JP5522782B2 - 中空柱状物の補強方法 - Google Patents

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本発明は、地面に立設された電柱等の中空柱状物を補強する方法に関する。
市街地には、ケーブルや電線等を支持する電柱などの種々の柱状物が設置されている。これらの柱状物の多くは、鉄筋コンクリートや鋼管等からなる中空形状の柱状物であり、その端部が地中に埋設された状態で地面に立設されている。このような中空柱状物は、長期間にわたり直射日光や風雨にさらされることから劣化が生じることは避けられず、特に、根元部付近において劣化が生じると柱状物が倒れる虞がある。また、電線等が架け渡される2本の柱状物の間には、電線等に常時生じている張力により互いに接近する方向に力が作用していることがあるが、この場合、根元部に大きな曲げ応力が作用するためにクラック等が生じやすい。
しかし、このような経年劣化やクラックが生じた柱状物の全体を別の新しい柱状物と取り替えようとすると、架設されているケーブルや電線等を付け替えるなどの作業が必要であり、非常に手間がかかる。そこで、従来から、既設の中空柱状物を補強する方法が提案されている。
特許文献1には、中空の柱状物であるコンクリート製の電柱を、長尺な補強材と流動性固化材を用いて内部から補強する補強方法が記載されている。詳細には、特許文献1の補強方法においては、まず、電柱側面に形成した側面開口から電柱内部に、複数本の補強材(アラミドロッド)を挿入するとともに、同じく側面開口から挿入したロッド配置用補助具によって複数本の補強材を電柱内部において分散配置させる。次に、側面開口を塞いだ後、電柱の上端(頂部)開口から無収縮モルタル等の流動性固化材を注入する。
特開2007−77613号公報
前記特許文献1の補強方法では、柱状物の側面に側面開口を形成し、この側面開口から複数本の補強材やこれらの補強材を分散配置するための補助具を挿入している。しかし、側面の比較的小さな開口から挿入した複数本の長尺な補強材を、柱状物の内部に上下方向に沿って配置することは非常に困難な作業であり、また、補強材を上方から吊り下げる工程や、補助具により柱状物内部で補強材を保持する工程など、多数の工程を経て行われるため、補強材の挿入にかなりの時間と労力を必要とする。
本発明の目的は、補強材と固化材からなる強固な補強構造を実現でき、さらに、柱状物内における補強材の設置も容易な、中空柱状物の補強方法を提供することである。
課題を解決するための手段及び発明の効果
第1の発明の中空柱状物の補強方法は、地面に立設された中空形状の柱状物を補強する方法であって、繊維材料からなる筒状の補強材を前記柱状物の内部に挿入する、補強材挿入工程と、前記柱状物内に挿入された前記補強材の内側に、樹脂材料を含む流動性固化材を注入しつつ前記補強材を半径方向に押し広げる、固化材注入工程と、前記柱状物内に注入された前記流動性固化材を固化させる固化工程とを備え、前記補強材挿入工程において、繊維材料からなる補強シートを筒状に丸めたものを前記補強材とし、前記補強シートを丸めた後に、この補強シートの端部を仮止めして前記柱状物の内部に挿入し、前記固化材注入工程において、筒状に丸められた前記補強シートの内側に前記流動性固化材を注入することで、前記補強シートの仮止めを解除しつつ、補強シートを押し広げることを特徴とするものである。
この補強方法においては、まず、繊維材料からなる筒状の補強材を、中空形状の柱状物の内部に挿入する。次に、柱状物内の筒状の補強材の内側に、樹脂材料を含む流動性固化材を注入する。このとき、流動性固化材の注入圧力により、筒状の補強材が柱状物の内面付近まで半径方向に押し広げられる。その後、流動性固化材を固化させることで、柱状物の内面に密着した補強材と、柱状物の内部を埋める固化材とからなる補強構造が完成する。
このように、本発明によれば、筒状の補強材を柱状物内に挿入し、この補強材の内側に流動性固化材を注入するだけで、補強材を半径方向に押し広げて柱状物内面に接するように配置することができる。そのため、柱状物の内部に、この柱状物内面を覆うように配置された繊維製補強材と、この補強材との接着性に優れた樹脂材料を含む固化材とが一体化した、強固な補強構造を容易に形成することができる。また、補強材に樹脂材料が含浸硬化することで、柱状物を内面から補強する補強材の伸びが小さくなるため、補強構造がより強固なものとなる。さらに、繊維製の補強材は折り畳んだり丸めたりすることができ、保管や運搬の面で有利である。また、筒状の補強材を曲げながら挿入することも可能であるから、補強材をクレーン等で吊り上げる必要がなく、挿入作業が容易である。
また、流動性固化材の注入により補強材を柱状物内面に密着させた後、さらに固化材の注入を行うことによって、流動性固化材中の樹脂材料の一部が、補強材を透過して柱状物内面までしみ出す。そのため、しみ出した樹脂材料によって補強材が柱状物内面に接着されることになり、柱状物の内面に対する補強材の接着性が向上する。また、柱状物の内面にクラック等の欠陥がある場合には、補強材を透過した樹脂材料がクラック等に浸透するため柱状物内面が修復され、また、樹脂材料によってクラック周辺部分が接合されることから、柱状物自体の補修にもなる。
また、前記補強材として、繊維材料からなる補強シートを筒状に丸めただけのものを使用した場合には、端部のない(あるいは、端部が強固に縫合された)完全な筒状の補強材と比較して、固化材注入工程において補強材の内側に流動性固化材が注入されたときに、補強材(補強シート)が速やかに半径方向に押し広げられる。つまり、補強材を柱状物の内面に密着させやすくなり、強固な補強構造を一層容易に形成することができる。
