JP2010256207A - 絶縁油中の累積劣化物による油入電気機器の劣化診断方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】油入電気機器の絶縁油中の累積劣化物による油入電気機器の異常の有無を、簡便かつ迅速に評価することを可能にする油入電気機器の劣化診断方法を提供する。
【解決手段】油入電気機器から絶縁油を採取して試料油とし、試料油のけん化価(S)を測定して、多数の経年絶縁油について測定したけん化価に基づいて設定した閾値と比較するステップと、試料油の体積抵抗率と誘電正接を測定し、その測定値を、多数の経年絶縁油を用いて予め求めておいた体積抵抗率と誘電正接の相関直線と比較するステップと、を組み合せた絶縁油中の累積劣化物による油入電気機器の劣化診断方法である。
【選択図】図5

Description

本発明は、油入電気機器に使用されている絶縁油中の累積劣化物による該機器の異常の有無を判定する劣化診断方法に関する。
油入変圧器や油入リアクトル等の油入電気機器は、タンク内に鉄心及び巻線が収容され、巻線部分は導体表面が絶縁紙等の固体絶縁物で絶縁された構成であり、タンク内には絶縁耐力の確保と巻線、鉄心の冷却を目的として絶縁油が充填され、タンク内部の発熱源である鉄心及び巻線と冷却器との間を強制的に絶縁油を循環させることで冷却し、各部の温度が規定の範囲内に抑えられる構成となっている。
このような構成の油入電気機器においては、機器内部で局部加熱あるいは放電等の異常現象が発生すると、内部に使用されている絶縁油、絶縁紙等の絶縁材料が徐々に分解して絶縁耐力が低下し、ついには絶縁破壊事故に至ることが懸念される。
こうした油入電気機器内部での局部加熱、部分放電等により、機器内の絶縁油、絶縁紙、その他の絶縁材料の熱分解が生じた場合には、その分解生成物は絶縁油中に溶解した状態で存在する。そこで、この絶縁油中に溶解した分解生成物を定期的に分析して、内部異常の有無、異常個所の特定、異常程度を診断し、診断結果に基づいて事故に至る前に対策を実施すれば、油入電気機器の信頼性が確保されることになる。
油入電気機器の異常を監視するために従来から行われている方法としては、絶縁油中に浸漬された絶縁紙が劣化することにより生成した、油中に溶け込んでいる二酸化炭素や一酸化炭素等のガス成分を分析して経年劣化状態を診断する方法(ガス法)、絶縁紙の劣化で生じるフルフラールを検出して絶縁紙の劣化状態を診断する方法(フルフラール法)などがあり、これらの方法により、異常の有無、異常の程度をある程度は推定できる。しかし、ガス法では、油面上の空間容積が大きい変圧器では、油面上へのガス放出が多くなり、油中のガス濃度が低下するため、変圧器の余寿命を長く推定してしまう危険性がある。また、フルフラール法では、高速液体クロマトグラフを用いてフルフラールを定量する場合、その取扱いに熟練を要するとともに、装置自体が高価であるという問題がある。さらに、絶縁油を浄油するために活性アルミナ等が添加されている場合、分解生成物であるフルフラールが活性アルミナ等に吸着されてしまうため、やはり変圧器の余寿命を長く推定してしまう危険性がある。
一方で油入変圧器の性能を維持する上で絶縁油は多くの役割を担っており、絶縁油性能の低下は変圧器の各種異常モードに繋がる。絶縁油の特性は、密度、動粘度等の「物理的特性」、絶縁破壊電圧、体積抵抗率等の「電気的特性」、全酸価、水分等の「化学的特性」に大別され、これらの特性の評価試験法はJIS、IEC、ASTM等の規格で規定されている。
一般に、物理的特性に対しては、経年劣化による影響は小さいと考えられる。というのは、この特性は絶縁油の主成分である炭化水素の組成に起因しており、変圧器の場合は、局所加熱や部分放電が起こり得るとはいえ、相対的には比較的温和な状態で使用されるため、主成分の組成が大きく変化する程の劣化の進行は起こりにくいためである。
しかし、電気的特性は、化学的特性である全酸価や水分の影響を顕著に受けると考えられ、経年的な化学的特性の変化は電気的特性の低下に繋がると推定される。そこで、既存設備の調査結果をもとにあらかじめ油入変圧器の絶縁油の化学的特性の変化(水分量、溶存ガス成分など)と絶縁機能の劣化度との関係を求めたマスターカーブを作成しておき、マスターカーブとの比較から余寿命を推定する方法もある。
