JP2006122847A - 触媒作用と電気化学作用を行う化学反応器の運転方法 - Google Patents

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正信 淡野
Yoshinobu Fujishiro
芳伸 藤代
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Shingo Katayama
真吾 片山
Takuya Hiramatsu
拓也 平松
Osamu Shiono
修 塩野
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Abstract

【課題】 化学反応器の運転方法を提供する。
【解決手段】 (1)反応場となる遷移金属の微細粒子からなる還元相、(2)被処理物質を反応場に導入するための空間、(3)反応場となるイオン伝導体結晶構造の中に形成された酸素欠損濃集部、(4)イオン伝導体の酸素欠損濃集部に吸着する酸素分子をイオン化するために必要な電子を供給する電子伝導相、及び(5)イオン伝導体の酸素欠損でイオン化された酸素分子を反応系外に搬出するための経路となるイオン伝導相、を基本単位とする化学反応部を形成した化学反応器、を使用して、カソードとアノードの間に電流を通電若しくは電界を印加、もしくは化学反応部を還元又は減圧下で熱処理することにより、化学反応部に吸着し、反応を阻害する酸素をイオン化して除去する能力を活性化することを特徴とする化学反応器の運転方法。
【選択図】図1

Description

本発明は、化学反応器の運転方法に関するものであり、更に詳しくは、酸素を含む燃焼排ガスから窒素酸化物を効率的に浄化する化学反応器の運転方法に関するものである。本発明者らは、先に、触媒作用と電気化学作用を行う新規化学反応器を開発し、特許出願したが、本発明は、該化学反応器の運転方法を提供するものである。本発明は、例えば、排ガス中の窒素酸化物等の被処理物質の化学反応もしくはエネルギー変換反応を行うための化学反応器の技術分野において、従来の化学反応器は、自動車の排気ガスのように大流量の排気ガスに対する浄化用途の場合、反応容積が不十分で、必要な性能が得られないという問題や排ガス中の窒素酸化物を浄化する際に、酸素分子が表面吸着して反応性が低下するという問題があったことを踏まえ、それらの問題を抜本的に解決することを可能とすると共に、少ない消費電力でシステムを再活性化し、高効率にかつ連続的に、被処理物質を処理することを可能とする、新しい化学反応器の運転方法を提供するものである。
ガソリンエンジンから発生する窒素酸化物の浄化は、現在、三元系触媒が主流となっている。しかし、燃費向上を可能とするリーンバーンエンジンやディーゼルエンジンにおいては、燃焼排ガス中に酸素が過剰に存在するため、この三元系触媒では、その表面への酸素の吸着により触媒活性が激減し、窒素酸化物を効率的に浄化することができない、という問題が有ることが指摘されている。
一方、酸素イオン伝導性を有する固体電解質膜を用いて、そこへ電流を流すことにより、排ガス中の酸素を触媒表面に吸着させることなく除去することも行われている。そして、触媒反応器として提案されているものとして、例えば、電極に両面を挟まれた固体電解質に電圧を印加することにより、表面酸素を除去すると同時に窒素酸化物を酸素と窒素に分解する方法が提案されている(特許文献1、2、及び非特許文献1)。
しかしながら、この種の方法では、燃焼排ガス中に過剰の酸素が存在する場合、共存している酸素と窒素酸化物の吸着分解反応サイトが同一の酸素欠陥よりなるため、酸素分子に対する窒素酸化物の吸着確率は、分子選択性及び共存分子数比から見て著しく低くなり、このため、窒素酸化物を分解するには多量の電流を流す必要があり、それにより、消費電力が増大する、という問題がある。
このような問題に対処するために、本発明者らは、化学反応器において、カソードの内部構造として、同層上部に、ナノメートルサイズの貫通孔を取り巻いて、電子伝導体とイオン伝導体がナノメートルからミクロン以下のサイズで相互に密着した、ネットワーク状に分布する構造を導入することで、被処理物質の化学反応を行う際に妨害ガスとなる過剰な酸素を低減させ、それにより、少ない消費電力で、高効率に被処理物質を処理する方法を開発している(特許文献3参照)。
しかし、この種の方法では、共存酸素分子の除去のためには、連続的に電流を供給しなければならず、消費電力の低減は不十分であることが分かった。そこで、本発明者らは、これらの問題を解決することを目標として更に研究を重ねた結果、化学反応部中のカソード上部に位置する作動電極層において、窒素酸化物の吸着−還元反応を行うことで、化学反応の効率化を可能とするための局所反応場を形成し、更に、一定量の酸素分子の吸着後に、化学反応システムに通電することで、酸素分子をイオン化して除去し、再活性化することが可能であることを見出している(特許文献4及び5参照)。
