JP5535684B2 - アルカリ蓄電池用水素吸蔵合金およびこれを用いたアルカリ蓄電池用水素吸蔵合金電極 - Google Patents

アルカリ蓄電池用水素吸蔵合金およびこれを用いたアルカリ蓄電池用水素吸蔵合金電極 Download PDF

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Description

本発明は、ハイブリッド車(HEV:Hybrid Electric Vehicle)や電気自動車(PEV:Pure Electric Vehicle)等の大電流放電を要する用途(高出力用途)に適したアルカリ蓄電池用水素吸蔵合金およびこれを用いたアルカリ蓄電池用水素吸蔵合金電極に関する。
水素吸蔵合金を負極に用いたアルカリ蓄電池は、安全性にも優れているという点からHEVやPEV等といった高出力用途に用いられている。これらの用途に用いられる水素吸蔵合金は、AB2型構造あるいはAB5型構造の単一相から構成されているものが一般的であった。ところが、近年、従来の範囲をはるかに超えた高出力や高容量性能が要望されており、希土類−Mg−Ni系合金のように、AB2型構造とAB5型構造を組み合わせたA27型構造やA519型構造を主相として含むものが提案されるようになった。(特許文献1)
ここで、希土類−Mg−Ni系水素吸蔵合金は、化学量論比によって結構構造が変態し、化学量論比が増加するに従ってA27型構造からA519型構造が構成されやすくなる。
この内、A519型構造は、AB2型構造が2層とAB5型構造が3層を周期として積み重なり合った構造を含むもので、単位結晶格子当たりのニッケル比率を向上させることができる。このため、A519型構造を主相として含む(比較的多く含む)希土類−Mg−Ni系水素吸蔵合金を用いたアルカリ蓄電池は、特に優れた高出力特性を示すこととなる。
ところで、HEV等の高出力用途では、例えば、充電深度(SOC:State Of Charge)が20〜80%となる範囲でパルス充放電を繰り返す部分充放電制御方式が適用されるのが一般的である。このため、HEV等の高出力用途では、使用するアルカリ蓄電池が出力特性に優れているとともに、SOCの変化に伴う出力特性の変化が小さい(出力安定性に優れる)ことが求められている。
一般的に、水素吸蔵合金を備えた水素吸蔵合金電極を用いたアルカリ蓄電池の出力特性は、水素吸蔵合金の平衡圧と密接な関係があり、水素吸蔵合金の平衡圧が高いと出力特性も高くなり、水素吸蔵合金の平衡圧が低いと出力特性も低くなる傾向にある。このため、SOCの変化に伴って水素吸蔵合金の平衡圧が変化する場合、出力特性も変化することになる。この場合、SOCの変化に伴って出力特性が変化するということは、特定のSOCの範囲においては所定の出力が得られなくなるので、低SOC〜高SOCにわたって常に一定の出力が求められるHEV等の高出力用途においては好ましくないこととなる。
このため、SOCの変化に伴う出力特性の変化を小さくするためには、SOCの変化に伴う水素吸蔵合金の平衡圧の変化が小さくなるように制御する必要がある。そこで、実使用領域に対応する水素吸蔵合金のPCT曲線のプラトー領域(通常、SOC20〜80%の範囲に見られるような、SOCの変化によって水素吸蔵合金の平衡圧が大きく変化しない領域)の平衡圧の変化を小さくするように制御する必要がある。
特に、高出力特性を得ることを目的としてA519型構造を主相とする希土類−Mg−Ni系水素吸蔵合金を使用する場合、この水素吸蔵合金の結晶構造は安定性が悪いため、A27型構造、AB5型構造又はAB3型構造等の副相が生成されやすく、これら副相の存在によって水素吸蔵合金のPCT曲線のプラトー領域における平坦性が低下し、出力安定性が低下するという課題がある。このため、当該水素吸蔵合金を使用する場合においては、PCT曲線のプラトー領域の平衡圧の変化を小さくするように制御するように留意する必要がある。
上述のように副相の存在によって使用する水素吸蔵合金のPCT曲線のプラトー領域における平坦性が低下する理由は、以下の通りと考えられる。即ち、一般的に、水素吸蔵合金が複数の結晶構造で構成される場合、水素吸蔵合金のPCT曲線は、各結晶構造のPCT曲線(図2(a)参照)が混成されたものとなる(図2(b)参照)。しかしながら、PCT曲線の混成は、全てのSOC領域で均等に行われず、低SOC領域と中〜高SOC領域では混成のされ方が異なるので、最終的に得られるPCT曲線は、プラトー領域が傾いた形になる(図2(b)参照)。
このことは、低SOC領域では、平衡圧の低い結晶構造が水素の吸蔵・放出に主体的に関与する一方、中〜高SOC領域では、平衡圧の高い結晶構造が水素の吸蔵・放出に主体的に関与することを意味する。このため、低SOC領域では平衡圧の低い結晶構造側にシフトするようにして水素吸蔵合金のPCT曲線が混成される一方、高SOC領域では平衡圧の高い結晶構造側にシフトするようにして水素吸蔵合金のPCT曲線が混成されるからであると考えられる。
以上のようにして各結晶構造のPCT曲線が混成される結果、水素吸蔵合金のPCT曲線のプラトー領域に傾きが生じて平坦性が低下することとなる。このため、上記のような水素吸蔵合金を使用したアルカリ蓄電池においては、SOCの変化に伴う出力特性の変化が大きくなり、出力特性の安定性が低下するものと考えられる。
国際公開第2007/018292号
