従来より、発電機で発電された電力を負荷に供給する電力供給装置が提案されている(例えば、特許文献1、2参照)。このような従来例に係る電力供給装置は、発電機と負荷とを断続するスイッチ素子を備える。
発電機の出力電圧は、図7に示すように、発電機の出力電流に応じて山状に変化する。具体的には、発電機の出力電圧は、発電機の出力電流が所定値以下の場合には、発電機の出力電流が増加するに従って上昇し、発電機の出力電流が所定値より大きい場合には、発電機の出力電流が増加するに従って低下する。
ここで、発電機の出力電流は、スイッチ素子のデューティ比により制御できる。スイッチ素子のデューティ比とは、スイッチ素子がオン状態である期間をオン期間とすると、スイッチ素子のスイッチング周期に対するオン期間の比のことである。
以上より、発電機の出力電圧は、図7に示すように、スイッチ素子のデューティ比に応じて山状に変化する。具体的には、発電機の出力電圧は、スイッチ素子のデューティ比が特定値以下の場合には、スイッチ素子のデューティ比が増加するに従って上昇し、スイッチ素子のデューティ比が特定値より大きい場合には、スイッチ素子のデューティ比が増加するに従って低下する。
そこで、発電機の出力電力を最大にするために、電力供給装置は、上述のスイッチ素子に加えて、発電機の出力電力を測定する出力電力測定部と、スイッチ素子のデューティ比を設定するデューティ比設定部と、デューティ比設定部により設定されたデューティ比でスイッチ素子を制御するスイッチ素子制御部と、を備える。出力電力測定部は、発電機の出力電圧を測定する出力電圧測定部と、発電機の出力電流を測定する出力電流測定部と、を備え、出力電圧測定部により測定された発電機の出力電圧と、出力電流測定部により測定された発電機の出力電流と、を乗算することで、発電機の出力電力を測定する。
以上の従来例に係る電力供給装置は、図8に示すように、出力電力測定部により測定された発電機の出力電力と、デューティ比設定部により設定されたデューティ比と、に基づいて、デューティ比設定部によりスイッチ素子のデューティ比を更新し、更新されたデューティ比でスイッチ素子制御部によりスイッチ素子を制御する。
図8は、従来例に係る電力供給装置におけるデューティ比設定処理を示すフローチャートである。図8に示すデューティ比設定処理では、まず、図7のスイッチ素子のデューティ比が「0」である位置から見た場合に、発電機の出力電圧が山状の波形の頂点の手前(範囲M)または奥(範囲N)のどちらにあるのかを判別する(ステップS11〜S13)。次に、この判別結果に基づいてスイッチ素子のデューティ比を設定する(ステップS15またはステップS16)。
図8に戻って、ステップS11において、発電機の出力電力が増加しているか否かを判別する。具体的には、現在の時刻である時刻tにおいて出力電力測定部により測定した出力電力W(t)から、時刻tより以前の時刻(t−1)において出力電力測定部により測定した出力電力W(t−1)を減算して、減算結果が「0」以上の場合には、発電機の出力電力が増加していると判別し、減算結果が「0」未満の場合には、発電機の出力電力が減少していると判別する。そして、発電機の出力電力が増加していると判別した場合には、ステップS12に移り、発電機の出力電力が減少していると判別した場合には、ステップS13に移る。
ステップS12において、スイッチ素子のデューティ比が増加しているか否かを判別する。具体的には、時刻tにおいてデューティ比設定部により設定したスイッチ素子のデューティ比から、時刻(t−1)においてデューティ比設定部により設定したスイッチ素子のデューティ比を減算して、減算結果が「0」以上の場合には、スイッチ素子のデューティ比が増加していると判別し、減算結果が「0」未満の場合には、スイッチ素子のデューティ比が減少していると判別する。そして、スイッチ素子のデューティ比が増加していると判別した場合には、ステップS14に移り、スイッチ素子のデューティ比が減少していると判別した場合には、ステップS16に移る。
