JP5533930B2 - 回転電機 - Google Patents
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Description
これを回避するために、ヒュージング時の通電量や加圧を大きくすると、コイルの変形が過大となり、コイルが断線するなどのおそれがあった。
また、ヒュージング時のフック部近傍の加熱が不足すると、フック部がコイルと接するコイル側の面と、それと対向する整流子片との密着強度が不充分となって、モータ回転時の遠心力などにより、フック部が整流子片の表面から浮き上って、コイルと整流子片との電気的接続が悪化して、モータ性能が低下するなどのおそれがあった。
実施の形態1を図1〜図4に基づいて説明する。なお、以下の各図において同一または相当部分には同一符号を付して説明する。
図1は、回転電機をなすブラシ付モータの断面図であって、電動パワーステアリング装置用モータなどに用いられるものである。図2は、図1の整流子付近の要部説明図、図3は、図2のヒュージング前の説明図、図4は、均圧線の接続関係を示す説明図である。
図1において、有底円筒状のヨーク10の内周面には、4個の永久磁石11が、樹脂製のホルダ12とともに固定されている。電機子20は、シャフト21に固定された整流子22およびコア24を備えており、コア24に備えた22個のスロットには、重巻で巻回されたコイル(巻線)23を有し、コイル23は整流子22(整流子片40)に接続されている。整流子22の一端側(コア24側)には、均圧線50が配設されており、均圧線50は整流子22(整流子片40)に接続されている。
ヨーク10に嵌合するハウジング30には、ブラシホルダが固定されており、ブラシホルダに保持された4個のブラシ33は、スプリング32によって付勢されて、整流子22の外周面に対して摺接可能に配設されている。ブラシ33は、外部リード線34を介して電源に接続されている。シャフト21の両端付近には、ベアリング13およびベアリング31を備え、電機子20は、永久磁石11の内周面と空隙を介して回転自在に支持されている。このように、ブラシ付モータ1(回転電機)は構成されている。
整流子片40は、軸方向の一端側(コア24側)に、コイル23や均圧線50が接続されるフック42と、他端側にブラシ33が摺接する摺接部43とを一体に有した整流子片40で構成されている。整流子片40は、銅合金材からなり、初期工程では冷間鍛造を用いて形成されている。
摺接部43は、ブラシ33が整流子片40の外周表面を摺接する軸方向の範囲(ブラシの幅寸法)である。摺接部43は、整流子片40の外周表面を、旋盤加工機などによる切削加工を用いて形成される。
フック42を介して、コイル23や均圧線50は、整流子片40に電気的に接続されている。
この実施の形態1においては、除肉部46は、整流子片40の外周表面を径方向内側に円環状に窪ませて設けられた溝部44である。
溝部44は、モールド整流子22に対して、旋盤加工機などによる切削加工によって形成されており、外周側から内径方向に窪んだ凹状に形成されている。溝部44は、摺接部43の粗加工時に同時に形成され、溝部44には、切削加工のバイト刃による、微細な凹凸状の加工痕を有している。
整流子片40の内径側(ベース樹脂41との境界部分)寸法は、軸方向に亘って略同一の寸法で、直線状に形成されている。
外径寸法Dを外径寸法dよりも大きく構成することによって、外径寸法Dの部分(フック部近傍)の整流子片40の体積が増加するため、該部における整流子片40の熱容量が増加している。
しかも、外径寸法dは、外径寸法Dよりも小さい構成であるため、ブラシ33の部分の径方向寸法の大型化(モータが大型化)が抑制され、且つ、ブラシ33の摩擦による損失(ロストルク)の増加も抑制できる。
外径寸法Dを増加した場合でも、外径寸法dを変更しない場合には、ブラシ23付近の部品やハウジング30付近の部品などの部品の流用も可能とできる。
特に、電動パワーステアリング装置用モータにおいては、ロストルクが増加するとハンドル戻りが悪化するため、外径寸法dが増加しない構成とすることは、電動パワーステアリング装置用モータに好適とできる。
溝部44の左側面は、フック42の先端部42aのブラシ33側の端面と、ほぼ同一の軸方向の位置に形成されている。
溝部44の軸方向右側面(ブラシ側)には、テーパー部44aを有しており、テーパー部44aは、溝部44の切削加工時に同時に形成される。
モールド整流子22のフック42の内周側の整流子片40には、軸方向の一端側(コア24側)に、モールド整流子22に対して、旋盤加工機などによる切削加工によって軸方向に円環状に窪んで形成された減肉部45を備えている。減肉部45には、切削加工のバイト刃による、微細な凹凸状の加工痕を有している。
減肉部45は、整流子片40から、その内周側のベース樹脂41の範囲にまで亘って、切削加工で形成されているため、減肉部45の内周側の面はベース樹脂41(絶縁物)であり、減肉部45の内周側の面には、整流子片40(導電物)が残らないように形成されている。
フック42のコイル側の面42bと対向する整流子片40には、コイル23や均圧線50がヒュージング後に収納されるコイル溝47を備えている。