ところで、希土類−Mg−Ni系水素吸蔵合金のPCT曲線のプラトー領域における平坦性が低下し、出力安定性が低下するという問題は、希土類−Mg−Ni系水素吸蔵合金が、希土類部分にLa量を多く含み、Niの部分に含まれるAlの量が少ない場合に顕著に見られることが最近の調査で分かってきた。また、このような問題は、希土類−Mg−Ni系水素吸蔵合金の、Niの部分に含まれるAl等の量を増加させることにより、出力特性の安定性を改善できることも分かってきた。
すなわち、PCT曲線のプラトー領域における平坦性の低下の原因となる副相のAB3型構造、AB5型構造及びA27型構造の構成比率が所定の範囲に規制されるので、図2(c)に示すように、水素吸蔵合金のPCT曲線のプラトー領域の傾きが小さく、平坦性が高いので、出力特性の安定性を改善できることも分かってきた。
しかしながら、希土類−Mg−Ni系水素吸蔵合金に含まれるAlは、Niにくらべて標準電極電位が卑であるために、アルカリ水溶液中において溶出しやすいという問題がある。このため、Al量を増加させた希土類−Mg−Ni系水素吸蔵合金を用いてアルカリ蓄電池を構成する場合、充放電過程で、希土類−Mg−Ni系水素吸蔵合金からアルカリ電解液中にAlが溶出し、これが正極へ移動して正極活物質内に侵入し、アルカリ蓄電池の耐久性(出力耐久性)が低下するといった課題が新たに生じた。
そこで、本発明は上記した問題を解決するためになされたものであって、出力特性の安定性とともに、耐久性に優れるアルカリ蓄電池を得るのに好適な希土類−Mg−Ni系水素吸蔵合金およびこれを用いたアルカリ蓄電池用水素吸蔵合金電極を提供することを目的とするものである。
本発明のアルカリ蓄電池用水素吸蔵合金は、組成式がLaxReyMg1-x-yNin-m-vAlmv(ただし、ReはYを含む希土類元素(Laを除く)から選択される少なくとも1種の元素、TはCo,Mn,Zn,Fe,Pb,Cu,Sn,Si,Bから選択される少なくとも1種の元素、0.17≦x≦0.64、3.5≦n≦3.8、0.10≦m+v≦0.22、v≧0)と表され、主相がA519型構造であり、表面層のニッケル(Ni)に対するアルミニウム(Al)の濃度比率X(Al/Ni)(%)とバルク層のニッケル(Ni)に対するアルミニウム(Al)の濃度比率Y(Al/Ni)(%)の比X/Yが0.36以上、0.84以下(0.36≦X/Y≦0.84)であることを特徴とする。
本発明のアルカリ蓄電池用水素吸蔵合金のように、上記組成式で表されるとともに、式中のx,n,m+vの値が上記の範囲内に収まり、かつ主相がA519型構造であると、PCT曲線のプラトー領域における平坦性の低下の原因となる副相のAB3型構造、AB5型構造およびA27型構造の構成比率が所定の範囲に規制されることとなる。これにより、水素吸蔵合金のPCT曲線のプラトー領域の傾きが小さくて平坦性が高くなり、出力特性の安定性に優れたアルカリ蓄電池用水素吸蔵合金となる。
この場合、表面層のニッケル(Ni)に対するアルミニウム(Al)の濃度比率X(Al/Ni)(%)とバルク層のニッケル(Ni)に対するアルミニウム(Al)の濃度比率Y(Al/Ni)(%)の比X/Yが0.36以上、0.84以下(0.36≦X/Y≦0.84)であると、バルク層に比べてAlの濃度が小さい表面層を有しているため、水素吸蔵合金からアルカリ電解液中にAlが溶出し、これが正極へ移動して正極活物質内に侵入し、アルカリ蓄電池の耐久性が低下するといった不具合が抑制される。
なお、水素吸蔵合金の表面層とは、バルク層とは異なる形態(水素吸蔵合金粉末の断面を透過型電子顕微鏡で観察すると、濃淡で区別される)を示している領域のことをいう。また、表面層はアルカリ蓄電池内において、水素吸蔵合金の表面からアルカリ電解液が浸透し得る深さにある領域でもある。通常、アルカリ蓄電池用水素吸蔵合金の表面層の厚みは100nm程度であるので、この領域に含まれるAlの濃度を低くすると、水素吸蔵合金からアルカリ電解液中へのAlの溶出を効果的に抑制することが可能となる。
この時、Al置換量の一部を、原子半径がAlより小さい標準電極電位がNiよりも貴な電位であるCu、Sn、または、原子半径がAlより小さい非金属元素であるSiを用いるのが望ましい。これは、Al置換量の一部をAlより原子半径の小さい元素を用いることで、平均原子半径を小さくさせ、水素吸蔵合金表面の水素濃度を増大(高平衡圧化)させることが可能となる。また、標準電極電位がNiよりも貴な電位である金属元素や非金属元素を用いることで、正極への水素吸蔵合金由来の溶出成分(Alなど)の侵入を抑制でき、高出力性能が得られるようになるからである。
ここで、本発明のアルカリ蓄電池用水素吸蔵合金が、25μm以下の平均粒径を有する粒子であると、微粉化が起こり難く、アルカリ蓄電池用水素吸蔵合金に新生面が形成されて、そこからアルカリ電解液中にAlが溶出するといった不具合が効果的に抑制できるようになる。このため、本発明のアルカリ蓄電池用水素吸蔵合金は、平均粒径が25μm以下の粒子であるのが望ましい。
また、一般的な水素吸蔵合金を備えた水素吸蔵合金電極においては、通常、水素吸蔵合金電極の電極容量α(Ah)と電極面積β(cm2)の比β/αが70cm2/Ah以上であると、70cm2/Ah以上となるのに伴って、電極の構造が薄長くなって水素吸蔵合金の塗着層の厚みも小さくなる傾向になり、アルカリ電解液と接触する水素吸蔵合金電極の最表面に配置される水素吸蔵合金粒子の割合が大きくなる。これにより、一般的な水素吸蔵合金電極をアルカリ蓄電池に使用すると、アルカリ蓄電池の耐久性が低下するといった不具合が起こりやすくなる。
