JP6950466B2 - 乗物用シート - Google Patents
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Description
また第1発明の乗物用シートは、パッド材の表材を臨む面には、パッド材そのものよりも表材に対する摩擦の少ない低摩擦部が設けられているとともに、低摩擦部は、パッド材及び表材と接する別の面材で構成されている。本発明では、パッド材の低摩擦部と表材とを接する構成として、表材とパッド材とのスムーズな相対移動を可能とすることにより、表材がパッド材に引っかかるなどの不具合を極力回避することができる。
そしてヘッドレスト8は、図1及び図2を参照して、乗員の頭部を支持可能な枕状の部材であり、正面視において概ねシート幅方向に長尺な矩形状をなしている。このヘッドレスト8では、その外形をなすシートパッド8Pの外面にシートカバー8Sが一体化されており、このシートカバー8Sによって意匠面が構成されている。またシートパッド8Pの内部には図示しないシートフレーム8Fが配設されており、このシートフレーム8Fには、シートバック6の上部に挿設可能なヘッドレストステー9が設けられている。ヘッドレストステー9は、正面視で概ね逆U字をなす棒状部材であるとともに、上部側が前方に向かうにつれて次第に下方に湾曲している。そしてヘッドレストステー9の上部はシートパッド8P内に埋設されているとともに、ヘッドレストステー9の下部側をなす一対の自由端は、ヘッドレスト8の下面から左右に分かれて突出している。
シートパッド8Pは、図2を参照して、ヘッドレスト8の外形をなす部材であり、乗員の頭部を弾性的に支持できる。この種のシートパッド8Pの素材は特に限定しないが、例えばポリウレタンフォーム(密度:10kg/m3〜60kg/m3)等の発泡樹脂を例示できる。そしてシートパッド8Pは、側面視において後方から前方に向かうにつれて次第に上下の寸法が大きくなる枕形状を有し、縦断面視においては、前面8Paと、上面8Pbと、後面8Pcと、下面8Pdとを有している。前面8Paは、乗員の頭部を支持するヘッドレスト8の着座面を構成しているとともに、上方に向かうにつれて次第に下方に緩やかに傾斜している。また上面8Pbは、前面8Paの上側から後方に延びているとともに、後方に向かうにつれて次第に下方に向かう傾斜面となっている。そして本実施例においては、ヘッドレスト8の着座面側に配置される前面8Paから上面8Pbにかけての部分が山なりに盛り上がった盛り上がり部分10となっており、前面8Paと上面8Pbの境となる盛り上がり部分10の前端且つ上端の部分は、前方且つ上方に向けて湾曲状に突出している。また後面8Pcは、前面8Paに比して上下の寸法が小さくなっているとともに、下方に向かうにつれて次第に後方に緩やかに傾斜している。そして下面8Pdは、後面8Pcの下縁と前面8Paの下縁をつないでいる面であり、前面8Paに向かうにつれて次第に下方に向けて湾曲している。
シートカバー8Sは、図1及び図2を参照して、複数の表皮ピース(第一表皮ピースSP1〜第四表皮ピースSP4)を縫合することで形成されており、シートパッド8Pの略全面を被覆可能な形状を有している。第一表皮ピースSP1(詳細後述)は、シートパッド8Pの前面8Paと上面8Pbと後面8Pcを被覆する表皮ピースであり、本発明の凸曲面用の表皮ピースに相当する。この第一表皮ピースSP1は、展開時においては概ね矩形状をなしている。また第二表皮ピースSP2は、シートパッド8Pの下面8Pdを被覆する表皮ピースであり、第一表皮ピースSP1に比してやや小寸とされた矩形状をなしている。そして第三表皮ピースSP3は、シートパッド8Pの右面を被覆する表皮ピースであり、第四表皮ピースSP4は、シートパッド8Pの左面を被覆する表皮ピースである。これら第三表皮ピースSP3と第四表皮ピースSP4は、ヘッドレスト8の対応する側面形状に概ね一致する形状をなしている。
そして第一表皮ピースSP1は、図3及び図4を参照して、皮革製の表材20と、表材20の裏側に配置されるパッド材22と、後述する複数の縫合部30,32とを有している。ここで表材20は、第一表皮ピースSP1の外観をなす面材であり、第一表皮ピースSP1と同一寸法を有している。この表材20に用いられる皮革として、銀面層と繊維層を備えた各種の動物性の本革(天然皮革)を用いることができ、本実施例においては風合いに優れる牛皮を用いている。なお表材20の意匠面となる表側には、必要に応じて保護層としての樹脂層(典型的に透明又は半透明の樹脂層)や着色層などのコーティング層を設けることができる。
