JP4057823B2 - 窒素酸化物浄化用化学反応器及び窒素酸化物の浄化方法 - Google Patents

窒素酸化物浄化用化学反応器及び窒素酸化物の浄化方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、窒素酸化物の浄化を行う化学反応器に関するものである。更に詳しくは、本発明は、窒素酸化物を浄化する化学反応を妨害する酸素が過剰に存在する燃焼排ガスから窒素酸化物を効率的に浄化する化学反応器、及びその化学反応器を用いた窒素酸化物の浄化方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ガソリンエンジンから発生する窒素酸化物の浄化は、現在、三元系触媒が主流となっている。しかし、燃費向上を可能とするリーンバーンエンジンやディーゼルエンジンにおいては、燃焼排ガス中に酸素が過剰に存在するため、三元系触媒表面への酸素の吸着による触媒活性の激減が問題となり、窒素酸化物を浄化することができない。
【0003】
一方、酸素イオン伝導性を有する固体電解質膜を用いて、そこへ電流を流すことにより、排ガス中の酸素を触媒表面に吸着させることなく除去することも行われている。触媒反応器として提案されているものとして、電極に両面を挟まれた固体電解質に電圧を印加することにより、表面酸素を除去すると同時に窒素酸化物を酸素と窒素に分解するシステムが提案されている。
【0004】
ここで、先行文献を提示すると、(1)J.ElectrochemicalSoc.,122,869,(1975)には、酸化スカンジウムで安定化したジルコニアの両面に白金電極を形成し、電圧を印加することにより、窒素酸化物が窒素と酸素に分解することが示されている。また、(2)J.Chem.Soc.Faraday Trans.,91,1995,(1995)には、酸化イットリウムで安定化したジルコニアの両面にパラジウム電極を形成し、電圧を印加することにより、窒素酸化物と炭化水素、酸素の混合ガス中において、窒素酸化物が窒素と酸素に分解することが示されている。
【0005】
しかしながら、上記のような従来の方法では、燃焼排ガス中に過剰の酸素が存在する場合、電極部において、共存している酸素が優先的にイオン化し、固体電解質中を流れるため、窒素酸化物を分解するには多量の電流を流す必要があり、そのために、高電圧の印加が要求され、消費電力が増大するという問題点あり、実用化の上で大きな障害となっていた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明者らは、上記問題点を解決するために、燃焼排ガス中に過剰の酸素が存在する場合においても、電気化学セルのカソードにおいて、イオン化される酸素量を減少させる技術を開発し、それにより、窒素酸化物の分解に必要な電流量を減らすと同時に、電気化学セルを低抵抗化する技術を開発し、印加電圧を低減させることを技術的課題として研究に着手した。すなわち、本発明の目的は、燃焼排ガス中に過剰の酸素が存在する場合においても、イオン化して電気化学セルを流れる酸素量を減少させることにより、窒素酸化物の分解に必要な電流量を減らし、更に、電気化学セルを低抵抗化させることにより、印加電圧を低減させ、少ない消費電力で高効率に窒素酸化物を浄化できる化学反応器を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するための本発明は、以下の技術的手段から構成される。
(1)窒素酸化物の浄化を行う化学反応器であって、電子伝導性物質とイオン伝導性物質からなる上部カソード(触媒反応部)と下部カソード(極)、酸素イオン伝導性を有する固体電解質、アノード(極)の4層構造からなる電気化学セルから構成され、前記上部カソードを構成する電子伝導性物質とイオン伝導性物質の体積比3:7〜の範囲にることにより、窒素酸化物の浄化率を特異的に向上させ、化学反応器の抵抗の低下と窒素酸化物の浄化に必要な印加電圧を低減させたこと、を特徴とする化学反応器。