例えば、特許文献1には、絶縁油中から劣化生成物であるアルデヒド類、アルコール類、ケトン類等を抽出し、抽出した劣化生成物の総量をガスクロマトグラフ装置や熱線型半導体センサで求め、予め求めておいた、劣化生成物の量と絶縁材料の劣化指標特性(例えば、重合度)との相関関係から、絶縁材料の劣化度合を推定する方法が提案されている。該方法は、絶縁油中の劣化生成物量とセルロース系絶縁材料の劣化度合を相関付けようとするものであり、変圧器の油面上空間の大小に拘わらず精度高く、簡便に診断できる利点がある。しかし、該方法は、セルロース系絶縁材料の劣化度合いから油入電気機器の劣化度、あるいは全寿命を推定する方法であるため、絶縁油自体の劣化による油入電気機器の異常の有無を簡便に診断するには不向きである。
特許文献2には、絶縁油中より抽出されるアルデヒド、ケトン類等と特異的に反応する、2,4−ジニトロフェニルヒドラジンを用いた診断方法が提案されている。2,4−ジニトロフェニルヒドラジンをシリカゲル等の粒子表面にコーティングした充填剤を封入した検知管に、絶縁油中より抽出したアルデヒド、ケトン類等からなる揮発性成分を反応させ、その呈色域の呈色値と予め設定した絶縁紙の劣化度合を表す平均重合度との相関より、絶縁紙の平均重合度を判断して、油入電気機器の劣化度を診断している。この方法も、絶縁油中の劣化生成物量と絶縁紙の劣化度合を相関させ、変圧器等の電気機器の寿命予測を行う方法であり、絶縁油自体の劣化による油入電気機器の異常の有無を簡便に診断するには不向きである。
特公平06−054737号公報 特開2002−005840号公報
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、油入電気機器の絶縁油中の累積劣化物による油入電気機器の異常の有無を、簡便かつ迅速に評価することを可能にする油入電気機器の劣化診断方法を提供することを課題とする。
本発明者らは、前記課題を解決するため鋭意検討した。そして、絶縁油の劣化生成物であるアルデヒド類、アルコール類、ケトン類、有機酸類、エステル類等の生成が絶縁油電気特性に及ぼす影響を検討した結果、絶縁油の経年劣化終期に生成する累積劣化物を定量すると共に、絶縁油の解離特性を評価することにより、油入電気機器の異常の有無を簡便に評価できるとの知見を得、本発明に到達したものである。
すなわち、本発明は、油入電気機器から絶縁油を採取して試料油とし、下記式で求められる該試料油のけん化価(S)を測定し、多数の経年絶縁油について測定したけん価(S)に基づいて設定した閾値と比較し、けん化価(S)が閾値を超える場合には、試料油の体積抵抗率と誘電正接を測定し、その測定値を、多数の経年絶縁油を用いて予め求めておいた体積抵抗率と誘電正接の相関直線と比較し、絶縁油の異常の有無を判定することを特徴とする、絶縁油中の累積劣化物による油入電気機器の劣化診断方法を提供する。
Figure 2010256207
(式中、S :けん化価(mgKOH/g)
:空試験に要したHCl標準液の量(ml)
:試料油の滴定に要したHCl標準液の量(ml)
C :HCl標準液の規定度
W :試料油の量(g))
本発明によれば、油入電気機器において、絶縁油の酸化劣化により生成した累積劣化物による該電気機器の異常の有無を、高価な装置や熟練を要すること無く、簡便かつ迅速に診断することが可能になる。
経年による絶縁油の劣化要因の推定図である。 フリーラジカル連鎖反応機構を示す推定図である。 炭化水素油の酸化劣化による生成物の発生を示すフロー図である。 劣化生成物(モデル化合物)と絶縁破壊電圧との関係を測定した結果を示す図である。 本発明による絶縁油の劣化診断フロー図である。 経年した多数の絶縁油について測定した体積抵抗率と誘電正接との関係を示すプロット図である。 加熱劣化試験における誘電正接の変化を示す図である。 加熱劣化試験における誘電正接の変化を示す図である。
