本発明の重合体粒子とは、平均粒子径が0.1μm〜100μmの範囲であり、粒子径の変動係数が20%以下であり、ベンゾトリアゾール骨格および/またはベンゾフェノン骨格を含む化学構造を含有することを特徴としている。
まず、本発明の重合体粒子について説明する。本発明の重合体粒子とは、ベンゾトリアゾール骨格および/またはベンゾフェノン骨格を含む化学構造を含有するものであれば特に制限されない。重合体粒子が前記構造を含有していれば、耐光性が向上し、また重合体粒子の屈折率を高めやすくなり、光拡散性能が向上する。本発明においては、粒度が揃っていることと、ベンゾトリアゾール骨格および/またはベンゾフェノン骨格を含む化学構造を含有することの2つの条件を満たす重合体粒子が、光拡散性能や溶媒への分散安定性に優れることが見出された。
本発明の重合体粒子においては、ベンゾトリアゾール骨格および/またはベンゾフェノン骨格を含む化学構造が、イオン間相互作用や水素結合やファンデルワールス力等の分子間力に基づく相互作用により重合体粒子中に含有されていてもよく、共有結合を介して重合体粒子に含有されていてもよい。しかし、ベンゾトリアゾール骨格および/またはベンゾフェノン骨格を含む化学構造が共有結合を介して重合体粒子に含有される方が、前記構造がより堅固に重合体粒子に含まれるようになり、前記構造がブリードアウトしにくくなる。その結果、重合体粒子は、耐久性、耐熱性に優れるものとなり、様々な用途に適用できるようになるため、より好ましい。
前記ベンゾトリアゾール骨格としては、2−(2'−ヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール骨格が好ましい。また、前記ベンゾフェノン骨格としては、2−ヒドロキシフェニルベンゾフェノン骨格が好ましい。2−(2'−ヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール骨格や2−ヒドロキシフェニルベンゾフェノン骨格は紫外線吸収能を発現するため、重合体粒子が前記骨格を含有していれば、重合体粒子の耐光性が向上し、また屈折率を高めやすくなり、光拡散性能が向上しやすくなる。
重合体粒子の平均粒子径は、0.1μm以上が好ましく、1μm以上がより好ましく、2μm以上がさらに好ましく、また100μm以下が好ましく、30μm以下がより好ましく、15μm以下がさらに好ましい。重合体粒子の平均粒子径が0.1μm以上であれば、光拡散性能が発現しやすくなり、100μm以下であれば、例えば、重合体粒子を成形体用組成物や塗料組成物に適用する際、重合体のハンドリング性が良好となり、製造効率が向上しやすくなる。
本発明の重合体粒子の粒子径の変動係数は20%以下が好ましく、15%以下がより好ましく、10%以下がさらに好ましい。変動係数が20%以下であれば、粒子径が揃った重合体粒子となるため、光拡散性能や溶媒への分散安定性が向上し、また光拡散特性の制御が容易となる。
重合体粒子の粒子径の変動係数は、下記式により算出される。
変動係数(%)=粒子径の標準偏差/平均粒子径×100
本発明の重合体粒子は、最頻粒子径/平均粒子径の比率(平均粒子径に対する最頻粒子径の比)が0.80以上が好ましく、0.90以上がより好ましく、0.95以上がさらに好ましく、また1.20以下が好ましく、1.10以下がより好ましく、1.05以下がさらに好ましい。最頻粒子径/平均粒子径の比率が0.80〜1.20の範囲にあれば、得られる重合体粒子、および重合体粒子が樹脂に配合された樹脂膜等の樹脂組成物は、光透過性、光拡散性能および光反射性能に優れるものとなりやすくなる。
前記平均粒子径、前記粒子径の標準偏差、前記最頻粒子径は、次の方法により求めることができる。すなわち、ベックマン・コールター株式会社製マルチサイザーIIIコールターカウンターを用いて、体積基準の粒度分布を計測し、得られた体積基準の粒度分布より、平均粒子径と粒子径の標準偏差、前記最頻粒子径を算出する。
重合体粒子は、粒子の凝集がないことが好ましい。また、本発明の重合体粒子は、個々の粒子がほぼ球形の形状を有するものが好ましい。粒子の凝集がなく、個々の粒子がほぼ球形の形状を有している重合体粒子であれば、光拡散性能においてより優れたものとなる。
本発明の重合体粒子としては、例えば、原料重合体粒子(A)、ならびにベンゾトリアゾール骨格を有する化合物(B)(以下、「化合物(B)」と称することがある)および/またはベンゾフェノン骨格を有する化合物(C)(以下、「化合物(C)」と称することがある)とを配合することにより得られるもの、あるいは、重合性単量体(X)、ならびに化合物(B)および/または化合物(C)とを配合することにより得られるものが示される。
さらに、本発明の重合体粒子を得るのに用いられる原料には、架橋性単量体が含まれることが好ましい。架橋性単量体は、原料重合体粒子(A)に含まれてもよく、重合性単量体(X)の少なくとも一部に用いられてもよく、後述する他の重合性単量体(D)の少なくとも一部に用いられてもよい。重合体粒子を得るのに用いられる原料に架橋性単量体が含まれることにより、耐光性が向上しやすくなる。
架橋性単量体としては、エチレン性不飽和基と加水分解性基を有するケイ素化合物、および架橋性ビニル単量体等が示される。架橋性単量体としては、エチレン性不飽和基と加水分解性基を有するケイ素化合物が好ましく、また、架橋性ビニル単量体の中では架橋性(メタ)アクリレート化合物が好ましい。従って、本発明の重合体粒子を得るのに用いられる原料には、エチレン性不飽和基と加水分解性基とを有するケイ素化合物、および/または、架橋性(メタ)アクリレート化合物が含まれることが好ましい。架橋性単量体の具体例については、後で説明する。
重合体粒子の原料に架橋性単量体が含まれる場合、架橋性単量体の含有量は、重合体粒子の原料中、5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましく、15質量%以上がさらに好ましく、また45質量%以下が好ましく、40質量%以下が好ましく、35質量%以下がさらに好ましい。重合体粒子の原料中に架橋性単量体が5質量%以上含まれていれば、耐光性が向上しやすくなる。また、重合体粒子の溶剤に対する耐久性が向上しやすくなり、重合体粒子の塗料組成物等の各種組成物への適用範囲が広がる。一方、重合体粒子の原料中の架橋性単量体含有量が45質量%以下であれば、重合体粒子中に架橋性単量体由来の未反応の二重結合が残存しにくくなり、耐光性が向上しやすくなる。
本発明の重合体粒子としては、粒子径の変動係数が小さく、最頻粒子径/平均粒子径が1に近い重合体粒子が得やすい点で、原料重合体粒子(A)、ならびに化合物(B)および/または化合物(C)とを配合することにより得られるものが好ましい。この際、前記配合により、化合物(B)および/または化合物(C)が原料重合体粒子(A)に吸収されることが好ましい。従って、重合体粒子は、原料重合体粒子(A)に化合物(B)および/または化合物(C)を吸収させることにより得られるものが好ましい。
さらに、重合体粒子としては、原料重合体粒子(A)、ならびに化合物(B)および/または化合物(C)とを配合して、反応させることにより、ベンゾトリアゾール骨格および/またはベンゾフェノン骨格を含む化学構造が重合体粒子に含まれるようになるものが、前記構造がより堅固に重合体粒子に含まれるようになり、重合体粒子を様々な用途に適用できるようになるため、より好ましい。とりわけ、前記反応により、ベンゾトリアゾール骨格および/またはベンゾフェノン骨格を含む化学構造が、共有結合を介して原料重合体粒子(A)と結合するようになることが、さらに好ましい。なお、前記反応は、重合反応であることが好ましく、ラジカル重合反応であることがより好ましい。
従って、本発明の重合体粒子は、原料重合体粒子(A)に、ベンゾトリアゾール骨格を有する化合物(B)および/またはベンゾフェノン骨格を有する化合物(C)を吸収させて、重合反応させることにより得られるものが特に好ましい。
次に、本発明の重合体粒子を得るのに好適に用いられる原料重合体粒子(A)について説明する。
原料重合体粒子(A)としては、平均粒子径が0.1μm〜100μmの範囲であり、粒子径の変動係数が20%以下である重合体粒子が得られるものであれば、特に制限されないが、原料重合体粒子(A)の変動係数が小さい方が、得られる重合体粒子の変動係数も小さくなりやすくなるため好ましい。また、原料重合体粒子(A)の平均粒子径は、100μm未満であることが好ましい。
原料重合体粒子(A)としては、(1)アルコキシシランを加水分解および縮合させることにより得られるポリシロキサン粒子(以下、「原料重合体粒子(A−1)」と称することがある)、(2)乳化重合法により得られる粒子(以下、「原料重合体粒子(A−2)」と称することがある)、および(3)任意の重合法により得られた粒子集合体を分級することにより得られる粒子(以下、「原料重合体粒子(A−3)」と称することがある)が、変動係数を小さくできる点で、好ましい。これらは1種のみを用いても、2種以上を併用してもよい。
本発明の重合体粒子が、原料重合体粒子(A)、ならびに化合物(B)および/または化合物(C)とを配合して、重合反応させることにより得られるものである場合、原料重合体粒子(A)は重合性基を有するものが好ましく、エチレン性不飽和基を有するものがより好ましい。原料重合体粒子(A)に加え、化合物(B)と化合物(C)が重合性基またはエチレン性不飽和基を有していれば、原料重合体粒子(A)、ならびに化合物(B)および/または化合物(C)との重合反応が容易に起こるようになり、ベンゾトリアゾール骨格および/またはベンゾフェノン骨格を含む化学構造がより堅固に重合体粒子に含まれるようになる。
原料重合体粒子(A)としては、架橋性単量体を少なくとも一部に含む原料を重合させて得られる粒子であることが好ましい。架橋性単量体が原料に含まれる場合、得られる重合体粒子の耐光性が向上しやすくなる。
前記原料重合体粒子(A−1)としては、ケイ素原子が主に酸素原子との結合を介して三次元のネットワークを構成してなるケイ素の含酸素化合物(ポリシロキサン)であり、加水分解性基を有するケイ素化合物を加水分解および縮合させて得られる粒子が好ましい。
加水分解性基を有するケイ素化合物としては、下記式(1)で表されるケイ素化合物、およびその誘導体が好ましい。
R1 nSiX4-n (1)
式(1)中、R1は、置換基を有していてもよい炭素数1以上のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルキリデン基、シクロアルキル基、シクロアルキニル基、アリール基、およびアラルキル基よりなる群から選ばれる少なくとも1種の基を表し、同一であっても異なっていてもよい。Xは、水酸基、ハロゲン基、アルコキシ基、およびアシロキシ基よりなる群から選ばれる少なくとも1種の基を表し、同一であっても異なっていてもよい。これらの中でも、Xは、アルコキシ基であることが好ましく、メトキシ基またはエトキシ基がより好ましい。nは0〜3の整数である。ただし、nが2または3であるケイ素化合物を原料として用いた場合には、nが0または1であるケイ素化合物を併用することが好ましい。これらの中でも、nが1のケイ素化合物を用いることが好ましい。
