JP5515665B2 - 固体電解質電池、正極活物質および電池 - Google Patents

固体電解質電池、正極活物質および電池 Download PDF

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Description

この発明は、固体電解質電池正極活物質および電池に関する。さらに詳しくは、有機電解液を含有しない固体電解質を有する固体電解質電池およびこれに用いる正極活物質、並びに電池に関する。
リチウムイオンのドープおよび脱ドープを利用したリチウムイオン二次電池は、優れたエネルギー密度を有することから、携帯型電子機器などに広く使用されている。このリチウムイオン二次電池の中でも、安全性や信頼性の観点から、電解質として、有機電解液を含有しない固体電解質を使用した全固体リチウムイオン二次電池の研究開発が、精力的に進められている。
この全固体リチウムイオン二次電池の一形態として、薄膜リチウム二次電池の開発が盛んに行われている。この薄膜リチウム二次電池は、電池を構成する集電体、活物質および電解質を薄膜で形成して、二次電池とするものである。薄膜リチウム二次電池を構成する各薄膜は、スパッタリング法、蒸着法などの成膜方法を用いて形成される。(例えば、非特許文献1参照)
薄膜リチウム二次電池では、固体電解質として、Li3PO4に窒素を置換したLiPON、Lix23に窒素を置換したLiBONなどのアモルファス材料を用いる。このアモルファス材料のイオン伝導度は10-6S/cm程度であり、一般的な液体電解質のイオン伝導度10-2S/cmと比較すると非常に低い値である。薄膜リチウム二次電池では、固体電解質の膜厚が小さく(例えば1μm程度)Li移動距離が短いので、イオン伝導度が低い上記のアモルファス材料で構成した固体電解質は、液系電解質とほぼ同等の性能を示すことが可能である。
一方、薄膜リチウム二次電池では、電気伝導を律速しているのは、正極活物質となる。薄膜リチウム二次電池では、この正極活物質として、液系リチウムイオン二次電池と同様、LiCoO2、LiMn24、LiFePO4などのリチウム遷移金属酸化物を用いることが一般的である。また、これらの他にも、正極活物質として用いる新しいリチウム遷移金属酸化物が提案されている。例えば、特許文献1には、正極活物質として用いるリチウム遷移金属酸化物として、結晶質のLiCu1+xPO4が提案されている。これらのリチウム遷移金属酸化物(以下、上記リチウム遷移金属酸化物)は、イオン伝導度および電子伝導度が低い材料である。
上記リチウム遷移金属酸化物の中でも、LiFePO4は、鉄を構成元素して含む材料であるので、安価であり、枯渇しない材料である点で、環境に優しい材料であり、現在注目されている。ただし、LiFePO4は、内部抵抗が大きいことが原因で十分な充放電特性が得られない問題がある。このため、LiFePO4の表面にカーボンやリン酸リチウムを被膜することで、インピーダンスを低減する技術が提案されている。(例えば非特許文献2参照)
薄膜リチウム二次電池では、正極活物質層の厚さは電池容量に比例するため、高い容量を得るためにはなるべく厚いことが好ましい。しかしながら、薄膜リチウム二次電池では、イオン伝導度および電子伝導度が低い材料で構成された正極活物質層の厚みを厚くする(例えば10μm以上)と、内部インピーダンスが非常に大きくなってしまう。
このため、イオン伝導度および電子伝導度が低い、上記リチウム遷移金属酸化物を用いて、正極活物質層の厚さを厚くした高容量の薄膜リチウム二次電池の実用化は難しい。特に、LiFePO4は電気伝導性が悪いため、LiFePO4を用いた場合には、膜厚を厚くすることができず、高容量の薄膜リチウム二次電池の実用化は難しい。
また、上記リチウム遷移金属酸化物は、結晶質相で用いることが通常であるため、薄膜リチウム二次電池では、上記リチウム含有遷移金属酸化物を成膜する際に、成膜中の基板加熱、成膜後のポストアニールなどを行うことで、結晶質相を形成している。
Thin-Film lithium and lithium-ion batteries, J. B. Bates et al. : Solid State Ionics, 135, 33 (2000) Journal of The Electrochemical Society,153,E160(2006)
特許第3965657号公報
しかしながら、薄膜リチウム二次電池では、基板加熱や成膜後のポストアニ−ルを行う場合には、基板として高価な耐熱ガラスを用いる必要があるので製造コストが高くなってしまう。また、薄膜リチウム二次電池では、固体電解質として用いるLiPON、LiBONなどは、アモルファスで機能する材料であるため、これらの材料に対してアニールを行うと特性が劣化してしまう。
このため、正極活物質もアニールレスで機能する材料を用いることが好ましいが、アニールレスでは、LiCoO2、LiMn24、LiFePO4などのリチウム遷移金属酸化物は、非結晶性が高いため正極活物質としての特性が悪い。すなわち、LiCoO2、LiMn24、LiFePO4などのリチウム遷移金属酸化物は、アニールレスでは、イオン伝導度がLiPONなどの固体電解質のイオン伝導度よりも低いため、正極活物質としての特性が悪い。
したがって、この発明の目的は、アモルファス状態で、正極活物質として機能し、高いイオン伝導度を有する正極活物質を用いた固体電解質電池および電池、並びにアモルファス状態で、高いイオン伝導度を有する正極活物質を提供することにある。
上述した課題を解決するために、第1の発明は、正極活物質層を有する正極側層と、負極側層と、正極側層および負極側層との間に形成された固体電解質層とを備え、正極活物質層は、アモルファス状態の式(1)で表されるリチウム複合酸化物を含む固体電解質電池である。
式(1)LixyPO4-zz
(式中、Mは鉄(Fe)または銅(Cu)である。xはリチウムの組成比を示す。yはMの組成比を示す。zは窒素の組成比を示す。xは0.5≦x≦5.0である。yは1.0≦y≦3.2である。0.3≦z≦0.7である。)
第2の発明は、式(1)で表されるリチウム複合酸化物であって、該リチウム複合酸化物はアモルファス状態であるリチウムイオン二次電池用の正極活物質である。
式(1)
LixyPO4-zz
(式中、Mは鉄(Fe)または銅(Cu)である。xはリチウムの組成比を示す。yはMの組成比を示す。zは窒素の組成比を示す。xは0.5≦x≦5.0である。yは1.0≦y≦3.2である。0.3≦z≦0.7である。)
第3の発明は、オリビン型結晶構造を有するリチウムリン酸化合物粒子と、リチウムリン酸化合物粒子の表面の少なくとも一部に形成された被覆層とを有し、被覆層は、アモルファス状態の式(2)で表されるリチウム複合酸化物で構成されたリチウムイオン二次電池用の正極活物質である。
式(2)
LixFeyPO4-zz
(式中、xはリチウムの組成比を示す。yは鉄の組成比を示す。zは窒素の組成比を示す。xは0.5≦x≦5.0である。yは1.0≦y≦3.2である。0.3≦z≦0.7である。)
第4の発明は、正極活物質を含む正極と、負極と、電解質とを有し、正極活物質は、オリビン型結晶構造を有するリチウムリン酸化合物粒子と、リチウムリン酸化合物粒子の表面の少なくとも一部に形成された被覆層とを有し、被覆層は、アモルファス状態の式(2)で表されるリチウム複合酸化物で構成された電池である。
式(2)
Li x Fe y PO 4-z z
(式中、xはリチウムの組成比を示す。yは鉄の組成比を示す。zは窒素の組成比を示す。xは0.5≦x≦5.0である。yは1.0≦y≦3.2である。0.3≦z≦0.7である。)
この発明では、正極活物質層(または被覆層)は、アモルファス状態の式(1)で表されるリチウム複合酸化物を含む。このアモルファス状態の式(1)で表されるリチウム複合酸化物は、アモルファス状態で、高いイオン伝導度を有する正極活物質として機能する。
