JP5845602B2 - ガス処理システム - Google Patents

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Description

本発明は、構成元素に水素を含む含水素化合物を電気化学的に分解するガス分解装置と、該分解によって生じた水素分子を分離する水素分離装置とからなるガス処理システムに関する。
排水処理設備や化学工場から排出されるアンモニアガスなどの悪臭ガスや毒性ガスに対しては環境基準が定められており、除害設備を設けてかかる有害ガスを環境基準以下まで除去する除害処理が一般に行われている。例えばアンモニアガスの場合は25ppm以下の作業環境基準が定められており、従来は液化天然ガス(LNG)を用いて燃焼したり触媒を用いて分解したりする除害処理が行われていた。
しかしながら、液化天然ガスを用いる除害処理は、常に液化天然ガスを消費するためランニングコストがかかる上、液化天然ガスの燃焼に伴ってNOやCOが排出されるため、環境問題を考えると好ましい処理方法であるとはいえなかった。また、触媒を用いる除害処理は装置が大掛かりになる上、触媒の定期的な交換やメンテナンスが必要となるため採算が合わないことが多かった。
そこで、筒状の固体電解質の内周面及び外周面にそれぞれカソード及びアノードを備えた筒状のガス分解素子を用い、燃料電池の原理に基づいて当該筒状のガス分解素子の内側に空気を流通させながら外側に除害対象物質であるアンモニアを含むガスを供給することによって、アンモニアを電気化学的に窒素に分解する方法が提案されている(特許文献1)。
特開2010−274213号公報
上記した特許文献1に記載のガス分解素子は、アンモニアをアノードで窒素と水素に分解し、この水素をカソードから電解質中を移動してきた酸素イオンと反応させて水蒸気にするものである。この一連の反応では前者の反応が律速となっており、アノード側からの排出ガスには中間生成物の水素が窒素や水蒸気と共に含まれている。水素は空気と混合して容易に燃焼、爆発する物質であるため、通常この排出ガスはブロワなどで送られてきた空気と混ぜて安全なレベルまで希釈した後、大気に放出することが行われている。
このように、ガス分解素子からの排出ガスにはエネルギー源としての価値がある水素が含まれており、これを回収せずに放出するのはエネルギーの有効活用の点から好ましいものではなかった。本発明はかかる問題に鑑みてなされたものであり、エネルギーを有効活用して結果的にコストを削減することが可能なガス処理システムを提供することを目的としている。
上記目的を達成するため、本発明が提供するガス処理システムは、電解質を挟んで一対の電極を対向させたガス分離素子によって被処理ガスに含まれる含水素化合物を分解するガス分解手段と、このガス分解手段によって生じた水素分子を分離する水素分離手段とからなり、前記水素分離手段は、20〜70%の気孔率を有し且つ肉厚0.2〜5mm、内径1.6〜48mm、及び長さ200〜400mmの大きさを有するシリカガラス製の筒状部材で構成された多孔質支持体と、その表面に積層された0.3nmの無数の気孔群を備えたシリカガラス製の水素分離膜とからなることを特徴としている。
本発明によれば、エネルギー源としての価値がある水素を回収することができるので、これを再利用することにより全体としてのコストを削減することが可能となる。
本発明のガス処理システムの一具体例を示す模式図である。 本発明のガス処理システムに好適に使用されるガス分解装置を示す概略の断面図である。 図2のガス分解素子が有する多孔質金属体に好適に使用されるセルメットの外観図である。 本発明のガス処理システムに好適に使用される水素分離装置を示す概略の断面図である。
以下、本発明のガス処理システムの一具体例を、ガス分解手段及び水素分離手段が図1〜4に示すようなガス分解装置100及び水素分離装置200で構成される場合を例にとって説明する。すなわち、この一具体例のガス処理システムは、ガス分解装置100で被処理ガスに含まれる含水素化合物を電気化学的に分解した後、この分解処理後のガスを水素分離装置200に移送し、ここで当該分解処理後のガスから水素分子を分離して回収するものである。なお、本発明においては、含水素化合物とは、アンモニア、アルデヒド、メタン、プロパン、揮発性有機化合物(VOC)、硫化水素などのような、化合物を構成する元素に水素が含まれている化合物のことを意味している。
