JP5517336B2 - 保冷容器 - Google Patents

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Description

この発明は、粒子のべたつきがなく、粒子移送が容易であり、配管に被覆した薬剤が剥離することがない、発泡性スチレン系樹脂粒子ならびにこれを用いた予備発泡粒子およびその発泡成形体としての保冷容器に関する。
従来から、スチレン系樹脂粒子中に物理発泡剤を含浸させてなる発泡性スチレン系樹脂粒子を予備発泡機にて予備発泡させて予備発泡粒子を製造し、この予備発泡粒子を発泡成形機の金型内に充填した上で加熱して二次発泡させて互いに融着一体化させて所望形状を有する発泡成形品を製造していた。
このような発泡性スチレン系樹脂粒子に要求される特性としては、発泡性スチレン系樹脂粒子を水蒸気などによって加熱して予備発泡させる際に、複数個の発泡性スチレン系樹脂粒子同士が予備発泡過程において合体して一つになる、所謂、ブロッキングを生じないことと、予備発泡粒子を二次発泡させる際に、予備発泡粒子同士が充分に熱融着一体化することが挙げられる。
発泡性スチレン系樹脂粒子を予備発泡させる際に、上述した、予備発泡粒子同士のブロッキングが生じると、予備発泡粒子を発泡成形機の金型内に充填する際に、フィーダー内にて予備発泡粒子が詰まってしまい、その結果、発泡成形機の金型内への予備発泡粒子の充填不良が発生し、満足のいく発泡成形品を得ることができないという問題点が発生する。又、予備発泡粒子の二次発泡時に、予備発泡粒子同士が充分に熱融着一体化しないと、得られる発泡成形品の機械的強度が不充分となるという問題点を生じる。
そこで、発泡性スチレン系樹脂粒子の予備発泡中における発泡性スチレン系樹脂粒子同士のブロッキングを防止するべく、発泡性スチレン系樹脂粒子の表面に、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウムなどの脂肪酸の金属塩などのブロッキング防止剤を付着させることが行なわれている。
更に、予備発泡粒子の二次発泡時における予備発泡粒子同士の熱融着性を向上させることを目的として、発泡性スチレン系樹脂粒子の表面を脂肪酸トリグリセライドで被覆したり、或いは、発泡性スチレン系樹脂粒子の表面に静電気によって埃などが付着するのを防止するために、発泡性スチレン系樹脂粒子の表面を脂肪酸モノグリセライドで被覆することが行われている。
具体的には、特許文献1に、発泡性スチレン系重合体粒子の表面に、所定のグリセリン脂肪酸エステル及びステアリン酸亜鉛及び/又は無機物を塗布してなる発泡性スチレン系重合体粒子が提案されており、発泡性スチレン系重合体粒子の表面に塗布した塗布剤が剥離しないことが記載されている。
また、特許文献2には、発泡性スチレン系樹脂粒子の表面が、所定径の脂肪酸グリセリンエステル粒子と脂肪酸金属塩で被覆された発泡性スチレン系樹脂粒子が提案されている。
一方、発泡性スチレン系樹脂粒子を発泡させて発泡成形品を製造する過程において、発泡性スチレン系樹脂粒子は、一端部が予備発泡機に接続されてなる発泡性粒子流通管(配管)内を予備発泡機に向かって吸引する、所謂、空気輸送によって発泡性粒子流通管を通じて予備発泡機内に供給されると共に、この予備発泡機で予備発泡されて得られた予備発泡粒子も、一端部がサイロ或いは発泡成形機に接続されてなる予備発泡粒子流通管内をサイロ或いは発泡成形機に向かって吸引することによって予備発泡粒子流通管を通じてサイロ或いは発泡成形機内に供給され、これら粒子流通管は、予備発泡機や発泡成形機の配置に応じて部分的或いは全体的に湾曲させた状態で配設されている。
特開平4−320434号公報 特開2006−176602号公報
しかし、特許文献1で提案されている発泡性スチレン系重合体粒子では、グリセリン脂肪酸エステルとして、好ましくは凝固点が40℃以下の液状或いはペースト状のものを用いており(段落番号〔0007〕)、このようなグリセリン脂肪酸エステルを用いた発泡性スチレン系重合体粒子を粒子流通管内に流通させると、粒子流通管の湾曲部、特に、直角に屈曲した部分に発泡性スチレン系重合体粒子が衝突した際に、発泡性スチレン系重合体粒子の表面に塗布したグリセリン脂肪酸エステルが粒子流通管の内壁面にろう状に容易に付着する。
