JP6746349B2 - 溶融アルミニウムめっき鋼線およびその製造方法 - Google Patents

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本発明は、溶融アルミニウムめっき鋼線およびその製造方法に関する。さらに詳しくは、本発明は、例えば、自動車のワイヤーハーネスなどに好適に使用することができる溶融アルミニウムめっき鋼線およびその製造方法に関する。
ステンレス鋼板に溶融アルミニウムめっきを施す方法として、例えば、16〜35重量%のCrを含有するフェライト系ステンレス鋼板をプレめっきして24時間以上放置した後、水素ガス濃度が50体積%以下で露点が−30℃以下の水素−窒素雰囲気中で加熱し、引き続いて溶融アルミ浴又は溶融アルミニウム合金浴に導入することを特徴とする高Crフェライト系ステンレス鋼板の溶融アルミめっき方法が提案されている(例えば、特許文献1の請求項1参照)。前記高Crフェライト系ステンレス鋼板の溶融アルミめっき方法によれば、不めっき等の欠陥を発生させることなく、加工性に優れた溶融アルミニウムめっき高Crフェライト系ステンレス鋼板を製造することができるという優れた効果が奏される。
しかし、溶融アルミニウムめっき鋼線においては、溶融アルミニウムめっきが施されたステンレス鋼板と相違して、溶融アルミニウムめっき鋼線を製造する際に、鋼線にFe−Bプレめっきを施さずに、鋼線に直接、溶融アルミニウムめっきを施すことが、溶融アルミニウムめっき鋼線の生産性の観点から望まれている。
特開平5−195182号公報
鋼線に直接、溶融アルミニウムめっきを施す際に、鋼線におけるめっき層の付着性を向上させるために、溶融アルミニウムめっき浴の温度を高くした場合、あるいは鋼線の浸漬時間を長くした場合には、鋼線としてステンレス鋼線などのようにニッケルが含まれている鋼線を用いたときに当該鋼線に含まれているニッケルが溶融アルミニウムめっき浴中に溶出し、溶出したニッケルが鋼線の表面上で形成される溶融アルミニウムめっき被膜に含まれることにより、溶融アルミニウムめっき鋼線の耐食性が低下するおそれがある。
本発明は、前記従来技術に鑑みてなされたものであり、耐食性に優れた溶融アルミニウムめっき鋼線およびその製造方法を提供することを課題とする。
本発明は、
(1) 鋼線の表面上に溶融アルミニウムめっき被膜を有する溶融アルミニウムめっき鋼線を製造する方法であって、ケイ素の含有率が13質量%以下であり、ニッケルの含有率が0.3質量%以下であり、当該ケイ素およびニッケルの残部がアルミニウムおよび不可避不純物である溶融アルミニウムめっき浴に鋼線を浸漬させた後、当該溶融アルミニウムめっき浴から鋼線を連続して引き上げることによって溶融アルミニウムめっき鋼線を製造するにあたり当該鋼線を溶融アルミニウムめっき浴に浸漬させる前に当該鋼線を60〜1000℃に加熱するための環状の加熱装置と、溶融アルミニウムめっき浴に浸漬された浸漬領域を有する管状体からなる浴面制御装置とを有する鋼線導入部制御装置に当該鋼線を通過させ、当該溶融アルミニウムめっき浴の浴温をめっき浴の融点〜700℃に調整し、当該溶融アルミニウムめっき浴における鋼線の浸漬時間を5.8秒以下に調整することを特徴とする溶融アルミニウムめっき鋼線の製造方法、および
(2) 溶融アルミニウムめっき浴から引き上げられた溶融アルミニウムめっき鋼線と溶融アルミニウムめっき浴の浴面との境界部で安定化部材を当該溶融アルミニウムめっき浴の浴面および当該溶融アルミニウムめっき鋼線と接触させる前記(1)に記載の溶融アルミニウムめっき鋼線の製造方法
に関する。
本発明によれば、耐食性に優れた溶融アルミニウムめっき鋼線およびその製造方法が提供される。
本発明の溶融アルミニウムめっき鋼線の製造装置の一実施態様を示す概略説明図である。 図1に示される鋼線導入部制御装置の一実施態様を示す概略断面図である。 図1および図2に示される鋼線導入部制御装置に用いられる浴面制御装置の一実施態様を示す概略断面図である。 本発明の溶融アルミニウムめっき鋼線の製造方法において、鋼線を溶融アルミニウムめっき浴から引き上げる際の鋼線と溶融アルミニウムめっき浴の浴面との境界部の一実施態様を示す概略断面図である。