ステップS13において、上述のステップS12と同様に、スイッチ素子のデューティ比が増加しているか否かを判別する。そして、スイッチ素子のデューティ比が増加していると判別した場合には、ステップS16に移り、スイッチ素子のデューティ比が減少していると判別した場合には、ステップS14に移る。
ステップS14において、発電機の出力電圧が、発電機の出力電圧の目標となる目標電圧より低いか否かを判別する。具体的には、目標電圧Vrefから、時刻tにおいて出力電圧測定部により測定した出力電圧V(t)を減算して、減算結果が「0」以上の場合には、低いと判別し、減算結果が「0」未満の場合には、低くないと判別する。そして、低いと判別した場合には、ステップS15に移り、低くないと判別した場合には、ステップS16に移る。
ステップS15において、スイッチ素子のデューティ比を予め定められた所定値だけ増加させた値を、デューティ比設定部によりスイッチ素子のデューティ比として設定し、デューティ比設定処理を終了する。この処理によれば、スイッチ素子のデューティ比が更新され、スイッチ素子のデューティ比が増加する。
ステップS16において、スイッチ素子のデューティ比を予め定められた所定値だけ減少させた値を、デューティ比設定部によりスイッチ素子のデューティ比として設定し、デューティ比設定処理を終了する。この処理によれば、スイッチ素子のデューティ比が更新され、スイッチ素子のデューティ比が減少する。
上述のように、従来例に係る電力供給装置は、スイッチ素子のデューティ比を、発電機の出力電力と、既に設定されたスイッチ素子のデューティ比と、に基づいて設定する。ここで、上述のように、発電機の出力電力を測定する出力電力測定部は、発電機の出力電圧を測定する出力電力測定部と、発電機の出力電流を測定する出力電流測定部と、を備える。このような電力供給装置では、小型化が要請されていた。
上述の課題を鑑み、本発明は、電力供給装置を小型化することを目的とする。
本発明は、上述の課題を解決するために、以下の事項を提案している。
(1)本発明は、発電機で発電された電力を負荷に供給する電力供給装置であって、前記発電機と前記負荷とを断続するスイッチ素子と、前記スイッチ素子の操作量を設定する操作量設定手段と、前記操作量設定手段により設定された操作量に基づいて、前記スイッチ素子を制御するスイッチ素子制御手段と、第1の時刻において前記操作量設定手段により設定された操作量と、前記第1の時刻より以前の第2の時刻において前記操作量設定手段により設定された操作量と、を比較して、前記第2の時刻から前記第1の時刻までの期間における前記操作量の増減を判別する操作量増減判別手段と、前記発電機の出力電圧を測定する出力電圧測定手段と、前記第1の時刻において前記出力電圧測定手段により測定された出力電圧と、前記第2の時刻において前記出力電圧測定手段により測定された出力電圧と、を比較して、前記第2の時刻から前記第1の時刻までの期間における前記出力電圧の増減を判別する出力電圧増減判別手段と、を備え、前記操作量設定手段は、前記操作量増減判別手段による判別結果と、前記出力電圧増減判別手段による判別結果と、に応じて、前記操作量を設定することを特徴とする電力供給装置を提案している。
この発明によれば、発電機で発電された電力を負荷に供給する電力供給装置に、発電機と負荷とを断続するスイッチ素子と、スイッチ素子の操作量を設定する操作量設定手段と、操作量設定手段により設定された操作量に基づいてスイッチ素子を制御するスイッチ素子制御手段と、第2の時刻から第1の時刻までの期間における操作量の増減を判別する操作量増減判別手段と、発電機の出力電圧を測定する出力電圧測定手段と、第2の時刻から第1の時刻までの期間における出力電圧の増減を判別する出力電圧増減判別手段と、を設けた。ここで、操作量増減判別手段は、第2の時刻から第1の時刻までの期間における操作量の増減の判別を、第1の時刻において操作量設定手段により設定された操作量と、第2の時刻において操作量設定手段により設定された操作量と、を比較して行う。また、出力電圧増減判別手段は、第2の時刻から第1の時刻までの期間における出力電圧の増減の判別を、第1の時刻において出力電圧測定手段により測定された出力電圧と、第2の時刻において出力電圧測定手段により測定された出力電圧と、を比較して行うこととした。また、操作量設定手段により、操作量増減判別手段による判別結果と、出力電圧増減判別手段による判別結果と、に応じて、操作量を設定することとした。
