JP5528381B2 - 自動変速機の制御装置 - Google Patents

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Description

本発明は、自動変速機に入力されるトルク情報を処理する自動変速機の制御装置に関する。
従来、特許文献1に記載されているように、エンジン負荷変化率またはトルクセンサ値変化率が所定値以上のときに、トルクセンサ信号値に基づく制御からエンジン負荷に基づく制御に切り換える技術が知られている。
特開平5−87219号公報
しかしながら、エンジン負荷に基づく制御からトルクセンサ信号値に基づく制御へ切り換えるエンジン負荷変化率の閾値及びトルクセンサ値変化率の閾値の設定については何ら示されておらず、改善の余地があった。
例えば、入力トルクが増加した場合に、トルクセンサ値変化率が所定値以上となったときにトルクセンサ信号値に基づく制御からエンジン負荷に基づく制御に切り替えていたのでは、自動変速機の制御の応答性を確保できるとは限らない場合がある。つまり、実際に入力トルクが変化した後でなければトルクセンサ値の変化率は所定値以上にはならず、実際に入力トルクが変化した後にエンジン負荷に基づく制御に切り替えたとしても制御の応答遅れにより、例えばクラッチ容量が不足する可能性がある。また、エンジン負荷変化率が所定値以上か否かでエンジン負荷に基づく制御とトルクセンサ信号値に基づく制御との切り替えを判断した場合、エンジン負荷に基づく制御からトルクセンサ信号値に切り替えるまでの時間が長くなり、実際のトルクに対して誤差の大きいエンジン負荷に基づく制御を行う期間が長くなることで制御精度が劣るおそれがある。
本発明は、上記問題に着目してなされたもので、精度の高い入力トルク情報に基づいて制御可能な自動変速機の制御装置を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明では、自動変速機への入力トルクに関する入力トルク情報に基づいて自動変速機の制御を行う制御手段と、車両の走行状態に基づいて前記入力トルクを予測する入力トルク予測手段と、自動変速機内に設けられ前記入力トルクを検出する入力トルク検出手段と、前記自動変速機への入力トルクの変化率の変化率が負か否かを判断する判断手段と、前記入力トルク予測手段により予測された入力トルク予測値と、前記入力トルク検出手段により検出された入力トルク実測値とに基づいて前記入力トルク情報を生成する入力トルク情報生成手段と、を備え、前記入力トルク情報生成手段は、自動変速機への入力トルクの変化率の変化率が負でないと判断された場合であって、かつ、前記入力トルク予測値の変化率が第1所定値よりも大きい場合は前記入力トルク予測値に基づいて前記入力トルク情報を生成し、前記自動変速機への入力トルクの変化率の変化率が負であると判断された場合であって、かつ、前記入力トルク実測値の変化率が前記第1所定値よりも大きい第2所定値以下である場合は前記入力トルク実測値に基づいて前記入力トルク情報を生成する切り替え手段を有することを特徴とする。

自動変速機への入力トルクの変化率の変化率が負でないと判断された場合は、入力トルク予測値の変化率が第1所定値よりも大きいときに入力トルク予測値に基づいて入力トルク情報を生成することにより、自動変速機への入力トルクの増加時に自動変速機の制御応答遅れが生じることを抑制することができる。
一方、自動変速機への入力トルクの変化率の変化率が負であると判断された場合は、自動変速機への入力トルクの増加が終了間近と判断でき、また、入力トルク予測値の変化率が第1所定値よりも大きい場合であっても、入力トルク実測値の変化率が第2所定値以下となったときは、入力トルク予測値に基づく入力トルク情報の生成から入力トルク実測値に基づく入力トルク実測値に基づいて入力トルク情報を生成することで、切り替え時のハンチングを抑制しながら精度の高い入力トルク情報を生成することができる。