先ず、ガス分解装置100について図2を参照しながら説明する。ガス分解装置100は、1本の筒状のガス分解素子10がヒータなどの加熱手段31を備えた筒状のガス分解素子用ハウジング30の内部に収容されている。ガス分解素子10は、筒状の固体電解質11の内周面及び外周面に、それぞれアノードとしての第1極12及びカソードとしての第2極13が積層された構造になっている。これら第1極12と第2極13は、外部回路40を介して互いに接続されている。第1極12の固体電解質11に対向する面とは反対側の面には、触媒作用を有する例えばニッケルやニッケル合金からなる多孔質金属体14が密着して取り付けられている。
固体電解質11の中心軸部分には供給配管16が同心軸状に設けられており、その先端開口部からガス分解素子10の内側に被処理ガスが放出されるようになっている。一方、ガス分解素子10の外側(すなわち、ガス分解素子用ハウジング30内の空間部)は空気などの酸素を含んだガスが流通する構造になっている。かかる構成により、例えば加熱手段31でガス分解素子用ハウジング30内を800℃程度に加熱し、この状態でガス分解素子10の外側に空気を供給しながらガス分解素子10の内側にアンモニアなどの含水素化合物を含む被処理ガスを供給する。これにより、燃料電池の原理に基づいて、極めて効率よく発電を行いながら含水素化合物を分解することが可能となる。
各構成要素についてより具体的に説明すると、ガス分解素子10を構成する固体電解質11は、電解質中で酸素イオン(O2−)を移動させることが可能な酸素イオン伝導体であり、YSZ(イットリウム安定化ジルコニア)、SSZ(スカンジウム安定化ジルコニア)、SDC(サマリウム安定化セリア)、LSGM(ランタンガレート)、GDC(ガドリア安定化セリア)などのセラミックス焼結体によって構成されている。この中では化学的に安定しており且つ機械的な強度も高いのでYSZ焼結体が特に好ましい。
固体電解質11は先端部が封止された円筒形状をしている。固体電解質11の筒状部11aは例えば肉厚1mm、内径20mm、長さ500mm程度の大きさを有している。一方、先端部11bは半球形状をしており、筒状部11aと一体構造になっている。なお、固体電解質11の先端部はかかる構造に限定されるものではなく、固体電解質11の先端部をガス分解素子用ハウジング30の壁面を貫通して外部に露出させ、そこに有底円筒形状のキャップなどの封止部材を嵌合させてもよい。
この先端部11bとは反対側の端部に、有底円筒形状の好ましくはフッ素樹脂からなる管継手17が嵌合している。管継手17の底部中央及び円筒部には、それぞれ開口部17a、17bが設けられている。底部中央にある開口部17aは、供給配管16の端部が嵌合しており、円筒部にある開口部17bは、水素分離装置200に連通する移送配管61が接続している。
かかる構成により、ガス分解素子10をいわゆる片端モジュール構造にすることができ、簡単な構造で被処理ガスとこれを処理した後の処理済ガスとを互いに混ぜることなく1個の管継手17でそれぞれ供給及び排出することが可能となる。また、ガス分解素子10を片側のみで支持することができるので、加熱冷却が繰り返されても構成部材に熱応力がかかりにくくなる。さらに、ガス分解素子10の内側に供給配管16を設けることによって、被処理ガスは供給配管16内を流れる間に加熱されるので、より効率よく被処理ガス中に含まれる含水素化合物を分解させることが可能となる。
固体電解質11の内周面には厚み5〜50μm程度の第1極12が積層されている。第1極12は、第2極13と対向する位置である固体電解質11の筒状部11aにのみ設けてもよいし、図2に示すように、筒状部11aに加えて先端部11bの内側に設けてもよい。
第1極12はアノード(燃料極と称することもある)の役割を担っており、この第1極12において、拡散によって固体電解質11中を移動してきた酸素イオンと、被処理ガスに含まれるアンモニアなどの含水素化合物との電気化学的反応によって含水素化合物の分解が行われる。また、この反応によって生じる電子は、外部回路40を介してカソード(空気極と称することもある)の役割を担う第2極13に移動する。