しかし、この種の方法では、化学反応部中のイオン伝導体が、化学反応により生成する酸素イオンを速やかに反応系外に移動させ、化学反応を進行させる反応サイトの反応活性を維持できるようにするために、材料構成により異なるが、代表的なセルで、例えば、500℃程度という、比較的高い温度を必要とされるが、その応用として、例えば、ディーゼル車の排ガスを考えると、その作動温度が窒素酸化物分子の吸着及び分解のための最適条件よりも高すぎるという問題があった。
米国特許第4902487号明細書 特公平7−106290号公報 特開2003−33646号公報 特開2004−058028号公報 特開2004−058029号公報 日本表面科学会編、環境触媒、1997年、167頁、共立出版株式会社
このような状況の中で、本発明者らは、上記従来技術に鑑みて、化学反応部をより低温で効率よく作動させるために、反応分子を一旦別のものに変成し、その分子に対して実効的な反応を行うために必要な特定の組成及び構造の「基本単位」からなる微細構造を化学反応部に導入した、新しい化学反応器の運転方法を開発することを目標として鋭意研究を重ねた結果、触媒作用と電気化学作用を行う新規な化学反応器の運転方法を開発することに成功し、本発明に至った。即ち、本発明は、例えば、燃焼排ガス中に過剰の酸素が存在する場合に、酸素分子と窒素酸化物分子に対する吸着分解反応サイトを別に形成して、窒素酸化物を吸着しやすくすることにより、浄化効率を向上して、窒素酸化物の分解に必要な電流量を減らし、同時に一定量の酸素吸着後に通電処理することにより化学反応器を再活性化することで、性能劣化を抑制し、それによって、低消費電力で高効率に窒素酸化物を低温で浄化できる新しい化学反応器の運転方法を提供することを目的とするものである。
上記課題を解決するための本発明は、被処理物質の化学反応もしくはエネルギー変換反応を行うための化学反応器を運転する方法において、以下の化学反応器:(A)遷移金属の微細粒子、酸素欠損濃集部を有するイオン伝導体、及び電子伝導体、を構成要素として、(1)反応場となる遷移金属の微細粒子からなる還元相、(2)被処理物質を反応場に導入するための空間、(3)反応場となるイオン伝導体結晶構造の中に形成された酸素欠損濃集部、(4)イオン伝導体の酸素欠損濃集部に吸着する酸素分子をイオン化するために必要な電子を供給する電子伝導相、及び(5)イオン伝導体の酸素欠損でイオン化された酸素分子を反応系外に搬出するための経路となるイオン伝導相、を基本単位とする化学反応部を形成し、(B)それにより、共存する酸素分子に対して被処理物質を酸素分子と別の吸着分解反応サイトにおいて選択的に吸着分解させる機能を付加した化学反応器、を使用して、カソードとアノードの間に電流を通電若しくは電界を印加、もしくは化学反応部を還元又は減圧下で熱処理することにより、化学反応部に吸着し、反応を阻害する酸素をイオン化して除去する能力を活性化することを特徴とする化学反応器の運転方法、である。本方法は、(1)上記化学反応器が、還元相に接するナノメートルスケールの空間を有すること、(2)上記化学反応器の還元相が、電子伝導体に接するか若しくはナノメートルスケールに近接していること、(3)上記化学反応器が、被処理物質を、ナノメートルスケールの空間に流入又は拡散させ、イオン伝導体の酸素欠損濃集部に選択的に吸着させ、還元相表面における化学反応を促進させる機能を有すること、(4)被処理物質に対する化学反応の前に予め、もしくは化学反応と同時に酸化反応を生じせしめる、あるいはこれらの反応プロセスを繰り返すことにより、化学反応部の内の材料を、還元相において行われる化学反応を持続的に進行させるに適した化合物とすること、(5)被処理物質の化学反応の前に予め、もしくは化学反応と同時に酸化反応を生じせしめ、更に、化学反応を200℃から450℃の温度範囲で行うこと、(6)上記化学反応器を、直列又は並列に複数組み合わせることにより、システム全体の性能を大きく損なうことなく、反応の再活性化を行い、連続的な運転を行うこと、(7)上記被処理物質が、窒素酸化物であること、上記化学反応が、窒素酸化物の還元分解であること、(8)上記化学反応器として、その化学反応器の被処理物流路における上流側に、酸化触媒を設置して、全体システムを構成した化学反応器を使用すること、を好ましい態様としている。
次に、本発明について更に詳細に説明する。
本発明は、化学反応器を使用して、カソードとアノードの間に電流を通電若しくは電界を印加、もしくは化学反応部を還元又は減圧下で熱処理することにより、化学反応部に吸着し、反応を阻害する酸素をイオン化して除去する能力を活性化することを特徴とするものである。
本発明で使用する化学反応器の特定の組成及び構造からなる「基本単位」について説明する。本発明で使用する化学反応器は、被処理物質の化学反応もしくはエネルギー変換反応を行うための化学反応器において、遷移金属の微細粒子、酸素欠損濃集部を有するイオン伝導体、及び電子伝導体を組み合わせて、(1)反応場となる遷移金属の微細粒子からなる還元相、(2)被処理物質を反応場に導入するための空間、(3)反応場となるイオン伝導体結晶構造の中に形成された酸素欠損濃集部、(4)イオン伝導体の酸素欠損濃集部に吸着する酸素分子をイオン化するために必要な電子を供給する電子伝導相、及び(5)イオン伝導体の酸素欠損でイオン化された酸素分子を反応系外に搬出するための経路となるイオン伝導相、を基本単位とする化学反応部を形成し、それにより、共存する酸素分子に対して被処理物質を別の吸着分解反応サイトにおいて選択的に吸着分解させるようにしたことを特徴とするものである。