パッド材22は、図3を参照して、パッド材本体24と、低摩擦部26と、裏面部28とを有している。パッド材本体24は、弾性的に伸縮可能な面状の部位であり、本発明のパッド材22そのものを構成している。この種のパッド材本体24の素材は特に限定しないが、例えばシートパッド8Pで例示の素材を用いることができ、本実施例においてはスラブウレタンを用いている。そしてパッド材本体24は、後述するように表材20と概ね同一寸法を有しており、表材20の裏面の概ね全面に配置することが可能である。なお第一表皮ピースSP1のパッド材本体24の厚み寸法は、表材20に適度な張りを付与できる寸法に設定できる。例えば本実施例では、第一表皮ピースSP1のパッド材本体24の厚み寸法を、後述する他の表皮ピースの対応する部材よりも大きくしている(例えば二倍以上、好ましくは三倍以上に設定している)。こうすることでパッド材22によって、表材20に適切な張りを持たせて皺の発生を極力回避することが可能となる。
低摩擦部26は、パッド材本体24(パッド材そのもの)に比して表材20に対する摩擦の少ない部位であり、パッド材本体24の表材20を臨む面に設けられている。この種の低摩擦部26として、布帛(織物,編物,不織布)などの面材を用いることができ、これら各種の面材は、スラブウレタン製のパッド材本体24に比して表面滑性に優れている。そして低摩擦部26としての面材は、例えば接着や融着などの手法でパッド材本体24に取付けておくことができ、インサート成形などの手法で一体化することもできる。またパッド材本体24が発泡樹脂製である場合には、このパッド材本体24の表面に熱処理を施して平滑化することにより低摩擦部26を形成することもできる。また裏面部28は、パッド材本体24のシートパッド8Pを臨む面に設けられている部位である。この裏面部28は、パッド材本体24に対するシートパッド8Pの樹脂材料の含浸を阻止可能な各種の面材で構成でき、例えば不織布やフェルトなどの面材で構成することが可能である。
ここで図3を参照して、第一表皮ピースSP1を形成するに際しては、表材20とパッド材22とを重ねつつこれらの縁同士を位置合せてしておく。このとき本実施例では、表材20の外形寸法と、パッド材22の外形寸法とが概ね同一であるため、これら表材20とパッド材22とをそのまま重ねることで、表材20とパッド材22の縁同士をそれぞれ概ね同一位置に配置できる。例えば表材20とパッド材22とを面方向に伸長させていない状態(テンションをかけていない自由状態)において、表材20の前縁20aから後縁20bまでの長さL1と、パッド材22の前縁22aから後縁22bまでの長さL2は概ね同一となっている。なお本実施例においては、表材20の長さL1に対するパッド材22の長さL2の比率は1/1であるが、設計誤差を考慮して±0.1の誤差は概ね1とみなすことができる。このため図4に示すように表材20とパッド材22とをそのまま重ねて、表材20とパッド材22の前縁(20a,22a)同士を位置合わせすると、表材20とパッド材22の後縁(20b,22b)同士が概ね同一位置に配置される。これら表材20とパッド材22の前縁(20a,22a)同士は、図2に示す第二表皮ピースSP2に縫合される第一表皮ピースSP1の前側下縁側に配置される部分である。また表材20とパッド材22の後縁(20b,22b)同士は、前側下縁とは反対の第一表皮ピースSP1の後側下縁側に配置される部分である。そして本実施例では、表材20とパッド材22の前縁(20a,22a)から後縁(20b,22b)までの長さが、本発明の他の表皮ピースに縫合されるべき凸曲面用の表皮ピースの縁から反対側の縁までの長さに相当する。
つぎに図4を参照して、表材20とパッド材22の前縁(20a,22a)同士を、これらの末端側で左右に延びる前側縫合部30で縫合する。また同様に表材20とパッド材22の後縁(20b,22b)同士を、これらの末端側で左右に延びる後側縫合部32で縫合する。そして本実施例では、前側縫合部30と後側縫合部32とが、それぞれ本発明の縫合部に相当する。これら前側縫合部30と後側縫合部32は、いずれも左右方向に延びている縫合線であって、ミシンを用いて形成することができる。そして各縫合部30,32に用いる第二縫糸Y2(詳細後述)は天然繊維又は合成繊維製の糸材である。なお表材20とパッド材22の左右の縁同士は、未縫合状態でそのまま残しておくこともできるが、前縁(20a,22a)又は後縁(20b,22b)と同様に他の縫合部(図示省略)で縫合しておくことが望ましい。
また第二表皮ピースSP2〜第四表皮ピースSP4は、第一表皮ピースSP1と同様に、皮革製の表材とパッド材とで形成することができる。ここで他の表皮ピースSP2〜SP4の表材とパッド材は、第一表皮ピースの対応する部材と概ね同一の基本構成を有している。そして第二表皮ピースSP2〜第四表皮ピースSP4では、表材20とパッド材22とを接着などの手法で一体化することが可能であり、本発明の縫合部に相当する構成を省略することができる。