従って、第1極12は、酸素イオン伝導性を有するYSZ、SSZ、SDC、LSGM、GDCなどのセラミックスの粉体と、導電性及び化学反応の触媒作用を備えた酸化ニッケルなどの金属粒連鎖体とを主構成材とする多孔質焼結体の複合体(サーメット)で形成されているのが好ましい。なお、金属粒連鎖体とは略球状の金属粒が複数個連なったものであり、各金属粒はレーザー回折法で測定したときの平均径Dが5〜500nm程度であることが好ましい。また、金属粒連鎖体の平均長Lは0.5〜1000μm程度であることが好ましい。さらに、これら平均長Lと平均径Dとの比L/Dは3以上であることが好ましい。
供給配管16は、固体電解質11の先端部11b近傍で先端が開口しており、供給配管16の内径は、被処理ガスが供給配管16内を流速0.1m/sec程度で流れるように設計されている。そして、この供給配管16の外周面と第1極12の内周面との間に多孔質金属体14が充填されている。かかる構成により、供給配管16の先端部から排出された被処理ガスは、固体電解質11の先端部11b近傍で折り返して、多孔質金属体14の内部を偏流せずに流れていくことが可能となる。
この供給配管16の材質は、銅、ニッケルなどの金属であってもよいし、ニッケルに鉄、クロム、ニオブ、モリブデンなどを添加したインコネルなどの合金であってもよい。かかる材質で供給配管16を形成することによって、供給配管16の壁面部分でも触媒作用によって含水素化合物の分解を行うことが可能となる。なお、供給配管16は作動時には酸素に触れないので、ステンレスなどの一般的な材質を使用してもよい。また、この一具体例のガス分解素子10では、供給配管16は多孔質金属体14と協働して第1極12の集電体として機能する。そのため、供給配管16の端部には外部回路40に接続する第1引出線18が取り付けられている。
多孔質金属体14は、第1極12及び供給配管16に電気的に接続するように、これら第1極12の内周面と供給配管16の外周面に密着して取り付けられている。より高い導電性を得るため、第1極12と多孔質金属体14との間に例えばニッケル製のメッシュシート(太陽金網製)を介在させてもよい。なお、メッシュシートを介在させる場合は、当該メッシュシートが直接供給配管16にも接するように取り付けるのが好ましい。その取り付け方としては、例えば多孔質金属体14の外周面を覆うようにメッシュシートを円筒形状に成形し、その端部を縮径させて供給配管16の外周面に固着させればよい。
多孔質金属体14は無数の気孔群を備えており、これら無数の気孔群は互いに連通してガスが流通できる通路(連通孔とも称する)を形成している。かかる連通孔を有する多孔質金属体14は、その中をガスが流通する際に大きな圧力損失が生じないように、90〜98%程度の高い気孔率を有しているのが好ましい。このような連通孔を有し且つ高い気孔率を有する多孔質金属体14の例としては、図3に示すような、無数の三角柱状の骨格が三次元に連なって無数の連続した気孔群を備えている住友電気工業株式会社製のセルメット(登録商標)を挙げることができる。なお、図3には孔径や比表面性が異なる3種類のセルメットが示されている。
固体電解質11の外周面には厚み1〜20μm程度の第2極13が積層されている。この第2極13はカソードの役割を担っており、ここで酸素などの酸化剤が外部回路40から送られる電子を得て酸素イオンとなる反応が起こる。従って、第2極13の材質は、LSM(ランタンストロンチウムマンガナイト)、LSC(ランタンストロンチウムコバルタイト)、SSC(サマリウムストロンチウムコバルタイト)などの酸素イオン伝導性を有するセラミックスからなる多孔質焼結体で形成するのが好ましい。なお、第2極13の材料には必要に応じてAgなどの触媒作用を備えた金属や、前述した金属粒連鎖体を添加してもよい。