さらに、補強シートを筒状に丸めた後にその端部を仮止めしてから、補強シートを柱状物の内部に挿入することで、挿入の際に、補強シートの筒状に丸められた状態が解除されてしまうことがなく、長尺な柱状物内に補強シートを挿入する作業が容易となる。また、仮止めの拘束力を、流動性固化材の注入圧力によって解除される程度の弱いものとすることで、固化材注入時に補強シートが押し広げられるのが、仮止めによって妨げられることがない。
第2の発明の中空柱状物の補強方法は、地面に立設された中空形状の柱状物を補強する方法であって、繊維材料からなる筒状の補強材を前記柱状物の上端部から前記柱状物の内部に挿入する、補強材挿入工程と、前記柱状物内に挿入された前記補強材の内側に、樹脂材料を含む流動性固化材を注入しつつ前記補強材を半径方向に押し広げる、固化材注入工程と、前記柱状物内に注入された前記流動性固化材を固化させる固化工程とを備え、前記補強材挿入工程において、前記柱状物の上端に形成された開口から前記補強材を挿入した後、前記開口において前記補強材の上端部分を折り返すことを特徴とするものである。
本発明によれば、筒状の補強材を柱状物の上端部から柱状物内に挿入することから、挿入作業が容易である。
また、柱状物の内部に補強材を挿入した後に、補強材の内側に流動性固化材を注入したときに、補強材が下方にずりおちないようにするため、また、補強材を構成している経糸を緊張させるため、補強材の上端部を柱状物の上端部に固定して、固化材の注入中に補強材に対して上下方向にテンションが付与されるようにすることが好ましい。ここで、本発明においては、柱状物の上端開口において補強材の上端部分を折り返すだけで、補強材の上端部を柱状物上端部に簡単に固定することができる。
の発明の中空柱状物の補強方法は、前記第1又は第2の発明において、前記補強材挿入工程において、2枚の補強材を、その一方の補強材が、丸められた他方の補強材の内側に挿通された状態で、前記柱状物内に配置することを特徴とするものである。
2枚の補強材を柱状物内に挿入し、流動性固化材の注入によってそれぞれの補強材を押し広げて柱状物内面に密着させることで、柱状物の補強効果が高くなる。また、2枚の補強材の種類(繊維の種類や目の粗さなど)を異ならせることで、補強対象となる柱状物に応じた適切な補強構造を得ることが可能となる。
の発明の中空柱状物の補強方法は、前記第の発明において、前記2枚の補強材のうち、内側に位置する前記一方の補強材は、外側に位置する前記他方の補強材よりも目が細かいことを特徴とするものである。
補強効果を高めるという観点から柱状物の内面に密着する補強材は、太い糸を使用した強度の高いものであることが好ましいが、糸が太いほど補強材の目(補強材を構成する糸間の隙間)は粗くなる。そして、補強材の目が粗いと、その内側に流動性固化材が注入されたときに、補強材を透過する固化材が多くなり、補強材を十分に押し広げて柱状物内面に密着させることができなくなる虞がある。そこで、本発明においては、さらに内側に別の補強材を配置した上で、流動性固化材の注入圧力によってこの内側の補強材が膨張して、外側の補強材を柱状物内面まで押し広げることができるように、内側に位置する補強材の目を、外側に位置する補強材の目よりも細かくしている。
の発明の中空柱状物の補強方法は、地面に立設された中空形状の柱状物を補強する方法であって、繊維材料からなる筒状の補強材を前記柱状物の内部に挿入する、補強材挿入工程と、前記柱状物内に挿入された前記補強材の内側に、樹脂材料を含む流動性固化材を注入しつつ前記補強材を半径方向に押し広げる、固化材注入工程と、前記柱状物内に注入された前記流動性固化材を固化させる固化工程と、を備え、
前記補強材の内側に筒状の枠体を挿入する枠体挿入工程をさらに備え、前記枠体は、気密性又は液密性を有する筒状織物であり、前記固化材注入工程において、前記枠体内に気体又は液体を注入してこの枠体を膨張させた状態で、前記柱状物内に挿入された筒状の前記補強材と筒状の前記枠体の間に前記流動性固化材を注入することを特徴とするものである。
本発明によれば、筒状の補強材の内側に筒状の枠体を挿入し、補強材と枠体との間に流動性固化材を注入することから、枠体の内側には流動性固化材は充填されず、中空状態となる。従って、柱状物内への流動性固化材の充填量が減り、補強後の柱状物の重量増加が抑えられるため、横揺れに対する耐力が向上し、柱状物を撤去する必要が生じたときにはその撤去作業が容易になる。また、充填量が減るためコストダウンが可能となる。尚、流動性固化材の注入後には、筒状の枠体は柱状物内に残されて、枠体は、補強材とともに補強構造の一部をなす。そのため、枠体の内部を中空状態にして流動性固化材の充填量を減らしつつ、必要な強度を確保することができる。
また、枠体が筒状織物で構成されており、この枠体の外側に流動性固化材が注入されたときに、その注入圧力によって枠体がつぶれてしまうことがないように、枠体内に気体又は液体を注入して膨張させた状態で流動性固化材の注入を行う。このように、枠体が筒状織物である場合には、この枠体も、繊維材料からなる補強材と同じく柱状物の強度向上に大きく寄与するため、補強後の柱状物の強度が増す。
の発明の中空柱状物の補強方法は、前記第5の発明において、前記補強材を前記柱状物内に挿入する前に前記補強材の内側に前記枠体を挿入し、前記補強材の下端部を前記枠体の下端部に固定した後、前記補強材と前記枠体を前記柱状物内に挿入することを特徴とするものである。
補強効果を高める観点からは、枠体が補強材内部のほぼ中心部分に設置されることが好ましい。本発明においては、補強材の下端部を枠体の下端部に固定してから柱状物内に挿入することで、枠体を、筒状の補強体内のほぼ中心部分に位置決めした状態で、柱状物内に設置することができる。