図1及び図2を参照して、複数の表皮ピースSP1〜SP4を縫合してシートカバー8Sを形成する。ここで各表皮ピースの縫合手法は概ね同一であるため、第一表皮ピースSP1と第二表皮ピースSP2を一例にこれらの縫合手法を説明する。すなわち第一表皮ピースSP1と第二表皮ピースSP2を中表状に重ね合わせたのち、これらの隣り合う縁同士を縫合していく。例えば図6を参照して、第一表皮ピースSP1の前側と第二表皮ピースSP2の前側とを縫合する際には、これら表皮ピース同士を縫合する縫合線SEWを、前側縫合部30よりも末端から離して形成していく。そして第一表皮ピースSP1と第二表皮ピースSP2を、これらを縫合する縫合線SEWを基点に面状に展開させることにより、シートカバー8Sの対応する箇所を形成することができる。さらに図2に示す第一表皮ピースSP1の後側と第二表皮ピースSP2の後側とを縫合する際にも、これら表皮ピース同士を縫合する縫合線SEWを後側縫合部32よりも末端から離して形成していく。
図1及び図2を参照して、ヘッドレスト8を、ヘッドレストステー9を介してシートバック6の上部に配設しておく。この状態のヘッドレスト8においては、シートカバー8Sの第一表皮ピースSP1が、シートパッド8Pの前面8Paと上面8Pbと後面8Pcにかけての部分を覆いつつ、ヘッドレスト8の着座面側に配置される。そしてシートパッド8Pは、前面8Paから上面8Pbにかけての部分が山なりに盛り上がった盛り上がり部分10となっており、これにより第一表皮ピースSP1の前面8Paと上面8Pbにかけての部分が凸曲面状となっている。この種の構成においては、第一表皮ピースSP1の表材20とパッド材22に周長差が生じることで、表材20の部分的な浮き(銀面浮き)が生じることが懸念される。特に第一表皮ピースSP1はヘッドレスト8の着座面側に配置されて比較的目立ちやすいシートカバー8S部分である。このためシートの意匠性向上を図るために、第一表皮ピースSP1に、銀面浮きが原因の皺が過度に発生する事態は極力回避すべきである。
4 シートクッション
6 シートバック
8 ヘッドレスト
9 ヘッドレストステー
8F シートフレーム
8P シートパッド
8Pa シートパッドの前面
8Pb シートパッドの上面
8Pc シートパッドの後面
8Pd シートパッドの下面
10 シートパッドの盛り上がり部分
8S シートカバー
20 表材
20a 表材の前縁
20b 表材の後縁
22 パッド材
22a パッド材の前縁
22b パッド材の後縁
24 パッド材本体(本発明のパッド材そのもの)
26 低摩擦部
28 裏面部
30 前側縫合部(本発明の縫合部)
32 後側縫合部(本発明の縫合部)
SEW 縫合線
SP1 第一表皮ピース(本発明の凸曲面用の表皮ピース)
SP2 第二表皮ピース(本発明の他の表皮ピース)
SP3 第三表皮ピース(本発明の他の表皮ピース)
SP4 第四表皮ピース(本発明の他の表皮ピース)
Y1 第一縫糸(本発明の凸曲面用の表皮ピースと他の表皮ピースを縫合する縫糸)
Y2 第二縫糸(本発明の縫合部をなす縫糸)
Y2a 第二上糸
Y2b 第二下糸
Claims (5)
- 乗員を弾性的に支持可能なシートパッドと、シートの意匠面を構成するシートカバーとを一体で備え、前記シートカバーの少なくとも一部は、前記シートパッドの盛り上がり部分を覆うことで凸曲面状となっており、
前記シートカバーは、複数の表皮ピースで形成されているとともに、前記凸曲面状となる位置に配置される凸曲面用の表皮ピースを有し、前記凸曲面用の表皮ピースは、意匠面をなす本革製の表材と、前記表材の裏側に配置する弾性的に伸縮可能なパッド材とを有している乗物用シートにおいて、
非伸長状態における前記表材と前記パッド材とは、他の表皮ピースに縫合されるべき前記凸曲面用の表皮ピースの縁から反対側の縁までの長さが概ね同一であり、
前記表材と前記パッド材は、相対移動可能な状態とされているとともに、前記凸曲面用の表皮ピースの縁に配置される前記表材の末端と前記パッド材の末端とに設けられた縫合部で縫合されており、
前記パッド材の表材を臨む面には、前記パッド材そのものよりも前記表材に対する摩擦の少ない低摩擦部が設けられているとともに、前記低摩擦部は、前記パッド材及び前記表材と接する別の面材で構成されている乗物用シート。 - 前記凸曲面用の表皮ピースは、着座状態の乗員に対面状に配置されるシートの着座面側に配置されている請求項1に記載の乗物用シート。
- 前記凸曲面用の表皮ピースには、前記縫合部を有していない前記他の表皮ピースが縫合されている請求項1又は2に記載の乗物用シート。
- 前記縫合部をなす縫糸は、前記凸曲面用の表皮ピースと前記他の表皮ピースを縫合する縫糸よりも細くされている請求項1〜3のいずれか一項に記載の乗物用シート。
- 乗員の頭部を支持可能なヘッドレストを有するとともに、
前記凸曲面用の表皮ピースは、前記ヘッドレストの乗員頭部に対面可能な着座面側に配置されている請求項1〜4のいずれか一項に記載の乗物用シート。
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