JP5516601B2 - 油入電気機器における硫化銅生成量の推定方法、異常発生の診断方法、絶縁油中のジベンジルジスルフィド初期濃度の推定方法、および、異常発生の可能性の診断方法 - Google Patents

油入電気機器における硫化銅生成量の推定方法、異常発生の診断方法、絶縁油中のジベンジルジスルフィド初期濃度の推定方法、および、異常発生の可能性の診断方法 Download PDF

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Description

この発明は、変圧器等の油入電気機器における硫化銅生成量の推定方法、異常発生の診断方法、絶縁油中のジベンジルジスルフィド初期濃度の推定方法、および、異常発生の可能性の診断方法に関する。
油入変圧器などの油入電気機器においては、通電媒体であるコイル銅に絶縁紙が巻きつけられており、隣り合うターン間でコイル銅が短絡しないような構造が一般に採用されている。油入電気機器内において、これらのコイル銅および絶縁紙は、冷却媒体等の役割を担う絶縁油中に設置されている。
一方、油入電気機器に使用される絶縁油には、硫黄成分を含むものがある。この場合、絶縁油中の硫黄成分が銅部品と反応することで絶縁紙表面に導電性の硫化銅が析出し、隣り合うターン間に導電路が形成されて絶縁破壊を引き起こす硫化腐食が発生する場合があることが知られている(例えば、非特許文献1:CIGRE TF A2.31, “Copper sulphide in transformer insulation,” ELECTRA, No. 224, pp. 20-23, 2006)。
このような見地から、硫化銅が発生しにくい絶縁油の選定や硫化銅の抑制技術の開発が注目されている。しかし、油入電気機器に使用される絶縁油は、一般的に量が多く使用年数が長いため、交換が容易ではない。このため、硫黄成分を含む絶縁油を用いた個々の油入電気機器において、硫化銅の析出によって生じる絶縁破壊などの異常発生の可能性を予測できる方法が求められている。異常発生の可能性を予測することにより、個々の油入電気機器の状態に応じた適切な措置をとることができるためである。
硫化銅を析出させる絶縁油中の原因物質としては、ジベンジルジスルフィドが知られている(例えば、非特許文献2:F. Scatiggio, V. Tumiatti, R. Maina, M. Tumiatti M. Pompilli and R. Bartnikas, “Corrosive Sulfur in Insulating Oils: Its Detection and Correlated Power Apparatus Failures”, IEEE Trans. Power Del., Vol. 23, pp. 508-509, 2008)。
ジベンジルジスルフィドから硫化銅が生成するメカニズムを図5を用いて説明する。図5に示されるように、硫化銅は、以下の3段階の反応によって生成することがこれまでの研究で分かっている(非特許文献3:S.Toyama, J.Tanimura, N.Yamada, E.Nagao, T.Amimoto, "Highly Sensitive Detection Method of Dibenzyl Disulfide and Elucidation of Mechanism of Copper Sulfide Generation in Insulating Oil", IEEE TDEI, Vol 16, No. 2, pp509-515, 2009の513頁)。
(第1段階) ジベンジルジスルフィドが銅板に配位(吸着)する反応。
(第2段階) ジベンジルジスルフィドが銅と反応し、ジベンジルジスルフィド−Cu錯体を生成する反応。
(第3段階) ジベンジルジスルフィド−Cu錯体が、熱分解などにより、硫化銅と、ベンジルラジカルおよびベンジルスルフェニルラジカルとに分解される反応。
したがって、硫化銅の生成によって、絶縁油中のジベンジルジスルフィドが消費され、ベンジルラジカルおよびベンジルスルフェニルラジカルが生成される。このベンジルラジカルおよびベンジルスルフェニルラジカルは、同種のラジカル同士または2種のラジカルの間で起こる反応により、ビベンジル、ジベンジルスルフィドおよびジベンジルジスルフィドを副生成物として生成する。したがって、これらの副生成物の生成量(濃度)を測定することにより、硫化銅の生成量に関する情報を得ることができると考えられる。