この発明によれば、アモルファス状態で機能し、高いイオン伝導度を有する正極活物質を用いた固体電解質電池、並びに電池およびアモルファス状態で、高いイオン伝導度を有する正極活物質を提供できる。
この発明の第1の実施の形態による固体電解質電池の構成を示す図である。 この発明の第2の実施の形態による固体電解質電池の構成を示す図である。 この発明の第3の実施の形態による電池の構成を示す断面図である。 巻回電極体の構成を示す断面図である。 正極活物質膜のXPSスペクトルである。 正極活物質膜の断面のTEM像および電子回折像である。 充放電曲線を示すグラフである。 サイクル数に対して充放電容量をプロットしたグラフである。 充放電曲線を示すグラフである。 充放電曲線を示すグラフである。 ナイキストプロットである。 充放電曲線を示すグラフである。 充放電曲線を示すグラフである。 充放電曲線を示すグラフである。 サイクル数に対して充放電容量をプロットしたグラフである。 充放電曲線を示すグラフである。
以下、この発明の実施の形態について図面を参照して説明する。説明は、以下の順序で行う。なお、実施の形態の全図において、同一または対応する部分には同一の符号を付す。
1.第1の実施の形態(固体電解質電池の第1の例)
2.第2の実施の形態(固体電解質電池の第2の例)
3.第3の実施の形態(電池の例)
4.他の実施の形態
1.第1の実施の形態
図1はこの発明の第1の実施の形態による固体電解質電池の構成を示す。この固体電解質電池は、例えば充電および放電可能な固体電解質二次電池である。図1Aはこの固体電解質電池の平面図である。図1Bは図1Aの線X−Xに沿った断面を示す断面図である。図1Cは図1Aの線Y−Yに沿った断面を示す断面図である。
図1に示すように、この固体電解質電池は、基板10の上に無機絶縁膜20が形成され、無機絶縁膜20上に、正極側集電体膜30と、正極活物質膜40と、固体電解質膜50と、負極電位形成層64と、負極側集電体膜70とがこの順で積層された積層体を有する。この積層体の全体を覆うように、例えば、紫外線硬化樹脂から構成された全体保護膜80が形成されている。なお、全体保護膜80上に無機絶縁膜20を形成してもよい。
[基板]
基板10としては、例えば、ポリカーボネート(PC)樹脂基板、フッ素樹脂基板、ポリエチレンテレフタレート(PET)基板、ポリブチレンテレフタレート(PBT)基板、ポリイミド(PI)基板、ポリアミド(PA)基板、ポリスルホン(PSF)基板、ポリエーテルスルホン(PES)基板、ポリフェニレンスルフィド(PPS)基板、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)基板、ポリエチレンナフタレート(PEN)、シクロオレフィンポリマー(COP)等を使用することができる。この基板の材質は特に限定されるものではないが、吸湿性が低く耐湿性を有する基板がより好ましい。
(正極側集電体膜30)
正極側集電体膜30を構成する材料としては、Cu、Mg、Ti、Fe、Co、Ni、Zn、Al、Ge、In、Au、Pt、Ag、Pd等、又は、これらの何れかを含む合金を使用することができる。
(正極活物質膜40)
正極活物質膜40は、アモルファス状態の式(1)で表されるリチウム複合酸化物で構成される。
式(1)LixyPO4-zz
(式中、Mは、遷移金属から選ばれた1種である。xはリチウムの組成比を示す。yは遷移金属Mの組成比を示す。zは窒素の組成比を示す。)
アモルファス状態の式(1)で表されるリチウム複合酸化物は、正極活物質として以下の優れた特性を有する。すなわち、対Li+/Liに対して高い電位を有する。電位の平坦性に優れる、すなわち組成変化に伴う電位変動が小さい。リチウムの組成比も大きいので高容量である。高い電気伝導性を有する。結晶質の正極活物質のように充放電の繰り返しによる結晶構造の崩壊などもないので、充放電サイクル特性も優れている。また、アニ−ルレスで形成できるため、プロセスの簡素化、歩留まりの向上、樹脂基板の利用を可能とする。
式(1)で表されるリチウム複合酸化物において、遷移金属Mとしては、より具体的には、例えば、Cu、Fe、Co、Ni、Ag、Mn、Ti、Vなどが挙げられる。中でも、Cuは、より良好な特性が得られる点から好ましい。
式(1)で表されるリチウム複合酸化物において、リチウムの組成比xの範囲は、0.5≦x≦5.0が好ましい。リチウムの組成比が0.5未満であると、充放電容量が低下するためである。リチウムの組成比xの上限は、特に限定されないが、電位が保たれる限界がLiの組成比xの上限値となる。確認できた範囲では、5.0以下が好ましい。
式(1)で表されるリチウム複合酸化物において、遷移金属元素Mの組成比yの範囲は、十分な充放電容量が得られる点から、1.0≦y≦3.2が好ましい。Mの組成比yが1.0未満であると、容量が低下し過ぎて、電池として機能しなくなるからである。Mの組成比yが3.2を超えると、エネルギー密度の面での利点がなくなるからである。
式(1)で表されるリチウム複合酸化物において、窒素の組成比zの範囲は、0.3≦z≦0.7が好ましい。スパッタ法により窒素を導入する場合、窒素雰囲気、あるいはアルゴンおよび窒素の混合ガス雰囲気で成膜するが、サンプル作製し調査した範囲では、窒素の置換量が0.3未満であるとイオン伝導度が低く実用性がないと考えられるためである。また、0.7を超える窒素の組成は、スパッタ条件を変えても得られず、安定な組成として存在しないと考えられるためである。
この正極活物質膜40は、結晶質相が含まれず、完全にアモルファス単相の薄膜である。この正極活物質膜40が、アモルファス単相であることは、透過型電子顕微鏡(TEM;transmission electron microscope)で断面を観察することで確認できる。すなわち、この正極活物質膜40を透過型電子顕微鏡(TEM)で断面を観察すると、そのTEM像において、結晶粒が存在しない状態を確認できる。また、電子線回折像からも確認できる。
(固体電解質膜50)
固体電解質膜50を構成する材料として、リン酸リチウム(Li3PO4)、リン酸リチ
ウム(Li3PO4)に窒素を添加したLi3PO4-xx(一般に、LiPONと呼ばれている。)、Lix23-yy、Li4SiO4−Li3PO4、Li4SiO4−Li3VO4等を使用することができる。
(負極電位形成層64)
負極電位形成層64としては、例えば、Mn、Co、Fe、P、Ni、Siのうち1種以上を含む酸化物を用いることができる。この酸化物としては、より具体的には、LiCoO2、LiMn24などが挙げられる。
この固体電解質電池では、製造時点に、負極活物質膜を形成することなく、これに換えて負極電位形成層64を形成している。負極活物質は充電と共に負極側に生じる。負極側に生じるのは、Li金属または固体電解質膜50の負極側界面のLiが過剰に含まれる層(以下、Li過剰層という)である。この過剰に堆積されるLi(Li過剰層)を負極活物質として利用しながら、充放電特性を損なわずに充放電の繰返しに対して高い耐久性を有する。
負極電位形成層64は、電池の初期充電の際にLiを一部取り込むものの、その後の充放電の過程でLi含有量が一定値に保たれ、且つ、これによりLiの負極側集電体膜への拡散を抑え、負極側集電体膜70の劣化を抑えることによって、繰り返し充放電特性を極めて良好にし、更に、Liの負極側集電体膜70へ拡散による充電量の損失を最小限に抑える効果がある。もし、負極電位形成層64がなければ、Liが負極側集電体膜70へ拡散してしまい、電池の充放電に伴うLiの総量を一定値に保持することができないので、充放電特性が劣化してしまう。
なお、正極活物質膜40の厚さに対応して、固体電解質膜50の負極側界面に形成されるLi過剰層の厚さは変化するが、負極電位形成層64は、固体電解質膜50の負極側界面に形成されるLi過剰層に対する保護膜として十分に機能すればよいので、負極電位形成層64の膜厚は、Li過剰層の厚さには直接関係せず、正極活物質膜40の厚さに依存しない。
