JP7452843B2 - 表皮一体型ヘッドレストおよびその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、自動車等に利用されるシートバックの上部に設けられるヘッドレストおよびその製造方法に関するものであり、特に表皮内部が発泡体で覆われた表皮一体型ヘッドレストとその製造方法に関するものである。
自動車等のシートバックの上部には、運転者の頭部を預けられるようにヘッドレストが装備されている。通常このヘッドレストは、2本のステーが内部から外部に突き出るように設けられている。ヘッドレストは、シードバックの上部に設けられたステー受穴に2本のステーを挿入し固定される。
ヘッドレストは、袋状に縫製され表皮部の中に発泡体を充填し、ステーを固定する構造がとられている。このタイプのヘッドレストでは、発泡体が膨張することで表皮内部が充填されるため、表皮の外観は表面に張りがあり、優れた外観を示す。
一方、何らかの要因によって、表皮に皺が入ると大変目立ち、強度といった性能だけでなく、外観の見栄えが重要視される。
特許文献1には、複数の表皮片からなり、底面を部分形成する舌片付き表皮片に一対のステー孔を設け、更に、該両ステー孔を結ぶ線に略平行でリア側に配され、表皮内に向かうガイド片で取囲まれた原料注入口を設けると共に、該ガイド片のある一の表皮片と前記舌片付き表皮片との両サイドを縫合して中央部にインサート用開口とを設けて、各表皮片を縫い合わせ袋状にした表皮と、
ステーをステー孔へ通しフロント傾倒位置の突き出し状態として、表皮内に芯体が配設される可倒式インサートと、
前記芯体を埋設して前記表皮と一体成形される発泡体と、を具備することを特徴とする表皮一体成形ヘッドレストが開示されている。
特開平10-57645号公報
特許文献1の場合、発泡原料を注入する原料注入口は、ヘッドレストの底面に設け、また舌片で覆い隠すことで目立たなくしている。しかし、底面を舌片で覆っている点で見栄えが低下していると言える。
本発明は、表皮一体型ヘッドレストにおいて、発泡原料注入口を表皮の裏側に全く隠すことで、見栄えを向上するとともに、原料を注入後原料注入口を隠す処理を省略し製造工程を短縮化できる表皮一体側ヘッドレストおよびその製造方法を提供するものである。
より具体的に本発明に係る表皮一体型ヘッドレストは、
複数の表皮片を袋状に縫い合わせた表皮部と、
前記表皮部内から突き出し状態に挿着されたステーと、
前記表皮部内に前記表皮部と一体成形された発泡体を有し、
前記表皮片の内、1組の隣接する表皮片同士の非縫合部には舌片が形成され、
一方の前記舌片は折り返され、他方の前記舌片は前記折り返された舌片と重なるように配置され、
一方の舌片には、原料注入口が設けられ、
前記原料注入口は、前記一方の舌片が折り返された側の前記表皮片の内側に隠されたことを特徴とする。
また、本発明に係る表皮一体型ヘッドレストの製造方法は、
隣接する表皮片同士の非縫合部には舌片が形成され、
記舌片の一方に、原料注入口が設けられた1組の表皮片を含む複数の表皮片を縫い合わせた袋状の表皮部を形成する工程と、
前記表皮部にステーを挿入し、前記表皮部から突き出し挿着する工程と、
前記表皮部の原料注入口から漏斗を介して発泡剤を注入する工程と、
前記発泡剤が前記表皮部中に膨張する前に前記漏斗を引き出し、
前記発泡剤の膨張で、前記原料注入口を前記一方の舌片が形成された表皮の裏に位置させる工程を有することを特徴とする。
本発明に係る表皮一体型ヘッドレストは、表皮部の内部で発泡原料が膨張すると、原料注入口を表皮裏側に折り返すので、外観としては原料注入口の存在自体が判別できなくなり、見栄えのよい表皮一体型ヘッドレストを提供することができるという効果を奏する。
また、本発明に係る表皮一体型ヘッドレストの製造方法では、発泡原料が膨張することで、原料注入口を表皮内面に押付け、発泡剤の流出防止と、原料注入口の隠蔽を同時に行うため工法の短縮化をもたらす効果を奏する。
本発明に係るヘッドレストの外観図である。 ヘッドレストの表皮片の例示である。 ヘッドレストの断面図である。 成型用金型にステーを挿着した表皮部をセットした図である。 表皮部内で発泡剤が膨張する状態を示す掛架図である。 発泡剤の膨張が終了し、ヘッドレストを取り出す状態を示す図である。
