JP5520019B2 - 帯電防止性シート - Google Patents
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Description
しかし、製造現場では、様々な場面で、作業上、摩擦や剥離が頻繁に繰り返され、クリーンルーム内と言えども、驚くほどの頻度と量で、静電気が発生している。中でも、静電気をなかなか逃すことができないプラスチックなどの絶縁体は、帯電しやすい物質であり、例えば、図1(A),(B)に示すようなプラスチック製の押ボタン部材(スイッチ、キーボード、マウス等)、摺動部材(ダイヤル等)、レバー部材などは、作業者が接触(摩擦・剥離)を繰り返すので、静電気が非常に発生しやすく帯電量の多い箇所として注視されている。
ところが、上記先提案のシートを、帯電防止を目的として、前述の静電気が発生しやすく帯電量の多いプラスチック製部材を覆う(カバー)用途にそのまま使用すると、間仕切り用シート(カーテン)や養生シートとして使用した場合と異なり、ゴムやプラスチック等製のいわゆるゴム手袋(以下、「ゴム手袋」と記す)をはめた作業者が常に接触(すなわち、押したり、掴んだり、握ったり)を繰り返す箇所なので、長期使用に伴い、シート表面に印刷された導電性塗料が摩耗により脱落し、ライン汚染などの虞があった。
また、クリーンルーム内における金属製の器具同士の接触(メタルコンタクト)が、金属微粒子(メタルパーティクル)を発生させ、塵埃の一因になることも指摘されていた。
(1)漏洩抵抗値が1×1010〜1×1012Ωであるベースシートと、
その片面に、塗布乾燥後の表面抵抗値が1×104〜9×105Ωである導電性インクを全面もしくは任意の連続模様状に塗布してなる導電性インク層と、
該導電性インク層面側に、1×1010〜1×1012Ωの漏洩抵抗値を有する機能層を設けてなる帯電防止性シートであって、
該帯電防止性シートは、厚みが0.1〜1mmで、漏洩抵抗値が1×10 7 〜1×10 9 Ωであり、摩擦帯電圧が10V以下であることを特徴とする帯電防止性シート。
(2)導電性インクが、カーボン7〜9重量%と塩化ビニル系樹脂9〜11重量%とを有機溶剤に溶解したものであり、
機能層が、塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、導電性可塑剤を10〜60重量部含み、自己粘着性を有することを特徴とする(1)または(2)に記載の帯電防止性シート。
また、後述の実施例における2点間抵抗値についても、漏洩抵抗値と同様に定められた性能測定法により、測定したものである。
したがって、アースの取り方が容易であり、しかも、ゴム手袋をはめた作業者が常に接触を繰り返す箇所のカバー用途、金属製器具同士の接触が繰り返される箇所のカバー用途などに使用しても、クリーンルーム内のライン汚染の虞がなく、メンテナンス等では水や低級アルコールなどの溶剤の使用が可能なものである。
また、フレキシビリティーやタック機能を付与したシートとすることで、曲面に追随できる柔軟性と、様々な形状の部材を密着カバーできる粘着性とに優れるので、クリーンルーム内における上記のカバー用途としても紐や粘着テープ類の代替品用途としてもより最適である。
また、ベースシートの漏洩抵抗値や導電性インクの塗布乾燥後の表面抵抗値が低すぎても、得られるシートの漏洩抵抗値が1×107Ω未満となりやすく、作業者や製品の保護面から問題となる。ベースシートの漏洩抵抗値や導電性インクの塗布乾燥後の表面抵抗値が高すぎても、得られるシートの漏洩抵抗値が1×109Ωを超えやすく、シート表面の静電気を逃がし難いものとなる。
なお、このような性能を有する塩化ビニル系樹脂としては、ポリ塩化ビニル樹脂の他、塩化ビニルと他のモノマー、例えばエチレン、プロピレン、酢酸ビニル、塩化ビニリデン、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、マレイン酸、フマル酸、アクリロニトリル、アルキルビニルエーテルなどとの共重合樹脂、あるいはこれらの樹脂のブレンド物などが挙げられる。