この固体電解質電池では、負極活物質の容量が正極活物質内のLi量よりも少ない場合には、負極活物質に入りきらないLiが界面に析出してLi過剰層をなしこれが負極活物質として機能することを利用する。この固体電解質電池では、負極電位形成層64の膜厚を正極活物質膜40よりも十分に薄く形成して、充電されていない状態では実質的に負極活物質が存在しない状態としている。
負極電位形成層64は、負極活物質として利用される材料でもよいので、この場合には、より正確にいえば、一部は負極活物質として機能し、残りはLi過剰層に対する保護膜として機能する。負極電位形成層64の膜厚が正極活物質膜40よりも十分に薄い場合には、その殆どが保護膜として使用される。
この固体電解質電池では、負極電位形成層64を正極活物質膜40の膜厚よりも十分に薄く形成して、界面に析出してなり負極活物質として機能するLi過剰層が、電池駆動の半分以上を担っている構成を有している。
(負極側集電体膜70)
負極側集電体膜70を構成する材料としては、Cu、Mg、Ti、Fe、Co、Ni、Zn、Al、Ge、In、Au、Pt、Ag、Pd等、又は、これらの何れかを含む合金を使用することができる。
(無機絶縁膜20)
無機絶縁膜20を構成する材料は、吸湿性が低く耐湿性を有する膜を形成することができる材料であればよい。このような材料として、Si、Cr、Zr、Al、Ta、Ti、Mn、Mg、Znの酸化物又は窒化物又は硫化物の単体、或いは、これらの混合物を使用することができる。より具体的には、Si34、SiO2、Cr23、ZrO2、Al23、TaO2、TiO2、Mn23、MgO、ZnS等、或いは、これらの混合物を使用する。
(固体電解質電池の製造方法)
上述した固体電解質電池は例えば以下のようにして製造する。
まず、基板上に無機絶縁膜20を形成する。次に、無機絶縁膜20上に、正極側集電体膜30、正極活物質膜40、固体電解質膜50、負極電位形成層64、負極側集電体膜70を順次形成し、これにより、積層体が形成される。次に、この積層体及び無機絶縁膜20の全体を覆うように、例えば、紫外線硬化樹脂からなる全体保護膜80が、基板(有機絶縁基板)10の上に形成される。以上の一連の工程によって、この発明の第1の実施の形態による固体電解質電池を形成することができる。
[薄膜の形成方法]
無機絶縁膜20、正極側集電体膜30、正極活物質膜40、固体電解質膜50、負極電位形成層64、負極側集電体膜70の形成方法について説明する。
各薄膜は、例えば、PVD(Physical Vapor Deposition:物理気相成長)法あるいはCVD(Chemical Vapor Deposition:化学気相成長)法などの気相法により形成できる。また、電気めっき、無電めっき、塗布法、ゾル−ゲル法などの液相法により形成できる。また、SPE(固相エピタキシー)法、LB(Langmuir-Blodgett:ラングミュアブロジェット)法などの固相法により形成することができる。
PVD法は、薄膜化する薄膜原料を熱やプラズマなどのエネルギーで一旦蒸発・気化し、基板上に薄膜化する方法である。PVD法としては、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、MBE(分子線エキピタシー)法、レーザアブレーション法等が挙げられる。
CVD法は、ガスとして供給される薄膜の構成材料に対して、熱、光、プラズマなどのエネルギーを加えて原料ガス分子の分解・反応・中間生成物を形成し、基板表面での吸着、反応、離脱を経て薄膜を堆積させる方法である。
CVD法としては、例えば、熱CVD法、MOCVD(Metal Organic Chemical Chemical Vapor Deposition:有機金属気相成長)法、RFプラズマCVD法、光CVD法、レーザCVD法、LPE(Liquid Phase Epitaxy)法などが挙げられる。
上述の薄膜形成方法によって、所望の構成の無機絶縁膜20、正極側集電体膜30、正極活物質膜40、固体電解質膜50、負極電位形成層64、負極側集電体膜70を形成することは、当業者にとって容易である。すなわち、当業者は、薄膜原料、薄膜形成方法、薄膜形成条件等を適宜選択することによって、所望の構成の無機絶縁膜20、正極活物質膜40、固体電解質膜50、負極電位形成層64、負極側集電体膜70を容易に形成できる。
(効果)
この発明の第1の実施の形態では、正極活物質膜40は、アモルファス状態の式(1)で表されるリチウム複合酸化物で構成する。これにより、優れた特性を有する固体電解質電池を得ることができる。
また、この発明の第1の実施の形態では、正極活物質膜40はアニールレスでも正極活物質として機能する。これにより、基板10として高価な耐熱ガラスを用いる必要がないので、製造コストも低減することができる。
2.第2の実施の形態
この発明の第2の実施の形態による固体電解質電池について説明する。この固体電解質電池は、例えば充電および放電可能な固体電解質二次電池である。図2は、この発明の第2の実施の形態による固体電解質電池の構成を示す。図2Aは、この固体電解質電池の平面図である。図2Bは、図2Aの線X−Xに沿った断面を示す断面図である。図2Cは、図2Aの線Y−Yに沿った断面を示す断面図である。
この固体電解質電池は、基板10の上に無機絶縁膜20上が形成され、無機絶縁膜20上に、正極側集電体膜30、正極活物質膜40、固体電解質膜50、負極活物質膜60、負極側集電体膜70がこの順で積層された積層体を有する。この積層体および無機絶縁膜20の全体を覆うように例えば、紫外線硬化樹脂から構成された全体保護膜80が形成されている。なお、全体保護膜80上に無機絶縁膜20を形成してもよい。
基板10、無機絶縁膜20、正極活物質膜40、固体電解質膜50、負極側集電体膜70および全体保護膜80は、第1の実施の形態と同様であるので詳細な説明を省略する。負極活物質膜60は以下の構成を有する。
[負極活物質膜]
負極活物質膜60を構成する材料は、リチウムイオンを吸蔵および離脱させ易く、負極活物質膜に多くのリチウムイオンを吸蔵および離脱させることが可能な材料であればよい。このような材料として、Sn、Si、Al、Ge、Sb、Ag、Ga、In、Fe、Co、Ni、Ti、Mn、Ca、Ba、La、Zr、Ce、Cu、Mg、Sr、Cr、Mo、Nb、V、Zn等の何れかの酸化物を使用することができる。また、これら酸化物を混合して用いることもできる。
負極活物質膜60の材料は具体的には、例えば、シリコン−マンガン合金(Si−Mn)、シリコン−コバルト合金(Si−Co)、シリコン−ニッケル合金(Si−Ni)、五酸化ニオブ(Nb25)、五酸化バナジウム(V25)、酸化チタン(TiO2)、酸化インジウム(In23)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化スズ(SnO2)、酸化ニッケル(NiO)、Snが添加された酸化インジウム(ITO)、Alが添加された酸化亜鉛(AZO)、Gaが添加された酸化亜鉛(GZO)、Snが添加された酸化スズ(ATO)、F(フッ素)が添加された酸化スズ(FTO)等である。また、これらを混合して用いることもできる。
(固体電解質電池の製造方法)
上述した固体電解質電池は例えば以下のようにして製造する。
まず、基板10上に無機絶縁膜20を形成する。次に、無機絶縁膜20上に、正極側集電体膜30、正極活物質膜40、固体電解質膜50、負極活物質膜60、負極側集電体膜70を順次形成し、これにより、積層体が形成される。次に、この積層体及び無機絶縁膜20の全体を覆うように、例えば、紫外線硬化樹脂からなる全体保護膜80が、基板10の上に形成される。以上の一連の工程によって、この発明の第2の実施の形態による固体電解質電池を形成することができる。
(効果)
第2の実施の形態は、第1の実施の形態と同様の効果を有する。
3.第3の実施の形態
この発明の第3の実施の形態による電池について説明する。
[電池の構成]
図3は、この発明の第3の実施の形態による電池の断面構成を示す。この電池は、有機溶媒を含む電解液を用いた非水電解質電池である。また、この電池は、負極の容量が電極反応物質であるリチウムの吸蔵および放出に基づく容量成分により表されるリチウムイオン二次電池である。この電池は、円筒型と呼ばれる電池構造を有する。