ところが、水素吸蔵合金電極の電極容量α(Ah)と電極面積β(cm2)の比β/αが70cm2/Ah以上である水素吸蔵合金電極に、本発明の耐久性の高いアルカリ蓄電池用水素吸蔵合金を使用すると、アルカリ蓄電池の出力特性と耐久性を同時に高めることが可能となる。このため、本発明の水素吸蔵合金を用いた水素吸蔵合金電極においては、水素吸蔵合金電極の電極容量α(Ah)に対する電極面積β(cm2)の比β/αが70cm2/Ah以上(β/α≧70cm2/Ah)であるのが望ましいということができる。
本発明においては、水素吸蔵合金表面部のAl量を規定しているので、正極へのAlの侵入が抑制されるようになる。このため、表面積の大きい薄長の電極設計への適用が可能となる。
本発明の一実施例のアルカリ蓄電池を模式的に示す断面図である。 水素吸蔵合金のPCT曲線を説明する概略図である。
ついで、本発明の実施の形態を以下に詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものでなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することができる。
1.水素吸蔵合金
水素吸蔵合金は以下のようにして作製した。この場合、まず、ランタン(La)、サマリウム(Sm)、プラセオジム(Pr)、ネオジウム(Nd)、マグネシウム(Mg)、ニッケル(Ni)、アルミニウム(Al)、亜鉛(Zn)、銅(Cu)、ケイ素(Si)、スズ(Sn)、鉄(Fe)を所定のモル比の割合で混合し、この混合物をアルゴンガス雰囲気中で溶解させ、これを溶湯急冷して組成式がLaxReyMg1-x-yNin-mAlmv(ただし、式中Reはランタン(La)を除く希土類元素から選択された元素で、TはCo,Mn,Zn,Cu,Si,Sn,Feから選択される少なくとも1種の元素)と表される水素吸蔵合金α〜νのインゴットを作製した。
なお、これらの水素吸蔵合金α〜νの組成を高周波プラズマ分光法(ICP)によっ分析すると、下記の表1に示すように、水素吸蔵合金αは組成式がLa0.53Sm0.36Mg0.11Ni3.61Al0.09で表されものであることが分かった。同様に、水素吸蔵合金βは組成式がLa0.64Sm0.16Mg0.20Ni3.53Al0.07で表され、水素吸蔵合金γは組成式がLa0.17Pr0.17Nd0.53Mg0.13Ni3.71Al0.09で表され、水素吸蔵合金δは組成式がLa0.17Pr0.17Nd0.53Mg0.13Ni3.63Al0.17で表されるものであることが分かった。
また、水素吸蔵合金εは組成式がLa0.39Nd0.35Sm0.13Mg0.13Ni3.57Al0.13で表され、水素吸蔵合金ζは組成式がLa0.64Sm0.16Mg0.20Ni3.54Al0.11で表され、水素吸蔵合金ηは組成式がLa0.19Sm0.70Mg0.11Ni3.28Al0.17Zn0.05で表され、水素吸蔵合金θは組成式がLa0.18Pr0.72Mg0.10Ni3.38Al0.22で表されるものであることが分かった。また、水素吸蔵合金ιはLa0.64Sm0.16Mg0.20Ni3.54Al0.10で表され、水素吸蔵合金κはLa0.64Sm0.16Mg0.20Ni3.54Al0.06Cu0.05で表され、水素吸蔵合金λはLa0.64Sm0.16Mg0.20Ni3.54Al0.06Si0.05で表され、水素吸蔵合金μはLa0.64Sm0.16Mg0.20Ni3.54Al0.06Sn0.05で表され、水素吸蔵合金νはLa0.64Sm0.16Mg0.20Ni3.54Al0.06Fe0.05で表されるものであることが分かった。
なお、下記の表1には、各水素吸蔵合金α〜νを組成式LaxReyMg1-x-yNin-mAlmv(TはCo,Mn,Zn,Fe,Pb,Cu,Sn,Si,Bから選択される少なくとも1種の元素)で表した場合のA成分(希土類元素(La,Re)とMg)に対するB成分(NiとAlとT)のモル比(B/A=n)の値およびLaのモル比(x),Alのモル比(m),T(v)のモル比も示している。
ついで、得られた各水素吸蔵合金α〜νについて、DSC(示差走査熱量計)を用いて融点(Tm)を測定した。その後、これらの水素吸蔵合金α〜νの融点(Tm)よりも50℃だけ低い温度(Ta=Tm−50℃)で所定時間(この場合は10時間)の熱処理を行った。この後、これらの各水素吸蔵合金α〜νの塊を粗粉砕した後、不活性ガス雰囲気中で機械的に粉砕して、体積累積頻度50%での粒径(D50)が25μmの水素吸蔵合金粉末を作製した。
ついで、Cu−Kα管をX線源とするX線回折測定装置を用いる粉末X線回折法で水素吸蔵合金粉末α〜νの結晶構造の同定を行った。この場合、スキャンスピード1°/min、管電圧40kV、管電流300mA、スキャンステップ1°、測定角度20〜50θ/degでX線回折測定を行った。なお、結晶構造の各構造比率の算出においては、A519型構造はPr5Co19型構造とSm5Co19型構造とし、A27型構造はCe2Ni7型構造とGd2Co19型構造とし、AB5型構造はLaNi5型構造とし、AB3型構造はPuNi3型構造とし、NIMS(National Institure for Materials Science)データベースの各回折強度ピークをもとに、得られたプロファイルの42〜44°の最強強度値との比較強度比によって、各構造比率を算出すると、下記の表1に示すような結果が得られた。
