JP5528140B2 - 表皮一体発泡成形品の表皮 - Google Patents
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ところが、皮革製表皮片921はファブリック表皮片951などと比較して伸び率が小さくて硬い。この皮革製表皮片921の裏面にウレタンスラブ等の軟らかなスラブシート922を配して袋状表皮9に縫製すると、図12のごとく、縫目ラインstが蛇行mしたり皺vになったりする不具合が出易くなる。袋状表皮9は裏返し状態で縫製されるが(図13のイ)、その後、該袋状表皮9を表返しにすると(図13のロ)、縫目ラインstの縫糸thにストレスがかかり、縫目ラインstが蛇行mしたり皺vになったりするのである。縫目ラインstが直線に近いほどストレスは小さくて蛇行mや皺vが少ないが、袋状表皮9にするため、表皮片92,95の曲線形状部分CVで、且つその曲率半径が小さくなればなるほどストレスが大きくなり、蛇行m,皺vが増える傾向にある。そこで、こうした問題を改善しようとする発明も提案されている(例えば特許文献1)。
請求項2の表皮一体発泡成形品の表皮は、請求項1で、表皮片の二つを縫い合わせてできる前記縫目ラインよりも外縁側に在る二つの縫い代が一の表皮片側に倒され、さらに二つの該縫い代を取込んで、飾りステッチが前記縫目ラインに沿って設けられることを特徴とする。
尚、図2で表す縫糸及び縫目ラインは、この平面図では実在しない仮想のものである。ただ、袋状表皮に縫合される時に各表皮片が縫われる位置を表しやすいため、説明用として便宜的に図示している。図3の左下円内は拡大図を表し、図7は図3のVII-VII線矢視図に近い断面図になっている。
本実施形態は二種類の表皮片を用いる。所定形状に裁断した皮革製表皮片2と、所定形状に裁断した他の複数の樹脂製表皮片3〜5とが縫合されてヘッドレスト用表皮1となる。皮革製表皮片2の一枚と樹脂製表皮片3〜5の三枚を使用して、ヘッドレスト用袋状表皮1が造られる(図2)。二枚の樹脂製表皮片3,4が縫目ライン74を形成してヘッドレスト底面をつくり、ヘッドレストAの車両装着時における前方側の表皮片3と、図2でいえば、舌片状の皮革製表皮片2に係る上縁部分2dとが縫目ライン72を形成する。皮革製表皮片2は乗員頭部が当接する車両進行方向の前面から後方へ向かい、その外周縁21aが横長の表皮片5の外周部と縫合して縫目ライン71を形成する。さらに、表皮片5が表皮片3,4とで縫目ライン73を形成して、ヘッドレスト用表皮1を完成させる。車両のシートバック上端に、該表皮1で造られたヘッドレストAを装着すると、皮革製表皮片2の前記上縁部分2dは、底面をつくる表皮片3に接してヘッドレストAの下側となり、縫目ライン72が乗員の視線から隠れる。符号4bは表皮4に設けたインサート8のステー81用挿通孔を示す。
皮革製の外皮シート片21は、動物のなま皮を薬品処理し、革類製品に使用できるバックスキン状態にあり、これが舌片状の所定形状に裁断されたものである(図2)。スラブシート片22は発泡体で造られたシート状体で、所定形状に裁断されている。スラブシート片22には例えば厚みが1.0〜3.0mmのウレタンスラブが用いられる。
各表皮片3〜5は所定形状に裁断されるが、図2のごとく、いずれも外皮シート片31(41,51)とスラブシート片32(42,52)の大きさを同じにし、且つ外周縁を一致させて両者がピッタリと重なり合って貼着一体化されている。
