JP5531408B2 - 汚染性評価方法、汚染性評価装置、光学部材の製造方法、光学積層体及びディスプレイ製品 - Google Patents
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Description
また、指紋付着性や指紋除去性の防汚性の評価を少しでも定量化しようとするディスプレイ用の光学部材における試みとしては、例えば、光学部材を評価する装置を用い、ヘイズの変化や、水滴やその他溶剤の接触角、反射率の変化で評価するものがあった。しかしながら、ヘイズや反射率の測定に用いる光は正反射光であり、この正反射光の光量は強いため、感度(分光器としてはS/N比)が低く、一度指紋によって汚染され、それを拭き取った後の残留している指紋等の微小異物が存在していても、うまく検出することができないという問題があった。つまり、正反射光を用いた装置では、正確な指紋付着、除去後の差異を定量化できないという課題があった。
また、この発明によれば、試験体の汚染度合いのみならず試験体の防汚性能(耐汚染性)の評価も可能となり、指紋付着による汚染においては、特に再現性よく、試験体の汚染度合いや、試験体の防汚性能(耐汚染性)の評価を行うことが可能となり、
また、この発明によれば、定量性、客観性の高い評価結果を得ることができるようになる。
また、この発明によれば、指紋付着による汚染においては、特に再現性よく、試験体の汚染度合いや、試験体の防汚性能(耐汚染性)の評価を行うことが可能となり、定量性、客観性の高い評価結果を得ることができるようになる。
2a、2b 設置台
3a、3b 積分球
4 散乱光検出器
5、5a、5b 試験体
6 アクリル板
10、11 汚染性評価装置
汚染性評価装置は、試験体の設置台と、設置台に設置された試験体に光を照射する光源と、試験体で反射又は透過した散乱光を集光する積分球と、集光した散乱光を検出して試験体の表面の汚染度合いを評価する散乱光検出器と、を有する。
なお、図3にΔE*abによる汚染度合いの定量評価の関係を表すグラフを示す。
図3において、X1→X2は指紋付着等の汚染が生じた場合を示し、X2→X3は指紋等の汚染を洗浄(拭き取り)した場合を示す。このとき、X1−X2間距離が小さいと、汚染防止性(指紋付着防止性)が高いことを示し、X1−X3間距離が小さいと、汚染からの回復度(指紋拭き取り性)が高いことを示す。
本発明の汚染性評価方法においては、試験体で反射又は透過した散乱光を検出して試験体の表面の汚染度合いを評価する。汚染性評価方法については、上記汚染性評価装置の説明の際にすでに言及している部分もあるので、説明の重複を避けるために、以下では、本発明の汚染性評価方法の応用的な評価について説明する。
本発明の光学部材の製造方法は、光学部材を得る工程と、光学部材の表面が人為的に汚染された後に、光学部材に光を照射し、光学部材で反射又は透過した散乱光を検出して光学部材の汚染度合いを評価する検査工程と、を有する。本発明の光学部材の製造方法は、上述した汚染性評価方法を製造工程中に含めたものである。その結果、試験体の表面の汚染度合い、耐汚染性、汚染からの回復度合い(清浄度の回復度合い)を、光学部材の製造工程中で評価できる。このため、例えば光学部材の製造工程の最後の段階で汚染性評価方法により検査工程を行えば、光学部材の品質管理又は性能確認を行うことができる。
光学部材を得る工程として、以下では、上記光学積層体を得るための工程を例として説明する。
上記光学積層体を得る工程は、通常、光透過性基材上にハードコート層形成用組成物を塗工する工程を有する。
上記光透過性基材を形成する材料としては、例えば、ポリエステル系(ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等)、セルロース系(セルローストリアセテート、セルロースジアセテート、セルロースアセテートブチレート等)、アクリル系(ポリメチルメタクリレート等)、ポリエーテルスルフォン、ポリスルフォン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアセタール、ポリエーテルケトン、ポリカーボネート等の熱可塑性樹脂が挙げられる。更に、脂環構造を有した非晶質オレフィンポリマー(Cyclo−Olefin−Polymer:COP)フィルムも挙げられる。これは、ノルボルネン系重合体、単環の環状オレフィン系重合体、環状共役ジエン系重合体、ビニル脂環式炭化水素系重合体樹脂などが用いられる基材である。例えば、日本ゼオン(株)製のゼオネックスやゼオノア(ノルボルネン系樹脂)、住友ベークライト(株)製のスミライトFS−1700(スミライトは登録商標)、JSR(株)製のアートン(変性ノルボルネン系樹脂)、三井化学(株)製のアペル(環状オレフィン共重合体、アペルは登録商標)、Ticona社製のTopas(環状オレフィン共重合体、Topasは登録商標)、日立化成(株)製のオプトレッツOZ−1000シリーズ(脂環式アクリル樹脂)等が挙げられる。
