WO2017170969A1 - 溶融アルミニウムめっき鋼線の製造方法 - Google Patents

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Abstract

鋼線(2)を溶融アルミニウムめっき浴(1)に浸漬させた後、当該溶融アルミニウムめっき浴(1)から引き上げられた溶融アルミニウムめっき鋼線(3)と溶融アルミニウムめっき浴(1)の浴面(10)との境界部で安定化部材(11)を当該溶融アルミニウムめっき浴(1)の浴面(10)および当該溶融アルミニウムめっき鋼線(3)と接触させ、当該溶融アルミニウムめっき鋼線(3)を介して当該安定化部材(11)と対向する位置に不活性ガスを吹き付けるためのノズル(12)を配設し、当該ノズル(12)の先端(12a)から前記境界部に600~1000℃の温度を有する不活性ガスを0.1~20kPaの圧力で吹き付ける溶融アルミニウムめっき鋼線の製造方法。

Description

溶融アルミニウムめっき鋼線の製造方法
 本発明は、溶融アルミニウムめっき鋼線の製造方法に関する。さらに詳しくは、本発明は、例えば、自動車のワイヤーハーネスなどに好適に使用することができる溶融アルミニウムめっき鋼線の製造方法に関する。
 なお、本明細書において、溶融アルミニウムめっき鋼線は、溶融アルミニウムめっき浴に鋼線を浸漬させた後、当該溶融アルミニウムめっき浴から鋼線を連続して引き上げることによってアルミニウムめっきが施された鋼線を意味する。また、溶融アルミニウムめっき浴は、溶融されているアルミニウムのめっき液を意味する。
 自動車のワイヤーハーネスなどに用いられる電線には、従来、銅線が用いられている。しかし、近年、軽量化が要求されていることから、銅線よりも軽量である金属線が用いられた電線の開発が望まれている。
 銅線よりも軽量である金属線として、鋼芯線に溶融アルミニウムめっきが施された溶融Alめっき鋼線が提案されている(例えば、特許文献1の請求項1参照)。前記溶融Alめっき鋼線は、鋼芯線からなる素材鋼線または鋼芯線の表面に亜鉛めっき層またはニッケルめっき層を有する素材鋼線を溶融アルミニウムめっき浴に浸漬させた後、気相空間に連続して引き上げることにより、製造されている(例えば、特許文献1の段落[0024]参照)。
 また、溶融アルミニウムめっき鋼線を製造する方法として、溶融アルミニウムめっき浴に鋼線を浸漬させた後、当該溶融アルミニウムめっき浴から鋼線を連続して引き上げることによって溶融アルミニウムめっき鋼線を製造する方法であって、前記鋼線を溶融アルミニウムめっき浴に浸漬させた後、当該溶融アルミニウムめっき浴から引き上げる際に、鋼線と溶融アルミニウムめっき浴の浴面との境界部で浴面および鋼線に安定化部材を接触させ、当該鋼線から1~50mmの距離で離れた箇所にノズルの先端が位置するように先端の内径が1~15mmのノズルを配設し、当該ノズルの先端から200~800℃の温度を有する不活性ガスを2~200L/minの体積流量で鋼線と溶融アルミニウムめっき浴の浴面との境界部に向けて吹き付けることを特徴とする溶融アルミニウムめっき鋼線の製造方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。前記製造方法によれば、線径が均一であり、表面にアルミニウム塊が付着しがたい溶融アルミニウムめっき鋼線を効率よく製造することができるという優れた効果が奏される。しかし、前記方法によって溶融アルミニウムめっき鋼線を製造した場合、溶融アルミニウムめっき鋼線にめっき被膜の厚さが薄い部分が生じるおそれがある。
 また、溶融アルミニウムめっき浴の浴温は、熱効率を考慮した場合、低いほうが好ましいが、当該溶融アルミニウムめっき浴の融点よりも20℃高い温度以下である場合には、溶融アルミニウムめっき鋼線の表面にアルミニウム塊が付着するおそれがある(本明細書の比較例1、2、6および7参照)。
 めっき被膜の厚さが薄い部分を有する溶融アルミニウムめっき鋼線または表面にアルミニウム塊が付着した溶融アルミニウムめっき鋼線は、伸線加工を施したとき、その内部の鋼線が外部に露出したり、伸線加工時に溶融アルミニウムめっき鋼線の引き抜き抵抗が変動し、当該溶融アルミニウムめっき鋼線が断線したりするおそれがある。
特開2014-185355号公報 特開2015-134961号公報
 本発明は、前記従来技術に鑑みてなされたものであり、溶融アルミニウムめっき浴の浴温が低い温度であっても、めっき被膜の厚さが薄い部分が生じがたく、表面にアルミニウム塊が付着しがたい溶融アルミニウムめっき鋼線を効率よく製造することができる溶融アルミニウムめっき鋼線の製造方法を提供することを課題とする。
 本発明は、
(1) 溶融アルミニウムめっき浴に鋼線を浸漬させた後、当該溶融アルミニウムめっき浴から鋼線を連続して引き上げることによって溶融アルミニウムめっき鋼線を製造する方法であって、鋼線を当該溶融アルミニウムめっき浴に浸漬させた後、当該溶融アルミニウムめっき浴から引き上げられた溶融アルミニウムめっき鋼線と溶融アルミニウムめっき浴の浴面との境界部で安定化部材を当該溶融アルミニウムめっき浴の浴面および当該溶融アルミニウムめっき鋼線と接触させ、当該溶融アルミニウムめっき鋼線を介して当該安定化部材と対向する位置に不活性ガスを吹き付けるためのノズルを配設し、当該ノズルの先端から前記境界部に600~1000℃の温度を有する不活性ガスを0.1~20kPaの圧力で吹き付けることを特徴とする溶融アルミニウムめっき鋼線の製造方法、
(2) 鋼線が炭素鋼またはステンレス鋼からなる鋼線である前記(1)に記載の溶融アルミニウムめっき鋼線の製造方法、および
(3) 溶融アルミニウムめっき浴の浴温を当該溶融アルミニウムめっき浴の融点よりも15℃以上高くなるように調整する前記(1)または(2)に記載の溶融アルミニウムめっき鋼線の製造方法
に関する。
 本発明の溶融アルミニウムめっき鋼線の製造方法によれば、溶融アルミニウムめっき浴の浴温が低い温度であっても、めっき被膜の厚さが薄い部分が生じがたく、表面にアルミニウム塊が付着しがたい溶融アルミニウムめっき鋼線を効率よく製造することができるという優れた効果が奏される。