図1は経年による絶縁油の劣化現象の要因を説明する推定図である。絶縁油の特性は、絶縁油中に含まれる各種成分に影響されると考えられる。すなわち、新品の油(以下、「新油」という)が示す電気的特性が経年的に低下する原因は、絶縁油の主成分の炭化水素や酸化防止剤等の添加成分が、電気機器運転中の熱及び酸素等の影響により、絶縁油に悪影響を及ぼす成分に変質したためであると考えられる。また、この変質成分が水分及び油中粒子と共存することによっても、複合的に絶縁特性を低下させる要因になることが考えられる。これらの要因と経年による絶縁油劣化を整理した概念図が図1である。
経年による絶縁油劣化の概念図(図1)によると、絶縁油基油である炭化水素油が、熱及び酸素の影響を受けることにより、炭化水素(RH)が、酸化劣化して、アルコール(ROH)、アルデヒド(R´CHO)、有機酸(R´COOH)、エステル(R´COOR´)等に変化する。また絶縁油に酸化防止剤として添加されるチオール化合物(RSH)等からは、有機酸であるスルホン酸(RSOH)やスルホン酸エステル(RSOR)が生成する。電気機器によっては、該機器中に設置された銅製コイルが触媒的な役割をして酸化劣化が促進されることもある。この酸化劣化は、フリーラジカルが連鎖的に反応することで進行すると考えられる。
図2は炭化水素からアルコール等に至るまでのフリーラジカル連鎖反応機構を推定したものであり、図3は生成物の発生フローを示したものである。最初に炭化水素がフリーラジカル化する。このフリーラジカルが酸化され、それが連鎖反応を起こしてアルコール、水が生成する。さらに、フリーラジカル同士が結合し、不活性物質になると連鎖が停止する。これらの反応過程において、アルコール(ROH)、水(HO)が生成するが、アルコールがさらに酸化されることでアルデヒド、有機酸、エステル等が生成する。
図3に示す各種生成物については、夫々、公知の分析指標が存在する。表1は、図3に示す各種生成物の分析方法例を示したものである。過酸化物は、酸化劣化の初期状態を把握するのに有効な物質であるが、不安定な物質であるため定量分析には向かない。アルコール及びアルデヒドは、経年劣化の中期に形成されると推定される、水との親和性が高い極性物質であり、表1に示す方法等で定量することができる。
また、有機酸は、解離性が高くイオンになりやすい性質を有する極性物質であり、JISで規定された方法により定量することができる。エステルは、水により加水分解されると有機酸に分解する。有機酸は全酸価として、エステルはエステル価として、定量することも可能であるが、有機酸とエステルの総量をけん化価として測定して解離性物質の総含有量とすると解離性を把握し易い。
Figure 2010256207
表1の分析指標を基に、各種劣化生成物が、絶縁油の絶縁破壊特性に及ぼす影響を把握するために、モデル実験を行った結果を図4に示した。図4のモデル実験の詳細は以下の通りである。炭化水素系の絶縁油新油(主炭素鎖長:10)に、アルコールとしてデカノール(C1021OH)、アルデヒドとしてデカナール(C19CHO)、有機酸としてデカン酸(C19COOH)を、各々1000ppm(対新油)を添加し、電極間隙2.5mm、3kV/秒連続昇圧の条件で添加絶縁油の絶縁破壊電圧(kV/2.5mm)を測定した。また、オクチルスルホン酸(C17SOH)を、500ppm(対新油)添加し、同じ試験方法で添加絶縁油の絶縁破壊電圧(kv/2.5mm)を測定した。これらの測定結果を無添加絶縁油における測定結果と比較して示した。各劣化生成物のモデル化合物は市販の試薬を用いた。
図4から明らかなように、経年劣化の終期に生成すると推定されるデカン酸やオクチルスルホン酸の有機酸は、解離性が高いためと想定されるが、これらを添加した絶縁油では絶縁破壊電圧が低下する結果が得られている。特にオクチルスルホン酸については、他のモデル物質の半分の添加量にも関わらず絶縁破壊電圧が著しく低下していた。このように、絶縁油酸化劣化の終期段階で生成する有機酸が絶縁油中に含まれている場合、絶縁油がイオン化しやすいために、絶縁破壊特性を低下させる要因となることが考えられる。また、エステルも、加水分解により容易に有機酸を生成するため、絶縁破壊特性を低下させる要因になるものと推定される。
一方、経年劣化の中期に生成すると推定されるアルコール及びアルデヒドは、水との親和性が高いが、絶縁油の絶縁破壊電圧を低下させるまでには至らないことがわかる。