本発明では、上記化学反応部のイオン伝導体に、酸素欠乏部である酸素欠損濃集部を形成し、このイオン伝導体の酸素欠損濃集部と還元相に接してナノメートルスケールの空間を形成し、これらを近接ないし接触配置し、還元相を電子伝導体に近接ないし接触配置した構造を形成する。このように、本発明は、上記化学反応部中に、還元相とイオン伝導体の酸素欠損濃集部とをナノメートルスケールの空間を介在させて近接ないし接触配置した構造を形成し、還元相を電子伝導体に近接ないし接触配置し、共存する酸素分子と被処理物質の分子の吸着分解反応サイトを異なるサイトに位置させたことを特徴としている。
本発明において、被処理物質の反応に対して必要な「基本単位」は、(1)(例えば、NO分子のNに対する)反応場となる遷移金属の微細粒子構造、(2)被処理物質を反応場に導入するための空間(同時に被処理物質を反応場に限定させるためのナノ空間)、(3)(例えば、NO分子のOに対する)反応場となるイオン伝導体結晶構造の中に形成される酸素欠損濃集部、(4)イオン伝導体の酸素欠損濃集部に吸着する酸素分子をイオン化するために必要な電子を供給する電子伝導相、(5)イオン伝導体の酸素欠損でイオン化された酸素分子を反応系外に搬出するための経路となるイオン伝導相、の5つの要素から構成される。
ここで、上記(1)において、「遷移金属」を使用する理由は、共有結合性の分子に対して遷移金属表面が選択吸着性を有するからであり、また、「微細粒子構造」とするのは、この吸着反応効率が、表面積の増大により高くなるからである。また、上記(2)において、還元相に接する「ナノ空間」が必要とされるのは、例えば、NO分子が速やかに吸着反応を生じせしめるための空間の大きさには制限があり、一方で、被処理物質の量が多い場合に(例えば、自動車排ガス等)、十分に処理できるための空間の大きさが必要であるからである。これらの相反する要求の解決のためには、ナノメートルスケールの空間が必要であり、その空間として、例えば、空孔が外側から内側に向かって細くなるもの、更には、排ガス等の流路方向に対して平行な、例えば、一方向貫通孔となるものが望ましいものとして例示される。それにより、被処理物質を、ナノメートルスケールの空間に流入又は拡散させ、イオン伝導体の酸素欠損濃集部に選択的に吸着させ、還元相表面における化学反応を促進させることができる。
また、上記(3)の酸素欠損濃集部については、酸素を吸着し、同時に又はその後で電子を与える能力を有する物質又は構造であればよい。例えば、酸化物結晶として、その中に酸素欠損を有し、酸素を捕獲する能力を有するものが用いられる。電子を与える物質としては、酸化物の内で導電性を有するものが好ましい。また、上記(4)の電子伝導相については、電子伝導体又は導電体を密着して組み合わせることでもよい。更に、上記(5)において、酸素イオンを系外に排出するための伝導経路としてのイオン伝導体は、単体としても可能であるが、上記(3)と一体とすることが一般的に好適であり、あるいは、上記(4)と一体化する構造又は物質(いわゆる混合導電体)とすることも可能である。本発明では、遷移金属の微細粒子、酸素欠損濃集部を有するイオン伝導体、及び電子伝導体、を構成要素として、これらを、上記組成及び構造となるように、配置する。その場合、各構成成分は、好適には、粒子状で配置されるが、その形態は特に制限されるものではない。
本発明で使用する化学反応器では、例えば、被処理物質が燃焼排ガス中の窒素酸化物である場合、還元相において窒素酸化物を還元して酸素イオンを生成させ、イオン伝導相において酸素イオンを伝導させ、酸素イオンから電子を放出させる。しかし、本発明における被処理物質は、窒素酸化物に限定されるものではなく、本発明の化学反応器によって、例えば、二酸化炭素を還元して一酸化炭素を生成すること、メタンから水素と一酸化炭素との混合ガスを生成すること、あるいは、水から水素を生成すること、が可能である。
本発明で使用する化学反応器の形態は、特に制限されるものではないが、例えば、管状、平板状、ハニカム状等が例示されるが、特に、管状、ハニカム状のように、一対の開口を有する貫通孔を一つ又は複数有しており、各貫通孔中に化学反応部が位置していることが好ましく、あるいは平板状の形態であり、その表面に化学反応部が位置することで、可能な限り大きな反応面積を有する形態であることも同様に好ましい。
上記化学反応部において、還元相は、多孔質であって、反応の対象とする被処理物質を選択的に吸着するものであることが好ましい。この還元相では、被処理物質中に含まれる元素へ電子を供給してイオンを生成させ、生成したイオンをイオン伝導相へ伝達するために、導電性物質からなることが好ましい。また、還元相は、電子及びイオンの伝達を促進するために、電子伝導性とイオン伝導性の両特性を有する混合伝導性物質からなること、又は電子伝導性物質とイオン伝導性物質の混合物からなることがより好ましい。