以下に本発明に係る表皮一体型ヘッドレストとその製造方法について図面を示し説明を行う。なお、以下の説明は、本発明の一実施形態を例示するものであり、本発明が以下の説明に限定されるものではない。以下の説明は本発明の趣旨を逸脱しない範囲で改変することができる。なお、以下の説明で、自動車のシートバックに装着された際に、車両進行方向前方側に当たる方を表皮一体型ヘッドレストの前方向、後方側に当たる方を後方向、重力方向上側を上方、重力方向下側を下方と呼ぶ。
図1に本発明に係る表皮一体型ヘッドレスト(以後単に「ヘッドレスト」とも呼ぶ。)の外観を示す。図1(a)は上方からの斜視図であり、図1(b)は下方からの斜視図である。本発明に係るヘッドレスト1は、袋状の表皮部10と、表皮部10中に充満して固化した発泡体12と、一部をヘッドレスト1下方から突き出し状態で挿着されたステー14で構成されている。また、本発明に係るヘッドレスト1は、前後、上下、左右方向のいずれの方向からみても、発泡体12の原料注入口22(図2参照)は痕跡すら見えない。
ステー14は、柱部14aと横棒部14bで構成される門型部材である。シートバックに固定されるため、十分な強度を得るために、金属材で構成されている。ステー14は、発泡体12中に埋設されるため、発泡体12との接着面積を大きくするように、枝や屈曲した部分が設けられていてもよい。また、ステー14の柱部14aはシートバックの挿入穴に挿入した際に適切な角度になるように屈曲した部分が設けられていてもよい。
図2は、表皮部10を構成する表皮片11の展開図である。表皮部10は複数の表皮片11で構成されている。ここでは、前部表皮片16と、底部表皮片18と、後部表皮片20の3つの表皮片11で構成した例を示すが、これに限定されず、別途側部表皮片などを有していてもよい。表皮片11は、ファブリック表皮,ポリウレタン又は塩化ビニル等樹脂フィルムの二層表皮片を縫製した表皮や、アクリル,ポリエステル等の合成繊維をパイル糸とし、綿,レーヨン等を地経にしたカットパイル織物等が用いられる。
図2(a)には表皮片11の例を示す。各表皮片11は、バツ印で示した部分で縫い合わされ袋状に成形される。このように互いの表皮片11において隣接する表皮片11と縫合される部分を「縫合辺26」と呼ぶ。前部表皮片16と後部表皮片20との縫合辺26を縫合辺26a、前部表皮片16と底部表皮片18との縫合辺26を縫合辺26c、底部表皮片18と後部表皮片20との縫合辺26を縫合辺26bとする。
複数の表皮片11のうち一組の表皮片11同士の縫合辺26には、1か所縫製されていない部分が設けられる。この抜けの部分を「非縫合部28」と呼ぶ。非縫合部28は、隣接する一対の表皮片11の間で形成される。非縫合部28を開口として表裏にひっくり返し、袋状とする(図2(b))。この開口は表皮部10の開口30となる。
また、表裏をひっくり返すことで、縫合辺26は表皮部10の内側に収められ、縫い跡が外観から隠され、見栄えが良くなる。
非縫合部28が設けられた表皮片11は、非縫合部28が設けられた部分に舌片17が設けられる。舌片17とは、なめらかな表皮片11の外周形状から飛び出るように突設された部分である。図2(a)では、底部表皮片18と前部表皮片16の間に設けられた非縫合部28に底部舌片18tと前部舌片16tが設けられた状態を示している。なお、舌片17の形成(つまり非縫合部28の形成)はこの部分に限定されず、前部表皮片16と後部表皮片20との間で、ヘッドレスト1の上方や側方に設けてもよい。
つまり、非縫合部28は縫合辺26のどこにでも、設けてもよい。底部表皮片18はヘッドレスト1の底部にあたるため、目立たない。したがって、非縫合部28および舌片17を底部表皮片18と前部表皮片16、若しくは底部表皮片18と後部表皮片20の間に設けるのはより好ましいと言える。
舌片17が設けられた一対の表皮片11の内、少なくともどちらかの舌片17には、原料注入口22が設けられる。原料注入口22には後述する漏斗60が差し込まれる。両方の舌片17に原料注入口22を設けてもよいが、原料注入口22には、原料注入のための漏斗60が挿入されるので、両方の原料注入口22が重なりあう必要がある。図2(a)では、底部表皮片18の舌片17(底部舌片18t)に原料注入口22が設けられた状態を示している。