前記式(1)で表されるケイ素化合物としては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラブトキシシラン等のテトラアルコキシシラン;メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−ヘキシルトリメトキシシラン、n−ヘキシルトリエトキシシラン、n−デシルトリメトキシシラン、メチルトリフェノキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、ジイソブチルジメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、n−オクチルジメチルクロロシラン、n−オクチルメトキシシロキサン、トリメチルエトキシシラン等のアルキル基含有シラン;3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシ基含有シラン;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、アリルトリメトキシシラン、ジアリルジメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリス(メトキシエトキシ)シラン等のビニル基含有シラン;3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン等の(メタ)アクリロキシ基含有シラン;3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン、3−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン等のアミノ基含有シラン;ビス(3−(トリエトキシシリル)プロピル)ジスルフィド、ビス(3−(トリエトキシシリル)プロピル)テトラスルフィド等のスルフィド基含有シラン;3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン等のメルカプト基含有シラン;トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン等のハロゲン化アルキル基含有シラン;フェニルトリメトキシシラン、トリフェニルシラノール、ジフェニルジメトキシシラン、スチリルトリメトキシシラン等のアリール基含有シラン等が挙げられる。これらは、1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
前記式(1)で表されるケイ素化合物の誘導体としては、特に限定はされないが、例えば、Xの一部がカルボキシル基、β−ジカルボニル基等のキレート化合物を形成し得る基で置換された化合物や、前記ケイ素化合物を部分的に加水分解して得られる低縮合物等が挙げられる。
本発明の重合体粒子が、原料重合体粒子(A)、ならびに化合物(B)および/または化合物(C)とを配合して、重合反応させることにより得られるものである場合、式(1)で表されるケイ素化合物として、化合物(B)および/または化合物(C)との重合反応が起こり得る重合性基を有する化合物を、少なくとも一部に用いることが好ましい。この場合、化合物(B)および/または化合物(C)との重合反応が起こり得る重合性基を有し、式(1)で表されるケイ素化合物(加水分解性基を有するケイ素化合物)は、架橋性単量体とみなされる。前記重合性基としては、エチレン性不飽和基を有するものが好ましく、下記式(2)、(3)、または(4)で表される重合性基であることがより好ましい。
CH2=C(−R2)−COOR3− (2)
CH2=C(−R2)− (3)
CH2=C(−R2)−R3− (4)
なお、式(2)、(3)、および(4)中、R2は水素原子またはメチル基を表し、R3は置換基を有していてもよい炭素数1〜20の2価の有機基を表す。
前記式(2)の重合性基としては、具体的には、アクリロキシ基、メタクリロキシ基等が例示される。前記式(2)の重合性基を有する前記式(1)のケイ素化合物としては、例えば、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリアセトキシシラン、3−メタクリロキシエトキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン等が示される。これらは1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
前記式(3)の重合性基としては、ビニル基、イソプロペニル基が挙げられる。前記式(3)の重合性基を有する前記式(1)のケイ素化合物としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、ビニルメチルジアセトキシシラン等が示される。これらは1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
前記式(4)の重合性基としては、具体的には、1−アルケニル基、イソアルケニル基、ビニルフェニル基、イソプロペニルフェニル基等が例示される。前記式(4)の重合性基を有する前記式(1)のケイ素化合物としては、例えば、1−ヘキセニルトリメトキシシラン、1−ヘキセニルトリエトキシシラン、1−オクテニルトリメトキシシラン、1−デセニルトリメトキシシラン、γ−トリメトキシシリルプロピルビニルエーテル、ω−トリメトキシシリルウンデカン酸ビニルエステル、p−トリメトキシシリルスチレン、1−ヘキセニルメチルジメトキシシラン、1−ヘキセニルメチルジエトキシシラン等が示される。これらは1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
原料重合体粒子(A−1)の製造方法としては、加水分解性基を有するケイ素化合物を加水分解および縮合させる工程を含む方法が用いることが好ましい。前記方法により、ポリシロキサン骨格を有する粒子(ポリシロキサン粒子)を得ることができる。
加水分解および縮合は、一括、分割、連続など、任意の方法をとることができる。加水分解および縮合させるに当たっては、触媒としてアンモニア、尿素、エタノールアミン、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物等の塩基性触媒を好ましく用いることができる。
加水分解および縮合の際に用いる溶媒としては、水と有機溶媒の混合物を用いることが好ましい。有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、t−ブタノール、ペンタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;酢酸エチル等のエステル類;イソオクタン、シクロへキサン等の(シクロ)パラフィン類;ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素類等を挙げることができる。これらは1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これら例示した有機溶媒のうち、アルコール類が特に好ましい。
溶媒に含まれる加水分解性基を有するケイ素化合物の濃度は、0.05モル/L以上が好ましく、1.2モル/L以下が好ましい。水の濃度は、0.1モル/L以上が好ましく、2モル/L以上がより好ましく、また50モル/L以下が好ましく、25モル/L以下がより好ましい。触媒の濃度は、0モル/Lを超えることが好ましく、0.8モル/L以上がより好ましく、また10モル/L以下が好ましく、9.4モル/L以下がより好ましい。
加水分解および縮合の際には、アニオン性、カチオン性、非イオン性の界面活性剤や、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等の高分子分散剤を併用してもよい。これらは1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
加水分解および縮合は、例えば、原料となる前記ケイ素化合物を、触媒を含む水と有機溶媒の混合物に添加し、0℃〜100℃、好ましくは0℃〜70℃の温度で、30分〜100時間撹拌することにより行うことができる。また、このような方法により、所望の程度まで反応を行って一旦得られた粒子を、種粒子として予め反応系に仕込んでおいた上で、さらにケイ素化合物を添加して前記種粒子を成長させてもよい。
前記原料重合体粒子(A−2)としては、ビニル単量体を乳化重合させて得られるものが好ましい。また、前記ビニル単量体の少なくとも一部に、架橋性単量体(架橋性ビニル単量体)を用いてもよい。
前記ビニル単量体としては、分子内にビニル基を有するものであれば特に制限されず、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、酢酸アリル、酢酸ビニル等のビニル化合物;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート化合物;N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−ビニルアクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド化合物;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、n−ノニルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、クロルエチルビニルエーテル等のビニルエーテル化合物;N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、N−ビニル−N−メチルホルムアミド、N−ビニルイミダゾール、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド等のN−ビニル化合物等が示される。これらは、1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
架橋性ビニル単量体としては、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、イソプロペニルスチレン等の架橋性芳香族ビニル化合物;1,4−ブタジエン、1,5−ペンタジエン等の架橋性脂肪族ビニル化合物;ヘキサンジオールジビニルエーテル、グリセリントリビニルエーテル等の架橋性ビニルエーテル化合物;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、3−メチル−1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジメチロール−トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、グリセリルトリ(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の架橋性(メタ)アクリレート化合物;ビニル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−アクリロイルオキシプロピル(メタ)アクリレート、ケイ皮酸2−ビニロキシエチル、ソルビン酸2−ビニロキシエチル等の架橋性を有する不飽和アルコールの(メタ)アクリル酸エステル化合物等が示される。これらは、1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
ビニル単量体を乳化重合する方法は、従来公知の乳化重合法を適用できる。例えば、水媒体中に、前記ビニル単量体、乳化剤、重合開始剤、必要に応じて連鎖移動剤、pH調整剤等を添加し、0℃〜100℃で、0.5時間〜30時間重合を行えばよい。乳化剤としては、アニオン性、カチオン性、非イオン性等の界面活性剤を用いればよい。乳化剤の使用量は、ビニル単量体100質量部に対し、0.001質量部〜10質量部の範囲が好ましい。重合開始剤としては、過硫酸塩、過酸化水素、過酢酸、2,2'−アゾビスイソブチロニトリル、2,2'−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)等を用いることができる。重合開始剤の使用量としては、ビニル単量体100質量部に対し、0.01質量部〜5質量部の範囲が好ましい。