の発明の中空柱状物の補強方法は、前記第5又は第6の発明において、前記補強材及び前記枠体を前記柱状物内に挿入した後に、前記枠体の前記柱状物に対する位置決めを行うためのスペーサーを、前記枠体の上端部と前記柱状物の間に取り付けることを特徴とするものである。
補強効果を高める観点からは、枠体が柱状物内部のほぼ中心部分に設置されることが好ましい。本発明においては、枠体を柱状物内に挿入してからこの枠体の上端部にスペーサーを取り付けることにより、枠体を柱状物内のほぼ中心部分に位置決めすることができる。
本発明の実施形態に係る電柱補強方法を示す図であり、(a)は補強前の状態、(b)は電柱上端を開放した状態、(c)は補強シート挿入直前状態、(d)は補強シート挿入完了状態、(e)は固化材注入時の状態、(f)は補強が完了した状態をそれぞれ示す。 筒状に丸められた状態の補強シートの斜視図である。 電柱内の補強構造を示す図である。 実施例1,2及び比較例1の試験体の荷重−たわみ曲線を示すグラフである。 図4の試験初期段階を拡大したグラフである。 実施例3及び比較例2の試験体の荷重−たわみ曲線を示すグラフである。 変更形態に係る電柱内の補強構造を示す図である。 別の変更形態に係る電柱補強方法を示す図であり、(a)は補強シート挿入直前状態、(b)は枠体挿入中の状態、(c)は固化材注入が完了した状態をそれぞれ示す。 図8(c)に示す補強完了後の電柱の断面図である。 枠体下端部に補強材の下端部が固定された状態を示す図である。 スペーサーを用いた枠体上端部の電柱に対する位置決めを示す、電柱上端部の断面図である。 実施例4,5の試験体の荷重−たわみ曲線を示すグラフである。 実施例6,7の試験体の荷重−たわみ曲線を示すグラフである。
次に、本発明の実施の形態について説明する。本実施形態は、中空柱状物である電柱を補強する場合に本発明を適用した一例である。
図1は、本実施形態の電柱補強方法を示す図である。図1に示すように、補強対象である電柱10は、内部が中空の円筒形状を有し、その下端部が地中に埋設された状態で地面20に立設されている。尚、以下の説明においては、電柱10として鉄筋コンクリート製のものを例示しているが、鋼管製の電柱であってもよい。また、電柱10は、その全長にわたって径の変化しないストレート状のものであってもよいが、本実施形態では、図1に示すような先細り形状(テーパー状)に形成された電柱10を例に挙げて説明する。
本実施形態の電柱補強方法は、図1(a)に示すように、側部にクラック10aが生じるなど損傷や痛みが激しい電柱10に対して、その内部から補強を行うものである。具体的には、繊維材料からなる補強シート1(補強材)を電柱10の内面に接するように配置し、さらに、その補強シート1の内側に固化材2を充填することで、電柱10の内部に強固な中実の補強構造を設ける。
以下、本実施形態の電柱補強方法について図1を参照して詳細に説明する。
まず、図1(b)に示すように、電柱10の上端部に設けられた末口部11を取り外し、電柱10の上端開口10bを開放する。
次に、繊維材料からなる補強シート1を図2のように筒状に丸めてから、図1(c)に示すように、補強シート1を電柱10の上端開口10bから挿入する(補強材挿入工程)。この補強シート1としては様々な繊維材料で織成したものを採用できるが、特に、カーボン繊維やアラミド繊維等の、一般的にスーパー繊維と呼ばれる、引張強度の高い繊維材料からなるシートを用いることが好ましい。そして、この補強シート1を長尺な筒状に丸めてから電柱10内に挿入し、図1(d)に示すように、電柱10の内部において、その全長にわたって補強シート1を配置する。
尚、補強シート1の巻き数は特に限定されるものではないが、電柱10を内面から確実に補強するには補強シート1は電柱10の内面全周にわたって配置されることが好ましいことから、巻き数は少なくとも1回以上であることが好ましい。また、後述するように、電柱10内に挿入された後に、補強シート1は電柱10の内面に密着するように半径方向へ広げられるのであるが、広げられた状態でも電柱10内面の全周にわたって配置できるように、挿入時には少し巻き数を多めにしておくことが好ましい。
ここで、補強シート1を筒状に丸めただけで電柱10内に挿入してもよいのだが、図2に示す補強シート1の端部1aが何ら拘束されていないと、長尺な電柱10内に補強シート1を挿入する際に、端部1aが胴部1bから剥がれて筒状に丸められた状態が解除されやすく、筒状を保ったまま補強シート1を挿入することが困難になる。そこで、挿入前に、補強シート1の端部1aを、筒状の胴部1bに仮止めすることが好ましい。この仮止めは、手で端部1aを簡単に剥がせる程度の軽い接合でよく、このような仮止めの方法としては、端部1aと胴部1bとをエポキシ樹脂で軽く接着する方法や、両面テープ等で接着する方法など、現場でも容易に実施できる方法が好ましい。
次に、図1(e)に示すように、電柱10内において筒状に丸められた状態で設置された、補強シート1の内側に注入管3を挿入し、この注入管3から補強シート1の内部に流動性固化材2を加圧注入する(固化材注入工程)。本実施形態では、流動性固化材2として、常温硬化型の樹脂材料(例えば、エポキシ樹脂)と添加材(例えば、珪砂、中空セラミックス、ガラスビーズ、高炉スラグ等)を混合したものを用いる。樹脂材料に上述したような添加材を加えると、流動性固化材2の弾性率が高くなるため、電柱10の強度向上が期待できる。