しかしながら、開放型変圧器など油入電気機器において、絶縁油が空気雰囲気下(酸素含有雰囲気下)にある場合は、ほとんど生成しない場合があることが判明した。このような場合には、上記副生成物(ビベンジル、ジベンジルスルフィドおよびジベンジルジスルフィド)の生成量が、硫化銅の生成量に対して相関性を示さず、副生成物の生成量を測定しても、硫化銅の生成量に関する情報を得ることができないという問題があった。
CIGRE TF A2.31, "Copper sulphide in transformer insulation," ELECTRA, No. 224, pp. 20-23, 2006 F. Scatiggio, V. Tumiatti, R. Maina, M. Tumiatti M. Pompilli and R. Bartnikas, "Corrosive Sulfur in Insulating Oils: Its Detection and Correlated Power Apparatus Failures", IEEE Trans. Power Del., Vol. 23, pp. 508-509, 2008 S.Toyama, J.Tanimura, N.Yamada, E.Nagao, T.Amimoto, "Highly Sensitive Detection Method of Dibenzyl Disulfide and Elucidation of Mechanism of Copper Sulfide Generation in Insulating Oil", IEEE TDEI, Vol.16, No.2, pp509-515, 2009
本発明は、油入電気機器中の絶縁油が酸素含有雰囲気下にある場合でも、絶縁油中の成分を分析することにより硫化銅の生成量を高い精度で推定することができ、油入電気機器における異常(硫化腐食)発生の可能性を高い精度で予測できる方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記の課題に鑑みて鋭意研究した結果、酸素含有雰囲気下では、ベンジルラジカルはベンジルペルオキシドラジカルに変化し、さらに、ベンジルアルコール、ベンズアルデヒドまたは安息香酸に変化することが分かった。そして、本発明者らは、これらの最終生成物を含めた分析を行うことにより、銅を含むコイルと該コイルを絶縁する絶縁紙とを有する油入電気機器中の絶縁油が酸素含有雰囲気下にある場合でも、硫化銅の生成量を高い精度で推定することができることを見出し、本発明に到達した。
すなわち、本発明は、銅を含むコイルと該コイルを絶縁する絶縁紙とを有する油入電気機器における硫化銅の生成量を推定する方法であって、
(1) 前記油入電気機器から採取した絶縁油中に含まれる1種以上の特定の生成物の濃度を測定する工程、および、
(2) 前記特定の生成物の濃度に基づいて、前記硫化銅の生成量を推定する工程を含み、
前記特定の生成物は、ベンジルアルコール、ベンズアルデヒドおよび安息香酸からなる群から選ばれる少なくとも1つの化合物を含む方法に関するものである。
本発明においては、ベンジルアルコール、ベンズアルデヒドおよび安息香酸からなる群から選ばれる少なくとも1つの化合物を含む特定の生成物の絶縁油中における濃度を測定することにより、銅を含むコイルと該コイルを絶縁する絶縁紙とを有する油入電気機器中の絶縁油が酸素含有雰囲気下にある場合でも、硫化銅の生成量を高い精度で推定することができ、銅を含むコイルと該コイルを絶縁する絶縁紙とを有する油入電気機器における異常(硫化腐食)の発生を高い精度で診断できる。
また、本発明において、上記ベンジルアルコール、ベンズアルデヒドおよび安息香酸からなる群から選ばれる少なくとも1つの化合物に加えて、さらにビベンジルおよび/またはジベンジルスルフィドを含む特定の生成物の濃度を測定することで、銅を含むコイルと該コイルを絶縁する絶縁紙とを有する油入電気機器の種類によらず、絶縁油が酸素含有雰囲気下にある場合および酸素を含まない雰囲気下にある場合のいずれにおいても、硫化銅の生成量を高い精度で推定することができ、銅を含むコイルと該コイルを絶縁する絶縁紙とを有する油入電気機器における異常(硫化腐食)の発生を高い精度で診断できる。