実施例1の自動変速機の制御装置のシステム図である。 実施例1の入力トルク情報生成処理を表すフローチャートである。 実施例1の入力トルク情報生成処理における入力トルク信号切り替え処理を表すマップである。 比較例における入力トルク情報に基づいて制御した場合の切り替えタイミングを表すタイムチャートである。 実施例1においてΔΔTengが負、かつ、ΔTengがTからFに変化後、ΔT1がTからFに変化した場合における入力トルク信号切り替え処理を表すタイムチャートである。 比較例における入力トルク情報に基づいて制御した場合の入力トルク情報を表すタイムチャートである。 実施例1においてΔΔTengが負、かつ、ΔTengがTからFに変化する前に、ΔT1がTからFに変化した場合における入力トルク信号切り替え処理を表すタイムチャートである。 入力トルクが上昇傾向から一定傾向に変化するときの入力トルク信号の変化を表すタイムチャートである。 ΔΔTengが正であって、入力トルク予測値Tengの変化が一定傾向から上昇傾向に変化し始める状態においてT1からTengに切り替えるときのタイムチャートである。 入力トルクが一定傾向から上昇傾向に変化するときの入力トルク信号の変化を表すタイムチャートである。 実施例2においてΔΔTengが負であって、かつ、ΔTengがTからFに変化後、ΔT1がTからFに変化した場合における入力トルク信号切り替え処理を表すタイムチャートである。 実施例2においてΔΔTengが正であって、かつ、ΔTengがTからFに変化後、ΔT1がTからFに変化した場合における入力トルク信号切り替え処理を表すタイムチャートである。
図1は実施例1の自動変速機の制御装置のシステム図である。エンジン1は、変速機入力軸2にトルクを伝達する。自動変速機3は、変速機入力軸2から伝達されたトルクを適宜変速して変速機出力軸4に出力する。この出力されたトルクは、デファレンシャルギア5等を介して駆動輪6に伝達される。
エンジン1は、エンジンコントローラ10により運転者のアクセルペダル開度等に基づいてスロットル開度を制御する。これより、エンジン回転数及びエンジン出力トルクを制御する。エンジンコントローラ10内には、燃料噴射量及び吸入空気量のマップに基づいてエンジン1が出力するトルクである入力トルク予測値Tengを推定するエンジントルク推定部10a(入力トルク予測手段)を有する。
自動変速機3は、例えば有段式自動変速機であり、複数の遊星歯車組と摩擦締結要素を有する。これら摩擦締結要素の締結圧を制御し、走行状態に応じて最適な変速段を達成する。自動変速機3の変速段は、ATコントローラ20により運転者のアクセルペダル開度や車速に基づいて変速段を決定し、対応する摩擦締結要素の締結圧制御を行う。
変速機入力軸2には、自動変速機3への入力トルクを検出するトルクセンサ21(入力トルク検出手段)を有し、検出されたトルク信号をATコントローラ20に出力する。尚、実施例1のトルクセンサ21は、変速機入力軸2の捩れ量を直接検出する磁歪式トルクセンサを採用しているが、他の形式のトルクセンサであってもよい。また、変速機入力軸2に取り付けた例を示したが、変速機出力軸4や他の回転要素等に設定してもよい。
ATコントローラ20は、エンジンコントローラ10とCAN通信線により接続されており、ATコントローラ20内では、エンジンコントローラ10において演算された入力トルク予測値Tengが所定周期で読み込まれる。ATコントローラ20内には、自動変速機3に入力されるトルク(以下、入力トルク情報と記載する。)を演算する入力トルク情報生成部20a(入力トルク情報生成手段)を有し、トルクセンサ21により検出された入力トルク実測値T1と、CAN通信線を介して入力された入力トルク予測値Tengとに基づいて、入力トルク情報を生成する。
ATコントローラ20は、入力トルク情報生成部20aにおいて生成された入力トルク情報に基づいて、摩擦締結要素に供給する締結圧やライン圧等を必要に応じた量に適宜制御することで、無駄な油圧力による燃費の悪化等を回避する。
