JP2018008477A - マッケイ式射出成形靴の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】屈曲性が良く足を包み込むようなフィット性を持つマッケイ靴を、生産効率が高く耐久性や耐水性に優れ中底面のフィット性も向上させるインジェクション式製法により、甲被厚みやデザインの制限を受けにくい底金型を用いて提供する。
【解決手段】吊り込み甲被6に熱可塑性樹脂の表底7を一体成形するインジェクション式製法において、前記吊り込み甲被6はマッケイ式製法の表底に代わるシート状の中板4を甲被1周縁へ縫糸5により縫い合わせてあり、サイドモールド9で甲被1と中板4との接合境界部6a近傍を挟持し、サイドモールド下面9aと表底空隙12を形成するボトムモールド上面11aとの間で中板4周縁を押圧挟持して底金型16が閉じてあり、前記表底空隙12内に熱可塑性樹脂の表底7を成形する靴の製造方法。
【選択図】図1
【解決手段】吊り込み甲被6に熱可塑性樹脂の表底7を一体成形するインジェクション式製法において、前記吊り込み甲被6はマッケイ式製法の表底に代わるシート状の中板4を甲被1周縁へ縫糸5により縫い合わせてあり、サイドモールド9で甲被1と中板4との接合境界部6a近傍を挟持し、サイドモールド下面9aと表底空隙12を形成するボトムモールド上面11aとの間で中板4周縁を押圧挟持して底金型16が閉じてあり、前記表底空隙12内に熱可塑性樹脂の表底7を成形する靴の製造方法。
【選択図】図1
Description
本発明は、マッケイ式製法の表底71に代わる中板4を縫い付けた吊り込み甲被6を用い、インジェクション式製法により発泡性ポリウレタンなどの熱可塑性樹脂の表底7を一体成形することで、両製法の特長を兼ね備えかつ欠点を改良した新しい靴の製造方法に関する。
従来から用いられている靴の製法・構造には各種あり(例えば非特許文献1、非特許文献2参照)、一般にグッドイヤー・ウエルト式、ステッチダウン式、マッケイ式、セメント式、カリフォルニア式、バルカナイズ式(直接加硫圧着式)、インジェクション式(射出成形式)などが知られ、それぞれ特有の機能および特性を有する。JIS S 5050:1995 革靴にも、靴の製造方法による区分が記されている。
マッケイ式は、吊り込み甲被6に表底71を仮貼りした後に靴型8を抜き、中底2周縁部分にて甲被1と表底71とを縫糸5で一緒に通し縫いする製法である。比較的簡単な構造上、軽くて柔らかく屈曲性が良いという特長がある。また甲被1の靴型8へのなじみが良く、足を包み込むようなフィット性がある。靴型8や表底71の土踏まず部分を細く絞り込むことが可能であり、表底71の出っ張り部分(コバ)を狭くすることも可能なので、すっきりとした印象になる。
インジェクション式は、吊り込み甲被6を底金型16にセットし、熱可塑性樹脂を射出して表底7を成形すると同時に甲被1と表底7を接着する製法で、発泡性ポリウレタンなどでは射出成形だけでなく注型成形も多く用いられる。効率が良く大量生産に適しており、甲被1と表底7の結合が強いので接着性や耐久性に優れ、底面からの浸水に強い。また、射出圧力や発泡成形時の発泡圧力などにより中底2が靴型底面8aの凹凸立体形状に沿い、靴型8を抜いてもその形状が保持されるため、中底面のフィット性を向上させることが可能である。
インジェクション式の場合、吊り込み甲被6の構造は甲被1周縁を中底2に吊り込んだものや甲被1と中底2を袋状に縫製したカリフォルニア式(スリップラステッド式)が一般的だが、グッドイヤー・ウエルト式やシルウエルト式、ステッチダウン式のようなコバ(ウエルト)のある構造とインジェクション式を組み合わせた靴の製法として、特開昭61−222401号公報、特開昭62−57502号公報、特開2007−14443号公報などが公知である。
