ところで、上記従来技術1によれば、弁体が2つの駆動源により軸回りに回転可能に設けられ、かつ直進運動可能に設けられているため、複数の駆動源が必要となる。この結果、開閉バルブ自体が大型化かつ複雑化する。また、弁箱の内部に比較的大きな体積の小枠体が配置されているため、弁箱の内部を流れる流体の流路を干渉する。これにより、排気抵抗が大きくなる問題がある。特に、吸気口と排気口とが対向して形成され、小枠体が吸気口と排気口とを結ぶ流路上に位置しているため、排気抵抗が一層大きくなる。
また、上記従来技術2によれば、第1フランジと第2フランジとの間の流路を開放させるためには、弁体が退避した位置にくるように弁体を移動させる必要がある。しかし、第1フランジの径が大きくなればなるほど、弁体を第1フランジの開口面から退避させるために、弁体の直進運動(上下運動)の移動距離を長く設定する必要がある。これにより、バルブ本体の大型化させる必要があり、かつ弁体を長い距離移動させるために高出力の大型のエアシリンダが必要となる。この結果、開閉バルブが大型化する問題がある。
そこで、本発明は、上記問題点に鑑み、流体の排気抵抗を小さくするとともに、小型化及び低背化を実現できる開閉バルブを提供することを目的とする。
本発明は、被処理体に対して真空処理を行う処理チャンバと前記処理チャンバ内を真空排気する排気装置との間に設けられる開閉バルブであって、相互に直交する方向に開口する吸気口と排気口が形成されたバルブ本体と、前記バルブ本体の内部に配置され、前記排気口を開放し、あるいは前記排気口を前記バルブ本体の内側から閉塞する、平面を有する弁体と、前記弁体を直進運動させる弁体可動部と、前記バルブ本体の内部に配置され、前記弁体を回転可能にする揺動軸と、前記バルブ本体の内部に配置され、前記弁体可動部の直進運動を当該直進運動と前記揺動軸の軸回りの回転運動に変換して前記弁体に伝達する運動変換機構と、を有し、前記揺動軸は、前記揺動軸の軸方向が前記吸気口の開口面に対して直交しかつ前記排気口の開口面に対して平行となるように配置され、前記弁体を前記揺動軸の軸回りに回転可能にしており、前記弁体は、前記運動変換機構により前記直進運動及び前記回転運動を行い、前記排気口を開放する際に、前記弁体の平面が、前記吸気口の開口面と前記排気口の開口面を結ぶ流路から退避した位置に移動するとともに、前記吸気口の開口面及び前記排気口の開口面に対して直交する姿勢となる、開閉バルブである。
この場合、前記弁体の平面は、前記吸気口の開口投影部分から位置ずれした領域に移動することにより前記吸気口の開口面と前記排気口の開口面を結ぶ流路から退避することが好ましい。
これによれば、弁体可動部による直進運動が運動変換機構により、直進運動と揺動軸の軸回りの回転運動に変換されて弁体に伝達される。弁体は、この運動変換機構により直進運動及び回転運動を実行し、吸気口及び排気口に対して直交する姿勢となる位置に移動して排気口を開放する。
このように、弁体は、直進運動及び回転運動の2つの運動によって排気口を開放するため、従来技術2のように直進運動により排気口を開放する場合と比較して、弁体の直進運動の移動距離を短くすることができる。この結果、弁体の直進運動に必要な弁体可動部のストロークを短くすることができるため、弁体可動部を小型化でき、ひいては開閉バルブ自体を小型化及び低背化できる。
また、弁体可動部により弁体の直進運動を実行するときに、弁体可動部(例えば、直線導入部など)にはOリングなどのシール部品が必要となるが、弁体可動部のストロークを短くすることにより、Oリングなどのシール部品の劣化を防止でき、部品寿命を向上させることができる。
また、本発明は、被処理体に対して真空処理を行う処理チャンバと前記処理チャンバ内を真空排気する排気装置との間に設けられる開閉バルブであって、相互に直交する方向に開口する吸気口と排気口が形成されたバルブ本体と、前記バルブ本体の内部に配置され、前記排気口を開放し、あるいは前記排気口を前記バルブ本体の内側から閉塞する弁体と、前記弁体を直進運動させる弁体可動部と、前記バルブ本体の内部であって軸方向が前記吸気口及び前記排気口に対して平行となるように配置され、前記弁体を軸回りに回転可能にする揺動軸と、前記バルブ本体の内部に配置され、前記弁体可動部の直進運動を当該直進運動と前記揺動軸の軸回りの回転運動に変換して前記弁体に伝達する運動変換機構と、を有し、前記弁体は、前記運動変換機構により前記直進運動及び前記回転運動を行い、前記吸気口に対向する前記バルブ本体の壁側に向かって、かつ前記吸気口に対して平行かつ前記排気口に対して直交する姿勢となる位置に移動して前記排気口を開放する。