第2極13の外周面には、第2極13の集電体の役割を担う外部集電体15が取り付けられている。この外部集電体15には、例えば、ニッケル製のメッシュシート(太陽金網製)やSUS製のメッシュをAgめっきしたものを使用することができる。これを第2極13の外周面を覆うように巻き付け、端部に外部回路40に接続する第2引出線19を取り付けることによって良好に集電を行うことができる。なお、第2極13での電極反応をより効率よく行うため、外部集電体15に上記メッシュシートに加えてAgを含んだ多孔質材を設けてもよい。この多孔質材は第2極13の表面にAgペーストを塗布後、乾燥(焼結)することによって形成することができる。
上記したガス分解素子10が、管継手17側の一端部を除いてガス分解素子用ハウジング30内に収容されている。ガス分解素子用ハウジング30は対向する壁面にそれぞれ開口部30a、30bを有しており、これら開口部30a、30bを介して空気などの第2極13で還元されるガスの供給と排出がそれぞれ行われる。なお、開口部30a、30bは互いに対向しない位置に設けるのが好ましく、これにより、ガス分解素子用ハウジング30内の空間部に上記還元されるガスをまんべんなく流通させることが可能となる。
ガス分解素子用ハウジング30は断熱構造になっており、さらに電熱ヒータなどの加熱手段31が設けられている。かかる構成により、上記した被処理ガス及び還元されるガスの電極反応を800℃程度の高温で作動させることができる。加熱手段31に電熱ヒータを用いる場合は、その電源にガス分解素子10で発生する電気を使用することができ、これによりガス分解装置100のランニングコストを抑えることが可能となる。
ハウジング30内の空間部には、管継手17を介して供給配管16に連通する予熱配管20が設けられており、供給配管16に送りこまれる被処理ガスをこの予熱配管20で予熱することが可能となる。この予熱配管20の材質も供給配管16と同様のニッケル、インコネルなどを用いることによって被処理ガスに含まれる含水素化合物をある程度分解することが可能となる。
なお、作動時には予熱配管20に酸素などの酸化剤が触れるので、耐熱性と耐腐食性を兼ね備えた材料を用いるのが好ましい。また、図2のガス分解装置100には、1つのハウジング30内に1本のガス分解素子10と1本の予熱配管20を収容した例が示されているが、かかる場合に限定されるものではなく、1つのハウジング30内に複数本のガス分解素子10や複数本の予熱配管20を収容してもかまわない。
次に、図4を参照しながら水素分離装置200について説明する。水素分離装置200は、先端部が封止された円筒状の多孔性支持体51と、その外表面に全面に亘って形成されている水素分離膜52とからなる水素分離素子50を具備している。この水素分離素子50は、ガス分解装置100から移送配管61を介して送られてきた分解処理済のガスを受け入れる円筒状の水素分離素子用ハウジング60の内部に、水素分離膜52の外表面を露出するようにして設置されている。
各構成要素について具体的に説明すると、多孔性支持体51は、例えば肉厚0.2〜5mm、内径1.6〜48mm、長さ200〜400mm程度の大きさを有する筒状部51aと、該筒状部51aと同じ肉厚と内径とを有し、筒状部51aと一体構造で形成されている半球形状の先端部51bとからなる。多孔性支持体51は機械的強度を保ちつつ水素分離膜52を透過する水素分子の透過の妨げとならないように、20〜70%程度の気孔率を有している。
多孔性支持体51は、熱衝撃によって水素分離膜52が破損することがないように、水素分離膜52とほぼ同等の熱膨張係数を有しているのが好ましい。特に、後述するように水素分離膜52をシリカガラスで形成する場合は、これと同等のシリカガラスで多孔性支持体51を形成するのがより好ましい。シリカガラスで多孔性支持体51を形成する場合は、シリカガラスに、希土類元素、4B族元素、Al、Ga、またはこれらの2種以上を添加して耐水蒸気性や機械的強度などを向上させてもよい。
この多孔性支持体51の外表面に全面に亘って好適には0.01〜50μm程度の厚さの水素分離膜52が成膜されている。水素分離膜52は、水素分子を選択して透過させるものであり、その材質にはポリイミドなどの高分子や、パラジウム合金などの金属を使用することができるが、長期に亘って安定して使用できるシリカガラスがより好ましい。