なお、ステー孔24はステー14が突き出し状態で挿設される部分に設けられる。図2(a)では、底部表皮片18の底部舌片18tでない部分にステー孔24が2か所設けられている。ステー孔24は、ヘッドレスト1の底側に設けられるが、表皮片11の裁断の仕方によっては、後部表皮片20若しくは前部表皮片16に設けられていてもよい。
図3(a)には、図1(a)のA-A断面を示す。前部表皮片16は上方で後部表皮片20と縫合されている。またヘッドレスト1の下側後方で後部表皮片20と底部表皮片18が縫合されている。また、その縫合辺26より前方で底部表皮片18と前部表皮片16が縫合されている。非縫合部28は、底部表皮片18と前部表皮片16との間に設けられており、図3(a)では、非縫合部28の断面を丸で囲んだ。
図3(b)には、非縫合部28の拡大図を示す。底部舌片18tは、折り返され、底部表皮片18の裏面18rに押し当てられている。また、前部舌片16tは、折り返された底部舌片18tに重なるように配置されている。このように折り重なった底部舌片18tと前部舌片16tは発泡体12が押さえた状態で固定されている。
原料注入口22は底部舌片18tに設けたので、原料注入口22は、底部表皮片18の裏面18r側に隠されている。外部から見ると、底部表皮片18と前部表皮片16の継ぎ目には、裏表をひっくり返された縫合辺26を裏返した境目が見えている。この部分は、縫合辺26が裏返されたのか、非縫合部28が裏返されたのかは判別不能になる。このようにして本発明に係るヘッドレスト1は原料注入口22を隠蔽することができる。
ここでは、舌片17を底部表皮片18と前部表皮片16に設けたが、隣接する表皮片11同士の間であれば、どこに舌片17(非縫合部28)を設けてもよい。したがって、ヘッドレスト1を形成する表皮片11の内、1組の隣接する表皮片11同士の非縫合部28に舌片17を形成し、一方の舌片17は折り返され、他方の舌片17は折り返された舌片17と重なるように配置され、少なくともどちらかの舌片17には、原料注入口22が設けられ、原料注入口22は、舌片17が折り返された側の表皮片11の裏側に隠されていると言える。
次に本発明に係るヘッドレスト1の製造方法について説明する。前部表皮片16と、底部表皮片18と、後部表皮片20の3つの表皮片11を縫い合わせる。この際、底部表皮片18と、前部表皮片16の舌片17が設けられた部分は縫合せず非縫合部28とする。非縫合部28を開口30として表裏をひっくり返すと、袋状に縫合された表皮部10が得られる。底部舌片18tと前部舌片16tの両脇には底部表皮片18と前部表皮片16の縫合辺26があるので、底部舌片18tと前部舌片16tは互いに押し合って、表皮部10内側で突き合っている。突き合った舌片17を舌片対19と呼ぶ。
底部舌片18tと前部舌片16tは表皮部10内部で突き合っているが、縫合されているわけではないので、開けば開口30となる。この表皮部10の非縫合部28からは、漏斗60の先端が表皮部10内部に挿入される。
門型状のステー14は、柱部14aの一端を一方のステー孔24に通し、他方のステー孔24から突き出す。そしてステー14の横棒部14bを表皮部10内部に押し込む。このようにして、ステー14は、表皮部10内部に挿入され、底部表皮片18に設けられたステー孔24からステー14の柱部14aが突き出し挿着される。
ステー14が装着された表皮部10は、原料注入口22に漏斗60を挿入した後、成型用金型50中に配置される。図4(a)にはステー14が装着された表皮部10が、成型用金型50に配置された状態を示す。
成型用金型50は、金型上部50aと金型下部50bで構成され、台板52上に固定部53、54で固定されている。本発明に係るヘッドレスト1の製造方法では、後述するように、表皮部10の内部で発泡剤70が膨張する際に舌片対19を折り曲げ、開口30を塞ぐ。
したがって、表皮部10における舌片対19の位置と発泡剤70の膨張方向を合わせる必要がある。そのため、ヘッドレスト1の上部と下部の角度を調整できるように、固定部54は高さ調整ができるよに構成されている。