このように、筒状の補強シート1の内側に流動性固化材2を注入すると、注入された流動性固化材2は補強シート1を半径方向外側へ押し広げようとする。ここで、補強シート1が端部のない(あるいは、端部1aが強固に縫合された)完全な筒状であると外側へ広がりにくいのに対して、本実施形態では補強シート1は筒状に丸められているだけであるので、速やかに外側に押し広げられ、補強シート1は電柱10の内周面に押しつけられて密着することになる。特に、本実施形態のように、電柱10がテーパー状の場合には、末広がりの下端部において補強シート1が電柱10の内面に密着しにくくなるが、補強シート1が丸められただけであると、電柱10の下端部においても補強シート1は広がりやすい。
尚、先に述べたように、補強シート1の挿入前にその端部1aを仮止めする場合でも、その仮止めを、例えば手で外すことができる程度の軽い接合としておけば、補強シート1の内側への流動性固化材2の注入によって補強シート1が外側へ広がる際に、その端部1aの仮止めが自然に外れるため、補強シート1が押し広げられるのが仮止めによって妨げられるという問題は生じない。
また、この流動性固化材2の注入の際には、固化材2につられて補強シート1が下方にずりおちないようにするため、また、補強材を構成している経糸を緊張させるため、補強シート1の上端部を電柱10の上端部に固定して、固化材2の注入中に補強シート1に対して上下方向にテンションが付与されるようにすることが好ましい。そこで、本実施形態では、図1(e)に示すように、補強シート1を電柱10の上端開口10bから挿入した後、流動性固化材2を注入する前に、上端開口10bにおいて補強シート1の上端部分1cを折り返す。このように、補強シート1の上端部分1cを折り返すだけで、補強シート1の上端部分を電柱10の上端部に簡単に固定し、補強シート1がずり落ちるのを防止することができる。さらに、折り返された補強シート1の上端部分1cを、バンドやワイヤ等の簡便な固定手段を用いて、より確実に電柱10に固定してもよい。
さらに流動性固化材2を注入していくと、電柱10の内面に密着した補強シート1の内側に流動性固化材2が充填されていくとともに、流動性固化材2に含まれる樹脂材料の一部が補強シート1を透過して電柱10の内面までしみ出す。そして、このしみ出した樹脂材料によって補強シート1と電柱10の内面とが接着されることになり、補強シート1の電柱10に対する接着性が向上する。また、図1(a)のように、電柱10の側部に、内面まで達したクラック10a等の欠陥がある場合においては、補強シート1を透過した樹脂材料が電柱10内面側からクラック等に浸透するため、クラック10a等を修復することも可能となる。
電柱10の上端まで流動性固化材2を注入し終えると、電柱10の上端部に末口部11を取り付け、上端開口10bを塞いでそのまま放置し、電柱10内の流動性固化材2(常温硬化型の樹脂材料)を固化させる(固化工程)。このように、流動性固化材2の電柱10内への注入が終了すれば、後はその状態のまま放置するだけで流動性固化材2が自然に固化していくため、固化材注入工程の完了により実質的な作業は終了する。
そして、流動性固化材2が完全に固化したときには、電柱10の内面に密着した繊維材料からなる補強シート1と、電柱10の内部を埋める固化材2とからなる、補強構造が得られる。図3は、電柱10内の補強構造を示す図である。この図3に示すように、鉄筋12を含むコンクリート製電柱10の内面には、補強シート1が内面全周にわたって配置され、この補強シート1から外側にしみ出した樹脂材料の層2aによって補強シート1が電柱10の内面に接着されている。さらに、この補強シート1の内側に樹脂材料と珪砂とが混合された固化材2が充填されている。つまり、電柱10の内部に、この電柱10の内面を覆うように配置された繊維製補強シート1と、この補強シート1との接着性に優れた樹脂材料を含む固化材2とが一体化した、強固な補強構造が形成されることになる。また、補強シート1に樹脂材料が含浸硬化することにより、補強シート1の伸びが小さくなるため、補強構造がより強固なものとなる。
以上説明した本実施形態の電柱補強方法によれば、筒状の補強シート1を中空形状の電柱10の上端から電柱10内に挿入し、この補強シート1の内側に流動性固化材2を注入するだけで、補強シート1を半径方向に押し広げ、補強シート1を電柱10内面に接するように配置することができる。これにより、電柱10の内部に、この電柱10内面を覆うように配置された繊維製補強シート1と、この補強シート1との接着性に優れた樹脂材料を含む固化材2とが一体化した、強固な補強構造を簡単に形成することができる。また、補強シート1に樹脂材料が含浸することで、電柱10を内面から補強する補強シート1の伸びが小さくなるため、補強構造がより強固なものとなる。さらに、補強材として使用する繊維製の補強シート1は折り畳んだり、丸めたりすることができ、保管や運搬の面で有利である。また、クレーン等で吊り上げることなく、筒状の補強シート1を曲げながら電柱10の上端から挿入することが可能であり、挿入作業が容易である。
また、補強材として、繊維材料からなる補強シート1を筒状に丸めただけのものを使用した場合には、端部1aのない(あるいは、端部1aが強固に縫合された)完全な筒状の補強材と比較して、固化材注入工程において補強材の内側に流動性固化材が注入されたときに、補強材(補強シート1)が速やかに半径方向に押し広げられる。つまり、補強材を電柱10の内面に密着させやすくなり、強固な補強構造を一層容易に形成することができる。