本発明の溶融アルミニウムめっき鋼線は、前記したように、鋼線の表面上に溶融アルミニウムめっき被膜を有する溶融アルミニウムめっき鋼線であり、前記溶融アルミニウムめっき被膜が、ケイ素の含有率が13質量%以下であり、ニッケルの含有率が0.3質量%以下であり、当該ケイ素およびニッケルの残部がアルミニウムおよび不可避不純物である溶融アルミニウムめっき被膜であることを特徴とする。
本発明に用いられる鋼線を構成する鋼材としては、例えば、ステンレス鋼などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
ステンレス鋼は、ニッケルおよびクロム(Cr)を含有する合金鋼である。ステンレス鋼としては、例えば、JIS G4309に規定されているオーステナイト系の鋼材、フェライト系の鋼材、マルテンサイト系の鋼材などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。ステンレス鋼の具体例としては、SUS301、SUS304などの一般にオーステナイト相が準安定であるとされるステンレス鋼;SUS305、SUS310、SUS316などの安定オーステナイト系ステンレス鋼;SUS403、SUS410、SUS416、SUS420、SUS431、SUS440などのマルテンサイト系ステンレス鋼などをはじめ、SUS200番台に分類されるクロム−ニッケル−マンガン系のステンレス鋼などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
鋼線の線径は、特に限定されず、溶融アルミニウムめっき鋼線の用途に応じて適宜調整することが好ましい。例えば、溶融アルミニウムめっき鋼線を自動車のワイヤーハーネスなどの用途に用いる場合には、鋼線の線径は、通常、0.05〜0.5mm程度であることが好ましい。
鋼線は、溶融アルミニウムめっきが施される前に、脱脂されていてもよい。鋼線の脱脂は、例えば、鋼線をアルカリ脱脂液に浸漬した後、水洗し、鋼線に付着している水分を中和し、再び水洗することによって脱脂を行なう方法、鋼線をアルカリ脱脂液に浸漬した状態で鋼線に通電することによって電解脱脂を行なう方法などによって行なうことができる。前記アルカリ脱脂液には、脱脂力を向上させる観点から、界面活性剤を含有させてもよい。
溶融アルミニウムめっき鋼線の表面には、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる被膜(以下、溶融アルミニウムめっき被膜という)が形成されている。本発明の溶融アルミニウムめっき鋼線は、その表面上に溶融アルミニウムめっき被膜が形成されているので、アルミニウム素線との密着性に優れ、引張強度および電気抵抗の経時的安定性にも優れている。
また、本発明の溶融アルミニウムめっき鋼線の溶融アルミニウムめっき被膜は、ケイ素の含有率が13質量%以下であり、ニッケルの含有率が0.3質量%以下であり、当該ケイ素およびニッケルの残部がアルミニウムおよび不可避不純物である溶融アルミニウムめっき被膜であることから、耐食性に優れている。
溶融アルミニウムめっき鋼線の溶融アルミニウムめっき被膜におけるケイ素の含有率は、本発明の溶融アルミニウムめっき鋼線の電気抵抗を低下させ、伸線加工性を向上させる観点から、13質量%以下であり、当該ケイ素の含有率の下限値は0質量%である。
溶融アルミニウムめっき鋼線の溶融アルミニウムめっき被膜におけるニッケルの含有率は、本発明の溶融アルミニウムめっき鋼線の耐食性を向上させる観点から、0.3質量%以下であり、その下限値は0質量%である。
溶融アルミニウムめっき鋼線の溶融アルミニウムめっき被膜におけるケイ素およびニッケルの残部は、アルミニウムおよび不可避不純物である。
不可避不純物は、通常、溶融アルミニウムめっき工程で不可避的に混入する不純物である。不可避不純物としては、例えば、鉄(Fe)、クロム(Cr)、亜鉛(Zn)、銅(Cu)などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。不可避不純物の含有率は、当該不可避不純物の種類によって異なることから一概には決定することができず、本発明の目的が阻害されない範囲内であればよいが、例えば、銅については、0.03質量%以下であればよい。
