JP5521329B2 - NOx分解素子 - Google Patents
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Description
一方、夏季の光化学スモッグなどで知られるように、ディーゼルエンジンに限らず、NOxを含む気体環境は生物にとって好ましくない。大気中のNOx等を分解除去するために、多孔質担体の表面を被覆する酸化チタン薄膜にリン酸カルシウムを島状に分散配置した光触媒の提案がなされている(特許文献3)。
また、自動車に限定されず大気中のNOx等の有害物質を除去する光触媒については、分解速度または分解効率が不足する傾向があった。人が密集する空港、鉄道の駅等では、迅速な有害物質の分解が求められ、光触媒による分解では、対応しきれない場合が生じる。
(E1)カソード集電体を金属多孔体で形成することで、NOxまたはNOxを含む気体を通しながら、当該気体の乱流状態を促進する。気体を層流にして通過させるよりも、乱流とすることで、当該気体がカソードに接する機会、時間等を長くして分解反応(電気化学反応)を促進することができる。これによって、カソード単位面積当たりの電気化学反応効率を高めることができる。
(E2)カソード集電体は金属多孔体なので、外部からのカソードへの電子の流入を妨げず、NOx分解に伴う電荷授受を円滑化することができる。これによって、電子授受が電気化学反応のネックになることを防止することができる。
(E3)金属多孔体を、ニッケル合金により、またはニッケルもしくはニッケル合金に対してクロム等の富化層を形成したものにより形成することで、ニッケルを超える耐高温腐食(酸化)性能を与えることができる。上記のNOx分解素子では、たとえば250℃〜600℃の高温に加熱され、NOxが流入して、カソードにおいて酸素イオンを生成する。このため、カソードおよびカソード集電体で、金属の高温酸化反応が進行し、実用上、耐久性(耐高温酸化性)が不足する場合が生じる。ニッケルは、めっき体や微粒子の作製が容易なため、連続気孔の金属多孔体を製造する上で、非常に好適な金属であり、かつ一定の耐高温酸化性能を備える。しかし、用途によっては耐高温酸化性能が不十分であり、より耐高温酸化性能の良好な材料を用いる。金属多孔体を耐高温酸化性能に優れる材料で形成することで、カソード集電体の耐久性を向上させることができる。この結果、カソード集電体の取り換えや修理などのメインテナンスなしで、長期間にわたって安定してNOx分解素子を使用することができる。
ここで、ニッケル合金は、ニッケルをベースにして他の金属が含まれるニッケル基合金でもよいし、他の金属をベースにした他金属基の合金であってニッケルがそこに含まれるものであってもよい。また、アノードに導入される水素原子を含む気体は、水素原子を含む分子が含まれる気体をさし、水蒸気、アンモニア、VOC(Volatile Organic Compounds)等、またはこれら2種以上の混合気体をさす。
上記の金属多孔体は、最も広くは、(1)金属粒子または金属繊維の焼結体、(2)気孔連続化処理をされた発泡樹脂を用いて形成した金属めっき体、(3)パンチングメタルやエキスパンドメタルの様な機械加工式多孔体、が好ましく用いられる。またその他のどのようなものでもよい。
金属多孔体について、(1)孔径はSEM(Scanning Electric Microscopy:走査型電子顕微鏡)観察により、(2)比表面積はBET表面積法により、(3)気孔率は表面積、体積および重量から、それぞれ求めた。
上記イオン導電材からアノードへと移動する酸素イオンは、カソードでの化学反応によって発生し、供給される。このためカソードに酸素原子を含む気体が導入され、カソードにおいてその気体中の分子と、上述の電子とが反応して酸素イオンが生成する。生成した酸素イオンは、イオン導電材中をアノードへと移動する。カソードでの反応に参加する電子は、アノードとカソードとを連絡する外部回路(蓄電器、電源、電力消費機器を含む)から入ってくる。上記素子における電気化学反応は、燃料電池の発電反応であってもよいし、または電気分解反応であってもよい。
