32RR、ホイールシリンダ32FL)に接続された第2液圧系統70bを制御する第2ブレーキ系110bとを有する。なお、第1ブレーキ系110aは、左側前輪及び右側前輪に設けられたディスクブレーキ機構に接続された液圧系統からなり、第2ブレーキ系110bは、左側後輪及び右側後輪に設けられたディスクブレーキ機構に接続された液圧系統であってもよい。更に、第1ブレーキ系110aは、車体片側の右側前輪及び右側後輪に設けられたディスクブレーキ機構に接続された液圧系統からなり、第2ブレーキ系110bは、車体片側の左側前輪及び左側後輪に設けられたディスクブレーキ機構に接続された液圧系統であってもよい。
この第1ブレーキ系110a及び第2ブレーキ系110bは、それぞれ同一構造からなるため、第1ブレーキ系110aと第2ブレーキ系110bで対応するものには同一の参照符号を付していると共に、第1ブレーキ系110aの説明を中心にして、第2ブレーキ系110bの説明を括弧書きで付記する。
第1ブレーキ系110a(第2ブレーキ系110b)は、ホイールシリンダ32FR、32RL(32RR、32FL)に対して、共通する第1共通液圧路112及び第2共通液圧路114を有する。VSA装置18は、導入ポート26aと第1共通液圧路112との間に配置されたノーマルオープンタイプのソレノイドバルブからなるレギュレータバルブ116と、前記レギュレータバルブ116と並列に配置され導入ポート26a側から第1共通液圧路112側へのブレーキ液の流通を許容する(第1共通液圧路112側から導入ポート26a側へのブレーキ液の流通を阻止する)第1チェックバルブ118と、第1共通液圧路112と第1導出ポート28aとの間に配置されたノーマルオープンタイプのソレノイドバルブからなる第1インバルブ120と、前記第1インバルブ120と並列に配置され第1導出ポート28a側から第1共通液圧路112側へのブレーキ液の流通を許容する(第1共通液圧路112側から第1導出ポート28a側へのブレーキ液の流通を阻止する)第2チェックバルブ122と、第1共通液圧路112と第2導出ポート28bとの間に配置されたノーマルオープンタイプのソレノイドバルブからなる第2インバルブ124と、前記第2インバルブ124と並列に配置され第2導出ポート28b側から第1共通液圧路112側へのブレーキ液の流通を許容する(第1共通液圧路112側から第2導出ポート28b側へのブレーキ液の流通を阻止する)第3チェックバルブ126とを備える。
さらに、VSA装置18は、第1導出ポート28aと第2共通液圧路114との間に配置されたノーマルクローズタイプのソレノイドバルブからなる第1アウトバルブ128と、第2導出ポート28bと第2共通液圧路114との間に配置されたノーマルクローズタイプのソレノイドバルブからなる第2アウトバルブ130と、第2共通液圧路114に接続されたリザーバ132と、第1共通液圧路112と第2共通液圧路114との間に配置されて第2共通液圧路114側から第1共通液圧路112側へのブレーキ液の流通を許容する(第1共通液圧路112側から第2共通液圧路114側へのブレーキ液の流通を阻止する)第4チェックバルブ134と、前記第4チェックバルブ134と第1共通液圧路112との間に配置されて第2共通液圧路114側から第1共通液圧路112側へブレーキ液を供給するポンプ136と、前記ポンプ136の前後に設けられ第2共通液圧路114側から第1共通液圧路112側へのブレーキ液の流通を許容する(第1共通液圧路112側から第2共通液圧路114側へのブレーキ液の流通を阻止する)吸入弁138及び吐出弁140と、前記ポンプ136を駆動するモータMと、第2共通液圧路114と導入ポート26aとの間に配置されるサクションバルブ142とを備える。
なお、第1ブレーキ系110aにおいて、導入ポート26aに近接する液圧路上には、モータシリンダ装置16の出力ポート24aから出力され、前記モータシリンダ装置16の第1液圧室98aで制御されたブレーキ液圧を検知する圧力センサPhが設けられる。各圧力センサPs、Pp、Phで検出された検出信号は、図示しない制御手段に導入される。
<入力装置>
次に、本実施形態に係る車両用ブレーキシステム10の入力装置14について図3ないし図6を参照して更に詳しく説明する。図3は、本発明の実施形態に係る入力装置の全体斜視図、図4は実施形態に係る入力装置の正面図、図5は実施形態に係る入力装置の上面図、図6は実施形態に係る入力装置の右側面図である。なお、図5は、図3の第1リザーバ及びブレーキペダルの記載を作図の便宜上、省略している。