本発明の溶融アルミニウムめっき鋼線は、例えば、溶融アルミニウムめっき浴に鋼線を浸漬させた後、当該溶融アルミニウムめっき浴から鋼線を連続して引き上げることによって溶融アルミニウムめっき鋼線を製造する際に、当該溶融アルミニウムめっき浴の浴温をめっき浴の融点〜700℃に調整し、当該溶融アルミニウムめっき浴における鋼線の浸漬時間を5.8秒以下に調整することによって製造することができる。
以下に、本発明の溶融アルミニウムめっきの製造方法を図面に基づいて説明するが、本発明は、当該図面に記載の実施態様のみに限定されるものではない。
図1は、本発明の溶融アルミニウムめっき鋼線の製造方法の一実施態様を示す概略説明図である。
本発明の溶融アルミニウムめっき鋼線の製造方法では、溶融アルミニウムめっき浴1に鋼線2を浸漬させた後、当該溶融アルミニウムめっき浴1から鋼線2を連続して引き上げることにより、溶融アルミニウムめっき鋼線3が製造される。
鋼線2は、耐食性に優れた溶融アルミニウムめっき鋼線3を得る観点から、鋼線2を溶融アルミニウムめっき浴1に浸漬させる前に、鋼線2をアルカリ脱脂および酸洗処理を施すことが好ましい。アルカリ脱脂および酸洗処理の方法には、常法を用いることができる。
図1において、鋼線2は、当該鋼線2の送出装置4から送り出され、矢印A方向に連続的に搬送され、めっき浴槽5内の溶融アルミニウムめっき浴1に浸漬される。
溶融アルミニウムめっき浴1には、アルミニウムのみが用いられていてもよく、必要により、本発明の目的を阻害しない範囲内で他の元素が含有されていてもよい。
前記他の元素としては、例えば、クロム、亜鉛、ケイ素、銅、鉄などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの他の元素をアルミニウムに含有させた場合には、被膜の機械的強度を高めることができ、ひいては溶融アルミニウムめっき鋼線3の引張強度を高めることができる。前記他の元素のなかでは、鋼線の種類にもよるが、鋼線に含まれている鉄と被膜に含まれているアルミニウムとの間で脆性を有する鉄−アルミニウム合金層の生成を抑制し、めっき被膜の機械的強度を高めるとともに、溶融アルミニウムめっき浴1の融点を低下させることにより、鋼線2を効率よくめっきさせる観点から、ケイ素が好ましい。
溶融アルミニウムめっき浴1におけるケイ素の含有率は、溶融アルミニウムめっき鋼線3の電気抵抗を低下させ、伸線加工性を向上させる観点から、13質量%以下である。
溶融アルミニウムめっき浴1におけるニッケルの含有率は、溶融アルミニウムめっき鋼線3の耐食性を向上させる観点から、0.3質量%以下である。
溶融アルミニウムめっき浴1の浴温は、めっき浴1の融点〜700℃に調整される。本発明においては、溶融アルミニウムめっき浴1の浴温が前記温度範囲に調整されていることから、耐食性に優れた溶融アルミニウムめっき鋼線3を得ることができる。溶融アルミニウムめっき浴1の浴温は、平滑なアルミニウムめっき被膜(図示せず)を効率よく形成させる観点から、大気圧下でのめっき浴1の融点以上の温度、好ましくは665℃以上、より好ましくは670℃以上であり、耐食性に優れた溶融アルミニウムめっき鋼線3を得る観点から、700℃以下である。
本発明においては、溶融アルミニウムめっき浴1に鋼線2を浸漬させる時間(浸漬時間)を5.8秒以下に調整する点にも、1つの大きな特徴がある。鋼線2を溶融アルミニウムめっき浴1に浸漬させる浸漬時間は、平滑なめっき被膜を有する溶融アルミニウムめっき線3を効率よく製造する観点から、好ましくは0.1秒間以上、より好ましくは0.2秒間以上、さらに好ましくは0.3秒間以上であり、溶融アルミニウムめっき鋼線3の耐食性を向上させる観点から、5.8秒間以下である。
なお、鋼線2を溶融アルミニウムめっき浴1に浸漬させる前に、鋼線2の表面に酸化膜が付着することを防止するために、鋼線2をあらかじめ鋼線導入部制御装置8に通過させることが好ましい。
鋼線導入部制御装置8としては、例えば、図2に示される鋼線導入部制御装置8などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。図2は、鋼線導入部制御装置8の一実施態様を示す概略断面図である。鋼線導入部制御装置8は、加熱装置6および浴面制御装置7を有する。
