JP5520581B2 - ポリアリレート繊維からなる繊維構造体の染色物およびその製造方法 - Google Patents
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Description
また、本発明の染色物の製造方法によれば、種々の色相で濃厚に染色することが可能になり、しかも染色堅牢度も優れており、従来困難であったポリアリレート繊維の染色が可能になった。また、本発明の製造方法によれば、染料の利用率が高くなり、廃液処理が容易となるので、環境負荷が少なくなるという効果もある。
本発明に用いられるポリアリレート繊維はポリアリレート系溶融異方性ポリマーから構成される。本発明のポリアリレート繊維を構成するポリアリレート系溶融異方性ポリマーとしては、たとえば、下記化学式(1)〜(11)に示す繰り返し単位の組合せからなるポリマーが挙げられる。
本発明において、ポリアリレート繊維からなる繊維構造体としては、ポリアリレート繊維を含む繊維構造体であれば特に限定されず、ポリアリレート繊維のみで構成されている場合とその他繊維を含む場合とを含む。
本発明の繊維構造体の染色物を得るためには、まず、繊維構造体を予めカチオン化剤で処理し、ついで染色を行う必要がある。本発明において、カチオン化剤で処理することを、繊維構造体にカチオン化剤を固定化すると記載する場合がある。カチオン化剤の繊維構造体への固定化とは、実質的に構造体を形成するポリアリレート繊維への固定化である。このとき、カチオン化剤のポリアリレート繊維への固定化は、ポリアリレート繊維構造内部への浸透・拡散による固定化ではなく、繊維表面への吸着現象であると考えている。
ポリアリレート繊維のカチオン化処理は、上記のカチオン化剤と、必要に応じてアルカリ(水酸化ナトリウム、無水炭酸ナトリウム等)を加えた水溶液に、繊維を浸漬して処理することにより行う。ポリアリレート繊維の繊維構造物が、織物やニットであれば、連続加工のパッド・ドライ法が最適である。この場合、絞り率は繊維構造物に対するカチオン化剤の付着量が下記の範囲になるように適宜選択される。また、乾燥は80〜130℃で、1〜4分程度であることが好ましい。
カチオン化処理された繊維は、続いてアニオン基を有する染料により染色される。本発明において用いられるアニオン基を有する染料としては、分子中にスルホン酸基、カルボン酸基などのアニオン基を有する染料、および還元浴中においてアニオン性のハイドロキノン型のフェノラート基を生成する染料であればいずれの染料でもよい。染料分子中にアニオン基を有する染料種族として直接染料、酸性染料、反応染料、建染染料および硫化染料などを例示することができる。直接染料、酸性染料、反応染料については水溶性に寄与するスルホン酸基を有し、これが繊維上のカチオン化剤と相互作用することで、染料が繊維上に固定化されると考えられる。これに対して、建染染料、硫化染料の場合はアルカリ存在下でロイコ体が形成され、ロイコ体のハイドロキノン型のフェノラート基がカチオン化剤と相互作用することにより染料が繊維上に固定化されると考えられる。
上記の染料を用いた染色は公知の染色方法により実施可能である。建染(スレン)染料を用いた連続染色機による染色について説明すると、この装置は未還元染料を布帛に保持させる未還元染料付与槽と染料を布帛に還元固着させる染料固着槽と酸化による発色ゾーンから成り立っている。染色しようとする布帛は、未還元染料付与槽の未還元染料パッダへ導入され、未還元染料分散液中に浸漬させられた後、一対の搾りロールによって余分な液が布帛から搾り出され、布帛の全面に均一に未還元染料分散液が含ませられる。
このようにして染色されたカチオン化処理済のポリアリレート繊維からなる織物のK/S値(染着濃度の代用物性値)は高く、また均一な染色が可能である。さらに染色物の諸堅牢度についても、良好な特性を示す。尚、該染色物の引張強度や伸度等も染色前と同程度の良好な状態を保つ。
(染色濃度の評価)
カラーアイ7000(マクベス社製)を用い、反射率を測定して、下記式(1)に示すクベルカ・ムンク(Kuberka−Munk)の式:
K/S=(R−1)2/2R (1)
(式中、Kは吸光係数、Sは散乱係数、Rは反射率を表す。)
を用いて波長620nmにおけるK/S値を算出した。この値が大きい程染色濃度が高いことを示す。
(洗濯堅牢度) JIS L0844 A−4法 を適用した。
(汗堅牢度) JIS L0848を適用した。
(摩擦堅牢度) JIS L0849を適用した。
[カチオン化処理]
(1)カチオン化剤水溶液の調整
炭酸水素ナトリウムを所定量の1/2量の水により十分に溶解し、次いでカチオン化剤(センカ(株)製、AFI−03)を加えて攪拌する。さらに水を加えて、炭酸水素ナトリウム30g/Lおよびカチオン化剤30g/Lを含む、所定量のカチオン化剤水溶液を調整した。
(2)上記で調整したカチオン化剤水溶液をバックに入れ、被染色物であるポリアリレート繊維[(株)クラレ製「ベクトラン」(登録商標)HT(高強力)タイプ、1670dtex/300f]からなる平織物をパディングし、十分に含浸脱水して乾燥させた。