上記の知見より、絶縁破壊電圧を低下させる劣化生成物は、経年劣化終期に生成される極性物質であり、図3に示すように、これらの物質は経年劣化終期に有機酸やエステルとして存在すると推定され、これらの累積劣化物を定量することにより、絶縁油の劣化による、電気機器の異常の有無を診断することが可能になる。
すなわち、診断対象となる絶縁油(以下、試料油と称する。)中に含まれる有機酸やエステルの総量を、けん化価として測定し、測定された値を、別途測定した多数の経年絶縁油のけん化価の値に基づいて設定した閾値と比較する。試料油のけん化価が、設定した閾値以下であれば、試料油の経年的劣化の度合いは小さく異常なしと判定する。
試料油のけん化価が、設定した閾値を超える場合には、異常の可能性があるため、次に試料油の解離性について評価する。解離性の評価は、試料油の体積抵抗率と誘電正接を測定し、横軸を体積抵抗率、縦軸を誘電正接とするグラフ上にプロットし、このプロットの位置を、別途多数の経年絶縁油について測定した体積抵抗率と誘電正接の値から、予め求めておいた体積抵抗率と誘電正接の相関直線と比較することで行う。試料油のプロットが、この相関直線の直線上又は直線より下に位置し、解離性は低いと判定された場合は、異常なしと判定する。
一方、試料油の体積抵抗率と誘電正接のプロットが、相関直線より上に位置する場合には、試料油の解離性は高いと評価する。解離性が高いと評価された試料油は、劣化が進行しており異常有りと判定する。
ここで、体積抵抗率及び誘電正接を測定するのは次の理由による。つまり、上記に記載したように酸化劣化の終期で生成される解離性の高い有機酸等の物質は、解離することで、絶縁油の絶縁特性を低下させるが、絶縁破壊電圧の測定は試験用変圧器を用いた試験となり、簡便ではないので、絶縁破壊電圧の代用指標としてより簡易に測定出来る体積抵抗率と誘電正接の値を用いるものである。例えば、絶縁油の誘電正接は、オクチルスルホン酸のようなイオン解離性の高い物質を添加して加熱すると値が増大し(0.2%→0.8%)、絶縁特性の低下に繋がる(後記の図7参照)。
以下、本発明の一実施例を説明する。図5は、本発明による絶縁油の劣化診断フローを示したものである。
(実施形態1)
有機酸とエステルの含有量を求めるために、試料油のけん化価を測定する。試料油のけん化価は、1gの油をけん化するのに必要な水酸化カリウムの質量(mg)であり、以下の方法にて測定することができる。
[油のけん化価測定方法]:
試料油に2−ブタノンを加えて溶解し、次に水酸化カリウム−エタノール溶液の既知量を加えて加熱・還流して試料油をけん化した後、塩酸標準液にて滴定する。消費された水酸化カリウムの量から、次式により試料油のけん化価を算出する。
Figure 2010256207
(式中、S :けん化価(mgKOH/g)
:空試験に要したHCl標準液の量(ml)
:試料油の滴定に要したHCl標準液の量(ml)
C :HCl標準液の規定度
W :試料油の量(g))
26種類のフィールド変圧器油A〜Zを対象として、けん化価を測定した結果を表2に示す。
Figure 2010256207
絶縁油中の累積劣化物による異常の有無を診断する場合は、測定した経年油のけん化価の平均値を閾値として設定する。測定した試料油のけん化価が閾値を超える場合は、絶縁油の劣化度合が大きい(すなわち、異常あり)と診断し、測定した試料油のけん化価が閾値以下の場合は、絶縁油の劣化度合が小さい(すなわち、異常なし)と診断する。
表2に示した26種類の経年油の場合、けん化価の平均値は0.15mgKOH/gであり、この平均値を、けん化価の閾値と設定した。したがって、絶縁油C、E〜Q及びTは、酸化劣化が進行していない絶縁油であると診断し、残りの絶縁油は酸化劣化が進行した絶縁油であると診断する。
(実施形態2)
実施形態1で、劣化度合いが大きいと診断された、フィールド変圧器油A、B、D、R、S、U〜Zについて、体積抵抗率と誘電正接の値を測定する。そして、測定した体積抵抗率と誘電正接の値を用い、あらかじめ求めておいた、絶縁油の解離性の度合を表す体積抵抗率と誘電正接との関係を示す相関直線から、電気的特性の変化を評価する。
