JP5523051B2 - 溶融Alめっき鋼線の製造方法 - Google Patents

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本発明は、鋼線の表面をAlで被覆する技術であって、特に細径の鋼芯線に厚いAlめっき層を形成するのに適した溶融Alめっき鋼線の製造方法に関する。
自動車のワイヤーハーネス用素線をはじめとする各種導線には、従来、銅素線が使用されている。しかし、鉄スクラップとともにリサイクルする上で、銅材の混入は好ましくない。このためリサイクル性の観点からは、鉄スクラップとともに溶解可能で且つ導電性が比較的良好なアルミニウム線の適用が有利となる。
また、ワイヤーハーネスを構成する各導線は「かしめ加工」によって端子に締結されることが多く、かしめ部で容易に破断することがないように、個々の素線にはある程度の強度が要求され、また、かしめ締結部での引抜強度が要求される。現状の信号用ワイヤーハーネス素線には、銅素線の場合は直径約0.2mm以上、アルミニウム素線の場合には直径1mm以上の線径を確保することが必要とされる。
一方、高強度・高耐食性が要求される用途において、鋼線を芯線とするAlめっき鋼線が知られている(特許文献1、2)。特許文献1には漁網ロープ用、送電線の補強用、海底光ファイバーケーブル補強用等のワイヤーに使用するAlめっき鋼線が記載されている。特許文献1の実施例に開示されている鋼線は線径2〜13mmと太いものであり、Alめっきの目的は耐食性改善である。特許文献2のAlめっき線材は高強度ボルト用であり、その図2には7mm径のものが示されている。
Alめっき鋼線は、芯材である「鋼」に高強度を負担させることができる。しかし、良好な導電性を確保するためには、電気抵抗の小さいAlめっき層の厚さを鋼芯線に対して十分に厚くする必要がある。例えば直径0.1〜1.0mm、特に好ましくは直径0.1〜0.6mmといった細径の鋼線の表面に平均厚さ50μm以上のAlめっき層を有するAlめっき鋼線を製造することができれば、そのAlめっき鋼線を必要に応じて伸線加工することにより、ワイヤーハーネス素線等に適した強度および導電性を有する細径の導線を得ることが可能となる。本出願人はこれまでにそのようなAlめっき鋼線を試作し、特許文献3、4に開示した。
特開平3−219025号公報 特開2004−360022号公報 特開2009−179865号公報 特開2009−187912号公報
特許文献3、4に開示したとおり、細径であり且つめっき付着量の多い溶融Alめっき鋼線を作製すること自体は可能である。しかし、これを工業的に安定して製造することは容易でなかった。例えば溶融Alめっき直前にガス還元を行う工程を採用する場合、鋼芯線の径が細いと還元工程の高温加熱で鋼芯線が破断しやすい。このため、還元温度をできるだけ低くしたり還元時間をできるだけ短くしたりする措置が必要となり、十分に活性化された理想的な表面性状を持たない鋼芯線を溶融Alめっき浴に送給せざるを得ない状況が生じやすい。この場合、めっき付着量を十分に確保することが難しくなる。また、特許文献3に示されるようにZnめっき鋼線を素材に用い、溶融Alめっき層中に断片状のFe−Al合金層を分散させる手法は、製造条件範囲に制約が大きい。
本発明はこのような現状に鑑み、細径の鋼線の表面を厚い溶融Alめっき層で被覆するのに適した溶融Alめっき技術であって、特に工業的に実施しやすい技術を提供するものである。
上記目的は、溶融Alめっき浴に浸漬した鋼線を気相空間に連続的に引き上げる方法で鋼線表面に溶融Alめっきを施すにあたり、浴面から引き上げられる鋼線の中心線を含むある平面内で、鋼線の水平方向両側における浴面高さに差が生じる状態を作り、その状態を維持しながら鋼線を引き上げる溶融Alめっき鋼線の製造方法によって達成される。