前記原料重合体粒子(A−3)を得る際の重合法としては、粒子形状を有する重合体が得られる重合法であれば特に制限されず、例えば、懸濁重合法、乳化重合法、分散重合法等が示される。とりわけ、懸濁重合法により得られる粒子は、一般に粒度分布の広いものとなりやすいため、さらに分級処理を組み合わせることが、得られる粒子の変動係数を効果的に小さくできる点で、特に好ましい。
原料重合体粒子(A−3)を得る際の分級方法としては、例えば、粒子集合体を2種類の異なる孔径を有するフィルターに通すことで、所望の粒子径を有する粒子のみを得る方法が示される。
本発明の重合体粒子が、原料重合体粒子(A)、ならびに化合物(B)および/または化合物(C)とを配合して、反応させることにより得られるものである場合、原料重合体粒子(A−3)としては、化合物(B)および/または化合物(C)との重合反応が起こり得る重合性基を有するものであることが好ましく、前記重合性基としては、エチレン性不飽和基を有するものが好ましい。
原料重合体粒子(A−3)としては、具体的には、前記原料重合体粒子(A−2)を得る際に用いられるビニル単量体として例示された化合物を懸濁重合して得られた粒子を、分級して得られるものが例示される。また、ビニル単量体の少なくとも一部に、架橋性単量体(架橋性ビニル単量体)を用いてもよい。架橋性ビニル単量体としては、前記原料重合体粒子(A−2)を得る際に用いられる架橋性ビニル単量体として例示された化合物を用いることができる。
原料重合体粒子(A)としては、原料重合体粒子(A−1)であるアルコキシシランを加水分解および縮合させることにより得られる粒子がより好ましい。原料重合体粒子(A−1)はポリシロキサン粒子であるため、原料重合体粒子(A−1)を用いれば、有機重合体からなる粒子である原料重合体粒子(A−2)や原料重合体粒子(A−3)を用いる場合よりも、耐光性や耐熱性、耐久性の点で優れた重合体粒子が得られやすい。
次に、本発明の重合体粒子を得るのに好適に用いられるベンゾトリアゾール骨格を有する化合物(B)とベンゾフェノン骨格を有する化合物(C)について説明する。
化合物(B)としては、式(5)で示される構造を有する化合物が好ましい。式(5)中、R4は任意の有機基を表し、ベンゾトリアゾール環には任意の位置に置換基が結合していてよい。
化合物(B)は、下記式(6)で示される2−(2'−ヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール骨格を有する化合物がより好ましい。式(6)中、ベンゼン環およびベンゾトリアゾール環には、任意の位置に置換基が結合していてよい。式(6)で示される構造は紫外線吸収能を発現するため、化合物(B)として式(6)で示される構造を有する化合物を用いれば、重合体粒子の耐光性が向上し、また屈折率を高めやすくなり、光拡散性能が向上しやすくなる。
化合物(B)としては、例えば、2−[2'−ヒドロキシ−5'−((メタ)アクリロキシ)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2'−ヒドロキシ−5'−((メタ)アクリロキシメチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2'−ヒドロキシ−5'−((メタ)アクリロキシエチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2'−ヒドロキシ─5'−((メタ)アクリロキシプロピル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2'−ヒドロキシ−5'−((メタ)アクリロキシヘキシル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2'−ヒドロキシ─3'−メチル−5'−((メタ)アクリロキシエチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2'−ヒドロキシ─3'−t−ブチル−5'−((メタ)アクリロキシ)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2'−ヒドロキシ─3'−t−ブチル−5'−((メタ)アクリロキシエチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2'−ヒドロキシ−5'−t−ブチル−3'−((メタ)アクリロキシエチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2'−ヒドロキシ−5'−((メタ)アクリロキシエチル)フェニル]−5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2'−ヒドロキシ−5'−((メタ)アクリロキシプロピル)フェニル]−5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2'−ヒドロキシ−5'−((メタ)アクリロキシエチル)フェニル]−5−メトキシ−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2'−ヒドロキシ−5'−((メタ)アクリロキシエチル)フェニル]−5−シアノ−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2'−ヒドロキシ−5'−((メタ)アクリロキシエチル)フェニル]−5−t−ブチル−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2'−ヒドロキシ−5'−((メタ)アクリロキシブチル)フェニル]−5−メチル−2H−ベンゾトリアゾール、[2−ヒドロキシ−3−t−ブチル−5−((メタ)アクリロキシエトキシカルボニルエチル)フェニル]ベンゾトリアゾール等の(メタ)アクリロキシ基含有2−(2'−ヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール;2−(2'−ヒドロキシ−5'−メチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2'−ヒドロキシ−5'−t−ブチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2'−ヒドロキシ−5'−t−オクチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2'−ヒドロキシ−3',5'−ジ−t−ペンチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2'−ヒドロキシ−3',5'−ジ−t−アミルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2'−ヒドロキシ−3'−t−ブチル−5'−メチルフェニル)−5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2'−ヒドロキシ−3',5'−ジ−t−ブチル)−5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール等のアルキル基含有2−(2'−ヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール;2−[2'−ヒドロキシ−3',5'−ジ(1,1−ジメチルベンジル)フェニル]ベンゾトリアゾール;2,2'−メチレンビス−[6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3,−テトラメチルブチル)フェノール];α−[3−[3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]−1−オキソプロピル]−ω−ヒドロキシポリ(オキソ−1,2−エタン−ジ−イル);2−[2'−ヒドロキシ−3−(3,4,5,6−テトラヒドロフタルイミド−メチル)−5−メチルフェニル]−2H−ベンゾトリアゾール等が示される。これらは、1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明の重合体粒子が、原料重合体粒子(A)、ならびに化合物(B)および/または化合物(C)とを配合して、重合反応させることにより得られるものである場合、化合物(B)は重合性基を有するものが好ましく、エチレン性不飽和基を有するものがより好ましい。化合物(B)に加え、原料重合体粒子(A)が重合性基またはエチレン性不飽和基を有していれば、原料重合体粒子(A)と化合物(B)との重合反応が容易に起こるようになり、ベンゾトリアゾール骨格を含む構造がより堅固に重合体粒子に含まれるようになる。
エチレン性不飽和基を有する化合物(B)としては、前記例示した(メタ)アクリロキシ基含有2−(2'−ヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール等が挙げられる。このようなベンゾトリアゾール化合物のうち、例えば、2−[2'−ヒドロキシ─5'−(メタクリロキシエチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾールは大塚化学株式会社から市販されている。
化合物(C)としては、式(7)で示される構造を有する化合物が好ましい。式(7)中、カルボニル基に結合しているフェニル基には任意の位置に置換基が結合していてよい。
化合物(C)は、下記式(8)で示される2−ヒドロキシフェニルベンゾフェノン骨格を有する化合物がより好ましい。式(8)中、ベンゼン環には、任意の位置に置換基が結合していてよい。式(8)で示される構造は紫外線吸収能を発現するため、化合物(C)として式(8)で示される構造を有する化合物を用いれば、重合体粒子の耐光性が向上し、また屈折率を高めやすくなり、光拡散性能が向上しやすくなる。
化合物(C)としては、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン等のアルキル基含有2−ヒドロキシベンゾフェノン;2−ヒドロキシ−4−(メタ)アクリロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−[2−(メタ)アクリロシエトキシ]ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−[2−メチル−2−(メタ)アクリロシエトキシ]ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−[3−(メタ)アクリロシ−2−ヒドロキシプロポキシ]ベンゾフェノン、2,2'−ジヒドロキシ−4−[3−(メタ)アクリロシ−2−ヒドロキシプロポキシ]ベンゾフェノン、等の(メタ)アクリロキシ基含有2−ヒドロキシベンゾフェノン等が示される。これらは、1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明の重合体粒子が、原料重合体粒子(A)、ならびに化合物(B)および/または化合物(C)とを配合して、重合反応させることにより得られるものである場合、化合物(C)は重合性基を有するものが好ましく、エチレン性不飽和基を有するものがより好ましい。化合物(C)に加え、原料重合体粒子(A)が重合性基またはエチレン性不飽和基を有していれば、原料重合体粒子(A)と化合物(C)との重合反応が容易に起こるようになり、ベンゾトリアゾール骨格を含む構造がより堅固に重合体粒子に含まれるようになる。
