以下に、本発明に係る車両制御システムの実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、或いは実質的に同一のものが含まれる。
[実施形態]
図1は、実施形態に係る車両制御システムの概略断面図、図2は、実施形態に係る車両制御システムの制御マップの一例、図3は、実施形態に係る車両制御システムにおける制御の一例を説明するフローチャートである。
本実施形態の車両制御システム1は、図1に示すように、車両2に搭載され、この車両2を制御するためのシステムである。この車両2は、駆動輪3を回転駆動して推進するために、走行用動力源(原動機)として、内燃機関としてのエンジン6と発電可能な電動機としてのモータジェネレータ(以下、特に断りのない限り「モータ」と略記する)7とを搭載したいわゆる「ハイブリッド車両」である。
本実施形態の車両制御システム1は、駆動装置4と、制御装置としての電子制御装置5とを備える。この車両制御システム1は、典型的には、電子制御装置5が駆動装置4を制御し、エンジン6を可及的に効率の良い状態で運転する一方、動力やエンジンブレーキ力の過不足をモータ7で補い、さらには減速時にエネルギの回生をおこなうことにより、エンジン6による排気ガスを低減し、同時に燃費の向上を図るように構成されたシステムである。
駆動装置4は、上述したようにハイブリッド形式の駆動装置であり、1つのエンジン6と、1つのモータ7とを有し、これらにより駆動輪3を回転駆動するものである。より詳細には、駆動装置4は、エンジン6と、モータ7と、クラッチ8と、トルクコンバータ9と、変速機10とを含んで構成される。駆動装置4は、エンジン6の内燃機関出力軸としてのクランク軸11とモータ7の電動機出力軸としてのロータ軸12とがクラッチ8を介して接続され、モータ7のロータ軸12と駆動輪3とが変速機10を介して接続される。そして、駆動装置4は、エンジン6が発生させる動力とモータ7が発生させる動力とを変速機10で変速して車両2の駆動輪3に伝達可能である。ここでの駆動装置4は、各要素が駆動輪3への動力の伝達経路においてエンジン6、クラッチ8、モータ7、トルクコンバータ9、変速機10、駆動輪3の順で設けられている。
エンジン6は、駆動輪3と連結され駆動輪3に作用させるエンジントルク(機関トルク)を発生可能である。エンジントルクとは、エンジン6の出力軸であるクランク軸11に生じるトルクである。エンジン6は、燃料を燃焼させることにより燃料のエネルギを機械的仕事に変換して出力する熱機関であって、ガソリンエンジンやディーゼルエンジン、LPGエンジンなどがその一例である。エンジン6は、燃料の燃焼に伴ってクランク軸11に機械的な動力(エンジントルク)を発生させ、この機械的動力をクランク軸11から駆動輪3に向けて出力可能である。
モータ7は、動力の伝達経路においてクラッチ8より駆動輪3側で駆動輪3と連結されこの駆動輪3に作用させるモータトルクを発生可能である。モータトルクとは、モータ7の出力軸であるロータ軸12に生じるトルクである。モータ7は、供給された電力を機械的動力に変換する電動機としての機能と、入力された機械的動力を電力に変換する発電機としての機能とを兼ね備えた回転電機、いわゆるモータジェネレータである。すなわち、モータ7は、電力の供給により駆動し電気エネルギを機械エネルギに変換して出力する力行機能と、機械エネルギを電気エネルギに変換する回生機能とを兼ね備えている。
モータ7は、例えば、回転子であるロータ13と固定子であるステータ14とを有する交流同期電動機等で構成されている。モータ7は、バッテリ(不図示)からインバータ(不図示)を介して交流電力の供給を受けて駆動し、ロータ13が結合されたロータ軸12に機械的な動力(モータトルク)を発生させ、この機械的動力をロータ軸12から駆動輪3に向けて出力可能である。モータ7は、このロータ軸12を介して機械的動力を入出力可能となっている。