図1は、本発明の実施の形態1におけるNOx分解素子10を示す図である。このNOx分解素子10では、イオン導電性の電解質1をはさんで、アノード2と、カソード3とが、配置されている。アノード2の外側にはアノード集電体8が、また、カソード3の外側にはカソード集電体7が配置されている。アノード2は、表面酸化層を持つ金属粒連鎖体21とイオン導電性のセラミックス(金属酸化物)22とを主構成材とする焼結体であり、流体が流通できる多孔質体である。また、カソード3は、やはり流体が流通できる多孔質体であり、たとえば表面酸化層を持つ金属粒連鎖体31と、イオン導電性のセラミックス32と、銀(Ag)33とを主構成材とする焼結体とすることができる。アノード集電体8およびカソード集電体7は、ともに連続気孔を持つ金属多孔体とする。カソード集電体7を構成する材料については、あとで詳しく説明する。
電解質1は、固体酸化物、溶融炭酸塩、リン酸、固体高分子、電解液など、イオン導電性があれば何でもよい。電解質1の材料については、あとで具体的に説明する。このNOx分解素子10は、表1に示すように、燃料電池として発電させることもできるし、電気分解装置として電力投入して作動させることもできる。アノード2に導入する気体の使用容易性などから、通常、アノード2に水を導入し、カソード3に分解対象のNOxを導入して、電力投入する構成が用いられる。本実施の形態1でも、アノード2に水を、カソード3にNOxを導入する場合、すなわち表1のR3の電気化学反応を行う場合について説明する。
NOx分解素子10の場合、電解質1の酸素イオンの通過時間を短縮し、かつ各電極での電気化学反応速度も確保するために、要は全体の電気化学反応を促進するために、ヒータ等によって、たとえば250℃〜600℃に加熱される。上述のように、カソード3およびカソード集電体7には、酸素原子を含む酸化力の高い気体であるNOxが通る。250℃〜600℃の高温で酸化力の高い気体にさらされる金属は、所定の金属を除いて、当該気体によって酸化されてゆき、所定期間経過後に使用不能になる。カソード集電体が、使用不能になる形態は、酸化増量による目詰まり(通気性の低下、圧力損失の増大)、集電性能の低下、などである。カソードにおいても、高温酸化による同様の、通気性の低下、導電性の低下などが生じる。
アノード集電体などのアノード側は還元性の気体が流通するので、高温酸化の問題は生じにくい。
図3は、カソード3およびカソード集電体7を構成する材料の役割を説明するための図である。本発明の実施の形態のポイントは、NOx分解に電気化学反応を用い、その電気化学反応の促進を図りながら、その場合、必然的に生じる、カソード側3,7における高温酸化、とくにカソード集電体7の高温酸化に対して耐久性を持ち、維持管理が不要かまたは容易な材料とする点に特徴を持つ。カソード集電体7は、上記(E3)の作用を得るために、連続気孔を持つ多孔体を、ニッケル合金で形成するか、またはニッケルもしくはニッケル合金の金属多孔体の表層が、(クロム(Cr)、アルミニウム(Al)および他の金属)の少なくとも1種によって富化されるようにする。これによって耐高温酸化性能(E3)が強化される。
本実施の形態におけるカソード3は、空隙3hのある多孔体であり、酸化層を有するNi等の金属粒連鎖体31と、Ag粒子33と、酸素イオンを通すセラミックス32とで構成される。この中で、Ag粒子33および酸化層付き金属粒連鎖体31は、カソード反応2NO2+4e−→N2+2O2−、またはNO+2e−→N2+O2−、を大きく促進させる触媒機能を有する。上記のNi等の金属粒連鎖体31については、カソード集電体と、同様に、高温酸化による触媒作用の劣化や電導性の劣化が生じる。このため、Ni粒連鎖体についても、金属部分の合金化や合金層の形成によって、耐高温酸化性能を向上させるのがよい。カソード3およびカソード集電体7は、250℃〜600℃を、たとえば低温域と高温域とに分けて次の材料で構成される。低温域および高温域の区別、または酸化力の強弱は、NOx中のNOとNO2の割合や、大気中の濃度などによって変動するので、それほど明確に分ける必要はない。
(低温域または比較的酸化性の弱い雰囲気):