加藤一雄、山本宏 編,「良いクツの基礎知識」,改訂版,日本靴総合研究所,昭和51年12月10日,p10−16
靴のパラダイス Webページ、"靴の製法"、[online]、靴のお手入れ方法、[平成28年6月1日検索]、インターネット<URL:http://www.parashoe.com/care/seihou.html>
マッケイ式の場合、甲被1と表底71とを縫糸5で一緒に通し縫いするため、伏せ縫いで表底71の縫い目を見えなくするなど対策されているものもあるが、そうでない場合は表底71の摩耗と共に縫糸5も摩滅し、底剥がれが発生する。また、表底71の縫い目から水がしみ込んで浸水しやすい。
インジェクション式の場合、甲被1と底金型16との接触部であるサイドモールド9のリップ10やサイドモールド分割面(パーティングライン)同士が型締め時に密閉性悪いと、射出圧力や発泡成形時の発泡圧力などにより甲被1への底材漏出不良が発生する。一方で甲被1へリップ10を強く締め付け過ぎると、甲被1に押圧痕の残留や重ね合わせ部の切れなどの不良が発生する。したがって、甲被1とリップ10との密閉性を確保するために甲被1の厚みや重ね合わせデザインを容易に変更できず、甲被1デザインの異なる品種毎に高価な底金型16を準備する必要がある。また、靴型8や表底7の土踏まず部分を絞ろうとした場合は凹形状の曲率半径がより小さくなるので、甲被1とリップ10との接触調整は難易度が増し、マッケイ式の特長でもある優れたフィット性や細くくびれたシルエットの実現がより困難となる。
ここで、グッドイヤー・ウエルト式とインジェクション式を組み合わせた特許文献1では、吊り込み甲被と底金型との接触部密閉性について開示が無く、細革(ウエルト)上面や甲被への底材漏出不良が発生しやすい。
コバ(ウエルト)がある構造とインジェクション式を組み合わせた特許文献2にはその解決手段が開示されているが、実施例に記載されたシルウエルト式では次のような欠点がある。帯状のコバを甲被周縁で靴型曲線形状に合わせてすくい縫いするため、コバ幅が広いと甲被に沿ってめくれた状態となりやすく外へ開かなければならず、側型(サイドモールド)で挟持する際にコバがめくれた状態へ戻らぬよう注意が必要となる。逆にコバ幅が狭すぎると、わずかな縫い位置ずれや吊り込みゆがみなどで側型(サイドモールド)と下型(ボトムモールド)の型締めによるコバの挟持幅が安定せず、部分的に非常に狭くなり隙間が生じる可能性もある。また、甲被とコバのすくい縫い部分からも底材漏出が発生する可能性がある。さらに、構造や作業工程が複雑なためマッケイ式よりも生産効率が低く、屈曲性が劣る。
これらコバ縫い付けによる欠点は、後述する本発明のような表底に代わる中板を縫い合わせたグッドイヤー・ウエルト式吊り込み甲被であれば、すなわち本発明のマッケイ式をグッドイヤー・ウエルト式に置き換えた製法のものであれば一部解消されるが、シルウエルト式に比べて中板が増える分生産効率や屈曲性はさらに悪くなる。
特許文献2には、吊り込み甲被の外形寸法より大きな合中底を接着してコバ替わりとしたセメント式についても記載されている。しかしながら、接着ではマッケイ式の甲被と通し縫いした時のような結合力が得られない上に、接着剤により全面貼り合わせる分硬くなり屈曲性が悪くなる。
甲被周縁が外側に開いたステッチダウン式構造とインジェクション式を組み合わせた特許文献3には、底金型で甲被を挟み込み固定する手段が開示されている。しかしながら、甲被周縁のコバ相当部分をミッドモールドとサイドモールドの間に挟み込むには、甲被周縁の仮接着を剥離させ外側に開いていく工程に手間がかかり、外側に開いた状態を維持し閉じた状態へ戻らぬように注意が必要となる。
これらグッドイヤー・ウエルト式やシルウエルト式との組み合わせでは、甲被と中底リブとコバのすくい縫いでミシンと干渉する可能性があるため、またステッチダウン式との組み合わせでは甲被周縁を外側に吊り込むため、甲被の靴型へのなじみはマッケイ式に劣り、土踏まず部分を細く絞り込むことも困難である。特にステッチダウン式の方がそれらの度合いは大きい。