シリカガラスからなる水素分離膜51の場合は、例えば孔径0.3nm程度の無数の気孔群を備えた緻密な構造にすることができ、これにより分子ふるいの原理によってガス分解装置100から送られてきた分解処理済みのガスから水素分子を選択して分離することが可能となる。なお、水素分離膜52をシリカガラス膜にする場合には、上記した多孔性支持体51と同様に、希土類元素、4B族元素、Al、Ga、またはこれらの2種以上を添加してもよい。
水素分離素子50において先端部51b側とは反対側の端部は、有底円筒形状の蓋部53に取り付けられている。この蓋部53の中央には開口部53aが設けられており、分離した水素はここから回収できるようになっている。水素分離素子用ハウジング60の上面は、水素分離素子50の外径よりわずかに大きな径の円形の開口部60aが設けられている。この開口部60aの周縁部は外側に屈曲しており、ここに蓋部53が螺合するようになっている。これにより、水素分離素子50を水素分離素子用ハウジング60に取り外し自在に設置することができる。
水素分離素子用ハウジング60の側面にはガス入口60bとガス出口60cが設けられている。このガス入口60bに、前述した移送配管61が接続しており、ここからガス分解装置100で処理された分解済みガスを受け入れる。一方、ガス出口60cからは水素が取り除かれた後のガスが排出される。このガスは必要に応じて更に処理された後、大気に放出される。
次に、上記説明したガス処理システムの動作について、含水素化合物の例としてアンモニアをとりあげて説明する。先ず、ガス分解素子用ハウジング30内の空間部に空気を流通させながら、加熱手段31である電熱ヒータを起動してガス分解素子用ハウジング30内を600〜900℃、より好ましくは800℃程度の温度条件にする。この状態で、予熱配管20にアンモニアを含む被処理ガスを所定の流量で供給する。
被処理ガスは予熱配管20を流れる間に予熱され、更に前述した配管材料による触媒作用によってある程度分解される。続いて被処理ガスは管継手17を経て供給配管16に送られ、ここで更に加熱及び分解がなされる。これら予熱配管20及び供給配管16で加熱及びある程度の分解がなされた被処理ガスは供給配管16の先端開口部から放出され、固体電解質11の先端部11b近傍で180°方向転換した後、供給配管16の外周面と第1極12の内周面の間に向かう。
供給配管16の外周面と第1極12の内周面の間には多孔質金属体14が充填されているため、被処理ガスは多孔質金属体14の内部に存在する無数の気孔群の壁面に何度も衝突しながら乱流状態となって気孔内を流れていく。多孔質金属体14は触媒作用を有するニッケル又はニッケル合金で形成されているので、第1極12のみならず多孔質金属体14においても下記式1の電気化学反応が起こり、その結果、被処理ガスに含まれるアンモニアが極めて効率よく窒素と水素に分解される。
[式1]
2NH→N+3H
得られた水素は、固体電解質11中を拡散によって移動してきた酸素イオンと反応し、HOと電子を生じる。HOは上記式1で生成される窒素及び未反応の水素と共に管継手17にある開口部17bから排出され、移送配管61を介して水素分離装置200に送られる。一方、電子は、第1極12、多孔質金属体14、供給配管16及び第1引出線18を経て外部回路40に送られた後、第2引出線19及び外部集電体15を経て第2極13に到達する。第2極13では、下記式2に示すように、この電子を加熱手段31によって加熱された空気に含まれる酸素が獲得して酸素イオンが生じる。この酸素イオンが前述した固体電解質11中を第2極13に向かって拡散する酸素イオンとなる。
[式2]
+4e→2O2−
水素分離装置200では、ガス分解装置100から移送されてきたガスが水素分離素子用ハウジング60内の空間部に受け入れられる。水素分離素子用ハウジング60内では水素分離膜52の外表面が露出しており、更に水素分離素子50の内側は図示しない吸引ファンなどのガス吸引装置によって水素分離素子用ハウジング60内の空間部よりも低い圧力が保たれている。この圧力差をドライビングフォースにして該空間部内の水素が水素分離膜52を透過する。水素分離膜52を透過した水素分子は回収水素として蓋部53の開口部53aから回収される。