カソード集電体7は、連続気孔7hを持ち、骨格7aが導電部となるNi合金等の骨格の連続気孔を持つ金属多孔体とする。このNi合金等の金属多孔体は、通気性と導電性とが確保されればどのようなものでもよい。ただし、その中でも、とくにNi合金めっきで形成された三角柱状の骨格が3次元に連なった連続気孔を持つ金属多孔体がよく、典型例として、たとえば住友電気工業(株)製のセルメット(登録商標)を用いることができる。製造方法については、このあと詳細に説明するが、発泡樹脂の気孔を連続化した後、金属めっきにより骨格部を形成する製造方法に起因して、金属粒や金属繊維の焼結体に比べて、格段に通気性がよく、また導電性も確保される。
カソード3は、表面酸化されて酸化層を有するNi粒連鎖体31と、酸素イオン導電性のセラミックス32と、銀(Ag)33と、を主成分とする焼結体とする。酸素イオン導電性のセラミックス32として、LSM(ランタンストロンチウムマンガナイト)、LSC(ランタンストロンチウムコバルタイト)、SSC(サマリウムストロンチウムコバルタイト)などを用いるのがよい。Ni粒連鎖体は、金属粒連鎖体の金属をNiとしたもので、製造が比較的容易であり、また既知である。また、Ni粒連鎖体の導電部(酸化層で被覆される金属部)は、Niのみでもよいし、NiにFe、Ti等を含ませたものでもよい。
(高温域または酸化性の強い雰囲気):
高温域または酸化性の強い雰囲気用のカソード集電体7については、金属多孔体にNiを用いた場合、ある程度高温になっても、NOxの組成等によっては十分な耐久性を持つことができる。しかし、Niによる多孔体の表層にCr等の富化層を形成するなどして、耐高温酸化性能を確実に向上させるのがよい。上述のように、ニッケルは、めっき体や微粒子の作製が容易なため、連続気孔の金属多孔体を製造する上で、非常に好適な金属であり、かつ一定の耐高温酸化性能を備える。しかし、このNiによる多孔体を土台にして、Cr等の耐高温酸化性能を向上させる合金元素を利用するのが、良好な通気性、長期間の耐久性、経済性の確保の点で、より得策である。
高温域または酸化性の強い雰囲気用のカソード3については、カソード3中の、酸素イオン導電性セラミックス32と、銀33とは、低温域用のものと同じであるが、金属粒連鎖体は、耐高温酸化性向上のために、Ni粒連鎖体の表層をCr富化層、Al富化層もしくは他の金属富化層とする。または、上記の富化層を形成する代わりに、Ni−Cr合金などのニッケル合金で形成するのがよい。
本実施の形態では、分解対象のガスはNOxとし、このNOxが酸素イオンを供給する。アノード2で酸素イオンと反応する気体は、アンモニア、VOC(CH4など)、および水蒸気のどれでもよい。これによって、表1に示す番号R1〜R3の電気化学反応によるNOx分解が可能である。これらの反応のうち、水蒸気(H2O)は取り扱いが容易で、経済的であるので、とくにR3の電気化学反応に限定して、以下に説明をする。アノード2に導入された水蒸気は、結局、2O2−→O2+2e−の反応(アノード反応)をする。反応後の流体であるO2+H2はアノードから放出される。また、カソード3に導入されたNOxは、2NO+4e−→N2+2O2−、および2NO2+8e−→N2+4O2−の反応(カソード反応)をする。酸素イオンは、カソード3中の酸素イオン導電性セラミックス32から固体電解質1を通って、アノード2に到達する。アノード2に到達した酸素イオンは、水蒸気と上記反応をして、水蒸気は分解される。またカソードで分解されたNOxは、窒素ガスとなって、カソード3およびカソード集電体7から放出される。アノード2で生成した電子e−は、負荷を経てカソード集電体7およびカソード3へと流れる。上記の反応では、カソード3の電位が、アノード2よりも高くないと、電気化学反応が進行しないが、外部から電位を印可しないと上記とは逆の電位関係になっているので、外部から電位をかける必要がある。
上記のカソード3中のNi粒連鎖体31の作用(1)〜(3)は、気体を酸素からアンモニアに置き換えて、そのまま、アノード2中のNi粒連鎖体21についても言えることである。