このため、スイッチ素子の操作量を、出力電圧測定手段により測定された発電機の出力電圧と、操作量設定手段により設定された操作量と、に基づいて設定できる。これによれば、発電機の出力電流を測定する必要がないので、電力供給装置の構成を簡略化して、電力供給装置を小型化できる。
なお、スイッチ素子の操作量とは、例えば、スイッチ素子のデューティ比や、後述のスイッチ素子をオン状態にする信号の位相のことである。
(2)本発明は、(1)の電力供給装置について、前記操作量設定手段は、前記操作量増減判別手段により前記操作量が増加したと判別され、かつ、前記出力電圧増減判別手段により前記出力電圧が増加したと判別された場合と、前記操作量増減判別手段により前記操作量が減少したと判別され、かつ、前記出力電圧増減判別手段により前記出力電圧が減少したと判別された場合と、には、前記設定する操作量を増加させ、前記操作量増減判別手段により前記操作量が減少したと判別され、かつ、前記出力電圧増減判別手段により前記出力電圧が増加したと判別された場合と、前記操作量増減判別手段により前記操作量が増加したと判別され、かつ、前記出力電圧増減判別手段により前記出力電圧が減少したと判別された場合と、には、前記設定する操作量を減少させることを特徴とする電力供給装置を提案している。
この発明によれば、操作量増減判別手段により操作量が増加したと判別され、かつ、出力電圧増減判別手段により出力電圧が増加したと判別された場合と、操作量増減判別手段により操作量が減少したと判別され、かつ、出力電圧増減判別手段により出力電圧が減少したと判別された場合と、には、操作量設定手段により操作量を増加させることとした。一方、操作量増減判別手段により操作量が減少したと判別され、かつ、出力電圧増減判別手段により出力電圧が増加したと判別された場合と、操作量増減判別手段により操作量が増加したと判別され、かつ、出力電圧増減判別手段により出力電圧が減少したと判別された場合と、には、操作量設定手段により操作量を減少させることとした。
このため、スイッチ素子の操作量に応じて出力電圧が山状に変化する発電機において、発電機の出力電圧が山状の波形の頂点の手前にある場合には、スイッチ素子の操作量が増加し、発電機の出力電圧が山状の波形の頂点の奥にある場合には、スイッチ素子の操作量が減少する。これによれば、上述した効果と同様の効果を奏することができる。
(3)本発明は、(1)または(2)の電力供給装置について、前記操作量設定手段は、前記発電機から前記負荷に供給する電圧の目標である目標電圧と、前記第1の時刻において前記出力電圧測定手段により測定された出力電圧と、を比較し、当該比較結果に応じて、前記設定する操作量の増加値および減少値を決定することを特徴とする電力供給装置を提案している。
この発明によれば、操作量設定手段により、発電機から負荷に供給する電圧の目標となる目標電圧と、第1の時刻において出力電圧測定手段により測定された出力電圧と、を比較し、この比較結果に応じて、設定する操作量の増加値および減少値を決定することとした。
このため、発電機の出力電圧が目標電圧からどれだけ離れているかに応じて、スイッチ素子の操作量の増加値および減少値を決定できる。したがって、例えば、発電機の出力電圧が目標電圧より小さくなるに従って、スイッチ素子の操作量の増加値を大きくし、発電機の出力電圧が目標電圧より大きくなるに従って、スイッチ素子の操作量の減少値を大きくする。これによれば、発電機の出力電圧が目標電圧から大きく離れている場合には、スイッチ素子の操作量の増加値および減少値の絶対値が大きくなり、発電機の出力電圧の変化が大きくなるので、発電機の出力電圧が目標電圧になるまでの時間を短縮できる。また、発電機の出力電圧が目標電圧に近い場合には、スイッチ素子の操作量の増加値および減少値の絶対値が小さくなり、発電機の出力電圧の変化が小さくなるので、発電機の出力電圧が目標電圧から大幅に乖離するのを防止できる。