縫目ライン73でも、表皮片3(4)に係る外皮シート片31(41)及びスラブシート片32(42)と、表皮片5に係る外皮シート片51及びスラブシート片52と、を取り込んで、縫糸7で縫合され縫目ライン73が形成される。また、縫目ライン72でも、表皮片3に係る外皮シート片31及びスラブシート片32と、皮革製表皮片2に係る外皮シート片21及びスラブシート片22と、を取り込んで、縫糸7で縫合され縫目ライン72が形成される。
本実施形態は、縫目ライン71に関わる皮革製表皮片2に係るスラブシート片の外縁22aを縫目ライン71よりも内方へ5mmの幅2gだけ引っ込めて配設する。斯かる構成によって、表皮片3〜5よりも伸び率の小さな皮革製表皮片2も、縫目ライン71周りで、皮革製外皮シート片21がスラブシート片22に邪魔されることなく図8のごとくスムーズに曲がり、表皮片5と同じように屈曲して綺麗な曲線形状部分CVをつくる。皮革製表皮片2を用いた縫目ライン71で、且つ袋状表皮の縫製で曲線形状部分CVの箇所でも、図12で見られた蛇行mや皺vが消失する。裏返し状態にして平面状で縫合した図7の姿態から図8のごとく表返しにしても、縫目ライン71にスラブシート片22がないことから、蛇行m,皺vが出ず、滑らかなラインSMになる。曲率半径の小さな曲線形状部分CVでも、縫目ライン71の縫糸7に過大なストレスがかからなくなり、蛇行mや皺vが寄り難くなると考えられる。
一方、他の表皮片についても、一の表皮片と同じようにして、円形試験片の水平両サイドの端を把持し、定速度伸長形の引張り試験機で測定する。また他の表皮片で、別の円形試験片の上下両サイドの端を把持し、定速度伸長形の引張り試験機で測定する。初期荷重1.96Nとし、引張り速度20cm/分で20%伸長時まで引張り、5%伸長時の荷重で、水平方向と上下方向での表皮片の伸び率を比較する。
そうして、二つの対比表皮片(一の表皮片と他の表皮片)で、5%伸長時の荷重が大きい値を示した表皮片が、伸び率が小さい表皮片となる。尚、前記水平方向と前記上下方向の伸び率が異なる場合、本発明に係る表皮片の伸び率は、伸び率の大きい方の値が用いられる。本円形モジュラス試験法は、特開2001-316953に記載の<表皮材の伸び特性試験法(円形モジュラス試験法>の内容と同じである。
ここで、図10の表皮1を縫目ライン72〜74へも適用を広げると、皮革製表皮片2のみならず、レザータイプの合成樹脂製表皮片3〜5についても、表皮片3〜5に係るスラブシート片の外縁32a,42a,52aを、外皮シート片の外縁31a,41a,51a及び縫合部位6の縫目ライン72〜74よりも内方へ引っ込めて配することになる。伸び率の異なる二つの表皮片のうちで、伸び率の小さい方の表皮片に係るスラブシート片の外縁を、縫目ラインよりも内方へ引っ込めて配するだけでも、曲率半径の小さな曲線形状部分CVでの蛇行m,皺vの消失が可能である。多少の品質向上が確保できても、作業負担,コスト等を鑑みると、図7,図8の構成がより好ましいと考えられる。
但し、縫目ラインを形成する両者が共に、合成樹脂製表皮片と比較し、伸び率の小さな皮革製表皮片である場合は、蛇行m,皺vの発生を回避するのに、図9,図10の表皮片構造が有効となる。縫目ラインを形成する二つの皮革製表皮片に係るスラブシート片の外縁が、それぞれ対応する外皮シート片の外縁及び縫目ラインよりも内方へ引っ込んで配設されるのが好ましい。
図中、網目模様は意匠面Eを示す。符号Gは発泡原料がつくる発泡体、符号Zは二つの表皮片の重ね合わせ面を示す。