これらの導電性物質及びイオン伝導性物質は、特に限定されるものではないが、導電性物質としては、好適には、例えば、白金、パラジウム等の貴金属や、酸化ニッケル、酸化コバルト、酸化銅、ランタンマンガナイト、ランタンコバルタイト、ランタンクロマイト等の金属酸化物や、バリウム含有酸化物やセオライト等も用いられる。前記物質の少なくとも1種類以上を、少なくとも1種類以上のイオン伝導性物質との混合質として用いることも好ましい。また、イオン伝導性物質としては、好適には、例えば、イットリア又は酸化スカンジウムで安定化したジルコニア、酸化ガドリニウム又は酸化サマリウムで安定化したセリア、ランタンガレイト等が用いられる。この還元相は、電子伝導体に接するか若しくはナノメートルスケールに近接している。また、イオン伝導体に接する還元相は、これとは別のイオン伝導体までの還元相部分の一部若しくは全部を占めるだけの体積を有する。
イオン伝導相は、イオン伝導性を有する固体電解質からなり、好ましくは、酸素イオン導電性を有する固体電解質からなる。酸素イオン伝導性を有する固体電解質としては、イットリア又は酸化スカンジウムで安定化したジルコニア、酸化ガドリニウム又は酸化サマリウムで安定化したセリア、ランタンガレイトが挙げられるが、これらに限定されるものではない。このイオン伝導相としては、好ましくは、高い導電性と強度を有し、長期安定性に優れたイットリア又は酸化スカンジウムで安定化したジルコニアが用いられ、また、比較的短時間の作動により、その使用目的を達することのできる用途の場合には、セリア系固体電解質も好ましく用いられる。
イオン伝導相からのイオンから電子を放出させるために、酸化相として、導電性物質を含有させること、電子及びイオンの伝達を促進するために、電子伝導性とイオン伝導性の両特性を有する混合伝導性物質、又は電子伝導性物質とイオン伝導性物質の混合物を用いることが好ましい。酸化相として用いられる導電性物質及びイオン伝導性物質は、特に限定されるものではないが、導電性物質としては、好適には、例えば、白金、パラジウム等の貴金属や、酸化ニッケル、酸化コバルト、酸化銅、ランタンマンガナイト、ランタンコバルタイト、ランタンクロマイト等の金属酸化物が用いられる。イオン伝導性物質としては、好適には、例えば、イットリア又は酸化スカンジウムで安定化したジルコニア、酸化ガドリニウム又は酸化サマリウムで安定化したセリア、ランタンガレイトが用いられる。
本発明において、上記構成からなる化学反応部は、高効率での被処理物質の吸着分解に加え、酸素分子の吸着と被処理物質の吸着分解を、各々の反応に適した別々の物質により同時に行うことが可能な構造を有する。即ち、酸化物の還元により生成もしくは当初から含まれる金属相(高反応性のためには、望ましくは超微粒子(10〜100nm径)の態様)と、その近傍に存在するイオン伝導相の酸素欠損濃集部(デバイ長による計算からの推定値では、5nm程度の領域)とが、接しており、かつ接触部周辺に数〜数100nm程度の微小空間が共存することにより、導入された被処理ガス中の酸素分子が酸素欠損濃集部に、被処理物質が金属相に各々選択的に吸着分解されることで、消費電力が著しく低減される。
このような化学反応部の構造は、熱処理プロセス(ジルコニア−酸化ニッケル系で1400〜1450℃大気中での熱処理)に加え、化学反応システムへの通電処理又は還元雰囲気等での熱処理を行うことにより形成される。即ち、本発明では、例えば、比較的容易に還元されやすい酸化物を用い、数100℃以上の高温下で通電することで還元相を形成する。その過程で、酸化還元反応による結晶相の体積変化により、被処理ガスの導入に適したナノメートルからミクロンメートルサイズの空孔の生成、還元相の再結晶による超微粒子化、更には、酸化還元反応を通じたイオン伝導相の酸素欠損濃集部の形成等の、高効率反応に好ましい微細構造が形成される。
従来型の電気化学セル方式の化学反応システムにおいては、電気的に化学反応を促進させるための基本構造として、固体電解質を挟んだ2枚の電極(カソード及びアノード)もしくはいずれかの電極に触媒機能を付与したものが使われているが、本発明の特徴として、全体として電気回路を形成するような上記構造は必ずしも必要ではなく、反応を行う局所構造が活性化されるためには、本発明では、基本的には、イオン伝導体と還元相の組合せのみを最低限具備することが必要条件となる。
本発明では、このような微細構造を採用することにより、従来は、酸素分子の分解反応と同じ反応サイト(反応活性点)においてのみ可能であった、窒素酸化物の還元分解などの化学反応の反応場として、2種類以上の原子、分子又は化合物の同時又は短時間に並行及び競合して生じる反応に対し、異なる反応サイトを提供することで、反応の選択性を高め、その結果として、反応効率を飛躍的に向上させることが可能となる。
このような構造を構成する物質としては、イオン伝導相と電子伝導相の組合せ、混合伝導相同士又はこれとイオン伝導相、電子伝導相との組合せが可能である。例えば、被処理物を窒素酸化物とした場合、還元相としては、ニッケル等の金属相が、高選択吸着性を示すため、より好ましい。還元相がイオン伝導体に接することにより、例えば、被処理物質を窒素酸化物とした場合に、還元相側で窒素酸化物中の窒素原子を吸着し、一方、イオン伝導体の酸素欠損で酸素原子を吸着することが、より効果的に行われることが可能となる。このため、上記構成成分を粒子状にして、一般に、粒子状の形態を有する還元相と、複数の同じく一般に粒子状であるイオン伝導体に対して、被処理物質が、より多く、かつ還元相とイオン伝導体の両者により同時に接することができる構造とすることが望ましい。