カソード集電体7が、より強い酸化性雰囲気にさらされ、あるいは、より高温で使用される場合には、耐酸化性能を一層向上させるために、上述のように、Niめっき多孔体に対して合金化処理を施す。この合金化処理は、Cr、Al、その他の金属を外から表層に拡散導入することにより行われる。合金化を表層のみに止めて、合金化表層付きめっき多孔体とするのが普通であるが、中まで合金化する場合もある。
また、図4には示していないが、めっき液にニッケルイオンおよび他の金属イオンを溶解させて、めっき体をニッケル合金とすることができる。そのように、直接、合金めっき層を形成することで、ニッケル合金の骨格を形成してもよい。
なお、ウレタンの代わりにメラミンを用いた場合には、孔径の最小極限値は0.05mmとなる。メラミンを用いて製作した金属多孔体については、孔径と比表面積との積の表式は示さないが、気孔率が0.6以上0.98以下の範囲に入れば、メラミンを用いて製作した金属多孔体も本発明の範囲に入る。
金属粉焼結体の場合、孔径は0.05mm〜0.3mmの範囲、より好ましくは0.10〜0.2mmの範囲にある。また、比表面積は、ウレタンの多孔体鋳型を用いて製作した図4に示す関係(x−0.3)y=400よりも、かなり小さい範囲にある。気孔率は、骨格の形状にも影響を受けるが、一般的に気孔率が高いものほど比表面積は大きい。したがって、図4に示す方法で作製したNiめっき多孔体は、同じ導電性、同じ乱流生成作用を得ながら、金属粉焼結体よりも圧力損失を低下することができる。
アノード集電体8には、低温域用のカソード集電体と同じもので構成するのが、通気性および導電性を確保する上で、好ましい。
また、電解質1は、酸素イオン導電性がある、固体酸化物、溶融炭酸塩、リン酸、固体高分子などを用いることができるが、固体酸化物は小型化でき、取り扱いが容易なので好ましい。固体酸化物1としては、SSZ、YSZ、SDC、LSGM、GDCなどを用いるのがよい。
上述のようにアノード2内の表面酸化層付きNi粒連鎖体21は、カソード3内の表面酸化層付きNi粒連鎖体31と同様な、電気化学反応の促進作用(1)、(2)および(3)を有する。ほとんど同じ内容なので、具体的な説明は省略する。
1.カソードおよびアノードの金属粒連鎖体21,31
金属粒連鎖体21,31は、還元析出法によって製造するのがよい。この金属粒連鎖体21,31の還元析出法については、特開2004−332047号公報などに詳述されている。ここで紹介されている還元析出法は、還元剤として3価チタン(Ti)イオンを用いる方法であり、析出する金属粒(Ni粒など)は微量のTiを含む。このため、Ti含有量を定量分析することで、3価チタンイオンによる還元析出法で製造されたものと特定することができる。3価チタンイオンとともに存在する金属イオンを変えることで、所望の金属の粒を得ることができる。Niの場合はNiイオンを共存させる。Feイオンを微量加えると、微量Feを含むNi粒連鎖体が形成される。
また、連鎖体を形成するには、金属が強磁性金属であり、かつ所定のサイズ以上であることを要する。NiもFeも強磁性金属なので、金属粒連鎖体を容易に形成することができる。サイズについての要件は、強磁性金属が磁区を形成して、相互に磁力で結合し、その結合状態のまま金属の析出→金属層の成長が生じて、金属体として全体が一体になる過程で、必要である。所定サイズ以上の金属粒が磁力で結合した後も、金属の析出は続き、たとえば結合した金属粒の境界のネックは、金属粒の他の部分とともに、太く成長する。アノード2またはカソード3に含まれる金属粒連鎖体21,31の平均直径Dは5nm以上、500nm以下の範囲とするのがよい。また、平均長さLは0.5μm以上、1000μm以下の範囲とするのがよい。また、上記平均長さLと平均径Dとの比は3以上とするのがよい。ただし、これら範囲外の寸法を持つものであってもよい。
上記のカソード3の金属粒連鎖体31は低温域用のものとするのがよい。カソード集電体7と同様に、高温域用の金属粒連鎖体31は、図5に示すような、アルミナイジングまたはクロマイジングのような合金化処理を施すのがよい。すなわち、250℃〜600℃の高温域で使用するNOx分解素子10のカソード3に含まれるNi粒連鎖体31は、耐高温酸化性のために、CrまたはAl等の富化層を設けるのが好ましい。