Figure 0005535684
上記表1の結果から明らかなように、組成式がLaxReyMg1-x-yNin-mAlmv(ただし、ReはYを含む希土類元素(Laを除く)から選択される少なくとも1種の元素、TはCo,Mn,Zn,Fe,Pb,Cu,Sn,Si,Bから選択される少なくとも1種の元素)で表され、0.17≦x≦0.64、3.5≦n≦3.8、0.10≦m+v≦0.22、v≧0の条件を満たす水素吸蔵合金は主相がA519型構造であることが分かった。
2.水素吸蔵合金の表面処理
ついで、上述のようにして作製された水素吸蔵合金α〜νの粉末を用いて、以下のようにして表面処理を行った。
(1)リン酸水素2ナトリウム・12水和物の水溶液による処理(第1処理)
まず、水素吸蔵合金α〜νの粉末をSUS製の容器に封入した後、濃度が0.30質量%のリン酸水素2ナトリウム・12水和物の水溶液を注入した。この場合、これらの水素吸蔵合金α〜νの質量に対し1.0×10-1質量%となるように、濃度が0.30質量%のリン酸水素2ナトリウム・12水和物を注入した。この後、当該容器を加振し、3日間放置して、水素吸蔵合金α〜νの表面処理を行った。このようなリン酸水素2ナトリウム・12水和物の水溶液による表面処理を第1処理とした。
(2)塩酸水溶液による処理(第2処理)
また、上述のようにして作成された水素吸蔵合金δの粉末をSUS製の容器に封入した後、濃度が0.1Nの塩酸の水溶液を注入した。ついで、濃度が0.1Nの塩酸の水溶液内に20分間放置して、水素吸蔵合金δの表面処理を行った。このような塩酸の水溶液による表面処理を第2処理とした。
なお、比較のため、水素吸蔵合金γおよびδの粉末については、表面処理を施さずに未処理のものも作製した。
3.水素吸蔵合金電極
水素吸蔵合金電極11は、以下のようにして作製した。
まず、上述のように第1処理した水素吸蔵合金α〜νの粉末のいずれか、あるいは第2処理した水素吸蔵合金δの粉末、または未処理の水素吸蔵合金γおよびδの粉末いずれかと水溶性結着剤と熱可塑性エラストマーおよび炭素系導電剤とを混合・混練して水素吸蔵合金スラリーを作製した。この場合、水溶性結着剤としては、0.1質量%のCMC(カルボキシメチルセルロース)と水(あるいは純水)とからなるものを使用した。また、熱可塑性エラストマーとしては、スチレンブタジエンラテックス(SBR)を使用した。さらに、炭素系導電剤としては、ケッチェンブラック使用した。
ついで、上述のようにして作製した水素吸蔵合金スラリーを負極用導電性芯体(ニッケルメッキを施した軟鋼材製の多孔性基板(パンチングメタル))11aに所定の充填密度(例えば、5.0g/cm3)となるように塗着、乾燥させて活物質層11bを形成させた後、所定の厚みになるように圧延した。この後、水素吸蔵合金電極容量(α)が10.8Ah、水素吸蔵合金電極表面積(β)が760cm2(表極表面積(β)/電極容量(α)=70cm2/Ah)となるように所定の寸法に切断して、水素吸蔵合金電極11(a,b,c,d,e,f,g,h,i,j,k,l,m,n,o,p)を作製した。
この場合、第1処理(処理1)した水素吸蔵合金αの粉末を用いて作製したものを水素吸蔵合金電極aとした。同様に、第1処理した水素吸蔵合金βの粉末を用いて作製したものを水素吸蔵合金電極bとし、未処理の水素吸蔵合金γの粉末を用いて作製したものを水素吸蔵合金電極cとし、第1処理した水素吸蔵合金γの粉末を用いて作製したものを水素吸蔵合金電極dとし、第2処理(処理2)した水素吸蔵合金δの粉末を用いて作製したものを水素吸蔵合金電極eとし、未処理の水素吸蔵合金δの粉末を用いて作製したものを水素吸蔵合金電極fとした。
また、第1処理した水素吸蔵合金δの粉末を用いて作製したものを水素吸蔵合金電極gとし、第1処理した水素吸蔵合金εの粉末を用いて作製したものを水素吸蔵合金電極hとし、第1処理した水素吸蔵合金ζの粉末を用いて作製したものを水素吸蔵合金電極iとし、第1処理した水素吸蔵合金ηの粉末を用いて作製したものを水素吸蔵合金電極jとし、第1処理した水素吸蔵合金θの粉末を用いて作製したものを水素吸蔵合金電極kとした。
さらに、第1処理した水素吸蔵合金ιの粉末を用いて作製したものを水素吸蔵合金電極lとし、第1処理した水素吸蔵合金κの粉末を用いて作製したものを水素吸蔵合金電極mとし、第1処理した水素吸蔵合金λの粉末を用いて作製したものを水素吸蔵合金電極nとし、第1処理した水素吸蔵合金μの粉末を用いて作製したものを水素吸蔵合金電極oとし、第1処理した水素吸蔵合金νの粉末を用いて作製したものを水素吸蔵合金電極pとした。
4.ニッケル正極
ニッケル正極12は、以下のようにして作製した。
まず、多孔度が約85%の多孔性ニッケル焼結基板を比重が1.75の硝酸ニッケルと硝酸コバルトの混合水溶液に浸漬して、多孔性ニッケル焼結基板の細孔内にニッケル塩およびコバルト塩を保持させた。この後、この多孔性ニッケル焼結基板を25質量%の水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液中に浸漬して、ニッケル塩およびコバルト塩をそれぞれ水酸化ニッケルおよび水酸化コバルトに転換させた。