次に、本発明の化学反応器の再活性化について説明する。一般に、化学反応器を再活性化させるためには、従来技術として既に記述した還元剤の導入による方法以外に、例えば、炭素等が予め化学反応器に一体化された構造を形成し、化学反応時に炭素が酸化されることにより、酸化された金属相を還元する方法も提案されている[K.Miura et al., Chemical Engineering Science 56,1623(2001)]。しかし、これらの方法では、還元剤を必要とし、還元剤がなくなると再活性化が不可能となるため、化学反応器を長期にわたり使用し、又は連続使用するためには、化学反応器を電気的に再活性化する手法が好ましい。
本発明の化学反応器では、化学反応器が性能低下した際にのみ通電等を行うことで、化学反応部中の酸素欠損濃集部に吸着した酸素を、イオン化して、ポンピングにより除去することが可能であり、また、還元相の再賦活を同時に行うことも可能である。これにより、本発明で使用する化学反応器では、従来の電気化学セル方式で必要とされる酸素ポンピングのための電流量に比べて、著しく電流量を低減することが可能である。
本発明では、酸素ポンピングによる化学反応器の再活性化は、化学反応器が400〜700℃の状態で、同反応器に通電もしくは電圧印加又は還元雰囲気処理することで行われる。処理温度は、反応器を構成する材料及び構造により異なるが、例えば、固体電解質としてイットリア安定化ジルコニアを用いる場合には、560℃付近が、また、セリア系を用いる場合には、450℃付近が、好ましい。
上記処理温度及び構成材料の条件に加え、通電電流量、印加電圧、通電時間、雰囲気中の酸素分圧又は全圧力条件については、可変である。本発明で使用する化学反応器において、例えば、イオン伝導体としてイットリア安定化ジルコニアを、還元相材料として酸化ニッケルとジルコニアを用いた場合には、100mA、2Vで1時間(酸素10%)の通電処理により、処理前と同等の窒素酸化物の分解性能が回復される。なお、酸素吸着による化学反応器の劣化の程度は、100時間の連続運転(通電なし)で約20%であり、上記通電処理により、その性能が繰り返し、回復される。
本発明に係る化学反応システムの運転方法は、被処理物を化学反応の前に予め、もしくは化学反応と同時に、処理が容易な化合物に変成することが重要である。窒素酸化物に対しては、例えば、酸化反応を生じせしめる、あるいはこれらの反応プロセスを繰り返すことにより、化学反応部の材料が、還元相において行われる化学反応を進行させるに適した化合物となる。被処理物がその他の場合には、例えば、炭素が一酸化炭素を経て二酸化炭素になる際の酸化反応の程度、又はその逆反応の還元反応の程度は、それぞれ条件が異なるものである。
化学反応器において、被処理物質の化学反応の前に予め、もしくは化学反応と同時に酸化反応を生じせしめる場合、被処理物質が窒素酸化物であり、生成する化合物が二酸化窒素(NO2 )の場合は、生成相の安定条件の理由により、化学反応を200℃から450℃の温度範囲で行うことが好適であるが、窒素酸化物のその他の反応及びその他の化合物に対する化学反応器の作動条件はこの限りではない。
このような化学反応器の運転方法は、化学反応器1台で経時的に制御するのみならず、被処理物質の化学反応の前に予め、もしくは化学反応と同時に酸化反応を生じせしめる化学反応器を、直列又は並列に複数組み合わせることも可能である。それにより、システム全体の化学反応効率が上がることが期待されるため、例えば、2系統を準備し、被処理物を交互に導入し、酸化−還元反応を交互に繰り返すことで、化学反応器全体の反応効率を上げることも可能である。
ディーゼル車の排ガス浄化においては、酸化触媒によりNOをNO2 として、これを排ガスに同時に含まれるパーティキュレートマテリアル(PM)の酸化燃焼による除去作用を発生せしめるために用いることが行われているが、本発明の方式は、NOxの還元とPMの酸化をバランス良く行うことが可能な場合に有効である。酸化触媒との組み合わせにおいてNOxの浄化反応を高効率で行う場合には、本発明による酸化−還元反応が有効となる。
本発明により、(1)触媒作用と電気化学作用を行う化学反応器の運転方法を提供することができる、(2)少ない消費電力でシステムを再活性化し、高効率にかつ連続的に、被処理物質を処理することを可能とする、新しい化学反応システムの運転方法を提供することができる、(3)例えば、自動車エンジンから発生する燃焼排ガス中の窒素酸化物を浄化する際に、共存する酸素分子と窒素酸化物に対する別の吸着分解反応サイトを利用して吸着分解反応を行うことができる、(4)それにより、窒素酸化物を選択的に高効率で吸着分解することができる、(5)被処理物質の化学反応を妨害する酸素が過剰に存在する場合においても、少ない消費電力で、高効率、かつ連続的に、被処理物質を処理できる化学反応器の運転方法を提供することができる、(6)本発明では、化学反応器に導入された被処理ガス中の酸素分子を酸素欠損濃集部に、被処理物質を金属相に各々選択的に吸着分解させることで、浄化効率を向上させることができる、という格別の効果が奏される。