(4)本発明は、(3)の電力供給装置について、前記操作量設定手段は、前記発電機の回転数に応じて、前記目標電圧を設定することを特徴とする電力供給装置を提案している。
ここで、発電機の出力電圧の最大値は、発電機の回転数に応じて変化する。そこで、この発明によれば、操作量設定手段により、発電機の回転数に応じて、発電機から負荷に供給する電圧の目標となる目標電圧を設定することとした。このため、発電機の回転数に応じて目標電圧を設定することで、発電機の回転数に応じてスイッチ素子の操作量の増加値および減少値を設定でき、発電機で発電された電力を負荷に供給する効率を向上できる。
本発明によれば、電力供給装置の構成を簡略化して、電力供給装置を小型化できる。
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施形態における構成要素は適宜、既存の構成要素などとの置き換えが可能であり、また、他の既存の構成要素との組合せを含む様々なバリエーションが可能である。したがって、以下の実施形態の記載をもって、特許請求の範囲に記載された発明の内容を限定するものではない。
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態に係る電力供給装置1を備える電力供給システムAの回路図である。電力供給システムAは、電力供給装置1、発電機2、および負荷3を備える。
発電機2は、三相交流発電機であり、交流電力を発電する。負荷3は、バッテリであり、供給される直流電力を蓄える。
電力供給装置1は、発電機2および負荷3に接続され、発電機2で発電された交流電力を直流電力に整流して、負荷3に供給する。ここで、便宜上、図1に示すように、電力供給装置1と発電機2との接点を接点IN1、IN2、IN3とし、電力供給装置1と負荷3との接点を接点OUT1、OUT2とする。
図2は、電力供給装置1の回路図である。電力供給装置1は、発電機2で発電された交流電力を直流電力に整流する整流部11と、発電機2と負荷3とを断続するスイッチ素子Qと、スイッチ素子Qを制御する制御部12と、を備える。
スイッチ素子Qは、NチャネルMOSFETで構成され、ドレインには、整流部11を介して発電機2が接続され、ソースには、負荷3が接続され、ゲートには、制御部12が接続される。スイッチ素子Qがオン状態の場合には、整流部11およびオン状態のスイッチ素子Qを介して、発電機2と負荷3とが導通し、発電機2で発電された交流電力が整流部11により整流され、直流電力として負荷3に供給される。一方、スイッチ素子Qがオフ状態の場合には、発電機2と負荷3とが絶縁され、負荷3への直流電力の供給が停止される。
図3は、制御部12の構成を示すブロック図である。制御部12は、スイッチ素子Qの操作量としてのデューティ比を設定するデューティ比設定部121と、デューティ比設定部121により設定されたデューティ比に基づいてスイッチ素子Qを制御するスイッチ素子制御部122と、スイッチ素子Qのデューティ比の増減を判別するデューティ比増減判別部123と、発電機2の出力電圧を測定する出力電圧測定部124と、発電機2の出力電圧の増減を判別する出力電圧増減判別部125と、を備える。
発電機2から出力された交流電圧が整流部11により整流された直流電圧を、発電機2の出力電圧と呼ぶものとすると、制御部12は、発電機2の出力電圧と、スイッチ素子Qのデューティ比と、に応じてスイッチ素子Qのデューティ比を設定し、設定したデューティ比で制御信号をスイッチ素子Qのゲートに供給する。このスイッチ素子Qのデューティ比を設定するデューティ比設定処理について、図4を用いて説明する。
図4は、制御部12によるデューティ比設定処理を示すフローチャートである。図4に示すデューティ比設定処理では、まず、図7のスイッチ素子Qのデューティ比が「0」である位置から見た場合に、発電機2の出力電圧が山状の波形の頂点の手前(範囲M)または奥(範囲N)のどちらにあるのかを判別する(ステップS1〜S3)。次に、この判別結果に基づいてスイッチ素子Qのデューティ比を設定する(ステップS4〜S9)。