この電池は、ほぼ中空円柱状の電池缶111の内部に、正極121および負極122がセパレータ123を介して巻回された巻回電極体120と、一対の絶縁板112、113とが収納されたものである。電池缶111は、例えば、ニッケル(Ni)めっきが施された鉄(Fe)により構成されており、その一端部および他端部はそれぞれ閉鎖および開放されている。一対の絶縁板112、113は、巻回電極体120を挟み、その巻回周面に対して垂直に延在するように配置されている。
電池缶111の開放端部には、電池蓋114と、その内側に設けられた安全弁機構115および熱感抵抗素子(Positive Temperature Coefficient;PTC素子)116とが、ガスケット117を介してかしめられることにより取り付けられており、電池缶111の内部は密閉されている。電池蓋114は、例えば、電池缶111と同様の材料により構成されている。安全弁機構115は、熱感抵抗素子116を介して電池蓋114と電気的に接続されている。
この安全弁機構115では、内部短絡あるいは外部からの加熱などに起因して内圧が一定以上となった場合に、ディスク板115Aが反転することにより電池蓋114と巻回電極体20との間の電気的接続が切断されるようになっている。熱感抵抗素子116は、温度の上昇に応じて抵抗が増大することにより電流を制限し、大電流に起因する異常な発熱を防止するものである。ガスケット117は、例えば、絶縁材料により構成されており、その表面にはアスファルトが塗布されている。
巻回電極体120の中心には、例えば、センターピン124が挿入されている。この巻回電極体120では、アルミニウム(Al)などにより構成された正極リード125が正極121に接続されており、ニッケルなどにより構成された負極リード126が負極122に接続されている。正極リード125は、安全弁機構115に溶接されることにより電池蓋114と電気的に接続されており、負極リード126は、電池缶111に溶接されることにより電気的に接続されている。
(正極)
図4は、図3に示した巻回電極体120の一部を拡大して表している。正極121は、例えば、対向する一対の面を有する正極集電体121Aの両面に、正極活物質層121Bが設けられたものである。正極集電体121Aは、例えば、アルミニウム(Al)、ニッケル(Ni)あるいはステンレス(SUS)などの金属材料により構成されている。正極活物質層121Bは、例えば、、電極反応物質であるリチウムを吸蔵および放出することが可能な正極活物質含んでいる。この正極活物質層121Bは、必要に応じて、導電剤や結着剤などを含んでいてもよい。
(正極活物質)
正極活物質としては、オリビン型結晶構造を有するリチウムリン酸化合物粒子と、該リチウムリン酸化合物粒子の少なくとも一部に形成された被覆層とから構成されたリチウムリン酸化合物を用いる。(以下被覆リチウムリン酸化合物と称する)オリビン型結晶構造を有するリチウムリン酸化合物粒子は、一次粒子でも一次粒子が凝集した二次粒子であってもよい。
(リチウムリン酸化合物)
オリビン型結晶構造を有するリチウムリン酸化合物としては、例えば、化Iで表される化合物を挙げることができる。
(化I)
LiMxPO4
(式中、Mは、コバルト(Co)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、ホウ素(B)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、ニオブ(Nb)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、モリブデン(Mo)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、タングステン(W)およびジルコニウム(Zr)からなる群のうちの少なくとも1種である。xは0<x≦1である。)
化Iで表される化合物としては、LiFePO4や、LiFe1-yMeyPO4、LiFe1-y-zMe1yMe2zPO4、LiCoPO4、LiCo1-yMeyPO4、LiMn1-yMeyPO4(式中、Me、Me1、Me2は、コバルト(Co)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、ホウ素(B)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、ニオブ(Nb)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、モリブデン(Mo)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、タングステン(W)およびジルコニウム(Zr)から選ばれる1種であり、0<y<1、0<z<1である。)などが挙げられる。
(被覆層)
被覆層は、アモルファス状態の式(2)で表されるリチウムリン酸化合物で構成される。
式(2)
LixFeyPO4-zz
(式中、xはリチウムの組成比を示す。yは鉄の組成比を示す。zは窒素の組成比を示す。xは0.5≦x≦5.0である。yは1.0≦y≦3.2である。0.3≦z≦0.7である。)
この被覆層は、結晶質相が含まれず、完全にアモルファス単相である。この被覆層が、アモルファス単相であることは、透過型電子顕微鏡(TEM;transmission electron microscope)で断面を観察することで確認できる。すなわち、この被覆層を透過型電子顕微鏡(TEM)で断面を観察すると、そのTEM像において、結晶粒が存在しない状態を確認できる。また、電子線回折像からも確認できる。
この被覆層は、オリビン型結晶構造を有するリチウムリン酸化合物粒子に対して、スパッタリング法、真空蒸着法などの成膜法により形成することができる。この被覆層を形成することにより、リチウムリン酸化合物の界面抵抗を低減し、粒子の表面までイオン伝導度の高い正極活物質を実現することができる。
(結着剤)
結着剤としては、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)などのフッ素系高分子化合物などが挙げられる。
(導電剤)
導電剤としては、例えば、黒鉛、カーボンブラックまたはケッチェンブラックなどの炭素材料が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、複数種を混合して用いてもよい。なお、導電剤は、導電性を有する材料であれば、金属材料または導電性高分子などであってもよい。
<負極>
負極122は、例えば、対向する一対の面を有する負極集電体122Aの両面に、負極活物質層122Bが設けられたものである。負極集電体122Aは、例えば、銅(Cu)、ニッケル(Ni)またはステンレス(SUS)などの金属材料により構成されている。負極活物質層122Bは、例えば、負極活物質として、リチウムを吸蔵および放出することが可能な負極材料のいずれか1種または2種以上を含んでいる。この負極活物質層122Bは、必要に応じて、導電剤や結着剤などを含んでいてもよい。
(負極活物質)
リチウムを吸蔵および放出することが可能な負極材料としては、例えば、炭素材料、金属酸化物または高分子化合物などが挙げられる。
炭素質材料としては、例えば、難黒鉛化性炭素、易黒鉛化性炭素、MCMB(メソカーボンマイクロビーズ)などの人造黒鉛、天然黒鉛、熱分解炭素類、コークス類、グラファイト類、ガラス状炭素類、有機高分子化合物焼成体、カーボンブラック類、炭素繊維あるいは活性炭が挙げられる。このうち、コークス類には、ピッチコークス、ニードルコークスあるいは石油コークスなどがある。有機高分子化合物焼成体というのは、フェノール樹脂やフラン樹脂などの高分子材料を適当な温度で焼成して炭素化したものをいい、一部には難黒鉛化性炭素または易黒鉛化性炭素に分類されるものもある。金属酸化物としては、例えば、酸化鉄、酸化ルテニウムまたは酸化モリブデンなどが挙げられる。また、高分子材料としてはポリアセチレンまたはポリピロールなどが挙げられる。
