JP2004261411A - 座席用表皮材の防水方法、座席用表皮材及び座席の製造方法 - Google Patents

座席用表皮材の防水方法、座席用表皮材及び座席の製造方法 Download PDF

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弘睦 浜口
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Abstract

【課題】座席用表皮材の表面の縫目の見た目を損ねることなく防水を行うことができる座席用表皮材の防水方法並びに座席用表皮材、及び座席用表皮材の表面を汚すことなく綺麗に保った状態で座席の製造が可能な座席の製造方法を提供することにある。
【解決手段】防水性のある表皮素材を乗物の座席の形状に沿うように縫製した座席用表皮材の防水方法において、防水性のある表皮素材を乗物の座席の形状に沿うように縫製した座席用表皮材の縫目に裏面から防水材を塗布し、防水材が固化する前に、防水材の上に防水フィルムを貼付することを特徴とする。
【選択図】 図2

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、二輪車、水上オートバイ等の乗物の座席を被覆する座席用表皮材の防水方法、座席用表皮材及び座席の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、オートバイや水上オートバイなどの乗物の座席は、防水性のあるレザー等の表皮素材からなる表皮材で、クッション材を覆った構造を有している。この表皮材は、裁断された複数の表皮素材を縫い合わせることにより、クッション材に沿うような形状に成形している。また、裁断された複数の表皮素材を融着したものもあるが、融着部分の見栄えが良くないと共に融着部分から割れる等の問題があり、縫製が好まれる。
【0003】
縫製による表皮材の場合、縫目からクッション材へ雨水が浸水してしまうため、例えば特許文献1に示すように、表皮材の表面を合成樹脂層で覆って雨水の浸水を防止すると共に、合成樹脂層面に凹凸で構成される縫目模様を設け、見栄えを向上させる方法が用いられてきた。
【0004】
また、座席の製造方法としては、予め所定形状に既に成形したクッション材に表皮材を被せる製法の他に、特許文献2に示すような、発泡成形方法も用いられている。この発泡成形方法は、表皮材を金型のキャビティ内に真空吸着し、表皮材のキャビティ空間に発泡性樹脂液を注入して発泡させ、表皮材とクッション材とを一体で成形するものである。
【0005】
【特許文献1】
特開2001−46187号公報
【特許文献2】
特開平8−294926号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の縫製のみの座席用表皮材では、縫目からクッション材へ浸水したり、クッション材へ浸水した雨水が縫目から逆流し搭乗者の衣類を濡らしてしまう。また、合成樹脂層面に凹凸で構成される縫目模様を設けた場合には、防水は可能であるが、見た目は縫製に比べて劣っている。
【0007】
また、従来の発泡成型方法に縫製のみの座席用表皮材を用いると、注入した発泡性樹脂が縫目から外側に漏れ出し、座席用表皮材の表面を汚してしまう。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、座席用表皮材の表面の縫目の見た目を損ねることなく防水を行うことができる座席用表皮材の防水方法並びに座席用表皮材、及び座席用表皮材の表面を汚すことなく綺麗に保った状態で座席の製造が可能な座席の製造方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の座席用表皮材の防水方法は、防水性のある表皮素材を乗物の座席の形状に沿うように縫製した座席用表皮材の縫目に裏面から防水材を塗布し、防水材が固化する前に、防水材の上に防水フィルムを貼付することを特徴とする。
【0010】
請求項2記載の座席用表皮材の防水方法は、防水材が伸縮性を有するポリウレタン系のコート材であることを特徴とする。
【0011】
請求項3記載の座席用表皮材の防水方法は、防水フィルムが伸縮性を有するウレタン系のフィルムであることを特徴とする。
【0012】
請求項4記載の座席用表皮材は、防水性のある表皮素材を乗物の座席の形状に沿うように縫製した座席用表皮材の縫目に裏面から塗布された防水材と、固化する前の防水材の上に貼付された防水フィルムとを備えることを特徴とする
【0013】