図3に示すように、入力装置14を構成するマスタシリンダ34は、車両V(図1参照)の前後方向に延在すると共に、ストロークシミュレータ64は、このマスタシリンダ34と一体となるように並設されている。更に具体的には、本実施形態でのストロークシミュレータ64は、マスタシリンダ34の右側(車幅方向の外側)で横並びに配置されている。そして、本実施形態でのマスタシリンダ34及びストロークシミュレータ64は、これらをその後端側で支持するスタッドプレート304と共に、金属の一体成型体で形成されて、ストロークシミュレータ64の外装であるシミュレータハウジング64aと、マスタシリンダ34の外装であるマスタシリンダハウジング34aとが互いに連続して形成されたハウジング35により構成されている。
このようなマスタシリンダ34及びストロークシミュレータ64の上方には、細長の外形を有する第1リザーバ36が、マスタシリンダ34とストロークシミュレータ64との間で前後方向に延在するように配置されている。この第1リザーバ36とマスタシリンダ34とは、リリーフポート52a、52b(図5参照)及びサプライポート46a、46b(図2参照)に臨むように形成された接続口を介して、図2に示す第1及び第2圧力室56a、56b、並びに背室48a、48bに連通するようになっている。なお、図3中、符号36aは、第1リザーバ36と、図2に示す第2リザーバ84とを連通させる配管チューブ86の基端が接続されるコネクタである。このコネクタ36aは、入力装置14の前方に突出する管状部材で形成されている。
また、マスタシリンダハウジング34aの前側には、前方を向くように突出して形成された第1ボス37aおよび第2ボス37bが形成されている。なお、図3に示す第1ボス37a、第2ボス37bは、加工前のポートが形成されていない状態を示し、第1ボス37a、第2ボス37bの前面に平坦な加工面37a1、37b1が形成されている。
図4に示すように、マスタシリンダハウジング34aには、第1ボス37aの右側の側面に第3ボス39aが形成され、第2ボス37bの右側の側面に第4ボス39bが形成されている。第3ボス39aおよび第4ボス39bは、それぞれ右側を向くように形成されている。また、図4に示すように、第3ボス39aが、第4ボス39bよりも右側(ストロークシュミレータ64側)に位置している。
図5に示すように、第1ボス37aおよび第2ボス37bは、シミュレータハウジング64aの前端面64a1よりも前方に突出して形成されている。また、第3ボス39aおよび第4ボス39bは、第1ボス37aの先端の加工面37a1、第2ボス37bの先端の加工面37b1よりも前方に突出しないように形成されている。
このように形成されたハウジング35(マスタシリンダハウジング34a)には、第1ボス37aまたは第3ボス39aに対して、ブレーキ液が通流する孔を加工することによって、第1圧力室56aと連通する第1液圧路58aが形成され、第1ボス37aまたは第3ボス39aに接続ポート20aが形成される。また、ハウジング35(マスタシリンダハウジング34a)には、第2ボス37bまたは第4ボス39bに対して、ブレーキ液が通流する孔を加工することによって、第2圧力室56bと連通する第2液圧路58bが形成され、第2ボス37bまたは第4ボス39bに接続ポート20bが形成される。
また、図2に示した第1遮断弁60a、第2遮断弁60bおよび第3遮断弁62は、それぞれハウジング35内に形成された第1液圧路58a、第2液圧路58b、分岐液圧路58cを遮断できる位置に設けられている。
また、入力装置14は、マスタシリンダ34の左側に、センサバルブユニット300を備えている。このセンサバルブユニット300は、樹脂製の筐体内に、図2に示す第1液圧センサPm及び第2液圧センサPp、並びにこれらからの圧力検出信号を処理する電子回路基板(図示省略)、さらに、図2に示す第1遮断弁60a、第2遮断弁60bおよび第3遮断弁62(いずれも前記電子回路基板により作動制御される)などが配設されている。なお、第1液圧センサPm及び第2液圧センサPpは、第1液圧路58a及び第2液圧路58bのそれぞれに連通するように設けられた図示しないモニタ孔に臨むように配置されることで、前記したそれぞれの液圧を検出するようになっている。ちなみに、前記モニタ孔は、図5に示すマスタシリンダハウジング34aの左側面(センサバルブユニット300が取り付けられる面)に形成され、第1液圧路58a及び第2液圧路58bに向かって穿たれる孔で形成されることとなる。