表底摩耗などにより表底交換修理を行いたい場合、特許文献2の実施例に記載されたシルウエルト式吊り込み甲被では、甲被・コバ・中物と表底が一体成形により強固に結合されて分解不能なので、従来グッドイヤー・ウエルト式の表底交換のような表底再成形修理は不可能である。ただしこの点も、後述する本発明のような表底に代わる中板を縫い合わせたグッドイヤー・ウエルト式吊り込み甲被であれば、すなわち本発明のマッケイ式をグッドイヤー・ウエルト式に置き換えた製法のものであれば、中板を縫い直すことで可能となる。同じく特許文献2に記載の合中底を接着してコバ替わりとしたセメント式では、吊り込み甲被と合中底の接着を剥がすのは困難で現実的では無く、合中底と一体成形した表底との間も同様に強固に結合されて分解不能である。また特許文献3の場合も同様に、従来ステッチダウン式の表底交換のような表底再成形修理は不可能である。
そこで本発明では、屈曲性が良く足を包み込むようなフィット性を持つマッケイ靴を、生産効率が高く耐久性や耐水性に優れ中底面のフィット性も向上させるインジェクション式製法により、甲被1厚みやデザインの制限を受けにくい底金型16を用いて提供することを課題とする。
上記課題を解決する本発明の態様は、吊り込み甲被6に熱可塑性樹脂の表底7を一体成形するインジェクション式製法において、前記吊り込み甲被6はマッケイ式製法の表底71に代わるシート状の中板4を甲被1周縁へ縫糸5により縫い合わせてあり、中板外周4aの靴型底面外周8bよりも広い幅Wが全周5mm以上50mm以下、かつ中板4のJIS L 1096:2010に規定されるA法(45°カンチレバー法)に準拠して測定した剛軟度が前記幅W以上であり、対をなす複数に分割可能なサイドモールド9と、表底空隙12を形成するボトムモールド11からなる底金型16を用い、表底空隙上端12aは靴型底面外周8bよりも広く中板外周4aよりも狭い範囲内にあり、サイドモールド9で甲被1と中板4との接合境界部6a近傍を挟持し、サイドモールド下面9aとボトムモールド上面11aとの間で中板4周縁を押圧挟持して底金型16が閉じてあり、前記表底空隙12内に熱可塑性樹脂の表底7を成形することを特徴とする靴の製造方法である。
本発明では、中板4で甲被1側と表底7側を分離しながらも、甲被1と中板4は縫糸5により強固に縫い合わせ、かつ中板4と表底7をインジェクション一体成形により結合させることで、マッケイ式とインジェクション式の両製法が持つ多くの特長を兼ね備えかつ欠点を改良している。
サイドモールド下面9aとボトムモールド上面11aとの間で中板4周縁を押圧挟持して表底空隙12を形成するため、底金型16と吊り込み甲被6との密閉性を左右するのは当該部分であり、底材漏出に対してサイドモールド9のリップ10と甲被1の接触部やサイドモールド分割面9b同士の密閉性は重要でなくなり、その接触調整は部分的に接して吊り込み甲被6がずれずに保持できれば良い程度となる作用がある。
従来のマッケイ式製法では、靴型底面外周8bと同程度の大きさの表底71を縫い付けることも可能だが、本発明ではサイドモールド下面9aとボトムモールド上面11aとの間で中板4周縁を挟持するためにそれよりも大きい中板4を用いる。ここで、中板外周4aの靴型底面外周8bよりも広い幅Wが5mm未満であると、中板4を甲被1と縫い合わせる際にあらかじめ仮止めする場合でも位置決めが難しく、中板4の縫い付け位置がずれて部分的に挟持幅が狭くなり隙間を生じる可能性がある。そうすると中板4周縁が一部欠けて表底7露出した状態で成形され、その後に中板4周縁を表底側面7aに合わせてトリミングするとしても、中板4欠け部分が残らぬよう表底側面7aも大きく削る必要がある。靴型8の外側に甲被1の厚みが(甲裏がある場合はその厚みも)追加されるので幅Wは7mm以上が好ましく、10mm以上がより好ましい。また、幅Wが50mmより大きいと無駄となる不要な中板4材料が増してしまい、幅Wは30mm以下が好ましい。
