JP4132893B2 - 化学反応器用電極材料 - Google Patents

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【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、特定の電極層を有する化学反応器に関するものであり、更に詳しくは、被処理物質の化学反応を行うための電気化学セル方式の化学反応器において、元素をイオン化するために電子を供給する経路とイオン化した元素を触媒反応表面から取り除くための経路の構造を最適化した化学反応器であって、例えば、酸素を含む燃焼排ガスから窒素酸化物を少ない消費電力で効率的に浄化することを可能とする化学反応器の構造に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ガソリンエンジンから発生する窒素酸化物の浄化は、現在、三元系触媒が主流となっている。しかし、燃費向上を可能とするリーンバーンエンジンやディーゼルエンジンにおいては、燃焼排ガス中に酸素が過剰に存在するため、三元系触媒表面への酸素の吸着による触媒活性の激減が問題となり、窒素酸化物を浄化することができない。
【0003】
このため、触媒表面から酸素を除去する方法として、炭化水素を間歇的に導入して酸素を反応により系外へ放出することが行われているが、燃料消費が増大する問題が避けられない。
【0004】
一方、酸素イオン伝導性を有する固体電解質膜を用いて、そこへ電流を流すことにより、排ガス中の酸素を触媒表面に吸着させることなく除去することも行われている。触媒反応器として提案されているものとして、電極に両面を挟まれた固体電解質に電圧を印加することにより、表面酸素を除去すると同時に窒素酸化物を酸素と窒素に分解するシステム(電気化学セル方式)が提案されている。
【0005】
ここで、先行文献を提示すると、(1)J.ElectrochemicalSoc.,122,869,(1975)には、酸化スカンジウムで安定化したジルコニアの両面に白金電極を形成し、電圧を印加することにより、窒素酸化物が窒素と酸素に分解することが示されている。また、(2)J.Chem.Soc.Faraday Trans.,91,1995,(1995)には、酸化イットリウムで安定化したジルコニアの両面にパラジウム電極を形成し、電圧を印加することにより、窒素酸化物と炭化水素、酸素の混合ガス中において、窒素酸化物が窒素と酸素に分解することが示されている。
【0006】
しかしながら、上記のような従来の方法では、燃焼排ガス中に過剰の酸素が存在する場合、電極部において、共存している酸素が優先的にイオン化し、固体電解質中を流れるため、窒素酸化物を分解するには多量の電流を流す必要があり、そのために、高電圧の印加が要求され、消費電力が増大するという問題点あり、実用化の上で大きな障害となっていた。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、前記課題を解決するためになされたものであり、本発明者らは、化学反応器において、化学反応を司る部分の下部にイオン伝導体と電子伝導体の混合物よりなる電極層を設置し、化学反応層における、化学反応の活性点を占める酸素に対する電子の供給と、イオン化した酸素を移動除去する過程を効率的に行うことができるように、イオン伝導体と電子伝導体の混合比を最適化することにより少ない消費電力で高効率に被処理物質を処理することができ、所期の目的を達成し得ることを見出し、本発明に到達した。
【0008】
すなわち、本発明は、上記従来技術の問題点を抜本的に解決して、1)酸素をイオン化するために電子を供給する経路とイオン化した酸素が触媒反応表面から取り除くための経路の構造を最適化すること、2)それにより、電気化学セル方式で窒素酸化物を分解する際に必要な電力を減らし、少ない消費電力で高効率に窒素酸化物を浄化すること、等を可能とする新しい化学反応器を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するための本発明は、以下の技術的手段から構成される。
(1)被処理物質の化学反応を行うための化学反応器において、
(a)前記被処理物質の化学反応を進行させる化学反応層、
(b)前記化学反応層に隣接した電極層、