請求項5記載の座席用表皮材は、防水材が伸縮性を有すポリウレタン系のコート材であることを特徴とする。
【0014】
請求項6記載の座席用表皮材は、防水フィルムが伸縮性を有すウレタン系のフィルムであることを特徴とする。
【0015】
請求項7記載の座席の製造方法は、防水性のある表皮素材を乗物の座席の形状に沿うように縫製した座席用表皮材の縫目に裏面から防水材を塗布し、防水材が固化する前に、防水材の上に防水フィルムを貼付した後、座席用表皮材に発泡性樹脂を注入して発泡させ、座席用表皮材と一体で成形することを特徴とする。
【0016】
請求項8記載の座席の製造方法は、防水材が伸縮性を有すポリウレタン系のコート材であることを特徴とする。
【0017】
請求項9記載の座席の製造方法は、防水フィルムが伸縮性を有すウレタン系のフィルムであることを特徴とする。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の形態について図面を参照しながら具体的に説明する。図1は、本発明に係る座席用表皮材の一例を示す斜視図である。図2は、同座席用表皮材の防水方法を示すフローチャート、同座席用表皮材の防水方法を示す説明図である。図4は、同座席の一例を示す要部縦断面図である。
【0019】
図1に示す座席用表皮材1は、二輪車、水上オートバイ等の屋外で乗用されたり、屋外に座席が露出する乗物の座席を構成するシート状のものである。この乗物の座席は、着座した時にクッション性を有するクッション材15と、クッション材15の表面を覆う座席用表皮材1及びクッション材15の底面を支えるボトムプレート16から構成されている。
【0020】
座席用表皮材1は、防水性を有するシート状の表皮材5,6をクッション材15の表面形状に沿うように立体的に縫製したものである。図1に示す座席用表皮材1では、楕円形の表皮材5と帯状の表皮材6とも糸で縫い合わせることにより、クッション材15に沿うような立体形状にしている。尚、表皮材5,6の材質は、塩ビレザーや合成樹脂シートにような防水性を有する表皮素材である。
【0021】
表皮材5と表皮材6との縫い合わせ部分は、図3(a)に示すように、まず、表皮材6を裏面6b側に折り返して折返し部6cを作る。次に、折返し部6cに表皮材5の表面5aを当てて縫い合わせる(縫目8)。そして、折返し部6cと表皮材5とを一体で表皮材6に縫い合わせる(縫目7)。このようにして、図1に示す座席用表皮材1の縫製が行われている。
【0022】
次に、本実施例に係る座席用表皮材1の防水方法を説明する。尚、以下の説明で括弧書きされた符号は、図2のフローチャートの符号である。まず、予め縫製(S101)された座席用表皮材1を図3(b)〜(d)に示すように、裏返す(S102)。
【0023】
そして、図3(c)に示すように、縫目7,8を覆うように、液体の防水材11を縫目7,8に沿って表皮材5,6の裏面5b,6bに塗布する(S103)。この防水材11は、所定の時間経過後に固化して防水機能を発揮する性質を有するものである。また、表皮材5,6の伸縮に合わせて、防水材11自身も伸縮する必要がある。防水材11には、例えば、ポリウレタン系のコート材や、シリコン系のコート材が使用可能である。特に液状で常温硬化型のポリウレタン系の場合には、塗布時に約9000mPa・s/20℃の粘度を有しているものの、防水材11が縫目7,8を通して表面5a,6a側に通過してしまう程の粘度ではなく作業性がよい。また、固化後の伸び率も約300%以上で表皮材5,6の伸縮に対して十分追従可能で、割れなどが起きにくく座席の防水が保たれる。
【0024】
液体状の防水材11は、固化するまでに所定の時間を有すると共に、縫目7,8の凹凸により垂れてしまう。このため、図3(d)に示すように、防水材11を塗布した直後で防水材11が固化する前に、防水材11の上に防止テープ12を貼付し(S104)、防水材11を防水テープ12で覆ってしまう。この防水テープ12は、防水フィルムをテープ状にしたもので、縫目7,8に沿って塗布された防水材11を覆うことが可能な幅を有している。そして、防水テープ12は、防水材11と同様に伸縮性を有するものである。防水テープ12には、ウレタン系のフィルムをテープ状にしたものが使用可能である。ウレタン系の防水テープ12は、伸び率が約300%以上あり、伸縮性において、座席用表皮材1用に適している。すなわち、表皮材5,6の伸縮に対して十分追従可能で、割れなどが起きにくく座席の防水が保たれる。
【0025】