本発明の溶融アルミニウムめっき鋼線の製造方法の一実施態様を示す概略説明図である。 図1に示される鋼線導入部制御装置の一実施態様を示す概略断面図である。 図1および図2に示される鋼線導入部制御装置に用いられる浴面制御装置の一実施態様を示す概略断面図である。 本発明の溶融アルミニウムめっき鋼線の製造方法において、鋼線を溶融アルミニウムめっき浴から引き上げる際の鋼線と溶融アルミニウムめっき浴の浴面との境界部の概略説明図である。 各実施例および各比較例で得られた溶融アルミニウムめっき鋼線のめっき被膜の平均厚さを測定する方法の一実施態様を示す概略説明図である。
 本発明の溶融アルミニウムめっき鋼線の製造方法は、前記したように、溶融アルミニウムめっき浴に鋼線を浸漬させた後、当該溶融アルミニウムめっき浴から鋼線を連続して引き上げることによって溶融アルミニウムめっき鋼線を製造する方法であり、鋼線を当該溶融アルミニウムめっき浴に浸漬させた後、当該溶融アルミニウムめっき浴から引き上げられた溶融アルミニウムめっき鋼線と溶融アルミニウムめっき浴の浴面との境界部で安定化部材を当該溶融アルミニウムめっき浴の浴面および当該溶融アルミニウムめっき鋼線と接触させ、当該溶融アルミニウムめっき鋼線を介して当該安定化部材と対向する位置に不活性ガスを吹き付けるためのノズルを配設し、当該ノズルの先端から前記境界部に600~1000℃の温度を有する不活性ガスを0.1~20kPaの圧力で吹き付けることを特徴とする。
 本発明の溶融アルミニウムめっき鋼線の製造方法によれば、前記操作が採られているので、溶融アルミニウムめっき浴の浴温が低い温度であっても、めっき被膜の厚さが薄い部分が生じがたく、表面にアルミニウム塊が付着しがたい溶融アルミニウムめっき鋼線を効率よく製造することができる。
 本明細書において、溶融アルミニウムめっき浴の浴温が低い温度とは、溶融アルミニウムめっき浴の浴温が、当該溶融アルミニウムめっき浴の融点よりも15℃以上高い温度であって、当該溶融アルミニウムめっき浴の融点よりも20℃高い温度以下の温度であることを意味する。
 以下に、本発明の溶融アルミニウムめっき鋼線の製造方法を図面に基づいて説明するが、本発明は、当該図面に記載の実施態様のみに限定されるものではない。
 図1は、本発明の溶融アルミニウムめっき鋼線の製造方法の一実施態様を示す概略説明図である。
 本発明の溶融アルミニウムめっき鋼線の製造方法では、溶融アルミニウムめっき浴1に鋼線2を浸漬させた後、当該溶融アルミニウムめっき浴1から鋼線2を連続して引き上げることにより、溶融アルミニウムめっき鋼線3が製造される。
 鋼線2を構成する鋼材としては、例えば、ステンレス鋼、炭素鋼などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
 ステンレス鋼は、クロム(Cr)を10質量%以上含有する合金鋼である。ステンレス鋼としては、例えば、JIS G4309に規定されているオーステナイト系の鋼材、フェライト系の鋼材、マルテンサイト系の鋼材などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。ステンレス鋼の具体例としては、SUS301、SUS304などの一般にオーステナイト相が準安定であるとされるステンレス鋼;SUS305、SUS310、SUS316などの安定オーステナイト系ステンレス鋼;SUS405、SUS410L、SUS429、SUS430、SUS434、SUS436、SUS444、SUS447などのフェライト系ステンレス鋼;SUS403、SUS410、SUS416、SUS420、SUS431、SUS440などのマルテンサイト系ステンレス鋼などをはじめ、SUS200番台に分類されるクロム-ニッケル-マンガン系のステンレス鋼などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
 炭素鋼は、炭素(C)を0.02質量%以上含有する鋼材である。炭素鋼としては、例えば、JIS G3506の硬鋼線材の規格に規定されている鋼材、JIS G3505の軟鋼線材の規格に規定されている鋼材などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。炭素鋼の具体例としては、硬鋼、軟鋼などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
 前記鋼材のなかでは、溶融アルミニウムめっき鋼線3の引張強度を高める観点から、ステンレス鋼および炭素鋼が好ましい。
 鋼線2の直径は、特に限定されず、溶融アルミニウムめっき鋼線3の用途に応じて適宜調整することが好ましい。例えば、溶融アルミニウムめっき鋼線3を自動車のワイヤーハーネスなどの用途に用いる場合には、鋼線2の直径は、通常、0.05~0.5mm程度であることが好ましい。
 鋼線2は、溶融アルミニウムめっきが施される前に脱脂されていてもよい。鋼線2の脱脂は、例えば、鋼線2をアルカリ脱脂液に浸漬した後、水洗し、鋼線2に付着しているアルカリ分を中和し、再び水洗することによって脱脂を行なう方法、鋼線2をアルカリ脱脂液に浸漬した状態で鋼線2に通電することによって電解脱脂を行なう方法などによって行なうことができる。なお、前記アルカリ脱脂液には、脱脂力を向上させる観点から、界面活性剤を含有させてもよい。
 図1において、鋼線2は、送出装置4から送り出され、矢印A方向に連続的に通線され、めっき浴槽5内の溶融アルミニウムめっき浴1に浸漬される。
 なお、鋼線2が炭素鋼からなる鋼線2である場合、鋼線2が脱脂されていても溶融アルミニウムめっきを行なうまでの間に鋼線2の表面に錆が発生するおそれがあることから、送出装置4から溶融アルミニウムめっき浴1との間で鋼線2の脱脂を行なうことが好ましい。炭素鋼からなる鋼線2の脱脂は、前記鋼線2の脱脂と同様の方法によって行なうことができる。