加熱装置6は、例えば、ステンレス鋼などの管状の加熱装置本体6aを有する。加熱装置本体6aの内部6bは空洞となっている。鋼線2は、加熱装置本体6aの内部6bに矢印B方向に通線される。加熱装置本体6aの側面には、加熱ガス通気口6cが配設されている。
加熱ガスとしては、例えば、空気をはじめ、窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガスなどの不活性ガスなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。加熱ガスの温度は、鋼線2の種類およびその線径、通線速度、加熱ガスの流量などによって異なるので一概には決定することができない。
鋼線2の加熱温度は、溶融アルミニウムめっき鋼線3を効率よく製造する観点から、好ましくは60℃以上、より好ましくは80℃以上、さらに好ましくは150℃以上、さらに一層好ましくは200℃以上であり、エネルギー効率を考慮して、好ましくは1000℃以下、より好ましくは900℃以下、さらに好ましくは800℃以下である。
加熱装置本体6aの長さは、鋼線2が所定温度に加熱されるように調整することができる長さであればよく、特に限定されないが、その一例を挙げれば、例えば、1〜5m程度である。加熱装置本体6aの内径は、使用される鋼線2の線径および種類などによって異なるので一概には決定することができないが、通常、鋼線2の線径の1.5〜50倍程度である。例えば、線径が0.2mmの鋼線2を用いる場合には、加熱装置本体6aの内径は、0.3〜10mm程度であることが好ましい。
加熱装置本体6aの側面には、枝管6eが配設されている。枝管6eから加熱ガスを通気することにより、加熱装置6内に通線される鋼線2を加熱することができるほか、枝管6e内にヒーター(図示せず)を配設し、当該ヒーターによって枝管6e内に通気される加熱ガスを加熱してもよい。図2に示される実施態様では、枝管6eが7本配設されているが、枝管6eの本数には特に限定がなく、当該本数は、1本だけであってもよく、あるいは2〜10本程度であってもよい。
加熱装置6と当該加熱装置6の下方に配設されている浴面制御装置7との間には、間隙Dが設けられている。間隙Dは、3〜10mm程度であることが好ましい。なお、間隙Dは、必ずしも設けられている必要がなく、加熱装置6と浴面制御装置7とを一体化させてもよい。
なお、加熱装置6として、図2に示される加熱装置6ではなく、例えば、通電加熱装置、誘導加熱装置などを用いることができる。
浴面制御装置としては、例えば、図3に示される浴面制御装置7などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。図3は、浴面制御装置7の一実施態様を示す概略断面図である。
浴面制御装置7は、鋼線2を内部に貫通させるための貫通孔9aを有する管状体9からなる。管状体9は、その一端に鋼線2を導入するための導入口9bを有し、他端に鋼線2を排出するための排出口9cを有する。管状体9は、さらに排出口9cの端部から管状体9の長手方向に沿って溶融アルミニウムめっき浴1に浸漬させるための浸漬領域9dを有する。浸漬領域9dの長さは、通常、好ましくは2〜20mm、より好ましくは5〜15mm以上である。
浴面制御装置7の全長は、通常、好ましくは30〜500mm、より好ましくは40〜300mm、さらに好ましくは50〜100mmである。
管状体9の導入口9bにおける開口部の面積と溶融アルミニウムめっきに使用される鋼線2の横断面(いわゆる鋼線2の断面)における面積との比〔管状体が有する貫通孔の開口部の面積/鋼線の横断面における面積〕の値は、鋼線2を管状体9の貫通孔9a内に円滑に導入する観点から、好ましくは3以上であり、鋼線2に酸化膜が付着することを防止する観点から、好ましくは4000以下、より好ましくは3000以下、さらに好ましくは2000以下、さらに一層好ましくは1000以下である。
管状体9の導入口9bにおける開口部の形状は、任意であり、円形であってもよく、その他の形状であってもよい。管状体9の導入口9bにおける開口部と鋼線2の間隙(クリアランス)は、管状体9の内壁と鋼線2との摺動を防止する観点から、好ましくは10μm以上、より好ましくは20μm以上、さらに好ましくは50μm以上、さらに一層好ましくは100μm以上である。