エチレン性不飽和基を有する化合物(C)としては、前記例示した(メタ)アクリロキシ基含有2−ヒドロキシベンゾフェノン等が挙げられる。このようなベンゾフェノン化合物を得る方法としては次の方法が示される。例えば、2−ヒドロキシ−4−[3−(メタ)アクリロシ−2−ヒドロキシプロポキシ]ベンゾフェノンは、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノンとグリシジル(メタ)アクリレートを反応させることにより得られ、2,2'−ジヒドロキシ−4−[3−(メタ)アクリロシ−2−ヒドロキシプロポキシ]ベンゾフェノンは、2,2',4−トリヒドロキシベンゾフェノンとグリシジル(メタ)アクリレートを反応させることにより得られる。
本発明の重合体粒子は、粒子径の変動係数が20%以下であるが、本発明においては、原料重合体粒子(A)を用い、紫外線吸収能を有する化合物として化合物(B)や化合物(C)を採用することにより、粒子径の変動係数が20%以下の重合体粒子を得ることが容易となる。
本発明の重合体粒子は、原料重合体粒子(A)に化合物(B)および/または化合物(C)を吸収させることにより得られるものが好ましいが、吸収を効率よく行わせるためには、化合物(B)や化合物(C)や必要に応じて併用される後述する他の重合性単量体(D)からなる組成物を、予め水性媒体に乳化状態で分散させ、それを原料重合体粒子(A)が分散した水性媒体に混合し、撹拌することが好ましい。また、この際、化合物(B)や化合物(C)や必要に応じて併用される重合性単量体(D)からなる組成物の乳化状態での分散安定性を高め、前記組成物を原料重合体粒子(A)に吸収効率を高めるために、化合物(B)や化合物(C)として、エチレン性不飽和基を有するものを用いることが好ましい。このようにして得られる重合体粒子は、粒子径の変動係数が20%以下で、粒度分布も正規分布に近いものとなりやすくなる。その結果、重合体粒子、および重合体粒子が樹脂に配合された樹脂膜等の樹脂組成物は、光透過性、光拡散性、光反射性に優れたものとなりやすくなる。
一方、化合物(B)や化合物(C)の代わりに、化合物(B)と化合物(C)を除く一般的な紫外線吸収能を有する化合物であって、エチレン性不飽和基を有するもの(以下、「一般のUV吸収性単量体」と称する場合がある)を用いた場合、原料重合体粒子(A)と配合すると、原料重合体粒子(A)に一般のUV吸収性単量体が吸収されにくかったり、原料重合体粒子(A)の凝集や合一が起こりやすくなる。また、一般のUV吸収性単量体が原料重合体粒子(A)に吸収されにくいために、一般のUV吸収性単量体が系内(重合反応溶液内)に残存しやすくなり、それに起因して、重合体粒子の二次凝集が起こりやすくなる。結果として、得られる重合体粒子は粒子径の不揃いなものとなりやすく、粒子径の変動係数を20%以下とすることが困難となる。
しかしながら、本発明においては、紫外線吸収能を有する化合物として化合物(B)や化合物(C)を採用することにより、化合物(B)や化合物(C)が原料重合体粒子(A)に吸収されやすくなり、上記問題が起こりにくくなるため、粒子径の変動係数の小さい重合体粒子が得やすくなる。
本発明においては、前記化合物(B)や前記化合物(C)とともに、他の重合性単量体(D)を併用することが好ましい。また、化合物(B)および/または化合物(C)がエチレン性不飽和基を有するものである場合、他の重合性単量体(D)もエチレン性不飽和基を有するものであることが好ましい。
従って、他の重合性単量体(D)を用いる場合、本発明の重合体粒子は、原料重合体粒子(A)、ならびに化合物(B)および/または化合物(C)、ならびに重合性単量体(D)とを配合することにより得られるものが好ましく、前記配合により、化合物(B)および/または化合物(C)、ならびに重合性単量体(D)が、原料重合体粒子(A)に吸収されることがより好ましい。さらに、本発明の重合体粒子は、原料重合体粒子(A)、ならびに化合物(B)および/または化合物(C)、ならびに重合性単量体(D)とを配合して、反応させることにより得られるものが好ましく、前記反応は重合反応であることが好ましく、ラジカル重合反応であることがより好ましい。本発明の重合体粒子は、原料重合体粒子(A)に、化合物(B)および/または化合物(C)、ならびに重合性単量体(D)とを吸収させて、重合反応させることにより得られるものが特に好ましい。
他の重合性単量体(D)としては、具体的には、前記原料重合体粒子(A−2)を得るのに用いられるビニル単量体や架橋性ビニル単量体として例示された化合物等を挙げることができる。
本発明においては、重合性単量体(D)の少なくとも一部として、架橋性ビニル単量体を用いることが好ましい。架橋性ビニル単量体のうち、特に好ましいのは、架橋性(メタ)アクリレート化合物である。架橋性(メタ)アクリレート化合物の具体例は、前記重合体粒子(A−2)を得るのに用いられる架橋性ビニル単量体の一部に、「架橋性(メタ)アクリレート化合物」として示されている。架橋性(メタ)アクリレート化合物としては、2以上の(メタ)アクリロイル基が炭素数2〜6の炭化水素鎖に結合している化合物が好ましく、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート等が示される。架橋性(メタ)アクリレート化合物としては、2以上の(メタ)アクリロイル基が炭素数2の炭化水素鎖に結合している化合物が特に好ましく、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレートが示される。
さらに、本発明においては、重合性単量体(D)の少なくとも一部として、アルコール性水酸基を有するビニル単量体を用いることが好ましい。アルコール性水酸基を有するビニル単量体を用いることにより、重合体粒子を溶剤に分散させたときの分散安定性が向上しやすくなり、重合体粒子の塗料組成物等の各種組成物への適用範囲が広がる。
アルコール性水酸基を有するビニル単量体としては、ヒドロキシアルキル基を有する(メタ)アクリレート化合物が好ましく、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート(例えば、三菱化学株式会社製「4HBA」)、4−ヒドロキシブチルメタクリレート、α−ヒドロキシメチルエチル(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ヒドロキシ(メタ)アクリレート(例えば、ダイセル化学工業株式会社製「プラクセルF」シリーズ)、4−メチルロールシクロヘキシルメチルアクリレート(例えば、日本化成株式会社製「CHDMMA」)、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールポリテトラメチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールポリテトラメチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等が示される。ヒドロキシアルキル基を有する(メタ)アクリレートとしては、アルキルの炭素数が2〜5のヒドロキシアルキル基を有する(メタ)アクリレートがより好ましく、特に、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートが好ましい。
重合性単量体(D)にアルコール性水酸基を有するビニル単量体が含まれる場合、アルコール性水酸基を有するビニル単量体の含有量は、重合体粒子の原料中、0.05質量%以上が好ましく、0.1質量%以上がより好ましく、また10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましく、3質量%以下がさらに好ましく、1質量%以下がなおさらに好ましく、0.5質量%以下が最も好ましい。重合体粒子の原料中、アルコール性水酸基を有するビニル単量体の含有量が0.05質量%以上であれば、重合体粒子を溶剤に分散させたときの分散安定性が向上しやすくなり、重合体粒子の塗料組成物等の各種組成物への適用範囲が広がる。重合体粒子の原料中、アルコール性水酸基を有するビニル単量体の含有量が10質量%を超えると、重合体粒子が水を吸着しやすくなり、重合体粒子が白化しやすくなる。以上のように、重合性単量体(D)にアルコール性水酸基を有するビニル単量体が含まれる場合は、アルコール性水酸基を有するビニル単量体の使用量が微量であっても、得られる重合体粒子は、有機溶媒や樹脂を含む有機溶媒(塗料組成物)への分散安定性が向上しやすくなる。
なお、本発明の重合体粒子は、上述したように原料重合体粒子(A)を用いて得られるものが好ましいが、原料重合体粒子(A)を用いずに、懸濁重合法、乳化重合法、分散重合法等の従来公知の重合方法により得られるものであってもよい。本発明の重合体粒子が、前記従来公知の重合方法により得られるものであっても、化合物(B)および/または化合物(C)を用いる本発明においては、化合物(B)と化合物(C)を除く一般的な紫外線吸収能を有する化合物であってエチレン性不飽和基を有するもの(一般のUV吸収性単量体)を用いる場合と比べ、粒子径の変動係数の小さい重合体粒子を得やすくなる。そのため、粒子径の変動係数を20%以下にするために分級操作を行った場合、粒度分布が正規分布に近い(最頻粒子径/平均粒子径の比が1に近い)ものとなりやすくなり、重合体粒子が樹脂に配合された樹脂膜等の樹脂組成物は、光透過性、光拡散性、光反射性に優れたものとなりやすくなる。なお、本発明の重合体粒子は、原料重合体粒子(A)を用いずに得られるものである場合でも、分級操作なしに、重合反応で粒子径の変動係数が20%以下となるものが好ましい。
本発明の重合体粒子が、原料重合体粒子(A)を用いずに得られるものである場合、本発明の重合体粒子は、重合性単量体(X)、ならびに化合物(B)および/または化合物(C)とを配合することにより得られるものであることが好ましい。重合性単量体(X)としては、前記原料重合体粒子(A−1)を得るのに用いられるケイ素化合物、すなわち前記式(1)で表されるエチレン性不飽和基を有するケイ素化合物、前記ケイ素化合物の加水分解縮合物、または前記原料重合体粒子(A−2)を得るのに用いられるビニル単量体や架橋性ビニル単量体等を用いればよい。重合性単量体(X)としては、エチレン性不飽和基と加水分解性基を有するケイ素化合物や架橋性ビニル単量体等の架橋性単量体が好ましく用いられる。また、重合性単量体(X)として、さらに、前記重合性単量体(D)として用いられ得るアルコール性水酸基を有するビニル単量体も好ましく用いられる。
本発明の重合体粒子は、粒子径の変動係数が20%以下であるが、本発明の重合体粒子が、重合性単量体(X)、ならびに化合物(B)および/または化合物(C)とを配合して、重合反応させることにより得られるものである場合においても、紫外線吸収能を有する化合物として化合物(B)や化合物(C)を採用することにより、粒子径の変動係数が20%以下の重合体粒子を得ることが容易となる。
例えば、重合性単量体(X)を、化合物(B)と化合物(C)を除く一般的な紫外線吸収能を有する化合物であって、エチレン性不飽和基を有するもの(一般のUV吸収性単量体)と配合し、懸濁重合法により重合する場合、一般のUV吸収性単量体が液滴から分離したり、液滴が相分離して、分裂や合一が起こりやすくなる。また、一般のUV吸収性単量体が系内(重合反応溶液内)に残存しやすくなり、それに起因して、液滴の二次凝集が起こりやすくなる。結果として、得られる重合体粒子は粒子径の不揃いなものとなりやすく、粒子径の変動係数を20%以下とすることが極めて困難となる。この場合、得られた重合体粒子の粒子径の変動係数を20%以下とするためには分級処理が必須となるが、分級処理して、粒子径の変動係数が20%以下の重合体粒子を得たとしても、得られる粒子の粒度分布は正規分布から外れたものとなりやすく、その結果、光拡散性能等も不十分なものとなる。また、粒度分布がブロードなものとなるために収率が非常に低くなり、しかも、二次凝集等の影響で分級効率も悪いことから、工業的実施は困難なものとなる。