これによれば、弁体可動部による直進運動が運動変換機構により、直進運動と揺動軸の軸回りの回転運動に変換されて弁体に伝達される。弁体は、この運動変換機構により直進運動及び回転運動を実行し、吸気口に対向するバルブ本体の壁側に向かって、かつ吸気口に対して平行かつ排気口に対して直交する姿勢となる位置に移動して排気口を開放する。
このように、弁体は、直進運動及び回転運動の2つの運動によって排気口を開放するため、従来技術2のように直進運動により吸気口又は排気口を開放する場合と比較して、弁体の直進運動の移動距離を短くすることができる。この結果、弁体の直進運動に必要な弁体可動部のストロークを短くすることができるため、弁体可動部を小型化でき、ひいては開閉バルブ自体を小型化及び低背化できる。
また、弁体可動部により弁体の直進運動を実行するときに、弁体可動部(例えば、直線導入部など)にはOリングなどのシール部品が必要となるが、弁体可動部のストロークを短くすることにより、Oリングなどのシール部品の劣化を防止でき、部品寿命を向上させることができる。
特に、弁体が排気口を開放したときに、吸気口から排気口に至る流路を遮る物体(例えば、弁体や小枠体)が無いため、流体の流れを円滑に維持し、排気速度を高めることができる。その結果、吸気口に接続するチャンバ(成膜装置)の内部が真空になるまでの時間(真空到達時間)を短縮することができ、チャンバ(成膜装置)での処理能力(生産能力)を高めることができる。
この場合、前記弁体が前記排気口を開放したときに、前記弁体は前記吸気口と前記排気口を結ぶ流路から退避した位置に移動していることが好ましい。
これによれば、弁体が排気口を開放したときに、弁体は、吸気口と排気口を結ぶ流路から退避した位置に移動している。換言すれば、弁体が排気口を開放したときに、弁体は吸気口と排気口を結ぶ流路から位置ずれしている。これにより、弁体が排気口を開放したときに、吸気口から排気口に至る流路を遮る物体(例えば、弁体や小枠体)が無いため、流体の流れを円滑に維持し、排気速度を高めることができる。その結果、吸気口に接続するチャンバ(成膜装置)の内部が真空になるまでの時間(真空到達時間)を短縮することができ、チャンバ(成膜装置)での処理能力(生産能力)を高めることができる。
この場合、前記運動変換機構は、前記バルブ本体の内部に固定されカム溝が形成された板カムと、前記カム溝に沿って移動するベアリングと、前記ベアリングの移動に伴い発生する動力を前記弁体に伝達する動力伝達部材と、から構成されていることが好ましい。
これによれば、運動変換機構は、バルブ本体の内部に固定されカム溝が形成された板カムと、カム溝に沿って移動するベアリングと、ベアリングの移動に伴い発生する動力を前記弁体に伝達する動力伝達部材と、から構成されている。このため、簡易な構成の運動変換機構により、弁体可動部による弁体の直進運動を当該直進運動と揺動軸の軸回りの回転運動に変換して弁体に伝達することができる。また、運動変換機構が簡易な部品で構成されているため、運動変換機構を小型化することができる。これにより、バルブ本体の内部に運動変換機構が配置された構成を採用しても、運動変換機構が吸気口から排気口に至る流路を大きく遮って流体の流れを滞られせることがない。この結果、流体の排気速度が大きく低下することを防止できる。
この場合、前記バルブ本体に凹部を形成し、前記凹部に前記弁体可動部を設けたことが好ましい。
これによれば、バルブ本体に凹部が形成され、この凹部に弁体可動部が設けられている。このため、少なくとも凹部に位置する弁体可動部の長さ分だけ、開閉バルブ全体の長さ(全長)を短くすることができ(換言すれば、弁体可動部の設置位置を下げることができ)、開閉バルブを一層小型化することができる。
本発明によれば、流体の排気抵抗を小さくするとともに、小型化及び低背化を実現できる。
本発明の第1実施形態に係る開閉バルブについて、図面を参照して説明する。
