本発明の溶融アルミニウムめっき鋼線の製造方法は、前記したように、溶融アルミニウムめっき浴に鋼線を浸漬させた後、当該鋼線を溶融アルミニウムめっき浴に浸漬されている浸漬部材を介して当該溶融アルミニウムめっき浴から連続して引き上げることによって溶融アルミニウムめっき鋼線を製造する方法であり、当該溶融アルミニウムめっき浴から引き上げられた溶融アルミニウムめっき鋼線と溶融アルミニウムめっき浴の浴面との境界部で安定化部材を当該溶融アルミニウムめっき浴の浴面および当該溶融アルミニウムめっき鋼線と接触させ、当該安定化部材を鋼線に押圧するときの鋼線の水平方向のスライド量L1と溶融アルミニウムめっき浴の浴面から前記浸漬部材と鋼線との接点までの最短長さL2との比(L1/L2)の値を0.006〜0.2に調整し、当該溶融アルミニウムめっき鋼線を介して当該安定化部材と対向する位置に不活性ガスを吹き付けるためのノズルを配設し、当該ノズルの先端から前記境界部に600℃以上の温度を有する不活性ガスを0.1〜25kPaの圧力で吹き付けることを特徴とする。
本発明の溶融アルミニウムめっき鋼線の製造方法によれば、前記操作が採られているので、溶融アルミニウムめっき鋼線のめっき被膜の厚い部分と薄い部分におけるめっき被膜の厚さの差が大きい偏肉部分が生じがたく、表面にアルミニウム塊が付着しがたい溶融アルミニウムめっき鋼線を効率よく製造することができる。
以下に、本発明の溶融アルミニウムめっき鋼線の製造方法を図面に基づいて説明するが、本発明は、当該図面に記載の実施態様のみに限定されるものではない。
図1は、本発明の溶融アルミニウムめっき鋼線の製造方法の一実施態様を示す概略説明図である。
本発明の溶融アルミニウムめっき鋼線の製造方法では、溶融アルミニウムめっき浴1に鋼線2を浸漬させた後、当該溶融アルミニウムめっき浴1から鋼線2を連続して引き上げることにより、溶融アルミニウムめっき鋼線3が製造される。
鋼線2を構成する鋼材としては、例えば、ステンレス鋼、炭素鋼などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
ステンレス鋼は、クロム(Cr)を10質量%以上含有する合金鋼である。ステンレス鋼としては、例えば、JIS G4309に規定されているオーステナイト系の鋼材、フェライト系の鋼材、マルテンサイト系の鋼材などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。ステンレス鋼の具体例としては、SUS301、SUS304などの一般にオーステナイト相が準安定であるとされるステンレス鋼;SUS305、SUS310、SUS316などの安定オーステナイト系ステンレス鋼;SUS405、SUS410L、SUS429、SUS430、SUS434、SUS436、SUS444、SUS447などのフェライト系ステンレス鋼;SUS403、SUS410、SUS416、SUS420、SUS431、SUS440などのマルテンサイト系ステンレス鋼などをはじめ、SUS200番台に分類されるクロム−ニッケル−マンガン系のステンレス鋼などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
炭素鋼は、炭素(C)を0.02質量%以上含有する鋼材である。炭素鋼としては、例えば、JIS G3506の硬鋼線材の規格に規定されている鋼材、JIS G3505の軟鋼線材の規格に規定されている鋼材などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。炭素鋼の具体例としては、硬鋼、軟鋼などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
前記鋼材のなかでは、溶融アルミニウムめっき鋼線3の引張強度を高める観点から、ステンレス鋼および炭素鋼が好ましい。
鋼線2の直径は、特に限定されず、溶融アルミニウムめっき鋼線3の用途に応じて適宜調整することが好ましい。例えば、溶融アルミニウムめっき鋼線3を自動車のワイヤーハーネスなどの用途に用いる場合には、鋼線2の直径は、通常、0.05〜0.5mm程度であることが好ましい。
鋼線2は、溶融アルミニウムめっきが施される前に脱脂されていてもよい。鋼線2の脱脂は、例えば、鋼線2をアルカリ脱脂液に浸漬した後、水洗し、鋼線2に付着しているアルカリを中和し、再び水洗することによって脱脂を行なう方法、鋼線2をアルカリ脱脂液に浸漬した状態で鋼線2に通電することによって電解脱脂を行なう方法などによって行なうことができる。なお、前記アルカリ脱脂液には、脱脂力を向上させる観点から、界面活性剤を含有させてもよい。