 溶融アルミニウムめっき浴1には、アルミニウムのみが用いられていてもよく、必要により、本発明の目的を阻害しない範囲内で他の元素が含有されていてもよい。前記他の元素としては、例えば、ニッケル、クロム、亜鉛、ケイ素、銅、鉄などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの他の元素をアルミニウムに含有させた場合には、めっき被膜の機械的強度を高めることができ、ひいては溶融アルミニウムめっき鋼線3の引張強度を高めることができる。前記他の元素のなかでは、鋼線2の種類にもよるが、鋼線2に含まれている鉄とめっき被膜に含まれているアルミニウムとの間で脆性を有する鉄-アルミニウム合金層の生成を抑制し、めっき被膜の機械的強度を高めるとともに、溶融アルミニウムめっき浴1の融点を低下させることにより、鋼線2を効率よくめっきさせる観点から、ケイ素が好ましい。
 溶融アルミニウムめっき鋼線3の表面には、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなるめっき被膜(図示せず)が形成されている。めっき被膜における前記他の元素の含有率の下限値は、0質量%であるが、当該他の元素が有する性質を十分に発現させる観点から、好ましくは0.3質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、さらに好ましくは1質量%以上であり、アルミニウム素線との接触による電位差腐食を抑制する観点から、好ましくは50質量%以下、より好ましくは20質量%以下、さらに好ましくは15質量%以下である。
 なお、溶融アルミニウムめっき浴1には、ニッケル、クロム、亜鉛、銅、鉄などの元素が不可避的に混入することがある。
 本発明によれば、後述する鋼線2と溶融アルミニウムめっき浴1の浴面との境界部に600~1000℃の温度を有する不活性ガスを0.1~20kPaの圧力で吹き付けるという操作が採られていることから、溶融アルミニウムめっき浴1の浴温が低い場合であっても、めっき被膜の厚さが薄い部分が生じがたく、表面にアルミニウム塊が付着しがたい溶融アルミニウムめっき鋼線3を効率よく製造することができる。
 溶融アルミニウムめっき浴1の浴温の下限値は、めっき被膜の厚さが薄い部分が生じがたく、表面にアルミニウム塊が付着しがたい溶融アルミニウムめっき鋼線3を効率よく製造する観点から、当該溶融アルミニウムめっき浴1の融点よりも15℃以上高くなるように調整することが好ましい。
 溶融アルミニウムめっき浴1の浴温の上限値は、熱効率を向上させる観点から、溶融アルミニウムめっき浴1の融点よりも150℃高い温度以下の温度に調整することが好ましく、溶融アルミニウムめっき浴1の融点よりも120℃高い温度以下の温度に調整することがより好ましく、溶融アルミニウムめっき浴1の融点よりも80℃高い温度以下の温度に調整することがより一層好ましく、溶融アルミニウムめっき浴1の融点よりも50℃高い温度以下の温度に調整することがさらに好ましく、溶融アルミニウムめっき浴1の融点よりも25℃高い温度以下の温度に調整することがさらに一層好ましく、溶融アルミニウムめっき浴1の融点よりも20℃高い温度以下の温度に調整することが特に好ましい。
 なお、溶融アルミニウムめっき浴1の浴温は、熱電対を保護するための保護管の中に熱電対を挿入した温度センサを溶融アルミニウムめっき浴1の浴面から深さ約300mmの位置で溶融アルミニウムめっき浴1から引き上げられる鋼線2の近傍に浸漬させて測定したときの値である。
 本発明においては、めっき被膜の厚さが薄い部分が生じがたく、表面にアルミニウム塊が付着しがたい溶融アルミニウムめっき鋼線3を効率よく製造する観点から、鋼線2を溶融アルミニウムめっき浴1に浸漬させる前に、鋼線2を加熱するための加熱装置6および鋼線2の表面に酸化膜が付着することを防止するための浴面制御装置7を有する鋼線導入部制御装置8に鋼線2を通過させることが好ましい。
 鋼線導入部制御装置8としては、例えば、図2に示される鋼線導入部制御装置8などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。図2は、図1に示される鋼線導入部制御装置8の一実施態様を示す概略断面図である。鋼線導入部制御装置8は、加熱装置6および浴面制御装置7を有する。
 図2に示されるように、加熱装置6は、例えば、ステンレス鋼などの鋼材からなる管状の加熱装置本体6aを有する。加熱装置本体6aの内部6bは、鋼線2を矢印B方向に通線させるために空洞となっている。加熱装置本体6aの側面には、加熱ガスを通気するための加熱ガス通気口6cを有する枝管6eが配設されている。
 加熱装置6に通気される加熱ガスとしては、例えば、空気をはじめ、窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガスなどの不活性ガスなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのなかでは、加熱装置6の下端6dから排出された加熱ガスを当該加熱装置6の下方に配設されている浴面制御装置7の上端7aの導入口からその内部に通気し、その内部を不活性ガス雰囲気とすることにより、浴面制御装置7内の溶融アルミニウムめっき浴1が酸化されることを防止する観点から、不活性ガスが好ましい。加熱ガスの温度は、使用される鋼線2の種類および直径、通線速度、加熱ガスの流量などの条件によって異なるので一概には決定することができないことから、当該条件に応じて鋼線2が適切に加熱されるように調整することが好ましい。
 鋼線2の加熱温度は、溶融アルミニウムめっき鋼線3を効率よく製造する観点から、好ましくは60℃以上、より好ましくは80℃以上、さらに好ましくは150℃以上、さらに一層好ましくは200℃以上であり、その上限は、鋼線2の種類などによって異なるので一概には決定することができないが、エネルギー効率を考慮して、通常、好ましくは1000℃以下、より好ましくは900℃以下、さらに好ましくは800℃以下である。なお、前記加熱温度は、以下の実施例に記載の方法に基づいて測定したときの温度である。