図4に戻って、ステップS1において、整流部11の出力電圧の変化量Vdifを算出し、ステップS2に移る。この処理では、出力電圧増減判別部125により、現在の時刻である時刻tにおいて出力電圧測定部124により測定した出力電圧V(t)から、時刻tより以前の時刻(t−1)において出力電圧測定部124により測定した出力電圧V(t−1)を減算し、出力電圧の変化量Vdifとする。出力電圧の変化量Vdifは、時刻(t−1)から時刻tまでの期間に増加していれば、正の値となり、時刻(t−1)から時刻tまでの期間に減少していれば、負の値となる。
ステップS2において、スイッチ素子Qのデューティ比の変化量Ddifを算出し、ステップS3に移る。この処理では、デューティ比増減判別部123により、時刻tにおいてデューティ比設定部121により設定したスイッチ素子Qのデューティ比D(t)から、時刻(t−1)においてデューティ比設定部121により設定したスイッチ素子Qのデューティ比D(t−1)を減算し、スイッチ素子Qのデューティ比の変化量Ddifとする。スイッチ素子Qのデューティ比の変化量Ddifは、時刻(t−1)から時刻tまでの期間に増加していれば、正の値となり、時刻(t−1)から時刻tまでの期間に減少していれば、負の値となる。
ステップS3において、デューティ比設定部121により、出力電圧の変化量Vdifと、スイッチ素子Qのデューティ比の変化量Ddifと、を積算し、積算結果が「0」より大きいか否かを判別する。そして、大きいと判別した場合には、ステップS4に移り、大きくないと判別した場合には、ステップS7に移る。
ここで、出力電圧の変化量Vdifと、スイッチ素子Qのデューティ比の変化量Ddifと、の積算結果が「0」より大きくなるのは、図5に示すように、出力電圧の変化量Vdifが正の値で、かつ、スイッチ素子Qのデューティ比の変化量Ddifが正の値の場合と、出力電圧の変化量Vdifが負の値で、かつ、スイッチ素子Qのデューティ比の変化量Ddifが負の値の場合と、である。ここで、出力電圧の変化量Vdifが正の値で、かつ、スイッチ素子Qのデューティ比の変化量Ddifが正の値の場合には、発電機2の出力電圧とスイッチ素子Qのデューティ比との関係は、図7に示したP1の向きに変化している状態となる。また、出力電圧の変化量Vdifが負の値で、かつ、スイッチ素子Qのデューティ比の変化量Ddifが負の値の場合には、発電機2の出力電圧とスイッチ素子Qのデューティ比との関係は、図7に示したP2の向きに変化している状態となる。以上より、出力電圧の変化量Vdifと、スイッチ素子Qのデューティ比の変化量Ddifと、の積算結果が「0」より大きい場合には、出力電圧は、図7に示した山状の波形の頂点の手前(範囲M)にあると判別できる。
一方、出力電圧の変化量Vdifと、スイッチ素子Qのデューティ比の変化量Ddifと、の積算結果が「0」より大きくなくなるのは、図5に示すように、出力電圧の変化量Vdifが正の値で、かつ、スイッチ素子Qのデューティ比の変化量Ddifが負の値の場合と、出力電圧の変化量Vdifが負の値で、かつ、スイッチ素子Qのデューティ比の変化量Ddifが正の値の場合と、である。ここで、出力電圧の変化量Vdifが正の値で、かつ、スイッチ素子Qのデューティ比の変化量Ddifが負の値の場合には、発電機2の出力電圧とスイッチ素子Qのデューティ比との関係は、図7に示したQ1の向きに変化している状態となる。また、出力電圧の変化量Vdifが負の値で、かつ、スイッチ素子Qのデューティ比の変化量Ddifが正の値の場合には、発電機2の出力電圧とスイッチ素子Qのデューティ比との関係は、図7に示したQ2の向きに変化している状態となる。以上より、出力電圧の変化量Vdifと、スイッチ素子Qのデューティ比の変化量Ddifと、の積算結果が「0」より大きくない場合には、出力電圧は、図7に示した山状の波形の頂点の奥(範囲N)にあると判別できる。
図4に戻って、ステップS4において、デューティ比設定部121により、出力電圧の目標となる目標電圧Vrefから、時刻tにおいて出力電圧測定部124により測定した出力電圧V(t)を減算し、時刻tにおける差分電圧Vdif(t)とし、ステップS5に移る。この処理によれば、現在の出力電圧V(t)が目標電圧Vrefからどれだけ離れているのかを求めることができる。