絶縁油が未使用であったときにおける硫化銅原因物質(ジベンジルジスルフィド)の初期濃度を推定することにより、その推定濃度に基づいて油入電気機器における異常(硫化腐食)の発生の可能性を診断することができる。
空気雰囲気下におけるビベンジル生成量と硫化銅生成量との関係、および、ベンズアルデヒド生成量と硫化銅生成量との関係を示すグラフである。 窒素雰囲気下におけるビベンジル生成量と硫化銅生成量との関係を示すグラフである。 空気雰囲気下および窒素雰囲気下における特定の生成物の総モル濃度(N)と硫化銅生成量との関係を示すグラフである。 空気雰囲気下および窒素雰囲気下における特定の生成物の総モル濃度(N)とジベンジルジスルフィドの減少量との関係を示すグラフである。 ジベンジルジスルフィドから硫化銅が生成するメカニズムを示す模式図である。
(実施の形態1)
<硫化銅生成量の推定>
本実施形態においては、
(1) 油入電気機器から採取した絶縁油中に含まれる1種以上の特定の生成物として、ベンジルアルコール、ベンズアルデヒド、安息香酸およびジベンジルスルホキシドからなる群から選ばれる少なくとも1つの化合物のみの濃度が測定され、
(2) この特定の生成物の濃度に基づいて、油入電気機器における硫化銅の生成量が推定される。
(1) 特定の生成物の濃度測定
絶縁油中に含まれる特定の生成物の濃度は、種々公知の方法を用いて測定することができ、例えば、ガスクロマトグラフ/質量分析器(GC/MS)を用いて測定することができる。
(2) 硫化銅生成量の推定
上記特定の生成物の濃度に基づいて、油入電気機器における硫化銅の生成量を推定する方法としては、あらかじめ、上記特定の生成物の濃度と硫化銅生成量との相関関係を示す検量線を作成する方法が挙げられる。かかる検量線は、例えば、上記特定の生成物および硫化銅の初期濃度が既知の絶縁油を油入電気機器のモデルに充填し、所定の各条件下で、上記特定の生成物の増加濃度と硫化銅の増加濃度を測定することにより作成できる。
<異常発生の診断>
さらに、本実施形態において推定された硫化銅の生成量を特定の基準値(閾値)と比較することで、油入電気機器における異常発生を診断することができる。
ここで、硫化銅の生成量の閾値は、油入電気機器の種類や構造ごとに異なるものであり、例えば、絶縁物の厚みが十分にあるときには硫化銅生成量の閾値は大きくなり、絶縁物の厚みが薄いときは閾値は小さくなる。
上記特定の生成物の濃度が、このような特定の基準値(閾値)以上であった場合には、当該油入電気機器は硫化銅の析出による不具合(異常)が発生していると診断される。異常が発生していると診断測された変圧器については、優先的に必要な措置をとるように注意を促すことができる。
(実施の形態2)
<硫化銅生成量の推定>
本実施形態においては、
(1) 油入電気機器から採取した絶縁油中に含まれる1種以上の特定の生成物として、ベンジルアルコール、ベンズアルデヒド、安息香酸およびジベンジルスルホキシドからなる群から選ばれる少なくとも1つの化合物に加えて、さらにビベンジルおよび/またはジベンジルスルフィドの濃度が測定され、
(2) この特定の生成物の濃度に基づいて、油入電気機器における硫化銅の生成量が推定される。
(1) 特定の生成物の濃度測定
絶縁油中に含まれる特定の生成物の濃度は、種々公知の方法を用いて測定することができ、例えば、ガスクロマトグラフ/質量分析器(GC/MS)を用いて測定することができる。
(2) 硫化銅生成量の推定
本実施形態では、上記の絶縁油中に含まれる特定の生成物を測定し、各成分の濃度をベンゼン環のモル濃度に変換し、それらを合計した総モル濃度(N)に基づいて、硫化銅の生成量を推定する。具体的に、総モル濃度(N)は各成分の濃度から下記式(1):

N(μmol/g)=n1+n2+n3+2×n4+2×n5+2×n6 ・・・(1)

を用いて算出される。
上記式(1)において、n1はベンジルアルコール、n2はベンズアルデヒド、n3は安息香酸、n4はジベンジルスルホキシド、n5はビベンジル、n6はジベンジルスルフィドの各々の油中濃度(μmol/g)を表す。
上記総モル濃度(N)に基づいて、油入電気機器における硫化銅の生成量を推定する方法としては、あらかじめ、上記総モル濃度(N)と硫化銅生成量との相関関係を示す検量線を作成する方法が挙げられる。かかる検量線は、例えば、上記特定の生成物および硫化銅の初期濃度が既知の絶縁油を油入電気機器のモデルに充填し、所定の各条件下で、上記特定の生成物の増加濃度と硫化銅の増加濃度を測定することにより作成できる。