 図2に示される加熱装置本体6aの長さは、鋼線2が所定温度に加熱されるように調整することができる長さであればよく、特に限定されないが、その一例を挙げれば、例えば、1~5m程度である。また、加熱装置本体6aの内部6bの直径は、使用される鋼線2の直径および種類などによって異なるので一概には決定することができないが、通常、鋼線2の直径の1.5~50倍程度である。その一例を示せば、例えば、直径が0.2mmの鋼線2を用いる場合には、加熱装置本体6aの内部6bの直径は、0.3~10mm程度であることが好ましい。
 加熱装置本体6aの側面には、加熱ガス通気口6cを有する枝管6eが配設されている。当該枝管6eの加熱ガス通気口6cから加熱ガスを通気することにより、加熱装置6内に通線される鋼線2を加熱することができるほか、枝管6e内にヒーター(図示せず)を配設し、当該ヒーターによって枝管6e内に通気される加熱ガスを加熱してもよい。図2に示される実施態様では、枝管6eが7本配設されているが、枝管6eの数には特に限定がなく、当該枝管6eの数は、1本だけであってもよく、あるいは2~10本程度であってもよい。
 図2に示される実施態様においては、加熱装置6の下端6dと当該加熱装置6の下方に配設されている浴面制御装置7の上端7aとの間に間隙Dが設けられている。前記間隙Dは、当該間隙Dから加熱ガスを効率よく排出する観点から、3~10mm程度であることが好ましい。なお、間隙Dは、必ずしも設けられている必要がなく、加熱装置6と浴面制御装置7とを別部材で構成しておき、両者を例えば螺子嵌合などによって一体化させてもよい。加熱装置6と浴面制御装置7とを一体化させた場合には、必要により、加熱装置6の内部に通気された加熱ガスを排出するための排出口(図示せず)を加熱装置6または浴面制御装置7の側面に設けてもよい。
 なお、本発明においては、加熱装置6の代わりに、例えば、通電加熱装置、誘導加熱装置などを用いることができる。
 浴面制御装置7は、例えば、図3に示される浴面制御装置7などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。図3は、図1および図2に示される鋼線導入部制御装置8に用いられる浴面制御装置7の一実施態様を示す概略断面図である。
 図3に示されるように、浴面制御装置7は、その内部に鋼線2を矢印C方向に貫通させるための貫通孔9aを有する管状体9を有する。浴面制御装置7の全長Lは、通常、好ましくは30~500mm、より好ましくは40~300mm、さらに好ましくは50~100mmである。
 管状体9は、溶融アルミニウムめっき浴1に浸漬される側の一端の端部から長手方向に沿って図3に示される仮想線Pまで溶融アルミニウムめっき浴1に浸漬させるための浸漬領域9bを有する。浸漬領域9bの長さは、通常、好ましくは2~20mm、より好ましくは5~15mm以上である。
 管状体9の長手方向において、溶融アルミニウムめっき浴1に浸漬されない部分の長さは、通常、好ましくは5mm以上、より好ましくは10mm以上である。
 管状体9が有する貫通孔9aの開口部の面積と溶融アルミニウムめっきに使用される鋼線2の横断面(いわゆる鋼線2の断面)における面積との比〔管状体9が有する貫通孔9aの開口部の面積/鋼線2の横断面における面積〕の値は、鋼線2を管状体9の貫通孔9a内に円滑に導入する観点から、好ましくは3以上であり、鋼線2に酸化膜が付着することを防止する観点から、好ましくは4000以下、より好ましくは3000以下、さらに好ましくは2000以下、さらに一層好ましくは1000以下である。
 管状体9が有する貫通孔9aの開口部の形状は、任意であり、円形であってもよく、その他の形状であってもよい。管状体9が有する貫通孔9aの開口部と鋼線2との間隙(クリアランス)は、管状体9の貫通孔9aの内壁と鋼線2との摺動を防止する観点から、好ましくは10μm以上、より好ましくは20μm以上、さらに好ましくは50μm以上、さらに一層好ましくは100μm以上である。
 なお、管状体9が有する貫通孔9aの開口部は、図3に示されるように、管状体9の一端に鋼線2を導入するための導入口9cにおける開口部9dおよび管状体9の他端に鋼線2を排出するための排出口9eにおける開口部9fである。開口部9dおよび開口部9fにおける面積および形状は、同一であってもよく、異なっていてもよいが、鋼線2が管状体9の貫通孔9a内で円滑に通線され、管状体9の貫通孔9aの内壁と鋼線2とが摺動することを回避し、表面全体にめっき被膜が形成された溶融アルミニウムめっき鋼線3を効率よく製造する観点から、図3に示されるように、開口部9dおよび開口部9fにおける面積および形状がそれぞれ同一であることが好ましい。
 必要により鋼線導入部制御装置8を通過した鋼線2は、溶融アルミニウムめっき浴1に浸漬される。
 鋼線2の通線速度は、溶融アルミニウムめっき鋼線3を効率よく製造する観点から、100m/min以上であり、溶融アルミニウムめっき浴1の表面に形成された酸化膜が飛散することを抑制し、表面に酸化膜がほとんど付着しない溶融アルミニウムめっき鋼線3を効率よく製造する観点から、好ましくは1000m/min以下、より好ましくは800m/min以下である。
 溶融アルミニウムめっき浴1に鋼線2が浸漬される時間(めっき時間)は、鋼線2の表面上に形成されるめっき被膜の厚さが所定の厚さとなるように調整される。溶融アルミニウムめっき浴1に鋼線2が浸漬される時間(めっき時間)は、要求されるめっき被膜の厚さ、溶融アルミニウムめっき浴1の浴温などによって異なるので一概には決定することができないが、通常、0.3~1秒間程度である。
 次に、図1に示されるように、溶融アルミニウムめっき浴1に浸漬された鋼線2を溶融アルミニウムめっき浴1の浴面10から引き上げることにより、鋼線2の表面に溶融アルミニウムめっき浴1のめっき被膜が形成され、溶融アルミニウムめっき鋼線3が得られる。
 図4に示されるように、鋼線2を溶融アルミニウムめっき浴1から矢印E方向に引き上げたとき、溶融アルミニウムめっき浴1から引き上げられる溶融アルミニウムめっき鋼線3に随伴してめっき浴1の浴面10が持ち上げられることにより、メニスカス17が形成される。メニスカス17の先端17aが上方向に伸長しきとき、当該メニスカス17の先端17aが凝固してアルミニウム塊となり、当該アルミニウム塊が異物として溶融アルミニウムめっき鋼線3のめっき被膜18に付着するおそれがある。