(c)イオン化した酸素を電界の作用により電極層から移動除去させる固体電解質層、及び
(d)酸素イオンから電子を放出させて酸素に戻して系外に放出させるための酸化層、とからなる構造、を有し
前記電極層が、前記化学反応層において前記被処理物質中に含まれる元素をイオン化するために与える電子を伝導する電子伝導相と、前記化学反応によりイオン化した元素を伝導するイオン伝導相とからなること、及び前記イオン伝導相と前記電子伝導相の混合比率におけるイオン伝導相の体積割合が50〜70%であること、を特徴とする化学反応器。
(2)前記電極層が、酸化物又は金属もしくは両者の混合物からなる前記(1)に記載の化学反応器。
(3)イオン伝導相及び電子伝導相を構成するイオン伝導性物質及び電子伝導性物質の粒子が互いに均一に分散されている前記(1)記載の化学反応器。
(4)前記被処理物質が、窒素酸化物であり、前記化学反応層において窒素酸化物を還元して酸素イオンを生成させ、前記電極層中のイオン伝導相において前記酸素イオンを伝導する前記(1)に記載の化学反応器。
【0010】
【発明の実施の形態】
次に、本発明について、更に詳細に説明する。
本発明の好適な一実施の形態としては、本発明は、例えば、窒素酸化物の除光システムに適用される。以下、本発明について、このシステムの構成を中心として説明するが、本発明は、これに制限されるものではない。
本発明に係る被処理物質の化学反応を行うための化学反応器は、前記被処理物質の前記化学反応を進行させる化学反応層、化学反応層中の酸素の除去を行う電極層、イオン化した酸素を電界の作用により電極層から移動除去させる固体電解質層、及び酸素イオンから電子を放出させて酸素に戻して系外に放出させるための酸化層、とからなる。この場合、前記固体電解質層及び酸化層は、各々、電極層とその機能を一体化又は部分的にその機能を付加することにより、その全部又は一部を省略することも可能である。
【0011】
被処理物質の化学反応を行う化学反応層は、好ましくは、被処理物質中に含まれる元素へ電子を供給してイオンを生成させる還元相と、還元相からのイオンを伝導するイオン伝導相とを備えている。好ましくは、被処理物質に酸素が含まれている場合、あるいは反応前もしくは反応により酸素が生成する場合は、化学反応層に被処理物質が到達するまでの経路に、被処理物質中に含まれる酸素の一部又は全部を除去するための酸素低減作用を有する任意の触媒を有することが望ましい。更に好ましくは、前記化学反応層の一部又は全部を被覆することが望ましい。
【0012】
好ましくは、被処理物質は、燃焼排ガス中の窒素酸化物であり、還元相において窒素酸化物を還元して酸素イオンを生成させ、イオン伝導相において酸素イオンを伝導させる。しかし、本発明における被処理物質は、窒素酸化物に限定されるものではなく、適宜の被処理物質が対象とされる。本発明の化学反応器によって、例えば、二酸化炭素を還元して一酸化炭素を生成することができ、メタンから水素と一酸化炭素との混合ガスを生成することができ、あるいは水から水素を生成することができる。したがって、前記化学反応器は、それらの被処理物質に応じて、任意に構成することができる。
【0013】
化学反応器の構造及び形態は、好適には、例えば、管状、平板状、ハニカム状等であることが好ましく、特に、管状、ハニカム状のように、一対の開口を有する貫通孔を一つ又は複数有しており、各貫通孔中に化学反応部が位置していることが好ましい。また、化学反応器の構成を有する、複合粉体等の微小構造体の集合体とすることも、反応効率向上の面からは好ましい。しかし、これらに制限されるものではない。
【0014】
本発明において、化学反応層を構成する還元相は、例えば、多孔質とし、反応の対象とする物質を選択的に吸着することが好ましい。還元相では、被処理物質中に含まれる元素へと電子を供給しイオンを生成させ、生成したイオンをイオン伝導相へ伝達するため、導電性物質からなることが好ましい。また、電子及びイオンの伝達を促進するために、電子伝導性とイオン伝導性の両特性を有する混合伝導性物質からなること、又は、電子伝導性物質とイオン伝導性物質の混合物からなることがより好ましい。還元相は、これらの物質を少なくとも二相以上積層した構造であってもよい。しかし、それらは制限されるものではない。
【0015】