モータ7は、例えば、ステータ14が電力の供給を受けて回転磁界を発生させ、その回転磁界に引き付けられてロータ13が回転することでロータ軸12にモータトルクを発生させる。そして、モータ7は、例えば、ロータ軸12が機械的動力を受けて回転することで回生による発電が可能であり、この発電によって生じた電力は、バッテリに蓄えられる。このとき、モータ7は、ロータ13に生じる回転抵抗により、ロータ13の回転を制動(回生制動)することができる。この結果、モータ7は、回生制動時には、電力の回生によりロータ軸12に負のモータトルクであるモータ回生トルクを発生させ、結果的に、車両2に制動力を付与することができる。
クラッチ8は、動力の伝達経路においてエンジン6と駆動輪3との間に設けられる。クラッチ8は、種々の公知のクラッチを用いることができ、エンジン6のクランク軸11とモータ7のロータ軸12とを動力伝達可能に係合可能かつ動力伝達不能に遮断可能に接続する。クラッチ8は、エンジン6側の回転部材であるクランク軸11と駆動輪3側の回転部材であるロータ軸12とを係合状態とすることでクランク軸11とロータ軸12との間で動力を伝達可能である。また、クラッチ8は、クランク軸11とロータ軸12とを解放状態とすることでクランク軸11とロータ軸12との間で動力の伝達を遮断可能である。
トルクコンバータ9は、動力の伝達経路における電動機7と変速機10との間に設けられる。トルクコンバータ9は、流体継手の一種であり、入力軸15と、出力軸16と、流体伝達機構17と、ロックアップ機構18とを有する。入力軸15は、エンジン6やモータ7側からの動力が入力されるコンバータ入力部材であり、モータ7のロータ軸12と一体回転可能に結合される。出力軸16は、駆動輪3側へ動力を出力するコンバータ出力部材であり、変速機10の入力軸19と一体回転可能に結合される。流体伝達機構17は、ポンプ(ポンプインペラ)、タービン(タービンランナ)、ステータ、ワンウェイクラッチなどを含んで構成され、入力軸15に入力された動力を内部に充填される流体(例えば、作動油)を介して出力軸16に伝達可能なものである。ロックアップ機構18は、係合部材を介して入力軸15と出力軸16とを接続、切断可能なものである。
トルクコンバータ9は、ロックアップ機構18を解放状態とすることで、ロックアップOFFとなり、入力軸15から流体伝達機構17の流体を介して出力軸16に動力を伝達することができる。このとき、トルクコンバータ9は、流体伝達機構17にて流体を介して動力を伝達する際に所定のトルク比でトルクを増幅して出力軸16に伝達する。一方、トルクコンバータ9は、ロックアップ機構18を係合状態とすることで、ロックアップONとなり、入力軸15から流体伝達機構17の流体を介さずに、出力軸16に動力を伝達することができる。このとき、トルクコンバータ9は、入力軸15に入力された動力をほぼそのままのトルクで出力軸16に伝達する。
変速機10は、動力の伝達経路における電動機7と駆動輪3との間に設けられ、エンジン6、モータ7の回転出力を変速して出力可能である。変速機10は、いわゆる自動変速機(AT:Automatic Transmission)であり、いわゆる無段変速機であってもよいし有段変速機であってもよい。ここでの変速機10は、いわゆる有段変速機であり、入力軸19と、出力軸20と、変速機構21とを有する。入力軸19は、トルクコンバータ9側からの動力が入力される変速機入力部材であり、トルクコンバータ9の出力軸16と一体回転可能に結合される。出力軸20は、駆動輪3側へ動力を出力する変速機出力部材であり、プロペラ軸22と一体回転可能に結合され、このプロペラ軸22は、差動装置23、駆動軸24を介して駆動輪3に結合される。変速機構21は、複数のギア段(変速段)を有している。変速機構21は、各ギア段にそれぞれ異なる所定の変速比が割り当てられており、ここでは一例として、少なくとも前進用の複数のギア段として、第1速から第6速までの6つのギア段が含まれている。変速機構21は、[入力軸19の回転速度/出力軸20の回転速度]で表すことができる変速比が第1速、第2速、第3速、第4速、第5速、第6速の順で小さくなるよう構成される。変速機10は、入力軸19に入力される回転動力を変速機構21の複数のギア段のうちのいずれか1つにより変速して出力軸20に伝達することができ、この出力軸20から駆動輪3に向けて伝達することができる。