また、鋼線2には、平滑なアルミニウムめっき被膜を効率よく形成させる観点から、鋼線2を溶融アルミニウムめっき浴1に浸漬させる前に、鋼線2の表面にプレめっき処理が施されていてもよい。プレめっき処理を構成する金属としては、例えば、亜鉛、ニッケル、クロム、これらの合金などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。また、当該プレめっき処理により鋼線2の表面に形成されためっき被膜は、1層のみで形成されていてもよく、同一または異なる金属からなる複数のめっき被膜が形成されていてもよい。
図1において、鋼線2は、当該鋼線2の送出装置4から送り出され、矢印A方向に連続的に搬送され、めっき浴槽5内の溶融アルミニウムめっき浴1に浸漬される。
なお、鋼線2が炭素鋼からなる鋼線2である場合、鋼線2が脱脂されていても溶融アルミニウムめっきを行なうまでの間に鋼線2の表面に錆が発生するおそれがあることから、送出装置4から溶融アルミニウムめっき浴1との間で鋼線2の脱脂を行なうことが好ましい。炭素鋼からなる鋼線2の脱脂は、前記鋼線2の脱脂と同様の方法によって行なうことができる。
溶融アルミニウムめっき浴1には、アルミニウムのみが用いられていてもよく、必要により、本発明の目的を阻害しない範囲内で他の元素が含有されていてもよい。前記他の元素としては、例えば、ニッケル、クロム、亜鉛、ケイ素、銅、鉄などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの他の元素をアルミニウムに含有させた場合には、めっき被膜(図示せず)の機械的強度を高めることができ、ひいては溶融アルミニウムめっき鋼線3の引張強度を高めることができる。前記他の元素のなかでは、鋼線の種類にもよるが、鋼線に含まれている鉄とめっき被膜に含まれているアルミニウムとの間で脆性を有する鉄−アルミニウム合金層の生成を抑制し、めっき被膜の機械的強度を高めるとともに、溶融アルミニウムめっき浴1の融点を低下させることにより、鋼線2を効率よくめっきさせる観点から、ケイ素が好ましい。
溶融アルミニウムめっき鋼線3の表面には、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなるめっき被膜(図示せず)が形成されている。めっき被膜における前記他の元素の含有率の下限値は、0質量%であるが、当該他の元素が有する性質を十分に発現させる観点から、好ましくは0.3質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、さらに好ましくは1質量%以上であり、アルミニウム素線との接触による電位差腐食を抑制する観点から、好ましくは50質量%以下、より好ましくは20質量%以下、さらに好ましくは15質量%以下である。
なお、溶融アルミニウムめっき浴1には、ニッケル、クロム、亜鉛、銅、鉄などの元素が不可避的に混入することがある。
溶融アルミニウムめっき浴1の浴温の下限値は、溶融アルミニウムめっき鋼線を製造する際の溶融アルミニウムめっき浴1の溶融温度以上の温度であり、通常、溶融アルミニウムめっき浴1の常圧下での融点以上の温度である。
溶融アルミニウムめっき浴1の浴温を当該溶融アルミニウムめっき浴1の融点よりも15℃以上高い温度に調整した場合、めっき被膜の厚さが厚い部分と薄い部分との厚さの差が大きい偏肉部分がほとんど生じず、表面にアルミニウム塊がほとんど付着しない溶融アルミニウムめっき鋼線3を得ることができる。
したがって、めっき被膜の厚さが厚い部分と薄い部分との厚さの差が大きい偏肉部分がほとんど生じず、表面にアルミニウム塊がほとんど付着しない溶融アルミニウムめっき鋼線3を得る観点から、溶融アルミニウムめっき浴1の浴温を当該溶融アルミニウムめっき浴1の融点よりも15℃以上高い温度に調整することが好ましく、溶融アルミニウムめっき浴1の浴温を当該溶融アルミニウムめっき浴1の融点よりも20℃以上高い温度に調整することが好ましい。
溶融アルミニウムめっき浴1の浴温の上限値は、熱効率を向上させる観点から、好ましくは800℃以下、より好ましくは780℃以下、さらに好ましくは750℃以下である。
また、溶融アルミニウムめっき浴1の浴温は、表面にアルミニウム塊が付着しがたい溶融アルミニウムめっき鋼線3を効率よく製造する観点から、680〜720℃であることが好ましい。
なお、溶融アルミニウムめっき浴1の浴温は、熱電対を保護するための保護管の中に熱電対を挿入した温度センサを溶融アルミニウムめっき浴1の浴面から深さ約300mmの位置で溶融アルミニウムめっき浴1から引き上げられる鋼線2の近傍に浸漬させて測定したときの値である。
本発明においては、表面にアルミニウム塊が付着しがたい溶融アルミニウムめっき鋼線3を効率よく製造する観点から、鋼線2を溶融アルミニウムめっき浴1に浸漬させる前に、鋼線2を加熱するための加熱装置6および鋼線2の表面に酸化膜が付着することを防止するための浴面制御装置7を有する鋼線導入部制御装置8に鋼線2を通過させることが好ましい。
鋼線導入部制御装置8としては、例えば、図2に示される鋼線導入部制御装置8などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。図2は、図1に示される鋼線導入部制御装置8の一実施態様を示す概略断面図である。鋼線導入部制御装置8は、加熱装置6および浴面制御装置7を有する。