より詳細には、この製造方法は、上記のように鋼線の水平方向両側における浴面高さに差が生じる状態を維持しながら鋼線を引き上げることによって、引き上げられる鋼線に随伴して形成される溶融Alのメニスカスを浴面高さが高い側で発達させ、その発達したメニスカスからのAl供給を利用して、前記浴面高さに差がない場合と比べ、Alめっき付着量を増大させる溶融Alめっき鋼線の製造方法である。
上記において、引き上げられる鋼線周囲のめっき浴面の一部領域に気相空間側から局所的に窒素ガスなどの気体を吹き付けて浴面に窪みを形成させることにより、前記の水平方向両側における浴面高さに差が生じる状態を作る手法を採用することが好適である。
吹き付ける気体の流量および鋼線のライン速度を調整することによりAlめっき付着量を制御することができる。この場合、例えばAlめっき層の長手方向平均厚さが50μm以上という厚目付の溶融Alめっきを施すことが可能である。100μm以上の平均厚さを確保することもできる。Alめっき層の平均厚さδ(μm)は、溶融Alめっき鋼線の平均直径をDa(μm)、鋼芯線の平均直径をDs(μm)とするとき、δ=(Da−Ds)/2で表される。ただし、DaおよびDsは平均円相当径が採用される。ここで、線材の長手方向に垂直な断面の面積をS(μm2)、円周率をπとするとき、S=πD2/4によって定まるD(μm)をその線材の円相当径という。
前記気相空間の雰囲気を3〜25体積%の酸素を含有する酸化性雰囲気(空気である場合を含む)とすることによって、Alめっき付着量を顕著に増大させるためのめっき条件の自由度が拡大する。
溶融Alめっきに供する鋼線の直径(鋼芯線の表面にZnめっき層あるいはNiめっき層等のプレめっき層を有する場合は、そのプレめっき層を含めた直径)が0.1〜1.0mmのものが特に好適な対象となる。
本発明によれば、めっき付着量の多い細径の溶融Alめっき鋼線を効率的に生産することが可能となった。この手法によって得られる溶融Alめっき鋼線は、単に鋼材の表面処理として薄いアルミニウム被覆を施したものではなく、アルミニウム導線の断面内部に鋼芯線を配置したような断面構造を有する「アルミニウム/鋼複合線材」である。これは「鋼強化アルミニウム線材」と呼ぶこともできる。この線材はアルミニウムの断面比率が高いので導電性が良く、鋼芯線を内部に有するので「かしめ加工部」での耐破断性に優れ、銅材を使用しないので鉄スクラップとしてのリサイクルが可能である。したがって、本発明はワイヤーハーネス素線に好適な「アルミニウム/鋼複合線材」の工業的普及に寄与しうるものである。
従来の溶融Alめっき鋼線の製造方法における、めっき浴面から引き上げられる鋼線の中心線を含む断面内の浴面形態を模式的に示した図。 本発明の溶融Alめっき鋼線の製造方法における、めっき浴面から引き上げられる鋼線の中心線を含むある断面内の浴面形態を模式的に示した図。 本発明の溶融Alめっき鋼線の製造方法における、めっき浴面から引き上げられる鋼線、ノズルおよび浴面窪みの鉛直方向から見た位置関係を模式的に示した図。 本発明の溶融Alめっき鋼線の製造方法における、めっき浴面から引き上げられる鋼線、ノズルおよび浴面窪みの図3B方向から見た位置関係を模式的に示した図。 本発明の溶融Alめっき鋼線の製造方法における、めっき浴面から引き上げられる鋼線の中心線を含むある断面内の浴面形態の他の例を模式的に示した図。 浴面窪みの位置が鋼線から遠すぎる場合における、めっき浴面から引き上げられる鋼線の中心線および浴面窪みの中心部を含む断面内の浴面形態を模式的に示した図。 本発明の製造方法によって得られた溶融Alめっき鋼線の長手方向に垂直な断面の光学顕微鏡写真の一例。 Alめっき層の平均厚さに及ぼすライン速度の影響を例示したグラフ。 Alめっき層の平均厚さに及ぼす浴面への気体吹き付け流量の影響を例示したグラフ。 Alめっき層の平均厚さに及ぼす気相空間の酸素濃度の影響を例示したグラフ。