上記のように構成される駆動装置4は、エンジン6が発生させた動力をクラッチ8、トルクコンバータ9、変速機10を介して駆動輪3に伝達することができる。また、駆動装置4は、モータ7が発生させた動力を変速機10のクラッチ8を介さずに、トルクコンバータ9、変速機10を介して駆動輪3に伝達することができる。
電子制御装置5は、エンジン6やモータ7を協調して制御するための制御装置であり、駆動装置4の各部の駆動を制御するものである。電子制御装置5は、CPU、ROM、RAM及びインターフェースを含む周知のマイクロコンピュータを主体とする電子回路である。電子制御装置5は、エンジン6のスロットル開度を検出するスロットル開度センサ25、アクセル開度を検出するアクセル開度センサ26、ブレーキペダルに入力されるペダル踏力を検出するペダル踏力センサ27、クランク角度を検出するクランク角度センサ28、ロータ角度を検出するロータ角度センサ(レゾルバ)29、プロペラ軸22の回転数(回転速度)を検出するプロペラ軸回転数センサ30などの種々のセンサが電気的に接続される。電子制御装置5は、エンジン6の燃料噴射装置、点火装置やスロットル弁装置、バッテリ、インバータなどが電気的に接続され、また、クラッチ8、トルクコンバータ9のロックアップ機構18、変速機10などに油圧制御装置(不図示)を介して接続される。電子制御装置5は、種々のセンサから検出した検出結果に対応した電気信号が入力され、入力された検出結果に応じてエンジン6、モータ7、クラッチ8、トルクコンバータ9のロックアップ機構18、変速機10などの駆動装置4の各部に駆動信号を出力しこれらの駆動を制御する。
ここで、アクセル開度は、車両2の運転席に設けられるアクセルペダル(不図示)の操作量に相当し、さらに言えば、運転者が車両2に要求する加速要求操作の操作量に応じた値である。ペダル踏力は、車両2の運転席に設けられるブレーキペダル(不図示)の操作量に相当し、さらに言えば、運転者が車両2に要求する制動要求操作の操作量に応じた値である。クランク角度は、エンジン6のクランク軸11の回転角度(位置)に相当し、ロータ角度は、モータ7のロータ軸12の回転角度(位置)に相当する。電子制御装置5は、例えば、クランク角度に基づいてエンジン6の各気筒における吸気行程、圧縮行程、膨張行程、排気行程を判別すると共に、クランク角度、ロータ角度に基づいてエンジン6の回転速度としてエンジン回転数やモータ7の回転速度としてモータ回転数を算出することができる。プロペラ軸回転数は、変速機10の出力軸20の回転数(回転速度)、あるいは、車両2の車速に相当し、電子制御装置5は、例えば、プロペラ軸回転数に基づいて、車両2の車速を算出することができる。
ここで、後述するアクセル操作とは、車両2に対する加速要求操作であり、典型的には、運転者によるアクセルペダル(不図示)の操作である。また、後述するブレーキ操作とは、車両2に対する制動要求操作であり、典型的には、運転者によるブレーキペダル(不図示)の操作である。そして、アクセル操作がオフである状態、ブレーキ操作がオフである状態とは、それぞれ、アクセル開度センサ26によって検出されるアクセル開度、ペダル踏力センサ27によって検出されるペダル踏力が所定値以下、典型的には0である状態である。
車両2は、運転状態に応じて電子制御装置5が駆動装置4を制御し、エンジン6とモータ7とを併用又は選択使用することで、様々な車両走行(走行モード)を実現することができる。電子制御装置5は、例えば、クラッチ8を解放状態としかつエンジン6を停止してモータ7の出力する動力で走行する走行モードと、クラッチ8を係合状態としかつ少なくともエンジン6を作動させエンジン6の出力する動力を利用して走行する走行モードとを実現可能である。ここで、エンジン6を停止させた状態とは、燃料を燃焼させずトルクなどの機械的エネルギを出力しない状態であり、エンジン6を作動させた状態とは、燃料を燃焼して生じる熱エネルギをトルクなどの機械的エネルギの形で出力する状態である。また、電子制御装置5は、例えば、エンジン6を始動する場合、クラッチ8を係合させてモータ7が出力する動力(トルク)によりエンジン6を回転(クランキング)させることで、エンジン6を始動させることができる。また、電子制御装置5は、車両2の制動時にモータ7を制御して回生を実行可能である。