さらに、流動性固化材2の注入により補強シート1を電柱10内面に密着させた後、さらに固化材2の注入を行うことによって、流動性固化材2中の樹脂材料が補強シート1を透過して電柱10内面までしみ出す。そのため、しみ出した樹脂材料によって補強シート1が電柱10内面に接着されることになり、補強シート1の電柱10の内面に対する接着性が向上する。また、電柱10の内面にまで達したクラック10a等の欠陥がある場合には、補強シート1を透過した樹脂材料をクラック10a等に浸透させて電柱10内面を修復することも可能である。また、樹脂材料によってクラック周辺部分が接合されることから、電柱10自体の補修にもなる。さらに、電柱10が鉄筋コンクリート製である場合には、樹脂材料がクラックを埋めることにより、クラック10aからの水分の浸入が防止され、コンクリート内の鉄筋の腐食が抑制される。
さらに、本発明の効果を検証するための実験を行った。この検証実験について以下説明する。まず、ボイド管(紙管)を用いた実施例1,2、及び、比較例1について説明する。
(実施例1,2)
実施例1,2では、ボイド管(紙管)からなる型枠内に、筒状に丸めた繊維製補強シートを挿入した後、型枠の上端開口から補強シートの内側に流動性固化材を注入し、振動を与えて脱泡した。注入完了後、8日間恒温室で養生し、養生後両端を切断して試験体を作製した。試験体の長さは550mm、試験体の外径は90mmとした。
尚、実施例1では、アラミド繊維からなる補強シートを使用し、実施例2では、カーボン繊維からなる補強シートを使用した。また、流動性固化材は、本剤及び硬化剤としてのエポキシ樹脂と、添加材としての珪砂を混合したものを使用した。使用した補強シート及び流動性固化材の詳細を表1に示す。
Figure 0005522782
尚、実施例1で使用したアラミド繊維シートは、試験体の周長のほぼ1.5倍の長さ(巻き量)を有する。従って、アラミド繊維シートの巻き量は、90mm(試験体の外径)×π×1.5=約425mmである。また、アラミド繊維シートの経糸は1670T/3×234本(密度55本/10cm)、繊維強度は24.5cN/dtexである。また、実施例1の試験体中に含まれる総繊維強度を以下のように算出した。まず、50mm巾の織物で引張試験を行った結果、実測値は33.75kNとなった。従って、425mm巾に換算すると、33.75×425/50=286.9kNとなる。
また、実施例2で使用したカーボン繊維シートも、実施例1と同様に、試験体の周長のほぼ1.5倍の長さ(巻き量)を有し、約425mmである。また、カーボン繊維シートの密度(目付)は309g/m、繊維強度は4040N/mmである。また、実施例2の試験体中に含まれる総繊維強度を、実施例1と同様に算出した。まず、50mm巾の織物で引張試験を行った結果、実測値は33.73kNとなった。従って、425mm巾に換算すると、33.73×425/50=286.7kNとなる。
(比較例1)
比較例1では、上記実施例1,2と同じ型枠を使用するものの、補強シートは使用せず、流動性固化材のみを型枠へ注入した。尚、流動性固化材は、実施例1,2と同様のものを使用し(表1参照)、同サイズの試験体を作製した。
以上の実施例1,2及び比較例1のそれぞれについて、得られた試験体の3点曲げ試験を行い、図4、図5のような荷重−たわみ曲線を求めた。尚、図5は、図4の、荷重の低い試験初期の段階を拡大した図である。また、3点曲げ試験の試験条件を以下に示す。
試験機械 :株式会社島津製作所製 AG−10TB
支点間距離:450mm
試験速度 :5.0mm/min
初期荷重 :0.010kN
図4、図5に示すように、補強シートを使用しなかった比較例1では、荷重の低い試験初期段階で試験体が破断してしまっているのに対して、アラミド繊維からなる補強シートを筒状に丸めて使用した実施例1、及び、カーボン繊維からなる補強シートを筒状に丸めて使用した実施例2では、より高い荷重に試験体が耐えられることが分かる。これにより、本発明を適用した実施例1、2では、比較例と比べて、かなり高い強度が得られることが実証された。
次に、実施例1,2のボイド管よりも実際の電柱に近い、ヒューム管(鉄筋コンクリート管)を用いた実施例3及び比較例2について説明する。
(実施例3)
実施例3では、ヒューム管(内径150mm、厚さ26mm)内に中空パイプを挿入するとともに、このパイプとヒューム管の内面との間に内外2枚の繊維製補強シートをそれぞれ筒状に丸めて挿入した。これら2枚の繊維製補強シートは、それぞれ、前記実施例1で使用したものと同じ、アラミド繊維からなるシートである(表1参照)。さらに、2枚の補強シートの間に流動性固化材を注入した。この流動性固化材も、エポキシ樹脂と珪砂とを混合して得られた、前記実施例1,2と同様のものを使用している(表1参照)。そして、流動性固化材を注入してから一定期間養生することで、ヒューム管内に、固化した固化材の外側と内側(パイプ側)が内外2枚の繊維製補強シートでそれぞれ覆われた、補強構造が形成された、試験体(長さ2m)を得た。
(比較例2)
比較例2では、ヒューム管(寸法は実施例3と同じ)そのものを使用し、その内部に補強シートや流動性固化材の注入は行わなかった。
以上の実施例3及び比較例2のそれぞれについて、得られた試験体の3点曲げ試験を行い、図6のような荷重−たわみ曲線を求めた。また、3点曲げ試験の試験条件を以下に示す。
試験機械 :株式会社島津製作所製 AG−10TB
支点間距離:1000mm
試験速度 :5.0mm/min
初期荷重 :0.10kN
図6に示すように、ヒューム管に補強がなされていない比較例2では、荷重の低い試験初期段階で試験体が破断してしまっているのに対して、アラミド繊維からなる補強シートと固化材による補強がなされている実施例3では、より高い荷重に試験体が耐えられることが分かる。