図1に、従来の溶融Alめっき鋼線の製造方法における、めっき浴面から引き上げられる鋼線の中心線を含む断面内の浴面形態を模式的に示す。図中、線径およびめっき層厚さは誇張して描いてある(後述の図2〜6において同じ)。溶融Alめっき浴1に浸漬された鋼線3は連続的に気相空間2へ矢印の方向に引き上げられ、Alめっき層7で被覆された溶融Alめっき鋼線30が得られる。この場合、浴面10の平均高さは、引き上げられる鋼線3の周囲においてほぼ一定である。引き上げられる鋼線3に随伴して溶融Alのメニスカス20が形成され、このメニスカス20を構成する溶融Alの一部が鋼線3の表面に付着して持ち上げられ、これがAlめっき層7となる。鋼線3の径が例えば0.6mm程度以下と小さい場合は、鋼板や太径の鋼線に溶融Alめっきを施す場合とは異なり、ライン速度を大きくしても鋼線3の表面に付着して立ち登る溶融Alの量(めっき厚さ)を増大させることは難しい。つまり、メニスカス20を構成する溶融Alは溶融Alめっき浴1の中へ流れ落ちやすい。このため、細径の鋼線に厚い溶融Alめっき層を形成させることは容易でない。
図2に、本発明の溶融Alめっき鋼線の製造方法における、めっき浴面から引き上げられる鋼線の中心線を含むある断面内の浴面形態の一例を模式的に示す。溶融Alめっき浴1から気相空間2へ連続的に引き上げられる鋼線3の周囲の一部領域に、鋼線3の表面通過位置に沿って浴面窪み4が形成されている。図示された断面内において、鋼線3に沿う浴面は、浴面窪み4の部分とその反対側で高さに差が生じている。すなわち浴面窪み4の部分における浴面11の平均高さをh1、反対側の浴面12の平均高さをh2とするとき、浴面から引き上げられる鋼線3の中心線を含むある平面内で、鋼線3の水平方向両側における浴面平均高さにΔh=h2−h1の差が生じている。このような浴面状態を維持しながら鋼線3を引き上げると、浴面が低い側に形成されるメニスカス21に比べ、浴面が高い側に形成されるメニスカス22を著しく発達させることができることがわかった。
このように、引き上げられる鋼線3の周囲の一部に巨大化したメニスカスが形成されているとき、その巨大メニスカスからのAl供給を利用して、溶融Alめっき層7の平均厚さ(めっき付着量)を顕著に増大させることができるのである。その理由については現時点で必ずしも明確ではないが、浴面近傍に形成される小さいメニスカスと比べ、浴面からの高さが高い位置まで発達した巨大メニスカスでは、メニスカス上部付近の温度低下が大きくなってメニスカスを構成する溶融Alの粘性が増大し、これが一因となって鋼線3に付着して立ち登る溶融Alの量が著しく増加するのではないかと考えられる。
上記の浴面窪み4を形成させる手法としては、気相空間2の側に気体を吹き出すためのノズルを配置し、引き上げられる鋼線3の周囲のめっき浴面の一部領域に気相空間2の側から局所的に気体を吹き付ける手法が採用できる。
図3に、本発明の溶融Alめっき鋼線の製造方法における、めっき浴面から引き上げられる鋼線、ノズルおよび浴面窪みの鉛直方向から見た位置関係を模式的に示す。前述図2は、図3のA方向から水平に見たものである。気相空間にノズル5が配置され、引き上げられる鋼線3に沿う浴面の一部領域に局所的に気体6を吹きつけることにより浴面窪み4が形成される。ノズル5は吐出気流の中心軸61が鋼線3の中心軸31と交わらないようにすることが好ましい。気体6が鋼線3に直接当たると引き上げられる鋼線に振動が生じやすくなり、安定した操業ができない場合がある。