ここで、「中板外周4aの靴型底面外周8bよりも広い幅W」と「中板4の剛軟度が前記幅W以上」のWは同一値であり、例えば幅Wが20mmの場合は剛軟度が20mm以上であることを意味する。中板4材料は、マッケイ式の特長である屈曲性の良さを求めるあまりに軟らか過ぎる材料を使用し剛軟度が幅W未満であると、先にサイドモールド9で吊り込み甲被6を挟持した際に中板4周縁が自重で垂れ下がり水平となす角度が45°より大きくなるため、サイドモールド下面9aとボトムモールド上面11aとの間で中板4周縁を挟持することが困難となったり、折れ曲がって挟持したりする可能性があり不適当である。
表底空隙上端12aが靴型底面外周8bよりも狭いか同一であると、表底7が縫糸5を覆わない可能性高くなり、その外観や縫い目を経由した浸水などの観点から不適当である。また表底空隙上端12aが中板外周4aよりも広いか同一であると、ボトムモールド上面11aは中板4周縁を挟持せずにサイドモールド下面9aと接するし、マッケイ式で可能となる細身のシルエットに反して表底7を不要に大きくするので不適当である。前述のサイドモールド下面9aとボトムモールド上面11aとの間で中板4周縁を挟持する幅の狭さにより隙間を生じる可能性と同理由から、表底空隙上端12aは中板外周4aよりも3mm以上狭いことが好ましい。
本発明による靴の製造方法では、吊り込み甲被6のマッケイ式構造により甲被1の靴型8へのなじみが優れ、足を包み込むようなフィット性をインジェクション式製法でも屈曲性を損なわずに実現し、靴型8や表底7の土踏まず部分を絞り込んだ細身の形状も可能である。また、グッドイヤー・ウエルト式やステッチダウン式と異なり中板4のコバ相当部分にはステッチが無いため、甲被1と中板4との接合境界部6a直前まで表底7・中板4をさらにトリミングすることも可能である。
インジェクション式製法であっても、前述のリップ10と甲被1やサイドモールド分割面9b同士の接触調整は部分的に接して吊り込み甲被6が保持できれば良い程度となる作用により、同一底金型16のままで甲被1素材種類や厚みの選択、甲被1重ね合わせデザインなどの自由度が大きく向上し、底材漏出やリップ10締め付けによる甲被1の押圧痕残留や重ね合わせ部の切れといった不良が発生せず、金型設備投資を抑えて低コストで容易に製造できる。
中板4の大きさを幅Wにより規定することで、作業性良くかつ不良発生を防ぎ、中板4材料や底金型16大きさの無駄を削減する。また中板4の剛軟度下限を幅Wにより規定することで、底金型16を閉じる際に作業性を妨げない。
サイドモールド下面9aとボトムモールド上面11aによる吊り込み甲被6挟持部分は、甲被1周縁に縫い付けたコバでは無く、中底面全体を覆い靴型底面外周8bより大きい中板4なので、甲被1と中板4の接合境界部6aからは底材漏出が皆無となる。
インジェクション式製法の射出圧力や発泡成形時の発泡圧力などにより中底2・中板4(・中物3)が靴型底面8aの凹凸立体形状に沿い、靴型8を抜いてもその形状が保持されるため、従来のマッケイ式製法に比べ甲被1だけでなくさらに中底面も足裏へフィットしたスニーカーのような履き心地となる。また、中板4のマッケイ縫い部分は表底7成形で封止され表底7に縫い目が無いため、縫糸5摩滅による底剥がれが無く、底面からは縫い目を経由した浸水が無い。
一般的なインジェクション式製法と異なり、表底7が甲被1表面ではなく中板4裏面と結合するため、甲被1表面の接着性には影響されず革材料時の表面削り(バフィング)加工など前処理は不要となる上に、油分の多いオイルレザーのような接着困難度の高い甲被1材料もそのまま使用可能となる。