上記回収水素は、ガス分解装置100の上流側で被処理ガスに混ぜてもよいし、直接又はPSA(Pressure Swing Adsorption)などを介して水素を使用する他のプラントでリサイクルしてもよい。一方、窒素分子や水分子は、水素分離膜52が有する気孔群の孔径よりも大きいので水素分離膜52を透過することができず、よって水素分離素子用ハウジング60のガス出口60cから排出ガスとして排出される。
次に上記説明したガス処理システムの製造方法について説明する。筒状の固体電解質11は材料となるセラミックスの粉体を大気雰囲気の下、1000〜1600℃の温度条件で30〜180分程度保持して焼結させることによって成形することができる。この焼結体の内周面及び外周面にそれぞれ第1極12及び第2極13の材料の粉体を含むスラリーを塗布して焼結することによって、筒状の固体電解質11の内周面及び外周面にそれぞれ第1極12及び第2極13を積層することが可能となる。
これら第1極12及び第2極13の焼結は別々に行ってもよいし、同時に行ってもよい。別々に焼結する場合は、第1極12を先に焼結してから第2極13を焼結してもよいし、その逆でもよい。通常は、焼結させる材料やガス分解素子10の仕様などを考慮して好適な焼結条件が定められる。例えば、第1極12の材料に酸化ニッケルからなる金属粒連鎖体とYSZとを使用し、第2極13にLSMを使用する場合は、Ni−YSZペーストを塗布して乾燥し、1400℃で5時間焼結した後、LSMペーストを塗布して1100℃で5時間焼成するのが好ましく、これらペーストを塗布してから同時に焼結するのがより好ましい。
第1極12の材料に使用する金属粒連鎖体は、特開2004−332047に記載されているような還元析出法によって作製することができる。例えば、ニッケルからなる金属粒連鎖体を作製する場合は、還元剤である3価チタンイオンにニッケルイオンを共存させればよい。なお、金属粒連鎖体を構成する金属粒は、強磁性で且つ所定のサイズ以上であることが望ましい。その理由は、金属粒連鎖体の形成の際、金属粒同士を磁力により結合させ、結合したまま更に金属の析出すなわち金属層の成長を行わせることができるからである。これにより、両金属粒の結合部(ネック)を太く成長させることが可能となる。
上記した第1極12の材料に使用する金属粒連鎖体若しくは金属粒には、酸化処理により表面に厚み1〜100nm、より好ましくは厚み10〜50nmの酸化層を形成するのが好ましい。酸化処理の方法としては、例えば、大気中の500〜700℃の条件下で1〜30分間処理を行う気相法による熱処理酸化処理、標準水素電極基準で3V程度の電位を印加して陽極酸化により表面酸化を行う電解酸化処理、あるいは硝酸などの酸化剤を含んだ溶液に1〜5分程度浸漬させて表面酸化を行う化学酸化処理を挙げることができる。この中では、気相法による熱処理酸化処理又は化学酸化処理が特に好ましい。
第1極12の材料に使用するセラミックスの粉体は、レーザー回折法によって測定した平均径で0.05〜0.5μm程度の粉体を使用するのが好ましい。このセラミックスの粉体を上記酸化処理された金属粒連鎖体に対してvol比で40〜60となるように配合し、これをブチルカルビトールアセテート(BCA)などの溶媒に混ぜることによって上記スラリーが得られる。
第2極13の材料に使用するセラミックスの粉体は、レーザー回折法によって測定した平均径で0.05〜0.5μm程度の粉体を使用するのが好ましく、これをブチルカルビトールアセテート(BCA)などの溶媒に混ぜることによって上記スラリーが得られる。
ニッケル製の多孔質金属体14は、発泡樹脂や不織布の表面にアルミニウム層を成膜し、これを加熱処理して樹脂を消散させることによって作製することができる。具体的に説明すると、先ずウレタン等の樹脂に発泡処理を施した後、この発泡によって生じた無数の気孔に気孔連続化処理を行って無数の連通孔を備えた樹脂とする。気孔連続化処理には、例えば隣接する気孔の間に存在している薄膜を爆発等の加圧処理若しくは化学処理によって除去する除膜方法を挙げることができる。
無数の連通孔を備えた樹脂を作製した後、当該連通孔の壁面に導電性炭素膜を付着させるか、あるいは無電解めっきにより導電薄膜を成膜する。そして、ニッケルイオンを含むめっき液を用いた電気めっきにより上記導電性炭素膜又は導電薄膜の上にニッケルめっき層を形成する。このニッケルめっき層が多孔質金属体14の骨格となる。すなわち、ニッケルめっき層が成膜された樹脂を熱処理することによって樹脂を消散させ、これによりニッケル製の多孔質金属体14が得られる。