図4に、図3のB方向から水平に見た場合の、鋼線、ノズルおよび浴面窪みの位置関係を模式的に示す。気相空間2に設置するノズル5は浴面10に対して斜め上方から気体6を吹き付けるように配置することが望ましい。
図5に、本発明の溶融Alめっき鋼線の製造方法における、めっき浴面から引き上げられる鋼線の中心線を含むある断面内の浴面形態の他の例を模式的に示す。ノズル5の配置の仕方によっては、このように鋼線3を挟んだ水平方向両側の浴面11、12がともに定常部分の浴面10よりも低い位置になることがある。このような場合でも両側の浴面平均高さの差Δh=h2−h1が生じていれば、浴面が低い側に形成されるメニスカス21に比べ、浴面が高い側に形成されるメニスカス22を発達させることができ、前述のようにその発達したメニスカスからのAl供給を利用して、Alめっき付着量を顕著に増大させることができる。
図6に、浴面窪みの位置が鋼線から遠すぎる場合における、めっき浴面から引き上げられる鋼線の中心線および浴面窪みの中心部を含む断面内の浴面形態を模式的に示す。この場合は、鋼線3に沿う周囲の浴面状態において、浴面窪み4が形成されている側の浴面11と、その反対側の浴面12の平均高さの差Δh=h2−h1は実質的にゼロであり、浴面窪み4の反対側に形成されるメニスカス22は発達しない。その結果、図1の場合と同様、溶融Alめっきの付着量増大効果は得られない。
上記の浴面平均高さの差Δhは、目視観測可能な程度(概ね1mm)以上の大きさであれば、それが定常的に生じている限り、溶融Alめっきの付着量増大効果を得ることができる。Δhは3mm以上であることがより効果的であり、5mm以上とすることもできる。ただし、あまり過大な浴面窪みを形成させると浴面の波立ちが荒くなり、引き上げ途上の鋼線が振動するなどして、安定した操業が難しくなる。種々検討の結果、Δhは25mm以下の範囲で十分であり、15mm以下となるように管理しても構わない。ノズル位置、ノズル形状、吹き付ける気体の流量などによってΔhを調整することができる。Δhが1mm未満の場合、メニスカス22が発達せず、溶融Alめっきの付着量増大効果は得られない。また、Δhが25mmを超えてもメニスカス22は発達し、付着量増大効果は得られるが、浴面の波立ちが荒くなることや、ガス流量を増大する必要があることなどの問題が生じ、コスト的に不利となる。なお、後述の実施例で浴面窪みを形成するために気体を吹き付けたものは、図9の*印を付した例を除き、いずれもΔhが3〜25mmの範囲内にある。
浴面窪みを形成するために吹き付ける気体は、種々のものが適用できるが、窒素、アルゴン等の不活性ガス主体の気体(例えば酸素濃度が0〜3体積%、残部窒素またはアルゴン)を適用することがより好ましい。ノズル位置、ノズル形状を一定とした場合、吹き付ける気体の流量によってAlめっき付着量(Alめっき層の平均厚さ)を制御することができる。
溶融Alめっき浴は、Si含有量を0〜12質量%とすることができる。すなわち、Si含有量が0〜1質量%のいわゆる純Alめっき浴を適用することができる他、Si含有量が12質量%以下のAlめっき浴を適用することもできる。Siを添加することによりFe−Al反応層の成長を抑制することができ、伸線加工性の向上に有効となる。また、Si添加により融点が低下するので、製造が容易となる。ただし、Si含有量が増加するとAlめっき層自体の加工性が低下する。また導電性低下にも繋がる。したがって、Alめっき浴にSiを含有させる場合は12質量%以下の範囲で行うこと望ましい。なお、浴中の不純物として、Fe:4質量%以下、Zn:1質量%以下が含まれていて構わない。