次に、前記実施形態に種々の変更を加えた変更形態について説明する。但し、前記実施形態と同様の構成を有するものについては、同じ符号を付して適宜その説明を省略する。
1]電柱10内に挿入する前の補強シートの巻き数は、電柱10に要求される補強の程度に応じて適宜変更することができる。尚、巻き数を多くするほど補強シートによる補強効果は高くなるが、巻き数が多くなると流動性固化材の注入によって補強シートを外側に押し広げにくくなる。そこで、補強シートを電柱10の内面に確実に密着させることができるように、巻き数の変更に応じて、流動性固化材の注入圧力を設定することが好ましい。
2]電柱10内に2枚以上の補強シートを挿入するようにしてもよい。例えば、図7に示すように、一方の補強シート1Aが、丸められた他方の補強シート1Bの内側に挿通された状態で、2枚の補強シート1A,1Bを電柱10内に配置し、内側に位置する補強シート1Aの内部に流動性固化材2を注入するようにしてもよい。このように、2枚の補強シート1A,1Bを電柱10内に挿入してそれぞれ押し広げることで、補強効果が高くなる。
また、2枚の補強シート1A,1Bの種類(繊維の種類や目の粗さなど)を異ならせることで、補強対象となる電柱10に適した補強構造を得ることが可能となる。例えば、補強効果を高めるという観点からは、電柱10の内面に密着する外側の補強シート1Bは、太い糸を使用した強度の高いものであることが好ましいが、糸が太いほど補強シートの目(補強シートを構成する糸間の隙間)は粗くなる。そして、補強シートの目が粗いと、その内側に流動性固化材2が注入されたときに、補強シートを透過する固化材2が多くなり、補強シートが十分に押し広げられなくなる虞がある。そこで、流動性固化材の注入圧力によって内側の補強シート1Aを膨張させ、目の粗い外側の補強シート1Bを電柱10内面まで押し広げることができるように、内側に位置する補強シート1Aを、外側に位置する補強シート1Bよりも目が細かいものを使用してもよい。
3]補強シートは、図1(d)に示すように、電柱10内においてその全長にわたって配置される必要は必ずしもなく、特に補強が必要な箇所にのみ補強シートを配置するようにしてもよい。例えば、特にクラック等が生じやすい根元部(地面20の近傍部)の内側にのみ補強シートを設置するようにしてもよい。
4]前記実施形態では、補強材として、補強シート1を筒状に丸めたものを電柱10内に挿入しているが、初めから筒状に形成された繊維製補強材を電柱10内に挿入してもよい。このような補強材としては、例えば、経糸及び緯糸によって織成された筒状織物を使用してもよい。さらには、先端部が塞がれた袋状の筒状織物(筒状袋体)であってもよい。
5]前記実施形態では、電柱10の内部に流動性固化材を完全充填していたが、このように中実状態に補強すると、補強によって電柱10の重量が大きく増加する。電柱10の重量が増加すると、横揺れに対する耐力が低下するし、将来撤去が必要になったときに特殊な機材を要するなど撤去作業が大掛かりなものとなる。そこで、電柱10内部に流動性固化材を完全に充填するのではなく、補強後に電柱10内の一部分が中空状態で残るようにしてもよい。
図8に、そのような電柱補強方法の一例を示す。まず、図8(a)に示すように、繊維材料からなる補強シート1を筒状に丸めてから、補強シート1を電柱10の上端開口10bから挿入する(補強材挿入工程)。
次に、図8(b)に示すように、筒状に丸められた補強シート1の内側に、筒状の枠体20を挿入する(枠体挿入工程)。ここで、筒状の枠体20としては筒状織物を使用することができる。また、筒状織物としては、ポリエステル繊維や、補強シート1と同じ繊維材料(カーボン繊維やアラミド繊維等のスーパー繊維)で織成されたものを使用できる。さらに、筒状織物は、その内面が樹脂(例えば、ウレタン樹脂)でライニングされて、気密性又は液密性を備えたものとなっている。
次に、補強シート1と筒状の枠体20との間に流動性固化材2を注入し、補強シート1を半径方向に押し広げる(固化材注入工程)。尚、枠体20が気密性又は液密性を有する筒状織物である場合には、流動性固化材2の注入圧力によって枠体20がつぶれることがないように、枠体20の内部に流体(エア等の気体や水等の液体)を注入し、枠体20を半径方向に膨張させた状態で流動性固化材2の注入を行う。このとき、図8(c)に示すように、補強シート1が電柱10の内面に密着する一方で、流動性固化材2は枠体20の内側には充填されず、中空状態となる。電柱10の上端まで流動性固化材2を注入し終えると、電柱10の上端部に末口部11を取り付け、上端開口10bを塞いでそのまま放置し、電柱10内の流動性固化材2を固化させる(固化工程)。
このように、枠体20の内側を中空にすることで、電柱10内への流動性固化材2の充填量が減り、補強による電柱10の重量増加が抑えられるため、横揺れに対する耐力が向上するし、電柱10を撤去する必要が生じたときにはその撤去作業が容易になる。また、充填量が減るためコストダウンが可能となる。尚、流動性固化材2の注入後には、筒状の枠体20は電柱10内に残されて、枠体20は、補強シート1とともに補強構造の一部をなす。そのため、枠体20の内部を中空状態にして流動性固化材2の充填量を減らしつつも、必要な強度を確保することができる。特に、枠体20が筒状織物である場合には、この枠体20も、繊維材料からなる補強シート1と同じく、電柱10の強度向上に大きく寄与するため、補強後の電柱10の強度が増す。
尚、補強効果を高めるためには、枠体20が筒状の電柱10及び補強シート1のほぼ中心部分に設置されることが好ましい。枠体20が電柱10や補強シート1の中心部分に対して半径方向に偏って配置されると、枠体20の周囲に充填される流動性固化材の厚みがばらつくなどして、補強効果が低下してしまう。