ここで、入力トルク予測値Tengと入力トルク実測値T1との性質の異なる点について説明する。入力トルク予測値Tengは、エンジン1において実際に出力されるトルクをスロットル開度等に基づいて演算推定する値である。よって、実際に自動変速機3内に入力されるトルクよりも位相的に早い値であり、応答性に優れた値を出力する。しかしながら、エンジン1と自動変速機3との間の外乱要素等を考慮すると、高い精度を有するとは言い難い。一方、入力トルク実測値T1は、変速機入力軸2において実際に検出されるシャフト捩れ量を検出した値である。よって、実際に自動変速機3内に入力されるトルクよりも位相的に遅い値である。しかしながら、直接的に変速機入力軸2に作用するトルクを検出していることから、高い精度を有する。すなわち、入力トルク予測値Tengは、入力トルク実測値T1よりも応答性に優れるが、精度は劣る。言い換えると、入力トルク実測値T1は、入力トルク予測値Tengよりも精度に優れるが、応答性に劣る。
これらの特性を踏まえ、入力トルクが大きく変化するような場面では、入力トルク予測値Tengに基づいて入力トルク情報を生成することが好ましく、入力トルクが安定している場面では、入力トルク実測値T1に基づいて入力トルク情報を生成することが好ましい。しかしながら、これらの切り替えタイミングによっては、入力トルク情報を適切に生成することが困難な場面があった。以下、入力トルク予測値Tengと入力トルク実測値T1とを切り替える際の課題について比較例を用いて説明する。
図4は、比較例における入力トルク情報に基づいて制御した場合の切り替えタイミングを表すタイムチャート、図6は、比較例における入力トルク情報に基づいて制御した場合の入力トルク情報を表すタイムチャートである。この比較例は、入力トルク予測値Tengの変化率ΔTeng及び/又は入力トルク実測値T1の変化率ΔT1が所定値Aを下回ったときに、TengからT1に切り替えるように構成したものである。以下、比較例のうち、ΔTengが所定値Aを下回った場合にTengからT1に切り替える場合を第1パターンとし、ΔTengが所定値Aを下回り、かつ、ΔT1が所定値Aを下回った場合にTengからT1に切り替える場合を第2パターンとして説明する。
(第1パターンにおける課題)
ΔTengが所定値Aを下回るとき、すなわち、入力トルク予測値Tengの変化率が大きな値から小さな値に変化したときに入力トルク予測値T1に切り替えると、入力トルク実測値T1の応答性は低いことからΔT1は未だ大きい状態であると考えられる(図6参照)。この状態でT1に切り替えると、一旦入力トルク情報は低下した後、再度上昇するというハンチング状態を引き起こすおそれがある。このように入力トルク情報がハンチングすると、この情報を用いて制御を行う油圧機器等の制御性に影響を与えてしまい、適正な制御を行えないという問題がある。
(第2パターンにおける課題)
上記第1パターンにおける課題を解決すべく、ΔTengが所定値Aを下回り、更に、ΔT1が所定値Aを下回った場合にTengからT1に切り替えることが考えられる。入力トルク予測値Tengと入力トルク実測値T1の両方の変化率が小さくなった段階であれば、ハンチングは生じないと考えられるからである。しかしながら、入力トルク予測値Tengはその応答性が高いことに起因して、比較的大きな値までオーバーシュートし、その後、安定した値に戻る性質を有する。一方、入力トルク実測値T1はその応答性が遅いことに起因して、なかなか変化率が小さくならない。よって、必要以上に長い期間に亘って入力トルク予測値Tengが使用されてしまい、上述したようにオーバーシュートした値を用いて入力トルク情報を生成してしまうことから精度の悪化を招く。
そこで、実施例1では、ΔTengが第1所定値以下となり、かつ、ΔT1が第1所定値よりも大きな第2所定値以下となったときに、TengからT1へ切り替えることとした。以下、実施例1の入力トルク情報生成処理について説明する。
(入力トルク情報生成処理)
図2は実施例1の入力トルク情報生成処理を表すフローチャートである。本制御フローは所定周期で繰り返し実行される。