このとき、上記の諸特性や、漏洩抵抗値を保持したままで優れたタック機能(部材自体を密着カバーできる自己粘着性)を得るために、例えば、リン酸エステル系可塑剤、セバチン酸エステル系の可塑剤、トリメット酸エステル系可塑剤、エポキシ系可塑剤など、前述の導電性可塑剤以外の可塑剤を添加してもよい。
着色剤としては、染料や顔料などが挙げられるが、導電性インクの塗布パターンを視認できるように、有色透明としてもよい。
あるいは、上記主体樹脂、導電性物質、必要に応じ配合される添加剤などを混合・混練したものを、例えば、カレンダー法、押出法、インフレーション法などの公知手段によって、所望の厚さのフィルムに成形した後、該フィルムを後述するベースシートの導電性インク塗布面側に加熱融着させ、本発明の帯電防止性シートとすることもできる。
0.05mm未満では、導電性インクの脱落防止機能が十分に得られないことがある。また0.5mmを超えると、インクの脱落防止作用は飽和しコスト高となるばかりか、得られる帯電防止性シートの漏洩抵抗値やフレキシビリティー(曲面に追随できる柔軟性)が劣る傾向がある。
また、前記したように、機能層に適切なフレキシビリティー(曲面に追随できる柔軟性)やタック機能(部材自体を密着カバーできる粘着性)を付与することで、本発明の帯電防止性シートは、例えば、図4(A),(B)に示すように、コードを束ねたり、それらコードや作業用トレイをテーブルなどに固定したり、これまでクリーンルーム内では使用できなかった紐や粘着テープ類の代替品用途にも、非常に適したものとなる。
なお、図2〜4中、sは、本発明の帯電防止性シートを示し、各帯電防止性シートsにおける導電性インクの連続模様(亀甲状、線状、格子状など)は例示に過ぎず、これに限定されるものではない。
それら主体とする樹脂の中では、優れた帯電防止性、フレキシビリティー(曲面に追随できる柔軟性)やタック機能(部材自体を密着カバーできる粘着性)、溶剤使用による繰り返しのメンテナンス性、耐久性、導電性インクとの馴染み性などから、塩化ビニル系樹脂が特に好ましい。なお、この塩化ビニル系樹脂としては、上記した機能層と同様に、ポリ塩化ビニル樹脂の他、塩化ビニルと他のモノマーとの共重合樹脂、あるいはこれらの樹脂のブレンド物などを挙げることができる。
主体とする樹脂が塩化ビニル系樹脂の場合は、前記した機能層と同様に、DOPとDOAとの混合体(DOP:DOA=1:0.3〜1:1.1程度)が特に好適に使用され、その際には、塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、10〜60重量部程度、好ましくは20〜30重量部添加すればよい。
このとき、前記した機能層と同様に、ベースシート中にも、リン酸エステル系可塑剤、セバチン酸エステル系の可塑剤、トリメット酸エステル系可塑剤、エポキシ系可塑剤など、前述の導電性可塑剤以外の可塑剤を添加することで、得られる帯電防止性シートの両面にタック機能(部材自体を密着カバーできる粘着性)を付与してもよい。
着色剤としては、染料や顔料などが挙げられるが、キーボードやマウス等の押ボタン部材のカバー材用途とする場合などは、それら部材が視認できるように、機能層と共に有色透明とすることが好ましい。
ベースシートの厚みについては、得られる帯電防止性シートの厚みにもよるが、前述の機能層と同様、通常0.05〜0.5mm程度が好ましい。
0.05mm未満では、導電性インクを塗布する際などの作業性に不都合が生じたり、得られる帯電防止性シート自体の耐久性が低下する。また0.5mmを超えると、フレキシビリティー(曲面に追随できる柔軟性)が劣り、プラスチック製または金属製の部材などのカバー用途としては使いにくいものとなる。