)前記上部カソードの電子伝導性物質の粒子とイオン伝導性物質の粒子が互いに均一に分散していることを特徴とする、前記(1)に記載の化学反応器。
)前記上部カソードの電子伝導性物質が酸化ニッケルとニッケルからなり、イオン伝導性物質が酸化イットリウム又は酸化スカンジウムで安定化したジルコニアからなることを特徴とする、前記(1)又は(2)に記載の化学反応器。
)前記下部カソードの電子伝導性物質が白金及びパラジウムのうち少なくとも一つからなり、イオン伝導性物質が酸化イットリウム又は酸化スカンジウムで安定化したジルコニアからなることを特徴とする、前記(1)に記載の化学反応器。
)前記固体電解質が酸化イットリウム又は酸化スカンジウムで安定化したジルコニアからなることを特徴とする、前記(1)に記載の化学反応器。
)前記アノードが電子伝導性物質とイオン伝導性物質からなり、電子伝導性物質とイオン伝導性物質の体積比が3:7〜7:3の範囲にあることを特徴とする、前記(1)に記載の化学反応器。
)前記アノードの電子伝導性物質が白金及びパラジウムのうち少なくとも一つからなり、イオン伝導性物質が酸化イットリウム又は酸化スカンジウムで安定化したジルコニアからなることを特徴とする、前記()に記載の化学反応器。
)前記(1)から()のいずれかに記載の化学反応器により窒素酸化物を浄化する方法であって、前記電気化学セルの下部カソードとアノード間に電圧を印加することにより、上部カソードの外表面部と下部カソード界面近傍部に酸素濃度差を生じさせ、上部カソードの外表面部から下部カソード界面近傍部への酸素移動を起こし、上部カソードで窒素酸化物を浄化することを特徴とする、窒素酸化物の浄化方法。
【0008】
【発明の実施の形態】
次に、本発明について更に詳細に説明する。
本発明は、窒素酸化物の浄化を行うための化学反応器であり、化学反応器を構成する電気化学セルの構成材料に組成上の特徴を有する化学反応器である。本発明は、上記化学反応器における上部カソード(触媒反応部)の構成材料である電子伝導性物質とイオン伝導性物質の組成比を特定の範囲に設定することにより、1)窒素酸化物浄化率が臨界的に向上する、2)それにより、消費電力、印加電圧の大幅な低減化が実現できる、という本発明者らが見いだした新たな知見に基づいてなされたものである。すなわち、本発明においては、前記上部カソードを構成する電子伝導性物質とイオン伝導性物質の体積比として、3:7〜7:3の範囲、より好ましくは3:7〜5:5の範囲を選択することにより、窒素酸化物浄化率が特異的に向上し、かつ消費電力の低減化と、化学反応器の抵抗の低下に伴う印加電圧の低減化が達成される。このように、本発明は、上記化学反応器において、当該化学反応器を構成する電気化学セルの構成材料のうち、前記上部カソード(触媒反応部)の構成材料の組成比として、特定の範囲を選択することにより、窒素酸化物浄化率が特異的に向上するという新たな発見を基礎として開発されるに至ったものである。
【0009】
上部カソードに用いられる電子伝導性物質としては、例えば、金、銀、白金、パラジウム、ニッケル等の金属、酸化コバルト、酸化ニッケル、酸化銅、ランタンクロマイト、ランタンマンガナイト、ランタンコバルタイト等の金属酸化物が用いられる。また、イオン伝導性物質としては、酸素イオン伝導性物質が好ましく用いられる。酸素イオン伝導性物質としては、酸化イットリウム又は酸化スカンジウムで安定化したジルコニア、酸化ガドリニウム又は酸化サマリウムで安定化したセリア、ランタンガレイト等が用いられる。化学反応器の熱処理時における熱的安定性と、イオン伝導性物質と化学反応を起こさないこと、ならびに被処理ガス種である窒素酸化物を高効率に分解できることなどの理由から、酸化ニッケルとニッケルを電子伝導性物質として用いることが好ましい。酸化ニッケルのみを電子伝導性物質として用いてもよいが、酸化ニッケルとニッケルの混合物を電子伝導性物質として用いることは、より高効率に窒素酸化物を分解できることからより好ましい。イオン伝導性物質としては、電気的、化学的な長期安定性に優れた酸化イットリウム又は酸化スカンジウムで安定化したジルコニアを用いることが好ましい。