しかしながら、本発明においては、紫外線吸収能を有する化合物として化合物(B)や化合物(C)を採用することにより、上記したように、一般のUV吸収性単量体を用いた場合に起こり得るような、粒子径が不揃いなものとなりやすいという問題が起こりにくくなる。その結果、本発明の重合体粒子は、重合性単量体(X)、ならびに化合物(B)および/または化合物(C)とを配合して、重合反応させることにより得られるものであっても、通常のビニル単量体を用いて得られる重合体と同等程度の粒度分布を有するものとなる。
本発明においては、紫外線吸収能を有する化合物として化合物(B)や化合物(C)を採用することで、液滴の安定性が良好となり安定した重合が行われるようになる。その結果、得られる重合体粒子は、粒度が揃ったものとなり、粒子径の変動係数が小さいものとなり、粒度分布が正規分布に近いものとなり、最頻粒子径/平均粒子径の比が1に近いものとなりやすくなる。従って、粒子径の変動係数を20%以下にするために分級操作を行った場合でも、粒度分布が正規分布に近く、最頻粒子径/平均粒子径の比が1に近い重合体粒子が得やすくなる。このように得られた重合体粒子は、重合体粒子が樹脂に配合された樹脂膜等の樹脂組成物とした場合、光透過性、光拡散性、光反射性に優れたものとなりやすくなる。また、分級による収率低下の程度も従来と同等レベルとなり、工業的実施も可能となる。
以上説明したように、本発明の重合体粒子とは、平均粒子径が0.1μm〜100μmの範囲であり、粒子径の変動係数が20%以下であり、ベンゾトリアゾール骨格および/またはベンゾフェノン骨格を含む化学構造を含有することを特徴とするものであるが、平均粒子径が0.1μm〜100μmの範囲であり、粒子径の変動係数が20%以下であり、2−(2'−ヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール骨格および/または2−ヒドロキシフェニルベンゾフェノン骨格を含む構造を含有するポリシロキサンからなる重合体粒子であることが好ましい。さらに、2−(2'−ヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール骨格および/または2−ヒドロキシフェニルベンゾフェノン骨格を含む構造は、共有結合を介して重合体粒子に含有されることが好ましい。
また、本発明の重合体粒子は、原料重合体粒子としてのポリシロキサン粒子に、2−(2'−ヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール骨格を有する化合物および/または2−ヒドロキシベンゾフェノン骨格を有する化合物とを吸収させて、重合反応させることにより得られるものであることが、好ましい。さらに、2−(2'−ヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール骨格を有する化合物および/または2−ヒドロキシベンゾフェノン骨格を有する化合物とともに、他の重合性単量体をポリシロキサン粒子に吸収させて、重合反応させることがより好ましい。このとき、原料重合体粒子、前記2−(2'−ヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール骨格を有する化合物、2−ヒドロキシベンゾフェノン骨格を有する化合物、および他の重合性単量体は、エチレン性不飽和基を有することが好ましい。また、原料重合体粒子としてのポリシロキサン粒子は、加水分解性基を有するケイ素化合物を加水分解および縮合させることにより得られるものであることがより好ましい。
次に、本発明の重合体粒子を製造する方法について説明する。
本発明の重合体粒子の製造方法としては、例えば、原料重合体粒子(A)、ならびに化合物(B)および/または化合物(C)とを配合する工程を含む製造方法、あるいは、重合性単量体(X)、ならびに化合物(B)および/または化合物(C)とを配合する工程を含む製造方法が示される。
本発明の重合体粒子の製造方法としては、原料重合体粒子(A)、ならびに化合物(B)および/または化合物(C)とを配合する工程(配合工程)を含む製造方法が好ましい。原料重合体粒子(A)と、化合物(B)および/または化合物(C)とを配合することにより、化合物(B)および/または化合物(C)が原料重合体粒子(A)に吸収されることが好ましい。
原料重合体粒子(A)に化合物(B)および/または化合物(C)を吸収させるためには、例えば、原料重合体粒子(A)を分散させた溶媒中(分散液)に化合物(B)および/または化合物(C)を加えてもよいし、化合物(B)および/または化合物(C)を含む溶媒中に原料重合体粒子(A)を加えてもよい。またこの際、化合物(B)および/または化合物(C)とともに、重合性単量体(D)を加えることが好ましい。中でも、化合物(B)および/または化合物(C)、および必要に応じて重合性単量体(D)を、予め乳化分散させた状態で原料重合体粒子(A)に加える方法が、化合物(B)、化合物(C)および重合性単量体(D)の原料重合体粒子(A)への吸収が、速やかかつ均一な組成で行われやすい点で、好ましい。
配合工程で用いられる溶媒、原料重合体粒子(A)を分散させる溶媒、重合に用いる溶媒は、いずれも、水を主成分とする水性溶媒が好ましい。このとき、溶媒に含まれる他の成分としては、低級アルコール等の水溶性の有機溶媒等が挙げられる。
原料重合体粒子(A)を分散させる溶媒としては、原料重合体粒子(A−1)や原料重合体粒子(A−2)を製造するのに使用される溶媒を用いることができる。前記溶媒には、アニオン性、カチオン性、非イオン性の界面活性剤や、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等の高分子分散剤が、加えられてもよい。
原料重合体粒子(A)を製造する際、原料重合体粒子(A)が分散液の状態で得られる場合には、前記分散液から原料重合体粒子(A)を分離することなく前記分散液に化合物(B)および/または化合物(C)を加える方法が、製造工程が簡易となり生産性が向上するため、より好ましい。
配合工程においては、原料重合体粒子(A)の構造中に化合物(B)および/または化合物(C)が吸収されることが好ましく、さらに重合性単量体(D)も共に吸収されることがより好ましいが、この吸収が容易に起こるように、原料重合体粒子(A)、化合物(B)、化合物(C)、重合性単量体(D)のそれぞれの濃度や、混合比、混合方法、混合時の温度や時間、混合後の処理方法等の条件が適宜設定される。
原料重合体粒子(A)、化合物(B)、化合物(C)、重合性単量体(D)の使用量としては、原料重合体粒子(A)1質量部に対し、化合物(B)と化合物(C)と重合性単量体(D)との合計質量が0.1質量部以上であることが好ましく、1質量部以上であることがより好ましく、2質量以上であることがさらに好ましく、また100質量部以下であることが好ましく、50質量部以下であることが好ましく、30質量部以下であることがさらに好ましい。
化合物(B)、化合物(C)、重合性単量体(D)の使用量としては、化合物(B)と化合物(C)と重合性単量体(D)との合計質量に対する化合物(B)と化合物(C)との合計質量の比([化合物(B)の質量+化合物(C)の質量]/[化合物(B)の質量+化合物(C)の質量+重合性単量体(D)の質量])で0.001以上が好ましく、0.01以上がより好ましく、0.05以上がさらに好ましく、また1以下が好ましく、0.4以下がより好ましく、0.2以下がさらに好ましい。前記比が0.001以上であれば、化合物(B)と化合物(C)が重合体粒子中により均一に分散しやすくなり、得られる重合体粒子の光拡散性能を向上させやすくなる。なお、前記比の上限は1と規定されることからも分かるように、重合性単量体(D)は必須成分ではないものの、配合工程において化合物(B)や化合物(C)の原料重合体(A)の分散液への相溶性が劣る場合は、重合性単量体(D)を加えることにより相溶性を改善させることが好ましい。
化合物(B)、化合物(C)の使用量としては、得られる重合体粒子の質量に対する化合物(B)と化合物(C)との合計質量の比([化合物(B)の質量+化合物(C)の質量]/重合体粒子の質量)で0.001以上が好ましく、0.01以上がより好ましく、0.05以上がさらに好ましく、また1未満が好ましく、0.4以下がより好ましく、0.2以下がさらに好ましい。前記比が0.001以上であれば、化合物(B)と化合物(C)が重合体粒子中に十分含まれるようになり、得られる重合体粒子の光拡散性能を向上させやすくなる。前記比が1未満であれば、未吸収の化合物(B)および化合物(C)の量が少なくなり、未吸収の化合物(B)および化合物(C)による副反応を抑制しやすくなり、例えば、引き続き原料重合体粒子(A)と化合物(B)および/または化合物(C)とを反応させる際に、粒子の凝集の発生を抑えやすくなる。
原料重合体粒子(A)や重合性単量体(D)には架橋性単量体が含まれ得るが、原料重合体粒子(A)や重合性単量体(D)に架橋性単量体が含まれる場合、架橋性単量体の使用量としては、原料重合体粒子(A)と化合物(B)と化合物(C)と重合性単量体(D)との合計質量に対する架橋性単量体の比([架橋性単量体の質量]/[原料重合体粒子(A)の質量+化合物(B)の質量+化合物(C)の質量+重合性単量体(D)の質量])で0.05以上が好ましく、0.10以上がより好ましく、0.20以上がさらに好ましく、また0.45以下が好ましく、0.40以下がより好ましく、0.35以下がさらに好ましい。前記比が0.05以上であれば、得られる重合体粒子の耐光性と耐溶剤性が向上しやすくなり、前記比が0.45以下であれば、得られる重合体粒子の耐光性が向上しやすくなる。
配合工程において、原料重合体粒子(A)の分散液に化合物(B)および/または化合物(C)を加える場合、化合物(B)および/または化合物(C)は前記分散液に一括で加えてもよいし、数回に分けて加えてもよいし、任意の速度でフィードしてもよく、特に限定はされない。
化合物(B)および/または化合物(C)を加えるに当たり、化合物(B)および/または化合物(C)の形態は特に限定されないが、化合物(B)および/または化合物(C)を予め乳化分散させた状態で原料重合体粒子(A)に加える方法が、原料重合体粒子(A)への吸収がより効率よく行われるため、好ましい。また、重合体単量体(D)を併用する場合は、化合物(B)および/または化合物(C)、ならびに重合性単量体(D)を予め乳化分散させた状態で原料重合体粒子(A)に加える方法が、前記と同様の理由により、好ましい。さらに、配合工程の後段に後述する反応工程を組み合わせ、当該反応工程においてラジカル重合反応を行う場合は、ラジカル重合開始剤も共に乳化分散させた状態で原料重合体粒子(A)に加える方法が、より好ましい。
前記乳化分散については、化合物(B)および/または化合物(C)、さらに必要に応じて重合性単量体(D)とラジカル重合開始剤とに、水と乳化剤を加え、ホモミキサーや超音波ホモジナイザー等を用いて、水中で乳濁状態とすることが好ましい。
前記乳化剤としては、特に限定はされないが、具体的には、例えば、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、両性界面活性剤、高分子界面活性剤、分子中に1個以上の重合可能な炭素−炭素不飽和結合を有する重合性界面活性剤等がある。なかでも、アニオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤が、化合物(B)、化合物(C)や、化合物(B)および/または化合物(C)を吸収した原料重合体粒子(A)の分散状態を安定化させやすくなるので好ましい。これら乳化剤は、1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