ついで、充分に水洗してアルカリ溶液を除去した後、乾燥を行って、多孔性ニッケル焼結基板の細孔内に水酸化ニッケルを主成分とする活物質を充填した。このような活物質充填操作を所定回数(例えば6回)繰り返して、多孔性焼結基板の細孔内に水酸化ニッケルを主体とする活物質の充填密度が2.5g/cm3になるように充填した。この後、室温で乾燥させた後、所定の寸法に切断してニッケル正極12を作製した。
5.ニッケル−水素蓄電池
ニッケル−水素蓄電池10は、以下のようにして作製した。
まず、上述のように作製された水素吸蔵合金電極11とニッケル正極12とを用い、これらの間に、スルフォン化処理されたポリプロピレン繊維を含む不織布からなるセパレータ13を介在させて渦巻状に巻回して渦巻状電極群を作製した。なお、このようにして作製された渦巻状電極群の下部には水素吸蔵合金電極11の芯体露出部11cが露出しており、その上部にはニッケル正極12の芯体露出部12cが露出している。ついで、得られた渦巻状電極群の下端面に露出する芯体露出部11cに負極集電体14を溶接するとともに、渦巻状電極群の上端面に露出するニッケル正極12の芯体露出部12cの上に正極集電体15を溶接して、電極体とした。
ついで、得られた電極体を鉄にニッケルメッキを施した有底筒状の外装缶(底面の外面は負極外部端子となる)16内に収納した後、負極集電体14を外装缶16の内底面に溶接した。一方、正極集電体15より延出する集電リード部15aと、正極端子を兼ねるとともに外周部に絶縁ガスケット18が装着された封口体17の底部を構成する封口板17aとを溶接した。なお、封口体17には正極キャップ17bが設けられていて、この正極キャップ17b内に所定の圧力になると変形する弁体17cとスプリング17dよりなる圧力弁が配置されている。
ついで、外装缶16の上部外周部に環状溝部16aを形成した後、電解液を注液し、外装缶16の上部に形成された環状溝部16aの上に封口体17の外周部に装着された絶縁ガスケット18を載置した。この後、外装缶16の開口端縁16bをかしめ、外装缶16内に30質量%の水酸化カリウム(KOH)水溶液からなるアルカリ電解液を電池容量当たり2.5g/Ah注入して、ニッケル−水素蓄電池10(A,B,C,D,E,F,G,H,I,J,K,L,M,N,O,P)を作製した。
この場合、水素吸蔵合金電極aを用いて作製したものを電池Aとし、水素吸蔵合金電極bを用いて作製したものを電池Bとし、水素吸蔵合金電極cを用いて作製したものを電池Cとし、水素吸蔵合金電極dを用いて作製したものを電池Dとし、水素吸蔵合金電極eを用いて作製したものを電池Eとし、水素吸蔵合金電極fを用いて作製したものを電池Fとした。また、水素吸蔵合金電極gを用いて作製したものを電池Gとし、水素吸蔵合金電極hを用いて作製したものを電池Hとし、水素吸蔵合金電極iを用いて作製したものを電池Iとし、水素吸蔵合金電極jを用いて作製したものを電池Jとし、水素吸蔵合金電極kを用いて作製したものを電池Kとした。さらに、水素吸蔵合金電極lを用いて作製したものを電池Lとし、水素吸蔵合金電極mを用いて作製したものを電池Mとし、水素吸蔵合金電極nを用いて作製したものを電池Nとし、水素吸蔵合金電極oを用いて作製したものを電池Oとし、水素吸蔵合金電極pを用いて作製したものを電池Pとした。
6.水素吸蔵合金の断面分析
上述のようにして作製されたニッケル−水素蓄電池(A,B,C,D,E,F,G,H,I,J,K,L,M,N,O,P)を解体して水素吸蔵合金電極(a,b,c,d,e,f,g,h,i,j,k,l,m,n,o,p)を取り出した後、これらの水素吸蔵合金電極(a,b,c,d,e,f,g,h,i,j,k,l,m,n,o,p)から水素吸蔵合金粉末を採取した。この後、採取した水素吸蔵合金粉末を水洗した後、減圧乾燥して、分析用の水素吸蔵合金粉末の試料を得た。ついで、得られた分析用の水素吸蔵合金粉末の試料をダミー基板間に分散・固定し、これを切断・研磨して水素吸蔵合金粉末の分析用断面を形成した。
この後、水素吸蔵合金粉末の分析用断面を透過型電子顕微鏡(日本電子社製 JEM−2010F型 電界放射型透過電子顕微鏡、加速電圧200KV)を用いて観察した。観察した結果、各水素吸蔵合金粉末の表面層の領域と、バルク層の領域とは異なる形態(濃淡を示していた)を示していることが分かった。なお、表面層の領域は電解液に接触する領域であって、その幅(深さ)を測定すると粒子表面から100nmの範囲であることが分かった。さらに、表面層とバルク層の組成を、エネルギー分散型X線分光装置(ノーラン社製 UTW型Si(Li)半導体検出器)により分析して、表面層でのNiに対するAlの強度比率X(%)とバルク層におけるNiに対するAlの強度比率Y(%)とを求めた後、バルク層での強度比率Y(%)に対する、表面層での強度比率X(%)との比(X/Y)を算出すると、下記の表2に示すような結果が得られた。
Figure 0005535684
上記表2の結果から明らかなように、Alの量が0.09と少ない水素吸蔵合金γの粉末からなる水素吸蔵合金電極c,dを比較すると、水素吸蔵合金γに表面処理をしてもしなくても、バルク層でのAlの強度比率Y(%)に対する表面層でのAlの強度比率X(%)との比(X/Y)がそれほど変わらないことが分かる。一方、Alの量を0.17と多くした水素吸蔵合金δの粉末からなる水素吸蔵合金電極e,f,gを比較すると、水素吸蔵合金δに表面処理を施した合金の方が表面処理を施さなかった合金よりもバルク層でのAlの強度比率Y(%)に対する表面層でのAlの強度比率X(%)との比(X/Y)が小さくなっていることが分かる。