すなわち、車両2は、電子制御装置5による制御によって、クラッチ8を係合状態とし、エンジン6を作動させ、走行用駆動源であるエンジン6とモータ7とのうちエンジン6のクランク軸11から出力される機械的動力(エンジントルク)のみを駆動輪3に伝達させることで、エンジン6のみを用いる「エンジン走行」モードを実現することができる。このときのエンジン6の出力は、例えば、運転者により駆動輪3に生じることが要求される要求駆動力などに応じて設定される。
また、車両2は、電子制御装置5による制御によって、エンジン6を作動させた状態で、例えば、運転者により駆動輪3に生じることが要求される要求駆動力やモータ7に供給する電力を貯蔵するバッテリの蓄電状態SOCに応じてモータ7を力行させるようにしてもよい。これにより、車両2は、エンジン6のクランク軸11から出力される機械的動力(エンジントルク)と、モータ7のロータ軸12から出力される機械的動力(モータトルク)とを統合して駆動輪3に伝達させることで、エンジン6とモータ7とを併用する「HV走行」モードを実現することができる。
さらに、車両2は、電子制御装置5による制御によって、クラッチ8を解放状態とし、エンジン6を停止させ、走行用駆動源であるエンジン6とモータ7とのうちモータ7のロータ軸12から出力される機械的動力(モータトルク)のみを駆動輪3に伝達させることで、モータ7のみを用いる「EV走行」モードを実現することができる。つまり、車両2のEV走行モードでは、基本的にはエンジン6のクランク軸11とモータ7のロータ軸12とがクラッチ8にて機械的に切り離された状態となり、エンジン6から駆動輪3へのエンジントルクがクラッチ8にて機械的に遮断される状態となる。このときのモータ7の出力は、例えば、運転者により駆動輪3に生じることが要求される要求駆動力やバッテリの蓄電状態SOCなどに応じて設定される。
また、車両2は、駆動輪3から変速機10やトルクコンバータ9などを介してモータ7のロータ軸12に機械的動力が入力され、これにより、モータ7が回生により発電し、これに伴ってロータ軸12に生じる機械的動力(負のモータトルク)を駆動輪3に伝達することで、モータ7により回生制動を行う「回生走行」モードを実現することができる。
ここで、この車両制御システム1は、例えば、図2に例示する制御マップに基づいて電子制御装置5がエンジン6、モータ7の駆動制御、クラッチ8の係合制御や変速機10の変速制御を実行し、種々の走行モードを実現している。
図2に示す制御マップでは、横軸は車速に相当するプロペラ軸回転数、縦軸はスロットル開度及び減速要求パワーであり、下記で説明する関係が予め設定された上で、電子制御装置5の記憶部(不図示)に記憶されている。ここで、減速要求パワーとは、車両2に要求される減速パワーであり、アクセル操作がONされている場合には、プロペラ軸回転数センサ30によって検出されたプロペラ軸回転数(車速に相当)とアクセル開度センサ26によって検出されたアクセル開度とに応じて定まり、ブレーキ操作がONされている場合には、プロペラ軸回転数センサ30によって検出されたプロペラ軸回転数とペダル踏力センサ27によって検出されたペダル踏力とに応じて定まる。
図2中、クラッチ解放開度Th1は、クラッチ8を解放可能か否かを判定するためにスロットル開度に対して予め設定される閾値である。電子制御装置5は、スロットル開度センサ25によって検出されたスロットル開度が低下しクラッチ解放開度Th1以下となった場合にクラッチ8を解放状態としエンジン6を停止状態とし、スロットル開度が増加しクラッチ解放開度Th1を超えた場合にエンジン6を始動し作動状態としクラッチ8を係合状態とする。エンジン始動回転数Th2−1は、エンジン6を始動するか否かを判定するために車速に相当するプロペラ軸回転数に対して予め設定される閾値である。電子制御装置5は、プロペラ軸回転数センサ30によって検出されたプロペラ軸回転数(車速に相当)が低下しエンジン始動回転数Th2−1以下となった場合にエンジン6を停止状態とし、プロペラ軸回転数が増加しエンジン始動回転数Th2−1を超えた場合にエンジン6を始動し作動状態とする。クラッチ解放回転数Th2−2は、クラッチ8を解放可能か否かを判定するためにプロペラ軸回転数に対して予め設定される閾値であり、エンジン始動回転数Th2−1より高い回転数となっている。電子制御装置5は、プロペラ軸回転数センサ30によって検出されたプロペラ軸回転数が低下しクラッチ解放回転数Th2−2以下となった場合にクラッチ8を解放状態とし、プロペラ軸回転数が増加しクラッチ解放回転数Th2−2を超えた場合にクラッチ8を係合状態とする。