前記アニオン性界面活性剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、ナトリウムドデシルサルフェート、カリウムドデシルサルフェート等のアルカリ金属アルキルサルフェート類;アンモニウムドデシルサルフェート等のアンモニウムアルキルサルフェート類;ナトリウムドデシルポリグリコールエーテルサルフェート、ナトリウムスルホシノエート、スルホン化パラフィンのアルカリ金属塩類;スルホン化パラフィンのアンモニウム塩等のアルキルスルホネート類;ナトリウムラウリレート、トリエタノールアミンオレエート、トリエタノールアミンアビエテート等の脂肪酸塩類、ナトリウムドデシルベンゼンスルホネート、アルカリフェノールヒドロキシエチレンのアルカリ金属サルフェート等のアルキルアリールスルホネート類;高級アルキルナフタレンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、ジアルキルスルホコハク酸塩、ポリオキシエチレンアルキルサルフェート塩、ポリオキシエチレンアルキルアリールサルフェート塩等を好ましく挙げることができる。
前記カチオン性界面活性剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、ナトリウムドデシルベンゼンスルホネート、アルカリフェノールヒドロキシエチレンのアルカリ金属サルフェート等のアルキルアリールスルホネート類;高級アルキルナフタレンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、ジアルキルスルホコハク酸塩、ポリオキシエチレンアルキルサルフェート塩、ポリオキシエチレンアルキルアリールサルフェート塩等を好ましく挙げることができる。
前記非イオン界面活性剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、グリセロールのモノラウレート等の脂肪酸モノグリセライド類;ポリオキシエチレンオキシプロピレン共重合体、エチレンオキサイドと脂肪酸アミン、アミドまたは酸との縮合生成物等を好ましく挙げることができる。
前記高分子界面活性剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、ポリビニルアルコール、ポリ(メタ)アクリル酸ナトリウム、ポリ(メタ)アクリル酸カリウム、ポリ(メタ)アクリル酸アンモニウム、ポリヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ポリヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、これらの重合体の構成単位である重合性単量体の2種以上の共重合体または他の単量体との共重合体、クラウンエーテル類の相関移動触媒等を好ましく挙げることができる。
前記重合性界面活性剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、プロペニル−2−エチルヘキシルベンゼンスルホコハク酸エステルナトリウム、(メタ)アクリル酸ポリオキシエチレンの硫酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルプロペニルエーテル硫酸アンモニウム塩、(メタ)アクリル酸ポリオキシエチレンエステルのリン酸エステル等のアニオン性重合性界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルベンゼンエーテル(メタ)アクリル酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(メタ)アクリル酸エステル等のノニオン性重合性界面活性剤等を好ましく挙げることができる。
前記乳化剤の使用量は、化合物(B)と化合物(C)と重合性単量体(D)との合計質量に対して0.01質量%以上が好ましく、0.05質量%以上がより好ましく、1質量%以上がさらに好ましく、また10質量%以下が好ましく、8質量%以下がより好ましく、5質量%以下がさらに好ましい。乳化剤の使用量が、0.01質量%以上であれば、安定な乳化分散物が得やすくなり、10質量%以下であれば、乳化重合等の副反応の併発を抑えやすくなる。
配合工程において、化合物(B)および/または化合物(C)が原料重合体粒子(A)に吸収されたかどうかの判断は、例えば、化合物(B)および/または化合物(C)を加える前後で、顕微鏡により粒子の大きさを観察することにより行うことができる。化合物(B)および/または化合物(C)が原料重合体粒子(A)に吸収された場合、粒子径が大きくなるため、吸収の判断が容易にできる。
本発明においては、前記配合工程により得られた化合物(B)および/または化合物(C)が原料重合体粒子(A)に吸収された粒子(以下、「吸収粒子」と称することがある)を、本発明の重合体粒子としてもよい。この場合、配合工程で得られた吸収粒子分散液を、固液分離することで、吸収粒子分散液から吸収粒子を得ることができる。固液分離は公知の方法を用いることができ、沈降分離、浮上分離、遠心分離、ろ過等の方法を用いることができる。さらに、固液分離処理の後に乾燥処理や粉砕処理を組み合わせてもよい。乾燥方法は、吸収粒子から溶媒を除去できる方法であれば、特に限定されない。
しかしながら、本発明の重合体粒子の製造方法としては、前記配合工程の後段に、さらに原料重合体粒子(A)、ならびに化合物(B)および/または化合物(C)とを反応させる工程(反応工程)を含む製造方法がより好ましい。反応工程においては、原料重合体粒子(A)、ならびに化合物(B)および/または化合物(C)、ならびに重合性単量体(D)とを反応させることがさらに好ましい。配合工程の後に反応工程を組み合わせることで、得られる重合体粒子は、より堅固にベンゾトリアゾール骨格および/またはベンゾフェノン骨格を含む化学構造が含まれるようになり、本発明の重合体粒子を様々な用途に適用できるようになる。
反応工程において、原料重合体粒子(A)、ならびに化合物(B)および/または化合物(C)との反応としては、重合反応であることが好ましく、ラジカル重合反応であることがより好ましい。また、重合性単量体(D)を併用する場合も同様に、原料重合体粒子(A)、ならびに化合物(B)および/または化合物(C)、ならびに重合性単量体(D)との反応としては、重合反応であることが好ましく、ラジカル重合反応であることがより好ましい。従って、原料重合体粒子(A)、化合物(B)、化合物(C)、および重合性単量体(D)は、重合性基を有していることが好ましく、エチレン性不飽和基を有していることがより好ましい。
反応工程においてラジカル重合反応を行う場合、溶媒としては、前記配合工程で使用した溶媒をそのまま用いることができ、水を含む水性溶媒が好ましく用いられる。
ラジカル重合開始剤としては、例えば、過硫酸カリウム等の過硫酸塩、過酸化水素、過酢酸、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、オルソクロロ過酸化ベンゾイル、オルソメトキシ過酸化ベンゾイル、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、t−ブチルハイドロパーオキサイド等の過酸化物系開始剤類;アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスシクロヘキサカルボニトリル、アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2'−アゾビスイソブチロニトリル、2,2'−アゾビス(2−アミジノプロパン)・二塩酸塩、4,4'−アゾビス(4−シアノペンタン酸)、2,2'−アゾビス−(2−メチルブチロニトリル)、2,2'−アゾビスイソブチロニトリル、2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ系化合物類等を好ましく用いることできる。これらラジカル重合開始剤は、1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
前記ラジカル重合開始剤の使用量は、エチレン性不飽和基を有する化合物(B)、エチレン性不飽和基を有する化合物(C)、およびエチレン性不飽和基を有する他の重合性単量体(D)の合計質量に対して、0.001質量%以上が好ましく、0.01質量%以上がより好ましく、0.1質量%以上がさらに好ましく、また20質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましく、5質量%以下がさらに好ましい。ラジカル重合開始剤の使用量が、0.001質量%以上であれば、重合反応が十分に進行しやすくなる。
ラジカル重合開始剤の仕込み方については、特に限定はなく、最初(反応開始前)に全量仕込んでもよいし、最初に一部を仕込んでおいてから残りを連続フィード添加しても、断続的にパルス添加しても、両者を組み合わせた手法で添加してもよい。しかしながら、ラジカル重合開始剤は、前記配合工程において、化合物(B)および/または化合物(C)と、必要に応じて重合性単量体(D)とともに、原料重合体粒子(A)に吸収させることで、反応開始前に全量仕込むことが好ましい。
ラジカル重合する際の反応温度は、40℃以上が好ましく、50℃以上がより好ましく、また100℃以下が好ましく、80℃以下がより好ましい。前記反応温度が40℃以上であれば、重合反応が十分に進行しやすくなり、100℃以下であれば、重合中の粒子の凝集を抑制しやすくなる。
ラジカル重合する際の反応時間は用いる重合開始剤の種類により適宜変更可能であるが、5分以上が好ましく、10分以上がより好ましく、また600分以下が好ましく、300分がより好ましい。反応時間が5分以上であれば、重合反応が十分に進行しやすくなり、600分以下であれば、重合中の粒子の凝集を抑制しやすくなる。
本発明においては、前記反応工程により得られた生成物(以下、「反応重合体粒子」と称することがある)を、本発明の重合体粒子とすることが好ましい。この場合、反応重合体粒子は溶媒分散液として得られるため、この分散液を、固液分離することで、前記分散液から反応重合体粒子を得ることができる。固液分離は公知の方法を用いることができ、沈降分離、浮上分離、遠心分離、ろ過等の方法を用いることができる。さらに、固液分離処理の後に乾燥処理や粉砕処理等を組み合わせてもよい。乾燥方法は、反応重合体粒子から溶媒を除去できる方法であれば、特に限定されない。
次に、本発明の重合体粒子の用途について説明する。
本発明の重合体粒子は、そのままで、あるいは光学樹脂組成物の形態において、光拡散剤として用いることができる。
本発明の重合体粒子は、また、紫外性吸収機能が求められる用途、例えば、化粧品原料;食品包装用等の包装用途;窓に貼る紫外線遮断フィルム等の紫外線吸収材料;粒子径分布が揃った特性を活かしたアンチブロッキング剤、滑り性付与剤等のフィルム用添加剤等に用いることができる。
本発明の重合体粒子を含む組成物は、成形体に使用することができる。具体的には、本発明の重合体粒子を樹脂に分散させたものは、成形体用組成物として用いることができる。
成形体用組成物に用いられる前記樹脂としては、例えば、ポリアミド(6−ナイロン、66−ナイロン、12−ナイロン等)、ポリイミド、ポリウレタン、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポロプロピレン等)、ポリエステル(PET、PBT、PEN等)、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、ポリスチレン、(メタ)アクリル樹脂、ABS樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、およびこれらの原料となる単量体等の熱可塑性樹脂;フェノール樹脂(フェノール・ホルマリン樹脂、クレゾール・ホルマリン樹脂等)、エポキシ樹脂、アミノ樹脂(尿素樹脂、メラミン樹脂、グアナミン樹脂等)、およびこれらの原料となる単量体等の熱硬化性樹脂;ポリビニルブチラール系、ポリウレタン系、エチレン−酢酸ビニル共重合体系、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体系等の軟質樹脂または硬質樹脂;シリカゲル、アルカリケイ酸、シリコンアルコキシド等の金属アルコキシド、これらの(加水分解)縮合物、リン酸塩等の無機系バインダー等が好ましく用いられる。これらは、1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