必要により鋼線導入部制御装置8を通過した鋼線2は、溶融アルミニウムめっき浴1に浸漬される。
鋼線2の通線速度は、溶融アルミニウムめっき鋼線3を効率よく製造する観点から、100m/min以上であり、酸化膜が飛散し難く、表面に酸化膜が付着し難い溶融アルミニウムめっき鋼線3を効率よく製造する観点から、好ましくは1000m/min以下、より好ましくは800m/min以下である。
溶融アルミニウムめっき浴1に浸漬される時間(めっき時間)は、鋼線2の表面上に形成されるめっき被膜の厚さが所定の厚さとなるように調整される。溶融アルミニウムめっき浴1に浸漬される時間(めっき時間)は、要求されるめっき被膜の厚さ、溶融アルミニウムめっき浴1の浴温などによって異なるので一概には決定することができないが、通常、1〜3秒間程度である。
次に、溶融アルミニウムめっき浴1に浸漬された鋼線2を溶融アルミニウムめっき浴1の浴面10から引き上げることにより、鋼線2の表面に溶融アルミニウムめっき浴1が付着した溶融アルミニウムめっき鋼線3が得られる。
鋼線2を溶融アルミニウムめっき浴1から引き上げる際には、図1および4に示されるように、溶融アルミニウムめっき浴1から引き上げられた溶融アルミニウムめっき鋼線3と溶融アルミニウムめっき浴1の浴面10との境界部で安定化部材11を当該溶融アルミニウムめっき浴1の浴面10および当該溶融アルミニウムめっき鋼線3と接触させ、当該溶融アルミニウムめっき鋼線3を介して当該安定化部材11と対向する位置に不活性ガスを吹き付けるためのノズル12が配設される。なお、図4は、本発明の溶融アルミニウムめっき鋼線の製造方法において、鋼線2を溶融アルミニウムめっき浴1から引き上げる際の鋼線2と溶融アルミニウムめっき浴1の浴面10との境界部の概略断面図である。
安定化部材11としては、例えば、表面に耐熱クロス材11aが巻かれたステンレス鋼製の角棒などが挙げられる。安定化部材11に巻かれている耐熱クロス材11aは、溶融アルミニウムめっき鋼線3の表面にアルミニウム塊が付着することを抑制する観点から、当該安定化部材11の新しい面(新生面)を溶融アルミニウムめっき鋼線3と接触させることが好ましい。安定化部材11の新しい面(新生面)は、例えば、耐熱クロス材11aがあらかじめ巻回されている安定化部材11を用い、安定化部材11を溶融アルミニウムめっき鋼線3と接触させながら、溶融アルミニウムめっき鋼線3を引き上げているときに、当該耐熱クロス材11aを順次巻き取ることによって形成させることができる。
安定化部材11は、溶融アルミニウムめっき浴1の浴面10と溶融アルミニウムめっき鋼線3との双方に同時に接触させることが好ましい。このように安定化部材11を溶融アルミニウムめっき浴1の浴面10と溶融アルミニウムめっき鋼線3との双方に同時に接触させた場合には、溶融アルミニウムめっき浴1の浴面10の脈動が抑制され、溶融アルミニウムめっき鋼線3を安定化部材11と接触させた状態で引き上げた際に溶融アルミニウムめっき鋼線3が微小振動することが抑制され、ひいては鋼線2の表面に溶融アルミニウムめっき浴1の被膜を均一に形成させることができる。安定化部材11を溶融アルミニウムめっき鋼線3に接触させる際には、溶融アルミニウムめっき鋼線3が微小振動することを抑制する観点から、必要により、溶融アルミニウムめっき鋼線3に張力が加わるようにするために安定化部材11を溶融アルミニウムめっき鋼線3に軽く押し付けてもよい。
溶融アルミニウムめっき鋼線3を介して安定化部材11と対向する位置に不活性ガスを吹き付けるためのノズル12が配設されるが、ノズル12の先端12aは、溶融アルミニウムめっき鋼線3と溶融アルミニウムめっき浴1の浴面10との境界部に不活性ガスを吹き付けられるように配設することが好ましい。溶融アルミニウムめっき鋼線3からノズル12の先端12aまでの距離(最短距離)は、溶融アルミニウムめっき鋼線3との接触を回避し、溶融アルミニウムめっき鋼線3を効率よく製造する観点から、好ましくは1mm以上であり、線径が均一であり、表面にアルミニウム塊がほとんど付着しない溶融アルミニウムめっき鋼線3を得る観点から、好ましくは50mm以下、より好ましくは40mm以下、より一層好ましくは30mm以下、さらに好ましくは10mm以下、さらに一層好ましくは5mm以下である。