以上のように、防水テープ12を貼付することにより、座席用表皮材1の防水のための処理は終了する。このように、座席用表皮材1の縫目7,8に裏面5b,6bから防水材11を塗布し、さらに防水材11の上に防水テープ12を貼付していることから、座席用表皮材1の表面5a,6aの縫目の見た目を損ねることなく防水を行うことができる。
【0026】
さらに、防水テープ12を貼付した直後には、防水材11が完全に固化していないものの、防水テープ12により防水材11の垂れを防止できる。このように、防水材11が固化する前に、防水材11の上に防水テープ12を貼付していることから、塗布した直後の防水材11の垂れを防止することで塗布の厚みを揃え、均一な防水性能を確保することができる。さらに、防水材11の垂れは、座席用表皮材1の裏面5b,6bに不揃いな凹凸を作ってしまうため、クッション材15に被せた後の座席用表皮材1の表面5a,6aに凹凸ができてしまうという問題があったが、これも解消される。また、固化する前の防水材11はベタ付きがあり、座席用表皮材1の表面5a,6aを汚してしまう心配がある。しかしながら、防水テープ12を貼付することにより、固化する前の防水材11が他に付着しないため、防水を施した直後の座席用表皮材1でも積み重ねる等して扱え、作業効率を向上させたり、養生のためのスペースを削減することができる。また、防水の観点においても、防水材11に加え防水テープ12も防水機能を発揮することから、ほぼ完全な防水が可能となる。尚、固化する前の防水材11に防水テープ12を貼付することから、防水材11の粘着作用により、より一層強固に防水テープ12が固定されることで、防水テープ12の剥がれの心配もなくなる。すなわち、従来は、固化に時間が掛かり作業効率が低下するため、防水材11のみで防水を施すことは行われてこなかったし、防水テープ12のみでは剥がれの心配があったため、防水テープ12だけで用いられることは少なかった。
【0027】
尚、本実施例の座席用表皮材1の防水効果を示すグラフを図6に示す。図6は、座席用表皮材1を用いたオートバイの座席を屋外に放置し、重量の変化分をグラフにしたものである。すなわち、増加分が座席中に浸水した水の重さであり、浸水量を表している。「防水無し」のグラフは、従来の縫製のみで防水を施していない座席用表皮材である。「防水無し」の場合、雨が降る(逆三角のマーク)と重量が増加し、雨が止んでも徐々にしか重量が減らず、座席中に浸水している様子と、その浸水した雨水がなかなか抜けないことを示している。それに対し、「防水有り」で示す本実施例の座席用表皮材1を用いた座席のグラフは、雨にもかかわらず殆ど重量が変化していない。これは、浸水しておらず防水機能が発揮されていることを示している。
【0028】
次に、以上のように防水を行った座席用表皮材1を用いた座席の製造方法を説明する。座席用表皮材1の使い方としては2種類の方法がある。まず1つは、予め座席の形状に成形されたクッション材15に座席用表皮材1を被せ、クッション材15の底面にボトムプレート16をあてがった状態で、座席用表皮材1の開口端部をボトムプレート16に錨止めする方法や接着する方法である。
【0029】
他の1つは、図5に示すように、座席用表皮材1に発泡性樹脂を注入して発泡させ、座席用表皮材1と一体で成形する方法である。具体的に説明すると、まず、上述の防水を施した座席用表皮材1を、金型である下型20のキャビティ21に載置し、吸引孔22からキャビティ21内の空気を抜き、座席用表皮材1をキャビティ21に吸着する。次に、座席用表皮材1の開口を塞ぐようにボトムプレート16を配置し、キャビティ21を上型23で塞ぐ。そして、座席用表皮材1とボトムプレート16とで掲載されるキャビティ空間cに、上型23の注入孔25を介して、発泡性樹脂を注入する。この注入された発泡性樹脂を発泡させることで、発泡性樹脂がクッション材15となり、座席用表皮材1、クッション材15及びボトムプレート16が一体に、座席として成型される。
【0030】
このような、本実施例における座席用表皮材1を用いた座席の製造方法によれば、防止材11及び防水テープ12とにより、注入した発泡性樹脂が縫目から座席用表皮材1の外側に漏れ出ることを抑え、座席用表皮材1の表面5a,6aを汚すことなく綺麗に保った状態で座席の製造が可能である。
【0031】
【発明の効果】
請求項1の発明によれば、座席用表皮材の縫目に裏面から防水材を塗布し、さらに防水材の上に防水フィルムを貼付していることから、座席用表皮材の表面の縫目の見た目を損ねることなく防水を行うことができる。
【0032】