更に、粒子流通管の内壁面に付着したグリセリン脂肪酸エステルが、この後に粒子流通管内を流通してくる発泡性スチレン系重合体粒子の表面からのグリセリン脂肪酸エステルや脂肪酸の金属塩の剥離を助長し、これら剥離した塗布剤が粒子流通管の内壁面に徐々にろう状に堆積し、その結果、粒子流通管内の流通空間が狭くなって、発泡性スチレン系重合体粒子や予備発泡粒子の流通速度が低下したり、或いは、粒子流通管の内壁面にろう状に堆積した堆積物が内壁面から脱離し、この脱離した堆積物が発泡成形品に混入してしまうといった問題点があった。
また、特許文献2で提案されている発泡性スチレン系樹脂粒子においても、粒子流通管の内壁面への付着低減効果は十分でなく、更なる低減が求められている。
本発明の目的は、予備発泡機、サイロ又は発泡成形機への流通過程において、被覆剤の脱落を抑え、粒子流通管(配管)の内壁面への被覆剤の付着が極めて少ない発泡性スチレン系樹脂粒子を用いた保冷容器を提供するところにある。
かくして本発明の保冷容器によれば、スチレン系樹脂粒子に発泡剤を含浸させてなる発泡性スチレン系樹脂粒子を予備発泡し、この予備発泡粒子を成形して得られるポリスチレン系発泡成形体の保冷容器であって、
前記発泡性スチレン系樹脂粒子は、該樹脂粒子表面を組成物によって被覆されており、当該組成物は、当該樹脂粒子表面を被覆する常温で液体の多価アルコールAと、当該樹脂粒子100重量部に対して0.01〜0.3重量部の脂肪酸モノグリセリドと、当該樹脂粒子100重量部に対して0.03〜0.3重量部の脂肪酸金属塩と、常温で液体の多価アルコールBからなり、上記多価アルコールA、Bは、当該樹脂粒子100重量部に対して0.02〜0.3重量部含有し、2回に分けて被覆されており、
前記ポリスチレン系発泡成形体は粒子径が600μm〜1400μmのポリスチレン系樹脂粒子であり、前記ポリスチレン系発泡成形体の密度が0.01g/cm〜0.033g/cmであり、前記ポリスチレン系発泡成形体の平均弦長が20μm〜150μmであり、前記ポリスチレン系発泡成形体の5%圧縮強度は3N/cm〜20N/cmであることを特徴とする保冷容器が提供される。
これにより、予備発泡時にブロッキングがなく、さらに、多価アルコールを2回に分けて多価アルコールA、Bとして被覆することで、樹脂を移送するときに表面に被覆した薬剤が剥離し辛く、薬剤の展着効果が向上できる。
特に、予備発泡工程や、粒子流通管(配管)内の流通過程、特に、粒子流通管(配管)が大きく屈曲している場合にあっても、被覆剤が発泡性スチレン系樹脂粒子の表面から不測に脱離したり或いは粒子流通管の内壁面にろう状の堆積物が堆積するのを防止することができ、発泡性スチレン系樹脂粒子及びこれを予備発泡させて得られる予備発泡粒子の粒子流通管内における円滑な流通を確保することができると共に、帯電防止性に優れた発泡成形品としての保冷容器を得ることができる。
発泡性ポリスチレン樹脂粒子の吸引輸送装置を示す概略図である。 発泡性ポリスチレン樹脂粒子の粒度を示す数値及びその分布図である。
以下、本発明の実施の形態をより詳細に説明する。なお、以下の説明は本発明の実施の形態に係る発泡性ポリスチレン樹脂粒子及びその製造方法に適用される。
(スチレン系樹脂粒子)
本発明における発泡性スチレン系樹脂粒子を構成するスチレン系樹脂としては、特に限定されないが、一般に知られているスチレン系樹脂の粒状物でスチレンを主成分とするものであり、スチレンの単独重合体でも、α−メチルスチレン、パラメチルスチレン、t−ブチルスチレン、クロルスチレンなどのスチレン系誘導体、メチルアクリレート、ブチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、セチルメタクリレートなどのアクリル酸およびメタクリル酸のエステル、あるいはジメチルフマレート、エチルフマレートなどの各種単量体との共重合体でもよい。また、ジビニルベンゼン、アルキレングリコールジメタクリレート等の多官能性単量体を併用してもよい。重量平均分子量は一般に発泡ポリスチレンとして使用可能な15万〜40万、好ましくは25万〜35万のものを使用することができる。
ここで、本発明の発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法としては、汎用の製造方法が用いられ、スチレン系樹脂の懸濁重合時に水性懸濁液中に発泡剤を含有させ、スチレン系樹脂粒子中に発泡剤を含浸させて発泡性スチレン系樹脂粒子を製造する方法、スチレン系樹脂粒子を汎用の方法で製造し、このスチレン系樹脂粒子に発泡剤を含浸させて発泡性スチレン系樹脂粒子を製造する方法などが挙げられる。なお、スチレン系樹脂の懸濁重合時に発泡剤を含浸させる場合には、モノマーの重合転化率が85重量%以上の時に発泡剤を水性懸濁液中に含有させることが好ましい。