また、図2中、制御線L1は、クラッチ8が解放状態、アクセル操作がオフ、ブレーキ操作がオフのときのモータ7による回生制御線であり、この場合のモータ7による回生制動がエンジン6によるエンジンブレーキ相当の回生制動となるように予め設定されている。ここでは、制御線L1は、プロペラ軸回転数(車速に相当)の増加に伴って減速要パワーの絶対値が線形的に増加するように設定されている。電子制御装置5は、クラッチ8が解放状態であり、アクセル開度センサ26によって検出されるアクセル開度、ペダル踏力センサ27によって検出されるペダル踏力がともに0であり、アクセル操作のオフ、ブレーキ操作のオフが検出された場合、制御線L1に基づいてエンジンブレーキ相当の回生制動となるようにモータ7を制御して回生を行い所定のモータトルクを発生させる。逆に言えば、電子制御装置5は、クラッチ8が解放状態であり、アクセル開度が0、ペダル踏力が0である場合には、エンジンブレーキ相当の回生制動となるようにモータ7を制御して回生を行うことで、プロペラ軸回転数(車速に相当)と減速要求パワーとから定まる動作点は、この制御線L1上に位置することとなる。
また、図2中、制御線L1より上側の領域AはEV領域であり、典型的には、クラッチ8が解放状態、アクセル操作がオン、ブレーキ操作がオフのときのモータ7による力行・回生制御領域である。クラッチ8が解放状態であり、アクセル開度が0より大きく、ペダル踏力が0である場合には、プロペラ軸回転数(車速に相当)とスロットル開度、あるいは、プロペラ軸回転数と減速要求パワーとから定まる動作点は、この領域A内に位置する。この場合、電子制御装置5は、減速要求パワーやスロットル開度に基づいてモータ7を制御して力行・回生を行い所定のモータトルクを発生させる。なお、電子制御装置5は、動作点が領域Aにある場合であっても、例えば、バッテリの蓄電状態SOCによってはクラッチ8を係合状態とし、エンジン6を始動し作動状態とする場合もある。
また、図2中、制御線L1より下側の領域BはブレーキON領域であり、典型的には、クラッチ8が解放状態、アクセル操作がオフ、ブレーキ操作がオンのときのモータ7による回生制御領域である。クラッチ8が解放状態であり、アクセル開度が0であり、ペダル踏力が0より大きい場合には、プロペラ軸回転数(車速に相当)と減速要求パワーとから定まる動作点は、この領域B内に位置する。この場合、電子制御装置5は、減速要求パワーに基づいてモータ7を制御して回生を行い所定のモータトルクを発生させる。なお、上記領域A及び領域B以外の領域は、少なくともエンジン6を作動させエンジン6の出力する動力を利用する運転領域となっている。
そして、図2中、複数の実線N→N+1(Nは自然数)は、変速線、さらに言えば、アップシフト線を表し、例えば、実線3→4は、第3速から第4速への変速を行うためのアップシフト線を表す。実線N→N+1は、プロペラ軸回転数(車速に相当)とスロットル開度、減速要求パワーとの関係において変速機10の変速段として第N速が選択される領域と第N+1速が選択される領域との境界線をなす。電子制御装置5は、例えば、スロットル開度が減少し動作点が実線3→4をまたいだ場合やプロペラ軸回転数が増加して動作点が実線3→4をまたいだ場合に、変速機10を制御して第3速から第4速への変速、すなわち、第3速から第4速へのアップシフトを実行する。ここでは、変速機構21が前進用として第1速から第6速までの6つのギア段を含んで構成されることから、図2の制御マップは、5つのアップシフト線を含んでいる。ここでアップシフトとは、変速比が減少する側、典型的には増速側への変速である。同様に、図2中、複数の点線N←N+1(Nは自然数)は、変速線、さらに言えば、ダウンシフト線を表す。電子制御装置5は、例えば、スロットル開度が増加し動作点が点線3←4をまたいだ場合やプロペラ軸回転数が減少して動作点が点線3←4をまたいだ場合に、変速機10を制御して第4速から第3速への変速、すなわち、第4速から第3速へのダウンシフトを実行する。ここでダウンシフトとは、変速比が増加する側、典型的には減速側への変速である。