また、トリアセチルセルロースの代替基材として旭化成ケミカルズ(株)製のFVシリーズ(低複屈折率、低光弾性率フィルム)も好ましい。
上記硬化型樹脂としては、例えば、紫外線又は電子線により硬化する樹脂である電離放射線硬化型樹脂、電離放射線硬化型樹脂と溶剤乾燥型樹脂(塗工時に固形分を調整するために添加した溶剤を乾燥させるだけで、被膜となるような樹脂)との混合物、熱硬化型樹脂の三種類が挙げられ、好ましくは電離放射線硬化型樹脂が挙げられる。また、本発明の好ましい態様によれば、電離放射線硬化型樹脂又は熱硬化型樹脂を少なくとも含んでなる樹脂を用いることができる。なお、本明細書において、「樹脂」は、モノマー、オリゴマー等の樹脂成分も包含する概念である。
上記1の不飽和結合を有する化合物としては、例えば、エチル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、スチレン、メチルスチレン、N−ビニルピロリドン等が挙げられる。
また、上記2以上の不飽和結合を有する化合物としては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート等の多官能化合物と(メタ)アルリレート等の反応生成物(例えば多価アルコールのポリ(メタ)アクリレートエステル)等が挙げられる。なお、本明細書において「(メタ)アクリレート」は、メタクリレート及びアクリレートを指すものである。
上記熱可塑性樹脂としては一般的に例示されるものが利用される。上記溶剤乾燥型樹脂の添加により、塗布面の塗膜欠陥を有効に防止することができる。好ましい熱可塑性樹脂の具体例としては、例えば、スチレン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、ビニルエーテル系樹脂、ハロゲン含有樹脂、脂環式オレフィン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、セルロース誘導体、シリコーン系樹脂、及び、ゴム又はエラストマー等が挙げられる。
上記熱可塑性樹脂としては、通常、非結晶性であり、かつ有機溶剤(特に複数のポリマーや硬化性化合物を溶解可能な共通溶剤)に可溶な樹脂を使用することが好ましい。特に、成形性又は製膜性、透明性や耐候性の高い樹脂、例えば、スチレン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、脂環式オレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、セルロース誘導体(セルロースエステル類等)等が好ましい。
上記凹凸形成性微粒子としては、種類、大きさ、形の異なるものを何種類か適宜選択して用いることができる。一般的には、粒径が1μm以上20μm以下である、ポリスチレンビーズ、メラミンビーズ、アクリル(ポリメチルメタクリレートなど)ビーズ、アクリル−スチレンビーズ、ベンゾグアナミン−ホルムアルデヒドビーズ、ポリカーボネートビーズ、ポリエチレンビーズ等のプラスチックビーズや、シリカビーズが使用される。ビーズは、数種類を同時に使うこともでき、例えば、粒径が1〜20μm(好ましくは1〜10μm)である、アクリルビーズ等のプラスチックビーズと平均粒径が1〜3μmの不定形シリカビーズとを併用することができる。
上記ハードコート層形成用組成物の塗布後に、必要に応じて乾燥と紫外線硬化を行う。
上記紫外線源の具体例としては、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク灯、ブラックライト蛍光灯、メタルハライドランプ灯の光源が挙げられる。
上記紫外線の波長としては、190〜380nmの波長域を使用することができる。