全面もしくは任意の連続模様状に塗布する方法としては、グラビア法、スクリーン法などの一般的な塗装法を採用すればよい。また、任意の連続模様状とは、例えば、連続の線状(波線なども含む)、格子状、網目状、幾何学的模様などの連続した模様が挙げられ、形状はもとより、インクの線の太さ、インクの線間隔などは特に限定されない。ただし、得られる帯電防止性シートの漏洩抵抗値を低いものに設定したい場合などには、全面に塗布するほうが(任意の連続模様状に塗布するよりも)効果的である。
樹脂バインダーとしては、塩化ビニル系樹脂やアクリル系樹脂などが挙げられる。
有機溶剤としては、酢酸エチレン、キシレン、メチルエチルケトン(MEK)、アノン、トルエン、メチルイソブチルケトン(MIBK)、シクロヘキサノンなどが挙げられ、単独または2種以上を混合して使用することもできる。中でも、入手や廃棄の容易性、コスト面などから、酢酸エチレン:キシレン:MEK:アノン=1〜3:2〜4:2〜4:0.5〜1.5程度の4種混合物を好適に用いることができる。
本発明では、ベースシートの主体樹脂を塩化ビニル系樹脂とした場合、塗布乾燥後の表面抵抗値に加えて、塗布の容易性などを考慮すると、導電性材料としてカーボンを7〜9重量%、バインダー樹脂として塩化ビニル系樹脂を9〜11重量%、を上記有機溶剤に溶解したものが好ましい。
0.1mm未満では、取扱い性や耐久性に劣る。また1mmを超えると、プラスチック製部材や金属製部材のカバー用途や、紐や粘着テープ類の代替品用途としては、嵩張り感があり、使用しにくくなる。
この漏洩抵抗値が1×109Ωを超えるものでは、IEC61340−5−1/5−2にて要求されている規格を満たせず、帯電防止性シート表面の静電気を確実に逃せずに、シート周辺の製品に静電気障害が起こる可能性がある。また、1×107Ω未満のものでは、導通が良過ぎてしまい、放電し易いので作業者や製品の安全面から問題である。
(使用原料)
・ポリ塩化ビニル:平均重合度1050の塩化ビニル単独重合体
・導電性可塑剤A:新日本理化社製 商品名"サンソサイザーC−1100"
・導電性可塑剤B:積水化学工業社製 商品名"AM−912"
・安定剤:Ba−Zn系複合安定剤
・難燃剤:三酸化アンチモン
この導電性インクの塗布乾燥後の表面抵抗値(塗膜の2点間抵抗値)は、2.1×105Ωであった。
ベースシート1の導電性インク塗布面側に、該インクの塗布乾燥後、導電性インクを塗布していないベースシート1を機能層として加熱融着(熱ラミネート)により設けてなる、厚さが約0.5mmの帯電防止性シートを得た。
ベースシート2の導電性インク塗布面側に、該インクの塗布乾燥後、導電性インクを塗布していないベースシート2を機能層として加熱融着(熱ラミネート)により設けてなる、厚さが約0.5mmの帯電防止性シートを得た。
ベースシート1の導電性インク塗布面側に、該インクの塗布乾燥後、導電性インクを塗布していないベースシート2を、機能層として加熱融着(熱ラミネート)により設けてなる、厚さが約0.5mmの帯電防止性シートを得た。
ベースシート2の導電性インク塗布面側に、該インクの塗布乾燥後、ベースシート2の配合物を、機能層として、押出ラミネート法により設けてなる、厚さが約0.5mmの帯電防止性シートを得た。
前述のポリ塩化ビニル中に、表2に示す漏洩抵抗値を有するように、前述の導電性可塑剤B、安定剤、および難燃剤を適宜配合した塩化ビニル製ベースシート(いずれも厚さが0.25mm)の片面に、シルクスクリーンを使用して亀甲模様状の連続模様となるように、表2に示す塗布乾燥後の表面抵抗値を有する導電性インクを塗布した。
導電性インクの塗布乾燥後、各ベースシートのインク塗布面側に、それぞれのベースシート(導電性インクを塗布していないベースシート)を機能層として加熱融着(熱ラミネート)により設け、比較例1〜4のシート(厚さはいずれも約0.5mm)を得た。
各サンプルついて、1)漏洩抵抗値(Ω)、2)2点間抵抗値(Ω)、3)摩擦耐電圧(V)を下記の方法で測定し、それぞれの結果を表3に示す。
絶縁体である木製テーブルの上に、各サンプルを、ラミネートさせた「機能層」側を下面にして載置し、各サンプルの下面に貼った導通板からアースをとった。