【0010】
上部カソードとして用いられる電子伝導性物質とイオン伝導性物質の割合は、電子伝導性物質の体積割合として、30%以上かつ70%以下の割合とすることが、後記する実施例に示されるように、化学反応器により高効率に窒素酸化物の浄化を行うことができ、消費電力を低減できることから好ましい。また、電子伝導性物質の粒子とイオン伝導性物質の粒子は互いに均一に分散していることが好ましい。電子伝導性物質の割合が30%未満の場合には、電子伝導性物質からなる粒子同士が接触することができず、孤立してしまうこととなり、電子伝導性が低下してしまう。電子伝導性物質の割合が70%を超える場合には、電子伝導性は十分確保できるが、イオン伝導性物質からなる粒子同士は互いに接触することができず孤立してしまうことから、イオン伝導性が低下してしまう。窒素酸化物を高効率に分解するためには、吸着した窒素酸化物に電子を供給し、酸素原子をイオン化する反応と、イオン化した酸素イオンを吸着部から除去する反応がスムーズに進行する必要がある。しかし、電子伝導性又はイオン伝導性のいずれかが低下している場合には、これらの反応のいずれかが律速となり、高効率な窒素酸化物の分解ができない。電子伝導性物質の割合が30%以上かつ70%以下であり、かつ互いの粒子が下部カソード中に均一に分散している場合には、電子伝導性物質からなる粒子同士が接触できると同時に、イオン伝導性物質からなる粒子同士が接触できることから、電子伝導性、イオン伝導性が共に低下せず、高効率な窒素酸化物の分解が可能となり、消費電力が低減できることから好ましい。電子伝導性物質の体積割合が50%以下の場合には、後記する実施例に示されるように、化学反応器の抵抗が特に低下し、窒素酸化物の浄化に必要な印加電圧を低下させることができる。そのことから、電子伝導性物質の体積割合は、30%以上かつ50%以下であることがより好ましい。
【0011】
下部カソードに用いられる電子伝導性物質としては、例えば、金、銀、白金、パラジウム、ニッケル等の金属、酸化コバルト、酸化ニッケル、酸化銅、ランタンクロマイト、ランタンマンガナイト、ランタンコバルタイト等の金属酸化物が用いられる。また、イオン伝導性物質としては、酸素イオン伝導性物質が好ましく用いられる。酸素イオン伝導性物質としては、酸化イットリウム又は酸化スカンジウムで安定化したジルコニア、酸化ガドリニウム又は酸化サマリウムで安定化したセリア、ランタンガレイト等が用いられる。化学反応器の熱処理時における熱的安定性と、イオン伝導性物質と化学反応を起こさないなどの理由から、白金、パラジウムを電子伝導性物質として用いることが好ましい。イオン伝導性物質としては、電気的、化学的な長期安定性に優れた酸化イットリウム又は酸化スカンジウムで安定化したジルコニアを用いることが好ましい。
【0012】
酸素イオン伝導性を有する固体電解質は、酸素イオン伝導性を有する物質であれば、いずれでも用いることができる。酸素イオン伝導性を有する固体電解質としては、酸化イットリウム又は酸化スカンジウムで安定化したジルコニア、酸化ガドリニム又は酸化サマリウムで安定化したセリア、ランタンガレイト等が挙げられるが、特に限定されるものではない。これらの中で、高い酸素イオン導電性と機械的強度を有し、化学的、電気的な長期安定性に優れた酸化イットリウム又は酸化スカンジウムで安定化したジルコニアが好ましく用いられる。
【0013】
アノードに用いられる電子伝導性物質としては、例えば、金、銀、白金、パラジウム、ニッケル等の金属、酸化コバルト、酸化ニッケル、酸化銅、ランタンクロマイト、ランタンマンガナイト、ランタンコバルタイト等の金属酸化物が用いられる。また、イオン伝導性物質としては、酸素イオン伝導性物質が好ましく用いられる。酸素イオン伝導性物質としては、酸化イットリウム又は酸化スカンジウムで安定化したジルコニア、酸化ガドリニウム又は酸化サマリウムで安定化したセリア、ランタンガレイト等が用いられる。化学反応器の熱処理時における熱的安定性と、イオン伝導性物質と化学反応を起こさないなどの理由から、白金、パラジウムを電子伝導性物質として用いることが好ましい。イオン伝導性物質としては、電気的、化学的な長期安定性に優れた酸化イットリウム又は酸化スカンジウムで安定化したジルコニアを用いることが好ましい。