上記電子線源の具体例としては、コッククロフトワルト型、バンデグラフト型、共振変圧器型、絶縁コア変圧器型、又は、直線型、ダイナミトロン型、高周波型等の各種電子線加速器が挙げられる。
上記表面調整層とは、該凹凸を有する防眩層の凹凸形状を、より好ましい形に調整するための層である。特に、防眩層においては、黒色の階調が不良であること(光が凹凸面で散乱するため、黒が灰色がかって見えてしまうこと)が課題となっており、表面調整層を形成することで、この課題を良好に改良することができる。ここで、黒色の階調が向上し、黒が艶のある黒に見えるような物性を、艶黒感と呼ぶ。
また、上記表面調整層形成用組成物は、上述した溶剤やレベリング剤を含有することが好ましい。
また、上記表面調整層の形成方法としては、上述したハードコート層と同様の方法が挙げられる。
また、上記防眩層は、単層であっても多層であってもよいが、その凹凸形状は、光学積層体の最表面の層の凹凸の平均間隔をSmとし、凹凸部の平均傾斜角をθaとし、凹凸の十点平均粗さをRzとした場合に(Sm、θa、Rzの定義は、JIS B0601 1994に準拠する)、Smが40μm以上600μm以下であり、θaが0.3度以上5.0度以下であり、Rzが0.3μm以上4.0μm以下であることが好ましい。
上記低屈折率層は、外部からの光(例えば蛍光灯、自然光等)が光学積層体の表面にて反射する際、その反射率を低くするという役割を果たす層である。これらの低屈折率層は、その屈折率が1.45以下、特に1.42以下であることが好ましく、1.35以下であることが最も好ましい。
また、低屈折率層の乾燥厚みは限定されないが、通常は30nm〜1μm程度の範囲内から適宜設定すれば良い。
また、塗膜の形成方法は、公知の方法に従えば良い。例えば、ハードコート層の形成で上述した各種方法を用いることができる。
得られた塗膜の硬化方法は、組成物の内容等に応じて適宜選択すれば良い。例えば、紫外線硬化型であれば、塗膜に紫外線を照射することにより硬化させれば良い。硬化処理のために加熱手段が利用される場合には、加熱により、例えばラジカルを発生して重合性化合物の重合を開始させる熱重合開始剤が添加されることが好ましい。
以上のようにして得られた光学積層体に例示される光学フィルムについて以下の検査工程を行う。すなわち、光学フィルムの表面が人為的に汚染された後に、光学フィルムに対して光を照射し、反射又は透過した散乱光を検出してこの光学フィルムの汚染度合いを評価する。このような評価は、光学フィルムの製造ラインにおいて自動で行ってもよいし、製造直後の光学フィルムを所定の頻度で製造ラインから採取し、この採取された光学フィルム(試験体)を別途評価してもよい。光学フィルムの表面の評価を、国際照明委員会(CIE)で規定されるL*a*b*カラーモデルにより行うことが好ましい旨等の評価手法の詳細については、上記汚染性評価方法及び汚染性評価装置において説明した原理・手法・装置等を利用できるので、ここでの説明は省略する。なお、上記検査工程においては、光学フィルムの人為的な汚染を行わずに、光学フィルムを得た直後の表面状態を評価してもよい。このような評価を行うことにより、得られた光学フィルムの表面状態(汚染度合い)を評価できるので、万が一不純物や汚染物が製造ラインに混入した場合においても、これら不純物や汚染物による不具合の発生を容易に検知できるようになる。
本発明の光学積層体は、表面が人為的に汚染された後の国際照明委員会(CIE)で規定されるΔE*abと、その後洗浄処理を施した後の国際照明委員会(CIE)で規定されるΔE*abとの差(汚染からの回復度)が1.5以下である。
上記汚染からの回復度が1.5を超えると、洗浄処理により汚染を取り除くことができた場合であっても、未汚染部分との色差が大きくなり実用的なディスプレイ製品を得ることができない。上記汚染からの回復度は、1.3以下であることが好ましく、1.0以下であることがより好ましい。
ここで、上記「汚染からの回復度」については、上述した本発明の汚染性評価方法や、本発明の光学部品の製造方法の検査工程において説明した原理・手法・装置等を利用できるので、ここでは、その説明は省略する。
上記耐汚染性が3.5を超えると、本発明の光学積層体を通して文字等の表示物を見た場合に、表示物がゆがんで見え、実用的なディスプレイ製品を得ることができない。上記耐汚染性は、2.5以下であることが好ましく、1.5以下であることがより好ましく、1.0以下であることが最も好ましい。