電子制御装置5は、図2のような制御マップの変速線(アップシフト線、ダウンシフト線)に基づいて、現在のプロペラ軸回転数(車速に相当)と現在のスロットル開度、あるいは、現在のプロペラ軸回転数と現在の減速要求パワーとから変速機10のギア段(変速段)を決定する。そして、電子制御装置5は、この決定されたギア段に基づいて変速指令を生成し変速機10に出力して変速機10の変速制御を実行し、すなわち、変速機10のギア段を上記の決定された変速段に制御する。
ここで、この車両制御システム1は、車両2に対する加速要求操作がオフされた際、すなわち、アクセル操作がオフされた際に電子制御装置5が変速機10を制御してダウンシフトを実行し、モータ7による回生効率がよいギア段にダウンシフトすることで、回生走行モードにおけるモータ7による回生効率の向上を図っている。
具体的には、図2に例示した制御マップでは、上述した制御線L1が第2速へのダウンシフト線(ダウンシフト側への変速線)としても用いられる。つまり、本実施形態の電子制御装置5は、例えば、アクセル操作がオフされ、エンジン始動回転数Th2−1以下の領域でプロペラ軸回転数と減速要求パワーとから定まる動作点が領域Aから制御線L1上、あるいは、領域Bに移る際には、変速機10を制御して第2速へのダウンシフトを実行する。
また、図2に例示する制御マップでは、領域Bの内部において、エンジン始動回転数Th2−1の近傍の回転数にダウンシフト線としての点線2←6が含まれている。つまり、本実施形態の電子制御装置5は、クラッチ8が解放状態であり、アクセル開度が0であり、ペダル踏力が0より大きい場合に、例えば、プロペラ軸回転数が減少してプロペラ軸回転数(車速に相当)と減速要求パワーとから定まる動作点が領域B内で点線2←6をまたいだ際には、変速機10を制御して第6速から第2速へのダウンシフトを実行する。
一般に上記で説明したようなモータ7のMG効率は、低回転領域で相対的に低くなり、高回転領域で相対的に高くなる傾向にある。このため、車両制御システム1は、アクセル操作がオフされモータ7による回生を実行する際に、電子制御装置5が図2に例示する制御マップなどを用い変速機10を制御してダウンシフトを実行することで、ロータ軸12が相対的に高回転となり、この結果、MG効率を向上させモータ7における回生効率を向上することができる。
ところで、車両制御システム1は、エンジン6を停止させたモードからエンジン6を作動させるモードに移行する際にはクラッチ8が係合状態とされモータ7をエンジン6のスタータモータとして利用することでエンジン6の始動を行う。すなわち、車両制御システム1は、エンジン6を始動する場合、上述したように、電子制御装置5による制御によって、クラッチ8を係合状態とし、エンジン6とモータ7とを直結し、モータ7が出力する動力(トルク)の一部を利用してエンジン6を回転(クランキング)させ、このとき燃焼室に燃料を噴射するなどしてエンジン6を始動する。この場合、電子制御装置5は、駆動輪3に伝達されるトルクの変動(トルクの低下)が生じないように、クランキング中にモータ7が出力するトルクを増加させる。
このとき、車両制御システム1は、アクセル操作がオフされブレーキ操作がオンされてモータ7による回生を実行している状態では、上述したように、モータ7における回生効率を向上させるため、ロータ軸12が相対的に高回転となる側のギア段、すなわち、変速比が相対的に大きい減速側のギア段にダウンシフトされている。この車両制御システム1では、上記のように回生中においてモータ7のロータ軸12の回転数が相対的に高くなっていると、エンジン6の始動に際し、モータ7の動力によってクランク軸11を回転させるために必要とされるパワー(トルク×回転数)が相対的に大きくなる傾向にあり、この結果、エンジン6を始動する際の応答性が悪化するおそれがある。