次に、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
本実施例では、遷移金属の微細粒子、酸素欠損濃集部を有するイオン伝導体、及び電子伝導体、を組み合わせて、「基本単位」を径1ミクロン以下の粒子で構成し、各粒子間を導電性ネットワークで連結した構造を有する化学反応部を作製した(図1)。
(1)試料の作製
遷移金属として、「基本単位」に適したFe,Cu,Niの内で、酸化物イオン伝導体として最も特性が安定している安定化ジルコニア(YSZ)との組み合わせにおいて、化合物などの合成反応が容易に生じず、かつ酸化−還元作用により容易に酸化物と金属に相変化し、還元時には、体積減少率が大きな(約40%)材料を得るために、酸化ニッケルの微細粉体を原料として用いた。
これに、酸化物イオン伝導体であるジルコニアを50モル%加え、遊星ミルなどの高エネルギー型の混合粉砕器を用いて、粒子径が平均50nmのジルコニア−酸化ニッケルコンポジット粉体を作製した。これを用いて、一軸加重約100kg/cm2 の圧力下で圧粉成形体を作製し、放電焼結装置を用いて、真空中で試料上下から電流を印加することで、粒子が連結した多孔体を得た。連結した粒子は、ジルコニア、酸化ニッケルが全体として3次元のネットワーク構造を有し、かつ金属ニッケルが、ジルコニアと酸化ニッケルの接点近傍に主として分布するものであった。
また、同時に、多孔体は、金属ニッケルとジルコニアが一部で接し、かつ接点近傍では数nmから数10nmのナノメートルスケールの空隙を有するものであった。また、ジルコニアには、酸素欠損が多量に存在することが、電子線回折やX線回折により確かめられた。多孔体の密度は、放電焼結条件により大きく異なるが、理論密度の60〜96%の範囲の密度を示した。
(2)性能の評価
この圧粉体様試料を、径2cmの円盤状に切り出し、電極として白金メッシュを表裏両面に形成し、窒素酸化物の処理能力を測定した。被処理ガス中に試料を配置し、円盤の表裏両面に白金線をリード線として固定し、直流電源に接続し、直流電圧を印加して電流を流した。被処理ガスとして、一酸化窒素1000ppm、酸素2%、ヘリウムバランスのモデル燃焼排ガスを使用し、これを、流量2リットル/minで化学反応システムに流した。化学反応システムへの流入前後における被処理ガス中の窒素酸化物濃度を、化学発光式NOx計で測定し、窒素及び酸素濃度を、ガスクロマトグラフィーで測定した。窒素酸化物の減少量から、窒素酸化物の浄化率を求め、浄化率が80%となるときの電流密度及び消費電力を測定した。測定時の試料温度は、350℃に設定した。
この時、電流量の増加と共に窒素酸化物の浄化率は向上し、電流密度18mA/cm2 、消費電力26mW/cm2 の通電条件により、窒素酸化物は約20%にまで減少した。また、この試料への通電を停止してからも窒素酸化物の分解はある程度の分解率低下を伴いつつ継続し(浄化性能低下率は、当初1時間で15%、その後、約20時間で5%)、間欠的に、20時間毎に1時間の通電を行うことで、ほぼ初期の性能を維持して作動させることが可能であることが分かった。
本実施例では、化学反応部の「基本単位」を、ハニカム担持、及び通電処理により形成した。上記実施例1と同様に、ジルコニアと酸化ニッケルの混合粉体を調製し、これを金属ハニカム構造体に担持させ、真空中で1200℃に加熱してハニカム構造体上にコートした後、ハニカム構造体の両端に100Vの電界を印加した。2時間の通電により、ハニカム構造体上にコートされた混合粉体の全体が、金属ニッケルとジルコニアが3次元でネットワーク構造を形成し、粉体同士がネック構造を有し、表面は約1μmの空孔をする多孔体構造が得られた。この多孔体層は、表面から約3μmまでは1μmの空孔が、その下部は数nmから20nmの空孔が分布する構造であった。
実施例1と同様に、性能評価を行い、円盤状試料の代わりに、ハニカム構造体を被処理ガス中に設置し、両端から通電することで、窒素酸化物の浄化性能を測定した。電流密度50mA/cm2 、消費電力30mW/cm2 の通電条件により、ほぼ90%の窒素酸化物が連続的に浄化されることが分かった。
図2は、本発明の一実施形態に係る化学反応器における、システム構成及び運転方法の一例である。図2において、窒素酸化物の浄化反応の際に、化学反応部では、ほぼ常時通電により、500〜600℃の高温作動が行われ、NOをNO2 として、また、無通電又は間欠通電により300〜400℃の低温作動が行われる。図3は、化学反応システムの内、酸化触媒層及び化学反応部の代表的な構成例である。しかし、本発明は、ここで示した構成及び運転方法に限定されるものではない。本実施例では、被処理物質として、窒素酸化物を使用した場合について具体的に説明する。