なお、本発明の第1実施形態に係る開閉バルブは、被処理体に対して真空処理を行う処理チャンバと処理チャンバ内を真空排気する排気装置との間に設けられるものである。なお、処理チャンバとして、例えば、成膜装置が該当する。また、排気装置として、クライオポンプ(高真空ポンプ)が該当する。
図1乃至図4に示すように、開閉バルブ10は、バルブ本体12を備えている。バルブ本体12は、中空の円柱状に形成されている。バルブ本体12の外周面の一部には、吸気口14が形成されている。吸気口14には、被処理体に対して真空処理を行う処理チャンバが接続される。この処理チャンバとして、例えば、成膜装置が用いられる。また、バルブ本体12の底面には、排気口16が形成されている。排気口16には、処理チャンバ内を真空排気する排気装置が接続される。この排気装置として、例えば、クライオポンプ(高真空ポンプ)が用いられる。ここで、吸気口14と排気口16とは、相互に直交する方向に開口するように形成されている。すなわち、吸気口14の開口面を直交する軸部と排気口16の開口面を直交する軸とが垂直に交わることになる。
吸気口14は、バルブ本体12の外周面の一部に形成された第1フランジ18の開口部で構成されている。また、排気口16は、バルブ本体12の底面に形成された第2フランジ20の開口部で構成されている。なお、第1フランジ18の開口部は、長穴形状に形成されているため、吸気口14は長穴形状になる。また、また、第2フランジ20の開口部は、円形状に形成されているため、排気口16は円形状になる。
また、吸気口14が形成されている外周面の一部(壁部)と対向(対面)するバルブ本体12の外周面の対向部(対向する壁部)には、バルブシート34等のメンテナンス時に使用するメンテナンス開口22が形成されている。メンテナンス開口22は、第1フランジ18が形成された壁部と対向(対面)するバルブ本体12の側面に形成された第3フランジ24の開口部で構成されている。なお、第3フランジ24の開口部は、円形状に形成されているため、メンテナンス開口22は円形状になる。メンテナンス開口22は、メンテナンス時以外は閉じて使用される。
バルブ本体12の上壁部12Aには、アクチュエータ(弁体可動部)26が設けられている。アクチュエータ26は、本発明の「弁体可動部」の一実施態様である。アクチュエータ26は、油圧制御等により軸状のロッド28を直進運動(直線運動)させる。ロッド28の先端部には、揺動軸30が回転可能に取り付けられている。揺動軸30の軸方向は、ロッド28の軸方向に対して直交するように設定されている。揺動軸30の軸方向両端部には、可動連結部材(弁体)32が取り付けられている。可動連結部材32には、バルブシート(弁体)34が接続されている。バルブシート34は、円盤状に形成されており、バルブ本体12の壁部との接触部位には、図示しないシール部材(例えば、Oリング)が取り付けられている。本実施形態のバルブシート34は、排気口16を閉塞または開放するように設定されている。なお、可動連結部材32及びバルブシート34は、本発明の「弁体」の一実施態様である。
ここで、図1に示すように、揺動軸30は、バルブ本体12の内部であって軸方向が吸気口14の開口面に対して直交しかつ排気口16の開口面に対して平行となるように配置されている。揺動軸30が軸回りに回転することにより、バルブシート34の揺動軸30の軸回りの回転運動が可能になる。
可動連結部材32には、一対のヒンジ(動力伝達部材、運動変換機構)36が取り付けられている。一対のヒンジ36は、可動連結部材32の長手方向に対して直交し、かつバルブシート34の平面に対して平行となるように位置決めされている。一対のヒンジ36の各端部には、ベアリング(運動変換機構)38が回転可能に取り付けられている。ベアリング38は、後述の板カム(運動変換機構)40に形成されたカム溝(運動変換機構)42に介在されており、カム溝42に沿って移動する。