ここで、上記「耐汚染性」については、上述した本発明の汚染性評価方法や、本発明の抗学部品の製造方法の検査工程において説明した原理・手法・装置等を利用できるので、ここでは、その説明は省略する。
更に、本発明の光学積層体は、上述した汚染からの回復度と耐汚染性(指紋付着防止性)とを両立するものであってもよい。
このような本発明の光学積層体を備えるディスプレイ製品もまた、本発明の1つである。
本発明のディスプレイ製品は、上述した本発明の光学積層体を備えるため、表面の耐汚染性に優れ、また、汚染された場合であっても、回復性に優れたものとすることができる。
まず、下記材料を十分混合し、固形分40.5%の組成物として調製した。この組成物を孔径30μmのポリプロピレン製フィルターで濾過して防眩層形成用組成物を調製した。
ペンタエリスリトールトリアクリレート(PETA)(屈折率1.51)
2.20質量部
イソシアヌル酸変性ジアクリレート M215(日本化薬(株)製、屈折率1.51)
1.21質量部
ポリメチルメタクリレート(分子量75,000) 0.34質量部
光硬化開始剤;
イルガキュア184(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)
0.22質量部
イルガキュア907(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)
0.04質量部
透光性第一微粒子;
単分散アクリルビーズ(粒子径9.5μm、屈折率1.535)
0.68質量部
透光性第二微粒子;
不定形シリカインキ(平均粒子径1.5μm、固形分60%、シリカ成分は全固形分の15%) 0.64質量部
レベリング剤;
シリコーン系レベリング剤
0.02質量部
溶剤;
トルエン 5.88質量部
シクロヘキサノン 1.55質量部
アロニックスM315(商品名、東亞合成(株)製イソシアヌル酸のエチレンオキサイド3モル付加物のトリアクリレート) 10.4質量部
光硬化開始剤;
イルガキュア184(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)
1.49質量部
イルガキュア907(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)
0.41質量部
防汚剤;
UT−3971(日本合成化学工業(株)製)
(固形分の5%添加) 2.07質量部
溶剤;
トルエン 525.18質量部
シクロヘキサノン 60.28質量部
(試験体の汚染(指紋付着))
トリオレイン及び微粒子を含有する擬似指紋液(人工指紋液)を、500g荷重の加わる圧子(接触面は直径12mmφの円、人の指を想定しての径)により試験体上に押圧して、人工指紋液を試験体表面に付着させた。この付着方法により、指紋を定量的に試験体に付着させることが可能であり、本実験は、上記の付着条件にて、1mm2あたり、0.04mgの人工指紋を付着させた。
指紋付着処理前の試験体(リファレンス)と、指紋付着の処理を行った試験体を、それぞれ、しわ、たるみのない様に、ローラーにより粘着シート付き黒色アクリル板に、光学フィルム用のアクリル系粘着剤(日立化成工業社製、DA−1000)を用いてそれぞれ貼り付けた。そして、日本分光(株)製150mmφ積分球ユニットを搭載した同社製分光光度計V−650(測定波長範囲190nm〜900nm)により、各評価サンプルの分光拡散反射率を測定した。具体的には、拡散反射光の色度x、y値、及び輝度Y値を求め、このデータをa*b*L*値に変換し、リファレンスの試験体と指紋付着処理を行った試験体の色差(ΔE*ab)を求めることで、指紋の付着度合いを数値化、定量化した。なお、この色差が小さいほど汚染物質(この場合は指紋)防付着性が高いと言える。本発明のx、y、Y値、a*b*L*値、色差ΔE*abの定義は、国際照明委員会(CIE)の規定に準拠した。
(ΔE*abの結果)
1回目測定値 3.33
2回目測定値 3.39
3回目測定値 3.36
ヘイドン社製磨耗試験機TYPE Fの圧子部位に拭き取りアイテム(キムワイプ(登録商標))を巻きつけ、付着性を評価したサンプルに対し、500g加重、10cm幅×20往復させることで汚染物質を拭き取り、各試験体に洗浄処理を施した。