ノズル12の先端12aの内径は、ノズル12の先端12aから吐出された不活性ガスを的確に溶融アルミニウムめっき鋼線3と溶融アルミニウムめっき浴1の浴面10との境界部に吹き付けることにより、溶融アルミニウムめっき鋼線3を効率よく製造する観点から、好ましくは1mm以上、より好ましくは2mm以上であり、線径が均一であり、表面にアルミニウム塊がほとんど付着しない溶融アルミニウムめっき鋼線3を得る観点から、好ましくは15mm以下、より好ましくは10mm以下、さらに好ましくは5mm以下である。
不活性ガスは、例えば、不活性ガス供給装置13から配管14を介してノズル12に供給することができる。不活性ガス供給装置13内または配管14に不活性ガスの流量を調整するために、例えば、バルブなどの流量制御装置(図示せず)が設けられていてもよい。
不活性ガスは、溶融しているアルミニウムに対して不活性であるガスを意味する。不活性ガスとしては、例えば、窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガスなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。不活性ガスのなかでは、窒素ガスが好ましい。不活性ガスには、本発明の目的を阻害しない範囲内で、例えば、酸素ガス、炭酸ガスなどが含まれていてもよい。
ノズル12の先端12aから吐出される不活性ガスの体積流量は、線径が均一であり、表面にアルミニウム塊がほとんど付着しない溶融アルミニウムめっき鋼線3を得る観点から、好ましくは2L(リットル)/min以上、より好ましくは5L/min以上、さらに好ましくは10L/min以上であり、溶融アルミニウムめっき浴1の飛散によって溶融アルミニウムめっき鋼線3の表面にアルミニウム塊が付着することを抑制する観点から、好ましくは200L/min以下、より好ましくは150L/min以下、さらに好ましくは100L/min以下である。
ノズル12の先端12aから吐出される不活性ガスの温度は、線径が均一であり、表面にアルミニウム塊がほとんど付着しない溶融アルミニウムめっき鋼線3を得る観点から、好ましくは200℃以上、より好ましくは300℃以上、さらに好ましくは400℃以上であり、あまりにも高い場合には熱効率が低下することから、好ましくは800℃以下、より好ましくは780℃以下、さらに好ましくは750℃以下である。
ノズル12の先端12aから吐出される不活性ガスの温度は、ノズル12の先端12aから吐出されるノズル12の先端12a部における不活性ガスのなかに、例えば、直径が1.6mmであるシース熱電対などの測温用熱電対を差し込むことによって測定したときの値である。
溶融アルミニウムめっき浴1の浴面10から溶融アルミニウムめっき鋼線3を引き上げる際の引き上げ速度は、特に限定されず、当該引き上げ速度を適宜調整することにより、溶融アルミニウムめっき鋼線3の表面に存在している溶融アルミニウムめっき被膜の平均厚さを調整することができることから、当該溶融アルミニウムめっき被膜の平均厚さに応じて適宜調整することが好ましい。
溶融アルミニウムめっき鋼線3が引き上げられる過程で冷却し、表面に形成されているアルミニウムめっき被膜を効率よく凝固させるために、図1に示されるように、必要により、冷却装置15が配設されていてもよい。冷却装置15では、溶融アルミニウムめっき鋼線3に、例えば、ガス、液体のミストなどを吹き付けることにより、当該溶融アルミニウムめっき鋼線3を冷却することができる。
以上のようにして製造された溶融アルミニウムめっき鋼線3は、例えば、巻取装置16などで回収することができる。
溶融アルミニウムめっき鋼線3の表面に存在している溶融アルミニウムめっき被膜の平均厚さは、撚り線加工、かしめ加工などの際に素地の鋼線2が露出することを抑制するとともに、単位線径あたりの機械的強度を高める観点から、5〜10μm程度であることが好ましい。
鋼線2には、平滑なアルミニウムめっき被膜を効率よく形成させる観点から、鋼線2を溶融アルミニウムめっき浴1に浸漬させる前に、鋼線2の表面にプレめっき処理が施されていてもよい。プレめっき処理を構成する金属としては、例えば、亜鉛、ニッケル、クロム、これらの合金などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