枠体20を位置決めするには様々な方法を採用できるが、補強シート1に対して枠体20を位置決めするには、例えば、補強シート1と枠体20とを一体化してから電柱10内に挿入する方法が考えられる。図8の例では、先に補強シート1を電柱10内に挿入してから、その補強シート1内に枠体20を挿入しているが、図10に示すように、補強シート1の下端部を、ワイヤ21等により枠体20の下端部に固定してから電柱10内に挿入することで、枠体20を、筒状の補強シート1内のほぼ中心部分に位置決めしつつ、電柱10内に設置することができる。ここで、補強シート1の長さ方向途中部を枠体20に固定してしまうと、流動性固化材2の注入時に補強シート1が半径方向に広がりにくくなってしまうため、補強シート1の固定箇所は下端部であることが好ましい。
また、スペーサーを用いれば電柱10に対して枠体20を位置決めすることも可能である。具体的には、補強シート1及び枠体20を電柱10内に挿入した後に、図11に示すように、枠体20の電柱10に対する位置決めを行うためのスペーサー22を、枠体20の上端部と電柱10の間に取り付ける。これにより、枠体20を電柱10内のほぼ中心部分に位置決めすることができる。
次に、この中空の補強構造の効果を検証するために、中実構造の試験体(実施例4,6)と中空構造の試験体(実施例5,7)の、計4種類の試験体を作製し、それぞれについて試験を行った。
これら実施例4〜7では、まず、ボイド管(紙管)からなる型枠内に、筒状に丸めたアラミド繊維シートからなる補強シートを挿入した。さらに、実施例5,7では、補強シートの内側に、アラミド円筒状織物からなる枠体を挿入した。その後、型枠の上端開口から補強シートの内側(実施例5,7では、補強シートと枠体の間)に流動性固化材を注入し、振動を与えて脱泡した。注入完了後、8日間恒温室で養生し、養生後両端を切断して試験体を作製した。試験体の長さは550mm、試験体の外径は90mmとした。実施例4〜7の条件をまとめたものを表2に、実施例4〜7で使用した、補強シート、枠体、及び、流動性固化材の仕様を表3に示す。
Figure 0005522782
Figure 0005522782
尚、補強シートとして使用するアラミド繊維シートは、試験体の周長のほぼ1.5倍の長さ(巻き量)を有するものである。従って、表3に示されているように、アラミド繊維シートの巻き量は、90mm(試験体の外径)×π×1.5=約425mmとなる。また、表3中の「総繊維強度」とは、試験体中に含まれる繊維全体の強度である。この総繊維強度は、前述した実施例1,2と同様に、50mm巾の織物で引張試験を行ったときの実測値を、実際の巻き量に換算した値である。補強シートとしてのアラミド繊維シートでは、9kN(実測値)×425/50=76.5kNとなる。また、枠体としてのアラミド円筒状織物では、巻き量が45mm×π=141.37であるから、111.12(実測値)×141.37/50=314.2となる。
また、実施例4,5で使用されている固化材Aは、前述した実施例1,2で使用されているもの(表1)と同じである。一方、実施例6,7で使用されている、固化材Bは、固化材Aとは硬化時間が異なる樹脂を用いている。具体的には、固化材Aの樹脂は硬化時間が70分と短いのに対して、固化材Bの樹脂の硬化時間は350分と長くなっている。但し、固化材AとBとで、硬化後の樹脂の強度はほぼ同等である。さらに、固化材Bは、固化材Aの珪砂の代わりに中空セラミックスを含んでいる。この中空セラミックスは、石灰石から抽出された中空粒状の粒子であり、粒子径が175μmと非常に小さく、また、比重が0.4と非常に軽い。また、融点は1600〜1800℃である。
以上の実施例4〜7のそれぞれについて、得られた試験体の3点曲げ試験を行い、図12、図13のような荷重−たわみ曲線を求めた。尚、3点曲げ試験の試験条件は、前述した実施例1,2と同じである。
図12に示すように、実施例4,5では、変位が3mm程度になるまで荷重が直線的に増加し、変位が3mm程度になったときに初めて荷重が低下しているが、これは、固化材にクラックが生じたためと考えられる。その後、実施例4,5共に増減を繰り返しながら全体的に荷重が増加しているが、中空形状の実施例5は、中実形状の実施例4よりも荷重の増加率が大きい。また、図13に示すように、実施例6,7では、変位が10mm程度になるまで荷重が直線的に増加し、変位が10mm程度になったときに荷重が低下している。ここで、実施例6では変位8mm程度で試験体が破断し、その後荷重が増加していないのに対して、実施例7では変位10mmで荷重が一旦減少した後、再び荷重が増加している。
これは、中空の実施例5,7では、固化材にクラックが発生しても、アラミド繊維シートからなる補強シートと、アラミド円筒状織物からなる枠体との間に、固化材が保持されるためであり、固化材に第2、第3のクラックが生じて固化材がある程度破壊されるまで、強度が増加している。また、実施例5は変位18mm、実施例7は変位23mmで荷重が急激に低下しているが、これは、外側の補強シートが破壊されたためである。尚、最初のクラックが生じたときに(実施例5の変位3mm、実施例7の変位10mm)、アラミド繊維製の補強シート及び枠体と、固化材との間で、剥離が生じて一旦荷重が低下するものの、荷重全体の傾向としては、補強シートが破壊されるまで(実施例5の変位18mm、実施例7の変位23mm)増加している。