中板4と甲被1は仮止めしてあるとしても縫糸5で縫い合わせただけなので、縫糸5を切ってほどけば分解が容易である。したがって、その後新しい中板4を再度縫い合わせ本発明と同方法により表底7を成形すれば、従来から革靴で行われている表底交換修理のように、インジェクション式製法でも表底7再成形修理が可能である。
以下に本発明の実施形態を詳細に説明する。
吊り込み甲被6とは、単なる甲被1の一部分と区別するために、靴型8に被せた状態の甲被全体、すなわち甲被1・中底2・中板4などを組み合わせたものをいう。甲被1を靴型8に被せるには、中底2への吊り込みだけでなく甲被1と中底2を袋状に縫い合わせたカリフォルニア式やストローベル式(ボニス式)に靴型8挿入したり、袋縫いと吊り込みを組み合わせたコンビネーションラスティング式やボロネーゼ式などを用いたりしても良い。甲被1の裏側には甲裏があっても良く、中底2と中板4の間には中物3が挿入されていても良い。なお、甲被1の材料は天然皮革に限らず、合成皮革、織布、編布など使用可能である。
インジェクション式製法とは、射出成形製法だけでなく注型成形製法も含み、革靴では注型成形製法が多く用いられる。射出成形製法ではサイドモールド9とボトムモールド11を閉じてから表底空隙12内に熱可塑性樹脂を射出し、注型成形製法では表底空隙12内に熱可塑性樹脂を注型してからサイドモールド9とボトムモールド11を閉じる。
マッケイ式製法とは、JIS S 5050:1995に規定される革靴種類の製造方法による区分を参考とし、前記の甲被1を靴型8に被せる方法から、一般に袋マッケイと呼ばれるものも含む。
甲被1と中底2を袋状に縫い合わせる場合、周縁同士をすくい縫いで巻きかがりしたストローベル式は、周縁同士を外側につまみ出し縫い合わせたカリフォルニア式に比べ、靴型8挿入すると張力により縫い合わせの隙間や針穴が広がりやすく、表底7成形で靴内へ底材漏出するため一般的なインジェクション式製法には向かないが、靴型底面外周8bより大きい中板4が中底面全体を覆っているので、ストローベル式の袋マッケイ吊り込み甲被6を用いることも可能である。
表底7用の熱可塑性樹脂は、熱可塑性ゴム、ポリ塩化ビニル、ポリウレタンなどの従来からインジェクション式製法に用いられる公知の材料を使用可能であり、発泡性材料であっても良い。中でも、軽量性、クッション性、屈曲性などの観点から発泡性ポリウレタンが好ましい。従来からインジェクション式製法にて行われている表底7の多層成形や、表底空隙12の接地面側にゴムやTPUなどの表外底部品をあらかじめセットして一体成形したり、中板4の表底7側一部分にEVA発泡体などの合中底部品をあらかじめ接着して表底7を成形したりすることも可能である。なお、この合中底部品は仮に表底7表面に一部のぞき見える窓部分を設けてあるとしても、中板4のように表底側面7aの外側まで広がる大きさでは無くあくまで表底7中に内蔵するものであり、底金型16を閉じた状態でボトムモールド上面11aとは接しない。
中板4材料は、前記剛軟度の条件を満たすものであれば、表底7との結合面が接着性良好であり、表底7成形時に熱可塑性樹脂が中板4表面まで浸透しないものを使用可能である。接着性や耐久性などの観点から、一般的に中底2に使用される材料同様、天然皮革、合成皮革、レザーボード、パルプボード(ファイバーボード)、不織布などが好ましく、中でも革靴ではコバとして表に見える美感性の観点から天然皮革やレザーボードがより好ましい。
本発明の中板4周縁挟持による型締め方法において、特に発泡性材料の注型成形では注型量の微調整がやや難しく、底金型16に一体の押圧治具15(図1(B)では図示省略)で靴型8上部を押さえたとしても、底金型16内圧が高くなった場合には底材漏出だけでなく中板4が中底2・靴型8などと共にわずかに持ち上がることもありうる。そこで、ボトムモールド上面11aには、表底空隙上端12aに接し中板外周4aよりも外側へ延びる溝13を設けることができる。射出成形では射出量以外にも成形条件微調整が比較的行いやすく、靴型8は強く保持されており影響が少ない。