以上のことことから、水素吸蔵合金粉末の表面層でのAlの存在量を抑制するためには、合金中へのAlの添加量を減少させるか、あるいはAlの添加量を増加させた場合は、表面層のAlの存在量をバルク層のAlの存在量よりも少なくすればよいことことが分かる。換言すると、Alの添加量を増加させた場合は、バルク層でのAlの強度比率Y(%)に対する表面層でのAlの強度比率X(%)との比(X/Y)を小さくするために、水素吸蔵合金の粉末をリン酸水素2ナトリウム・12水和物の水溶液で表面処理(第1処理)を施したり、あるいは塩酸水溶液での表面処理(第2処理)を施したりすればよいことが分かる。
7.電池試験
(1)活性化
活性化は、以下のようにして行った。即ち、上述のようにして作製されたニッケル−水素蓄電池10(A,B,C,D,E,F,G,H,I,J,K,L,M,N,O,P)を電池電圧が放置時ピーク電圧の60%になるまで放置した後、25℃の温度雰囲気で、1Itの充電々流でSOC120%まで充電し、25℃の温度雰囲気で1時間休止する。ついで、70℃の温度雰囲気で24時間放置した後、45℃の温度雰囲気で、1Itの放電々流で電池電圧が0.3Vになるまで放電させるサイクルを2サイクル繰り返した。
(2)出力特性評価
出力安定性を調べるために、出力特性評価を以下のようにして行った。
まず、上述のようにして活性化したニッケル−水素蓄電池10(A,B,C,D,E,F,G,H,I,J,K,L,M,N,O,P)を25℃の温度雰囲気で1Itの充電電流でSOC50%まで充電した後、25℃の温度雰囲気で1時間休止させた。ついで、−10℃の温度雰囲気で、任意の充電レートで20秒間充電させた後、−10℃の温度雰囲気で30分間休止させた。この後、−10℃の温度雰囲気で、任意の放電レートで10秒間放電させた後、25℃の温度雰囲気で30分間休止させた。このような−10℃の温度雰囲気で、任意の充電レートでの20秒間充電、30分の休止、任意の放電レートで10秒間放電、25℃の温度雰囲気での30分の休止を繰り返した。
この場合、任意の充電レートは、0.8It→1.7It→2.5It→3.3It→4.2Itの順で充電電流を増加させ、任意の放電レートは、1.7It→3.3It→5.0It→6.7It→8.3Itの順で放電電流を増加させるようにして、0.8It充電→1.7It放電→1.7It充電→3.3It放電→2.5It充電→5.0It放電→3.3It充電→6.7It放電→4.2It充電→8.3It放電の充放電処理を行った。このとき、各放電レートで10秒間経過時点での各電池の電池電圧(V)を放電レート毎に測定した。
ついで、測定した10秒間経過時点での各電池A,B,C,D,E,F,G,H,I,J,K,L,M,N,O,Pの電池電圧(V)を放電レート毎の放電電流値に対して2次元プロットし、電池電圧と放電電流値の関係を示す近似曲線を求め、近似曲線における0.9V時の放電電流値をSOC50%出力特性として求めると、下記の表3に示すような結果となった。また、活性化したニッケル−水素蓄電池10(A,B,C,D,E,F,G,H,I,J,K,L,M,N,O,P)を25℃の温度雰囲気で1Itの充電電流でSOC20%まで充電した以外、上記と同様にしてSOC20%出力特性として求めると、下記の表3に示すような結果となった。さらに、SOC20%出力特性に対するSOC50%出力特性の比率を求め、出力安定性(SOC20%出力特性/SOC50%出力特性)とすると、下記の表3に示すような結果となった。なお、下記の表3においては、電池Aを基準(100%)とし、これとの相対比(%)で示している。
(3)放電リザーブ特性評価
水素吸蔵合金の耐食性を調べるために、放電リザーブ蓄積率を以下のようにして行った。
まず、上述のようにして活性化したニッケル−水素蓄電池10(A,B,C,D,E,F,G,H,I,J,K,L,M,N,O,P)の封口体17を外して開放状態とした後、同電池の正負極端子にリード線を取り付けて、これをビーカに収容した。ついで、このビーカにKOH水溶液を注入して同電池がKOH水溶液に浸漬されるようにするとともに、この容器中に参照極(Hg/HgO)を配置した。ついで、同電池のリード線を外部放電回路に接続し、同電池を強制放電する。強制放電により正極活物質が完全に放電状態となった後、25℃の温度雰囲において、1Itの放電電流で負極電位が参照極(Hg/HgO)に対して0.3Vになるまで放電させ、このときの放電時間から負極の1It放電時の容量を求めた。
この後、10分間放電を休止した後、0.1Itの放電電流で負極電位が参照極(Hg/HgO)に対して0.3Vになるまで放電させ、このときの放電時間から負極の0.1It放電時の容量を求める。得られた1It放電時の容量と0.1It放電時の容量の和を放電リザーブ量として求め、求めた放電リザーブ量を公称電池容量の比として算出して放電リザーブ蓄積率((放電リザーブ量/公称電池容量)×100%)として表すと、下記の表3に示すような結果となった。なお、表3においては、電池Aの放電リザーブ蓄積率を基準(100%)とし、これとの相対比(%)で示している。
Figure 0005535684
8.試験結果
上記表1〜表3の結果から、以下のことが明らかになった。
即ち、Alの量(モル比)が0.09以下(m≦0.09)と少ない水素吸蔵合金α〜γの粉末を備えた水素吸蔵合金電極a〜dを用いたニッケル−水素蓄電池A〜Dにおいては、出力安定性が89〜100%と低いことが分かる。これは、これらの水素吸蔵合金α〜γは、A519型構造を主相とするがAlの量(モル比)が少なめであるため、図2(b)に示すように、水素吸蔵合金のPCT曲線のプラトー領域の傾きが大きく、平坦性が低いために、出力特性の安定性が低下したものと考えられる。