実際の変圧器においては、変圧器の仕様および変圧器の運転状況により、変圧器内の絶縁油中の酸素濃度は100〜30000ppm(v/v)まで幅があることが知られている。本実施形態は、絶縁油の雰囲気中(もしくは絶縁油中)の酸素濃度に影響を受けずに、硫化銅の生成量を推定することができるため、このように絶縁油中の酸素濃度が様々な油入電気機器を測定するのに適している。
<異常発生の診断>
さらに、本実施形態において推定された硫化銅の生成量を、実施形態1と同様にして、特定の基準値(閾値)と比較することで、油入電気機器における異常発生を診断することができる。
実施形態1と同様に、異常が発生していると診断された変圧器については、優先的に必要な措置をとるように注意を促すことができる。
(実施の形態3)
<ジベンジルジスルフィド初期濃度の推定>
本実施形態においては、
(1) 油入電気機器から採取した絶縁油中に含まれる1種以上の特定の生成物として、実施形態2と同様の特定の生成物の濃度が測定され、さらにジベンジルジスルフィド(以下、DBDSと略す。)の濃度が測定され、
(2) この特定の生成物の各濃度およびDBDSの濃度に基づいて、油入電気機器における絶縁油中のDBDSの初期濃度が推定される。
DBDSの初期濃度は、異常発生の可能性を診断する指標として重要である。
(1) 特定の生成物およびDBDSの濃度測定
絶縁油中に含まれる特定の生成物の濃度は、種々公知の方法を用いて測定することができ、例えば、ガスクロマトグラフ/質量分析器(GC/MS)を用いて測定することができる。
また、採取した絶縁油中のDBDSの(残存)濃度を測定する方法としては、種々公知の方法を用いることができるが、例えば、ガスクロマトグラフで分析する方法が挙げられる(例えば、S. Toyama, J. Tanimura, N. Yamada, E. Nagao and T. Amimoto, “High sensitive detection method of dibenzyl disulfide and the elucidation of the mechanism of copper sulfide generation in insulating oil”, Doble Client Conf., Boston, MA, USA, Paper IM-8A, 2008 参照)。
(2) DBDS初期濃度の推定
本実施形態におけるDBDS初期濃度の推定方法は、
上記特定の生成物の各濃度をベンゼン環のモル濃度に変換し、それらを合計した総モル濃度(N)を算出する工程、
上記総モル濃度(N)から、あらかじめ作成した検量線を用いてジベンジルジスルフィドの減少量を算出する工程、および、
上記DBDSの濃度と上記DBDSの減少量とから、DBDSの初期濃度を算出する工程を含む。
したがって、本実施形態では、あらかじめ、上記特定の生成物の総モル濃度(N)とDBDSの減少量との相関関係を示す検量線が作成される。かかる検量線は、例えば、DBDSの初期濃度が既知の絶縁油を油入電気機器のモデルに充填し、一定の条件下で前記特定の生成物の総モル濃度(N)とDBDSの減少量を求めることによって作成できる。
実施形態2と同様にして、上記特定の生成物の濃度から、上記式(1)を用いてベンゼン環のモル濃度の総モル濃度(N)を算出し、算出された総モル濃度(N)から上記検量線を用いてDBDSの減少量が算出される。
そして、DBDSの初期濃度は、下記式(2):

「DBDSの初期濃度」=「DBDSの濃度」+「DBDSの減少量」 ・・・(2)

から算出される。
硫化銅原因物質であるDBDSは、硫化銅の生成によりその量が減少する。よって、稼動開始から年月を経た油入電気機器から採取した絶縁油にDBDSが含まれていなかったからといって、その変圧器が硫化銅による不良に対して安全であるとはいえない。また、その変圧器における硫化銅生成量はDBDSの濃度に依存するといえる。よって、硫化銅に対するリスクを見積もる際には、その油入電気機器の稼動開始時におけるDBDSの初期濃度を推定することは重要である。
<異常発生の可能性の診断>
以上のようにして推定されたDBDSの初期濃度を、特定の基準値(閾値)と比較することで、油入電気機器における異常発生の可能性を診断することができる。