図2に示されるように、加熱装置6は、例えば、ステンレス鋼などの鋼材からなる管状の加熱装置本体6aを有する。加熱装置本体6aの内部6bは、鋼線2を矢印B方向に通線させるために空洞となっている。
加熱装置6に通気される加熱ガスとしては、例えば、空気をはじめ、窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガスなどの不活性ガスなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのなかでは、加熱装置6の下端6dから排出された加熱ガスを当該加熱装置6の下方に配設されている浴面制御装置7の上端7aの導入口からその内部に通気し、その内部を不活性ガス雰囲気とすることにより、浴面制御装置7内の溶融アルミニウムめっき浴1が酸化されることを防止する観点から、不活性ガスが好ましい。加熱ガスの温度は、使用される鋼線2の種類およびその直径、通線速度、加熱ガスの流量などの条件によって異なるので一概には決定することができないことから、当該条件に応じて鋼線2が適切に加熱されるように調整することが好ましい。
鋼線2の加熱温度は、溶融アルミニウムめっき鋼線3を効率よく製造する観点から、好ましくは60℃以上、より好ましくは80℃以上、さらに好ましくは150℃以上、さらに一層好ましくは200℃以上であり、その上限は、鋼線2の種類などによって異なるので一概には決定することができないが、エネルギー効率を考慮して、通常、好ましくは1000℃以下、より好ましくは900℃以下、さらに好ましくは800℃以下である。なお、前記加熱温度は、以下の実施例に記載の方法に基づいて測定したときの温度である。
図2に示される加熱装置本体6aの長さは、鋼線2が所定温度に加熱されるように調整することができる長さであればよく、特に限定されないが、その一例を挙げれば、例えば、1〜5m程度である。また、加熱装置本体6aの内部6bの直径は、使用される鋼線2の直径およびその種類などによって異なるので一概には決定することができないが、通常、鋼線2の直径の1.5〜50倍程度である。その一例を示せば、例えば、直径が0.2mmの鋼線2を用いる場合には、加熱装置本体6aの内部6bの直径は、0.3〜10mm程度であることが好ましい。
加熱装置本体6aの側面には、加熱ガス通気口6cを有する枝管6eが配設されている。当該枝管6eの加熱ガス通気口6cから加熱ガスを通気することにより、加熱装置6内に通線される鋼線2を加熱することができるほか、枝管6e内にヒーター(図示せず)を配設し、当該ヒーターによって枝管6e内に通気される加熱ガスを加熱してもよい。図2に示される実施態様では、枝管6eが7本配設されているが、枝管6eの数には特に限定がなく、当該枝管6eの数は、1本だけであってもよく、あるいは2〜10本程度であってもよい。
図2に示される実施態様においては、加熱装置6の下端6dと当該加熱装置6の下方に配設されている浴面制御装置7の上端7aとの間に間隙Dが設けられている。前記間隙Dは、当該間隙Dから加熱ガスを効率よく排出する観点から、3〜10mm程度であることが好ましい。なお、間隙Dは、必ずしも設けられている必要がなく、加熱装置6と浴面制御装置7とを別部材で構成しておき、両者を例えば螺子嵌合などによって一体化させてもよい。加熱装置6と浴面制御装置7とを一体化させた場合には、必要により、加熱装置6の内部に通気された加熱ガスを排出するための排出口(図示せず)を加熱装置6または浴面制御装置7の側面に設けてもよい。
なお、本発明においては、加熱装置6の代わりに、例えば、通電加熱装置、誘導加熱装置などを用いることができる。
浴面制御装置7としては、例えば、図3に示される浴面制御装置7などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
図3は、図1および図2に示される鋼線導入部制御装置8に用いられる浴面制御装置7の一実施態様を示す概略断面図である。
図3に示されるように、浴面制御装置7は、その内部に鋼線2を矢印C方向に貫通させるための貫通孔9aを有する管状体9を有する。浴面制御装置7の全長Lは、通常、好ましくは30〜500mm、より好ましくは40〜300mm、さらに好ましくは50〜100mmである。
管状体9は、溶融アルミニウムめっき浴1に浸漬される側の一端の端部から長手方向に沿って図3に示される仮想線Pまで溶融アルミニウムめっき浴1に浸漬させるための浸漬領域9bを有する。浸漬領域9bの長さは、通常、好ましくは2〜20mm、より好ましくは5〜15mm以上である。
管状体9の長手方向において、溶融アルミニウムめっき浴1に浸漬されない部分の長さは、通常、好ましくは5mm以上、より好ましくは10mm以上である。