また、水素吸蔵合金α〜γの粉末を備えた水素吸蔵合金電極a〜dを用いたニッケル−水素蓄電池A〜Dにおいては、各水素吸蔵合金α〜γに含まれるAlの量が少ないものの、放電リザーブ蓄積率が100%〜122%と高くなっていることが分かる。これは、水素吸蔵合金からアルカリ電解液中へのAlの溶出量が少ない反面、Alの量(モル比)が0.09以下(m≦0.09)と少なめであるために水素吸蔵合金自体が微粉化しやすく、これによりニッケル−水素蓄電池の放電リザーブ蓄積率が高くなったためと考えられる。このことを考慮すると、水素吸蔵合金に含まれるAlの量は0.09(モル)よりも多くする必要があると考えられる。
ついで、Alの量(モル比)を0.17と多くした水素吸蔵合金δの粉末を備えた水素吸蔵合金電極e,f,gを用いたニッケル−水素蓄電池E,F,Gを比較して、水素吸蔵合金粉末の表面処理の影響についての検討を行うこととする。
まず、水素吸蔵合金δの表面を塩酸を用いて表面処理を行った水素吸蔵合金粉末を備えた水素吸蔵合金電極eを用いたニッケル−水素蓄電池Eにおいては、耐久性が非常に高いことが確認されている。これは、放電リザーブ蓄積率が63%と大きく低下しており、水素吸蔵合金電極eからアルカリ電解液中へのAlの溶出量が高度に抑えられていることが伺え、これにより耐久性の低下が抑制されたものと考えられる。しかしながら、その反面、ニッケル−水素蓄電池Eは、SOC50%出力特性およびSOC20%出力特性が大きく低下していることが分かる。これは、塩酸による表面処理により、水素吸蔵合金δの希土類成分が酸化されたことが影響したものであると考えられる。このことから、水素吸蔵合金δの表面を塩酸を用いて表面処理を行うのは望ましくないことが分かる。
また、水素吸蔵合金δの表面を表面処理を施さなかった水素吸蔵合金粉末を備えた水素吸蔵合金電極fを用いたニッケル−水素蓄電池Fにおいては、出力安定性が102%とニッケル−水素蓄電池A〜Dに比べて高い値を示していることが分かる。しかしながら、ニッケル−水素蓄電池Fにおいては、水素吸蔵合金電極fの表面層にAlが多く存在するため、充放電過程でアルカリ蓄電池の耐久性(出力耐久性)が低下することが確認されている。これは、ニッケル−水素蓄電池Fにおいては、放電リザーブ蓄積率が110%となっていて、ニッケル−水素蓄電池Aの100%に比較して高いことから、水素吸蔵合金電極fからアルカリ電解液中へのAlの溶出量が多いことが伺え、この溶出したAlがニッケル正極へ移動して正極活物質内に侵入し、ニッケル−水素蓄電池Fの耐久性(出力耐久性)が低下したものと考えられる。
これらに対して、水素吸蔵合金δの表面をリン酸水素2ナトリウム・12水和物を用いて表面処理を行った水素吸蔵合金粉末を備えた水素吸蔵合金電極gを用いたニッケル−水素蓄電池Gにおいては、耐久性が非常に高いことが確認されている。即ち、ニッケル−水素蓄電池Gの放電リザーブ蓄積率が96%であって、ニッケル−水素蓄電池Fの放電リザーブ蓄積率の110%に比較して低いことから、水素吸蔵合金δからアルカリ電解液中へのAlの溶出量が低く抑えられていることが伺え、ニッケル−水素蓄電池Gの耐久性の低下が抑制されたものと考える。これは、リン酸水素2ナトリウム・12水和物による表面処理により、表面層のAlの濃度比率(X)をバルク層のAlの濃度比率(Y)に対して0.41(X/Y=0.41)と低くして、水素吸蔵合金電極gからアルカリ電解液中へのAlの溶出量を抑制したためと考えられる。
この場合、水素吸蔵合金ε〜θの表面をリン酸水素2ナトリウム・12水和物を用いて表面処理を行って、表面層のAlの濃度比率(X)をバルク層のAlの濃度比率(Y)に対して0.36〜0.70と低くした水素吸蔵合金電極e〜kを用いたニッケル−水素蓄電池E〜Kにおいても、上述したニッケル−水素蓄電池Gと同等の特性を有していることが分かる。さらに、水素吸蔵合金ι〜νの表面をリン酸水素2ナトリウム・12水和物を用いて表面処理を行って、表面層のAlの濃度比率(X)をバルク層のAlの濃度比率(Y)に対して0.82〜0.84と低くした水素吸蔵合金電極l〜pを用いたニッケル−水素蓄電池L〜Pにおいても、上述したニッケル−水素蓄電池Gと同等の特性を有していることが分かる。
なお、ニッケル−水素蓄電池L〜Pについては、放電リザーブ蓄積率についてのデータを示していないが、これらの蓄電池に用いられた水素吸蔵合金ι〜νにおいては、Alの量(モル比)を少なくして、その分、他の元素T(Cu,Si,Sn,Fe)を添加するようにしている。このため、水素吸蔵合金電極l〜pからアルカリ電解液中へのAlの溶出量は少なくなるため、これらのニッケル−水素蓄電池L〜Pの放電リザーブ蓄積率は上述したニッケル−水素蓄電池Gと同等以下であることは容易に推測できる。
これらのことから、表面層のAlの濃度比率(X)をバルク層のAlの濃度比率(Y)に対して0.36〜0.84(0.36≦X/Y≦0.84)と低くするのが望ましいということができる。また、Al(組成式におけるmの値)とCu,Si,Sn,Feなどからなる他の元素T(組成式におけるvの値)の添加量(m+V)に関しては、0.10以上、0.22以下(0.11≦m+V≦0.22)の範囲内に収まるように選択するのが望ましいということができる。