 したがって、メニスカス17の先端17aが過度に上方向へ伸長することを抑制することにより、アルミニウム塊などの異物が溶融アルミニウムめっき鋼線3の表面に付着することを抑制するために、溶融アルミニウムめっき浴1から引き上げられた溶融アルミニウムめっき鋼線3と溶融アルミニウムめっき浴1の浴面10との境界部で安定化部材11を溶融アルミニウムめっき浴1の浴面10および溶融アルミニウムめっき鋼線3と接触させ、溶融アルミニウムめっき鋼線3を介して安定化部材11と対向する位置に不活性ガスを吹き付けるためのノズル12が配設される。
 なお、図4は、本発明の溶融アルミニウムめっき鋼線の製造方法において、鋼線2を溶融アルミニウムめっき浴1から引き上げる際の鋼線2と溶融アルミニウムめっき浴1の浴面10との境界部の概略説明図である。
 安定化部材11としては、例えば、表面に耐熱クロス材11aが巻かれたステンレス鋼製の角棒などが挙げられる。耐熱クロス材11aとしては、例えば、セラミック繊維、炭素繊維、アラミド繊維、イミド繊維などの耐熱性繊維を含有する織布や不織布などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。耐熱クロス材11aは、溶融アルミニウムめっき鋼線3の表面にアルミニウム塊が付着することを抑制する観点から、当該耐熱クロス材11aにおいてアルミニウムが付着していない面(新生面)を溶融アルミニウムめっき鋼線3と接触させることが好ましい。
 安定化部材11は、溶融アルミニウムめっき浴1の浴面10と溶融アルミニウムめっき鋼線3との双方に同時に接触させることが好ましい。このように安定化部材11を溶融アルミニウムめっき浴1の浴面10と溶融アルミニウムめっき鋼線3との双方に同時に接触させた場合には、溶融アルミニウムめっき浴1の浴面10の脈動が抑制されることにより、メニスカス17の脈動が抑制されることから、鋼線2の表面にめっき被膜18を均一に形成させることができる。なお、安定化部材11を溶融アルミニウムめっき鋼線3に接触させる際には、溶融アルミニウムめっき鋼線3が微小振動することを抑制する観点から、必要により、溶融アルミニウムめっき鋼線3に張力が加わるようにするために安定化部材11を溶融アルミニウムめっき鋼線3に軽く押し付けてもよい。
 溶融アルミニウムめっき鋼線3を介して安定化部材11と対向する位置に不活性ガスを吹き付けるためのノズル12が配設される。ノズル12の先端12aは、溶融アルミニウムめっき鋼線3と溶融アルミニウムめっき浴1の浴面10との境界部に不活性ガスを吹き付けられるように配設される。溶融アルミニウムめっき鋼線3からノズル12の先端12aまでの距離(最短距離)は、ノズル12の先端12aと溶融アルミニウムめっき鋼線3との接触を回避し、溶融アルミニウムめっき鋼線3を効率よく製造する観点から、好ましくは1mm以上であり、溶融アルミニウムめっき浴1の浴温が低い温度であっても、めっき被膜18の厚さが薄い部分がほとんど生じず、表面にアルミニウム塊がほとんど付着しない溶融アルミニウムめっき鋼線3を得る観点から、好ましくは50mm以下、より好ましくは40mm以下、より一層好ましくは30mm以下、さらに好ましくは10mm以下、さらに一層好ましくは5mm以下である。
 ノズル12の先端12aの内径は、ノズル12の先端12aから吐出された不活性ガスを的確に溶融アルミニウムめっき鋼線3と溶融アルミニウムめっき浴1の浴面10との境界部に吹き付けることにより、溶融アルミニウムめっき鋼線3を効率よく製造する観点から、好ましくは1mm以上、より好ましくは2mm以上であり、溶融アルミニウムめっき浴1の浴温が低い温度であっても、めっき被膜18の厚さが薄い部分がほとんど生じず、表面にアルミニウム塊がほとんど付着しない溶融アルミニウムめっき鋼線3を得る観点から、好ましくは15mm以下、より好ましくは10mm以下、さらに好ましくは5mm以下である。
 不活性ガスは、例えば、図1に示される不活性ガス供給装置13から配管14を介してノズル12に供給することができる。なお、不活性ガスの流量を調整するために、例えば、バルブなどの流量制御装置(図示せず)が不活性ガス供給装置13または配管14に設けられていてもよい。
 不活性ガスは、溶融しているアルミニウムに対して不活性であるガスを意味する。不活性ガスとしては、例えば、窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガスなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。不活性ガスのなかでは、窒素ガスが好ましい。なお、不活性ガスには、本発明の目的を阻害しない範囲内で、例えば、酸素ガス、炭酸ガスなどが含まれていてもよい。
 ノズル12の先端12aから吐出される不活性ガスの圧力は、0.1~20kPaに調整されているとともに、不活性ガスの温度が、600~1000℃に調整されている。本発明では、鋼線2を溶融アルミニウムめっき浴1に浸漬させた後、溶融アルミニウムめっき浴1から引き上げる際に、ノズル12の先端12aから溶融アルミニウムめっき鋼線3と溶融アルミニウムめっき浴1の浴面10との境界部に吹き付けるための不活性ガスの圧力が0.1~20kPaに調整されているとともに、不活性ガスの温度が600~1000℃に調整されているので、溶融アルミニウムめっき浴1の浴温が低い温度であっても、めっき被膜18の厚さが薄い部分がほとんど生じず、表面にアルミニウム塊がほとんど付着しない溶融アルミニウムめっき鋼線3を得ることができる。
 ノズル12の先端12aから吐出される不活性ガスの圧力は、溶融アルミニウムめっき浴1の浴温が低い温度であっても、表面にアルミニウム塊がほとんど付着しない溶融アルミニウムめっき鋼線3を得る観点から、0.1kPa以上であり、溶融アルミニウムめっき浴1の浴温が低い温度であっても、めっき被膜18の厚さが薄い部分がほとんど生じない溶融アルミニウムめっき鋼線3を得る観点から、20kPa以下、好ましくは2kPa以下である。