図6に示すように、入力装置14の後側においては、マスタシリンダ34の後端部がスタッドプレート304から更に後方に延びている。そして、マスタシリンダ34の後端部は、前記したように、ブレーキペダル12をその一端側に連結したプッシュロッド42の他端側を受け入れる構成となっている。なお、図6中の符号306は、マスタシリンダ34とプッシュロッド42とに亘って配置されるブーツである。また、本実施形態での入力装置14は、その取り付け位置のダッシュボード2の傾斜に応じて、マスタシリンダ34の軸方向が車両の前方に向かって昇り勾配となるように傾斜して取り付けられている。
本実施形態に係る入力装置14及びこれを備える車両用ブレーキシステム10は、基本的に以上のように構成されるものであり、次にその作用効果について説明する。
車両用ブレーキシステム10が正常に機能する正常時には、図2に示すように、ノーマルオープンタイプのソレノイドバルブからなる第1遮断弁60a及び第2遮断弁60bが励磁で弁閉状態となり、ノーマルクローズタイプのソレノイドバルブからなる第3遮断弁62が励磁で弁開状態となる。従って、第1遮断弁60a及び第2遮断弁60bによって第1液圧系統70a及び第2液圧系統70bが遮断されているため、入力装置14のマスタシリンダ34で発生したブレーキ液圧がディスクブレーキ機構30a〜30dのホイールシリンダ32FR、32RL、32RR、32FLに伝達されることはない。
このとき、マスタシリンダ34の第2圧力室56bで発生したブレーキ液圧は、分岐液圧路58c及び弁開状態にある第3遮断弁62を経由してストロークシミュレータ64の液圧室65に伝達される。この液圧室65に供給されたブレーキ液圧によってシミュレータピストン68がリターンスプリング66a、66bのばね力に抗して変位することにより、ブレーキペダル12のストロークが許容されると共に、擬似的なペダル反力を発生させてブレーキペダル12に付与される。この結果、運転者にとって違和感のないブレーキフィーリングが得られる。
このようなシステム状態において、図示しない制御手段は、運転者によるブレーキペダル12の踏み込みを検出すると、モータシリンダ装置16の電動モータ72を駆動させてアクチュエータ機構74を付勢し、第1リターンスプリング96a及び第2リターンスプリング96bのばね力に抗して第1スレーブピストン88a及び第2スレーブピストン88bを図2中の矢印X1方向に向かって変位させる。この第1スレーブピストン88a及び第2スレーブピストン88bの変位によって第1液圧室98a及び第2液圧室98b内のブレーキ液圧がバランスするように加圧されて所望のブレーキ液圧が発生する。
このモータシリンダ装置16における第1液圧室98a及び第2液圧室98bのブレーキ液圧は、VSA装置18の弁開状態にある第1、第2インバルブ120、124を介してディスクブレーキ機構30a〜30dのホイールシリンダ32FR、32RL、32RR、32FLに伝達され、前記ホイールシリンダ32FR、32RL、32RR、32FLが作動することにより各車輪に所望の制動力が付与される。
換言すると、本実施形態に係る車両用ブレーキシステム10では、動力液圧源として機能するモータシリンダ装置16やバイ・ワイヤ制御する図示しないECU等が作動可能な正常時において、運転者がブレーキペダル12を踏むことでブレーキ液圧を発生するマスタシリンダ34と各車輪を制動するディスクブレーキ機構30a〜30d(ホイールシリンダ32FR、32RL、32RR、32FL)との連通を第1遮断弁60a及び第2遮断弁60bで遮断した状態で、モータシリンダ装置16が発生するブレーキ液圧でディスクブレーキ機構30a〜30dを作動させるという、いわゆるブレーキ・バイ・ワイヤ方式のブレーキシステムがアクティブになる。このため、本実施形態では、例えば、電気自動車等のように、旧来から用いられていた内燃機関による負圧が存在しない車両Vに好適に適用することができる。