この場合、Al置換量の一部を、原子半径がAlより小さい非金属元素であるSiあるいは標準電極電位がNiよりも貴な電位であるCu,Snとした水素吸蔵合金λ,κ,μを備えた水素吸蔵合金電極n,m,oを用いたニッケル−水素蓄電池N,M,Oにおいては、低温出力性能(SOC50%出力特性およびSOC20%出力特性)が大幅に向上していることが分かる。これは、原子半径より小さい元素を用いることで、平均原子半径が最小化されて平衡圧が向上することとなる。そして、溶出酸化しにくく、Si,Cu,Snを用いることで、結晶構造を維持したまま、Al総溶出量を抑制することが可能となり、低温出力性能が向上したと推察できる。
なお、本発明の水素吸蔵合金は、Alを多く含む組成において水素吸蔵合金の表面部のAl量を制御することによって、出力安定性と耐久性を両立している。このため、平均粒径の大きい水素吸蔵合金粉末を用いてニッケル−水素蓄電池を構成した場合、水素吸蔵合金の微粉化により水素吸蔵合金のバルク層から溶出するAlの量が増大し、本発明の効果が十分高められないことが分かっている。この点について調査したところ、水素吸蔵合金粒子の平均粒径が25μm以下であれば、バルク部分から溶出するAlの量を抑えることができることが確認できた。このため、用いる水素吸蔵合金としては、平均粒径が25μm以下の粒子を備えた粉末を用いるのが望ましいということができる。
また、上述した電池試験においては、水素吸蔵合金電極の電極容量(α)(Ah)に対する電極表面積(β)(cm2)の比(β/α)を70cm2/Ah(β/α=70cm2/Ah)となるように切断して作製した水素吸蔵合金電極を使用して行っている。このように水素吸蔵合金電極のβ/αが大きい水素吸蔵合金電極を用いると、ニッケル−水素蓄電池の出力特性を高めることができる。このため、水素吸蔵合金電極の電極容量(α)(Ah)に対する電極表面積(β)(cm2)の比(β/α)が70cm2/Ah(β/α=70cm2/Ah)以上の水素吸蔵合金電極を用いるのが望ましい。
さらに、このようにβ/αが大きい水素吸蔵合金電極は、電極の構造が薄長く、水素吸蔵合金の塗着層の厚みが小さくなる。このため、アルカリ電解液と接触する水素吸蔵合金電極の最表面に配置される水素吸蔵合金粒子の割合が大きくなるが、本発明の水素吸蔵合金を用いて水素吸蔵合金電極を構成しているので、これを用いたニッケル−水素蓄電池は、耐久性の低下が抑制されることとなることは、上記表1〜3の結果からも理解できる。
なお、上述した実施形態においては、水素吸蔵合金電極の電極容量(α)(Ah)に対する電極表面積(β)(cm2)の比(β/α)を70cm2/Ah(β/α=70cm2/Ah)となるように切断して作製した水素吸蔵合金電極を用いる例について説明した。ところが、上述のように、水素吸蔵合金電極の電極容量(α)(Ah)に対する電極表面積(β)(cm2)の比(β/α)が70cm2/Ah(β/α=70cm2/Ah)以上の水素吸蔵合金電極であればどのようなサイズの水素吸蔵合金電極であってもよい。
また、上述した実施形態においては、組成式がLaxReyMg1-x-yNin-m-vAlmvと表される水素吸蔵合金において、元素TとしてZn,Cu,Si,Sn,Feを用いる例について説明したが、Zn,Cu,Si,Sn,Fe以外の元素として、Co,Mn,Pb,Bなどを用いても、ほぼ同様な効果が期待できる。
11…水素吸蔵合金電極、11a…負極用導電性芯体、11b…活物質層、11c…芯体露出部、12…ニッケル正極、12c…芯体露出部、13…セパレータ、14…負極集電体、15…正極集電体、15a…正極用リード、16…外装缶、16a…環状溝部、16b…開口端縁、17…封口体、17a…封口板、17b…正極キャップ、17c…弁板、17d…スプリング、18…絶縁ガスケット

Claims (3)

  1. アルカリ蓄電池用水素吸蔵合金であって、
    組成式がLaxReyMg1-x-yNin-m-vAlmv(ただし、ReはYを含む希土類元素(Laを除く)から選択される少なくとも1種の元素、TはCo,Mn,Zn,Fe,Pb,Cu,Sn,Si,Bから選択される少なくとも1種の元素、0.17≦x≦0.64、3.5≦n≦3.8、0.10≦m+v≦0.22、v≧0)と表され、
    主相がA519型構造であり、
    表面層のニッケル(Ni)に対するアルミニウム(Al)の濃度比率X(Al/Ni)(%)とバルク層のニッケル(Ni)に対するアルミニウム(Al)の濃度比率Y(Al/Ni)(%)の比X/Yが0.36以上、0.84以下(0.36≦X/Y≦0.84)であることを特徴とするアルカリ蓄電池用水素吸蔵合金。
  2. 前記元素Tは、原子半径がアルミニウム(Al)より小さくかつ標準電位がニッケル(Ni)よりも貴な電位である銅(Cu)あるいはスズ(Sn)であるか、原子半径がアルミニウム(Al)より小さくかつ非金属元素であるケイ素(Si)であることを特徴とする請求項1に記載のアルカリ蓄電池用水素吸蔵合金。
  3. 請求項1または請求項2に記載のアルカリ蓄電池用水素吸蔵合金を備えた水素吸蔵合金電極であって、
    水素吸蔵合金電極の電極容量α(Ah)と電極面積β(cm2)の比β/αが、70cm2/Ah以上であることを特徴とするアルカリ蓄電池用水素吸蔵合金電極。
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