バルブ本体12の上壁部12Aには、支持部材44が取り付けられている。この支持部材44には、平板部46が取り付けられている。平板部46には、ロッドが軸方向に直進運動可能となるように貫通されており、ロッド28の直進運動が担保されるとともに、ロッド28の直進運動に伴うロッド28の振れが防止される。平板部46には、複数本のカム支柱48が取り付けられている。カム支柱48の端部には、一対の板カム40が取り付けられている。一対の板カム40には、カム溝42が形成されている。カム溝42には、上記したベアリング38が位置しており、ベアリング38が回転しながらカム溝42に沿って移動する。図5に示すように、カム溝42は、垂直方向(ロッド28の直進運動の方向と同じ方向)に対して小さな角度だけ傾斜して延びる第1傾斜溝部42Aと、第1傾斜溝部42Aの端部から垂直方向(ロッド28の直進運動の方向と同じ方向)に対して大きな角度だけ傾斜して水平方向(ロッド28の直進運動の方向と直交方向)に向って延びる第2傾斜溝部42Bと、第2傾斜溝部42Bの傾斜上端部から垂直方向(ロッド28の直進運動の方向と同じ方向)に対して小さな角度だけ傾斜して延びる第3傾斜溝部42Cと、で構成されている。第1傾斜溝部42A、第2傾斜溝部42B及び第3傾斜溝部42Cは、バルブシート34の直進運動と揺動軸30の軸回りの回転運動を担保する機能を有している。また、板カム40、カム支柱48及び支持部材44は、バルブ本体12の内部で固定されている。なお、カム溝42、ベアリング38及びヒンジ36は、本発明の「運動変換機構」の一実施態様である。
ここで、ベアリング38がカム溝42を移動する際に、ゴミが発生するおそれがあるが、以下の方法について対策されている。例えば、ベアリング38の外周面とカム溝42とが常時接触した状態に保つことにより、ベアリング38の外周面とカム溝42との間にゴミの発生原因となる埃等が介在することを防止できる。また、カム溝42のベアリング38の外周面との接触面を鏡面状態に研磨しておき、摩擦抵抗を小さくすることにより、ゴミの発生を防止できる。ベアリング38がカム溝42を低速で移動するように、アクチュエータ26によりロッド28の直進運動の速度を調整する。さらに、ベアリング38として、高真空対応のものを使用する。これらのような対策をとることにより、ベアリング38がカム溝42を移動する際にゴミが発生することを抑制できるため、処理チャンバにおいて真空状態で処理される半導体基板の処理精度に悪影響を及ぼすことを防止できる。
次に、第1実施形態の開閉バルブの作用について説明する。
なお、開閉バルブ10の作用は、バルブシート34が排気口16を閉塞している状態を初期状態として説明する。
図1乃至図4、図5に示すように、排気口16を開放する場合には、アクチュエータ26によりロッド28を上方向(排気口16側と反対方向を上方向と定義する。)に引く。これにより、ロッド28が上方向に直進運動する。ここで、バルブシート34が排気口16を閉塞している初期状態では、ベアリング38がカム溝42の第1傾斜溝部42Aの下端部側に位置している。初期状態からロッド28が上方向に直進運動すると、ベアリング38が第1傾斜溝部42Aを移動する。ベアリング38が第1傾斜溝部42Aを移動することにより、ロッド28の直進運動に伴う駆動力がヒンジ36から可動連結部材32を介してバルブシート34に伝達される。このため、バルブシート34は、主に、ロッド28の直進運動の方向と同じ方向(上方向)の直進運動を行い、第1傾斜溝部42Aの上端部側に移動する。なお、第1傾斜溝部42Aは、ロッド28の直進運動の方向に対して小さな傾斜角度で延びている。このため、ロッド28の直進運動に伴う駆動力は、第1傾斜溝部42Aからベアリング38、ヒンジ36及び可動連結部材32を介してバルブシート34に対して小さな回転駆動力としても伝達される。このため、バルブシート34は、ロッド28の直進運動の方向と同じ方向(上方向)に移動するとともに、小さな回転角度で揺動軸30の軸回りを回転運動する。このようにして、ベアリング38が第1傾斜溝部42Aを移動すると、ロッド28の直進運動が、ベアリング38、第1傾斜溝部42A及びヒンジ36により、バルブシート34の直進運動と回転運動に変換される。なお、ベアリング38が第1傾斜溝部42Aを移動する領域では、バルブシート34の直進運動による直進移動距離が長くなり、回転運動による回転角度は小さくなる。このため、ベアリング38が第1傾斜溝部42Aを移動する領域では、バルブシート34の直進運動が中心になり、回転運動は補助的といえる。