なお、上記スチレン系樹脂の懸濁重合時には重合開始剤が用いられるが、この重合開始剤としては、汎用のものが用いられ、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、オルソクロロベンゾイルパーオキサイド、オルソメトキシベンゾイルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、キュメンハイドロパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシビバレート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t−ブチルパーオキシアセテート、2,2−t−ブチルパーオキシブタン、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイドなどの過酸化物系重合開始剤、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス( 2,4−ジメチルバレロニトリル) 、2,2’−アゾビス( 2,3−ジメチルブチロニトリル) 、2,2’−アゾビス( 2−メチルブチロニトリル) 、2,2’−アゾビス( 2,3,3−トリメチルブチロニトリル) 、2,2’−アゾビス( 2−イソプロピルブチロニトリル) 、1,1’−アゾビス( シクロヘキサン−1−カルボニトリル) 、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2−(カルバモイルアゾ) イソブチロニトリル、4,4’−アゾビス(4−シアノバレリン酸)、ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレートなどが挙げられる。
本発明における発泡性スチレン系樹脂粒子の粒子径は、600μm〜1400μmの間にあることが好ましい。600μm未満では得られる成形体の強度が低下するので好ましくなく、一方、1400μmより大きいと、金型への充填性が悪くなるので好ましくない。ここで、粒子径は、JISZ8815で求めた値を意味する。600μm〜1400μmの粒子を得る方法としては、通常の懸濁重合法で得られた粒子を分級してもよいし、懸濁シード重合法を用いてもよい。懸濁シード重合法を用いる方がより高い収率が得られるため好ましい。
(発泡剤)
本発明において使用される発泡剤としては、従来から発泡性スチレン系樹脂粒子の製造に用いられているものであれば特に限定されず、例えば、プロパン、ノルマルブタン、イソブタン、ノルマルペンタン、イソペンタン、ネオペンタン、ノルマルヘキサンなどの脂肪族炭化水素、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサンなどの脂環式炭化水素などが挙げられるが、これらは単独で用いても2種以上を併用してもよい。本発明における易揮発性発泡剤の使用量は、2〜7重量%である。好ましくは3〜6重量%である。2重量%より少ないと、成形時の融着率が低下する傾向を有するため好ましくなく、7重量%を越えると、成形体の粒子間隙が多くなり表面美麗性を損なう傾向を有する上に、成形サイクルが長くなるため好ましくない。これらの発泡剤は発泡性スチレン系樹脂粒子の重合工程中に添加しても良いし、重合工程終了後に添加してもよい。
(脂肪酸モノグリセライド)
本発明において使用される脂肪酸モノグリセライドとしては、特に限定されず、例えば、ステアリン酸モノグリセライド、パルミチン酸モノグリセライド、ベヘニン酸モノグリセライド、12−ヒドロキシステアリン酸モノグリセライド、オレイン酸モノグリセライド、カプリン酸モノグリセライド、ラウリン酸モノグリセライドが挙げられ、このうち、融点が50〜80℃であるステアリン酸モノグリセライド(66℃)、パルミチン酸モノグリセライド(65℃)、ベヘニン酸モノグリセライド(80℃)、12−ヒドロキシステアリン酸モノグリセライド(74℃)、ラウリン酸モノグリセライド(57℃)を用いることが好ましい。融点が50℃以下であると、発泡性スチレン系樹脂粒子やこれを予備発泡させて得られる予備発泡粒子を粒子流通管(配管)内に流通させた際、粒子流通管(配管)の内壁面にろう状の堆積物が付着しやすくなるので好ましくない。一方、融点が80℃を越えると発泡性スチレン系樹脂粒子の表面から被覆剤が脱離しやすくなるので好ましくない。なお、ここでいう脂肪酸モノグリセライドの融点は、示差走査熱量計により5〜10mgの脂肪酸モノグリセライドを0℃から150℃まで昇温速度10℃/分で昇温した時に得られるDSC曲線において、吸熱ピークのピーク温度として測定される温度をいう。