成形体用組成物中の重合体粒子含有量は、重合体粒子および樹脂の固形分合計質量に対して0.1質量%以上が好ましく、0.3質量%以上がより好ましく、また99質量%以下が好ましく、90質量%以下がより好ましい。重合体粒子含有量が0.1質量%以上であれば、重合体粒子を成形体用組成物中に含有させることによって得られる効果を確実に発揮させることができる。重合体粒子含有量が99質量%以下であれば、得られる組成物の強度や可撓性を十分確保することができる。
本発明の重合体粒子を含む組成物は、塗料に使用することができる。本発明の重合体粒子を溶媒とバインダーの混合物に分散させたものは、塗料組成物等として用いることができ、分散安定性に優れたものとなる。
前記溶媒としては、特に限定されるものでないが、例えば、水;アルコール類、脂肪族および芳香族カルボン酸エステル類、ケトン類、エーテル類、エーテルエステル類、脂肪族および芳香族炭化水素類、ハロゲン化炭化水素類等の有機系溶媒;鉱物油;植物油;ワックス;シリコーン油等が挙げられる。これらの溶媒は、1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
塗料組成物に用いられる前記バインダーとしては、熱可塑性または熱硬化性の各種合成樹脂、天然樹脂等、無機系バインダー等を挙げることができる。合成樹脂としては、例えば、アルキド樹脂、アミノ樹脂、ビニル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、熱硬化性不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、塩素化ポリオレフィン樹脂、シリコーン樹脂、アクリルシリコーン樹脂、フッ素樹脂、キシレン樹脂、石油樹脂、ケトン樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、液状ポリブタジエン、クマロン樹脂等が挙げられる。天然樹脂としては、例えば、セラック、ロジン(松脂)、エステルガム、硬化ロジン、脱色セラック、白セラック等が挙げられる。無機系バインダーとしては、シリカゲル、アルカリケイ酸、シリコンアルコキシド等の金属アルコキシド、これらの(加水分解)縮合物、リン酸塩等を挙げられる。これらのバインダーは、1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明の塗料組成物は、重合体粒子とバインダーとを必須成分として含み、溶媒は任意成分として用いられてもよい。また、その他の任意成分としては、架橋剤等の硬化剤、硬化助剤等の硬化触媒、可塑剤、消泡剤・レベリング剤、チクソトロピック剤、つや消し剤、界面活性剤、難燃剤、顔料湿潤剤・分散剤、滑剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、その他(熱)安定剤、防腐剤、防かび剤、防藻剤、防食・防錆剤、染料、顔料等の従来公知の添加剤が挙げられる。これらの添加剤は、要求性能に応じて適宜調整されればよい。
塗料組成物中の重合体粒子含有量は、重合体粒子およびバインダーの固形分合計質量に対して0.1質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましく、また99質量%以下が好ましく、90質量%以下がより好ましい。重合体粒子含有量が0.1質量%以上であれば、重合体粒子を塗料組成物中に含有させることによって得られる効果を確実に発揮させることができる。重合体粒子含有量が90質量%以下であれば、得られる組成物の可撓性を十分確保することができる。
本発明の重合体粒子を含む組成物は、光学樹脂に使用することができる。具体的には、本発明の重合体粒子を透明樹脂に分散させたものは、光学樹脂組成物として用いることができる。光学樹脂組成物としては、例えば、(1)前記成形体用組成物において、樹脂として透明樹脂を用いて得られるもの、(2)前記塗料組成物において、バインダーとして透明樹脂を用いて得られる塗料用組成物を基材表面に積層(コーティング)することにより得られるものが示される。
前記(1)の形態の光学樹脂組成物を得る方法としては、例えば、重合体粒子を基材樹脂中に混合し、適当な押出機により溶融混練しながら押出してペレットを形成する方法等が挙げられる。また、その他必要に応じて、耐候性や耐UV性などの物性を高めるために、各種添加剤や安定剤および難燃剤等の添加物を加えてもよい。
前記(2)の形態の光学樹脂組成物を得るに当たり、重合体粒子とバインダーとを含む混合物を積層する方法としては、例えば、リバースロールコート法、グラビアコート法、ダイコート法、コンマコート法、スプレーコート法等の公知の各種積層方法が挙げられる。
本発明の光学樹脂組成物は、例えば、光拡散板(光拡散シート)、光拡散インク、光拡散フィルム、防眩フィルム、反射フィルム、導光板、各種ディスプレイのプラスチック基板、およびタッチパネル用基板等に適用できる。本発明の光学樹脂組成物は、また、包装用途、窓に貼る紫外線遮断フィルム、アンチブロッキングフィルム等としても有用である。
以下に、実施例を示すことにより本発明を更に詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらに限定されるものではない。
(1)重合体粒子の作製
下記製造例1〜10に従い、重合体粒子1〜10を作製した。表1に、重合体粒子の製造に用いた原料単量体の配合比率(質量基準)と、重合体粒子の平均粒子径、変動係数、最頻粒子径/平均粒子径の値を載せた。
(1−1)製造例1
冷却管、温度計、および滴下装置を備えた反応器に、イオン交換水280質量部、25%アンモニア水5質量部、メタノール120質量部とを仕込み、撹拌して混合溶液を得た。混合溶液を25℃に保持し、撹拌しながら、そこに3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン40質量部を滴下装置から添加し、前記温度で3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシランの加水分解および縮合を行って、原料重合体粒子(ポリシロキサン粒子)の懸濁液を得た。別途、スチレン220質量部、ジビニルベンゼン(新日鐵化学株式会社製、DVB960)80質量部、2−[2'−ヒドロキシ−5'−(メタクリロキシエチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール(大塚化学株式会社製、RUVA−93)60質量部、2,2'−アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)(和光純薬工業株式会社製、V−65)3質量部、アニオン性界面活性剤(第一工業製薬株式会社製、LA−10)1.5質量部、イオン交換水400質量部とを、ホモミキサーにより15分間乳化分散させることにより分散液を得た。前記原料重合体粒子懸濁液を、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシランの加水分解および縮合反応の開始から2時間撹拌し続けた後、前記原料重合体粒子懸濁液に滴下装置から前記分散液を添加し、25℃で1時間撹拌した。その後、そこにイオン交換水3500質量部を添加し、窒素雰囲気下、反応溶液の温度を65℃に昇温した後、65±2℃で2時間保持し、ラジカル重合反応を行うことにより重合体粒子分散液を得た。前記重合体粒子分散液を自然沈降により固液分離し、得られた沈殿物を90℃で10時間熱風乾燥させることにより乾燥物を得て、この乾燥物を粉砕機(日本ニューマチック工業株式会社製、超音速ジェット粉砕機IDS−2型)により粉砕処理し、重合体粒子1を得た。
(1−2)製造例2
メチルメタクリレート25質量部、2−[2'−ヒドロキシ−5'−(メタクリロキシエチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール(大塚化学株式会社製、RUVA−93)10質量部、ジビニルベンゼン(新日鐵化学株式会社製、DVB960)25質量部、2,2'−アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)(和光純薬工業株式会社製、V−65)5質量部、t−ブチルハイドロキノン0.5質量部、ラウリル硫酸ナトリウム0.5質量部、イオン交換水100質量部とを混合および撹拌して乳化し、分散液を得た。平均粒子径1μmの単分散ポリスチレンラテックス(固形分濃度5%、架橋性単量体は含まない)40質量部に、前記分散液、およびポリビニルアルコールの2%水溶液200質量部とを5時間かけて連続的に滴下した。滴下終了後、85℃に昇温して後、同温度で3時間保持し、重合体粒子分散液を得た。前記重合体粒子分散液を自然沈降により固液分離し、得られた沈殿物を90℃で10時間熱風乾燥させることにより乾燥物を得て、この乾燥物を粉砕機(日本ニューマチック工業株式会社製、超音速ジェット粉砕機IDS−2型)により粉砕処理し、重合体粒子2を得た。
(1−3)製造例3
還流冷却器、温度計、窒素ガス導入管、および撹拌機(特殊機加工工業株式会社製、T.K.ホモジナイザー)を備えたフラスコに、分散安定剤としてのポリオキシエチレンアルキルスルホアンモニウム(第一工業製薬株式会社製、ハイテノール(登録商標)N−08)0.5質量部を脱イオン水600質量部とともに仕込み、溶解させた。そこに、2−[2'−ヒドロキシ−5'−(メタクリロキシエチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール(大塚化学株式会社製、RUVA−93)10質量部とスチレン75質量部とジビニルベンゼン(新日鐵化学株式会社製、DVB960)15質量部と重合開始剤としての過酸化ラウロイル1.0質量部とを加え、フラスコ内の内容物を回転速度4000rpmで5分間撹拌することにより、均一な懸濁液を得た。フラスコ内に窒素ガスを吹き込みながら、前記懸濁液を加熱して75℃に昇温した後、同温度を保持しながら1時間撹拌し、ラジカル重合反応を行うことにより重合体粒子分散液を得た。前記重合体粒子分散液を自然沈降により固液分離し、得られた沈殿物を90℃で10時間熱風乾燥させることにより乾燥物を得て、この乾燥物を粉砕機(日本ニューマチック工業株式会社製、超音速ジェット粉砕機IDS−2型)により粉砕処理し、重合体粒子3を得た。
(1−4)製造例4
製造例1において、2−[2'−ヒドロキシ−5'−(メタクリロキシエチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール60質量部の代わりに、メチルメタクリレート60質量部を用いた以外は、製造例1と同様の操作を行い、重合体粒子4を得た。
(1−5)製造例5