管状体9が有する貫通孔9aの開口部の面積と溶融アルミニウムめっきに使用される鋼線2の横断面(いわゆる鋼線2の断面)における面積との比〔管状体9が有する貫通孔9aの開口部の面積/鋼線2の横断面における面積〕の値は、鋼線2を管状体9の貫通孔9a内に円滑に導入する観点から、好ましくは3以上であり、鋼線2に酸化膜が付着することを防止する観点から、好ましくは4000以下、より好ましくは3000以下、さらに好ましくは2000以下、さらに一層好ましくは1000以下である。
管状体9が有する貫通孔9aの開口部の形状は、任意であり、円形であってもよく、その他の形状であってもよい。管状体9が有する貫通孔9aの開口部と鋼線2との間隙(クリアランス)は、管状体9の貫通孔9aの内壁と鋼線2との摺動を防止する観点から、好ましくは10μm以上、より好ましくは20μm以上、さらに好ましくは50μm以上、さらに一層好ましくは100μm以上である。
なお、管状体9が有する貫通孔9aの開口部は、図3に示されるように、管状体9の一端に鋼線2を導入するための導入口9cにおける開口部9dおよび管状体9の他端に鋼線2を排出するための排出口9eにおける開口部9fである。開口部9dおよび開口部9fにおける面積および形状は、同一であってもよく、異なっていてもよいが、鋼線2が管状体9の貫通孔9a内で円滑に通線され、管状体9の貫通孔9aの内壁と鋼線2とが摺動することを回避し、表面全体にめっき被膜が形成された溶融アルミニウムめっき鋼線3を効率よく製造する観点から、図3に示されるように、開口部9dおよび開口部9fにおける面積および形状がそれぞれ同一であることが好ましい。
必要により鋼線導入部制御装置8を通過した鋼線2は、溶融アルミニウムめっき浴1に浸漬される。
鋼線2の通線速度は、溶融アルミニウムめっき鋼線3を効率よく製造する観点から、100m/min以上であり、溶融アルミニウムめっき浴1の表面に形成された酸化膜が飛散することを抑制し、表面に酸化膜がほとんど付着しない溶融アルミニウムめっき鋼線3を効率よく製造する観点から、好ましくは1000m/min以下、より好ましくは800m/min以下である。
溶融アルミニウムめっき浴1に鋼線2が浸漬される時間(めっき時間)は、鋼線2の表面上に形成されるめっき被膜の厚さが所定の厚さとなるように調整される。溶融アルミニウムめっき浴1に鋼線2が浸漬される時間(めっき時間)は、要求されるめっき被膜の厚さ、溶融アルミニウムめっき浴1の浴温などによって異なるので一概には決定することができないが、通常、0.3〜1秒間程度である。
次に、図1に示されるように、溶融アルミニウムめっき浴1に鋼線2を浸漬させた後、溶融アルミニウムめっき浴1に浸漬されている浸漬部材10を介して鋼線2を溶融アルミニウムめっき浴1の浴面10から引き上げることにより、鋼線2の表面に溶融アルミニウムめっき浴1のめっき被膜が形成され、溶融アルミニウムめっき鋼線3が得られる。
鋼線2を連続して溶融アルミニウムめっき浴1から引き上げる際、鋼線2は、めっき被膜の厚さが厚い部分と薄い部分との厚さの差が大きい偏肉部分が生じがたく、表面にアルミニウム塊が付着しがたい溶融アルミニウムめっき鋼線3を効率よく製造する観点から、鉛直方向に引き上げることが好ましい。
図4に示されるように、溶融アルミニウムめっき浴1から引き上げられた溶融アルミニウムめっき鋼線3と溶融アルミニウムめっき浴1の浴面との境界部で安定化部材12を溶融アルミニウムめっき浴1の浴面11および溶融アルミニウムめっき鋼線3と接触させ、安定化部材12を鋼線2に押圧するときの鋼線2の水平方向のスライド量L1と溶融アルミニウムめっき浴1の浴面11から浸漬部材10と鋼線2との接点までの最短長さL2との比(L1/L2)の値を0.006〜0.2に調整する。本発明においては、前記操作が採られているので、めっき被膜の厚さが厚い部分と薄い部分との厚さの差が大きい偏肉部分が生じがたく、表面にアルミニウム塊が付着しがたい溶融アルミニウムめっき鋼線3を効率よく製造することができる。
なお、図4は、本発明の溶融アルミニウムめっき鋼線の製造方法において、安定化部材を鋼線に押圧するときの鋼線2の水平方向のスライド量L1と溶融アルミニウムめっき浴の浴面から浸漬部材と鋼線との接点までの最短長さL2との比(L1/L2)の値を調整するときの概略説明図である。
浸漬部材10は、安定化部材12を鋼線2に押し込まない状態で鋼線2と接触するように配置される。浸漬部材10の材質としては、溶融アルミニウムめっき浴1に浸漬して使用されることから、例えば、溶融アルミニウムめっき浴1の加熱温度よりも高い融点を有する金属、セラミックなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。浸漬部材10の形状としては、例えば、円柱、多角柱などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。浸漬部材10が例えば円筒形状の浸漬ロールである場合、その直径は、特に限定されず、通常、200〜500mm程度である。浸漬部材10は、回転せずに固定されていてもよく。鋼線2の走行方向に沿って回転するように設置されていてもよい。