なお、多孔質金属体14をニッケル合金で形成する場合は、上記しためっき液にニッケルイオンに加えて所望の金属イオンを添加すればよい。また、耐酸化性をより一層向上させたい場合は、上記ニッケルめっき層に合金化処理を施せばよい。合金化処理の例としては、粉末法、気体法、溶融塩法などの公知の方法を用いてCr、Alなどの金属をニッケルめっき層の表層部のみ若しくは内部にまで拡散させればよい。
このようにして作製した多孔質金属体14を必要に応じて切断、打ち抜きなどにより加工した後、第1極12の内周面と供給配管16の外周面の間に挿入し、外部集電体15、管継手17、第1引出線18及び第2引出線19を取り付けることによってガス分解素子10が得られる。なお、ガス分解素子用ハウジング30や外部回路40の製造や組み立てなど、上記にて説明した以外の製造方法は、一般的な燃料電池の製造方法とほぼ同様であるので記載を省略する。
次に、水素分離素子50の製造方法を、多孔性支持体51及び水素分離膜52の材質が共にシリカガラスの場合を例にとって説明する。先ず、水素分離素子50の基材となる多孔性シリカ層を作製する。多孔性シリカ層は、光ファイバーの製造に使用されるOVD(Outside Vapor Deposition)法に代表されるスート法によって作製することができる。
具体的に説明すると、アルミナ、ガラス、耐火性セラミックス、カーボンなどからなるダミー棒を準備し、このダミー棒を先端が真下若しくは真横を向くように支持する。この状態で軸を中心として回転させながら側方からバーナーで加熱し、四塩化ケイ素などを含む原料ガスを反応させて、ダミー棒の外周面にスス状(スート)のシリカの微粒子を堆積させる。なお、原料ガスを適宜調製してシリカガラスに希土類元素、4B族元素、Al、Ga、またはこれらの2種以上をドープすることができる。
シリカの微粒子を堆積させる際は、バーナー又はダミー棒をダミー棒の軸方向に移動させることにより、ダミー棒の先端部を含むほぼ全面に均質な多孔性シリカ層を形成することができる。また、堆積させる際の温度を例えば1400〜1700程度に制御することによって、多孔性シリカ層の気孔率を調整することができる。なお、多孔性シリカ層の気孔率は、微粒子を堆積させた後の加熱焼結によって調節してもよい。この場合の焼結の温度は、例えば1000〜1400程度とするのが好ましい。
以上の方法によりダミー棒の周りに所定の厚みを有する多孔性シリカ層を形成した後、この多孔性シリカ層からダミー棒を引き抜く。これにより、先端部が封止された円筒形状の多孔性支持体が得られる。次に、この多孔性支持体の外表面に水素分離膜を成膜する。水素分離膜の成膜方法には、シリコンアルコキシドなどの液体中に多孔性支持体を浸漬して表面にゲル体を形成し、これを加熱して焼き固めるゾルゲル法、前述したようなスス状のシリカの微粒子を多孔性支持体の外表面に堆積させるスート法、多孔性支持体の外表面部を加熱等によって緻密化させる表面改質法などがあるが、多孔性支持体と水素分離膜との接合強度が高く、水素分離膜の厚みや気孔の大きさの制御が容易な表面改質法が最も好ましい。
すなわち、この表面改質法は、COレーザー、プラズマアーク、酸水素バーナーなどの高温のエネルギー線を単独若しくは組み合わせて多孔性支持体の外表面に照射することによって多孔性支持体の外表面部を緻密な膜に改質し、これにより例えば孔径0.3nm程度の無数の気孔群を有する水素分離膜を形成するものである。これにより、所定の厚みを有する多孔性支持体51とその外表面に設けられた水素分離膜52とが得られる。なお、上記したダミー棒の引き抜きは、この表面改質法の後に行ってもよい。
以上、本発明のガス処理システムについて、一具体例を示して説明を行ったが、本発明は係る一具体例に限定されるものではなく、本発明の主旨から逸脱しない範囲内で種々の代替例や変形例が考えられる。すなわち、本発明の技術的範囲は、特許請求の範囲及びその均等物に及ぶことが企図されている。