絶縁油の解離性の度合は、あらかじめ製造年が1956年〜1999年の範囲、経年数として5年〜48年(採油年は2004年)の範囲にある多数の油入変圧器から採取した絶縁油に対して、体積抵抗率(常温0分値、Ωcm)と誘電正接(80℃、%)を測定し、体積抵抗率と誘電正接との関係をプロットして、それらの絶縁油の体積抵抗率と誘電正接との関係を示す相関直線を求めておく。この相関直線と比較して評価する。
図6は、あらかじめ求めておいた、多数の経年絶縁油についての体積抵抗率と誘電正接との関係を示す相関直線を示した図である。
なお、体積抵抗率及び誘電正接は、JIS C 2101「電気絶縁油試験方法」に基づき、以下の方法で測定することができる。
[誘電正接測定]:
電極間ギャップ1mmの同心円筒形構造の電極に試料油を入れ、シェーリングブリッジ等の静電容量測定器によって交流電圧(500〜1000V)を印加し、規定温度(80℃)で測定する。
[体積抵抗率]:
試料油温度80℃で絶縁油に250kV/mmの直流電圧を印加し、1分後の電流値から体積抵抗率を求める。
絶縁油の解離性の度合を表す体積抵抗率と誘電正接の値が、あらかじめ求めておいた相関直線の直線上又は直線より下にある場合は、この絶縁油は電気的特性への影響は直ちには見られない絶縁油である(すなわち、異常なし)と診断する。一方、測定した体積抵抗率と誘電正接の値が、あらかじめ求めておいた相関直線より上にある場合は、電気的特性への影響が見られる絶縁油である(すなわち、異常あり)と診断する。電気的特性への影響が見られる絶縁油は、全体からみて比較的解離性が高い(イオン化し易い)、絶縁破壊し易い絶縁油であると診断する。
実施形態1及び2では、多種類の経年劣化絶縁油について診断例を示したが、酸化劣化の終期段階で生成される解離性の高い物質(有機酸、エステル)は、解離することで、絶縁油の絶縁特性を低下させると推定される。これらの物質は、絶縁油の誘電正接及び体積抵抗率の特性をも低下させる。
図7及び図8は、絶縁油の加熱劣化試験の結果を示す図である。図7は、イオン解離性の高いオクチルスルホン酸を520ppm添加した絶縁油(炭化水素油)を120℃で9時間加熱したときの、絶縁油の誘電正接の値の変化を測定した結果である。図8は、ステアリン酸を1000ppm添加した絶縁油(炭化水素油)を120℃で48時間加熱したときの、絶縁油の誘電正接の値の変化を測定した結果である。図7及び図8から、絶縁油中に累積劣化物が存在する場合、劣化の進展によって誘電正接の値が増大して絶縁特性が低下することがわかる。絶縁特性の低下度合は、累積劣化物の種類によって異なり、オクチルスルホン酸のようなイオン解離性の高い物質(当該物質はけん化価で測定される)は、急激な絶縁特性の低下を生じさせる可能性がある。
以上の結果より、絶縁油のけん化価を測定することにより、絶縁油中の累積劣化物である有機酸とエステルの総量を求めることができ、これらの累積劣化物は誘電正接の値を増大させ絶縁特性を低下させるため、絶縁油から採取した試料油について、けん化価の測定結果を閾値と比較するステップと、体積抵抗率及び誘電正接の測定結果を相関直線と比較するステップとを組合せることにより、熟練を要する高価な装置を用いなくとも、油入電気機器の異常の有無を簡便かつ迅速に診断することができる。
本発明によれば、炭化水素を基油とする絶縁油について、油入電気機器の絶縁油中の累積劣化物による電気機器の異常の有無を簡便に診断することができる。

Claims (1)

  1. 油入電気機器から絶縁油を採取して試料油とし、下記式で求められる該試料油のけん化価(S)を測定し、多数の経年絶縁油について測定したけん価(S)に基づいて設定した閾値と比較し、けん化価(S)が閾値を超える場合には、試料油の体積抵抗率と誘電正接を測定し、その測定値を、多数の経年絶縁油を用いて予め求めておいた体積抵抗率と誘電正接の相関直線と比較し、絶縁油の異常の有無を判定することを特徴とする、絶縁油中の累積劣化物による油入電気機器の劣化診断方法。

    Figure 2010256207

    (式中、S :けん化価(mgKOH/g)
    :空試験に要したHCl標準液の量(ml)
    :試料油の滴定に要したHCl標準液の量(ml)
    C :HCl標準液の規定度
    W :試料油の量(g))
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