上記洗浄後、上記した汚染性評価の試験と同様にして分光光度計により分光拡散反射率、色差を求める作業を、同様の方法により調製した洗浄処理試験体について、合計3回繰り返し行った。その結果、洗浄処理を施した各試験体の表面における色差は、全てΔE*ab=0.66±0.05の範囲で、洗浄による回復度合いを再現よく定量評価できることが分かった。ΔE*abの3回の実際の測定結果を下記に示す。
(ΔE*abの結果)
1回目測定値 0.71
2回目測定値 0.61
3回目測定値 0.66
さらに、ΔEa*b*に着目し、{洗浄処理前の数値(平均値)−洗浄処理後の数値(平均値)}を分子に、洗浄処理前の数値(平均値)を分母にとり、さらに100倍することで、洗浄による清浄度回復率を求めたところ、80.36%であることが分かった。なお、通常、評価結果の数値のばらつきが大きい場合には、極端に大きい乃至小さい値による統計値への影響を軽減するため中央値を用いるが、本発明による評価方法は、数値のばらつきが小さいため、平均値を用いることで有意な清浄度回復度率を得ることができる。
(1)汚染度の目視評価(汚染処理後)
上述した方法で作製した3枚の試験体を準備し、実施例1の「(試験体の汚染(指紋付着))」と同様にして、この試験体に人為的な汚染処理を施した。この試験体の汚染度合いを、あらかじめ準備した評価指標見本と見比べることで人間の目(目視)により評価した。
(レベル1〜5の評価指標見本作製方法)
実施例1の「(試験体の汚染(指紋付着))」と同様の方法で、500g荷重の加わる圧子で防汚層に押圧し、防眩層に、1mm2あたり0.04mgの指紋汚染物を付着させた。ただし、用いた擬似指紋液の濃度を、以下のように変え、5段階の評価指標見本を作製した。
レベル1 レベル4の4倍濃度の擬似指紋液
レベル2 レベル4の3倍濃度の擬似指紋液
レベル3 レベル4の2倍濃度の擬似指紋液
レベル4 基本濃度の擬似指紋液
レベル5 擬似指紋液を付着させなかった
次に、実施例1の「(汚染物質の洗浄処理)」と同様にして、上記3枚の試験体に洗浄処理を施した。そして、洗浄処理後に、上記(1)の5段階の評価指標見本を用いた目視観察と同様の方法で、試験体の汚染からの回復度合いを評価した。得られた結果を表1に示す。
一方、本発明のように汚染性、汚染回復性を定量化し、この数値と官能評価を組み合わせることで、生産効率を大きく向上できると考えられる。
下記組成物と製造方法で4種類の凹凸形状を有さない平坦な表面を持つAR試験体(4〜7)を作製した。ここでは、ディスプレイ表面に好ましい汚染性回復度がどの程度のΔE*abであるかを評価した。汚染回復度を比較するため、試験体(4〜7)は、試験体自身の防汚性を4段階に変化させたものとした。厳しく評価するために、各試験体としては、凹凸表面を有さない平坦な面を持つAR積層体を用いた(凹凸形状がある表面は、表面が外光を散乱させるため、汚染度合いを判断しにくくなるからである。)。n数は3とした。
ハードコート用組成物
・ウレタンアクリレート(UV1700B;日本合成社製) 5重量部
・ポリエステルアクリレート(M9050;東亞合成社製) 5重量部
・重合開始剤(イルガキュア184;チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)
0.4重量部
・メチルエチルケトン 10重量部
・処理シリカゾル含有溶液(シリカゾル固形分20重量%「空隙を有する微粒子、溶液;
メチルイソブチルケトン」 14.3重量部
・ペンタエリスリトールトリアクリレート(PETA) 1.95重量部
・重合開始剤(イルガキュア127;チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)
0.1重量部
・防汚剤(フッ素系、メガファックRS:大日本インキ社製、固形分)
0.07重量部
・メチルイソブチルケトン 54.0重量部
・プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 29.5重量部
この組成物中の防汚剤は、固形分に対し1.5%である。
トリアセテートセルロース(TAC)フィルム(富士写真フィルム製、TF80UL、厚さ80μm)を用意し、このフィルムの表面にハードコート組成物を、湿潤重量20g/m2(乾燥重量10g/m2)塗布(バーコーティング)し、次いで、50℃にて乾燥することにより溶剤を除去した。その後、紫外線照射装置(フュージョンUVシステムジャパン(株))を用いて、照射線量50mJ/cm2で紫外線照射を行うことにより、組成物を硬化させて、10μmのハードコート層を形成させた。