 なお、ノズル12の先端12aから吐出される不活性ガスの圧力は、ノズル12の先端12a部から2mmの距離で離れた箇所におけるノズル12内の不活性ガスのなかに内径0.5mmのステンレス鋼製のチューブを当該チューブの先端とノズル12の先端12aとが対向するように差し込み、当該チューブの先端にかかる不活性ガスのガス圧力を圧力センサで測定したときの値である。
 一般に溶融アルミニウムめっき浴1の浴温は、熱効率を考慮した場合、低いほうが好ましい。しかし、当該溶融アルミニウムめっき浴1の浴温が低い場合には、溶融アルミニウムめっき鋼線3の表面にアルミニウム塊が生じやすくなる。
 これに対して、本発明では、溶融アルミニウムめっき浴1の浴温が低い温度であっても、ノズル12の先端12aから吐出される不活性ガスの温度が600℃以上に調整されているので、表面にアルミニウム塊がほとんど付着しない溶融アルミニウムめっき鋼線3を得ることができる。
 ノズル12の先端12aから吐出される不活性ガスの温度は、溶融アルミニウムめっき浴1の浴温が低い温度であっても、めっき被膜18の厚さが薄い部分がほとんど生じず、表面にアルミニウム塊がほとんど付着しない溶融アルミニウムめっき鋼線3を得る観点から、600℃以上であり、熱効率を向上させる観点から、1000℃以下、好ましくは800℃以下、より好ましくは750℃以下である。
 なお、ノズル12の先端12aから吐出される不活性ガスの温度は、ノズル12の先端12aから2mmの距離で離れた箇所における不活性ガスのなかに、例えば、直径が1.6mmであるシース熱電対などの測温用熱電対を差し込むことによって測定したときの値である。
 ノズル12の先端12aから吐出される不活性ガスの体積流量は、メニスカス17の表面の酸化を効率よく防止する観点から、好ましくは2L(リットル)/min以上、より好ましくは5L/min以上、さらに好ましくは10L/min以上であり、溶融アルミニウムめっき浴1の浴温が低い温度であっても、めっき被膜18の厚さが薄い部分がほとんど生じず、表面にアルミニウム塊がほとんど付着しない溶融アルミニウムめっき鋼線3を得る観点から、好ましくは200L/min以下、より好ましくは150L/min以下、さらに好ましくは100L/min以下である。
 溶融アルミニウムめっき浴1の浴面10から溶融アルミニウムめっき鋼線3を引き上げる際の引き上げ速度は、特に限定されず、当該引き上げ速度を適宜調整することにより、溶融アルミニウムめっき鋼線3の表面に存在するめっき被膜18の平均厚さを調整することができることから、当該めっき被膜18の平均厚さに応じて適宜調整することが好ましい。
 なお、溶融アルミニウムめっき鋼線3が引き上げられる過程で溶融アルミニウムめっき鋼線3を冷却し、表面に形成されているめっき被膜18を効率よく凝固させるために、図1に示されるように、必要により、ノズル12の上部に冷却装置15が配設されていてもよい。冷却装置15では、例えば、ガス、液体のミストなどを溶融アルミニウムめっき鋼線3に吹き付けることにより、当該溶融アルミニウムめっき鋼線3を冷却することができる。
 以上のようにして製造された溶融アルミニウムめっき鋼線3は、図1に示されるように、例えば、巻取装置16などで回収することができる。
 溶融アルミニウムめっき鋼線3の表面に存在するめっき被膜18の平均厚さは、撚り線加工、かしめ加工などの際に素地の鋼線2が外部に露出することを抑制するとともに、単位直径あたりの機械的強度を高める観点から、5~10μm程度であることが好ましい。
 また、溶融アルミニウムめっき鋼線3の表面に存在するめっき被膜18の薄肉部の最小厚さは、撚り線加工、かしめ加工などの際に素地の鋼線2が外部に露出することを抑制するとともに、単位直径あたりの機械的強度を高める観点から、好ましくは1μm以上、より好ましくは2μm以上である。
 鋼線2には、平滑なめっき被膜18を効率よく形成させる観点から、鋼線2を溶融アルミニウムめっき浴1に浸漬させる前に、鋼線2の表面にプレめっき処理が施されていてもよい。プレめっき処理を構成する金属としては、例えば、亜鉛、ニッケル、クロム、これらの合金などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。また、当該プレめっき処理により鋼線2の表面に形成されためっき被膜18は、1層のみで形成されていてもよく、同一または異なる金属からなる複数のめっき被膜18であってもよい。
 前記で得られた溶融アルミニウムめっき鋼線3には、必要により、所望の外径を有するようにするために、ダイスなどを用いて伸線加工を施してもよい。
 本発明の溶融アルミニウムめっき鋼線の製造方法によって得られた溶融アルミニウムめっき鋼線3は、例えば、自動車のワイヤーハーネスなどに好適に使用することができる。
 次に本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はかかる実施例のみに限定されるものではない。
実施例1~100および比較例1~11
 各実施例および各比較例では、図1に示される溶融アルミニウムめっき鋼線の製造方法の実施態様に準じて溶融アルミニウムめっき鋼線を製造した。
 鋼線として、以下の各表に示す直径を有し、各表に示す鋼種からなる鋼線を用い、当該鋼線の表面に亜鉛めっき処理を施していないもの(各表の「プレZn」の欄に「無」と表記)または平均厚さが5μm以下の亜鉛めっき被膜を有するもの(各表の「プレZn」の欄に「有」と表記)を用いた。各表の鋼種の欄に記載の37Aは、炭素を0.37質量%含有する硬鋼からなる鋼線を意味する。
 なお、前記亜鉛めっきを施していない鋼線には、溶融アルミニウムめっき浴に浸漬する前に、界面活性剤を含有するオルソケイ酸ナトリウムの脱脂液に浸漬することにより、脱脂を施した。
 また、鋼線を溶融アルミニウムめっき浴に浸漬させる前に、図2に示される鋼線導入部制御装置8に通過させ、加熱装置6で鋼線を約400℃に予備加熱した。加熱ガスとして窒素ガスを用いた。なお、予備加熱温度は、鋼線に熱電対を接続させたものを用意し、所定の温度に維持した加熱装置6の中に当該熱電対を鋼線とともに通過させることによって測定した。