除肉部46(溝部44)は、コイル溝47と軸方向の別の個所に形成されている。
モールド整流子22には、コイル溝47、除肉部46(溝部44)、減肉部45が、モールド整流子22の単体状態において、予め形成されている。
図3におけるAおよびBは、ヒュージングのための電極が配置される位置の例を示すもので、フック42の先端部42a付近と、摺接部43付近に電極が配置される。
図3のように配置された電極によって、先端部42a付近と摺接部43付近との間に大きな電流を通電するとともに、先端部42a付近は、電極によって軸心方向(シャフト21方向)に加圧されて、ヒュージングが行なわれる。
通電による発熱(加熱)と加圧によって、図2のように、フック42は折曲され、コイル23や均圧線50は、その絶縁被膜が除去されるとともに変形して、コイル溝47とフック42のコイル側の面42bとの間に密着(熱かしめ)して、コイル23や均圧線50は、整流子片40に電気的に接続される。
このとき、フック42の先端部42a付近のコイル側の面42bと、それと対向する整流子片40(外径寸法D)とは、上記の発熱(加熱)と加圧によって、両者は密着した状態となる。
同様に、2番と13番、3番と14番、・・のように、径方向に対向する整流子片40(フック42)の間が接続されている。このように、同電位であるべき整流子片40同士を均圧線50で接続することによって、ブラシ33に流れる循環電流を防止することができるなど、性能の良いブラシ付モータ1とすることができる。
電動パワーステアリング装置用モータ1においては、近年の省エネ指向によって、排気量の大きい車両への搭載が増加しており、より出力の大きいモータが求められている。
モータの出力を増加させるために、線径の太いコイル23を適用した場合においても、コイル23と整流子片40との電気的接続が安定した、小型、安価で、性能の良いモータが求められていた。
除肉部46の大きさを調整することで、熱容量の調整が可能であり、コイル23の線径変更時にも、整流子22の母体が流用できて部品点数の増加が抑制され、また、ヒュージング条件の設定自由度が増加して、接続信頼性の向上を図ることができる。
フック42近傍の整流子片40の体積が大きい整流子22に変更された場合にも、除肉部46の大きさを調整することで、熱容量の調整が可能であり、ヒュージング条件の設定自由度が増加して、接続信頼性の向上を図ることができる。
先端部42aの近傍に除肉部46を設けたので、ヒュージング部の整流子片40の熱容量を効果的に調整することができ、しかも、除肉部46が小型化できて、ブラシ付モータ1の軸方向長さの増加を抑制できる。
フック42の先端部42a付近のコイル側の面42bと、それと対向する整流子片40とは、強固に密着した状態とできる。
溝部44の大きさを調整することで、熱容量の調整が可能であり、上記の除肉部46の場合と同様の効果を得ることができる。
溝部44は、摺接部43の切削加工時に、溝部44の形成も可能となり、形成が容易で、安価に形成できる。
フック42の先端部42a付近のコイル側の面42bと、それと対向する整流子片40とは、強固に密着した状態とできる。
フック42の先端部42a付近のコイル側の面42bと、それと対向する整流子片40とは、より強固に密着した状態とできる。
ブラシ33に流れる循環電流を防止することができるとともに、均圧線50の追加によって熱容量が増加した場合においても、コイル23と均圧線50と整流子片40との電気的接続が安定するとともに、コイル23や均圧線50の断線を防止することができる。
実施の形態2を図5に基づいて説明する。図5は、整流子付近の要部説明図であり、実施の形態2は、実施の形態1に対して、主に下記の点が異なっている。
除肉部46である溝部44の大きさは、整流子片40に対して大きくなっており、減肉部45は、逆に小さく形成されている。
除肉部46(溝部44)と減肉部45の大きさを調整することにより、効果的に熱容量の調整が可能であり、ヒュージング条件の設定自由度が増加し、接続信頼性などの向上を図ることができる。
減肉部45が形成されているが、実施の形態2では、減肉部45は、整流子片40から、その内周側のベース樹脂41の範囲に亘って形成されておらず、減肉部45は、整流子片40の部分に形成されたものであり、減肉部45の内周側には、導電物である整流子片40の部分を残して形成されているものである。
フック42の先端部42aの近傍に形成された除肉部46(溝部44)の左側面は、フック42の先端部42aのブラシ側の端面よりも、わずかにコア24側(左側)となっている。除肉部46(溝部44)がコア24側(左側)となっているため、ブラシ付モータ1の軸方向長さを小型化することができる。
実施の形態3を図6に基づいて説明する。図6は、整流子付近の要部説明図である。
実施の形態3は、除肉部46(溝部44)の軸方向の両側面に、テーパー部44aおよびテーパー部44bを有しており、軸方向の長さは増加するものの、形成方法や加工工具などの選択自由度が向上する。
また、フック42の先端部42aのコイル側の面42bと、それと当接する整流子片40との間には、接合補助材48を有している。
接合補助材48は、整流子片40の表面にスズ(Sn)などのメッキを行なうことによって形成されており、図3にように、コイル23がフック42に係止される前に、モールド整流子22の単体状態において予め形成されている。