脂肪酸モノグリセライドの使用量は発泡性スチレン系樹脂粒子100重量部に対して0.01〜0.3重量部が好ましく、0.01〜0.2重量部がさらに好ましい。0.01重量部より少ないと、得られる成形体の帯電防止性能が十分でなく埃付着により汚れが目立ちやすいので好ましくなく、一方0.3重量部を超えると、添加量を増加させた効果があまり見られず、発泡性スチレン系樹脂粒子やこれを予備発泡させて得られる予備発泡粒子を粒子流通管(配管)内に流通させた際、粒子流通管(配管)の内壁面にろう状の堆積物が堆積しやすくなるので好ましくない。
(脂肪酸金属塩)
脂肪酸金属塩としては、例えば、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸アルミニウム、ラウリン酸亜鉛、ラウリン酸カルシウムなどが挙げられるが、これらの内ステアリン酸亜鉛を用いるのが好ましい。通常、市販されているステアリン酸亜鉛を構成する脂肪酸は、主成分となるステアリン酸と、パルミチン酸、ミリスチン酸、ラウリン酸、アラキン酸、ベヘン酸などとの混合物であり、本発明におけるステアリン酸亜鉛もこのような市販品を使用することができる。
脂肪酸金属塩の使用量は発泡性スチレン系樹脂粒子100重量部に対して0.03〜0.3重量部が好ましく、0.05〜0.2重量部がさらに好ましい。0.03重量部より少ないと、発泡性スチレン系樹脂粒子の予備発泡時における樹脂粒子同士のブロッキングが発生したり或いは発泡粒子同士の熱融着性が低下することがあるので好ましくない。一方0.3重量部を超えると、添加量を増加させた効果があまり見られず、発泡性スチレン系樹脂粒子やこれを予備発泡させて得られる予備発泡粒子を粒子流通管内に流通させた際、粒子流通管の内壁面にろう状の堆積物が堆積しやすくなるので好ましくない。
(多価アルコール)
本発明では、脂肪酸モノグリセライドを用い、常温で液体の多価アルコールを多価アルコールA、Bとして2回使用することで展着効果を付与している。
多価アルコールとしては、常温で液体であれば、特に限定されず、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、それ以上のポリエチレングリコール類、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、それ以上のポリプロピレングリコール類、グリセリン、ジグリセリン、それ以上のポリグリセリン類等が挙げられ、中でも安価なポリエチレングリコールが特に好ましい。
更には、30〜80cpの粘度を有する多価アルコールを用いることが好ましく、40〜70cpが更に好ましい。粘度が30cpより小さいと、付着効果が弱く、被覆した薬剤が移送中に多く剥離してしまう。一方、80cpを越えると粘性が高くなりすぎるため、粒子がべとつき、被覆した薬剤が移送中に多く剥離してしまう。尚、ここでの多価アルコールの粘度は25℃においてB型粘度計(BL型、ローターNo.2、回転数60rpm、30秒後)で測定した値を意味する。
多価アルコールは、当該樹脂粒子100重量部に対して0.02〜0.3重量部含有し、多価アルコールA、Bとして2回に分けて被覆されている。すなわち、多価アルコールの使用量は、1回目の被覆(多価アルコールA)は発泡性スチレン系樹脂粒子100重量部に対して0.01〜0.15重量部が好ましく、0.02〜0.08重量部がさらに好ましい。0.01重量部より少ないと帯電防止効果が低く使用時に静電気等により発火する危険がある。一方、0.15重量部より多く添加しても添加に見合った効果は見られず、また粒子のべとつきにより粉体の被覆が不均一になりやすいので好ましくない。2回目の被覆(多価アルコールB)は発泡性スチレン系樹脂粒子100重量部に対して0.01〜0.15重量部が好ましく、0.02〜0.08重量部がさらに好ましい。0.01重量部より少ないと展着効果が弱く、被覆した薬剤が移送中に多く剥離してしまう恐れがあり、一方、0.15重量部より多く添加すると粒子がべとつき、被覆した薬剤が移送中に多く剥離してしまうので好ましくない。