還元相として用いられる導電性物質及びイオン導電性物質は、特に限定されるものではない。導電性物質としては、白金、パラジウム等の貴金属や、酸化ニッケル、酸化コバルト、酸化銅、ランタンマンガナイト、ランタンコバルタイト、ランタンクロマイト等の金属酸化物が用いられる。被処理物質を選択的に吸着するアルカリ土類含有酸化物やセオライト等も還元相として用いられる。前記物質の少なくとも1種類以上を、少なくとも1種類以上のイオン伝導性物質との混合質として用いることも好ましい。イオン伝導性物質としては、イットリア又は酸化スカンジウムで安定化したジルコニアや酸化ガドリニウム又は酸化サマリウムで安定化したセリア、ランタンガレイト等が用いられる。
【0016】
還元相が、前記物質を少なくとも二相以上積層した構造からなることも好ましい。より好ましくは、還元相は、白金等の貴金属からなる導電性物質相と酸化ニッケルとイットリア又は酸化スカンジウムで安定化したジルコニアの混合物相の二相を積層した構造からなる。本発明において、化学反応層を構成するイオン伝導相は、イオン伝導性を有する固体電解質からなる。好ましくは、イオン伝導相は、酸素イオン導電性を有する固体電解質からなる。酸素イオン伝導性を有する固体電解質としては、イットリア又は酸化スカンジウムで安定化したジルコニアや酸化ガドリニウム又は酸化サマリウムで安定化したセリア、ランタンガレイトが挙げられるが、特に限定されるものではない。好ましくは、高い導電性と強度を有し、長期安定性に優れたイットリア又は酸化スカンジウムで安定化したジルコニアが用いられる。
【0017】
次に、本発明において、電極層に用いられる電子伝導性物質としては、例えば、金、銀、白金、パラジウム、ニッケル等の金属、酸化コバルト、酸化ニッケル、酸化銅、ランタンクロマイト、ランタンマンガナイト、ランタンコバルタイト等の金属酸化物が例示される。また、イオン伝導性物質としては、酸素イオン伝導性物質が好ましく用いられる。酸素イオン伝導性物質としては、酸化イットリウム又は酸化スカンジウムで安定化したジルコニア、酸化ガドリニウム又は酸化サマリウムで安定化したセリア、ランタンガレイト等が用いられる。
【0018】
電極層は、上部の化学反応層に対して、酸素のイオン化に必要な電流を供給し、かつイオン化した酸素を下部に隣接する固体電解質層を通じてもしくは直接、系外に放出する機能を果たす必要から、これを構成する電子伝導相は、化学反応器作製時及び作動時の熱的安定性と、イオン伝導性物質と化学反応を起こさないこと、及び高電子伝導性を有することなどの理由から、白金を用いることが好ましい。イオン伝導性物質としては、電気的、化学的な長期安定性に優れた酸化イットリウム又は酸化スカンジウムで安定化したジルコニア、もしくは低抵抗特性を有するサマリウムまたはガドリニウムを加えた酸化セリウムを用いることが好ましい。
【0019】
電極層として用いられる電子伝導性物質とイオン伝導性物質の割合は、電子伝導性物質の体積割合として、30%以上かつ70%以下の割合とすることが、後記する実施例に示されるように、化学反応器により高効率に窒素酸化物の浄化を行うことができ、消費電力を低減できることから好ましい。また、電子伝導性物質の粒子とイオン伝導性物質の粒子は、互いに均一に分散していることが好ましい。電子伝導性物質の割合が30%未満の場合には、電子伝導性物質からなる粒子同士が接触することができず、孤立してしまうこととなり、電子伝導性が低下してしまう。
【0020】
電子伝導性物質の割合が70%を超える場合には、電子伝導性は十分確保できるが、イオン伝導性物質からなる粒子同士は互いに接触することができず孤立してしまうことから、イオン伝導性が低下してしまう。電子伝導性物質の割合が30%以上かつ70%以下であり、かつ互いの粒子が下部カソード中に均一に分散している場合には、電子伝導性物質からなる粒子同士が接触できると同時にイオン伝導性物質からなる粒子同士が接触できることから、電子伝導性、イオン伝導性が共に低下せず、高効率な窒素酸化物の分解が可能となり、それにより、消費電力が低減できることから好ましい。
【0021】
この電子伝導性物質とイオン伝導性物質の比率は、化学反応器の作動条件における各々の電気伝導度により、上述の30−70%の範囲でもより好ましい体積割合が存在する。多くの場合、イオン伝導性物質の体積割合が50%以上の場合に、化学反応器の抵抗が特に低下し、窒素酸化物の浄化に必要な電力を低減させることができる。このことから、イオン伝導性物質の体積割合は、50%以上かつ70%以下であることがより好ましい。