本発明の溶融Alめっきに供する鋼線としては、溶融Alめっきを行う直前に、還元性ガス雰囲気中(例えばH2−N2混合ガス中)で加熱処理を施して、鋼の表面を活性化した状態の鋼線を適用することができる他、表面にZnめっき、Niめっき、Cuめっき、Zn−Ni合金めっき、Cu−Zn合金めっきなどを施した鋼線を適用することができる。これらのめっき(本明細書では「プレめっき」と呼ぶことがある)を施した鋼線は、還元性ガス雰囲気中での加熱を省略して、直接溶融Alめっき浴に送給することができる。ただしNiめっき鋼線の場合は、還元性ガス雰囲気中での加熱を行った後に溶融Alめっきに供することがより好ましい。
上記のZnめっき鋼線は主として溶融Znめっき法または電気Znめっき法により得ることができ、Niめっき鋼線は電気Niめっき法により得ることができる。これらのプレめっき鋼線は、プレめっき後に伸線加工を行って線径を適正化しておくことができる。溶融Alめっき浴に供する段階において、Znめっき鋼線のZnめっき平均厚さは0.3〜25μmとすることが好ましく、Niめっき鋼線のNiめっき平均厚さは0.5〜5.0μmとすることが好ましい。Niめっき鋼線を使用すると、鋼芯線と溶融Alめっき層の界面に生じる脆いFe−Al合金層の厚さが薄くなり、加工性向上に有利となる。なお、Znめっき層やNiめっき層は、溶融Alめっき浴中で、その全部または大部分が溶融Alと反応する。このため、溶融Alめっき鋼線の断面においてこれらのプレめっき層は観測されないことが多い。
本発明は直径が0.1〜1.0mmである鋼線を溶融Alめっきに供する場合に特に効果的であるが、ワイヤーハーネス素線などに適した細径の線材を得るためには、直径が0.1〜0.6mmである鋼線を溶融Alめっきに供することがより好ましい。特に、そのような細径の鋼線の表面に、長手方向の平均厚さが50μm以上の溶融Alめっき層を有する溶融Alめっき鋼線は、必要に応じてその後に伸線加工を施すことによって、ワイヤーハーネス素線に適した線材とすることができる。また、直径が0.1〜0.4mmの細径の鋼線の表面に、平均厚さ100μm以上(例えば100〜150μm)の溶融Alめっき層を有する溶融Alめっき鋼線は、強度および導電性を高いレベルで兼ね備えた線材とすることができ、これはワイヤーハーネス素線用途に特に好適である。
溶融Alめっき付着量を制御する手法としては、浴面窪みを形成するために吹き付ける気体の流量を調整する方法の他、鋼線のライン速度を調整する方法が挙げられる。ライン速度を大きくしていくと、鋼線に随伴して立ち登る溶融Alの量が増大することによってAlめっき付着量は急激に増大する。しかし、ライン速度が過大になると逆にAlめっき付着量が減少するようになる。これはライン速度が大きくなりすぎるとメニスカス近傍での浴表面温度が低下しにくくなること、あるいは溶融Alめっき浴中の浸漬時間が短くなることにより鋼線表面と溶融Alの界面において、溶融Alの付着張力が十分に得られないことなどが原因ではないかと推察される。
なお、めっき浴から引き上げられる途上にある線材の溶融Al未凝固領域に気体を吹き付けるなどの手段を適用することにより、溶融Alめっき付着量をさらに調整することや、溶融Alめっき厚さの断面内均一性を向上させることが可能である。