ここで、DBDSの初期濃度の閾値は、例えば、広く絶縁油の腐食性硫黄の試験として用いられている試験で閾値を決める方法が挙げられる。この種の試験としては、例えば、国内ではJIS C 2101の17(腐食性硫黄試験)が、海外ではASTM D 1275Bなどがよく用いられている。ここで、ASTMとは、「American Society for Testing and Materials」の略である。
例えば、JIS C 2101の17を用いて、下記の手順で閾値を決定できる。まず、JIS C 2101の17で腐食性を示さない絶縁油を準備する。このような絶縁油としては、例えば、アルキルベンゼンやαオレフィンなど硫黄を含まない合成油が好適に用いられる。この絶縁油に所定量(例えば、50、100、150、200ppm)のDBDSを溶解し試料油とする。このようにして作成した試料油を用いてJIS C 2101の17.2〜17.5に記載の方法で試験を実施し、同17.6に記載の方法で腐食性を判定する。この結果、例えば、DBDSの濃度が50および100ppmの試料油が非腐食性を示し、150および200ppmの試料油が腐食性を示した場合、非腐食性を示した上限である100ppmを閾値とすることができる。
DBDSの初期濃度が、このような特定の基準値(閾値)以上であった場合には、当該油入電気機器は硫化銅の析出による不具合(異常)が発生する可能性があると診断される。異常発生の可能性があると診断された変圧器については、優先的に必要な措置をとるように注意を促すことができ、計画的に対処することができる。
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(実施例1)
まず、ASTM D 1275Bで腐食性の硫黄を含まないことを確認済みの変圧器油(絶縁油)を準備した。次に、この変圧器油にDBDSを300ppmの濃度となるように添加した。この変圧器油4グラムと銅板を10ccの内容積を持つ瓶に封入し、ゴム栓を施した後に165℃で所定の時間(1、2、3、5、7,9h)加熱した。ゴム栓には内径が数ミリメートルのステンレス管を貫通せしめ、油が自由に空気と接触できるようにした。
各所定の時間加熱した後の変圧器油に含まれるベンズアルデヒドおよびビベンジルの濃度を、ガスクロマトグラフ/質量分析器(GC/MS)を用いて測定した。
各所定の時間における副生成物(ベンズアルデヒドまたはビベンジル)の濃度と硫化銅生成量との関係を図1に示す。なお、硫化銅生成量は銅板重量変化率を示している。
図1に示されるように、ベンズアルデヒド量と硫化銅生成量との間には良好な相関性があり、ベンズアルデヒド量を求めることによりその温度における硫化銅生成量を求めることができる。一方、ビベンジルは、空気雰囲気下(酸素含有雰囲気下)ではほとんど生成されず、硫化銅生成量との相関性を示さなかった。
比較のために、窒素雰囲気下において同様の試験を行った結果を図2に示す。なお、硫化銅生成量は油1gあたりの銅板重量変化を硫黄の分子量で除した値を示している。図2に示されるように、窒素雰囲気下(酸素を含まない雰囲気下)においては、ビベンジルの生成量と硫化銅生成量との間に良好な相関性が認められる。
図1に示す結果から、空気雰囲気下(酸素含有雰囲気下)においても、ベンズアルデヒドの濃度を指標とすれば、油入電気機器内における硫化銅の生成量が推定できることが分かる。このような関係はベンジルアルコール、ジベンジルスルホキシドおよび安息香酸でも得られ、これらの化合物量が決まれば硫化銅生成量を求めることができることが分かる。
なお、硫化銅生成量の推定のためには、油入電気機器が設置された雰囲気の温度条件や稼動時間を決める必要があるが、これらは各油入電気機器の運転記録や環境の気温変動の記録などから決定することができる。
(実施例2)
実施例1と同じ実験を行い、加熱後の変圧器油に含まれる安息香酸、ベンジルアルコール、ベンズアルデヒドおよびジベンジルスルホキシド、ならびに、ビベンジルおよびジベンジルスルフィドの濃度を、ガスクロマトグラフ/質量分析器(GC/MS)で測定した。これらの濃度を上記式(1)に代入することにより、総モル濃度(N)を求めた。
また、これと同様の実験を窒素雰囲気下で行った。