多価アルコールによる1回目の被覆(多価アルコールA)はレーディゲミキサーなどの混合機内で一定時間混合しても、脱水直後から混合機までのライン内で噴霧してもよい。その後、脂肪酸モノグリセライドや脂肪酸金属塩を混合させて被覆させる。脂肪酸モノグリセライドと脂肪酸金属塩は、特開2006−176602号公報の様に両者を混合して被覆させても別々に被覆させてもよい。別々に被覆する場合は、脂肪酸モノグリセライドを被覆した後に脂肪酸金属塩を被覆させる方が好ましい。最後に再度多価アルコールによる2回目の被覆(多価アルコールB)を混合機内で一定時間混合させ被覆させることが好ましい。
なお、上記混合機としては汎用の混合装置を用いることができ、例えば、ヘンシェルミキサー、スーパーミキサー、レーディゲミキサー、リボンブレンダーなどの容器固定型の混合装置、タンブラーミキサー、V型ブレンダーなどの容器回転形の混合装置などが挙げられる。
(発泡性スチレン系樹脂粒子の予備発泡方法)
本発明における発泡性スチレン系樹脂粒子の予備発泡方法は、従来公知の方法を用いることができる。例えば、回転攪拌式予備発泡装置で、水蒸気を用いて加熱することにより、嵩密度0.01〜0.05g/cm3程度の予備発泡粒子を得ることができる。また、得られた予備発泡粒子を所望の形状の金型内に充填し、水蒸気等を用いて加熱することにより発泡成形体とすることができる。
(成形品)
本発明の発泡性スチレン系樹脂粒子を予備発泡及び成形して得られた成形品は、帯電防止性に優れていることから、汚れにくい成形品として保冷容器に利用することが可能である。
なお、上記発泡成形体の平均弦長は、20〜150μmが好ましく、50〜120μmがより好ましい。これは、発泡成形体の気泡の平均弦長が小さいと、発泡成形体中における気泡壁の数、即ち、気泡壁の表面積が多くなり過ぎて各気泡壁の厚さが薄くなり、気泡壁の数は多くなって熱の遮断回数は多くなるものの、気泡壁による熱の遮断効果の低下度合いの方が大きくなってしまい、結果として、発泡成形体の収縮が大きくなってしまう。一方、発泡成形体の平均弦長が大きいと、発泡成形体の厚み方向における全体の気泡数が減少し、その結果、発泡成形体の強度が低下してしまうからである。
上記発泡成形体の密度は、低いと、ポリスチレン系樹脂発泡成形体の独立気泡率が低下して、ポリスチレン系樹脂発泡成形体の断熱性や機械的強度が低下することがある一方、高いと、型内発泡成形における一サイクルに要する時間が長くなり、ポリスチレン系樹脂発泡成形体の生産効率が低下することがあるので、0.01〜0.033g/cmが好ましい。
上記発泡成形体の5%圧縮強度は、低いと、保冷容器として持ち歩く際に割れる恐れがある一方、高いと、ポリスチレン系樹脂発泡成形体の生産効率が低下することがあるので好ましくない。従って、上記発泡成形体の5%圧縮強度は、3N/cm〜20N/cmである。
以下、実施例及び比較例により本発明を説明するが、本発明はこれに限定されない。
(粒子径測定)
JIS標準ふるい目開き1.7mm、1.4mm、1.18mm、1.0mm、0.85mm、0.71mm、0.6mm、0.5mmの篩いで分級し、累積重量分布曲線を求めた。
(粘度測定)
多価アルコールを200ml規格瓶の肩口まで移し入れ、東京計器製の前記B形粘度計(BL型、ローターNo.2、回転数60rpm、30秒後)を用い、25℃にて測定を行った。
(実施例1)
発泡剤としてブタン5.5重量%及び発泡助剤としてジイソブチルアジペート0.5重量%を含有する粒子径が0.6〜1.2mmの発泡性ポリスチレン粒子8kgをレーディゲミキサー(松板技研株式会社製 商品名「M20」に投入し、更に発泡性ポリスチレン粒子100重量部に対して、表1に示す多価アルコールAとしてポリエチレングリコール(三洋化成工業社製 商品名「PEG−300」、粘度62.5cp)0.04重量部を添加し、230rpmで2分間撹拌した。その後、表1に示すステアリン酸モノグリセライド(理研ビタミン社製 商品名「リケマールS−100P」)0.05重量部を添加し、230rpmで3分間撹拌し、更に表1に示すステアリン酸亜鉛(大日化学工業社製 商品名「ダイワックスZF」0.1重量部を添加し、230rpmで3分間撹拌した。その後、再度表1に示す多価アルコールBとしてポリエチレングリコール(三洋化成工業社製 商品名「PEG−300」、粘度62.5cp)0.04重量部を添加し、230rpmで5分間撹拌し、被覆された発泡性ポリスチレン粒子を得た。