アノード2内のNi粒連鎖体21、ならびに高温域用および低温域用カソード3内のNi粒連鎖体31は、いずれも、電気化学反応を促進する触媒作用を高めるために、表面酸化されるのがよい。
表面酸化処理は、(i)気相法による熱処理酸化、(ii)電解酸化、(iii)化学酸化の3種類が好適な手法である。(i)では大気中で500〜700℃にて1〜30分処理するのがよい。最も簡便な方法であるが、酸化膜厚の制御が難しい。(ii)では標準水素電極基準で3V程度に電位を印加し、陽極酸化することにより表面酸化を行うが、表面積に応じ電気量により酸化膜厚を制御できる特徴がある。しかし、大面積化した場合、均一に酸化膜をつけることは難しい手法である。(iii)では硝酸などの酸化剤を溶解した溶液に1〜5分程度浸漬することで表面酸化する。酸化膜厚は時間と温度、酸化剤の種類でコントロールできるが薬品の洗浄が手間となる。いずれの手法も好適であるが、(i)または(iii)がより好ましい。
望ましい酸化層の厚みは、1nm〜100nmであり、より好ましくは10nm〜50nmの範囲とする。ただし、この範囲外であってもかまわない。酸化皮膜が薄すぎると触媒機能が不十分となる。また、わずかな還元雰囲気でもメタライズされてしまう恐れがある。逆に酸化皮膜が厚すぎると触媒性は充分保たれるが、反面、界面での電子伝導性が損なわれ、発電性能が低下する。
アノード2またはカソード3に含まれるSSZまたはLSMの原料粉末の平均径は0.5μm〜50μm程度とする。表面酸化された金属粒連鎖体21,31と、SSZ22,LSM32との配合比は、mol比で0.1〜10の範囲とする。
焼結方法は、たとえば大気雰囲気中で、温度1000℃〜1600℃の範囲に、
30分〜180分間保持することで行う。
カソード3は、酸化層付き金属粒連鎖体31、LSM、Ag粒子33等の焼結体で構成される。Ag粒子の平均径は、10nm〜100nmとするのがよい。銀と、LSMとの配合比は、0.01〜10程度とするのがよい。
連鎖状金属粉末の表面酸化の時期は、上記の焼結体形成の前でもよいし後でもよい。
図8は、本発明の実施の形態2におけるNOx分解素子を示す図である。本実施の形態における反応は、表1の反応R1に対応し、発電素子(燃料電池)でもある。カソード3にはカソード集電体7を流路としてNOxを導入し、アノード2にはアンモニアを導入する。カソード反応は、実施の形態1と同じであるが、アノード反応は、2NH3+3O2−→N2+3H2O+6e−である。この場合、アノード集電体8の電位は、自然に、カソード集電体7の電位よりも高くなり、電力を取り出すことが可能になる。たとえば図8の負荷を図示しないヒータとしてこのヒータに電力を供給することができる。また、ヒータの温度制御部に、この電力を供給してもよい。
また、アノード2およびカソード3では、表面酸化された金属粒連鎖体による、(1)ニッケル酸化物31および銀粒子33による反応の促進(高い触媒機能)、および(2)金属粒連鎖体のひも状良導体による電子の導通性確保(高い電子伝導性)を得ることができる。その結果、小型で簡単な素子によって大量のNOxを迅速に処理することができ、メインテナンス費用(ランニングコスト)が安価である。
(1)アノード集電体:Ni金属多孔体(住友電気工業(株)製セルメット)、孔径1900μm、比表面積500m2/m3
(2)アノード:触媒Ni粒連鎖体(太さ100nm、鎖長30μm)/電解質
SSZ
8種類の試験体のカソード集電体およびカソードを、表2に示す。カソード集電体については、上記のNi金属多孔体をベースにして、孔径(比表面積)、合金化、について条件を振った。またカソードの触媒について、ベースをNi粒連鎖体として、銀粒子の影響についても検討した。これらの試験体について、温度300℃〜600℃で、アンモニアを含む窒素ガス(搬送ガス)に対して、除害の処理能力の、5時間〜10000時間にわたる変化を測定した。結果を表3に示す。
−処理温度の影響−
試験番号t1、t2、t3の結果より、温度300℃〜500℃の範囲で、500時間程度までは短時間では高温度ほど処理能力は高い。10000時間では300℃での処理能力が最も高くなる。このような逆転現象は、高温酸化の影響によると考えられる。