本実施例において、空気雰囲気下および窒素雰囲気下で各所定の時間加熱した場合の総モル濃度(N)と硫化銅生成量との関係を図3に示す。なお、硫化銅生成量は油1gあたりの銅板重量変化を硫黄の分子量で除した値を示している。図3に示したようにNと硫化銅量との間には良好な相関性があり、Nを求めることによりその温度における硫化銅生成量を推定できることが分かる。
また、図3から明らかなように、空気雰囲気下と窒素雰囲気下でほぼ同じ直線関係を示している。よって、Nを指標として用いることにより、絶縁油中の酸素濃度によらず硫化銅生成量を推定できることが分かる。このことは、上記実施形態2のような方法によって、変圧器の種類(開放型変圧器または密閉型変圧器)によらず、硫化銅生成量を推定できることを示している。
(実施例3)
実施例2と同様の実験を行ない、Nを実施の形態2と同じ方法で求め、さらに、各所定の加熱時間における絶縁油中のDBDSの濃度を、ガスクロマトグラフ/質量分析器(GC/MS)を用いて測定した。そして、DBDSの添加濃度(300ppm)からDBDSの減少量(μmol/g)を算出した。得られたNとDBDSの減少量との関係を図4に示す。
図4に示されるように、NとDBDSの減少量は良好な相関性を示す。このことから、稼動中の油入電気機器から採取した絶縁油を分析し、Nを求めることにより、DBDSの減少量を推定することができ、さらに上記式(2)からDBDSの初期濃度を算出できることが分かる。
また、図4から明らかなように、空気中と窒素中でほぼ同じ直線関係を示している。よって、Nを指標として用いることにより、絶縁油中の酸素濃度によらずDBDSの初期濃度を推定できることが分かる。このことは、上記実施形態3のような方法によって、変圧器の種類(開放型変圧器または密閉型変圧器)によらず、DBDSの初期濃度を推定できることを示している。
この発明を詳細に説明し示してきたが、これは例示のためのみであって、限定ととってはならず、発明の範囲は添付の請求の範囲によって解釈されることが明らかに理解されるであろう。

Claims (6)

  1. 銅を含むコイルと該コイルを絶縁する絶縁紙とを有する油入電気機器における硫化銅の生成量を推定する方法であって、
    (1) 前記油入電気機器から採取した絶縁油中に含まれる1種以上の特定の生成物の濃度を測定する工程、および、
    (2) 前記特定の生成物の濃度に基づいて、前記硫化銅の生成量を推定する工程を含み、
    前記特定の生成物は、ベンジルアルコール、ベンズアルデヒドおよび安息香酸からなる群から選ばれる少なくとも1つの化合物を含む方法。
  2. 前記特定の生成物は、さらにビベンジルおよび/またはジベンジルスルフィドを含む、請求項1に記載の方法。
  3. 前記工程(2)は、
    前記特定の生成物の各濃度をベンゼン環のモル濃度に変換し、それらを合計した総モル濃度を算出する工程、および、
    前記総モル濃度に基づいて、前記硫化銅の生成量を推定する工程
    を含む、請求項2に記載の方法。
  4. 請求項1に記載の方法を用いて推定された前記硫化銅の生成量に基づいて、前記油入電気機器の異常発生を診断する方法。
  5. 銅を含むコイルと該コイルを絶縁する絶縁紙とを有する油入電気機器における絶縁油中のジベンジルジスルフィドの初期濃度を推定する方法であって、
    (1) 前記油入電気機器から採取した絶縁油中に含まれる1種以上の特定の生成物の濃度を測定する工程、および、
    (2) 前記特定の生成物の濃度に基づいて、前記ジベンジルジスルフィドの初期濃度を推定する工程を含み、
    前記特定の生成物は、ベンジルアルコール、ベンズアルデヒドおよび安息香酸からなる群から選ばれる少なくとも1つの化合物、ならびに、ビベンジルおよび/またはジベンジルスルフィドを含み、
    前記工程(2)は、
    前記特定の生成物の各濃度をベンゼン環のモル濃度に変換し、それらを合計した総モル濃度を算出する工程、
    前記総モル濃度から、あらかじめ作成した検量線を用いてジベンジルジスルフィドの減少量を算出する工程、および、
    前記ジベンジルジスルフィドの濃度と前記ジベンジルジスルフィドの減少量とから、前記ジベンジルジスルフィドの初期濃度を算出する工程を含む方法。
  6. 請求項5に記載の方法を用いて推定された前記ジベンジルジスルフィドの初期濃度に基づいて、前記油入電気機器の異常発生の可能性を診断する方法。
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