この被覆された発泡性ポリスチレン粒子について、粒子径(粒度分布)を測定したところ、図2に示す様に、平均粒径D50%が0.9042mm、1.180mm(5番目)が0.02%、1.000mm(3番目)が4.78%、0.850mm(max)が70.80%、0.710mm(2番目)が24.32%、0.600mm(4番目)が0.08%の粒子径(粒度分布)を得た。
(実施例2)
実施例1において、多価アルコールA及びBのポリエチレングリコールをプロピレングリコール(旭硝子社製 商品名「プロピレングリコール」、粘度42.7cp)に替えた以外は、実施例1と同様にして被覆された発泡性ポリスチレン粒子を得た。
(実施例3)
実施例1において、多価アルコールA及びBのポリエチレングリコールを低粘度のポリエチレングリコール(三洋化成工業社製 商品名「PEG−200」、粘度46.9cp)に替えた以外は、実施例1と同様にして被覆された発泡性ポリスチレン粒子を得た。
(実施例4)
実施例1において、多価アルコールAの添加量を0.02重量部、ステアリン酸モノグリセライドの添加量を0.03重量部、ステアリン酸亜鉛の添加量を0.05重量部、多価アルコールBの添加量を0.02重量部に替えた以外は、実施例1と同様にして被覆された発泡性ポリスチレン粒子を得た。
(実施例5)
実施例1において、多価アルコールAの添加量を0.1重量部、ステアリン酸モノグリセライドの添加量を0.15重量部、ステアリン酸亜鉛の添加量を0.25重量部、多価アルコールBの添加量を0.1重量部に替えた以外は、実施例1と同様にして被覆された発泡性ポリスチレン粒子を得た。
(実施例6)
特開2006−176602号公報記載の実施例1と同様にして、ステアリン酸モノグリセライドの表面にステアリン酸亜鉛が付着した状態の被覆剤(被覆剤A)を製造した。
次に、発泡剤としてブタン5.5重量%及び発泡助剤としてジイソブチルアジペート0. 5重量%を含有する粒子径が0.6〜1.2mmの発泡性ポリスチレン粒子8kgをレーディゲミキサー(松板技研株式会社製 商品名「M20」)に投入し、更に発泡性ポリスチレン粒子100重量部に対して、表1に示す多価アルコールAとしてポリエチレングリコール(三洋化成工業社製 商品名「PEG−300」、粘度62.5cp)0.04重量部を添加し、230rpmで2分間撹拌した。その後、被覆剤A0.1重量部、ステアリン酸亜鉛(大日化学工業社製 商品名「ダイワックスZF」0.05重量部を順次添加し、230rpmで5分間撹拌した。その後、再度表1に示す多価アルコールBとしてポリエチレングリコール(三洋化成工業社製 商品名「PEG−300」、粘度62.5cp)0.04重量部を添加し、230rpmで5分間撹拌し、被覆された発泡性ポリスチレン粒子を得た。
(実施例7)
実施例1において、ステアリン酸モノグリセライドを12−ヒドロキシステアリン酸モノグリセライド(理研ビタミン社製 商品名「リケマールHC−100」)に替えた以外は、実施例1と同様にして被覆された発泡性ポリスチレン粒子を得た。
(実施例8)
実施例1において、多価アルコールAの添加量を0.01重量部、ステアリン酸モノグリセライドの添加量を0.01重量部、ステアリン酸亜鉛の添加量を0.03重量部、多価アルコールBの添加量を0.01重量部に替えた以外は、実施例1と同様にして被覆された発泡性ポリスチレン粒子を得た。
(実施例9)
実施例1において、多価アルコールAの添加量を0.15重量部、ステアリン酸モノグリセライドの添加量を0.3重量部、ステアリン酸亜鉛の添加量を0.3重量部、多価アルコールBの添加量を0.15重量部に替えた以外は、実施例1と同様にして被覆された発泡性ポリスチレン粒子を得た。
(比較例1)
実施例1において、多価アルコールA及びBを添加しなかったこと以外は、実施例1と同様にして被覆された発泡性ポリスチレン粒子を得た。
(比較例2)
実施例1において、多価アルコールAを添加せず、多価アルコールBの添加量を0.08重量部に替えた以外は、実施例1と同様にして被覆された発泡性ポリスチレン粒子を得た。
(比較例3)
実施例1において、多価アルコールAの添加量を0.08重量部とし、多価アルコールBを添加しなかったこと以外は、実施例1と同様にして被覆された発泡性ポリスチレン粒子を得た。