そこで、本実施形態の車両制御システム1は、モータ7による回生中に車両2に対する制動要求操作がオフされた際、すなわち、ブレーキ操作のオフの際に、電子制御装置5が始動可能変速比に相当するエンジン始動可能ギア段に応じて変速機10による変速を実行することで、エンジン6を始動する際の応答性を向上している。
具体的には、電子制御装置5は、モータ7による回生中でブレーキ操作がオンであるときに、予めエンジン始動可能ギア段を算出しておく。エンジン始動可能ギア段(始動可能変速比)は、ブレーキ操作がオン状態におけるモータ7の回生中に、このモータ7が発生させる動力によりエンジン6のクランク軸11を回転させてエンジン6をショックなく始動可能なギア段(変速比)である。
上記のようなモータ7は、MG特性に応じて回転数ごとに出力可能な最大トルクがおおよそ決まっており、この最大トルクは、例えば、ロータ軸12の回転数であるモータ回転数が高くなるほど小さくなる傾向にある。例えば、プロペラ軸回転数(車速に相当)などに応じた現在の運転状態において、モータ7がエンジン6をクランキング可能なトルクを出力することができる回転数を始動可能モータ回転数とした場合に、電子制御装置5は、実際のモータ回転数が始動可能モータ回転数以下となるようなギア段をエンジン始動可能ギア段として設定する。電子制御装置5は、例えば、プロペラ軸回転数(車速に相当)とエンジン始動可能ギア段との対応関係が記述されたマップなどを用いて、現在のプロペラ軸回転数からエンジン始動可能ギア段を算出する。
そして、電子制御装置5は、モータ7による回生中にブレーキ操作がオフされた際に、このエンジン始動可能ギア段に応じて変速機10による変速を実行する。この結果、この車両制御システム1は、回生中はモータ7による回生効率が高くなるギア段(ロータ軸12が相対的に高回転になるダウンシフト側のギア段)を用いた上で、ブレーキ操作がオフされた際にエンジン始動可能ギア段(ロータ軸12が相対的に低回転になるアップシフト側のギア段)に変速されることで、ブレーキ操作のオフからアクセルペダルが踏み込まれ、アクセル操作がオンになったときにすみやかにエンジン6を始動させることができる。したがって、車両制御システム1は、モータ7による回生時の回生効率を向上させた上で、モータ7によりエンジン6を始動させる際の応答性を向上することができ、例えば、エンジン走行モードやHV走行モードにすみやかに移行することができる。
このとき、電子制御装置5は、プロペラ軸回転数(車速に相当)などに応じて選択されたエンジン始動可能ギア段(始動可能変速比)がブレーキ操作のオフ時のギア段(変速比)より増速側のギア段である場合、すなわち、アップシフト側のギア段である場合に変速機10を制御しエンジン始動可能ギア段への実際の変速を実行する。
一方、電子制御装置5は、エンジン始動可能ギア段がブレーキ操作のオフ時のギア段と同等のギア段あるいは減速側のギア段である場合、すなわち、エンジン始動可能ギア段がダウンシフト側のギア段である場合にブレーキ操作のオフ時のギア段をそのまま維持するようにするとよい。この車両制御システム1では、上記のように設定されたエンジン始動可能ギア段がブレーキ操作のオフ時のギア段より減速側のギア段であり、言い換えれば、ブレーキ操作のオフ時のギア段がエンジン始動可能ギア段より増速側のギア段、すなわち、アップシフト側のギア段であれば、あえてエンジン始動可能ギア段まで変速しなくてもエンジン6を適正に始動させることができる。よってこの場合、車両制御システム1は、ブレーキ操作のオフ時のギア段をそのまま維持することで、エンジン6を始動させる際の応答性を向上した上で、不必要な変速を抑制することができる。この結果、車両制御システム1では、例えば、再度ブレーキ操作がオンになったときにロータ軸12の回転数を相対的に高い回転数で維持したままで回生をつづけることができると共に、回生中の変速に伴うロスエネルギを低減することができ、回生中の変速に伴う変速ショックを低減することができる。