ステップS1では、入力トルク予測値Tengを読み込む。
ステップS2では、入力トルク予測値Tengの変化率ΔTengを算出する。
ステップS3では、ΔTengの変化率ΔΔTengの符号を判定する。
ステップS4では、入力トルク実測値T1を読み込む。
ステップS5では、入力トルク実測値T1の変化率ΔT1を算出する。
ステップS6では、入力トルク信号切り替え処理を実行する。このトルク信号切り替え処理については後述する。
ステップS7では、入力トルク信号が切り替えられた直後か否かを判断し、直後のときはステップS8に進み、それ以外のときはステップS9に進む。
ステップS8では、時定数を「大」に設定する。これは、入力トルク予測値Tengと入力トルク実測値T1との間に乖離がある場合、切り替えた値をそのまま出力すると、急激な入力トルク変動があったと誤認識するおそれがあることから、大きな時定数を設定し、信号切り替えに伴う急激な変化をなまらせるものである。
ステップS9では、時定数を「小」に設定する。これは、切り替え直後にステップS8において信号を大きくなまらせた後は、ある程度応答よくT1に収束させる必要があることから、時定数を小さくすることで収束性を高める処理を行なうものである。
ステップS10では、読み込まれた入力トルク実測値T1に安全率を掛け、入力トルク実測値T1よりも大き目の値を算出する。すなわち、実際に入力されているトルクよりもある程度大き目の値を算出しておけば、他の制御処理において高めの入力トルク情報に基づいた演算が行なわれ、摩擦締結要素のスリップ等を回避できるからである。
ステップS11では、ステップS8〜S10においてそれぞれ算出された入力トルク情報のうち、最大値を選択する。そして、ステップS12において、今回の制御フローにおける生成された入力トルク情報としてステップS11において選択された値を出力する。
(トルク信号切り替え処理)
図3は、実施例1の入力トルク情報生成処理における入力トルク信号切り替え処理を表すマップである。このマップにおいて、左端は入力トルク予測値Tengの変化率の変化率であるΔΔTengの符号を表す。その右隣は入力トルク予測値変化率ΔTengが第1所定値よりも大きいときをT、第1所定値以下のときをFとして表す。その右隣は入力トルク実測値変化率ΔT1が第1所定値よりも大きな第2所定値よりも大きいときをT、第2所定値以下のときをFとして表す。左端は上記情報に基づいた判断結果を表し、判断の結果、入力トルク予測値Tengを使用する場合はTengと、入力トルク実測値T1を使用する場合はT1として表す。
(ΔΔTengが負であって、ΔTengがTからFに変化後、ΔT1がTからFに変化した場合における作用)
次に、上記制御フローの作用について説明する。図5は実施例1においてΔΔTengが負、かつ、ΔTengがTからFに変化後、ΔT1がTからFに変化した場合における入力トルク信号切り替え処理を表すタイムチャートである。このタイムチャートにおける時刻t=0の状態は、入力トルク予測値Tengを用いて入力トルク信号が生成されており、入力トルク予測値Tengの変化が上昇傾向から一定傾向に変化し始める状態を表す。
時刻t1において、ΔTengが第1所定値以下となると、ΔTengはTからFへと切り替えられる。このとき、ΔT1は第2所定値よりも大きな値であるため、Tであり、判断結果はTengとなる。よって、入力トルク信号が切り替えられることはない。
時刻t2において、ΔT1が第2所定値以下となると、ΔT1はTからFへと切りかえられる。このとき、ΔTengは既にFであることから、判断結果はT1となる。よって、入力トルク信号がTengからT1に切り替えられる。このとき、ステップS8,S9によって位相が遅れた信号が入力トルク情報として出力される。
ここで、上記実施例の作用による効果について、比較例と対比して説明する。図6は入力トルクが上昇傾向から一定傾向に変化するときの入力トルク信号の変化を表すタイムチャートである。