次に、ハードコート層の表面に、低屈折率層用組成物を乾燥重量0.1g/m2塗布(バーコーティング)し、次いで、40℃にて乾燥することにより溶剤を除去した。その後、紫外線照射装置(フュージョンUVシステムジャパン(株))を用いて、照射線量200mJ/cm2で紫外線照射を行い光学積層体(試験体4)を製造した。膜厚は、反射率の極小値が波長550nm付近(膜厚0.10μm)になるように形成させた。
低屈折率層用組成物の防汚剤量を固形分に対して1.0%とした以外は、試験体4と同様にして試験体5を製造した。
低屈折率組成物の防汚剤量を固形分に対して0.3%とした以外は、試験体4と同様にして試験体6を製造した。
低屈折率組成物の防汚剤を添加しなかった以外は、試験体4と同様にして試験体7を製造した。
ΔE*abによる汚染からの回復度の定量
一度汚染されたものが、同じ洗浄方法でどのレベルまで回復するかを評価した。
各試験体4〜7に、実施例1の「(試験体の汚染(指紋付着))」と同様にして、擬似指紋液を付着させ、実施例1の「(汚染性評価の試験)」と同様に分光拡散反射率を測定した。次いで、実施例1の「(汚染物質の洗浄処理)」と同様の方法で汚染物質の洗浄処理を実施し、その分光拡散反射率を測定し、上記指紋液付着積層体との間の色差ΔE*abを求めた。測定においては、実施例1と同様に実施し、測定精度を確保した。各試験体とも3枚ずつ同様の測定を実施した。得られた結果を表2に示した。
汚染物質洗浄後の各試験体4〜7を、照度1000luxの下、各試験体を水平な台に設置し、その30cm上部、試験体から45度の方向から目視で観察し、汚れ残りのレベルを以下の基準に基づいて判断した。なお、反射防止膜になっているため、黒板に貼った状態で観察すると、汚れが残っていると未汚染部分と比較し、干渉色が異なるために判断が容易にできる。
○:汚染物が拭き取れていると同時に、未汚染部分との色の差が小さい(実用性あり)。
×:汚染物が拭き取れているが、未汚染部分と明らかに色が異なる(実用性なし)。
まず、下記材料を十分混合し、固形分40.5%の組成物として調製した。この組成物を孔径30μmのポリプロピレン製フィルターで濾過して防眩層形成用組成物を調製した。
紫外線硬化型樹脂;
ペンタエリスリトールトリアクリレート(PETA)(屈折率1.51)
100質量部
セルロースアセテートプロピオネート(分子量50000)
1.25質量部
光硬化開始剤;
イルガキュア184(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)
5質量部
イルガキュア907(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)
1質量部
透光性微粒子;
単分散アクリル-スチレンビーズ(粒子径3.5μm、屈折率1.54)
8.1質量部
フッ素系 メガファックRS(大日本インキ社製) 1.73質量部
(固形分の1.5%)
溶剤;
トルエン 134質量部
メチルイソブチルケトン 34質量部
トリアセテートセルロース(TAC)フィルム(富士写真フィルム製、TF80UL、厚さ80μm)を用意し、このフィルムの表面に防眩層形成用組成物を、乾燥重量8g/m2)塗布(バーコーティング)し、次いで、70℃にて乾燥することにより溶剤を除去した。その後、紫外線照射装置(フュージョンUVシステムジャパン(株))を用いて、照射線量100mJ/cm2で紫外線照射を行うことにより、組成物を硬化させて、防眩性積層体(試験体8)を作製した。この凹凸形状は、Sm:108μm、Rz:0.61μm、θa:0.51°であった。
試験体9:防汚剤添加量を、固形分の1.0%とした。
試験体10:防汚剤添加量を、固形分の0.3%とした。
防汚剤として、フッ素系防汚剤「オプツールDAC(ダイキン工業製)」を用いた以外は、実施例2の試験体4〜7と同様に5種類の平面な表面のAR試験体(11〜15)を作製した。ここでは、どの程度の耐汚染性(指紋付着防止性、ΔE*abで評価)を有すると、ディスプレイ用表面に好ましいかを測定した。ただし、防汚剤の添加量は、以下の通りである。
試験体11:防汚剤添加量を、固形分に対して1.3%とした。
試験体12:防汚剤添加量を、固形分に対して0.7%とした。
試験体13:防汚剤添加量を、固形分に対して0.3%とした。
試験体14:防汚剤添加を添加しなかった。