溶融アルミニウムめっき浴1の浴面11から浸漬部材10と鋼線2との接点までの最短長さL2は、めっき被膜の厚さが厚い部分と薄い部分との厚さの差が大きい偏肉部分が生じがたく、表面にアルミニウム塊が付着しがたい溶融アルミニウムめっき鋼線3を効率よく製造する観点から、好ましくは10〜500mm、より好ましくは20〜400mmである。
溶融アルミニウムめっき浴1に浸漬された鋼線2を溶融アルミニウムめっき浴1の浴面11から引き上げることにより、鋼線2の表面に溶融アルミニウムめっき浴1が付着し、溶融アルミニウムめっき鋼線3が得られる。図5に示されるように、鋼線2を溶融アルミニウムめっき浴1から矢印E方向に引き上げたとき、溶融アルミニウムめっき浴1から引き上げられる溶融アルミニウムめっき鋼線3に随伴してめっき浴1が持ち上げられることにより、メニスカス18が形成される。メニスカス18の先端18aが上方向に伸長したとき、当該メニスカス18の先端部18aが凝固してアルミニウム塊となり、当該アルミニウム塊が異物として溶融アルミニウムめっき鋼線3のめっき被膜19に付着するおそれがある。
したがって、メニスカス18の先端18aが過度に上方向へ伸長することを抑制することにより、アルミニウム塊などの異物が溶融アルミニウムめっき鋼線3の表面に付着することを抑制するために、鋼線2を溶融アルミニウムめっき浴1から引き上げる際には、溶融アルミニウムめっき浴1から引き上げられた溶融アルミニウムめっき鋼線3と溶融アルミニウムめっき浴1の浴面11との境界部で安定化部材12を溶融アルミニウムめっき浴1の浴面11および溶融アルミニウムめっき鋼線3と接触させ、溶融アルミニウムめっき鋼線3を介して安定化部材12と対向する位置に不活性ガスを吹き付けるためのノズル13が配設される。
なお、図5は、本発明の溶融アルミニウムめっき鋼線の製造方法において、鋼線2を溶融アルミニウムめっき浴1から引き上げる際の鋼線2と溶融アルミニウムめっき浴1の浴面11との境界部の概略説明図である。図5に示される実施態様では、安定化部材12は、溶融アルミニウムめっき鋼線3に押し込まれていないときの状態が示されている。
安定化部材12としては、例えば、表面に耐熱クロス材12aが巻かれたステンレス鋼製の角棒などが挙げられる。耐熱クロス材12aとしては、例えば、セラミック繊維、炭素繊維、アラミド繊維、イミド繊維などの耐熱性繊維を含有する織布や不織布などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。耐熱クロス材12aは、溶融アルミニウムめっき鋼線3の表面にアルミニウム塊が付着することを抑制する観点から、当該耐熱クロス材12aにおいてアルミニウムが付着していない面(新生面)を鋼線2と接触させることが好ましい。
安定化部材12は、溶融アルミニウムめっき浴1の浴面11と溶融アルミニウムめっき鋼線3との双方に同時に接触させることが好ましい。このように安定化部材12を溶融アルミニウムめっき浴1の浴面11と溶融アルミニウムめっき鋼線3との双方に同時に接触させた場合には、溶融アルミニウムめっき浴1の浴面11の脈動が抑制されることにより、メニスカス18の脈動が抑制されることから、鋼線2の表面にめっき被膜19を均一に形成させることができる。
安定化部材12を溶融アルミニウムめっき鋼線3に接触させる際には、溶融アルミニウムめっき鋼線3が微小振動することを抑制する観点から、溶融アルミニウムめっき鋼線3に張力が加わるようにするために安定化部材12を溶融アルミニウムめっき鋼線3に押し付ける。安定化部材12を溶融アルミニウムめっき鋼線3に押し付けるときの鋼線2の水平方向のスライド量L1は、鋼線2に安定化部材12を押し付けていない状態における鋼線2から鋼線2に安定化部材12を押し付けた状態における鋼線2への変化量、換言すれば、安定化部材12による鋼線2の撓み量である。
鋼線2の水平方向のスライド量L1は、特に限定されないが、めっき被膜19の厚さが厚い部分と薄い部分との厚さの差が大きい偏肉部分が生じがたく、表面にアルミニウム塊が付着しがたい溶融アルミニウムめっき鋼線3を効率よく製造する観点から、好ましくは0.15〜80mm、より好ましくは0.2〜60mmである。
安定化部材12を鋼線2に押圧するときの鋼線2の水平方向のスライド量L1と溶融アルミニウムめっき浴1の浴面11から浸漬部材10と鋼線2との接点までの最短長さL2との比(L1/L2)の値は、めっき被膜19の厚さが厚い部分と薄い部分との厚さの差が大きい偏肉部分が生じがたく、表面にアルミニウム塊が付着しがたい溶融アルミニウムめっき鋼線3を効率よく製造する観点から、0.006〜0.2、好ましくは0.01〜0.06に調整する。