【0014】
アノードとして用いられる電子伝導性物質とイオン伝導性物質の割合は、電子伝導性物質の体積割合として、30%以上かつ70%以下の割合とすることが、化学反応器の抵抗を低下できることから好ましい。また、電子伝導性物質の粒子とイオン伝導性物質の粒子は互いに均一に分散していることが好ましい。電子伝導性物質の割合が30%未満の場合には、電子伝導性物質からなる粒子同士が接触することができず、孤立してしまうこととなり、外部より供給される電子をアノード全体に均一に供給することができず、電子伝導性が低下し、化学反応器の抵抗が増加してしまう。電子伝導性物質の割合が70%を超える場合には、外部より供給される電子はアノード全体に均一に供給することができるが、イオン伝導性物質からなる粒子同士は互いに接触することができず孤立してしまうことから、窒素酸化物を分解した際に生じる酸素イオンを固体電解質へ均一に供給することができず、イオン伝導性が低下し、化学反応器の抵抗が増加してしまう。電子伝導性物質の割合が30%以上かつ70%以下であり、かつ互いの粒子がアノード中に均一に分散している場合には、電子伝導性物質からなる粒子同士が接触できると同時にイオン伝導性物質からなる粒子同士が接触できることから、電子及び酸素イオン双方がアノード全体に均一に分布することが可能となり、電子伝導性、イオン伝導性が共に低下しないことから好ましい。
【0015】
化学反応器を形成する方法としては、固体電解質を基材として用いた場合には、予め上部カソード、下部カソード、アノードそれぞれを構成する物質を含んだペーストや溶液を調製しておき、個々のペーストを基材上にスクリーン印刷や塗布により成膜し、焼成する方法を用いることができる。平板状の固体電解質基材を用いてスクリーン印刷により化学反応器を形成する場合を例にとると、まず、固体電解質基材上に下部カソードを構成する物質を含んだペーストをスクリーン印刷し、焼成する。次に、上部カソードを構成する物質を含んだペーストを先に形成した下部カソードを被覆するようにスクリーン印刷し、焼成する。最後に、固体電解質基材の他方の面にアノードを構成する物質を含んだペーストをスクリーン印刷、焼成することにより化学反応器を形成することができる。成膜方法は、上記スクリーン印刷や塗布に限られるものではなく、それぞれを構成する物質を含んだ溶液を調製し、ディップコートやスピンコートによって基材上に成膜する方法も用いることができる。他に、PVDやCVDにより成膜する方法も用いることができる。基材として用いることができるのは、固体電解質に限られるものではなく、化学反応器を形成する工程中に破損しない程度の適度な機械的強度を有していれば、上部カソード、下部カソード、アノードを基材として用いることもできる。また、シート成形法により、上部カソード、下部カソード、固体電解質、アノードそれぞれを構成する物質を含んだ各シート成形体を作製し、そのシート成形体を圧着することにより接合、焼成することにより、基材を用いることなく、化学反応器を形成することができる。これらの方法の中で、固体電解質を基材として用い、各構成物質を含んだペーストを調製し、スクリーン印刷や塗布により成膜、焼成する方法が、使用する設備が比較的安価であり、容易に成膜することが可能であることなどから好ましく用いられる。
【0016】
本発明の化学反応器の形態としては、例えば、平板状、円筒状、ハニカム状等が好適なものとして例示される。平板状の場合には、上部カソード、下部カソード、固体電解質、アノードを積層して化学反応器を形成し、上部カソードが排ガスと接触するように配置することで排ガスを浄化することができる。円筒状の場合、管内面が下部カソード、管外面がアノードとなるように化学反応器を形成した場合には、管内部に排ガスを流すように配置することで排ガスを浄化することができる。逆に、管外面が下部カソード、管内面がアノードとなるように化学反応器を形成した場合には、管外部に排ガスを流すように配置するとこで排ガスを浄化することができる。この化学反応器は単独での使用に限られるものではなく、ガスの流れに対し、複数個の化学反応器を直列又は並列、直並列に配置することは、窒素酸化物の分解量を増大させることができることから好ましく用いられる。