(比較例4)
実施例1において、多価アルコールA及びBの添加量を0.2重量部に替えた以外は、実施例1と同様にして被覆された発泡性ポリスチレン粒子を得た。
(比較例5)
実施例1において、多価アルコールA及びBの添加量を0.004重量部に替えた以外は、実施例1と同様にして被覆された発泡性ポリスチレン粒子を得た。
(比較例6)
実施例1において、多価アルコールA及びBのポリエチレングリコールを高粘度のポリエチレングリコール(三洋化成工業社製 商品名「PEG−600」、粘度120.2cp)に替えた以外は、実施例1と同様にして被覆された発泡性ポリスチレン粒子を得た。
(比較例7)
実施例1において、ステアリン酸亜鉛の添加量を0.01重量部に替えた以外は、実施例1と同様にして被覆された発泡性ポリスチレン粒子を得た。
(比較例8)
実施例1において、ステアリン酸モノグリセライドの添加量を0.001重量部に替えた以外は、実施例1と同様にして被覆された発泡性ポリスチレン粒子を得た。
(比較例9)
実施例1において、ステアリン酸モノグリセライドの添加量を0.35重量部に替えた以外は、実施例1と同様にして被覆された発泡性ポリスチレン粒子を得た。
(比較例10)
実施例1において、ステアリン酸亜鉛の添加量を0.35重量部に替えた以外は、実施例1と同様にして被覆された発泡性ポリスチレン粒子を得た。
得られた発泡性ポリスチレン粒子の配管付着性、予備発泡時のブロッキング性、成形体の帯電性を下記に示した要領で測定した。その結果を表1に示す。
Figure 0005517336
(配管付着性)
エムエルエンジニアリング社製の吸引輸送装置ML−5500CBを使用して発泡性ポリスチレン樹脂粒子の配管付着性を評価した。
図1はエムエルエンジニアリング社製の吸引輸送装置ML−5500CBを示す概略図である。図1において、1はホッパー、2はその上部に設けられた吸引部である。ホッパー1には放出管11が、吸引部2には内径46mmの導入管21が設けられている。5は吸引部2から吸引エアにて吸引管3を通ってバグフィルター4を介して吸引するブロアである。6は放出管11の真下に設けられたタンクである。タンク6には内径46mmの吸引管61が設けられている。7は地面と垂直に配置された内径46mm、長さ1.4mの金属配管である。金属配管7の両端に内径50mm、長さ1mの樹脂ホースが取り付けられ、樹脂ホースの他方はそれぞれ導入管21と吸引管61に取り付けられる。この状態で、前記タンク6内に被覆された発泡性ポリスチレン樹脂粒子Aを8kg投入し、流速200g/秒で30秒間吸引した。15秒間吸引停止の間に、ホッパー1に充填された発泡性ポリスチレン樹脂粒子Aを8m落下させて、タンク6に受けた。この吸引循環を80回繰り返した後、樹脂ホース8を取り外して重量を測定し、評価前後の重量差から樹脂ホース付着量を求めた。また、導入管21上部の付着物をこすり落とし、その重量を測定して金属配管付着量を求めた。それぞれについて、下記基準に基づいて配管付着性を評価した。
Figure 0005517336
(ブロッキング性)
攪拌装置を備えた内容積が25リットルの予備発泡機を用いて0.05MPaの水蒸気によって配管付着性評価後の発泡性ポリスチレン粒子を嵩倍率60倍に予備発泡させ、得られた予備発泡粒子をJISに規定された目開きが10mmの篩を用いて篩い、この篩上に残った、予備発泡粒子同士が合着してなる結合粒子の重量を測定し、予備発泡粒子の全量に対する結合粒子の重量の百分率を算出し、下記基準に基づいてブロッキング性を評価した。
○・・・1重量%未満
×・・・1重量%以上
(帯電防止性)
配管付着性評価後の発泡性ポリスチレン粒子を用い、攪拌装置を備えた内容積が25リットルの予備発泡機を用いて0.05MPaの水蒸気によって発泡性ポリスチレン粒子を嵩倍率60倍に予備発泡させた。得られた予備発泡粒子をJISに規定された目開きが10mmの篩を用いて篩い、この篩を通過した予備発泡粒子を23℃にて大気圧下に24時間に亘って放置・乾燥させた。次いで、予備発泡粒子を保冷容器形成用金型に充填し、この予備発泡粒子を圧力0.05MPaの水蒸気によって30秒間に亘って加熱し発泡させて予備発泡粒子を二次発泡させると共に、この予備発泡粒子が二次発泡して得られる発泡粒子同士を熱融着一体化させた後冷却し、縦250mm×横470×高さ220mm、肉厚約20mmの発泡成形体とし、30℃で24時間乾燥させた。同操作を繰り返し、5個の保冷容器を作成した。