−触媒の影響−
カソードの触媒に銀を用いた試験番号t10では、短時間では、触媒にNi粒連鎖体を用いた試験t5の80に比べて、110と高い。この優位性は500時間程度までは維持される。しかし、10000時間になると、ほとんど同じになる。
−カソード集電体 金属多孔体の孔径−
試験番号t2,t4,t5,t6によって、カソード集電体を形成する金属多孔体の孔径の影響を知ることができる。時間500時間程度以内では、孔径は小さく、比表面積が大きいほうが、処理能力は高い。しかし、10000時間程度では、影響がなくなり、ほとんど同じ処理能力に落ち着く。
−合金化の影響−
試験番号t3,t5,t6,t7によって、カソード集電体を形成する金属多孔体の合金化(表層への合金拡散)の影響を知ることができる。合金化によって、長時間経過した10000時間で大きな効果を得ることができる。Ni単体では、10000時間で45であるが、Crの拡散導入により75程度と顕著な効果を得ることができる。また、Al(試験番号t8)、Al−Cr(試験番号t9)の拡散導入によっても、同程度の顕著な効果を得ることができる。ただし、500時間程度まではほとんど影響が認められない。
上記より、長時間、ランニングコストを抑制して良好な除害能力を長期間得るためには、合金化が有効であることが理解される。
Claims (6)
- NOxを分解するための素子であって、
前記NOxまたはNOxを含む気体が導入される多孔質のカソードと、
前記カソードと対をなし、水素原子を含む気体が導入される多孔質のアノードと、
前記アノードとカソードとに挟まれる、酸素イオン導電性を持つイオン導電材と、
前記カソードに接するカソード集電体とを備え、
前記カソード集電体が、連続気孔を持つ金属多孔体である金属めっき体で構成され、該金属めっき体が、ニッケル合金でなるか、またはニッケルもしくはニッケル合金の金属めっき体の表層が、(クロム(Cr)、アルミニウム(Al)、銀(Ag)、金(Au)および白金(Pt))の少なくとも1種に富化されてなり、
前記カソードが、(a1)金属粒連鎖体と、イオン導電性セラミックスとを含む焼結体、または(a2)酸化層を有する金属粒連鎖体と、イオン導電性セラミックスとを含む焼結体、であって、金属粒連鎖体が、(b1)ニッケルまたはニッケル合金、および(b2)異種金属の富化層を有するニッケルまたはニッケル合金、のいずれか一方である、ことを特徴とする、NOx分解素子。 - 前記金属めっき体の気孔率が、0.6以上0.98以下であることを特徴とする、請求項1に記載のNOx分解素子。
- 前記金属めっき体は、発泡処理された樹脂に連続気孔化処理がされその連続気孔内壁に下地導電膜を介して形成された金属めっき層を骨格としており、該金属多孔体の、孔径をx(mm)、比表面積をy(m2/m3)とするとき、400≦(x−0.3)y、を満たすことを特徴とする、請求項1または2に記載のNOx分解素子。
- 前記アノード、イオン導電材、およびカソードが、一体化されたMEA(Membrane Electrode Assembly)の(アノード/イオン導電材/カソード)の形態とされ、前記カソード集電体は、シート状であり、前記カソードに接して積層され、前記酸素原子を含む気体の流路を占めていることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載のNOx分解素子。
- 前記イオン導電材、アノードおよびカソードを、加熱するヒータと、前記イオン導電材、アノードおよびカソードの温度を制御する温度制御システムとを備えることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載のNOx分解素子。
- 内燃機関を有する自動車に搭載され、当該内燃機関の排熱を、加熱のための熱源とすることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載のNOx分解素子。
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