表底空隙12を満たした後の過剰な熱可塑性樹脂を通気孔となる溝13へバリ14として排出することにより、射出量や注型量などの微調整まで行わずにショートショットによる欠けは発生させず、射出圧力や発泡成形時の発泡圧力など底金型16内圧を適度に逃がす作用がある。溝13に発生したバリ14は、表底側面7aより外側にはみ出した中板4周縁とともにトリミングすれば良い。
まず図1(A)に示すように、靴型底面8aに2.0mm厚のレザーボードを用いた中底2を仮止めし、そこに2.0mm厚の天然皮革を用いた甲被1周縁を吊り込んで固定した。中底2と甲被1吊り込み代との段差により生じる凹部分に2.0mm厚のEVA発泡体シートを用いた中物3を貼り、そこに靴型底面外周8bよりも幅Wが全周15mm広い3.0mm厚のレザーボードを用いた中板4を接着力弱い粘着性のラバー糊にて仮止めした。一旦靴型8を抜き、甲被1周縁吊り込み代と中底2と中板4を底縫機により縫糸5でロックステッチ縫いにして吊り込み甲被6とした。
次に、前記吊り込み甲被6に再度靴型8を挿入し、図1(A)および(B)に示す底金型16を用いて発泡性ポリウレタンの注型成形により表底7一体成形を行った。サイドモールド9は左右に分割可能であり、表底空隙上端12aは中板外周4aよりも全周約7mm狭く、ボトムモールド上面11aには、表底空隙上端12aに接し中板外周4aよりも外側へ延びる幅6mm・深さ3mmの半円状断面の溝13を約50mm間隔で全周に設けた。
表底7成形の手順は、まず図1(A)および(B)に示すように、サイドモールド9のリップ10で吊り込み甲被6の甲被1と中板4との接合境界部6a近傍を挟持した。次に、ボトムモールド11の表底空隙12に発泡硬化性ウレタンプレポリマーを注型した後、図1(A)に示すようにサイドモールド下面9aとボトムモールド上面11aとの間で中板4周縁を押圧挟持して底金型16を閉じると、ウレタンプレポリマーの発泡硬化に伴い表底空隙12全体を満たし、さらに溝13を途中まで埋めるバリ14が発生して表底7が成形された。
底金型16を開放し靴を取り出した後靴型8を抜き、表底側面7aより外側にはみ出した中板4周縁をバリ14とともに裁断した後、表底側面7a表面のスキン層を削り取る程度まで中板4と共にサンドペーパーでバフィングし側表面を整えた。表底7と中板4の側表面には仕上げ剤を塗布し、靴内には3mm厚のコルクシートを用いた中敷を挿入した。
本実施例1の中板4に用いた3.0mm厚のレザーボードは、JIS L 1096:2010に規定されるA法(45°カンチレバー法)に準拠して剛軟度を測定すると、試験片長さの150mm以上であり測定不能となり、幅Wの15mmよりもはるかに大きかった。そのため、底金型16を閉じる際の作業性には特に影響が無かった。
ボトムモールド上面11aに溝13を加えることで、前述の底金型16内圧を適度に逃がす作用により、中底2・中物3・中板4を靴型底面8aの凹凸立体形状に沿わせながらも表底7の欠け・ヒケ・膨れといった不良は無く、バリ14はトリミングする中板4周縁位置にしか無いためバリ不良も無かった。
実施例1の方法により製造した靴が、使用により底摩耗は進んだものの甲被1は問題無いため、表底7再成形修理を行った。
まず中敷を抜いて、中板4と甲被1・中底2を縫い合わせている縫糸5を切ってほどき、吊り込まれた状態で接着固定している甲被1・中底2・中物3と、表底7が結合している中板4の二つに分解した。この時、甲被1・中物3と中板4の間は粘着性のラバー糊で仮止めされただけなので、簡単に剥がすことができた。
この甲被1・中底2・中物3に新しい中板4を再度仮止めし縫い合わせて、その後は実施例1と同様の手順により表底7を成形し仕上げまで行った。中物3は新しいものと交換しても良い。