リチウムを吸蔵および放出することが可能な負極材料としては、例えば、リチウムを吸蔵および放出することが可能であると共に金属元素および半金属元素のうちの少なくとも1種を構成元素として含む材料も挙げられる。このような負極材料を用いれば、高いエネルギー密度を得ることができるので好ましい。この負極材料は、金属元素若しくは半金属元素の単体でも合金でも化合物でもよく、またはこれらの1種若しくは2種以上の相を少なくとも一部に有するようなものでもよい。なお、本発明において、合金には、2種以上の金属元素からなるものに加えて、1種以上の金属元素と1種以上の半金属元素とを含むものも含める。また、本発明における合金は、非金属元素を含んでいてもよい。この組織には、固溶体、共晶(共融混合物)、金属間化合物またはそれらのうちの2種以上が共存するものがある。
この負極材料を構成する金属元素または半金属元素としては、例えば、リチウムと合金を形成することが可能な金属元素または半金属元素が挙げられる。具体的には、マグネシウム(Mg)、ホウ素(B)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、ケイ素(Si)、ゲルマニウム(Ge)、スズ、鉛(Pb)、ビスマス(Bi)、カドミウム(Cd)、銀(Ag)、亜鉛(Zn)、ハフニウム(Hf)、ジルコニウム(Zr)、イットリウム(Y)、パラジウム(Pd)または白金(Pt)などが挙げられる。このうち、特に好ましいのは、ケイ素(Si)およびスズ(Sn)のうちの少なくとも1種である。リチウムを吸蔵および放出する能力が大きく、高いエネルギー密度が得られるからである。
ケイ素(Si)およびスズ(Sn)のうちの少なくとも1種を含む負極材料としては、例えば、ケイ素の単体、合金若しくは化合物、スズの単体、合金若しくは化合物、またはこれらの1種若しくは2種以上の相を少なくとも一部に有する材料が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、複数種を混合して用いてもよい。
ケイ素の合金としては、例えば、ケイ素(Si)以外の第4の構成元素として、スズ(Sn)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、マンガン(Mn)、亜鉛(Zn)、インジウム(In)、銀(Ag)、チタン(Ti)、ゲルマニウム(Ge)、ビスマス(Bi)、アンチモン(Sb)およびクロム(Cr)からなる群のうちの少なくとも1種を含むものが挙げられる。スズの合金としては、例えば、スズ(Sn)以外の第4の構成元素として、ケイ素(Si)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、マンガン(Mn)、亜鉛(Zn)、インジウム(In)、銀(Ag)、チタン(Ti)、ゲルマニウム(Ge)、ビスマス(Bi)、アンチモン(Sb)およびクロム(Cr)からなる群のうちの少なくとも1種を含むものが挙げられる。
スズの化合物またはケイ素の化合物としては、例えば、酸素(O)または炭素(C)を含むものが挙げられ、スズ(Sn)またはケイ素(Si)に加えて、上記した第4の構成元素を含んでいてもよい。
特に、ケイ素(Si)およびスズ(Sn)のうちの少なくとも1種を含む負極材料としては、例えば、スズ(Sn)を第1の構成元素とし、そのスズ(Sn)に加えて第4の構成元素と第3の構成元素とを含むものが好ましい。勿論、この負極材料を上記した負極材料と共に用いてもよい。第4の構成元素は、コバルト(Co)、鉄(Fe)、マグネシウム(Mg)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、ガリウム(Ga)、ジルコニウム(Zr)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、銀(Ag)、インジウム(In)、セリウム(Ce)、ハフニウム(Hf)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、ビスマス(Bi)およびケイ素(Si)からなる群のうちの少なくとも1種である。第3の構成元素は、ホウ素(B)、炭素(C)、アルミニウム(Al)およびリン(P)からなる群のうちの少なくとも1種である。第4の元素および第3の元素を含むことにより、サイクル特性が向上するからである。
中でも、スズ(Sn)、コバルト(Co)および炭素(C)を構成元素として含み、炭素(C)の含有量が9.9質量%以上29.7質量%以下の範囲内、スズ(Sn)およびコバルト(Co)の合計に対するコバルト(Co)の割合(Co/(Sn+Co))が30質量%以上70質量%以下の範囲内であるCoSnC含有材料が好ましい。このような組成範囲において、高いエネルギー密度が得られると共に優れたサイクル特性が得られるからである。
このCoSnC含有材料は、必要に応じて、さらに他の構成元素を含んでいてもよい。他の構成元素としては、例えば、ケイ素(Si)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)、インジウム(In)、ニオブ(Nb)、ゲルマニウム(Ge)、チタン(Ti)、モリブデン(Mo)、アルミニウム(Al)、リン(P)、ガリウム(Ga)またはビスマス(Bi)などが好ましく、それらの2種以上を含んでいてもよい。容量特性あるいはサイクル特性がさらに向上するからである。
なお、CoSnC含有材料は、スズ(Sn)、コバルト(Co)および炭素(C)を含む相を有しており、この相は結晶性の低いまたは非晶質な構造を有していることが好ましい。また、CoSnC含有材料では、構成元素である炭素の少なくとも一部が、他の構成元素である金属元素あるいは半金属元素と結合していることが好ましい。サイクル特性の低下は、スズ(Sn)などが凝集あるいは結晶化することによるものであると考えられるが、炭素が他の元素と結合することにより、そのような凝集または結晶化が抑制されるからである。
元素の結合状態を調べる測定方法としては、例えば、X線光電子分光法(X-ray Photoelectron Spectroscopy;XPS)が挙げられる。このXPSでは、金原子の4f軌道(Au4f)のピークが84.0eVに得られるようにエネルギー較正された装置において、グラファイトであれば、炭素の1s軌道(C1s)のピークは284.5eVに現れる。また、表面汚染炭素であれば、284.8eVに現れる。これに対して、炭素元素の電荷密度が高くなる場合、例えば、炭素が金属元素または半金属元素と結合している場合には、C1sのピークは284.5eVよりも低い領域に現れる。すなわち、CoSnC含有材料について得られるC1sの合成波のピークが284.5eVよりも低い領域に現れる場合には、CoSnC含有材料に含まれる炭素(C)の少なくとも一部が他の構成元素である金属元素または半金属元素と結合している。
なお、XPSでは、例えば、スペクトルのエネルギー軸の補正に、C1sのピークを用いる。通常、表面には表面汚染炭素が存在しているので、表面汚染炭素のC1sのピークを284.8eVとし、これをエネルギー基準とする。XPSにおいて、C1sのピークの波形は、表面汚染炭素のピークとCoSnC含有材料中の炭素のピークとを含んだ形として得られるので、例えば、市販のソフトウエアを用いて解析することにより、表面汚染炭素のピークと、CoSnC含有材料中の炭素のピークとを分離する。波形の解析では、最低束縛エネルギー側に存在する主ピークの位置をエネルギー基準(284.8eV)とする。
(導電剤)
導電剤としては、例えば、黒鉛、カーボンブラックなどの炭素材料が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、複数種を混合して用いてもよい。なお、導電剤は、導電性を有する材料であれば、金属材料または導電性高分子などであってもよい。