【0017】
このようにして作製された化学反応器は、上部カソードが窒素酸化物を含んだ排ガスに接触するように配置し、下部カソードとアノードからそれぞれ取り出したリードを外部電源に接続、直流電圧を印加することにより、上部カソードにおいて窒素酸化物を分解した際に生成する酸素イオンを下部カソード、固体電解質を通してアノードへ移動させ、アノードにおいて酸素分子とすることにより、排ガス中の窒素酸化物を効率的に分解する。上部カソードに直接電圧が印加されているわけではないが、外部電圧により下部カソードから固体電解質へ酸素イオンが移動することにより、上部カソードと下部カソード界面近傍の酸素濃度が低下し、排ガスに接触している上部カソードの外表面部と下部カソード界面近傍部に酸素濃度差が生じるために、この酸素濃度差を補償するように上部カソードの外表面部から下部カソード界面近傍部への酸素イオンの移動が起こり、結果として、上部カソードにおいて、窒素酸化物を分解した際に生成する酸素イオンは、下部カソードから固体電解質、アノードを通り、酸素分子へと変換される。
【0018】
【実施例】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る平板状の化学反応器の構成を示す断面図である。酸素イオン伝導性を有する固体電解質3の一方の面に下部カソード2と上部カソード1を形成し、他方の面にアノード4を形成する。下部カソード2は、固体電解質3と上部カソード1の双方に接するように、固体電解質3と上部カソード1の中間に配置する。図2、3は、円筒状の化学反応器の構成を示す断面図である。図2は、円筒形の酸素イオン伝導性を有する固体電解質3の内周面に下部カソード2と上部カソード1を形成し、外周面にアノード4を形成する。下部カソード2は、固体電解質3と上部カソード1の双方に接するように、固体電解質3と上部カソード1の中間に配置する。図3は、円筒形の酸素イオン伝導性を有する固体電解質3の外周面に下部カソード2と上部カソード1を形成し、内周面にアノード4を形成する。下部カソード2は、固体電解質3と上部カソード1の双方に接するように、固体電解質3と上部カソード1の中間に配置する。平板型、円筒型の何れの化学反応器においても、上部カソードが窒素酸化物を含んだ排ガスに接触するように配置する。下部カソードとアノードからそれぞれリードを取り出し、外部電源に接続し、下部カソード側がマイナス電位、アノード側がプラス電位となるように直流電圧を印加することにより、上部カソードにおいて、窒素酸化物を分解する。
【0019】
実施例1
イオン伝導性を有する固体電解質3として、酸化イットリウムで安定化したジルコニアを用い、その形状は、直径20mm、厚さ0.5mmの円板状とした。下部カソード2は、白金からなる電子伝導性物質と酸化イットリウムで安定化したジルコニアからなるイオン伝導性物質の混合比を体積比で60:40とした混合粉末に、有機溶媒を加え、ペーストを作製し、固体電解質3の片面に面積約1.8cm2 となるようにスクリーン印刷した後、1200℃で熱処理することにより形成した。上部カソード1は、酸化ニッケルとニッケルからなる電子伝導性物質と酸化イットリウムで安定化したジルコニアからなるイオン伝導性物質の混合比を体積比で30.5:69.5とした混合粉末に、有機溶媒を加え、ペーストを作製し、下部カソード2上に下部カソードと同一面積となるようにスクリーン印刷した後、1500℃で熱処理することにより形成した。アノード4は、白金からなる電子伝導性物質と酸化イットリウムで安定化したジルコニアからなるイオン伝導性物質の混合比を体積比で60:40とした混合粉末に、有機溶媒を加え、ペーストを作製し、上部カソード1と下部カソード2を形成した固体電解質3の他方の面に面積約1.8cm2 となるようにスクリーン印刷した後、1200℃で熱処理することにより形成し、化学反応器とした。