さらに、高強度の枠体を有する実施例5,7では、変位30mmでも荷重15000N程度を維持している。これは、高強度のアラミド円筒状織物からなる枠体が破断していないためである。そのため、実施例5や実施例7の中空補強構造を、電柱の補強に用いた場合、仮に電柱が折れ曲がったとしても電柱が完全に倒れることはないと考えられる。
尚、実施例4,5と実施例6,7では、固化材に含まれる充填材(珪砂又は中空セラミックス)が異なる。珪砂は中空セラミックスよりも変形しにくい(弾性率が高い)ため、図12や図13の変位−荷重曲線の傾きが大きい。しかし、その分、珪砂が含まれている固化材はクラックが生じやすく、実際、図12に示すように、15000N程度の荷重でクラックが発生している。一方、中空セラミックスは珪砂よりも柔軟であり、クラックが生じにくいため、図13に示すように、実施例6,7では、荷重30000Nまで直線的に荷重が増加する。
以上のように、枠体20を有する中空の補強構造は、前記実施形態で述べたような中実形状の補強構造と比べて、補強による電柱の重量増加が抑えられて横揺れ耐力が向上するという点で有利であるだけでなく、補強構造自体で比較しても、中実と同等かそれ以上の強度を有することがわかる。
6]流動性固化材は、繊維製の補強シートとの接着性に優れた樹脂材料を含むものであれば、前記実施形態のものに限定されない。例えば、珪砂等の添加材を混合させる必要は必ずしもなく、エポキシ樹脂等の樹脂材料のみからなるものを使用してもよい。また、前記実施形態では、流動性固化材として、常温硬化型の樹脂材料を含有したものを使用しているが、加熱処理を施すことによって初めて硬化する熱硬化性樹脂など、常温で放置するだけでは固化せず、特別な固化処理が必要なものを使用することもできる。
以上説明した実施形態及びその変更形態は、電柱を補強する場合に本発明を適用した例であるが、本発明の適用対象は電柱に限られるものではなく、看板等の構造物を支持する支柱など、電柱以外の種々の中空柱状物に対しても本発明を適用することができる。また、柱状物の材質も、コンクリート製や鋼管製に限られず、高強度樹脂材料などの他の材質で構成された柱状物にも本発明を適用することができる。
1,1A,1B 補強シート
2 流動性固化材
10 電柱
10b 上端開口
20 枠体

Claims (7)

  1. 地面に立設された中空形状の柱状物を補強する方法であって、
    繊維材料からなる筒状の補強材を前記柱状物の内部に挿入する、補強材挿入工程と、
    前記柱状物内に挿入された前記補強材の内側に、樹脂材料を含む流動性固化材を注入しつつ前記補強材を半径方向に押し広げる、固化材注入工程と、
    前記柱状物内に注入された前記流動性固化材を固化させる固化工程と、を備え
    前記補強材挿入工程において、繊維材料からなる補強シートを筒状に丸めたものを前記補強材とし、前記補強シートを丸めた後に、この補強シートの端部を仮止めして前記柱状物の内部に挿入し、
    前記固化材注入工程において、筒状に丸められた前記補強シートの内側に前記流動性固化材を注入することで、前記補強シートの仮止めを解除しつつ、補強シートを押し広げることを特徴とする中空柱状物の補強方法。
  2. 地面に立設された中空形状の柱状物を補強する方法であって、
    繊維材料からなる筒状の補強材を前記柱状物の上端部から前記柱状物の内部に挿入する、補強材挿入工程と、
    前記柱状物内に挿入された前記補強材の内側に、樹脂材料を含む流動性固化材を注入しつつ前記補強材を半径方向に押し広げる、固化材注入工程と、
    前記柱状物内に注入された前記流動性固化材を固化させる固化工程と、を備え
    前記補強材挿入工程において、前記柱状物の上端に形成された開口から前記補強材を挿入した後、前記開口において前記補強材の上端部分を折り返すことを特徴とする中空柱状物の補強方法。
  3. 前記補強材挿入工程において、2枚の補強材を、その一方の補強材が、丸められた他方の補強材の内側に挿通された状態で、前記柱状物内に配置することを特徴とする請求項1又は2に記載の中空柱状物の補強方法。
  4. 前記2枚の補強材のうち、内側に位置する前記一方の補強材は、外側に位置する前記他方の補強材よりも目が細かいことを特徴とする請求項に記載の中空柱状物の補強方法。
  5. 地面に立設された中空形状の柱状物を補強する方法であって、
    繊維材料からなる筒状の補強材を前記柱状物の内部に挿入する、補強材挿入工程と、
    前記柱状物内に挿入された前記補強材の内側に、樹脂材料を含む流動性固化材を注入しつつ前記補強材を半径方向に押し広げる、固化材注入工程と、
    前記柱状物内に注入された前記流動性固化材を固化させる固化工程と、を備え、
    前記補強材の内側に筒状の枠体を挿入する枠体挿入工程をさらに備え、
    前記枠体は、気密性又は液密性を有する筒状織物であり、
    前記固化材注入工程において、前記枠体内に気体又は液体を注入してこの枠体を膨張させた状態で、前記柱状物内に挿入された筒状の前記補強材と筒状の前記枠体の間に前記流動性固化材を注入することを特徴とする中空柱状物の補強方法。
  6. 前記補強材を前記柱状物内に挿入する前に前記補強材の内側に前記枠体を挿入し、
    前記補強材の下端部を前記枠体の下端部に固定した後、前記補強材と前記枠体を前記柱状物内に挿入することを特徴とする請求項に記載の中空柱状物の補強方法。
  7. 前記補強材及び前記枠体を前記柱状物内に挿入した後に、前記枠体の前記柱状物に対する位置決めを行うためのスペーサーを、前記枠体の上端部と前記柱状物の間に取り付けることを特徴とする請求項5又は6に記載の中空柱状物の補強方法。
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