1 甲被
2 中底
3 中物
4 中板
4a 中板外周
5 縫糸
6 吊り込み甲被
6a 甲被と中板との接合境界部
7 インジェクション式製法の表底
7a 表底側面
71 マッケイ式製法の表底
8 靴型
8a 靴型底面
8b 靴型底面外周
9 サイドモールド
9a サイドモールド下面
9b サイドモールド分割面(パーティングライン)
10 リップ
11 ボトムモールド
11a ボトムモールド上面
12 表底空隙
12a 表底空隙上端
13 溝
14 バリ
15 押圧治具
16 底金型
W 中板外周の靴型底面外周よりも広い幅
2 中底
3 中物
4 中板
4a 中板外周
5 縫糸
6 吊り込み甲被
6a 甲被と中板との接合境界部
7 インジェクション式製法の表底
7a 表底側面
71 マッケイ式製法の表底
8 靴型
8a 靴型底面
8b 靴型底面外周
9 サイドモールド
9a サイドモールド下面
9b サイドモールド分割面(パーティングライン)
10 リップ
11 ボトムモールド
11a ボトムモールド上面
12 表底空隙
12a 表底空隙上端
13 溝
14 バリ
15 押圧治具
16 底金型
W 中板外周の靴型底面外周よりも広い幅
Claims (1)
- 吊り込み甲被(6)に熱可塑性樹脂の表底(7)を一体成形するインジェクション式製法において、
前記吊り込み甲被(6)はマッケイ式製法の表底(71)に代わるシート状の中板(4)を甲被(1)周縁へ縫糸(5)により縫い合わせてあり、
中板外周(4a)の靴型底面外周(8b)よりも広い幅(W)が全周5mm以上50mm以下、かつ中板(4)のJIS L1096:2010に規定されるA法(45°カンチレバー法)に準拠して測定した剛軟度が前記幅(W)以上であり、
対をなす複数に分割可能なサイドモールド(9)と、表底空隙(12)を形成するボトムモールド(11)からなる底金型(16)を用い、表底空隙上端(12a)は靴型底面外周(8b)よりも広く中板外周(4a)よりも狭い範囲内にあり、
サイドモールド(9)で甲被(1)と中板(4)との接合境界部(6a)近傍を挟持し、サイドモールド下面(9a)とボトムモールド上面(11a)との間で中板(4)周縁を押圧挟持して底金型(16)が閉じてあり、前記表底空隙(12)内に熱可塑性樹脂の表底(7)を成形することを特徴とする靴の製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2016140178A JP2018008477A (ja) | 2016-07-15 | 2016-07-15 | マッケイ式射出成形靴の製造方法 |
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JP2021154043A (ja) * | 2020-03-30 | 2021-10-07 | 株式会社 リフト | 本底部を有するバッグおよびその製造方法 |
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2016
- 2016-07-15 JP JP2016140178A patent/JP2018008477A/ja active Pending
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2021154043A (ja) * | 2020-03-30 | 2021-10-07 | 株式会社 リフト | 本底部を有するバッグおよびその製造方法 |
JP7175933B2 (ja) | 2020-03-30 | 2022-11-21 | 株式会社 リフト | 本底部を有するバッグおよびその製造方法 |
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