前記で得られた溶融アルミニウムめっき鋼線3には、必要により、所望の線径を有するようにするために、ダイスなどを用いて伸線加工を施してもよい。
本発明の溶融アルミニウムめっき鋼線3は、耐食性に優れているので、例えば、自動車のワイヤーハーネスなどに好適に使用することができる。
次に本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はかかる実施例のみに限定されるものではない。
実施例1〜25および比較例1〜7
実施例1〜25および比較例1〜7では、図1に示される溶融アルミニウムめっき鋼線の製造方法の実施態様に基づいて溶融アルミニウムめっき鋼線を製造した。
鋼線として、表1および2に示す線径を有し、表1および2に示す鋼種からなる鋼線を用い、当該鋼線の表面に亜鉛めっき処理を施していないもの(表1および2の「プレZn」の欄に「無」と表記)または平均厚さが5μm以下の亜鉛めっき被膜を有するもの(表1および2の「プレZn」の欄に「有」と表記)を用いた。
なお、前記亜鉛めっきを施していない鋼線には、溶融アルミニウムめっき浴に浸漬する前に、界面活性剤を添加したオルソケイ酸ナトリウムの脱脂液に浸漬することにより、脱脂を施した。
また、鋼線を溶融アルミニウムめっき浴に浸漬させる前に、図2に示される鋼線導入部制御装置に通過させ、加熱装置で鋼線を約400℃に予備加熱した。なお、予備加熱温度は、鋼線に熱電対を接続させたものを用意し、当該鋼線を所定の温度に維持した予熱帯の中を熱電対とともに通過させることによって測定した。
また、図2に示される鋼線導入部制御装置の浴面制御装置を用い、管状体の導入口における開口部の面積と鋼線の横断面における面積との比〔管状体が有する貫通孔の開口部の面積/鋼線の横断面における面積〕を57に設定し、当該浴面制御装置を介して鋼線を溶融アルミニウムめっき浴に浸漬させた。
溶融アルミニウムめっき浴として、表1および2に示す含有率のニッケルを含有する溶融アルミニウムめっき浴(アルミニウムの純度:99.7%以上、表1および2の「溶融アルミニウムめっきの種類」の欄に「Al」と表記、4質量%のケイ素を含有する溶融アルミニウムめっき浴:表1および2の「溶融Alめっきの種類」の欄に「4%Si」と表記、8質量%のケイ素を含有する溶融アルミニウムめっき浴:表1および2の「溶融Alめっきの種類」の欄に「8%Si」と表記、10質量%のケイ素を含有する溶融アルミニウムめっき浴:表1および2の「溶融Alめっきの種類」の欄に「10%Si」と表記または13質量%のケイ素を含有する溶融アルミニウムめっき浴:表1および2の「溶融Alめっきの種類」の欄に「13%Si」と表記)を用い、表1および2に示す浴温で表1および2に示す浸漬時間にて鋼線を溶融アルミニウムめっき浴中に浸漬させた後、表1および2に示す通線速度(鋼線の引き上げ速度)で当該溶融アルミニウムめっき浴から引き上げた。
なお、表1および2の「Ni含有率(%)」の欄に記載の「%」は、「質量%」を意味する。
その際、溶融アルミニウムめっき浴から引き上げられた溶融アルミニウムめっき鋼線と溶融アルミニウムめっき浴の浴面との境界部で浴面および当該溶融アルミニウムめっき鋼線に幅40mmの安定化部材(表面に耐熱クロス材が巻かれたステンレス鋼製の角棒)を接触させた。
また、前記溶融アルミニウムめっき鋼線から2mm離れた箇所にノズルの先端が位置するように、表1および2に示す先端の内径を有するノズルを配設し、当該ノズルの先端から表1および2に示す温度を有する不活性ガス(窒素ガス)を表1および2に示す体積流量および表1および2に示すガス圧力で溶融アルミニウムめっき鋼線と溶融アルミニウムめっき浴の浴面との境界部に吹き付けた。
以上の操作を行なうことにより、平均厚さ3〜15μmのめっき被膜を有する溶融アルミニウムめっき鋼線を得た。
なお、めっき被膜の平均厚さは、長さが100mの溶融アルミニウムめっき鋼線を100m/minの通線速度で通線させながら、任意の2カ所に設置した光学式外径測定器[(株)キーエンス製、品番:LS−7000]を用いて約1.4mm間隔で溶融アルミニウムめっき鋼線の線径を測定し、測定された溶融アルミニウムめっき鋼線の線径の平均値を求め、当該平均値からアルミニウム被膜を形成する前の鋼線の線径を減算し、得られた値を2で除することによって求めた。