ステップS5において、デューティ比設定部121により、時刻tにおける差分電圧Vdif(t)を用いて、スイッチ素子Qのデューティ比の補正値ΔDを算出し、ステップS6に移る。この処理では、以下の式(1)により、スイッチ素子Qのデューティ比の補正値ΔDを算出する。なお、式(1)において、K0およびK1のそれぞれは、予め定められた変数である。
ステップS6において、デューティ比設定部121により、ステップS5において算出した補正値ΔDを、時刻tにおいてデューティ比設定部121により設定したスイッチ素子Qのデューティ比D(t)に加算して、スイッチ素子Qのデューティ比として設定し、デューティ比設定処理を終了する。この処理によれば、スイッチ素子Qのデューティ比が更新され、現在の出力電圧V(t)が目標電圧Vrefからどれだけ離れているかに応じて決定される補正値ΔDだけ、スイッチ素子Qのデューティ比が増加する。
ステップS7およびステップS8のそれぞれにおいて、上述のステップS4およびステップS5のそれぞれと同様の処理を行う。
ステップS9において、デューティ比設定部121により、ステップS8において算出した補正値ΔDを、時刻tにおいてデューティ比設定部121により設定したスイッチ素子Qのデューティ比D(t)から減算して、スイッチ素子Qのデューティ比として設定し、デューティ比設定処理を終了する。この処理によれば、スイッチ素子Qのデューティ比が更新され、現在の出力電圧V(t)が目標電圧Vrefからどれだけ離れているかに応じて決定される補正値ΔDだけ、スイッチ素子Qのデューティ比が減少する。
以上の電力供給装置1によれば、以下の効果を奏することができる。
電力供給装置1は、出力電圧測定部124により測定した発電機2の出力電力と、デューティ比設定部121により設定したデューティ比と、に基づいて、図7のスイッチ素子Qのデューティ比が「0」である位置から見た場合に、発電機2の出力電圧が山状の波形の頂点の手前(範囲M)または奥(範囲N)のどちらにあるのかを判別する。そして、この判別結果に基づいて、スイッチ素子Qのデューティ比を設定する。このため、発電機2の出力電流を測定する必要がないので、電力供給装置1の構成を簡略化して、電力供給装置1を小型化できる。
電力供給装置1は、発電機2の出力電圧が目標電圧からどれだけ離れているかに応じて、スイッチ素子Qのデューティ比の増加値および減少値を決定する。したがって、例えば、発電機2の出力電圧が目標電圧より小さくなるに従って、スイッチ素子Qのデューティ比の増加値を大きくし、発電機2の出力電圧が目標電圧より大きくなるに従って、スイッチ素子Qのデューティ比の減少値を大きくする。これによれば、発電機2の出力電圧が目標電圧から大きく離れている場合には、スイッチ素子Qのデューティ比の増加値および減少値の絶対値が大きくなり、発電機2の出力電圧の変化が大きくなるので、発電機2の出力電圧が目標電圧になるまでの時間を短縮できる。また、発電機2の出力電圧が目標電圧に近い場合には、スイッチ素子Qのデューティ比の増加値および減少値の絶対値が小さくなり、発電機2の出力電圧の変化が小さくなるので、発電機2の出力電圧が目標電圧から大幅に乖離するのを防止できる。
<第2実施形態>
図6は、本発明の第2実施形態に係る電力供給装置1Aの回路図である。電力供給装置1Aは、図2に示した本発明の第1実施形態に係る電力供給装置1とは、スイッチ素子Qの代わりに、スイッチ素子Tr1、Tr2、Tr3、Tr4と、トランスTと、整流部13と、を備える点と、制御部12の代わりに制御部12Aを備える点と、が異なる。なお、電力供給装置1Aについて、電力供給装置1と同一構成要件については、同一符号を付し、その説明を省略する。