フック42の先端部42aのコイル側の面42bと、それと当接する整流子片40との間には、ヒュージング後において接合補助材48を有しているので、両者間の密着強度が更に向上して、モータ回転時の遠心力などにより、フック42の整流子片40の表面から浮き上がりを防止できて、コイル23と整流子片40との電気的接続が安定して、モータ性能が向上する。
接合補助材48は、モールド整流子22の単体状態において予め形成されているので、巻線後のヒュージング前に、接合補助材48を追加する必要がなく、生産性が良い。
なお、接合補助材48は、各実施の形態において適用可能である。
実施の形態4を図7に基づいて説明する。図7は、整流子付近の要部説明図である。
実施の形態4は、フック42の先端部42aにおける整流子片40の外径寸法と、摺接部43における整流子片40の外径寸法が、同じ外径寸法dで形成されている。
この実施の形態4の整流子22においても、除肉部46(溝部44)や減肉部45などを設けることによって、上記同様の効果を得ることができるが、実施の形態1のように、外径寸法Dが、外径寸法dよりも大きく形成されている場合において、より大きな効果を得ることができる。
参考例1を図8に基づいて説明する。図8は整流子片の要部説明図であって、径方向外側から見た、一個の整流子片の正面図を示しており、参考例1は、除肉部46の異なる形態を示すものである。
除肉部46は、一個の整流子片40の周方向(モータ回転方向)の幅寸法W1に対して、周方向の幅を減少させる除肉部46を備えたもので、除肉部46の部分は、周方向の幅寸法W2に形成されている。この整流子片40が周方向に複数個配設されている。
除肉部46は、整流子片40の単体状態で、プレス加工で形成され、その整流子片40をベース樹脂41で一体化したモールド整流子22である。
除肉部46を備えているので、上記同様に、フック42近傍の整流子片40の熱容量を低減することができる。
除肉部46が予め形成された整流子片40を、ベース樹脂41で一体化したモールド整流子22であるため、他の実施の形態の除肉部46(溝部44)と比較して、除肉部46の大きさの変更は容易ではないものの、後工程において切削加工などによって形成する必要がなく、除肉部46はプレス加工で安価に形成される。
なお、除肉部46は、一個の整流子片40の周方向の両側に設けたが、片側であっても良く、整流子片40に穴部などを設けても良い。
また、この発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、この発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能なものである。
Claims (9)
- 軸方向の一端側にはコイルが接続されるフックと、他端側にはブラシが摺接する摺接部とが一体形成された整流子片を有し、該整流子片を周方向に複数個配設して構成された整流子と、前記フックとヒュージングによって電気的に接続されるコイルとを備えた回転電機であって、前記フックの先端部と前記摺接部との軸方向の間であって、前記先端部の近傍には、前記整流子片に除肉部を備えており、該除肉部は、前記整流子片の外周表面を円環状に窪ませて設けられた溝部であることを特徴とする回転電機。
- 整流子は、各整流子片を保持するとともに各整流子片間を絶縁するベース樹脂を有したモールド整流子であって、該モールド整流子に対して切削加工で形成された溝部を備えていることを特徴とする請求項1記載の回転電機。
- フックの先端部における整流子片の外径寸法は、摺接部における整流子片の外径寸法よりも大きく形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の回転電機。
- 溝部は、大径部と小径部の軸方向の境界に形成されていることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の回転電機。
- 溝部の軸方向側面には、テーパー部を有していることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載の回転電機。
- フックの先端部のコイル側の面と、それと当接する整流子片との間には、接合補助材を有していることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれかに記載の回転電機。
- 整流子は、各整流子片を保持するとともに各整流子片間を絶縁するベース樹脂を有したモールド整流子であって、該モールド整流子のフックの内周側の整流子片には、軸方向の一端側に切削加工で減肉した減肉部を備えていることを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれかに記載の回転電機。
- 減肉部は、整流子片からその内周側のベース樹脂の範囲に亘って形成されていることを特徴とする請求項7記載の回転電機。
- フックとヒュージングによって電気的に接続される均圧線を備えていることを特徴とする請求項1〜請求項8のいずれかに記載の回転電機。
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