メチルメタクリレート64.9質量部、2−[2'−ヒドロキシ−5'−(メタクリロキシエチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール(大塚化学株式会社製、RUVA−93)10質量部、エチレングリコールメタクリレート20質量部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート0.1質量部、2,2'−アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)(和光純薬工業株式会社製、V−65)5質量部、t−ブチルハイドロキノン0.5質量部、ラウリル硫酸ナトリウム0.5質量部、イオン交換水100質量部とを混合および撹拌して乳化し、分散液を得た。平均粒子径1μmの単分散ポリスチレンラテックス(固形分濃度5%、架橋性単量体は含まない)5質量部に、前記分散液、およびポリビニルアルコールの2%水溶液200質量部とを5時間かけて連続的に滴下した。以降の操作は製造例2と同様に行い、重合体粒子5を得た。
(1−6)製造例6
製造例5において、メチルメタクリレートを65質量部用い、2−ヒドロキシエチルメタクリレートを用いなかった以外は、製造例5と同様の操作を行い、重合体粒子6を得た。
(1−7)製造例7
冷却管、温度計、および滴下装置を備えた反応器に、イオン交換水70質量部、25%アンモニア水1.25質量部、メタノール30質量部とを仕込み、撹拌して混合溶液を得た。混合溶液を25℃に保持し、撹拌しながら、そこに3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン10質量部を滴下装置から添加し、前記温度で3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシランの加水分解および縮合を行って、原料重合体粒子(ポリシロキサン粒子)の懸濁液を得た。別途、メチルメタクリレート63質量部、2−[2'−ヒドロキシ−5'−(メタクリロキシエチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール(大塚化学株式会社製、RUVA−93)10質量部、エチレングリコールメタクリレート15質量部、ヒドロキシエチルメタクリレート0.5質量部、2,2'−アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)(和光純薬工業株式会社製、V−65)0.75質量部、アニオン性界面活性剤(第一工業製薬株式会社製、LA−10)0.38質量部、イオン交換水100質量部とを、ホモミキサーにより15分間乳化分散させることにより分散液を得た。前記原料重合体粒子懸濁液を、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシランの加水分解および縮合反応の開始から2時間撹拌し続けた後、前記原料重合体粒子懸濁液に滴下装置から前記分散液を添加し、25℃で1時間撹拌した。その後、そこにイオン交換水875質量部を添加し、窒素雰囲気下、反応溶液の温度を65℃に昇温した後、65±2℃で2時間保持し、ラジカル重合反応を行うことにより重合体粒子分散液を得た。以降の操作は製造例1と同様に行い、重合体粒子7を得た。
(1−8)製造例8
製造例3において、スチレン75質量部とジビニルベンゼン15質量部の代わりに、メチルメタクリレート65質量部とエチレングリコールメタクリレート25質量部を用い、粉砕処理後に分級処理を行った以外は、製造例3と同様の操作を行い、重合体粒子8を得た。
(1−9)製造例9
製造例7において、メチルメタクリレート37質量部とエチレングリコールメタクリレート40質量部とヒドロキシエチルメタクリレート3質量部を用いた以外は、製造例7と同様の操作を行い、重合体粒子9を得た。
(1−10)製造例10
製造例6において、メチルメタクリレート80質量部とエチレングリコールメタクリレート5質量部を用いた以外は、製造例6と同様の操作を行い、重合体粒子10を得た。
(2)光拡散フィルムの作製
(2−1)フィルム1の作製
製造例1で得た重合体粒子(重合体粒子1)22質量部、UV硬化型樹脂(JSR株式会社製、KZ7987C)216質量部、UV硬化型アクリル樹脂(共栄社化学株式会社製、ライトアクリレート(登録商標)DPE6A)36質量部、メチルイソブチルケトン126質量部の混合物を、サンドミルにより30分間撹拌して分散させることによりインキを得た。膜厚100μm、透過率92%のPETフィルムの片面上に、前記インキをリバースコーティング方式により塗布し、100℃で2時間乾燥後、120W/cm集光型高圧水銀灯1灯により紫外線照射(照射距離10cm、照射時間30秒)をして、塗工膜を硬化させ、厚さ4μmの光拡散層を形成したフィルム1を得た。
(2−2)フィルム2〜10の作製
フィルム1の作製において、製造例1で得た重合体粒子の代わりに製造例2〜10で得た重合体粒子(重合体粒子2〜10)を用いた以外は、フィルム1の作製方法と同様にして、フィルム2〜10を得た。フィルム2〜10における単位面積当たりのインキ塗布量は、フィルム1における単位面積当たりのインキ塗布量と同じになるようにした。
(3)塗料組成物の作製
(3−1)塗料組成物5の作製
アクリル系樹脂溶液(株式会社日本触媒製、アロセット5247、固形分45%)100質量部に、製造例5で得た重合体粒子(重合体粒子5)を36質量部と、トルエン270質量部とを配合して、1時間撹拌し、塗料組成物5を得た。
(3−2)塗料組成物6〜8,10の作製
塗料組成物5の作製において、製造例5で得た重合体粒子の代わりに製造例6〜8,10で得た重合体粒子(重合体粒子6〜8,10)を用いた以外は、塗料組成物5の作製方法と同様にして、塗料組成物6〜8,10を得た。
(4)分析および評価試験方法
(4−1)重合体粒子の平均粒子径、最頻粒子径、変動係数の測定方法
重合体粒子の平均粒子径と最頻粒子径と変動係数は、次の方法により求めた。すなわち、ベックマン・コールター株式会社製マルチサイザーIIIコールターカウンターを用いて、体積基準の粒度分布を計測し、得られた体積基準の粒度分布より、平均粒子径と最頻粒子径と粒子径の標準偏差を算出した。
重合体粒子の粒子径の変動係数は、下記式により算出した。
変動係数(%)=粒子径の標準偏差/平均粒子径×100
(4−2)フィルムの全光線透過率と鏡面反射率の測定方法
紫外・可視分光光度計(株式会社島津製作所製、製品名UV−3100)を用い、波長550nmにおけるフィルムの全光線透過率と鏡面反射率を測定した。全光線透過率の測定は、硫酸バリウム積分球を紫外・可視分光光度計に取り付けて行った。全光線透過率は、フィルム1〜4が形成された膜厚100μmのPETフィルム(透過率92%)の全光線透過率を100%としたときの相対値で表した。鏡面反射率は、アルミ蒸着ミラーの鏡面反射率を100%としたときの相対値で表した。全光線透過率と鏡面反射率の和をもって、フィルムの光拡散性能を評価した。
(4−3)フィルムの耐光性試験方法
JIS K 6783bに従い、サンシャインウェザーメーター(スガ試験機株式会社製、WEL−SUN−HCL型)を用いて、フィルムに1000時間(屋外暴露1年間に相当)照射することにより、屋外暴露促進試験を行った。試験前後でのフィルムのヘーズ値を測定し、試験前と試験後のヘーズ値の比を求め、下記の基準により評価した。なお、ヘーズ値は、ヘーズ測定機(日本電色工業株式会社製、NDH−2000)により測定を行った。
◎:処理後ヘーズ値/処理前ヘーズ値≦2.0・・・耐光性極めて良好
○:2.0<処理後ヘーズ値/処理前ヘーズ値≦3.0・・・耐光性良好
×:3.0<処理後ヘーズ値/処理前ヘーズ値・・・耐光性不良
(4−4)フィルムの輝度測定方法
フィルムを導光板方式バックライト装置の上面に置き、フィルムから50cm離れた鉛直上方に輝度計(株式会社トプコン製、BM−7)を設置し、輝度計により輝度を測定した。輝度は、フィルム8の輝度を100として、相対値で表した。
(4−5)塗料組成物の安定性評価試験方法
塗料組成物をガラス瓶に入れ、室温で1日、および1週間放置した後、沈降物および上澄みの生成状況を確認した。沈降物の評価については、沈降物が認められない場合を「A」と評価し、沈降物が認められた場合を「B」と評価した。上澄みの評価については、上澄みが認められない場合を「A」と評価し、上澄みが認められた場合を「B」と評価した。
(5)評価試験結果
表2に、フィルムの評価試験結果を、表3に塗料組成物の評価試験結果を載せた。
(5−1)フィルムの評価試験結果
フィルム1,2,5〜7,9,10は、各々、重合体粒子1,2,5〜7,9,10を用いて作製された。重合体粒子1,2,5〜7,9,10は、平均粒子径が4μm〜8μmの範囲であり、変動係数が15%以下であり、ベンゾトリアゾール骨格を含む化学構造を含有していた。従って、これらの重合体粒子を用いて得られたフィルム1,2,5〜7,9,10は、光学特性に優れたものとなった。具体的には、フィルム1,2,5〜7,9,10は、いずれも耐光性に優れたものとなった。フィルム1,2は、全光線透過率と鏡面反射率の和がフィルム3のそれよりも向上し、フィルム1,7は相対輝度がフィルム3,8よりも向上し、光拡散性能に優れたものとなった。
耐光性については、特に、フィルム1,5〜7で良好な結果となった。フィルム1,5〜7には、重合体粒子1,5〜7が含まれていたが、これらの重合体粒子は、架橋性単量体として、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、および/または、エチレングリコールジメタクリレートが用いられており、さらに、架橋性単量体が、重合体粒子の原料中15質量%〜30質量%含まれていた。
一方、フィルム3,8は、各々、重合体粒子3,8を用いて作製された。重合体粒子3,8は、平均粒子径が4μmであり、ベンゾトリアゾール骨格を含む化学構造を含有するものであったが、変動係数が20%を超えていたため、フィルム3は、全光線透過率と鏡面反射率の和が96%と低い値となり、光拡散性能が劣り、フィルム3,8は相対輝度に劣るものとなった。
フィルム4は、重合体粒子4を用いて作製された。重合体粒子4は、その作製において、2−[2'−ヒドロキシ−5'−(メタクリロキシエチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾールの代わりにメチルメタクリレートを用いた以外は、重合体粒子1と変わりはない。そのため、重合体粒子4の平均粒子径と変動係数は、重合体粒子1のそれらとほぼ同じ値となった。しかし、重合体粒子4はベンゾトリアゾール骨格を含む化学構造とベンゾフェノン骨格を含む化学構造のいずれも含有していなかったため、重合体粒子4を用いて得られたフィルム4は、全光線透過率と鏡面反射率の和が103%と、フィルム1に比べ低い値となり、光拡散性能が劣った。さらに、フィルム4は耐光性にも劣るものとなったため、実際の使用においては、時間の経過とともにさらに全光線透過率と鏡面反射率が劣ってくる。従って、フィルム4では、長期にわたり安定した全光線透過率と鏡面反射率を得ることが難しい。
(5−2)塗料組成物の評価試験結果
塗料組成物5〜7,10は、平均粒子径が5.5μm〜7μmの範囲であり、変動係数が15%以下であり、ベンゾトリアゾール骨格を含む化学構造を有する重合体粒子5〜7,10を用いて作製されたが、これらはいずれも、1日放置をしても沈降物および上澄みの生成は認められなかった。また、塗料組成物5,7は、1週間放置しても、沈降物および上澄みの生成は認められず、分散安定性に優れることが分かった。塗料組成物5,7では、重合体粒子5,7の製造時に、原料単量体としてヒドロキシエチルメタクリレートを用いたことが、分散安定性の向上につながったものと判断される。なお、塗料組成物6,10であっても、塗料としての使用時に振盪等の再分散処理を施せば、塗料としての使用には問題はなかった。従って、塗料組成物5〜7,10は、いずれも、塗料としての使用には問題はなかった。
一方、塗料組成物8は、重合体粒子8を用いて作製されたが、重合体粒子8は変動係数が20%を超える多分散粒子であったため、粗大粒子の沈降が起こりやすく、1日放置すると沈降物および上澄みの生成が認められた。塗料組成物8は、分散安定性が悪く、塗料としての使用にやや難があった。