溶融アルミニウムめっき鋼線3を介して安定化部材12と対向する位置に不活性ガスを吹き付けるためのノズル13が配設される。ノズル13の先端13aは、鋼線2と溶融アルミニウムめっき浴1の浴面11との境界部に不活性ガスを吹き付けられるように配設される。鋼線2からノズル13の先端13aまでの距離(最短距離)は、ノズル13の先端13aと鋼線2との接触を回避し、溶融アルミニウムめっき鋼線3を効率よく製造する観点から、好ましくは1mm以上であり、めっき被膜19の厚さが厚い部分と薄い部分との厚さの差が大きい偏肉部分がほとんど生じず、表面にアルミニウム塊がほとんど付着しない溶融アルミニウムめっき鋼線3を得る観点から、好ましくは50mm以下、より好ましくは40mm以下、より一層好ましくは30mm以下、さらに好ましくは10mm以下、さらに一層好ましくは5mm以下である。
ノズル13の先端13aの内径は、ノズル13の先端13aから吐出された不活性ガスを的確に鋼線2と溶融アルミニウムめっき浴1の浴面11との境界部に吹き付けることにより、溶融アルミニウムめっき鋼線3を効率よく製造する観点から、好ましくは1mm以上、より好ましくは2mm以上であり、めっき被膜19の厚さが厚い部分と薄い部分との厚さの差が大きい偏肉部分がほとんど生じず、表面にアルミニウム塊がほとんど付着しない溶融アルミニウムめっき鋼線3を得る観点から、好ましくは15mm以下、より好ましくは10mm以下、さらに好ましくは5mm以下である。
不活性ガスは、例えば、図1に示されるように、不活性ガス供給装置14から配管15を介してノズル13に供給することができる。なお、不活性ガスの流量を調整するために、例えば、バルブなどの流量制御装置(図示せず)が不活性ガス供給装置14内または配管15に設けられていてもよい。
不活性ガスは、溶融しているアルミニウムに対して不活性であるガスを意味する。不活性ガスとしては、例えば、窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガスなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。不活性ガスのなかでは、窒素ガスが好ましい。なお、不活性ガスには、本発明の目的を阻害しない範囲内で、例えば、酸素ガス、炭酸ガスなどが含まれていてもよい。
ノズル13の先端13aから吐出される不活性ガスの圧力は、0.1〜25kPaに調整されている。本発明では、鋼線2を溶融アルミニウムめっき浴1に浸漬させた後、溶融アルミニウムめっき浴1から引き上げる際に、ノズル13の先端13aから溶融アルミニウムめっき鋼線3と溶融アルミニウムめっき浴1の浴面11との境界部に吹き付けるための不活性ガスの圧力が0.1〜25kPaに調整されているので、めっき被膜19の厚さが厚い部分と薄い部分との厚さの差が大きい偏肉部分がほとんど生じず、表面にアルミニウム塊がほとんど付着しない溶融アルミニウムめっき鋼線3を得ることができる。
ノズル13の先端13aから吐出される不活性ガスの圧力は、表面にアルミニウム塊がほとんど付着しない溶融アルミニウムめっき鋼線3を得る観点から、0.1kPa以上であり、めっき被膜19の厚さが厚い部分と薄い部分との厚さの差が大きい偏肉部分がほとんど生じない溶融アルミニウムめっき鋼線3を得る観点から、25kPa以下、好ましくは20kPa以下、より好ましくは15kPa以下、さらに好ましくは3kPa以下である。
なお、ノズル13の先端13aから吐出される不活性ガスの圧力は、ノズル13の先端13aから2mmの距離で離れた箇所におけるノズル13内の不活性ガスのなかに内径0.5mmのステンレス鋼製のチューブを当該チューブの先端とノズル13の先端13aとが対向するように差し込み、当該チューブの先端にかかる不活性ガスのガス圧力を圧力センサで測定したときの値である。
ノズル13の先端13aから吐出される不活性ガスの体積流量は、溶融アルミニウムめっき浴1のメニスカス部18の酸化を効率よく防止する観点から、好ましくは2L(リットル)/min以上、より好ましくは5L/min以上、さらに好ましくは10L/min以上であり、めっき被膜19の厚さが厚い部分と薄い部分との厚さの差が大きい偏肉部分がほとんど生じず、表面にアルミニウム塊がほとんど付着しない溶融アルミニウムめっき鋼線3を得る観点から、好ましくは200L/min以下、より好ましくは150L/min以下、さらに好ましくは100L/min以下である。
ノズル13の先端13aから吐出される不活性ガスの温度は、めっき被膜19の厚さが厚い部分と薄い部分との厚さの差が大きい偏肉部分がほとんど生じず、表面にアルミニウム塊がほとんど付着しない溶融アルミニウムめっき鋼線3を得る観点から、600℃以上、好ましくは610℃以上、より好ましくは620℃以上であり、熱効率を向上させる観点から、好ましくは1000℃以下、より好ましくは800℃以下、さらに好ましくは750℃以下である。