 また、図2に示される鋼線導入部制御装置8に用いられる浴面制御装置7として、図3に示されるように、管状体9が有する貫通孔9aの導入口9cにおける開口部9dと排出口9eにおける開口部9fの形状、大きさおよび面積が同一である浴面制御装置7を用い、管状体9が有する貫通孔9aの開口部の面積と鋼線の横断面における面積との比〔管状体9が有する貫通孔9aの開口部の面積/鋼線の横断面における面積〕を57に設定し、当該浴面制御装置7を介して鋼線を溶融アルミニウムめっき浴に0.3~1秒間浸漬させた。
 溶融アルミニウムめっき浴として、溶融アルミニウムめっき浴(アルミニウムの純度:99.7%以上、各表の「溶融Alめっきの種類」の欄に「Al」と表記)、4質量%のケイ素を含有する溶融アルミニウムめっき浴(各表の「溶融Alめっきの種類」の欄に「4%Si」と表記)、8質量%のケイ素を含有する溶融アルミニウムめっき浴(各表の「溶融Alめっきの種類」の欄に「8%Si」と表記)、11質量%のケイ素を含有する溶融アルミニウムめっき浴(各表の「溶融Alめっきの種類」の欄に「11%Si」と表記)または13質量%のケイ素を含有する溶融アルミニウムめっき浴(各表の「溶融Alめっきの種類」の欄に「13%Si」と表記)を用い、各表に示す浴温で各表に示す通線速度(鋼線の引き上げ速度)にて鋼線を溶融アルミニウムめっき浴に浸漬させた後、当該溶融アルミニウムめっき浴から引き上げた。
 その際、溶融アルミニウムめっき浴から引き上げられた溶融アルミニウムめっき鋼線と溶融アルミニウムめっき浴の浴面との境界部で浴面および当該溶融アルミニウムめっき鋼線に幅40mmの安定化部材を接触させた。なお、安定化部材として表面に耐熱クロス材が巻かれたステンレス鋼製の角棒を用い、溶融アルミニウムめっき鋼線と耐熱クロス材との接触長さを5mmに調整した。
 また、前記溶融アルミニウムめっき鋼線から2mm離れた箇所にノズルの先端が位置するように、各表に示す先端の内径を有するノズルを配設し、当該ノズルの先端から各表に示す温度に調整された不活性ガス(窒素ガス)を各表に示す体積流量および圧力で溶融アルミニウムめっき鋼線と溶融アルミニウムめっき浴の浴面との境界部に吹き付けた。
 以上の操作を行なうことにより、各表に示す平均厚さおよび薄肉部の最小厚さを有するめっき被膜が形成された溶融アルミニウムめっき鋼線を得た。
 なお、めっき被膜の平均厚さの測定方法を以下に示す。また、薄肉部の最小厚さの測定方法は、以下の「(2)めっき被膜の薄肉部の最小厚さの測定」の欄に記載する。
〔めっき被膜の平均厚さの測定方法〕
 各実施例および各比較例で得られた溶融アルミニウムめっき鋼線のめっき被膜の平均厚さの測定は、図5に示される実施態様に基づいて行なった。図5は、各実施例および各比較例で得られた溶融アルミニウムめっき鋼線のめっき被膜の平均厚さを測定する方法の一実施態様を示す概略説明図である。
 図5に示されるように、通線式鋼線径測定装置19として、鉛直方向に配置された一対のプーリー19cおよびプーリー19d、およびプーリー19cとプーリー19dとの間の中央部に水平方向に配設された一対の発光部19aおよび受光部19bを有する光学式外径測定器[(株)キーエンス製、品番:LS-7000]を2台有する通線式鋼線径測定装置19を用いた。一対の発光部19aと受光部19bとを互いに対向させ、隣接する発光部19aと受光部19bとは、図5に示されるように90°の角度をなすように配設した。
 各実施例または各比較例で得られた長さ100mの溶融アルミニウムめっき鋼線3を通線速度100m/minの速度で矢印F方向にてプーリー19cとプーリー19dとの間を走行させながら、溶融アルミニウムめっき鋼線3の長さ方向において約1.4mmの間隔で溶融アルミニウムめっき鋼線3の外径を通線式鋼線径測定装置19で測定した。なお、当該外径の測定点数を約71000点とした。
 次に、前記で測定した溶融アルミニウムめっき鋼線の外径の平均値を求め、当該平均値からめっき被膜を形成する前の鋼線の直径(以下の各表に示す鋼線の直径)を減算し、得られた値を2で除することにより、めっき被膜の平均厚さを求めた。その結果を各表に示す。
〔めっき被膜の性能の評価〕
 前記で得られた溶融アルミニウムめっき鋼線の性能として、アルミニウム塊の付着性およびめっき被膜の薄肉部の最小厚さの安定性を以下の方法に基づいて調べた。その結果を各表に示す。
(1)アルミニウム塊の付着性
 長さ300mの溶融アルミニウムめっき鋼線を100m/minの通線速度で走行させ、当該溶融アルミニウムめっき鋼線の全長にわたって溶融アルミニウムめっき鋼線の外径を測定し、局部的に外径が大きくなっている凸部分の有無を調べた。局部的に外径が大きい凸部分にアルミニウム塊が付着しているかどうかを目視により観察し、以下の評価基準に基づいてアルミニウム塊の付着性を評価した。なお、溶融アルミニウムめっき鋼線の外径は、光学式外径測定器〔(株)キーエンス製、品番:LS-7000〕を用いて測定した。
(評価基準)
○:アルミニウム塊の付着が認められない。
×:アルミニウム塊の付着が認められる。
(2)めっき被膜の薄肉部の最小厚さの測定
 めっき被膜の薄肉部の最小厚さを求めるために、溶融アルミニウムめっき鋼線の断面を観察した。より具体的には、溶融アルミニウムめっき鋼線から300mmの試験体を任意に切り出し、さらに当該試験体から6本の試験片を切り出した後、当該試験片を樹脂に包埋させ、包埋させた樹脂を裁断し、その裁断面を研磨することにより、溶融アルミニウムめっき鋼線の断面を露出させた。この断面を光学顕微鏡(倍率:500倍)で観察し、めっき被膜の薄肉部の最小厚さを測定した。6本の試験片について測定しためっき被膜の薄肉部の最小の厚さのうち、最も小さい厚さを当該めっき被膜の薄肉部の最小厚さとした。
(3)めっき被膜の薄肉部の最小厚さの安定性
 前記で求めためっき被膜の薄肉部の最小厚さから、以下の評価基準に基づいてめっき被膜の薄肉部の最小厚さの安定性を評価した。
(評価基準)
◎:めっき被膜の薄肉部の最小厚さが2μm以上
○:めっき被膜の薄肉部の最小厚さが1μm以上2μm未満
×:めっき被膜の薄肉部の最小厚さが1μm未満
(4)総合評価
 アルミニウム塊の付着性およびめっき被膜の薄肉部の最小厚さの安定性の評価結果に基づいて、以下の評価基準により、総合評価を行なった。
(評価基準)