一方、モータシリンダ装置16等が作動不能となる異常時では、第1遮断弁60a及び第2遮断弁60bをそれぞれ弁開状態とし、且つ、第3遮断弁62を弁閉状態としてマスタシリンダ34で発生するブレーキ液圧をディスクブレーキ機構30a〜30d(ホイールシリンダ32FR、32RL、32RR、32FL)に伝達して、前記ディスクブレーキ機構30a〜30d(ホイールシリンダ32FR、32RL、32RR、32FL)を作動させるという、いわゆる旧来の油圧式のブレーキシステムがアクティブになる。
以上説明したように、車両用ブレーキシステム10によれば、入力装置14とモータシリンダ装置(電動ブレーキアクチュエータ)16とVSA装置(車両挙動安定化装置)18とを、エンジンルーム(動力装置の搭載室)R内において互いに分離して構成して配置したので、入力装置14、モータシリンダ装置16、VSA装置18のそれぞれのサイズを小型化することができ、レイアウトの自由度を高めることができる。
ところで、エンジンルームR内には、動力装置3の他に、電気系、吸気系、排気系、冷却系などの構造物が搭載されるため、必然的に大きな空スペース(設置スペース)を確保することが難しくなる。そこで、本実施形態のように、入力装置14、モータシリンダ装置16およびVSA装置18をそれぞれ分離して構成することで、個々の装置(入力装置14、モータシリンダ装置16、VSA装置18)のサイズをそれぞれ小さく構成することができ、大きな空スペースを確保する必要がある。これにより、エンジンルームR内の狭い空スペースであっても前記各装置を搭載することが可能になり、レイアウトが容易になる。
また、車両用ブレーキシステム10によれば、入力装置14とモータシリンダ装置16とVSA装置18とをそれぞれ分離して構成することで、各装置(入力装置14、モータシリンダ装置16、VSA装置18)の汎用性を向上して異なる車種に適用できる。
また、車両用ブレーキシステム10によれば、ダッシュボード2に固定され、モータシリンダ装置16は、前記入力装置14から離間して配置されているので、音や振動の発生源となることもある、モータシリンダ装置16を運転者から離して配置することが可能になるため、運転者に音や振動による違和感(不快感)を与えるのを防止できる。
また、車両用ブレーキシステム10によれば、エンジンルームR内においては車幅方向の右側または左側に偏って空スペースが形成されることは少ないので、モータシリンダ装置16とVSA装置18を車幅方向において互いに逆側に配置することで、これらモータシリンダ装置16とVSA装置18を設置するための空スペースが確保し易くなり、レイアウトが容易になる。
次に、車両用ブレーキシステム10を構成する入力装置14の作用効果について説明する。
この入力装置14は、ハウジング35にブレーキ液が通流する孔が加工されていない状態で第1ボス37a、第2ボス37b、第3ボス39a、第4ボス39bが予め形成され、第1ボス37aと第2ボス37b(または、第3ボス39aと第4ボス39b)のようにポートを任意に選択して加工可能となるように構成したものである。なお、ポートが加工されたボス(第1ボス37aおよび第2ボス37b、または第3ボス39aおよび第4ボス39b)には、例えば、配管チューブ22a、22d(図1参照)を接続ポート20a、20bに接続するための図示しないコネクタがねじ込まれることで、入力装置14に配管チューブ22a、22cが取り付けられる。このため、ボス(第1ボス37a、第2ボス37b、第3ボス39a、第4ボス39b)の周囲には、コネクタをねじ込むための工具W(図7参照)を動作させるためのクリアランスが必要になる。
ところで、図7(a)に示すように、動力装置3の右側面と車体(ダンパハウジングなど)とのクリアランスCL1に、配管チューブ22a、22dを接続する際の工具W(レンチなど)を動作させるスペースが存在しない場合には、第3ボス39aおよび第4ボス39bをポートとしてではなく、第1ボス37aおよび第2ボス37bをポートとして使用できるように第1ボス37aおよび第2ボス37bにポートを加工する。この場合、前方に向けられた第1ボス37aに対して図7(a)および(b)に示すように、工具Wを配置して、コネクタと工具Wとを嵌め合わせて工具Wを所定の方向に動作させることで、第1ボス37aに形成されたポート(接続ポート20a)にコネクタ(図示せず)を介して配管チューブ22aを接続することができ、また同様にして、第2ボス37bに形成されたポート(接続ポート20b)にコネクタ(図示せず)を介して配管チューブ22dを接続することができる。