次に、25℃、50%RHにおいて、5個の保冷容器の側面部の帯電量を静電気測定器(シムコジャパン製 FMX−003)を用いて測定し、5個の測定値のうち、絶対値として最大の値を表1に示し、下記基準に基づいて帯電防止性を評価した。
○・・・最大値が0.1kV未満
×・・・最大値が0.1kV以上
(成形体の密度)
発泡成形体の密度は、保冷容器の重量を測定し、次に水中に保冷容器を浸漬させ、浸漬前後の水の体積差を試験片体積とし、次式により算出した。
密度(g/cm)=試験片重量(g)/試験片体積(cm
(成形体の平均弦長)
保冷容器の平均弦長は、ASTM D2842−69の試験方法に準拠して測定されたものをいう。具体的には、発泡成形体を略二等分となるように切断し、切断面を走査型電子顕微鏡(日立製作所社製 商品名「S−3000N」)を用いて100倍に拡大して撮影する。撮影した画像をA4用紙に印刷し、任意の箇所に長さ60mmの直線を一本描く。この直線上に存在する気泡数から気泡の平均弦長(t)を下記式により算出する。
平均弦長t=60/(気泡数×写真の倍率)
なお、直線を描くにあたっては、できるだけ直線が気泡に点接触してしまう場合には、この気泡も気泡数に含め、更に、直線の両端部が気泡を貫通することもなく、気泡内に位置した状態となる場合には、直線の両端部が位置している気泡も気泡数に含める。更に、撮影した画像の任意の5箇所において上述と同様の要領で平均弦長を算出し、これらの平均弦長の相加平均値を保冷容器の平均弦長とする。
(成形体の5%圧縮強度)
圧縮強度は、JIS A9511:1995「発泡プラスチック保温材」記載の方法に準じて測定した。具体的には、テンシロン万能試験機UCT−10T(オリエンテック社製)を用いて、帯電防止性評価後の保冷容器を縦100×横100×厚み20mmの直方体に切り出して試験片とし、試験速度を10mm/分として測定した。
本発明の保冷容器は、特に、予備発泡工程や、粒子流通管内の流通過程、特に、粒子流通管が大きく屈曲している場合にあっても、被覆剤が発泡性スチレン系樹脂粒子の表面から不測に脱離したり或いは粒子流通管の内壁面にろう状の堆積物が堆積するのを概ね防止することができ、発泡性スチレン系樹脂粒子及びこれを予備発泡させて得られる予備発泡粒子の粒子流通管内における円滑な流通を確保することができると共に、帯電防止性に優れた発泡成形品としての保冷容器を得ることができる。
1 ホッパー
11 放出管
2 吸引部
3 吸引管
4 バグフィルター
5 ブロア
6 タンク
7 金属配管
8 樹脂ホース

Claims (3)

  1. スチレン系樹脂粒子に発泡剤を含浸させてなる発泡性スチレン系樹脂粒子を予備発泡し、この予備発泡粒子を成形して得られるポリスチレン系発泡成形体の保冷容器であって、
    前記発泡性スチレン系樹脂粒子は、該樹脂粒子表面を組成物によって被覆されており、
    当該組成物は、
    当該樹脂粒子表面を被覆する常温で液体の多価アルコールAと、
    当該樹脂粒子100重量部に対して0.01〜0.3重量部の脂肪酸モノグリセライドと、
    当該樹脂粒子100重量部に対して0.03〜0.3重量部の脂肪酸金属塩と、
    常温で液体の多価アルコールBからなり、
    上記多価アルコールA、Bは、当該樹脂粒子100重量部に対して0.02〜0.3重量部含有し、
    当該樹脂粒子表面を被覆する上記多価アルコールA(1回目の被覆)と、多価アルコールAに対して被覆する、当該脂肪酸モノグリセライド及び脂肪酸金属塩又はこれらの混合物と、これらを被覆する上記多価アルコールB(2回目の被覆)の2回に分けて被覆されており、
    前記ポリスチレン系発泡成形体は粒子径が600μm〜1400μmのポリスチレン系樹脂粒子であり、
    前記ポリスチレン系発泡成形体の密度が0.01g/cm〜0.033g/cmであり、
    前記ポリスチレン系発泡成形体の平均弦長が20μm〜150μmであり、
    前記ポリスチレン系発泡成形体の5%圧縮強度は3N/cm〜20N/cm
    である保冷容器。
  2. 常温で液体の多価アルコールが、ポリエチレングリコールであることを特徴とする請求項1記載の保冷容器。
  3. 脂肪酸金属塩がステアリン酸亜鉛であることを特徴とする請求項1又は2記載の保冷容器。

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