まず、ΔTengが第1所定値以下となった段階でTengからT1へ切り替える第1パターンの場合について説明する。この場合、図6のタイムチャートに示すように、T1の変化率は十分に小さくなっておらず、上昇傾向にあることから、入力トルク信号がハンチングするおそれがある。
次に、ΔTengが第1所定値以下となり、かつ、ΔT1も第1所定値以下となった場合に切り替える第2パターンの場合について説明する。この場合、図6のタイムチャートに示すように、T1の変化率は十分に小さくなっているが、それまでにTengがオーバーシュートした値を出力しており、この分だけ入力トルク信号の精度が悪化する。
これに対し、実施例1では、Tengが第1所定値以下となり、かつ、T1が第1所定値よりも大きな第2所定値以下となったときに入力トルク信号を切り替えているため、切り替えに伴うハンチングを抑制し、かつ、切り替えが遅れることによる入力トルク信号の精度悪化を抑制することができる。
(ΔΔTengが負であって、ΔTengがTからFに変化する前に、ΔT1がTからFに変化した場合における作用)
図7は実施例1においてΔΔTengが負、かつ、ΔTengがTからFに変化する前に、ΔT1がTからFに変化した場合における入力トルク信号切り替え処理を表すタイムチャートである。このタイムチャートにおける時刻t=0の状態は、入力トルク予測値Tengを用いて入力トルク信号が生成されており、入力トルク予測値Tengの変化が上昇傾向から一定傾向に変化し始める状態を表す。
時刻t1において、ΔT1が第2所定値以下となると、ΔT1はTからFへと切り替えられる。この場合は、ΔTengの状態に関わらず入力トルク信号がTengからT1に切り替えられる。
ここで、上記実施例の作用による効果について、比較例と対比して説明する。図8は入力トルクが上昇傾向から一定傾向に変化するときの入力トルク信号の変化を表すタイムチャートである。
まず、ΔT1が第2所定値以下となり、かつ、ΔTengが第1所定値以下となった段階でTengからT1に切り替える第3パターンの場合について説明する。この場合、図8のタイムチャートに示すように、T1の変化率が十分に小さくなっているにも関わらずT1を使用しているため、オーバーシュートした値を出力しており、この分だけ入力トルク信号の精度が悪化する。
これに対し、実施例1では、T1が第2所定値以下となった場合には、ΔTengの大きさに関わらずTengからT1に切り替えるため、オーバーシュートした値の使用を抑制するこができ、入力トルク情報の精度を向上できる。尚、ΔT1が小さければ、ハンチングのおそれもないことから、問題は無い。
ここで、ΔΔTengが正の場合と負の場合とに分けた理由について説明する。図9はΔΔTengが正であって、入力トルク予測値Tengの変化が一定傾向から上昇傾向に変化し始める状態においてT1からTengに切り替えるときのタイムチャート、図10は入力トルクが一定傾向から上昇傾向に変化するときの入力トルク信号の変化を表すタイムチャートである。
まず、ΔT1がFからTに切り替わったときにT1からTengに切り替える第4パターンの場合、応答性が悪いT1が変化した後にTengに切り替えることになり、そもそも応答性を確保したいがために切り替えるという目的を達成できない。これを解決するために、ΔΔTengの符号を確認し、正のときは入力トルク予測値Tengを選択し、負のときは入力トルク実測値T1を選択するものである。
以上説明したように、実施例1の自動変速機の制御装置にあっては、下記に列挙する作用効果を得ることができる。