なお、ノズル13の先端13aから吐出される不活性ガスの温度は、ノズル13の先端13aから吐出されるノズル13の先端13a部から2mmの距離で離れた箇所における不活性ガスのなかに、例えば、直径が1.6mmであるシース熱電対などの測温用熱電対を差し込むことによって測定したときの値である。
溶融アルミニウムめっき浴1の浴面11から溶融アルミニウムめっき鋼線3を引き上げる際の引き上げ速度は、特に限定されず、当該引き上げ速度を適宜調整することにより、溶融アルミニウムめっき鋼線3の表面に存在しているめっき被膜19の厚さを調整することができることから、当該めっき被膜19の厚さに応じて適宜調整することが好ましい。
なお、溶融アルミニウムめっき鋼線3を引き上げる過程で溶融アルミニウムめっき鋼線3を冷却し、表面に形成されているめっき被膜(図示せず)を効率よく凝固させるために、図1に示されるように、必要により、ノズル13の上部に冷却装置16が配設されていてもよい。冷却装置16では、溶融アルミニウムめっき鋼線3に、例えば、ガス、液体のミストなどを吹き付けることにより、当該溶融アルミニウムめっき鋼線3を冷却することができる。
以上のようにして製造された溶融アルミニウムめっき鋼線3は、図1に示されるように、例えば、巻取装置17などで回収することができる。
溶融アルミニウムめっき鋼線3の表面に存在しているめっき被膜の厚さは、撚り線加工、かしめ加工などの際に素地の鋼線2が露出することを抑制するとともに、単位直径あたりの機械的強度を高める観点から、5〜10μm程度であることが好ましい。
溶融アルミニウムめっき鋼線3の表面に存在しているめっき被膜の薄肉部の最小厚さは、撚り線加工、かしめ加工などの際に素地の鋼線2が露出することを抑制するとともに、単位直径あたりの機械的強度を高める観点から、好ましくは1μm以上、より好ましくは2μm以上である。
溶融アルミニウムめっき鋼線3の偏肉指数は、めっき被膜の厚さが厚い部分と薄い部分との厚さの差が大きい偏肉部分が生じがたく、表面にアルミニウム塊が付着しがたい溶融アルミニウムめっき鋼線を効率よく製造する観点から、好ましくは10以下、より好ましくは8以下、さらに好ましくは4以下である。
なお、溶融アルミニウムめっき鋼線3の偏肉指数は、溶融アルミニウムめっき鋼線3のめっき被膜の均一性を示す指標である。溶融アルミニウムめっき鋼線3の偏肉指数は、めっき被膜の最大厚さおよび最小厚さから、式:
[偏肉指数]=[最大厚さ]/[最小厚さ]
に基づいて求められた値である。
前記で得られた溶融アルミニウムめっき鋼線3には、必要により、所望の直径を有するようにするために、ダイスなどを用いて伸線加工を施してもよい。
本発明の溶融アルミニウムめっき鋼線の製造方法によって得られた溶融アルミニウムめっき鋼線は、例えば、自動車のワイヤーハーネスなどに好適に使用することができる。
次に本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はかかる実施例のみに限定されるものではない。
実施例1〜99および比較例1〜11
各実施例および各比較例では、図1に示される溶融アルミニウムめっき鋼線の製造方法の実施態様に基づいて溶融アルミニウムめっき鋼線を製造した。
鋼線として、以下の各表に示す直径を有し、各表に示す鋼種からなる鋼線を用い、当該鋼線の表面に亜鉛めっき処理を施していないもの(各表の「プレZn」の欄に「無」と表記)または平均厚さが5μm以下の亜鉛めっき被膜を有するもの(各表の「プレZn」の欄に「有」と表記)を用いた。各表の鋼種の欄に記載の37Aは、炭素を0.37質量%含有する硬鋼からなる鋼線を意味する。
なお、前記亜鉛めっきを施していない鋼線には、溶融アルミニウムめっき浴に浸漬する前に、界面活性剤を添加したオルソケイ酸ナトリウムの脱脂液に浸漬することにより、脱脂を施した。
また、鋼線を溶融アルミニウムめっき浴に浸漬させる前に、図2に示される鋼線導入部制御装置8に通過させ、加熱装置6で鋼線を約400℃に予備加熱した。加熱ガスとして窒素ガスを用いた。なお、予備加熱温度は、鋼線に熱電対を接続させたものを用意し、所定の温度に維持した加熱装置6の中に当該熱電対を鋼線とともに通過させることによって測定した。
また、図2に示される鋼線導入部制御装置8に用いられる浴面制御装置7として、図3に示されるように、管状体9が有する貫通孔9aの導入口における開口部9bと排出口における開口部9cの形状、大きさおよび面積が同一である浴面制御装置7を用い、管状体9が有する貫通孔の開口部9bの面積と鋼線の横断面における面積との比〔管状体9が有する貫通孔の開口部9bの面積/鋼線の横断面における面積〕を57に設定し、当該浴面制御装置7を介して鋼線を溶融アルミニウムめっき浴に0.3〜1秒間浸漬させた。