(結着剤)
結着剤としては、例えば、スチレンブタジエン系ゴム、フッ素系ゴムまたはエチレンプロピレンジエンなどの合成ゴムや、ポリフッ化ビニリデンなどの高分子材料が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、複数種を混合して用いてもよい。
[電解液]
電解液は、溶媒と電解質塩とを含む。溶媒としては、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ビニレンカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネートなどの炭酸エステル系溶媒、1,2−ジメトキシエタン、1−エトキシ−2−メトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトンなどのラクトン系溶媒、アセトニトリルなどのニトリル系溶媒、スルフォラン系溶媒、リン酸類、リン酸エステル溶媒、、ピロリドン類などの非水溶媒が挙げられる。溶媒は、いずれか1種を単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。
電解質塩は、LiPF6、LiClO4、LiBF4、LiN(CF3SO22、LiN(C25SO22、LiAsF6などのリチウム塩を用いることができる。これらのリチウム塩は、いずれか1種を用いても、2種以上を混合して用いてもよい。
(セパレータ)
セパレータ123は、正極121と負極122とを隔離し、両極の接触による電流の短絡を防止しつつリチウムイオンを通過させるものである。このセパレータ35は、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンなどの合成樹脂からなる多孔質膜、またはセラミックからなる多孔質膜により構成されており、これらの2種以上の多孔質膜を積層した構造とされていてもよい。
[電池の製造方法]
上述した電池は、例えば、以下のように製造する。
まず、例えば、正極集電体121Aの両面に正極活物質層121Bを形成することにより、正極121を作製する。この正極活物質層121Bを形成する際には、正極活物質の粉末と、導電剤と、結着剤とを混合した正極合剤をN−メチル−2−ピロリドンなどの溶剤に分散させることによりペースト状の正極合剤スラリーとする。そして、正極合剤スラリーを正極集電体121Aに塗布して乾燥させたのちに圧縮成型する。
また、例えば、正極121と同様の手順にしたがって負極集電体122Aの両面に負極活物質層122Bを形成することにより、負極122を作製する。
次に、正極集電体121Aに正極リード125を溶接して取り付けると共に、負極集電体122Aに負極リード126を溶接して取り付ける。
次に、正極121および負極122をセパレータ123を介して巻回させることにより巻回電極体120を形成する。そして、正極リード125の先端部を安全弁機構115に溶接すると共に負極リード126の先端部を電池缶111に溶接したのち、巻回電極体120を一対の絶縁板112、113で挟みながら電池缶111の内部に収納する。
次に、電池缶111の内部に上述した電解液を注入してセパレータ123に含浸させる。最後に、電池缶111の開口端部に電池蓋114、安全弁機構115および熱感抵抗素子116をガスケット117を介してかしめることにより固定する。以上により、図3および図4に示す電池を得ることができる。
<効果>
この発明の第3の実施の形態による電池では、正極活物質として、オリビン型結晶構造を有するリチウムリン酸化合物粒子と、該リチウムリン酸化合物粒子の少なくとも一部に形成された被覆層とから構成されたリチウムリン酸化合物を用いる。これにより、出力特性などの電池特性を向上させることができる。
以下、実施例によりこの発明を具体的に説明するが、この発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
<サンプル1−1>
図1に示す構成を有する固体電解質電池を作製した。基板10として厚さ1.1mmのポリカーボネート(PC)基板を用いた。基板10の全面に無機絶縁膜20として、SCZ(SiO2−Cr23−ZrO2)を成膜した。
無機絶縁膜20の上に、金属マスクを配して所定領域に、正極側集電体膜30、正極活物質膜40、固体電解質膜50、負極電位形成層64、負極側集電体膜70の順に成膜し積層体を形成した。正極側集電体膜30としてTi膜、正極活物質膜40としてLixCuyPO4-zz膜、固体電解質膜50としてLi3PO4x膜、負極電位形成層64としてLiCoO2膜、負極側集電体膜70としてTi膜を形成した。無機絶縁膜20および積層体を構成する各薄膜の成膜条件は、以下のようにした。なお、基板10は基板加熱をせず、基板ホルダーを20℃で水冷し成膜を行った。
[無機絶縁膜20]
無機絶縁膜20の成膜は、下記のスパッタリング装置および成膜条件で行った。
スパッタリング装置(アネルバ社製、C−3103)
ターゲット組成:SCZ(SiO2 35at%(アトミックパーセント)+Cr23 30at%+ZrO2 35at%)
ターゲットサイズ:Φ6インチ
スパッタリングガス:Ar100sccm、0.13Pa
スパッタリングパワー:1000W(RF)
膜厚:50nm
[正極側集電体膜30]
正極側集電体膜30の成膜は、下記のスパッタリング装置および成膜条件で行った。
スパッタリング装置(アルバック社製、SMO−01特型)
ターゲット組成:Ti
ターゲットサイズ:Φ4インチ
スパッタリングガス:Ar70sccm、0.45Pa
スパッタリングパワー:1000W(DC)
膜厚:100nm
[正極活物質膜40]
正極活物質膜40は、下記のスパッタリング装置および成膜条件で行った。
スパッタリング装置(アルバック社製、SMO−01特型)
ターゲット組成:Li3PO4およびCuのコスパッタ
ターゲットサイズ:Φ4インチ
スパッタリングガス:Ar20sccm+N220sccm、0.26Pa
スパッタリングパワー:Li3PO4600W、Cu50W(DC)
膜厚:400nm
[固体電解質膜50]
固体電解質膜50の成膜は、下記のスパッタリング装置および成膜条件で行った。
スパッタリング装置(アルバック社製、SMO−01特型)
ターゲット組成:Li3PO4
ターゲットサイズ:Φ4インチ
スパッタリングガス:Ar20sccm+N220sccm、0.26Pa
スパッタリングパワー:600W(RF)
膜厚:400nm
[負極電位形成層64]
負極電位形成層64の成膜は、下記のスパッタリング装置および成膜条件で行った。
スパッタリング装置(アルバック社製、SMO−01特型)
ターゲット組成:LiCoO2
ターゲットサイズ:Φ4インチ
スパッタリングガス:(Ar80%+O220%混合ガス)20sccm、0.20Pa
スパッタリングパワー:300W(RF)
膜厚:10nm
[負極側集電体膜70]
負極側集電体膜70の成膜は、下記のスパッタリング装置および成膜条件で行った。
スパッタリング装置(アルバック社製、SMO−01特型)
ターゲット組成:Ti
ターゲットサイズ:Φ4インチ
スパッタリングガス:Ar70sccm、0.45Pa
スパッタリングパワー:1000W(DC)
膜厚:200nm
次に、全体保護膜80を、紫外線硬化樹脂(ソニーケミカル&インフォメーションデバイス製、型番SK3200)を用いて形成し、さらに全体保護膜40上に無機絶縁膜20を成膜した。以上により、サンプル1−1の固体電解質電池を得た。すなわち、下記の膜構成を有するサンプル1−1の固体電解質電池を得た。
固体電解質電池の膜構成:
ポリカーボネート基板/SCZ(50nm)/Ti(100nm)/LixCuyPO4-zz(400nm)/Li3PO4x(400nm)/LiCoO2(10nm)/Ti(200nm)/紫外線硬化樹脂(20μm)/SCZ(50nm)
[正極活物質膜40の分析]
(XPS分析)