溶融Alめっき付着量を増大させるためには、気相空間の雰囲気を酸素濃度が3体積%以上の酸化性雰囲気とすることが有効である。これにより、Alめっき層の長手方向平均厚さが例えば50μm以上という厚目付の溶融Alめっき鋼線を製造するためのめっき条件(ライン速度、気体吹き付け流量、浴温など)の自由度が拡大する。特に、例えば100μm以上という厚いAlめっき層を安定して形成させるためには、気相空間の雰囲気を酸素濃度を4体積%以上とすることが極めて効果的である。空気雰囲気をそのまま利用することもできる。一方、あまり酸素濃度を高めてもそれに見合った効果は得られないので、気相空間の酸素濃度は25体積%以下とすることが望ましく、22体積%以下としても構わない。気相空間に存在する酸素は浴面付近の酸化膜の生成に影響し、適度な酸素濃度が確保されている場合にメニスカス近傍での溶融Alの粘性増大作用が発揮され、その結果、溶融Alめっき付着量の増大効果が一層得られやすくなるものと考えられる。
図7に、本発明の製造方法によって得られた溶融Alめっき鋼線の長手方向に垂直な断面の光学顕微鏡写真の一例を示す。中央付近のグレーに見える部分が鋼芯線、その周囲の白っぽく見える部分が溶融Alめっき層である。
連続溶融めっき鋼線製造ラインを用いて、鋼線を長手方向に連続的に搬送し、溶融Alめっき浴中に浸漬したのち鉛直方向にめっき浴から気相空間に引き上げる手法にて、種々のライン速度にて溶融Alめっき鋼線を製造した。この連続溶融めっき鋼線製造ラインは、めっき浴から引き上げられる鋼線周囲のめっき浴面の一部領域に気相空間側から局所的に気体を吹き付けて浴面に窪みを形成させるためのノズルを有しており、図3、図4に示したように、ノズルは浴面に対して斜め上方から気体が吹き付けられるように配置され、吐出気流の中心軸が鋼線の中心軸と交わらないようになっている。そして、このノズルから窒素ガスを浴面に吹き付けることにより、図2に示したような形態の浴面窪みが鋼線に沿う位置に形成され、浴面から引き上げられる鋼線の中心線を含むある平面内で、鋼線の水平方向両側における浴面高さに差が生じる状態が実現できるようになっている。
溶融Alめっきに供する鋼線として、直径0.2mmのZnめっき鋼線を使用した。このZnめっき鋼線は、直径1.0mmの溶融Znめっき硬鋼線(JIS素材規格;27A)をドローイングにより伸線加工して直径0.2mmとしたものであり、その表面には平均厚さ4μmのZnめっき層を有している。芯材である鋼の組成は、質量%でC:0.24〜0.31%、Si:0.15〜0.35%、Mn:0.3〜0.6%、P:0.030%以下、S:0.030%以下、残部Feおよび不可避的不純物の範囲内にある。
溶融Alめっきは、上記Znめっき鋼線を、還元処理することなく直接溶融Alめっき浴に送給する方法で行い、めっき条件は、以下のとおりである。
・めっき浴組成(質量%); Fe:1.5〜2.5%、Zn:0.1〜0.2%、残部Al
・めっき浴温; 685℃±5℃
・ライン速度: 5〜150m/min
・めっき浴中の線材浸漬長さ; 800mm
・気相空間; 空気
・ノズルから浴面に吹き付ける気体; 窒素ガス
・浴面への気体吹きつけ流量; 20L/min、0L/min(吹きつけなし)のいずれか
結果を図8に示す。図8からわかるように、浴面に気体を吹き付けることによって鋼線に沿う位置に浴面窪みを形成させた場合には、適切なライン速度に設定することによって、平均厚さ50μm以上、あるいはさらに平均厚さ100μm以上という厚目付のAlめっき層を有する溶融Alめっき鋼線を得ることができた。これに対し、浴面に気体を吹き付けることなく、図1に示したような状態を維持した場合には、ライン速度を変化させても、めっき付着量の顕著な増大効果は見られなかった。
ライン速度を35m/Lと一定にし、浴面へ吹きつける気体(窒素ガス)の流量を種々変化させたことを除き、実施例1と同様の条件で溶融Alめっき鋼線を製造した。