請求項2の発明によれば、防水材が伸縮性を有するポリウレタン系のコート材であることから、表皮材素材の伸縮に対して十分追従可能で、割れなどが起きにくく座席の防水が保たれる。
【0033】
請求項3の発明によれば、防水フィルムが伸縮性を有するウレタン系のフィルムであることから、表皮材素材の伸縮に対して十分追従可能で、割れなどが起きにくく座席の防水が保たれる。
【0034】
請求項4の発明によれば、座席用表皮材の縫目に裏面から塗布された防水材と、防水材の上に貼付された防水フィルムとにより、座席用表皮材の表面の縫目の見た目を損ねることなく防水を行うことができる。
【0035】
請求項5の発明によれば、防水材が伸縮性を有するポリウレタン系のコート材であることから、表皮材素材の伸縮に対して十分追従可能で、割れなどが起きにくく座席の防水が保たれる。
【0036】
請求項6の発明によれば、防水フィルムが伸縮性を有するウレタン系のフィルムであることから、表皮材素材の伸縮に対して十分追従可能で、割れなどが起きにくく座席の防水が保たれる。
【0037】
請求項7の発明によれば、防水フィルムの上に発泡性樹脂を注入するため、発泡性樹脂が縫目から座席用表皮材の表面に漏れ出ることを抑え、座席用表皮材の表面を汚すことなく綺麗に保った状態で座席の製造が可能である。
【0038】
請求項8の発明によれば、防水材が伸縮性を有するポリウレタン系のコート材であることから、表皮材素材の伸縮に対して十分追従可能で、割れなどが起きにくく座席の防水が保たれる。
【0039】
請求項9の発明によれば、防水フィルムが伸縮性を有するウレタン系のフィルムであることから、表皮材素材の伸縮に対して十分追従可能で、割れなどが起きにくく座席の防水が保たれる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る座席用表皮材の一例を示す斜視図である。
【図2】同座席用表皮材の防水方法を示すフローチャートである。
【図3】同座席用表皮材の防水方法を示す説明図である。
【図4】同座席の一例を示す要部縦断面図である。
【図5】本発明に係る座席の製造方法を示す説明図である。
【図6】本発明に係る座席用表皮材の防水効果を示すグラフである。
【符号の説明】
1・・・・・・・・座席用表皮材
5、6・・・・・・表皮材
7・・・・・・・・縫目
11・・・・・・・防水材
12・・・・・・・防水テープ
15・・・・・・・クッション材
16・・・・・・・ボトムプレート
20・・・・・・・下型
23・・・・・・・上型

Claims (9)

  1. 防水性のある表皮素材を乗物の座席の形状に沿うように縫製した座席用表皮材の防水方法において、
    該座席用表皮材の縫目に裏面から防水材を塗布し、
    該防水材が固化する前に、該防水材の上に防水フィルムを貼付することを特徴とする座席用表皮材の防水方法。
  2. 前記防水材は、伸縮性を有するポリウレタン系のコート材であることを特徴とする請求項1記載の座席用表皮材の防水方法。
  3. 前記防水フィルムは、伸縮性を有するウレタン系のフィルムであることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の座席用表皮材の防水方法。
  4. 防水性のある表皮素材を乗物の座席の形状に沿うように縫製した座席用表皮材において、
    該座席用表皮材の縫目に裏面から塗布された防水材と、
    固化する前の該防水材の上に貼付された防水フィルムとを備えることを特徴とする座席用表皮材。
  5. 前記防水材は、伸縮性を有すポリウレタン系のコート材であることを特徴とする請求項4記載の座席用表皮材。
  6. 前記防水フィルムは、伸縮性を有すウレタン系のフィルムであることを特徴とする請求項4又は請求項5記載の座席用表皮材。
  7. 防水性のある表皮素材を乗物の座席の形状に沿うように縫製した座席用表皮材を有する座席の製造方法において、
    該座席用表皮材の縫目に裏面から防水材を塗布し、
    該防水材が固化する前に、該防水材の上に防水フィルムを貼付した後、
    該座席用表皮材に発泡性樹脂を注入して発泡させ、該座席用表皮材と一体で成形することを特徴とする座席の製造方法。
  8. 前記防水材は、伸縮性を有すポリウレタン系のコート材であることを特徴とする請求項7記載の座席の製造方法。
  9. 前記防水フィルムは、伸縮性を有すウレタン系のフィルムであることを特徴とする請求項7又は請求項8記載の座席の製造方法。
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