(1)自動変速機3への入力トルクに関する入力トルク情報に基づいて自動変速機3の制御を行うATコントローラ20(制御手段)と、車両の走行状態に基づいて入力トルクを予測するエンジントルク推定部10a(入力トルク予測手段)と、自動変速機3内に設けられ入力トルクを検出するトルクセンサ21(入力トルク検出手段)と、入力トルク予測値Tengの変化率の変化率ΔΔTengが負か否かを判断するステップS3(判断手段)と、エンジントルク推定部10aにより予測された入力トルク予測値Tengと、トルクセンサ21により検出された入力トルク実測値T1とに基づいて入力トルク情報を生成する入力トルク情報生成部20a(入力トルク情報生成手段)と、を備え、入力トルク情報生成部20aは、ΔΔTengが負でないと判断された場合であって、かつ、入力トルク予測値の変化率が第1所定値よりも大きい場合は入力トルク予測値Tengに基づいて入力トルク情報を生成し、ΔΔTengが負であると判断された場合であって、かつ、入力トルク実測値T1の変化率ΔT1が第2所定値以下の場合は、入力トルク実測値T1に基づいて入力トルク情報を生成するステップS6(切り替え手段)を有する。
すなわち、ΔΔTengが負でないと判断された場合は、ΔTengが第1所定値よりも大きいときに入力トルク予測値Tengに基づいて入力トルク情報を生成することにより、自動変速機3への入力トルクの増加時に自動変速機3の制御応答遅れが生じることを抑制することができる。
一方、ΔΔTengが負であると判断された場合は、自動変速機3への入力トルクの増加が終了間際と判断でき、また、入力トルク予測値の変化率ΔTengが第1所定値よりも大きい場合であっても、入力トルク実測値の変化率が第2所定値以下となったときは、入力トルク予測値Tengに基づく入力トルク情報の生成から入力トルク実測値T1に基づく入力トルク情報の生成に切り替えたとしてもハンチングは起こりにくいと判断できる。したがって、これらの条件が成立したときには入力トルク実測値T1に基づいて入力トルク情報を生成することで、切り替え時のハンチングを抑制しながら精度の高い入力トルク情報とすることができる。
(2)第1所定値よりも第2所定値が大きい。すなわち、第1所定値を、自動変速機3への入力トルクの増加時にTengに基づく入力トルク情報の生成へ速やかに切り替えるために低めの値に設定し、第2所定値を、第1所定値よりも大きい値であってトルクセンサ信号に基づく入力トルク情報の生成へ切り替えるときにハンチングが生じにくい値を設定することで、入力トルク予測値Tengに基づく入力トルク情報の生成からトルクセンサ信号に基づく入力トルク情報の生成への復帰を早めることができ、精度の高い入力トルク情報を生成することができる。
(3)入力トルク情報生成部20aは、入力トルク予測値Tengに基づく入力トルク情報の生成から、入力トルク実測値T1に基づく入力トルク情報の生成へ切り替えるときは、入力トルク情報を徐々に変化させるステップS8及びステップS9(緩変化手段)を有する。
すなわち、緩やかに信号を変化させることで、入力トルク予測値Tengと入力トルク実測値T1との間に乖離がある場合であっても、急激な入力トルク変動があったと誤認識することを抑制できる。特に、TengからT1に切り替えるときは時定数により徐々に変化させることで、早めに入力トルク実測値T1に切り替えたとしても、入力トルク情報がT1と等しくなる時点ではトルクセンサ信号の増加はなく、ハンチングすることなくトルクセンサ値への切り替えができる。
次に、実施例2について説明する。基本的な構成は実施例1と同じであるため、異なる点についてのみ説明する。実施例1では、第1所定値と第2所定値を異なる値とし、第1所定値よりも第2所定値のほうが大きな値として設定した。これに対し、実施例2では、第1所定値と第2所定値とを同じ値である所定値Aとした点が異なる。
この実施例2にあっても、入力トルク推定値Tengの変化率の変化率ΔΔTengが負であって、かつ、入力トルク実測値T1の変化率ΔT1が所定値A以下の場合に入力トルク実測値T1に切り替えて入力トルク情報を生成する(図11参照)。入力トルク実測値T1の変化率ΔT1が所定値A以下となったときは、入力トルク実測値T1に基づく入力トルク情報の生成に切り替えたとしてもハンチングは起こりにくいと判断できる。したがって、これらの条件が成立したときは入力トルク実測値T1に基づいて入力トルク情報を生成することで、入力トルク推定値Tengの変化率ΔTengよりも入力トルク実測値T1の変化率ΔT1が小さくなる状態において、切り替え時のハンチングを抑制しながら精度の高い入力トルク情報とすることができる。