結果を図9に示す。図9からわかるように、浴面に吹き付ける気体の流量がゼロから増大していくと、それに伴って溶融Alめっき層の平均厚さも増大していく。これは、浴面窪み側の平均浴面高さh1と、その反対側の浴面平均高さh2の差Δh=h2−h1が大きくなるに伴って、浴面高さが高い側に形成されるメニスカスが大きく発達することに起因する。吹き付け気体流量がある程度以上になると(この例では20L/min程度以上になると)Alめっき層の平均厚さは定常的になる。これは前記メニスカスの発達が頭打ちになるためだと考えられる。さらに吹き付け気体流量が増大すると(この例では40L/min程度以上になると)Alめっき層の厚さは不安定となり、長手方向での変動が大きくなる。これは、浴面の波立ちが大きくなり、引き上げ途上の鋼線が振動することに起因する。
ライン速度を35m/Lと一定にし、気相空間の酸素濃度を種々変化させたことを除き、実施例1と同様の条件で溶融Alめっき鋼線を製造した。気相空間の酸素濃度の調整は、石英製のシールドで浴面の一部を覆い、そのシールド内に浴面窪みを形成させるための窒素ガスを一定流量(20L/min)で導入しながら、別途空気を種々の流量で導入することによって行った。そして酸素濃度測定用のサンプリングパイプを、その先端がメニスカスの上端より高く、溶融Alめっき層が完全に凝固しない高さの鋼線近傍に位置するように配置し、酸素濃度を測定した。
結果を図10に示す。図10中には気相空間が空気である場合のプロットも付してある。図10からわかるように、気相空間の酸素濃度が2体積%以上になると急激にめっき付着量の増大効果が大きくなり、酸素濃度が3体積%以上の領域で溶融Alめっき層の平均厚さは100μm以上となった。
実施例1と同様の装置を用いて、めっき浴温、めっき浴組成、溶融Alめっきに供する鋼線のプレめっきの有無、ガス還元の有無、鋼線の直径などの条件を表1に示すように種々変更し、溶融Alめっき鋼線の製造を行った。表1に特に示していない条件は実施例1と同様(ただし吹き付け気体流量は10〜30L/minの範囲)とした。還元処理の条件は、10%H2−N2ガス、600℃×1min、Znプレメッキ厚さは4μm、Niプレメッキ厚さは2.0μmである。溶融Alめっき浴の種類を「Al」と表示したものは実施例1と同様の浴組成である。いずれの例も浴面に窒素ガスを吹き付けることにより、図2に示したような浴面窪みが形成される条件で溶融Alめっきを行った。結果を表1に示す。
表1からわかるように、これらの条件においても厚目付の溶融Alめっき鋼線が得られた。
1 溶融Alめっき浴
2 気相空間
3 鋼線
4 浴面窪み
5 ノズル
6 気体
7 溶融Alめっき層
10、11、12 浴面
20、21、22 メニスカス
30 溶融Alめっき鋼線
31 鋼線の中心軸
61 吐出気流の中心軸

Claims (4)

  1. 溶融Alめっき浴に浸漬した鋼線を気相空間に連続的に引き上げる方法で鋼線表面に溶融Alめっきを施すにあたり、引き上げられる鋼線周囲のめっき浴面の一部領域に気相空間側から局所的に気体を吹き付けて浴面に窪みを形成させることにより、浴面から引き上げられる鋼線の中心線を含むある平面内で、鋼線の水平方向両側における浴面高さに差が生じる状態を作り、その状態を維持しながら鋼線を引き上げる溶融Alめっき鋼線の製造方法。
  2. 前記の吹き付ける気体を窒素ガスとする請求項に記載の溶融Alめっき鋼線の製造方法。
  3. 吹き付ける気体の流量および鋼線のライン速度を調整することによりAlめっき付着量を制御する請求項またはに記載の溶融Alめっき鋼線の製造方法。
  4. 溶融Alめっき層の平均厚さを50μm以上に制御する請求項に記載の溶融Alめっき鋼線の製造方法。
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