◎:アルミニウム塊の付着性の評価が○であり、めっき被膜の薄肉部の最小厚さの安定性の評価が◎である(優秀)。
○:アルミニウム塊の付着性およびめっき被膜の評価がいずれも○である(優良)。
×:アルミニウム塊の付着性およびめっき被膜の評価に×の評価が存在する(不合格)。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000001
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000002
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000003
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000004
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000005
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000006
 各実施例によれば、表1~5に示されるように、鋼線と溶融アルミニウムめっき浴の浴面との境界部に吹き付けるための不活性ガスの圧力が0.1~20kPaに調整されているとともに、当該不活性ガスの温度が600~1000℃に調整されているので、めっき被膜の厚さが薄い部分が生じがたく、表面にアルミニウム塊が付着しがたい溶融アルミニウムめっき鋼線を効率よく製造することができることがわかる。さらに、実施例32、実施例36、実施例40、実施例46、実施例50および実施例96~100によれば、表2および表5に記載されるように、溶融アルミニウムめっき浴の浴温が当該溶融アルミニウムめっき浴の融点よりも15℃以上高い温度であって、当該溶融アルミニウムめっき浴の融点よりも20℃高い温度以下の温度という低い温度であっても、めっき被膜の厚さが薄い部分が生じがたく、表面にアルミニウム塊が付着しがたい溶融アルミニウムめっき鋼線を効率よく製造することができることがわかる。
 これに対して、比較例1、比較例6および比較例7によれば、表6に示されるように、鋼線と溶融アルミニウムめっき浴の浴面との境界部に吹き付けた不活性ガスの温度が600℃よりも低いことから、溶融アルミニウムめっき浴の浴温が当該溶融アルミニウムめっき浴の融点よりも20℃高い温度では、表面にアルミニウム塊が付着しがたい溶融アルミニウムめっき鋼線を製造することができないことがわかる。
 また、比較例2によれば、表6に示されるように、鋼線と溶融アルミニウムめっき浴の浴面との境界部に吹き付けた不活性ガスの圧力および温度が所望の圧力および温度に調整されていても、溶融アルミニウムめっき浴の浴温が当該溶融アルミニウムめっき浴の融点よりも15℃高い温度よりも低い温度であることから、表面にアルミニウム塊が付着しがたい溶融アルミニウムめっき鋼線を製造することができないことがわかる。
 また、比較例3~5および比較例8~11によれば、表6に示されるように、溶融アルミニウムめっき浴の浴温が当該溶融アルミニウムめっき浴の融点よりも20℃以上高い温度に調整されていても、鋼線と溶融アルミニウムめっき浴の浴面との境界部に吹き付けた不活性ガスの圧力が0.1~20kPaの範囲外であることから、めっき被膜の厚さが薄い部分が生じがたく、表面にアルミニウム塊が付着しがたい溶融アルミニウムめっき鋼線を製造することができないことがわかる。
 本発明の製造方法によって得られた溶融アルミニウムめっき鋼線は、例えば、自動車のワイヤーハーネスなどに好適に使用することができる。
 1   溶融アルミニウムめっき浴
 2   鋼線
 3   溶融アルミニウムめっき鋼線
 4   送出装置
 5   めっき浴槽
 6   加熱装置
 6a  加熱装置本体
 6b  加熱装置本体の内部
 6c  加熱装置本体の加熱ガス通気口
 6d  加熱装置本体の下端
 6e  加熱装置本体の枝管
 7   浴面制御装置
 7a  浴面制御装置の上端
 8   鋼線導入部制御装置
 9   管状体
 9a  管状体の貫通孔
 9b  管状体の浸漬領域
 9c  管状体の導入口
 9d  管状体の導入口における開口部
 9e  管状体の排出口
 9f  管状体の排出口における開口部
 10  溶融アルミニウムめっき浴の浴面
 11  安定化部材
 11a 安定化部材の耐熱クロス材
 12  ノズル
 12a ノズルの先端
 13  不活性ガス供給装置
 14  配管
 15  冷却装置
 16  巻取装置
 17  メニスカス
 17a メニスカスの先端
 18  めっき被膜
 19  通線式鋼線径測定装置
 19a 通線式鋼線径測定装置の発光部
 19b 通線式鋼線径測定装置の受光部
 19c 通線式鋼線径測定装置のプーリー
 19d 通線式鋼線径測定装置のプーリー

Claims (3)

  1.  溶融アルミニウムめっき浴に鋼線を浸漬させた後、当該溶融アルミニウムめっき浴から鋼線を連続して引き上げることによって溶融アルミニウムめっき鋼線を製造する方法であって、鋼線を当該溶融アルミニウムめっき浴に浸漬させた後、当該溶融アルミニウムめっき浴から引き上げられた溶融アルミニウムめっき鋼線と溶融アルミニウムめっき浴の浴面との境界部で安定化部材を当該溶融アルミニウムめっき浴の浴面および当該溶融アルミニウムめっき鋼線と接触させ、当該溶融アルミニウムめっき鋼線を介して当該安定化部材と対向する位置に不活性ガスを吹き付けるためのノズルを配設し、当該ノズルの先端から前記境界部に600~1000℃の温度を有する不活性ガスを0.1~20kPaの圧力で吹き付けることを特徴とする溶融アルミニウムめっき鋼線の製造方法。
  2.  鋼線が炭素鋼またはステンレス鋼からなる鋼線である請求項1に記載の溶融アルミニウムめっき鋼線の製造方法。
  3.  溶融アルミニウムめっき浴の浴温を当該溶融アルミニウムめっき浴の融点よりも15℃以上高くなるように調整する請求項1または2に記載の溶融アルミニウムめっき鋼線の製造方法。
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