溶融アルミニウムめっき浴として、溶融アルミニウムめっき浴(アルミニウムの純度:99.7%以上、各表の「溶融Alめっきの種類」の欄に「Al」と表記)、4質量%のケイ素を含有する溶融アルミニウムめっき浴(各表の「溶融Alめっきの種類」の欄に「4%Si」と表記)、8質量%のケイ素を含有する溶融アルミニウムめっき浴(各表の「溶融Alめっきの種類」の欄に「8%Si」と表記)、11質量%のケイ素を含有する溶融アルミニウムめっき浴(各表の「溶融Alめっきの種類」の欄に「11%Si」と表記)または13質量%のケイ素を含有する溶融アルミニウムめっき浴(各表の「溶融Alめっきの種類」の欄に「13%Si」と表記)を用い、各表に示す浴温で各表に示す通線速度(鋼線の引き上げ速度)にて鋼線を溶融アルミニウムめっき浴に浸漬させた後、当該溶融アルミニウムめっき浴から引き上げた。
溶融アルミニウムめっき浴に浸漬部材(直径:300mm、材質:機械構造用炭素鋼S55C)を浸漬させ、溶融アルミニウムめっき浴の浴面から前記浸漬部材と鋼線との接点までの最短長さL2を450mmに設定し、溶融アルミニウムめっき浴に浸漬されている鋼線に浸漬部材を接触させた。
溶融アルミニウムめっき浴から引き上げられた溶融アルミニウムめっき鋼線と溶融アルミニウムめっき浴の浴面との境界部で浴面および当該溶融アルミニウムめっき鋼線に安定化部材を接触させ、安定化部材を溶融アルミニウムめっき鋼線に押圧し、安定化部材を鋼線に押圧するときの鋼線の水平方向のスライド量L1を30mmとした。これにより、鋼線の水平方向のスライド量L1と溶融アルミニウムめっき浴の浴面から前記浸漬部材と鋼線との接点までの最短長さL2との比(L1/L2)の値が0.067に調整された。なお、安定化部材として表面に耐熱クロス材が巻かれたステンレス鋼製の角棒を用い、めっき鋼線と安定化部材の接触長さを5mmに調整した。
また、前記溶融アルミニウムめっき鋼線から2mm離れた箇所にノズルの先端が位置するように、各表に示す先端の内径を有するノズルを配設し、当該ノズルの先端から各表に示す温度に調整された不活性ガス(窒素ガス)を各表に示す体積流量および圧力で溶融アルミニウムめっき鋼線と溶融アルミニウムめっき浴の浴面との境界部に吹き付けた。
以上の操作を行なうことにより、各表に示す平均厚さのめっき被膜を有する溶融アルミニウムめっき鋼線を得た。
次に、溶融アルミニウムめっき鋼線の性能として、アルミニウム塊の付着性およびめっき被膜の均一性を以下の方法に基づいて調べた。その結果を各表に併記する。
〔アルミニウム塊の付着性〕
長さ300mの溶融アルミニウムめっき鋼線を100m/minの通線速度で走行させ、当該溶融アルミニウムめっき鋼線の全長にわたって溶融アルミニウムめっき鋼線の外径を測定し、局部的に外径が大きくなっている凸部分の有無を調べた。局部的に外径が大きい凸部分にアルミニウム塊が付着しているかどうかを目視により観察し、以下の評価基準に基づいてアルミニウム塊の付着性を評価した。
(評価基準)
○:アルミニウム塊の付着が認められない。
×:アルミニウム塊の付着が認められる。
〔めっき被膜の均一性〕
めっき被膜の最大厚さおよび最小厚さを求めるために、溶融アルミニウムめっき鋼線の断面を観察した。より具体的には、溶融アルミニウムめっき鋼線から300mmの試験体を任意に切り出し、さらに当該試験体から6本の試験片を切り出した後、当該試験片を樹脂に包埋させ、包埋させた樹脂を裁断し、その裁断面を研磨することにより、溶融アルミニウムめっき鋼線の断面を露出させた。この断面を光学顕微鏡(倍率:500倍)で観察し、めっき被膜の最大厚さおよび最小厚さを測定した。6本の試験片のめっき被膜の最も大きい厚さの平均値を当該めっき被膜の最大厚さとし、前記6本の試験片のめっき被膜の最も小さい厚さの平均値を当該めっき被膜の最小厚さとした。
前記で求めためっき被膜の最大厚さおよび最小厚さから、式:
[偏肉指数]=[最大厚さ]/[最小厚さ]
に基づいて偏肉指数を求め、以下の評価基準に基づいてめっき被膜の均一性を評価した。
(評価基準)
◎:偏肉指数が4以下
○:偏肉指数が4を超え10以下
×:偏肉指数が10を超過
〔総合評価〕
アルミニウム塊の付着性およびめっき被膜の均一性の評価結果に基づいて、以下の評価基準により、総合評価を行なった。
(評価基準)
◎:アルミニウム塊の付着性の評価が○であり、めっき被膜の均一性の評価が◎である(優秀)。
○:アルミニウム塊の付着性およびめっき被膜のすべての評価が○である(優良)。
×:アルミニウム塊の付着性およびめっき被膜の評価において、いずれかが×である(不合格)。
実施例100〜135および比較例12〜18
実施例7において、溶融アルミニウムめっき浴、ノズル、不活性ガスおよび線材の状態を表6〜8に示すように変更し、めっき被膜を有する溶融アルミニウムめっき鋼線を得た。得られた溶融アルミニウムめっき鋼線を用い、当該溶融アルミニウムめっき鋼線の性能として、アルミニウム塊の付着性およびめっき被膜の均一性を実施例7と同様にして調べた。その結果を表6〜8に併記する。
以上の結果から、各実施例によれば、めっき被膜の厚い部分と薄い部分とのめっき被膜の厚さの差が大きい偏肉部分が生じがたく、表面にアルミニウム塊が付着しがたい溶融アルミニウムめっき鋼線を効率よく製造することができることがわかる