【0022】
電極層の層厚は、化学反応層に電子を供給し、かつイオンを伝導させるためには、スムーズな伝導経路を有することが可能な程度に薄いことが望ましい。このことにより、上述の電子伝導体とイオン伝導体の体積割合は、3次元的なネットワーク形成に適した比率である30−70%から、2次元的なネットワークを形成するために適した比率の50%−50%の近傍がより好ましい。
【0023】
次に、固体電解質層は、上記還元相で用いられるイオン伝導性物質と同様の材質を用いることが可能である。固体電解質は、イオン伝導性を有する物質であれば、いずれでも用いることができる。例えば、酸素イオン伝導性を有する固体電解質としては、酸化イットリウム又は酸化スカンジウムで安定化したジルコニア、酸化ガドリニウム又は酸化サマリウムで安定化したセリア、ランタンガレイト等が例示される。しかし、これらに制限されるものではなく、適宜の材料を用いることができる。化学反応器の作動に必要な電力を低減させる必要から、膜質は緻密でありかつ膜厚は可能な限り薄いことがより好ましい。
【0024】
次に、酸化層は、イオン伝導相からのイオンから電子を放出させるため、導電性物質を含有する。電子及びイオンの伝達を促進するため、電子伝導性とイオン伝導性の両特性を有する混合伝導性物質からなること、又は、電子伝導性物質とイオン伝導性物質の混合物からなることが好ましい。酸化層として用いられる導電性物質及びイオン伝導性物質は、特に限定されるものではない。導電性物質としては、白金、パラジウム等の貴金属や、酸化ニッケル、酸化コバルト、酸化銅、ランタンマンガナイト、ランタンコバルタイト、ランタンクロマイト等の金属酸化物が用いられる。イオン伝導性物質としては、イットリア又は酸化スカンジウムで安定化したジルコニアや酸化ガドリニウム又は酸化サマリウムで安定化したセリア、ランタンガレイトが用いられる。
【0025】
本発明では、前述のように、必要により、酸素低減触媒を形成することができる。酸素低減触媒の形態としては、粉末状、膜状等であってよい。ガスの出入り口を有する容器に粉末を充填することにより、触媒反応層を構成することができる。また、管状、ハニカム状の担体表面に酸化触媒の粉末を担持したり、担体表面に多孔性の膜として酸素低減触媒を形成したものを触媒反応層として用いることができる。より好ましくは、化学反応層を構成する還元相を被覆するように酸素低減触媒を多孔性の膜としたものが触媒反応部として用いられる。被処理物質との接触面積が広いほど触媒反応活性点が増加することから、酸化触媒相の比表面積は広いほど好ましく、酸化触媒粉末や酸化触媒膜を形成する粒子は細かいほど好ましい。
【0026】
本発明の化学反応器は、前記化学反応層と当該化学反応層に隣接した電極層を有することを特徴としているが、前述のように、これらに、固体電解質層、酸化層、及び酸素低減触媒部等を任意に形成し、例えば、電極層と酸化層にリード線を固定し、直流電源に接し、直流電圧を印加して電流を流すように構成することができる。これらの具体的な構成及びそれらの材質は、使用目的に応じて適宜選択し、設計すればよく、それらについては特に制限されるものではない。
また、前述のように、前記固体電解質層及び酸化層は、各々、電極層とその構成及び機能を一体化することが可能であり、それにより、これらの形成を任意に省略することができる。化学反応器は、化学反応器の作動に必要な電力を可能な限り低減させることが求められることから、膜厚を可能な限り薄くすることが重要であるが、上記により、それを実現することができる。
【0027】
【作用】
本発明は、被処理物質の化学反応を行うための化学反応器において、前記被処理物質の前記化学反応を進行させる化学反応層に隣接した電極層を有することを特徴とする化学反応器に係るものである。本発明では、上記電極層を、前記化学反応層において、前記被処理物質中に含まれる元素をイオン化するために、当該化学反応層に与える電子を伝導する機能を有する電子伝導相と、前記化学反応によりイオン化した元素を伝導する機能を有するイオン伝導相とから構成する。これにより、電極層は、前記電子伝導相を介して被処理物質中に含まれる元素へ電子を供給し、前記化学反応層で当該元素をイオン化してイオンを生成させると共に、当該イオンを前記イオン伝導相を介して系外に放出することを高効率に行うことが可能となる。