より具体的には、表皮部10は、突き合った舌片対19が略平行になり、かつ舌片対19より下方に表皮片11が存在するように配置される。
なお、発泡剤注入器62は、成型用金型50に装着された表皮部10に挿着された漏斗60に対して接近若しくは離反することができる。
漏斗60は、開口30から底部舌片18tに設けられた原料注入口22に挿入される。
まず、漏斗60を介してに発泡剤注入器62のノズルが挿入され、発泡剤70が注入される。発泡剤70は、液体状であるが、すぐに膨張し始める。発泡剤注入器62のノズルは、漏斗60から引き抜かれる(図4(b))。そして、発泡剤70が舌片対19に触れる前に漏斗60を抜く(図5(a))。漏斗60を原料注入口22から抜いておくことで、舌片対19は容易に動くことができる。
発泡剤70は、膨張する最中に舌片対19を下から持ち上げ、舌片対19を折り返す(図5(b))。原料注入口22が設けられた底部舌片18tから漏斗60が引き抜かれているので、舌片対19は膨張する発泡剤70で容易に持ち上げられる。
発泡剤70が膨張するにつれ、底部舌片18tは折り返され(図4(d))、底部表皮片18の内側に押し当てられる(図6(a))。前部舌片16tは、折り返された底部舌片18tに重ねられ配置される。すなわち、発泡剤70の膨張で、原料注入口22を舌片17が形成された表皮片11の裏に位置させ、原料注入口22を隠蔽する。発泡剤70が固化して発泡体12になると成型用金型50から取り出すことで、表皮一体型ヘッドレスト1を得ることができる(図6(b))。
本発明に係る表皮一体型ヘッドレスト1は、発泡剤70が表皮部10内部で膨張し、表皮片11を内部から押し広げるので、表皮部10には皺は寄らない。また、原料注入口22は表皮部10内部から表皮片11の裏面(上記の場合は底部表皮片18の裏面18r)に押し当てられることで隠蔽されるので、外部から原料注入口22の痕跡を確認することができないほどきれいに隠蔽することができる。
本発明は車両等のシートバックで用いる表皮一体型ヘッドレストおよびその製造方法に好適に使用することができる。
1 (表皮一体型)ヘッドレスト
10 表皮部
11 表皮片
12 発泡体
14 ステー
14a 柱部
14b 横棒部
16 前部表皮片
16t 前部舌片
18 底部表皮片
18t 底部舌片
20 後部表皮片
17 舌片
18 裏面r
19 舌片対
22 原料注入口
24 ステー孔
26 縫合辺
28 非縫合部
30 開口
50 成型用金型
50a 金型上部
50b 金型下部
52 台板
53、54 固定部
60 漏斗
62 発泡剤注入器
70 発泡剤

Claims (3)

  1. 複数の表皮片を袋状に縫い合わせた表皮部と、
    前記表皮部内から突き出し状態に挿着されたステーと、
    前記表皮部内に前記表皮部と一体成形された発泡体を有し、
    前記表皮片の内、1組の隣接する表皮片同士の非縫合部には舌片が形成され、
    一方の前記舌片は折り返され、他方の前記舌片は前記折り返された舌片と重なるように配置され、
    一方の舌片には、原料注入口が設けられ、
    前記原料注入口は、前記一方の舌片が折り返された側の前記表皮片の内側に隠されたことを特徴とする表皮一体型ヘッドレスト。
  2. 前記複数の表皮片には、前記表皮一体型ヘッドレストの底部を形成する底部表皮片と、前部を形成する前部表皮片が含まれ、
    前記1組の隣接する表皮片は前記底部表皮片と前記前部表皮片であることを特徴とする請求項1に記載された表皮一体型ヘッドレスト。
  3. 隣接する表皮片同士の非縫合部には舌片が形成され、
    記舌片の一方に、原料注入口が設けられた1組の表皮片を含む複数の表皮片を縫い合わせた袋状の表皮部を形成する工程と、
    前記表皮部にステーを挿入し、前記表皮部から突き出し挿着する工程と、
    前記表皮部の原料注入口から漏斗を介して発泡剤を注入する工程と、
    前記発泡剤が前記表皮部中に膨張する前に前記漏斗を引き出し、
    前記発泡剤の膨張で、前記原料注入口を前記一方の舌片が形成された表皮の裏に位置させる工程を有することを特徴とする表皮一体型ヘッドレストの製造方法。
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