前述のIEC61340−5−1/5−2付属書Aに記載の「A.1 床、作業表面又は保管棚のための抵抗測定法」に定められた性能測定法に準拠して、Prostat社製 商品名“PRS-801 Resistance System”を用いて測定した。
各サンプルを、ラミネートさせた「機能層」側を下面にして載置し、前述のIEC61340−5−1/5−2付属書Aに記載の「A.1 床、作業表面又は保管棚のための抵抗測定法」に定められた性能測定法に準拠して、上記“PRS-801 Resistance System”を用いて測定した。
1.サンプルをピンセットで持ち、イオンブロアーで除電した。
2.除電したサンプルをアースのとれた作業台の上に置き、ニトリルグローブをはめた手で一方向に軽く5回こすった。
3.サンプル(こすった箇所の反対の端部)をステンレス製ピンセットで持ち上げ、非接触の表面電位計(Trek社製 商品名"MODEL 520 ELECTROSTATIC VOLTMETER"/測定電位範囲:0.00〜±19.99Kv、測定精度:10V分解能)にて、アース有りの状態において摩擦耐電圧を測定した。
ベースシート(機能層)自身の漏洩抵抗値は、実施例1が3.0×1010Ω、実施例2および4が2.2×1010Ω、実施例3はベースシート自身が3.0×1010Ωで、機能層自身が2.2×1010Ωであったにも拘わらず、それぞれ得られる帯電防止性シートの内側(ベースシートと機能層の間)に塗布された表面抵抗値2.1×105Ωの導電性インクが導通に寄与し、ベースシートの非導電性インク塗布面の2点間抵抗値が、実施例1では1.2×108Ω、実施例2では9.2×107Ω、実施例3では9.9×107Ω、実施例4では9.2×107Ωの値となった。
このような結果から、本発明の帯電防止性シートは、ベースシートと機能層の間に所望の表面抵抗値を有する導電性インクが存在することにより、ベースシートの非導電性インク塗布面の2点間抵抗値を下げることが出来たので、効率的に帯電防止性能を発揮出来ることがわかった。
即ち、比較例1のシートでは、厚さ方向の導通が良すぎてしまい、放電し易いものになることがわかった。
また、摩擦耐電圧においても、1000V以上であった。即ち、比較例2のシートの表面上に摩擦が加わった場合、発生する静電気を逃がし難い結果であった。
即ち、比較例3のシートでは、厚さ方向の導通が良すぎてしまい、放電し易いものになることがわかった。
即ち、比較例4のシートの表面上に摩擦が加わった場合、発生する静電気を逃がし難い結果であった。
したがって、カーテン用途や養生用途はもとより、押ボタン部材(スイッチ、キーボード、マウス等)、摺動部材(ダイヤル等)、レバー部材、パソコンモニターのフレーム、顕微鏡の周辺部材、などの静電気が非常に発生しやすく帯電量の多い箇所のカバー用途、メタルパーティクル発生の可能性がある箇所のカバー用途、紐や粘着テープ類の代替品用途などとしても、好適に使用され得る。
Claims (2)
- 漏洩抵抗値が1×1010〜1×1012Ωであるベースシートと、
その片面に、塗布乾燥後の表面抵抗値が1×104〜9×105Ωである導電性インクを全面もしくは任意の連続模様状に塗布してなる導電性インク層と、
該導電性インク層面側に、1×1010〜1×1012Ωの漏洩抵抗値を有する機能層を設けてなる帯電防止性シートであって、
該帯電防止性シートは、厚みが0.1〜1mmで、漏洩抵抗値が1×10 7 〜1×10 9 Ωであり、摩擦帯電圧が10V以下であることを特徴とする帯電防止性シート。 - 導電性インクが、カーボン7〜9重量%と塩化ビニル系樹脂9〜11重量%とを有機溶剤に溶解したものであり、
機能層が、塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、導電性可塑剤を10〜60重量部含み、自己粘着性を有することを特徴とする請求項1に記載の帯電防止性シート。
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