次に、図3のフローチャートを参照して、本実施形態に係る車両制御システム1における制御の一例を説明する。なお、これらの制御ルーチンは、数msないし数十ms毎の制御周期で繰り返し実行される。
まず、電子制御装置5は、車両2が走行中であるか否かを判定する(ST1)。電子制御装置5は、例えば、プロペラ軸回転数センサ30の検出結果に基づいて、車両2が走行中であるか否かを判定する。
電子制御装置5は、車両2が走行中であると判定した場合(ST1:Yes)、回生制御を実行中であるか否かを判定する(ST2)。電子制御装置5は、例えば、モータ7の駆動状態などに基づいて回生制御を実行中であるか否かを判定する。
電子制御装置5は、回生制御を実行中であると判定した場合(ST2:Yes)、ブレーキON操作中か否か、すなわち、ブレーキ操作がオンであるか否かを判定する(ST3)。電子制御装置5は、例えば、ペダル踏力センサ27によって検出されるペダル踏力が所定値、例えば、0より大きいか否かに基づいてブレーキON操作中か否かを判定する。
電子制御装置5は、ブレーキON操作中であると判定した場合(ST3:Yes)、典型的には、現在の動作点が領域(ブレーキON領域)B内にある場合には、エンジン始動可能ギア段を算出する(ST4)。電子制御装置5は、例えば、プロペラ軸回転数(車速に相当)とエンジン始動可能ギア段との対応関係が記述されたマップなどを用いて、プロペラ軸回転数センサ30によって検出された現在のプロペラ軸回転数からエンジン始動可能ギア段を算出する。
次に、電子制御装置5は、ドライバのブレーキ開放操作があったか否か、すなわち、ブレーキ操作がオフされたか否かを判定する(ST5)。電子制御装置5は、例えば、ペダル踏力センサ27によって検出されるペダル踏力が所定値以下、例えば、0以下であるか否かに基づいてブレーキ開放操作があったか否を判定する。
電子制御装置5は、ブレーキ開放操作があったと判定した場合(ST5:Yes)、ST4で算出したエンジン始動可能ギア段が現在の走行ギア段より高いか否か、すなわち、エンジン始動可能ギア段が変速比が相対的に小さくなるアップシフト側のギア段か否かを判定する(ST6)。
電子制御装置5は、ST4で算出したエンジン始動可能ギア段が現在の走行ギア段より高いと判定した場合(ST6:Yes)、変速機10を制御しエンジン始動可能ギア段への実際のアップシフトを実行し(ST7)、現在の制御周期を終了し、次の制御周期に移行する。
電子制御装置5は、ST4で算出したエンジン始動可能ギア段が現在の走行ギア段より高いギア段ではないと判定した場合(ST6:No)、現在の走行ギア段をそのまま維持した上で、モータ7を制御し、制御線L1におけるエンジンブレーキ力相当の回生制御を実行し(ST8)、現在の制御周期を終了し、次の制御周期に移行する。
電子制御装置5は、ST1にて車両2が走行中でないと判定した場合(ST1:No)、ST2にて回生制御を実行中でないと判定した場合(ST2:No)、ST3にてブレーキON操作中でないと判定した場合(ST3:No)、あるいは、ST5にてブレーキ開放操作がないと判定した場合(ST5:No)、現在の制御周期を終了し、次の制御周期に移行する。
以上で説明した実施形態に係る車両制御システム1によれば、エンジン6が発生させる動力とモータ7が発生させる動力とを変速機10で変速して車両2の駆動輪3に伝達可能である駆動装置4と、モータ7を制御して回生を実行可能であると共に、回生中に車両2に対する制動要求操作がオフされた際に、モータ7が発生させる動力によりエンジン6を回転させてこのエンジン6を始動可能な始動可能変速比(エンジン始動可能ギア段)に応じて変速機10による変速を実行する電子制御装置5とを備える。したがって、車両制御システム1は、回生中に車両2に対する制動要求操作がオフされた際に、電子制御装置5が始動可能変速比(エンジン始動可能ギア段)に応じて変速機10による変速を実行するので、エンジン6を始動する際の応答性を向上することができる。
なお、上述した本発明の実施形態に係る車両制御システムは、上述した実施形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された範囲で種々の変更が可能である。