皮革製表皮片2に係る皮革製外皮シート片21は、一般に伸び率が小さくて変形させるのに難儀する。他方の合成皮革製表皮片51(又は布製表皮片)に比べて、伸び率が小さく変形自由度に劣る。加えて、皮革製表皮片2には厚みがあるスラブシート片22が一体化しており、一般的な縫目ライン72〜74の構成のままでは、裏返し状態で袋状表皮1に縫製後、表返しにすると、曲線形状部分CVの縫目ライン71の縫糸7に大きなストレスがかかる。皮革製外皮シート片21では伸び率が小さくて曲線形状部分CVに沿うよう変形させるのが難しい。さらに、縫目ライン71ではその変形に従う形でスラブシート片22が無理な形で押し潰されるため、蛇行mや皺vが一層寄り易くなっている。
こうしたことから、本袋状表皮1は、伸び率の異なる二つの両表皮片2,5のうちで伸び率の小さい方の表皮片2に係るスラブシート片22の外縁22aを縫目ライン71よりも内方へ引っ込めて配設する。伸び率の小さい方の皮革製表皮片2に対し、厚みのあるスラブシート片22を縫目ライン71から遠ざけることで、曲線形状部分CVで曲率半径が小さな箇所でも蛇行mや皺vが寄るのを回避できる。
伸び率の小さい方の皮革製表皮片2に係るスラブシート片の外縁22aを、その表皮片2に係る外皮シート片外縁21a及び縫合部位6の縫目ライン71よりも内方へ引っ込めて配することで、皮革製表皮片2側の縫目ライン71の縫目は皮革製外皮シート片21のみにできる。皮革製表皮片自体の伸び率は小さいが、縫目ライン71周りで、スラブシート片22に妨げられることなく、その皮革製外皮シート片21がもつ素材の変形自由度がそのまま維持される。袋状表皮1に表返しした状態下、縫目ライン71の周りで従来存在した窮屈さや無理な変形が避けられることによって、縫目ライン71にストレスが殆どかからなくなっている。したがって、皮革製表皮片2を用いた場合でも、図12で現れた蛇行mや皺vが消失するようになる。裏返し状態で袋状表皮1を縫合した図7の姿態から図8のごとく表返しにしても、縫目ライン71にスラブシート片22がないことから、縫目ライン71の縫糸7に過大なストレスがかからなくなって、曲率半径の小さな曲線形状部分CVに蛇行m,皺vが出現しない。縫目ライン71の蛇行mや皺vを抑えて、高級皮革表皮片2を使用した袋状表皮1の品質向上を実現できる。
2 表皮片(皮革製表皮片)
21 外皮シート片
21a 外皮シート片の外縁
22 スラブシート片
22a スラブシート片の外縁
3,4,5 表皮片(樹脂製表皮片)
31,41,51 外皮シート片
31a,41a,51a 外皮シート片の外縁
32,42,52 スラブシート片
32a,42a,52a スラブシート片の外縁
6 縫合部位
7 縫糸
71,72,73,74 縫目ライン
A 表皮一体発泡成形品(ヘッドレスト)
K 飾りステッチ
Claims (2)
- 複数の表皮片を縫い合わせて袋状表皮に縫製し、該袋状表皮内に発泡原料を注入して一体発泡成形される表皮一体発泡成形品の表皮であって、
前記表皮片が外皮シート片と、その裏面に配されるスラブシート片と、を具備し、且つ前記袋状表皮に縫製する縫合部位の表皮片に係る前記スラブシート片の外縁が、前記外皮シート片の外縁及び前記縫合部位の縫目ラインよりも内方へ引っ込んで配設され、さらに前記縫目ラインを形成する表皮片に伸び率の異なる二つの表皮片が用いられ、且つ両表皮片のうちで伸び率の小さい方の表皮片に係る前記スラブシート片の外縁が、その表皮片に係る前記外皮シート片の外縁及び前記縫合部位の縫目ラインよりも内方へ引っ込んで配設されることを特徴とする表皮一体発泡成形品の表皮。 - 前記表皮片の二つを縫い合わせてできる前記縫目ラインよりも外縁側に在る二つの縫い代が一の表皮片側に倒され、さらに二つの該縫い代を取込んで、飾りステッチが前記縫目ラインに沿って設けられる請求項1記載の表皮一体発泡成形品の表皮。
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