(3)上記(2)で調整した織物をさらに90℃で湯洗し、次いで水洗して乾燥を行った。
[染色] 建染染料による浸漬染色
Mikethren Green FFB2%owf溶液にカチオン化処理済の前記織物を入れて浴比1:30として、十分に湿潤した後、水酸化ナトリウム(48°Be)5g/Lとハイドロサルファイト6g/Lとを投入して、70℃で20分間維持した。その後、水洗して酸化・ソーピング・湯洗の順に操作し、染色を完了させた。
[カチオン化処理]
実施例1と同じ平織物を用いて実施例1と同様に行った。
[染色] 直接染料による浸漬染色
Kayarus Supra Blue BWL 0.6% owf 溶液に、上記のカチオン化処理を行った織物を入れ(浴比1:30)、十分に湿潤した後、硫酸ナトリウムを溶解して(濃度:3g/L)、95℃で30分間キープした。その後、水洗、フィックス剤[第一工業製薬(株)製、「アミゲン」(商品名)]2%owf溶液で処理した後、湯洗、水洗の順で処理を行い、染色を完了させた。
[カチオン化処理]
実施例1と同じ平織物を用いて実施例1と同様に行った。
[染色] 反応染料による染色
Sumifix Supra Brilliant Red 3BF 150% grain 0.7% owf溶液に上記でカチオン化処理を行った織物を入れ(浴比1:30)、十分に湿潤した後、55℃、30分間キープした。その後、水洗、ソーピング、湯洗、水洗の順に処理を行って染色を完了した。
[カチオン化処理]
実施例1と同じ平織物を用いて実施例1と同様に行った。
[染色] 酸性染料による染色
Nylosan Blue NGFL 0.6% owf溶液に、上記でカチオン化処理を行った織物を入れ(浴比1:30)、十分に湿潤した後、硫酸アンモニウムを溶解して(濃度:2g/L)、95℃で30分間キープした。その後、湯洗、フィックス剤[明成化学工業(株)製、「 ディマフィックスESHO」(商品名)]0.6% owf溶液処理、湯洗、水洗の順に処理を行って、染色を完了させた。
[カチオン化処理]
実施例1と同じ平織物を用いて実施例1と同様に行った。
[染色] 分散型硫化染料による浸漬染色
Kamiyo Vat. Blue R 3.0% owf 水溶液に、上記でカチオン化処理を行った織物を入れ、十分に湿潤した後、水酸化ナトリウムとハイドロサルファイトを投入して、水酸化ナトリウム濃度4g/L、ハドロサルファイト濃度6g/Lになるように調整した後、75℃で30分間キープした。その後、水洗、ソーピング、湯洗の順に処理を行って染色を完了させた。
実施例1と同じ平織物にカチオン化剤による処理を行うことなく、実施例1のスレン染料による染色操作のみを行った。
実施例1と同じ平織物にカチオン化剤による処理を行うことなく、下記の染色を行った。
[染色] 分散染料による浸漬染色
Kiwalon Polyester Red FBE200の2.0%owf溶液に、上記の布を入れ(浴比1:30)、十分湿潤する。さらに、ニッカサンソルトRE-5 0.5g/Lと酢酸0.5cc/Lを入れ、130℃で30分間キープする。冷却後、処理布を取り出し、水洗し還元洗浄・湯洗・水洗の順に操作して染色を完了させた。しかし、本操作により上記の布は染色されなかったので、確認のため、上記の染色残液にポリエステル100%の生地を同浴比になるように入れ、同一染色条件により染色を行ったところ、ポリエステル布は十分に濃い赤色に染色された。
実施例1と同じ平織物にカチオン化剤による処理を行うことなく、下記の染色を行った。
[染色] カチオン染料による浸漬染色
Kayacryl Red GRLの2.0%owfの溶液に、上記の布を入れ(浴比1:30)、十分湿潤する。さらに、助剤として酢酸1cc/Lと無水芒硝1cc/Lを入れ、120℃で30分間キープする。冷却後、処理布を取り出し、水洗し還元洗浄・湯洗・水洗の順に操作して染色を完了させた。しかし、本操作により上記の布は染色されなかったので、確認のため、上記の染色残液にアクリル100%生地を同浴比になるように入れ、同じ条件で染色した結果、アクリル布は十分に濃い赤色に染色された。
Claims (4)
- ポリアリレート繊維からなる繊維構造体の染色物であって、前記ポリアリレート繊維にはカチオン化剤が吸着固定化されており、前記染色物を構成する染料がアニオン基を有する染料であり、前記染色物が前記繊維構造体を染色した染色物であることを特徴とする、アニオン基を有する染料により着色されたポリアリレート繊維からなる繊維構造体の染色物。
- 前記アニオン基を有する染料が、直接染料、反応染料、酸性染料、建染染料および硫化染料からなるグループから選ばれる染料である、請求項1に記載の染色物。
- ポリアリレート繊維からなる繊維構造体をカチオン化剤により予め処理し、次いで、アニオン基を有する染料により染色することを特徴とするポリアリレート繊維からなる繊維構造体の染色物の製造方法。
- 前記アニオン基を有する染料が、直接染料、反応染料、酸性染料、建染染料および硫化染料からなるグループから選ばれる染料である、請求項3に記載の染色物の製造方法。
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