【0020】
このように形成した本発明の化学反応器による窒素酸化物の浄化方法を次に示す。被処理ガス中に化学反応器を配置し、下部カソード2とアノード4に白金線をリード線として固定し、直流電源に接続、直流電圧を印加して電流を流した。窒素酸化物の分解、浄化特性の評価は、作動温度600℃から650℃の範囲で行った。被処理ガスとして、一酸化窒素1000ppm、酸素3%を含んだヘリウムバランスのモデル燃焼排ガスを流量50ml/minで流した。モデル燃焼排ガスが化学反応器を通過する前後における被処理ガス中の窒素酸化物濃度を化学発光式NOx計で、窒素及び酸素濃度をガスクロマトグラフィーで測定し、窒素酸化物の減少量から、窒素酸化物の浄化率を算出した。化学反応器を650℃に加熱し、0.4Wの電力を印加した際の窒素酸化物の浄化率と、650℃及び600℃に加熱し、2.25Vの電圧を印加した際の窒素酸化物の浄化率を、表1に示す。
【0021】
実施例2
上部カソード1の電子伝導性物質とイオン伝導性物質の混合比を体積比で35.0:65.0とした以外は、実施例1と同様に化学反応器を作製した。この化学反応器の窒素酸化物の浄化特性を実施例1と同様に評価した結果を、表1に示す。
【0022】
実施例3
上部カソード1の電子伝導性物質とイオン伝導性物質の混合比を体積比で44.6:55.4とした以外は、実施例1と同様に化学反応器を作製した。この化学反応器の窒素酸化物の浄化特性を実施例1と同様に評価した結果を、表1に示す。
【0023】
実施例4(参考実施例)
上部カソード1の電子伝導性物質とイオン伝導性物質の混合比を体積比で55.6:44.4とした以外は、実施例1と同様に化学反応器を作製した。この化学反応器の窒素酸化物の浄化特性を実施例1と同様に評価した結果を、表1に示す。
【0024】
実施例5(参考実施例)
上部カソード1の電子伝導性物質とイオン伝導性物質の混合比を体積比で69.5:30.5とした以外は、実施例1と同様に化学反応器を作製した。この化学反応器の窒素酸化物の浄化特性を実施例1と同様に評価した結果を、表1に示す。
【0025】
実施例6
イオン伝導性を有する固体電解質3として、酸化スカンジウムで安定化したジルコニアを用い、その形状は、直径20mm、厚さ0.5mmの円板状とした。下部カソード2は、白金からなる電子伝導性物質と酸化スカンジウムで安定化したジルコニアからなるイオン伝導性物質の混合比を体積比で60:40とした混合粉末に、有機溶媒を加え、ペーストを作製し、固体電解質3の片面に面積約1.8cm2 となるようにスクリーン印刷した後、1200℃で熱処理することにより形成した。上部カソード1は、酸化ニッケルとニッケルからなる電子伝導性物質と酸化スカンジウムで安定化したジルコニアからなるイオン伝導性物質の混合比を体積比で35.0:65.0とした混合粉末に、有機溶媒を加え、ペーストを作製し、下部カソード2上に下部カソードと同一面積となるようにスクリーン印刷した後、1500℃で熱処理することにより形成した。アノード4は、白金からなる電子伝導性物質と酸化スカンジウムで安定化したジルコニアからなるイオン伝導性物質の混合比を体積比で60:40とした混合粉末に、有機溶媒を加え、ペーストを作製し、上部カソード1と下部カソード2を形成した固体電解質3の他方の面に面積約1.8cm2 となるようにスクリーン印刷した後、1200℃で熱処理することにより形成し、化学反応器とした。この化学反応器の窒素酸化物の浄化特性を実施例1と同様に評価した結果を、表1に示す。
【0026】
比較例1
上部カソード1の電子伝導性物質とイオン伝導性物質の混合比を体積比で26.5:73.5とした以外は、実施例1と同様に化学反応器を作製した。この化学反応器の窒素酸化物の浄化特性を実施例1と同様に評価した結果を、表1に示す。
【0027】
比較例2