ロッド28の上方向に向う直進運動が継続すると、ベアリング38は、カム溝42の第2傾斜溝部42B側に誘導されて第2傾斜溝部42Bに進入する。そして、ロッド28が上方向に直進運動することにより、ベアリング38が第2傾斜溝部42Bを傾斜下端部側から傾斜上端部側に向って移動する。ベアリング38が第2傾斜溝部42Bを移動することにより、ロッド28の直進運動に伴う駆動力がヒンジ36から可動連結部材32を介してバルブシート34に伝達される。ここで、第2傾斜溝部42Bは、ロッドの直進運動の方向に対して大きく傾斜しているので、ベアリング38が第2傾斜溝部42Bを移動すると、第2傾斜溝部42Bによりバルブシート34の上方向の移動距離が制限される。すなわち、バルブシート34は、ロッド28の直進運動の移動距離と比較して短い距離だけしか上方向に移動しない。つまり、バルブシート34の直進運動による移動距離は短くなる。そして、ロッド28の直進運動が継続すると、ロッド28の直進運動に伴う駆動力は、第2傾斜溝部42Bからベアリング38、ヒンジ36及び可動連結部材32を介してバルブシート34に対して大きな回転駆動力として伝達される。このため、バルブシート34は、ロッド28の直進運動の方向と同じ方向(上方向)に移動するとともに、大きな回転角度で揺動軸30の軸回りを回転運動する。このようにして、ベアリング38が第2傾斜溝部42Bを移動すると、ロッド28の直進運動が、ベアリング38、第2傾斜溝部42B及びヒンジ36により、バルブシート34の直進運動と回転運動に変換される。そして、ベアリング38が第2傾斜溝部42Bを移動する領域では、バルブシート34の直進運動の直進移動距離が短くなり、回転運動の回転角度は大きくなる。このように、ベアリング38が第2傾斜溝部42Bを移動する領域では、バルブシート34の回転運動が中心になり、直進運動は補助的といえる。
さらに、ロッド28の上方向に向う直進運動が継続すると、ベアリング38は、カム溝42の第2傾斜溝部42Bの傾斜上端部から第3傾斜溝部42C側に誘導され第3傾斜溝部42Cに進入する。さらに、ロッド28が上方向に直進運動すると、ベアリング38が第3傾斜溝部42Cを移動する。ベアリング38が第3傾斜溝部42Cを移動することにより、ロッド28の直進運動に伴う駆動力がヒンジ36から可動連結部材32を介してバルブシート34に伝達される。このため、バルブシート34は、主に、ロッド28の直進運動の方向と同じ方向(上方向)の直進運動を行い、第3傾斜溝部42Cの上端部側に移動する。なお、第3傾斜溝部42Cは、ロッド28の直進運動の方向に対して小さな傾斜角度で延びている。このため、ロッド28の直進運動に伴う駆動力は、第3傾斜溝部42Cからベアリング38、ヒンジ36及び可動連結部材32を介してバルブシート34に対して小さな回転駆動力としても伝達される。このため、バルブシート34は、ロッド28の直進運動の方向と同じ方向(上方向)に移動するとともに、小さな回転角度だけ揺動軸30の軸回りを回転運動する。このようにして、ベアリング38が第3傾斜溝部42Cを移動すると、ロッド28の直進運動が、ベアリング38、第3傾斜溝部42C及びヒンジ36により、バルブシート34の直進運動と回転運動に変換される。なお、ベアリング38が第3傾斜溝部42Cを移動する領域では、バルブシート34の直進運動による直進移動距離が長くなり、回転運動による回転角度は小さくなる。このため、ベアリング38が第3傾斜溝部42Cを移動する領域では、バルブシート34の直進運動が中心になり、回転運動は補助的といえる。
以上のようにして、バルブシート34は、ベアリング38が第1傾斜溝部42A、第2傾斜溝部42B及び第3傾斜溝部42Cを移動する間に、ロッド28の直進運動と同じ方向(上方向)に所定の直進移動距離だけ直進運動し、かつ約90度の回転角度だけ回転運動する。そして、ベアリング38が第3傾斜溝部42Cの傾斜上端部に位置したときに、バルブシート34の直進運動及び回転運動が停止する。
すなわち、図6に示す概念図で説明すると、図6(A)に示すように、バルブシート34が吸気口14を閉塞している状態では、ベアリング38が第1傾斜溝部42Aの傾斜下端部に位置している(初期状態)。そして、図6(B)に示すように、ベアリング38が第2傾斜溝部42Bに進入したときには、バルブシート34は上方向に移動すると共に、初期状態の姿勢から約45度の回転角度だけ回転する。さらに、図6(C)に示すように、ベアリング38が第3傾斜溝部42Cの傾斜上端部に位置したときには、バルブシート34は僅かに上方向に移動すると共に、初期状態の姿勢から約90度の回転角度だけ回転する。