なお、図7(b)において2点鎖線で示す扇形の領域Lは、工具Wの軌跡を示している。また、図7(b)に示すように、ダッシュボード2は、複数の部材を組み合わせて構成され、その上部が前方へ張り出すように構成されたものである(後記する図8(b)参照)。ちなみに、クリアランスCL1を確保できない状況が生じる場合としては、ハイブリッド自動車のように、エンジン3aと電動機3bとトランスミッション(図示せず)とが車幅方向に並設されて、車幅方向の寸法が大きくなる動力装置3を搭載した車両Vの場合などである。
また、図8(a)に示すように、動力装置3と入力装置14とのクリアランスCL2を利用して、配管チューブ22a、22dを接続する際の工具Wを用いて配管チューブ22a、22dを取り付けることができない場合には、第3ボス39aおよび第4ボス39bをポートとして使用できるように第3ボス39aおよび第4ボス39bにポートを加工する(第1ボス37aおよび第2ボス37bはポートを未加工とする)。この場合、右側方にポートの開口が向けられた第3ボス39aおよび第4ボス39bに対して図8(a)および(b)に示すように、工具Wをコネクタに嵌め合わせて所定の方向に動作させることで、第3ボス39aに形成されたポート(接続ポート20a)にコネクタを介して配管チューブ22aを接続することができ、また同様にして第4ボス39bに形成されたポート(接続ポート20b)にコネクタを介して配管チューブ22dを接続することができる。
なお、クリアランスCL1およびクリアランスCL2をどちらも確保できる場合には、第1ボス37a、第2ボス37b、第3ボス39a、第4ボス39bの任意のボスを選択して、ポートを加工することができる。なお、第1ボス37aと第2ボス37bは、対でポートを形成する必要はなく、例えば第1ボス37aと第4ボス39bにポートを加工してもよく、第2ボス37bと第3ボス39aにポートを加工して、一方の接続ポート20aと他方の接続ポート20bの向きを違えるようにしてもよい。
このように、本実施形態の入力装置14によれば、クリアランスCL1を確保することが難しいハイブリッド自動車に入力装置14を搭載する場合には、図7(a)および(b)に示すように、第1ボス37aおよび第2ボス37bにポートを加工し、CL2を確保することが難しい他の種類の車両(エンジン車など)に入力装置14を搭載する場合には、図8(a)および(b)に示すように、第3ボス39aおよび第4ボス39bにポートを加工するといったように、車両Vの種類に応じて接続ポート20a、20bとするボスを使い分けすることができる。しかも、本実施形態によれば、予め4つのボス(第1ボス37a、第2ボス37b、第3ボス39a、第4ボス39b)をハウジング35に形成しておくことで、ハイブリッド自動車と他の種類の車両との間で入力装置14のハウジング35を形成する際の金型を共有することができ、コスト的に有利である。
また、第1ボス37aおよび第2ボス37bにポートを加工して接続ポート20a、20bとした場合、非加工の(加工されていない)ボス39a、39bには、ブレーキ液充填用やエア抜き用の工具挿入孔を加工してもよい。なお、第3ボス39aおよび第4ボス39bにポートを加工して接続ポート20a、20bとした場合には、第1ボス37aおよび第2ボス37bに、ブレーキ液充填用やエア抜き用の工具挿入孔を加工してもよい。このように、新たにブレーキ液充填用および/またはエア抜き用の工具挿入孔を形成するためのボスを形成する必要がなく、工具挿入孔を容易に形成することが可能になる。
また、入力装置14の先端(前端)が上向きとなるように傾斜して配置されることで(図)、ブレーキ液の充填時や交換時などのメンテナンス時に混入したエアを容易に排出することが可能になる。
また、入力装置14によれば、加工された接続ポート20a、20bが、VSA装置18と接続される車両用ブレーキシステム10とすることで、モータシリンダ装置16をジョイント23a、23b(図1参照)を介して接続することができ、入力装置14とモータシリンダ装置16とを配管チューブを介して接続するとともにモータシリンダ装置16とVSA装置18とを配管チューブを介して接続する車両用ブレーキシステムの場合よりも配管長を短くすることができる。