スイッチ素子Tr1〜Tr4は、NPN型トランジスタで構成され、フルブリッジ回路を構成する。具体的には、スイッチ素子Tr1のコレクタと、スイッチ素子Tr3のコレクタとには、整流部11の第1端が接続され、スイッチ素子Tr2のエミッタと、スイッチ素子Tr4のエミッタとには、整流部11の第2端が接続される。スイッチ素子Tr1のエミッタと、スイッチ素子Tr2のコレクタとには、トランスTの1次巻線T1の一端が接続され、スイッチ素子Tr3のエミッタと、スイッチ素子Tr4のコレクタとには、トランスTの1次巻線T1の他端が接続される。スイッチ素子Tr1〜Tr4のそれぞれのベースには、制御部12Aが接続される。トランスTの2次巻線T2の一端および他端には、整流部13の第1端および第2端がそれぞれ接続される。
ここで、発電機2から出力された交流電圧が整流部11により整流された直流電圧を、発電機2の出力電圧と呼び、スイッチ素子をオン状態にする期間にHレベルとなる信号を、パルスと呼ぶものとする。すると、制御部12Aは、発電機2の出力電圧と、スイッチ素子Tr1のパルスに対するスイッチ素子Tr4のパルスの位相(以降、「第1の位相」と呼ぶ)と、スイッチ素子Tr2のパルスに対するスイッチ素子Tr3のパルスの位相(以降、「第2の位相」と呼ぶ)と、に応じて、スイッチ素子Tr1〜Tr4の操作量としての第1の位相および第2の位相を設定し、設定した位相で制御信号をスイッチ素子Tr1〜Tr4のそれぞれのゲートに供給する。
以上の構成を備える電力供給装置1Aは、発電機2の出力電圧と、第1の位相と、に応じて、第1の位相を新たに設定して、スイッチ素子Tr1とスイッチ素子Tr4との双方がオン状態である期間を更新する。また、発電機2の出力電圧と、第2の位相と、に応じて、第2の位相を新たに設定して、スイッチ素子Tr2とスイッチ素子Tr3との双方がオン状態である期間を更新する。
ここで、図2に示した電力供給装置1では、発電機2の出力電圧は、スイッチ素子Qのデューティ比に応じて、図7に示したように山状に変化すると説明した。ところが、発電機2の出力電圧は、図6のスイッチ素子Tr1とスイッチ素子Tr4との双方がオン状態である期間と、スイッチ素子Tr2とスイッチ素子Tr3との双方がオン状態である期間と、に応じても、図7に示したように山状に変化する。
このため、発電機2の出力電圧と、第1の位相と、第2の位相と、に応じて、スイッチ素子Tr1とスイッチ素子Tr4との双方がオン状態である期間と、スイッチ素子Tr2とスイッチ素子Tr3との双方がオン状態である期間と、を設定する電力供給装置1Aにおいても、電力供給装置1と同様の効果を奏することができる。
本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲内で様々な変形や応用が可能である。
例えば、上述の各実施形態では、発電機2は、三相交流発電機としたが、これに限らず、発電する発電機であればよい。
また、例えば、上述の各実施形態では、負荷3は、バッテリとしたが、これに限らず、電力供給装置1から供給される電力で駆動されるものであればよい。
また、例えば、上述の第1実施形態では、スイッチ素子Qは、NチャネルMOSFETで構成されるものとしたが、これに限らず、例えばIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)で構成されるものとしてもよい。
また、例えば、上述の第1実施形態では、ステップS4およびステップS5、ならびに、ステップS7およびステップS8のように、スイッチ素子Qのデューティ比の補正値ΔDを、現在の出力電圧V(t)が目標電圧Vrefからどれだけ離れているかに応じて設定することとしたが、これに限らない。例えば、スイッチ素子Qのデューティ比の補正値ΔDを、現在の出力電圧V(t)が目標電圧Vrefより小さい場合には、予め定められた正の固定値とし、現在の出力電圧V(t)が目標電圧Vrefより大きい場合には、予め定められた負の固定値としてもよい。
また、例えば、上述の各実施形態において、発電機2の出力電圧は、発電機2の回転数が大きくなるに従って上昇する。そこで、発電機2の回転数に応じて、目標電圧Vrefや、上述の式(1)の変数K0およびK1を設定してもよい。これによれば、発電機2の回転数に応じて、スイッチ素子Qのデューティ比の増加値および減少値を設定できるので、発電機2で発電された電力を負荷3に供給する効率を向上できる。