図5に示すように、板カム40はバルブ本体12に対して固定されているため、ベアリング38が板カム40のカム溝42を移動するだけで、バルブシート34は、ロッド28の直進運動のみに基づいて、直進運動と回転運動を実行することができる。換言すれば、ロッド28の直進運動に伴う駆動力が板カム40、ベアリング38及びヒンジ36を介してバルブシート34に伝達される。さらに、板カム40、ベアリング38及びヒンジ36によって、ロッド28の直進運動がバルブシート34の直進運動と回転運動に変換される。
ここで、ベアリング38が第3傾斜溝部42Cの傾斜上端部に位置したときのバルブシート34の位置について説明する。図3及び図4に示すように、ベアリング38が第3傾斜溝部42Cの傾斜上端部に位置したときに、バルブシート34は、吸気口14と排気口16を結ぶ流路から退避した位置に移動している。すなわち、バルブ本体12に形成された吸気口14を側面方向からみた場合(図4方向から図示した場合)に、バルブシート34が吸気口14の開口投影部分から位置ずれした領域に位置している。また、バルブシート34は、吸気口14及び排気口16に対して直交する姿勢となる位置に移動して吸気口14及び排気口16を開放する。このため、バルブシート34は、吸気口14から浸入してくる流体の流路上に位置せず、流体の流れを干渉することがない。
ここで、吸気口14が形成されている第1フランジ部18に接続される処理チャンバ(成膜装置)の真空引きと大気圧開放について説明する。
先ず、処理チャンバ(成膜装置)の真空引きについて説明する。排気口16をバルブシート34で閉塞した状態で、処理チャンバを10−6Pa程度まで真空引きする場合には、予め、排気装置(クライオポンプ)の内部を10−6から10−7Pa程度の高真空に維持しておく。次に、処理チャンバの内部を数十Pa程度まで粗引きする。その後、バルブシート34を移動させて排気口16を開放し、処理チャンバの本引きを開始する(10−6から10−5Pa程度)。
次に、処理チャンバの内部を大気圧に戻す場合について説明する。バルブシート34を移動させて排気口16を閉塞する。処理チャンバを大気開放(パージ)する。
このように、開閉バルブ10の役割は、常時高真空に維持されている排気装置(クライオポンプ)上に設けられており、処理チャンバ(成膜装置)を真空引きしたり、大気開放する場合に、必要に応じて排気口16を開閉することにある。
以上のように、第1実施形態の開閉バルブ10によれば、1つのアクチュエータ26を用いるだけで、バルブシート34の直進運動と回転運動を両立させることができる。これにより、開閉バルブ10の構成が簡素化され、設備コストを低減させることができる。また、開閉バルブ10の小型化を実現できる。
また、板カム40、ベアリング38及びヒンジ36によりロッド28の直進運動をバルブシート34の直進運動と回転運動に変換できる構成としたため、ロッド28の僅かな直進移動距離で、バルブシート34を90度回転させて排気口16を開放することができる。これにより、バルブ本体12のロッド28の移動方向の長さ寸法を短く設計することができ、開閉バルブ10の低背化を実現できる。
加えて、ロッド28の僅かな直進移動距離でバルブシート34を90度回転させて排気口16を開放することができるため、アクチュエータ26を小型化することができる。さらに、ロッド28の直進移動距離が短いので、アクチュエータ26とロッド28との直線導入部に使用されるシール部材(例えば、Oリング)の製品寿命をのばすことができる。
さらに、ベアリング38が第3傾斜溝部42Cの傾斜上端部に位置したときに、バルブシート34は、吸気口14と排気口16を結ぶ流路から退避した位置に移動している。このため、バルブシート34は、吸気口14から浸入してくる流体の流路上に位置せず、流体の流れを干渉することがない。これにより、バルブシートがバルブ本体12の内部で排気経路を妨げることがないため、流体の排気抵抗が小さくなる。この結果、流体の排気速度を高めることができ、処理チャンバの真空到達時間を短縮することができ、処理チャンバで処理される半導体基板(被処理物)の処理速度を高めることができる。