正極活物質膜40の分析を以下のようにして行った。正極活物質膜40の成膜条件と同一の成膜条件で、正極活物質膜40と同様の単層膜を石英ガラス上に成膜し、X線光電子分光法(XPS;X−ray photoelectron spectroscopy)により組成分析を行った。測定結果を図5に示す。測定結果より、この単層膜の組成は、Li2.0Cu1.6PO3.20.7であった。
(TEM分析)
また、この単層膜の断面を透過型電子顕微鏡(TEM;transmission electron microscope)で観察した。測定結果を図6に示す。図6Aは透過型電子顕微鏡(TEM)により観察したTEM像を示し、図6Bは電子回折像を示す。
図6Aに示すようにTEM像において結晶粒が確認されず、図6Bに示すように電子回折像は、アモルファスを示すハローリングが観察された。これにより、正極活物質膜40は、アモルファスであることを確認できた。
(X線反射率測定)
X線反射率測定により、正極活物質膜40と同様の上記単層膜を測定した。この結果、単層膜の膜密度は約3.3g/ccであった。
(充放電試験)
サンプル1−1の固体電解質電池の充放電試験を行った。充電は充電電流16μA、充電カットオフ電圧4Vで行った。放電は放電電流16μA、放電カットオフ電圧1.2Vで行った。なお、16μAは1C(1.0時間で理論容量を充放電する電流値)に相当する。図7に測定結果を示す。なお、図7において、線cxは充電曲線を示す。添字xは奇数字であり、線cxが「(x+1)/2」回目(サイクル目)の充電の充電曲線であることを示す。線dyは放電曲線を示す。添字yは偶数字であり、線dyが初期充電後のy/2回目の放電の放電曲線であることを示す。また、充放電曲線に付した数字はサイクル数を示す。(以下の図においても同様)
また、図8に、サイクル数に対して放電容量および充電容量をそれぞれプロットしたグラフを示す。
図7に示すように、放電曲線には特徴的な3段の電位が現れている。また、図8に示すように、初期の充放電から30サイクル未満までは、充放電容量が低下するが、30サイクル以降では、充放電容量が安定しており、その後の容量低下は見られず、非常に耐久性に優れていることがわかる。
[リチウムの組成比xの検討]
初回の放電容量は約17μAh/cm2であった。この放電容量値(17μAh/cm2)、X線反射率測定によって得られた正極活物質膜40の膜密度の測定値(3.3g/cc)、充電前の正極活物質膜40の膜組成(Li2Cu1.6PO3.20.7)から下記の計算を行い、満充電時のリチウムの組成比xを求めた。その結果、満充電時の正極活物質膜40の膜組成はLi1.0Cu1.6PO3.20.7であることがわかった。
(満充電時のリチウムの組成比の計算)
比容量(mAh/g)×膜密度(3.3g/cc)×膜厚cm=放電容量17μAh/cm2(測定値)より、比容量130(mAh/g)を求めた。一方、各原子の密度(g/mol)から、Li2.0Cu1.6PO3.20.7の密度は207g/molと求まり、ファラデー定数F(9.6×104C/mol)から、Liの組成がx=2からx=1に変化したときの電荷量が129mAh/gと求まる。上記で求めた比容量130(mAh/g)は、実験誤差を考慮すると、x=1までが電池容量と考えるのが妥当である。
以上より、サンプル1−1の固体電解質電池では、充放電のリチウムの組成範囲は、1.0≦x≦2.0であることがわかる。すなわち、充電が進行するに従い、リチウムの組成比xは成膜時のx=2から減少していき、x=1.0の近辺の値まで減少すると、インピーダンスが上昇して充電時の電圧が上昇することにより、充電を完了している。
これより、正極活物質膜40の成膜後(充電前)において、正極活物質膜40を構成するLixCuyPO4-zzのリチウム組成比xが1.0より小さいとインピーダンスが大きくて充電が進行せず、電池として機能しないことが分かる。したがって、正極活物質膜40を構成するLixCuyPO4-zzのリチウムの組成比xは1.0以上が好ましいことが分かる。
<サンプル1−2>
サンプル1−2では、正極活物質膜40を構成するLixCuyPO4-zzの窒素の組成比zを多くした固体電解質膜を作製した。すなわち、正極活物質膜40を以下の成膜条件で成膜した点以外は、サンプル1−1と同様にして、サンプル1−2の固体電解質電池を作製した。
[正極活物質膜40]
正極側集電体膜30上に、下記の成膜条件で、正極活物質膜40を成膜した。
スパッタリング装置(アルバック社製、SMO−01特型)
ターゲット組成:Li3PO4およびCuのコスパッタ
ターゲットサイズ:Φ4インチ
スパッタリングガス:Ar20sccm+N220sccm、0.65Pa
スパッタリングパワー:Li3PO4は600W(RF)、Cuは70W(DC)
膜厚:280nm
(正極活物質膜40の分析)
サンプル1−1と同様にして、X線光電子分光法(XPS)により組成分析を行った。正極活物質膜40と同様の単層膜の組成は、Li4.0Cu1.0PO3.60.4であった。また、この単層膜を透過型顕微鏡(TEM)で観察したところ、TEM像において結晶粒が確認されず、電子回折像はアモルファスを示すハローリングが観察された。これにより、正極活物質膜40は、アモルファスであることを確認できた。
(充放電試験)
サンプル1−2の固体電解質電池の充放電試験を行った。充電は充電電流30μA、充電カットオフ電圧4.5Vで行った。放電は放電電流30μA、放電カットオフ電圧0.5Vで行った。なお、30μAは2C(0.5時間で理論容量を充放電する電流値)に相当する。図9に測定結果を示す。
図9に示すように、サンプル1−1と同様、放電曲線には特徴的な3段の電位が現れている。3段目の放電電圧は、2.0Vで平坦性に優れており、良好な特性が得られていることがわかる。
(大電流放電)
さらに、充放電を68回繰り返した後、充放電を1サイクル行った。この充電は充電電流600μA、充電カットオフ電圧4.2Vで行った。放電は放電電流600μA、放電カットオフ電圧0.5Vで行った。なお、600μAは40C(0.025時間で理論容量を充放電する電流値)に相当する。図10に測定結果を示す。
図10に示すように、サンプル1−1と同様、2段目の電位はIR損により低下しているが、3段目の電位は、(正極活物質膜)のインピーダンスが低いために電位が保たれており、このような高速放電(大電流放電)でも、3段目の電位が1.5Vを保っている。
(インピーダンス測定)
充放電試験後の完全放電状態でインピーダンスを測定した。測定装置はNF社製、ZM2354を用いて、測定周波数範囲は40Hz以上200kHz以下とした。測定結果のNiquistプロット(ナイキストプロット)を図11に示す。図11において、横軸はインピーダンスの実成分Zs’を示し、縦軸はインピーダンスの虚成分Zs’’を示す。
他の実験より、Zs’=70Ω近辺のインピーダンスはLiPON層(固体電解質膜50)のものであることが分かっており、この層の伝導度は6.7×10-7S/cmである。110Ω〜130Ωのインピーダンス成分が、LixCuyPO4-zz層のインピーダンスである。LiPON層(固体電解質膜50)のインピーダンスと重なっているために正確な数値を出すことができないが、LixCuyPO4-zz層のインピーダンスは、LiPON層と同じ程度、10-6S/cmレベルであることが分かる。この伝導度は、一般的な正極活物質であるLiCoO2およびLiMn24の伝導度1×10-7S/cmから1×10-8S/cmに比べると、非常に優れていることが分かる。
<サンプル1−3>
正極活物質膜40を構成するLixCuyPO4-zzの銅の組成比yを多くした固体電解質電池を作製した。すなわち、正極活物質膜40を以下の成膜条件で成膜した点以外は、サンプル1−1と同様にして、サンプル1−3の固体電解質電池を作製した。
[正極活物質膜40]
正極側集電体膜30上に、下記の成膜条件で、正極活物質膜40を成膜した。
スパッタリング装置(アルバック社製、SMO−01特型)
ターゲット組成:Li3PO4およびCuのコスパッタ
ターゲットサイズ:Φ4インチ