一方、入力トルク推定値Tengの変化率の変化率ΔΔTengが正であって、かつ、入力トルク予測値Tengの変化率が所定値Aよりも大きい場合は入力トルク予測値Tengに切り替えて入力トルク情報を生成する(図12参照)。これにより、そもそも応答性が要求される場面において、素早く入力トルク予測値Tengを使用することができ、精度の高い入力トルク情報を生成することができる。尚、所定値Aを適宜調整し、例えば実施例1における第1所定値と第2所定値との略中間の値に設定することで精度の悪化を抑制することができる。
以上、本発明の自動変速機の制御装置について実施例1に基づき説明したが、上記実施例に限られず、他の構成を備えたものでも本発明を適用できる。
実施例では、有段式自動変速機の油圧制御に入力トルク情報を用いる例を示したが、ベルト式無段変速機を搭載した車両の場合には、ベルト挟圧力の制御等においても適用できる。
実施例では、入力トルク予測値の演算において、燃料噴射量と吸入空気量のマップから演算する例を示したが、その他のパラメータを用いてもよいし、マップではなく演算によって予測してもよい。
実施例では、自動変速機への入力トルクの変化率の変化率の符号を判定するにあたり、入力トルク予測値Tengの変化率の変化率ΔΔTengを用いた例を示したが、入力トルク実測値の変化率の変化率ΔΔT1を用いて判定することとしてもよい。また、入力トルク実測値の変化率ΔT1が第2所定値より大きい状態から小さい状態に変化したときを入力トルクの変化率の変化率の符号が負と判定するようにしてもよい。符号が負でなければ、ΔT1が大きい状態から小さい状態には変化しないからである。これは、入力トルク予測値についても同じである。
実施例では、緩変化手段として、時定数を「大」から「小」に切り替えることで信号の急変を抑制する構成としたが、時定数を所定の勾配で徐々に変化させる構成であってもよい。
1 エンジン
2 変速機入力軸
3 自動変速機
4 変速機出力軸
10 エンジンコントローラ
10a エンジントルク推定部
20 ATコントローラ
20a 入力トルク情報生成部
21 トルクセンサ

Claims (2)

  1. 自動変速機への入力トルクに関する入力トルク情報に基づいて自動変速機の制御を行う制御手段と、
    車両の走行状態に基づいて前記入力トルクを予測する入力トルク予測手段と、
    自動変速機内に設けられ前記入力トルクを検出する入力トルク検出手段と、
    前記自動変速機への入力トルクの変化率の変化率が負か否かを判断する判断手段と、
    前記入力トルク予測手段により予測された入力トルク予測値と、前記入力トルク検出手段により検出された入力トルク実測値とに基づいて前記入力トルク情報を生成する入力トルク情報生成手段と、
    を備え、
    前記入力トルク情報生成手段は、自動変速機への入力トルクの変化率の変化率が負でないと判断された場合であって、かつ、前記入力トルク予測値の変化率が第1所定値よりも大きい場合は前記入力トルク予測値に基づいて前記入力トルク情報を生成し、前記自動変速機への入力トルクの変化率の変化率が負であると判断された場合であって、かつ、前記入力トルク実測値の変化率が前記第1所定値よりも大きい第2所定値以下である場合は前記入力トルク実測値に基づいて前記入力トルク情報を生成する切り替え手段を有することを特徴とする自動変速機の制御装置。
  2. 請求項1に記載の自動変速機の制御装置において、
    前記入力トルク情報生成手段は、前記入力トルク予測値に基づく前記入力トルク情報の生成から、前記入力トルク実測値に基づく前記入力トルク情報の生成へ切り替えるときは、該入力トルク情報を徐々に変化させる緩変化手段を有することを特徴とする自動変速機の制御装置。
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