イオン伝導相としては、イットリアで安定化したジルコニアを用い、その形状は、直径20mm、厚さ0.5mmの円板状とした。還元相は、白金及びジルコニアの混合層、作動電極層は、酸化ニッケルとイットリア安定化ジルコニアの混合物からなる膜とした。白金膜は、イオン伝導相の片面に面積約1.8cm2 となるようにスクリーン印刷した後、1200℃で熱処理することにより形成した。酸化ニッケルとイットリア安定化ジルコニアの混合膜は、白金膜上に白金膜と同一面積となるようにスクリーン印刷した後、1450℃で熱処理することにより形成した。酸化ニッケルとイットリア安定化ジルコニアの混合比は、モル比で6:4とした。還元相を形成したイオン伝導相の他方の面に面積約1.8cm2 となるように白金膜をスクリーン印刷した後、1200℃で熱処理することにより形成し、酸化相とした。酸化触媒層は、セリア系酸化物を用い、スクリーン印刷と1200℃の熱処理により、約5ミクロンの膜厚で作動電極層の上部に形成した。更に、カソードとアノードの間に1.0V−15mAの電流を通電しながら温度を650℃に上昇させ、3時間保った後で、通電停止、徐冷した。
次に、上記化学反応器の化学反応部を構成する基本単位、及びその組み合わせ構造について具体的に説明する。この化学反応器は、上述したように、イオン伝導相、還元相、作動電極層、酸化層、バリア層、カソード及びアノードから構成される。これらの構成を図3に示す。イオン伝導相、及びこれを挟んで相対するカソード及びアノード及びイオン伝導相に接する還元相から構成される基本単位を配置して化学反応部を構成した。また、この化学反応部には、イオン電導相−還元相の混合層に用いられる結晶粒子の粒径を0.1ミクロン以下に下げて、混合焼成及び通電による電気化学還元処理を経ることにより、イオン電導相と還元相が各々連結し、かつ還元相が再結晶化のために数10nm以下の粒子としてイオン電導相との界面に広がって連なり、更に還元相が数〜数10nmの空隙を挟在する態様の樹枝状構造とすることで、数10nmの樹枝状構造の界面に反応場を形成した。それにより、イオン電導体・電子伝導体のネットワークを構成した。
このように形成した化学反応器による窒素酸化物の処理方法を、次に示す。被処理ガス中に化学反応器を配置し、還元相と酸化相に白金線をリード線として固定し、直流電源に接続、直流電圧を印加して電流を流した。被処理ガスとして、一酸化窒素1000ppm、酸素2%、ヘリウムバランスのモデル燃焼排ガスを流量50ml/minで流した。化学反応器への流入前後における被処理ガス中の窒素酸化物濃度を化学発光式NOx計で測定し、窒素及び酸素濃度をガスクロマトグラフィーで測定した。窒素酸化物の減少量から、窒素酸化物の浄化率を求め、浄化率が50%となるときの電流密度及び消費電力を測定した。
測定開始時に、化学反応器を反応温度350℃に加熱し、化学反応部に60分間通電を行った。その際、電流量の増加と共に窒素酸化物の浄化率は向上し、電流密度40mA/cm2 、消費電力60mW/cm2 の時に窒素酸化物は約50%に減少した。
この化学反応器に対して、更に、通電を中止して、そのまま窒素酸化物の分解率の測定を継続したところ、通電停止直後に窒素酸化物の分解率が約5%低下したものの、その後は、漸減傾向を示し、合計200時間以上の間、通電を行わずとも、連続的な浄化反応を示し、200時間後の浄化効率の低下はごく僅かであった(5%以下)。この結果、合計200時間における窒素酸化物の浄化反応に必要とした電力量は、連続通電の場合に比べて、本発明の場合は、少なくとも約180分の1に減少することが確認された。
実施例3と同様の化学反応器を2個作製し、排ガス流路の上流側及び下流側に直列で設置した。各々を交互に600℃及び350℃となるよう運転し、600℃で運転する際にセルに通電(パルス通電及び連続通電)を行った。
350℃で運転する際には、通電を行わない状態で、実施例3と同様の条件下において、運転初期の約5%の性能低下を除いては、安定的に、約30%の窒素酸化物浄化が可能であった。600℃で作動する、他方の化学反応器には、消費電力約50mW/cm2 に相当する通電によるエネルギー供給条件下、試験ガスに含まれる窒素酸化物の全量に対し、約45%の分解浄化が行われた。その結果、両化学反応器の作動により、従来の化学反応器1個分のエネルギー消費量で、窒素酸化物を約75%を浄化することが可能であった。これは、従来に比べてエネルギー効率が約5割向上したことを示すものであり、連続運転における有用な化学反応器の運転方法であることが分かった。
更に、本化学反応器の運転方法において、300℃〜400℃の相対的低温条件で作動させる、複数の化学反応器の集合体を構成し、順次、間欠的に短時間の通電を行った。それにより、反応を再活性化し、システム全体としての窒素酸化物の浄化能力を50%以上ほぼ100%まで高め、かつ運転時の電力を相対的高温作動(500℃〜700℃程度)の場合に比較して、数分の1〜数100分の1まで低減させることが可能であることが分かった。
また、複数の化学反応器の配列を並列とした場合にも、各反応器への通電−再活性化を直列の場合と同様に行うことで、更に、大容量の被処理物の分解浄化が可能であることが分かった。
実施例4の場合は、複数の化学反応器の内1つ又は1つ以上を、被処理物である窒素酸化物に酸化処理を行う機能を分担させたものであったが、これを酸化触媒により行うことで、システム全体を構成した。