【0028】
すなわち、この電極層は、前記化学反応層における、化学反応の活性点を占める元素に対する電子の供給と、イオン化した元素を移動除去する過程を効率的に行うことを実現する機能を有する。これにより、化学反応器における内部抵抗を低下させ、少ない消費電力で高効率に被処理物質を処理することが可能となる。このように、本発明は、前記化学反応層において元素をイオン化するための電子を供給する経路と、イオン化した元素を触媒反応表面から取り除くための経路の構造を最適化することにより、電気化学セル方式の化学反応器で、例えば、窒素酸化物を分解する際に必要とされる消費電力を低減化し、少ない消費電力で高効率に窒素酸化物を浄化することができる化学反応器を提供することを可能にしたものである。
【0029】
本発明では、電極層を構成するイオン伝導相及び電子伝導相を構成する成分であるイオン伝導性物質及び電子伝導性物質の体積割合を、後記する実施例に示されるように、30−70%の特定の範囲に設定すること、また、それらの粒子を均一に分散させること、により、化学反応器の内部抵抗が特異的に低下し、例えば、窒素酸化物の浄化に必要とされる電力を顕著に低減させることが可能となる。本発明は、前記化学反応器の電極層において、そのイオン伝導体と電子伝導体の構成を最適化することで化学反応器の内部抵抗を顕著に低下させ、それにより、少ない消費電力で高効率に窒素酸化物を浄化することができることを実証したものであり、電気化学セル方式の化学反応器の実用化を可能にするものとして有用である。
【0030】
【実施例】
次に、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
図1は、本発明の一実施形態に係る化学反応器1の構成図である。電極層3は、化学反応層2と固体電解質層4との間に、両者に接して構成される。固体電解質層4の電極層3に対する側の面には、酸化層5を有する。以下、被処理物質として、窒素酸化物とした場合について具体的に説明する。
実施例1
イオン伝導性を有する固体電解質4として、酸化イットリウムで安定化したジルコニアを用い、その形状は、直径20mm、厚さ0.5mmの円板状とした。電極層3は、白金からなる電子伝導性物質と酸化イットリウムで安定化したジルコニアからなるイオン伝導性物質の混合比を体積比で40:60とした混合粉末に有機溶媒を加え、ペーストを作製し、固体電解質4の片面に面積約1.8cmとなるようにスクリーン印刷した後、1200℃で熱処理することにより形成した。
【0031】
化学反応層2は、酸化ニッケルとニッケルからなる電子伝導性物質と酸化イットリウムで安定化したジルコニアからなるイオン伝導性物質の混合比を体積比で40:60とした混合粉末に有機溶媒を加えペーストを作製し、電極層上に同一面積となるようにスクリーン印刷した後、1500℃で熱処理することにより形成した。
【0032】
酸化層5は、白金からなる電子伝導性物質と酸化イットリウムで安定化したジルコニアからなるイオン伝導性物質の混合比を体積比で60:40とした混合粉末に有機溶媒を加えペーストを作製し、化学反応層2と電極層3を形成した固体電解質4の他方の面に面積約1.8cmとなるようにスクリーン印刷した後、1200℃で熱処理することにより形成し、化学反応器とした。
【0033】
このように形成した本発明に係る化学反応器による窒素酸化物の浄化方法の一例を、次に示す。被処理ガス中に化学反応器を配置し、電極層と酸化層5に白金線をリード線として固定し、直流電源に接続、直流電圧を印加して電流を流した。窒素酸化物の分解、浄化特性の評価は、作動温度600℃から700℃の範囲で行った。
【0034】
被処理ガスとして、一酸化窒素1000ppm、酸素2%を含んだヘリウムバランスのモデル燃焼排ガスを流量50ml/minで流した。モデル燃焼排ガスが化学反応器を通過する前後における被処理ガス中の窒素酸化物濃度を化学発光式NOx計で、窒素及び酸素濃度をガスクロマトグラフィーで測定し、窒素酸化物の減少量から、窒素酸化物の浄化率を算出した。化学反応器を600℃に加熱した際、窒素酸化物浄化率50%を得るのに必要な電力は0.25Wであった。
【0035】
実施例2