次に、鋼線を表1および2に示す通線速度で60秒間走行させることにより、前記溶融アルミニウムめっき鋼線を連続して製造した後、当該溶融アルミニウムめっき鋼線における溶融アルミニウムめっき被膜の付着量および溶融アルミニウムめっき被膜中のニッケル含有率を以下の方法に基づいて調べた。その結果を表1および2に記載する。
〔溶融アルミニウムめっき被膜の付着量〕
溶融アルミニウムめっき鋼線から1mの試験片を切り出し、当該試験片の質量(試験前)を測定した。
前記試験片を常温の10%塩酸水溶液に浸漬し、溶融アルミニウムめっき被膜を完全に溶解させた後、当該水溶液から取り出し、水分を十分に拭き取り、当該試験片の質量(試験後)を前記と同様にして測定し、式:
[溶融アルミニウムめっき被膜の付着量(g/m)]
=[試験前の質量(g/m)]−[試験後の質量(g/m)]
に基づいて鋼線1mあたりの溶融アルミニウムめっき被膜の付着量を求めた。
〔溶融アルミニウムめっき被膜中のニッケル含有率〕
前記試験後の水溶液をICP発光分析装置〔(株)島津製作所、品番:ICPS−8100〕で溶融アルミニウムめっき被膜中のニッケル含有率を測定した。
次に、前記で得られた試験片の耐食性を以下の方法に基づいて調べたその結果を表1および2に記載する。
〔耐食性〕
溶融アルミニウムめっき鋼線から130mmの試験片を切り出すことにより、試験片を作製した。
次に、JASO M609−91(JIS H 8502)に準拠し、35℃の0.1%食塩水(pH4)を1時間噴霧した後、50℃の温度の空気中で4時間乾燥させ、次いで50℃の温度で相対湿度が98%の湿潤空気中で3時間暴露する一連の操作を1サイクルとする耐食性試験を前記試験片に対して12サイクル行なった後、当該試験片の白さび発生長さを測定し、式:
[白さび発生率(%)]={[白さび発生長さ(m)]/[観察長さ(m)]}×100
に基づいて白さび発生率を求め、以下の評価基準に基づいて耐食性を評価した。
(評価基準)
◎:白さびの発生率が20%以下
○:白さびの発生率が20%を超え、50%以下
×:白さびの発生率が50%を超過
表1および2に示された結果から、各実施例によれば、各比較例と対比して、耐食性に優れた溶融アルミニウムめっき鋼線を効率よく製造することができることがわかる。
本発明の溶融アルミニウムめっき鋼線は、例えば、自動車のワイヤーハーネスなどに好適に使用することができる。
1 溶融アルミニウムめっき浴
2 鋼線
3 溶融アルミニウムめっき鋼線
4 送出装置
5 めっき浴槽
6 加熱装置
7 浴面制御装置
8 鋼線導入部制御装置
9 管状体
10 溶融アルミニウムめっき浴の浴面
11 安定化部材
11a 耐熱クロス材
12 ノズル
12a ノズルの先端
13 不活性ガス供給装置
14 配管
15 冷却装置
16 巻取装置

Claims (2)

  1. 鋼線の表面上に溶融アルミニウムめっき被膜を有する溶融アルミニウムめっき鋼線を製造する方法であって、ケイ素の含有率が13質量%以下であり、ニッケルの含有率が0.3質量%以下であり、当該ケイ素およびニッケルの残部がアルミニウムおよび不可避不純物である溶融アルミニウムめっき浴に鋼線を浸漬させた後、当該溶融アルミニウムめっき浴から鋼線を連続して引き上げることによって溶融アルミニウムめっき鋼線を製造するにあたり当該鋼線を溶融アルミニウムめっき浴に浸漬させる前に当該鋼線を60〜1000℃に加熱するための環状の加熱装置と、溶融アルミニウムめっき浴に浸漬された浸漬領域を有する管状体からなる浴面制御装置とを有する鋼線導入部制御装置に当該鋼線を通過させ、当該溶融アルミニウムめっき浴の浴温をめっき浴の融点〜700℃に調整し、当該溶融アルミニウムめっき浴における鋼線の浸漬時間を5.8秒以下に調整することを特徴とする溶融アルミニウムめっき鋼線の製造方法。
  2. 溶融アルミニウムめっき浴から引き上げられた溶融アルミニウムめっき鋼線と溶融アルミニウムめっき浴の浴面との境界部で安定化部材を当該溶融アルミニウムめっき浴の浴面および当該溶融アルミニウムめっき鋼線と接触させる請求項1に記載の溶融アルミニウムめっき鋼線の製造方法。
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