また、図示していないが、入力装置14によれば、モータシリンダ装置16を、入力装置14とVSA装置18とを接続する配管チューブ22a、22c(22d、22f)の近傍に配置することにより、全体の配管チューブ22a〜22fの配管長を図1に示す構成よりもさらに短くすることができる。
また、図9に示すように、予め4つのボス(第1ボス37a、第2ボス37b、第3ボス39a、第4ボス39b)をハウジング35に形成しておくことで、例えば、第1ボス37aおよび第2ボス37bに、モータシリンダ装置16と接続するための接続ポート20a、20b(図10参照)を形成し、第3ボス39aおよび第4ボス39bに、VSA装置18と接続するための接続ポート20c、20d(図10参照)を形成した入力装置14Aを構成することができる。
図10に示すように、入力装置14Aのハウジング35(図3参照)には、第1液圧路58aが接続ポート20aと第1遮断弁60aとの間において分岐する分岐路58dが形成され、この分岐路58dと配管チューブ22mとを接続する接続ポート20cを備えている。また、入力装置14Aは、第2液圧路58bが接続ポート20bと第2遮断弁60bとの間において分岐する分岐路58eが形成され、この分岐路58eと配管チューブ22nとを接続する接続ポート20dを備えている。また、入力装置14Aの接続ポート20aは、配管チューブ22kを介してモータシリンダ装置16の出力ポート24aと接続され、接続ポート20bは、配管チューブ22lを介してモータシリンダ装置16の出力ポート24bと接続されている。なお、図10に示す車両用ブレーキシステム10では、図2に示す連結点A1、A2に相当する部分が、入力装置14A内に設けられた構成となっている。
このように構成された入力装置14Aによれば、予め4つのボス(第1ボス37a、第2ボス37b、第3ボス39a、第4ボス39b)をハウジング35に形成しておくことで、図9に示すような配管構成とする場合においても、第1ボス37aに接続ポート20a、第2ボス37bに接続ポート20b、第3ボス39aに接続ポート20c、第4ボス39bに接続ポート20dをそれぞれ形成することで、4つのポートを備える入力装置14Aにも対応することが可能になる。このように、図1や図9に示すような互いに異なる配管構成を備える車両用ブレーキシステム10に対しても、ハウジング35を形成する際の金型を共有することができ、コスト的に有利である。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されず、種々の形態で実施することができる。なお、前記実施形態では、第1ボス37aおよび第2ボス37bが前方を向き、第3ボス39aおよび第4ボス39bが右側方を向く入力装置14について説明したが、図11に示すように、第1ボス37aおよび第2ボス37bが前方を向き、第3ボス39cおよび第4ボス39dが上側を向くものであってもよい。
また、第1ボス37aおよび第2ボス37bが前方を向き、第3ボス39aおよび第4ボス39bが左側方を向くものであってもよい。また、第1ボス37aおよび第2ボス37bが前方を向き、第3ボス39cおよび第4ボス39dが下側を向くものであってもよい。
また、前記した実施形態では、4つのボス(第1ボス37a、第2ボス37b、第3ボス39a、第4ボス39b)をハウジング35に形成した場合を例に挙げて説明したが、これに限定されるものではなく、6つのボス、あるいは7つ以上のボスを予め形成するようにしてもよい。6つのボスの例としては、前、上、下、右、左を適宜選択して構成することができる。また、一対のそれぞれのボスが互いに別方向を向くものに限定されず、一部またはすべてが同じ方向を向いていてもよい。
また、車両用ブレーキシステム10の変形例として、モータシリンダ装置16に4つのポートを接続する構成、またはポートに2本の配管チューブを接続する構成のように、モータシリンダ装置16に4本の配管チューブが接続される構成であってもよい。この場合には、一方の一対の配管チューブが入力装置14の接続ポート20a、20bに接続され、他方の一対の配管チューブがVSA装置18の導入ポート26a、26bに接続される構成となる。