電極層の電子伝導性物質とイオン伝導性物質の混合比を体積比で45.0:55.0とした以外は、実施例1と同様に化学反応器を作製した。この化学反応器の窒素酸化物の浄化特性を、実施例1と同様に評価した。その結果、窒素酸化物浄化率50%を得るのに必要な電力は0.21Wであった。
【0036】
実施例3
電極層の電子伝導性物質とイオン伝導性物質の混合比を体積比で31.5:68.5とした以外は、実施例1と同様に化学反応器を作製した。この化学反応器の窒素酸化物の浄化特性を、実施例1と同様に評価した。その結果、窒素酸化物浄化率50%を得るのに必要な電力は0.29Wであった。
【0037】
実施例4(参考実施例)
電極層の電子伝導性物質とイオン伝導性物質の混合比を体積比で67.5:32.5とした以外は、実施例1と同様に化学反応器を作製した。この化学反応器の窒素酸化物の浄化特性を、実施例1と同様に評価した。その結果、窒素酸化物浄化率50%を得るのに必要な電力は0.33Wであった。
【0038】
比較例1
電極層の電子伝導性物質とイオン伝導性物質の混合比を体積比で25.0:75.0とした以外は、実施例1と同様に化学反応器を作製した。この化学反応器の窒素酸化物の浄化特性を、実施例1と同様に評価した。その結果、窒素酸化物浄化率50%を得るのに必要な電力は0.45Wであった。
【0039】
比較例2
電極層の電子伝導性物質とイオン伝導性物質の混合比を体積比で80.0:20.0とした以外は、実施例1と同様に化学反応器を作製した。この化学反応器の窒素酸化物の浄化特性を、実施例1と同様に評価した。その結果、化学反応器の作動電力を0.8Wまで増大させても、窒素酸化物浄化率は35%以下にとどまった。
【0040】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明は、特定の電極層を有する化学反応器及び当該電極層を利用した化学反応システムに係るものであり、本発明によれば、以下のような格別の効果が奏される。
(1)少ない消費電力で高効率に被処理物質を処理できる化学反応器を提供することができる。
(2)電気化学セル方式の化学反応器において、元素をイオン化するための電子を供給する経路とイオン化した元素を触媒反応表面から取り除くための経路の構造を最適化することができる。
(3)電気化学セル方式の化学反応器において、その内部抵抗を十分に低下させることができる。
(4)高効率な窒素酸化物の分解が可能となり消費電力の低減化が可能となる。
(5)化学反応器の内部抵抗を低下させて窒素酸化物の浄化に必要な電力を顕著に低減させることができる。
(6)被処理物質の化学反応を妨害する酸素が過剰に存在する場合においても、高効率に被処理物質を処理できる化学反応器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る化学反応器の構成図である。
【符号の説明】
1 化学反応器
2 化学反応層
3 電極層
4 固体電解質層
5 酸化層

Claims (4)

  1. 被処理物質の化学反応を行うための化学反応器において、
    (1)前記被処理物質の化学反応を進行させる化学反応層、
    (2)前記化学反応層に隣接した電極層、
    (3)イオン化した酸素を電界の作用により電極層から移動除去させる固体電解質層、及び
    (4)酸素イオンから電子を放出させて酸素に戻して系外に放出させるための酸化層、とからなる構造、を有し
    前記電極層が、前記化学反応層において前記被処理物質中に含まれる元素をイオン化するために与える電子を伝導する電子伝導相と、前記化学反応によりイオン化した元素を伝導するイオン伝導相とからなること、及び前記イオン伝導相と前記電子伝導相の混合比率におけるイオン伝導相の体積割合が50〜70%であること、を特徴とする化学反応器。
  2. 前記電極層が、酸化物又は金属もしくは両者の混合物からなる請求項1に記載の化学反応器。
  3. イオン伝導相及び電子伝導相を構成するイオン伝導性物質及び電子伝導性物質の粒子が互いに均一に分散されている請求項1記載の化学反応器。
  4. 前記被処理物質が、窒素酸化物であり、前記化学反応層において窒素酸化物を還元して酸素イオンを生成させ、前記電極層中のイオン伝導相において前記酸素イオンを伝導する請求項1に記載の化学反応器。
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