例えば、上記説明では、第1極12及び第2極13がそれぞれアノード及びカソードであったが、この逆でもよい。すなわち、第1極がカソードであり、第2極がアノードであってもよい。この場合は、ガス分解素子の内側に酸素などの酸化剤を含んだガスを流し、ガス分解素子の外側(すなわち、ガス分解素子用ハウジング30内の空間部)に含水素化合物を含む被処理ガスを供給することになる。
また、上記一具体例では固体電解質11が酸素イオンを移動させることが可能な酸素イオン伝導体であったが、固体電解質がBaZrO(バリウムジルコネート)などのプロトン伝導体であってもよい。この場合は、第1極側でアンモニアの分解により窒素とプロトンと電子とが生じ、第2極側で固体電解質中を拡散してきた当該プロトンと酸素と電子との反応によりHOが生じることになる。
また、上記一具体例ではガス分解素子10は円筒形状を有していたが、電解質を挟んで1対の電極を対向させる構造であればかかる形状に限定されるものではなく、平板状の電解質の両面にそれぞれ第1極及び第2極を設け、第1極の固体電解質に接する面とは反対側の面に板状の多孔質金属体を設けたいわゆる平板型のガス分解素子であってもよい。多数の平板型のガス分解素子でガス分解装置を構成する場合は、板状部材の両面にそれぞれ平行な溝群を設けて被処理ガスと酸素を含むガスとを別々に流せるようにしたセパレータを介してガス分解素子同士をスタックさせればよい。
また、含水素化合物の分解効率を高めるため、第1極12の内周面に気孔率20〜80%程度、厚み5〜300μm程度の多孔質層を設け、当該多孔質層を介して多孔質金属体を取り付けてもよい。この多孔質層は、例えば平均粒子径100nm程度の銀ペーストやニッケルペーストを浸漬や噴射により第1極12に塗布した後、乾燥(焼結)することによって形成することができる。この銀ペーストには例えば京都エレックス株式会社製のDD−1240を使用することができる。なお、集電体は使用前に800℃程度の温度で還元するのが好ましい。
また、上記一具体例ではガス分解装置100は燃料電池の原理に基づいて発電しながら含水素化合物を電気化学的に分解するものであったが、これに限定されるものではなく、電気分解装置の原理に基づいて第1極と第2極との間に電力を印加しながら含水素化合物を電気化学的に分解するものであってもよい。
さらに、含水素化合物を含むガスは、排水処理設備や化学工場のみならず、半導体工場、印刷工場、病院、店舗などの様々な工場や設備から排気ガスとして排出されることが考えられる。本発明のガス処理システムはこれら工場や設備に付随する除害装置として使用することが可能である。
10 ガス分解素子
11 固体電解質
12 第1極
13 第2極
14 多孔質金属体
15 外部集電体
16 供給配管
17 管継手
18 第1引出線
19 第2引出線
20 予熱配管
30 ガス分解素子用ハウジング
31 加熱手段
40 外部回路
50 水素分離素子
51 多孔質支持体
52 水素分離膜
53 蓋部
60 水素分離素子用ハウジング
61 移送配管
100 ガス分解装置
200 水素分離装置

Claims (3)

  1. 電解質を挟んで一対の電極を対向させたガス分離素子によって被処理ガスに含まれる含水素化合物を分解するガス分解手段と、該ガス分解手段によって生じた水素分子を分離する水素分離手段とからなり、
    前記水素分離手段は、20〜70%の気孔率を有し且つ肉厚0.2〜5mm、内径1.6〜48mm、及び長さ200〜400mmの大きさを有するシリカガラス製の筒状部材で構成された多孔質支持体と、その表面に積層された0.3nmの無数の気孔群を備えたシリカガラス製の水素分離膜とからなることを特徴とするガス処理システム。
  2. 前記ガス分解素子の一方の電極は、他方の電極に対向している面とは反対側の面に、多孔質金属体が密着して取り付けられていることを特徴とする、請求項1に記載のガス処理システム。
  3. 前記筒状部材は、先端部が封止されており、その反対側において片端支持されていることを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載のガス処理システム。
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