ここで、処理チャンバ(成膜装置)の真空到達度(真空到達速度)を左右する条件の一つとして、第1フランジ18(吸気口14)及び第2フランジ20(排気口16)のフランジ径(開口径)、排気流路を妨げる物体の少なさ、及び気体分子の流れ易さ(コンダクタンスの良さ)が重要視されている。そこで、コンダクタンス(排気抵抗)を保ったままフランジ径の大きな開閉バルブを使用する場合、例えば、従来技術2の図11に示す方式の開閉バルブでは、バルブシートの開閉ストロークが大きくなることから、開閉バルブ全体が大型化するという問題がある。
これに対して、本発明の開閉バルブ10では、アクチュエータ26のロッド28の直進運動によってバルブシート34を引き上げる際に、ベアリング38が板カム40に形成されたカム溝42を移動して、バルブシート34の直進運動と回転運動に変換される。最終的には、バルブシート34が揺動軸30の軸回りに90度回転して、排気流路を妨げることなく、排気口16を開放し、吸気口14と排気口16とを連通させることができる。これにより、本発明の開閉バルブ10は、バルブシート34の直進運動の直進移動距離(開閉ストローク)が短くても、排気流路を妨げず、バルブシート34による排気口16の開閉動作が可能になる。この結果、開閉バルブ10の小型化及び低背化を実現できる。
なお、板カム40、ベアリング38及びヒンジ36がバルブ本体12の内部に配置されているが、これらの部品(運動変換機構)が排気抵抗に及ぼす悪影響は少ないと考えられる。なぜなら、これらの部品の表面積は、排気口16及び吸気口14の開口面積と比較すると、極僅かなものになるからである。また、排気口16の開放時には、バルブシート34は、吸気口14と排気口16を結ぶ流路から退避した位置に移動しているため、バルブシート34自体が排気抵抗に悪影響を及ぼすことはない。
次に、本発明の参考例となる開閉バルブについて説明する。
なお、第1実施形態の開閉バルブ10の構成と重複する構成には同じ符号を付し、その説明を適宜省略する。
図7及び図8に示すように、参考例である開閉バルブ60は、排気口16を開放するときのバルブシート34の位置が第1実施形態の開閉バルブ10と比較して異なるものである。すなわち、揺動軸30は、バルブ本体12の内部であって軸方向が吸気口14の開口面及び排気口16の開口面に対して平行となるように配置されている。また、板カム40が吸気口14の開口面に対して直交する方向(垂直)となるように配置されている。このため、バルブシート34は、運動変換機構により直進運動及び回転運動を行い、吸気口14に対向するバルブ本体12の壁12B側に向かって、かつ吸気口14の開口面に対して平行かつ排気口16の開口面に対して直交する姿勢となる位置に移動して吸気口14及び排気口16を開放する。
すなわち、参考例である開閉バルブ60では、排気口16及び吸気口14を開放するときに、バルブシート34が吸気口14側と反対側に向って移動するため、バルブシート34が吸気口14と排気口16とを結ぶ流路上に位置しない。また、板カム40が吸気口14の開口面に対して直交する方向(垂直)となるように配置されているため、第1実施形態の開閉バルブ10と比較して、コンダクタンスが良好になる。
参考例である開閉バルブ60によれば、第1実施形態の開閉バルブ10よりも、排気速度を高めることができる。
次に、本発明の第2実施形態の開閉バルブについて説明する。
なお、第1実施形態の開閉バルブ10の構成と重複する構成には同じ符号を付し、その説明を適宜省略する。
図9に示すように、第2実施形態の開閉バルブ70は、バルブ本体12の上壁部12Aに凹部72が形成されたものである。この凹部72には、アクチュエータ26が取り付けられている。このため、アクチュエータ26の軸方向の一部が凹部72に位置しており、凹部72の深さ寸法だけアクチュエータ26の設置位置を下げることができる。
第2実施形態の開閉バルブ70によれば、凹部72の深さ寸法だけアクチュエータ26の設置位置を下げることができ、開閉バルブ70の縦寸法を短くすることができる。これにより、開閉バルブ70の一層の小型化を実現できる。
なお、上記各実施形態の開閉バルブでは、排気口16の閉塞状態と、排気口16及び吸気口14の開放状態と、を実現できる構成を示したが、バルブシート34により吸気口14の閉塞が可能となるように構成してもよい。