上部カソード1の電子伝導性物質とイオン伝導性物質の混合比を体積比で83.6:16.4とした以外は、実施例1と同様に化学反応器を作製した。この化学反応器の窒素酸化物の浄化特性を実施例1と同様に評価した結果を、表1に示す。
【0028】
比較例3
イオン伝導性を有する固体電解質3として、酸化イットリウムで安定化したジルコニアを用い、その形状は、直径20mm、厚さ0.5mmの円板状とした。下部カソード2は、実施例1と同様に形成した。その後、上部カソード1を形成することなく、下部カソード2を形成した固体電解質3の他方の面にアノード4を実施例1と同様に形成し、化学反応器とした。この化学反応器の窒素酸化物の浄化特性を実施例1と同様に評価した結果を、表1に示す。
【0029】
【表1】
Figure 0004057823
【0030】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明は、窒素酸化物の浄化を行う化学反応器に係るものであり、本発明によれば、窒素酸化物の浄化を妨害する酸素が過剰に存在する場合においても、低消費電力、低印加電圧で高効率に窒素酸化物を処理できる化学反応器、及びその化学反応器を用いて高効率に窒素酸化物を浄化する方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係る平板状の化学反応器の断面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る円筒状の化学反応器の断面図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る別の円筒状の化学反応器の断面図である。
【符号の説明】
1 上部カソード
2 下部カソード
3 固体電解質
4 アノード

Claims (8)

  1. 窒素酸化物の浄化を行う化学反応器であって、電子伝導性物質とイオン伝導性物質からなる上部カソード(触媒反応部)と下部カソード(極)、酸素イオン伝導性を有する固体電解質、アノード(極)の4層構造からなる電気化学セルから構成され、前記上部カソードを構成する電子伝導性物質とイオン伝導性物質の体積比3:7〜の範囲にることにより、窒素酸化物の浄化率を特異的に向上させ、化学反応器の抵抗の低下と窒素酸化物の浄化に必要な印加電圧を低減させたこと、を特徴とする化学反応器。
  2. 前記上部カソードの電子伝導性物質の粒子とイオン伝導性物質の粒子が互いに均一に分散していることを特徴とする、請求項1に記載の化学反応器。
  3. 上部カソードの電子伝導性物質が酸化ニッケルとニッケルからなり、イオン伝導性物質が酸化イットリウム又は酸化スカンジウムで安定化したジルコニアからなることを特徴とする、請求項1又は2に記載の化学反応器。
  4. 下部カソードの電子伝導性物質が白金及びパラジウムのうち少なくとも一つからなり、イオン伝導性物質が酸化イットリウム又は酸化スカンジウムで安定化したジルコニアからなることを特徴とする、請求項1に記載の化学反応器。
  5. 固体電解質が酸化イットリウム又は酸化スカンジウムで安定化したジルコニアからなることを特徴とする、請求項1に記載の化学反応器。
  6. アノードが電子伝導性物質とイオン伝導性物質からなり、電子伝導性物質とイオン伝導性物質の体積比が3:7〜7:3の範囲にあることを特徴とする、請求項1に記載の化学反応器。
  7. アノードの電子伝導性物質が白金及びパラジウムのうち少なくとも一つからなり、イオン伝導性物質が酸化イットリウム又は酸化スカンジウムで安定化したジルコニアからなることを特徴とする、請求項に記載の化学反応器。
  8. 請求項1からのいずれかに記載の化学反応器により窒素酸化物を浄化する方法であって、前記電気化学セルの下部カソードとアノード間に電圧を印加することにより、上部カソードの外表面部と下部カソード界面近傍部に酸素濃度差を生じさせ、上部カソードの外表面部から下部カソード界面近傍部への酸素移動を起こし、上部カソードで窒素酸化物を浄化することを特徴とする、窒素酸化物の浄化方法。
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