実施例3と同様の化学反応器構成条件において、同反応器の被処理物流路における上流側に、酸化触媒として、セリア系化合物粉体をハニカムに担持したものを設置し、実施例3と同様の運転条件で、被処理物の窒素酸化物の分解浄化を行った。
ここで、酸化触媒として用いられるものは、本実施例のセリア系化合物に限定されるものではなく、スピネル、ペロブスカイト等のセラミックス及び金属系材料が使用可能である。また、酸化触媒の作動温度が化学反応器の作動温度(例えば、350℃程度)と同様の場合には、添付図3に例示するように、化学反応システムへ組み込むことも可能であった。
この酸化触媒と化学反応器(2系統並列して全体システムを構成)の作動により、消費電力量平均85W/hで70%の窒素酸化物が分解浄化された。
以上詳述したように、本発明は、触媒作用と電気化学作用を行う化学反応器の運転方法に係るものであり、本発明によれば、被処理物質の化学反応を妨害する酸素が過剰に存在する場合においても、少ない消費電力で、高効率かつ連続的に、被処理物質を処理できる化学反応器の運転方法を提供できる。本発明は、例えば、酸素を含む燃焼排出ガスから窒素酸化物を効率的に浄化する化学反応器の運転方法を提供するものとして有用である。本発明では、化学反応器に導入された被処理ガス中の酸素分子を酸素欠損濃集部に、被処理物質を金属相に各々選択的に吸着分解させることで、浄化効率を向上させることができる。それにより、低温(300〜500℃)での浄化が可能となり、消費電力を著しく低減させることが可能となる。本発明により、例えば、酸素を含む燃焼排ガスから窒素酸化物を効率的に300〜500℃の低温で浄化することを可能とする新しい低温作動触媒型電気化学反応器の運転方法を提供することができる。
本発明で使用する化学反応器の化学反応部を構成する「基本単位」を模式的に示す説明図である。 本発明の一実施形態に係る化学反応システムの内、被処理物として窒素酸化物を処理する際に、酸化反応と還元反応を順次行うためのシステム構成及び運転方法を示す模式図である。 本発明の一実施形態に係る化学反応システムの構成例を示す構造図である。

Claims (10)

  1. 被処理物質の化学反応もしくはエネルギー変換反応を行うための化学反応器を運転する方法において、以下の化学反応器:
    (A)遷移金属の微細粒子、酸素欠損濃集部を有するイオン伝導体、及び電子伝導体、を構成要素として、(1)反応場となる遷移金属の微細粒子からなる還元相、(2)被処理物質を反応場に導入するための空間、(3)反応場となるイオン伝導体結晶構造の中に形成された酸素欠損濃集部、(4)イオン伝導体の酸素欠損濃集部に吸着する酸素分子をイオン化するために必要な電子を供給する電子伝導相、及び(5)イオン伝導体の酸素欠損でイオン化された酸素分子を反応系外に搬出するための経路となるイオン伝導相、を基本単位とする化学反応部を形成し、
    (B)それにより、共存する酸素分子に対して被処理物質を酸素分子と別の吸着分解反応サイトにおいて選択的に吸着分解させる機能を付加した化学反応器、
    を使用して、カソードとアノードの間に電流を通電若しくは電界を印加、もしくは化学反応部を還元又は減圧下で熱処理することにより、化学反応部に吸着し、反応を阻害する酸素をイオン化して除去する能力を活性化することを特徴とする化学反応器の運転方法。
  2. 上記化学反応器が、還元相に接するナノメートルスケールの空間を有する請求項1に記載の化学反応器の運転方法。
  3. 上記化学反応器の還元相が、電子伝導体に接するか若しくはナノメートルスケールに近接している請求項1に記載の化学反応器の運転方法。
  4. 上記化学反応器が、被処理物質を、ナノメートルスケールの空間に流入又は拡散させ、イオン伝導体の酸素欠損濃集部に選択的に吸着させ、還元相表面における化学反応を促進させる機能を有する請求項1に記載の化学反応器の運転方法。
  5. 被処理物質に対する化学反応の前に予め、もしくは化学反応と同時に酸化反応を生じせしめる、あるいはこれらの反応プロセスを繰り返すことにより、化学反応部の内の材料を、還元相において行われる化学反応を持続的に進行させるに適した化合物とする請求項1に記載の化学反応器の運転方法。
  6. 被処理物質の化学反応の前に予め、もしくは化学反応と同時に酸化反応を生じせしめ、更に、化学反応を200℃から450℃の温度範囲で行う請求項1に記載の化学反応器の運転方法。
  7. 上記化学反応器を、直列又は並列に複数組み合わせることにより、システム全体の性能を大きく損なうことなく、反応の再活性化を行い、連続的な運転を行う請求項1に記載の化学反応器の運転方法。
  8. 上記被処理物質が、窒素酸化物である請求項1から7のいずれかに記載の化学反応器の運転方法。
  9. 上記化学反応が、窒素酸化物の還元分解である請求項1から7のいずれかに記載の化学反応器の運転方法。
  10. 上記化学反応器として、その化学反応器の被処理物流路における上流側に、酸化触媒を設置して、全体システムを構成した化学反応器を使用する請求項1に記載の化学反応器の運転方法。
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