試験体15:低屈折率組成物に防汚剤を添加しなかったこと以外は、試験体11と同様に光学積層体を作製し、低屈折率層上に、ノベックEGC−1720(3M社製、固形分0.1%、ハイドロフルオロエーテル希釈)を膜厚約10nmで塗布し、次いで110℃×1分にて溶剤を乾燥、及び、塗膜を硬化させて防汚層を積層した。なお、防汚層の膜厚は、塗布前と後に、白色干渉式精密顕微鏡(ZygoNewView6000シリーズ、Zygo社製)で観察し確認した。
ΔE*abによる指紋付着防止性の定量
各試験体11〜15に、実施例1の「(試験体の汚染(指紋付着))」と同様にして、擬似指紋液を付着させ、試験体のリファレンスと、指紋液を付着させた試験体ともに、実施例1の「(汚染性評価の試験)」と同様に分光拡散反射率を測定し、色差ΔE*abを測定した。測定においては、実施例1と同様に実施し、測定精度を確保した。各試験体とも3枚ずつ同様の測定を実施した。得られた結果を表4に示した。
次に、各試験体11〜15を、1280×1024ピクセルのディスプレイモニターに、光学フィルム用アクリル系粘着剤を用いて貼り、指紋付着部分の下に、MS明朝体、12ポイントの大きさで“あ”文字を表示し、汚れ度合いによって、読み取りやすさをディスプレイから約30cm離れたところから目視で以下の基準に基づいて判断した。この判断は、照度1000lux下で実施した。
○:文字がほぼゆがみなく見える。製品として使用できるレベル。
×:文字がゆがんで見える。製品として使用できないレベル。
防汚剤を、フッ素系防汚剤「オプツールDAC」(ダイキン工業製)に変更し、その添加量を下記の通りとした以外は、実施例2の試験体8〜10と同様に表面に凹凸形状を有する3種類の積層体を製造した。その後実施例1と同様にして試験体16〜18を得た。
得られた試験体16〜18について、試験体11〜15と同様に、ディスプレイ表面に好ましい耐汚染性(指紋付着防止性)がどの程度のΔE*abであるかを評価した。得られた結果を表5に示した。なお、試験体16〜18は、指紋付着防止性を比較するため、試験体自身の防汚性を3段階に変化させたものである。
試験体17:防汚剤添加量を、固形分の0.7%とした。
試験体18:防汚剤添加量を、固形分の0.1%とした。
Claims (5)
- 試験体に光を照射し、該試験体で反射又は透過した散乱光を検出して前記試験体の表面の汚染度合いを評価する汚染性評価方法であって、
前記試験体の表面が、人為的に汚染されており、前記人為的な汚染が、指紋付着による汚染であり、
前記試験体は、ディスプレイの最表面に用いられる光学部材であり、
前記試験体の表面の汚染度合いの評価を、国際照明委員会(CIE)で規定されるL*a*b*カラーモデルにより行い、
前記試験体の表面の汚染度合いを評価した後、該試験体の表面を洗浄し、該試験体の汚染度合いを再び評価することにより、前記表面の汚染からの回復度合いを評価する
ことを特徴とする汚染性評価方法。 - 光学部材を得る工程と、前記光学部材の表面が人為的に汚染された後に、該光学部材に光を照射し、該光学部材で反射又は透過した散乱光を検出して前記光学部材の汚染度合いを評価する検査工程と、を有し、
前記人為的な汚染が、指紋付着による汚染であり、
前記光学部材は、ディスプレイの最表面に用いられる光学部材であり、
前記光学部材の表面の汚染度合いの評価を、国際照明委員会(CIE)で規定されるL*a*b*カラーモデルにより行い、
前記検査工程において、前記光学部材の表面の汚染度合いを評価した後、該光学部材の表面を洗浄し、該光学部材の汚染度合いを再び評価することにより、前記表面の汚染からの回復度合いを評価する
ことを特徴とする光学部材の製造方法。 - 前記光学部材が、光学フィルムであることを特徴とする請求項2に記載の光学部材の製造方法。
- 表面が人為的に汚染された後の国際照明委員会(CIE)で規定されるΔE*abと、その後洗浄処理を施した後の国際照明委員会(CIE)で規定されるΔE*abとの差(汚染からの回復度)が1.5以下であることを特徴とする請求項2又は3記載の光学部材の製造方法。
- 表面が人為的に汚染された後の国際照明委員会(CIE)で規定されるΔE*abによって表される耐汚染性が3.5以下であることを特徴とする請求項2、3又は4記載の光学部材の製造方法。
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