スパッタリングガス:Ar20sccm+N240sccm、0.36Pa
スパッタリングパワー:Li3PO4600W(RF)、Cu100W(DC)
膜厚:510nm
(正極活物質膜40の分析)
サンプル1−1と同様にして、X線光電子分光法(XPS)により組成分析を行った。正極活物質膜40と同様の単層膜の組成は、Li2.0Cu3.2PO3.50.5であった。また、この単層膜を透過型顕微鏡(TEM)で観察したところ、TEM像において結晶粒が確認されず、電子回折像はアモルファスを示すハローリングが観察された。これにより、正極活物質膜40は、アモルファスであることを確認できた。
(充放電試験)
サンプル1−3の固体電解質電池の充放電試験を行った。充電は充電電流30μA、充電カットオフ電圧4.5Vで行った。放電は放電電流30μA、放電カットオフ電圧0.5Vで行った。なお、30μAは2C(0.5時間で理論容量を充放電する電流値)に相当する。測定結果を図12に示す。
図12に示すように、放電曲線では、サンプル1−2と同様に2段目の高インピーダンスの領域が出ており、3段目は高速充放電が可能な領域である。これより、成膜時の正極活物質膜40の膜組成がLi2.0Cu3.2PO3.50.5の場合でも電池として、良好な特性の電池として機能することが分かる。
一方で、サンプル1−3では、サンプル1−2と比べると、膜厚がサンプル1−2よりも厚いにもかかわらず、充放電容量がサンプル1−2の充放電容量の半分程度に減少している。すなわち正極活物質膜40をサンプル1−2より銅の組成比が大きいLi2.0Cu3.2PO3.50.5で構成した場合では、エネルギー密度が低下することが分かり、さらに銅の組成比を3.2より上げると、さらにエネルギー密度が低下する傾向にあることも分かる。これより、正極活物質膜40を構成するLixCuyPO4-zzの銅の組成比yは、エネルギー密度の利点を得るためには、3.2以下が好ましいことが分かる。
<サンプル1−4>
正極活物質膜40を以下の成膜条件で成膜した点以外は、サンプル1−1と同様にして、サンプル1−4の固体電解質電池を作製した。
[正極活物質膜40]
正極側集電体膜30上に、下記の成膜条件で、正極活物質膜40を成膜した。
スパッタリング装置(アルバック社製、SMO−01特型)
ターゲット組成:Li3PO4およびCuのコスパッタ
ターゲットサイズ:Φ4インチ
スパッタリングガス:Ar20sccm+N2100sccm、0.65Pa
スパッタリングパワー:Li3PO4600W(RF)、Cu100W(DC)
膜厚:450nm
(正極活物質膜40の分析)
サンプル1−1と同様にして、X線光電子分光法(XPS)により組成分析を行った。正極活物質膜40と同様の単層膜の組成は、Li5.0Cu2.8PO3.10.4であった。また、この単層膜を透過型電子顕微鏡(TEM)で観察したところ、TEM像において結晶粒が確認されず、電子回折像はアモルファスを示すハローリングが観察された。これにより、正極活物質膜40は、アモルファスであることを確認できた。
(充放電試験)
サンプル1−4の固体電解質電池の充放電試験を行った。充電は充電電流30μA、充電カットオフ電圧4.5Vで行った。放電は放電電流30μA、放電カットオフ電圧0.5Vで行った。なお、30μAは2C(0.5時間で理論容量を充放電する電流値)に相当する。
サンプル1−4では、放電容量は8μAh/cm2であり、サンプル1−2と同様に小さかった。これは正極活物質膜40を構成するLixCuyPO4-zzの銅の組成比yが2.8と高いためである。一方、成膜時のリチウムの組成比xが5.0であり、この正極活物質膜40では、リチウムの組成比xが5.0でも電位が保たれている。
このように、この正極活物質膜40は、リチウム組成比x=5.0でも、対Li+/Liに対して、高い電位を得ることができる。この正極活物質膜40は、LixCuyPO4-zzの組成比xが5以下までは良好な特性が得られるといえる。すなわち、アモルファス状態のLixCuyPO4-zzは、リチウムの組成比xが大きくても対Li+/Li電位に対して高い電位を得られることが分かる。
なお、放電容量、成膜時の膜組成、膜密度から計算すると、満充電時の正極活物質膜の膜40において、リチウムの組成比xは4程度である。これより、サンプル1−4では、LixCuyPO4-zzのリチウム組成比xが4以上5以下の範囲で充放電を行っていることがわかるが、これは成膜条件や充放電条件に依存するところがあると考えられる。重要視するべき知見は、アモルファス状態のLixCuyPO4-zzは、Li組成比xが高くても対Li+/Li電位に対して高い電位が得られるということである。
<サンプル1−5>
正極活物質膜40を以下の成膜条件で成膜した点以外は、サンプル1−1と同様にして、サンプル1−5の固体電解質電池を作製した。
[正極活物質膜40]
正極側集電体膜30上に、下記の成膜条件で、正極活物質膜40を成膜した。
スパッタリング装置(アルバック社製、SMO−01特型)
ターゲット組成:Li3PO4およびCuのコスパッタ
ターゲットサイズ:Φ4インチ
スパッタリングガス:Ar20sccm+N2100sccm、0.65Pa
スパッタリングパワー:Li3PO4600W(RF)、Cu25W(DC)
膜厚:268nm
(正極活物質膜40の分析)
サンプル1−1と同様にして、X線光電子分光法(XPS)により組成分析を行った。正極活物質膜40と同様の単層膜の組成は、Li3.2Cu0.6PO3.50.3であった。また、この単層膜を透過型顕微鏡(TEM)で観察したところ、TEM像において結晶粒が確認されず、電子回折像はアモルファスを示すハローリングが観察された。これにより、正極活物質膜40は、アモルファスであることを確認できた。
(充放電試験)
サンプル1−5の固体電解質電池の充放電試験を行った。充電は充電電流30μA、充電カットオフ電圧4.5Vで行った。放電は放電電流30μA、放電カットオフ電圧0.5Vで行った。なお、30μAは2C(0.5時間で理論容量を充放電する電流値)に相当する。図13に測定結果を示す。
図13に示すように、充放電曲線に平坦部分のない、キャパシタ挙動に似た直線的な電圧変化を示し、電池容量は0.1μAh/cm2以下と、ほとんど電池として機能しなかった。
従って、正極活物質膜40を構成するLixCuyPO4-zzの銅の組成比yは適度に高い必要があることが分かる。一方、サンプル1−2では、正極活物質膜40を構成するLixCuyPO4-zzの銅の組成比yが1.0であり、この組成比yでは良好な特性が得られている。したがって、正極活物質膜40を構成するLixCuyPO4-zzの銅の組成比yは1.0以上の組成であることが好ましい。
<サンプル2−1>
図1に示す構成を有する固体電解質電池を作製した。基板10として厚さ1.1mmのポリカーボネート(PC)基板を用いた。基板10上の全面に無機絶縁膜20として、SCZを厚さ50nmで成膜した。
無機絶縁膜20の上に、金属マスクを配して所定領域に、正極側集電体膜30、正極活物質膜40、固体電解質膜50、負極側集電体膜70の順に成膜し積層体を形成した。正極側集電体膜30としてTi膜、正極活物質膜40としてLixFeyPO4-zz膜、固体電解質膜50としてLi3PO4x膜、負極側集電体膜70としてCu膜およびTi膜をこの順で形成した。無機絶縁膜20および積層体を構成する各薄膜の成膜条件は、以下のようにした。なお、基板10は基板加熱をせず、基板ホルダーを20℃で水冷し成膜を行った。
無機絶縁膜20および積層体を構成する各薄膜の成膜条件は、以下のようにした。
[無機絶縁膜20]
無機絶縁膜20の成膜は、下記のスパッタリング装置および成膜条件で行った。
スパッタリング装置(アネルバ社製、C−3103)
ターゲット組成:SCZ(SiO2 35at%(アトミックパーセント)+Cr23 30at%+ZrO2 35at%)
ターゲットサイズ:Φ6インチ
スパッタリングガス:Ar100sccm、0.13Pa
スパッタリングパワー:1000W(RF)
[正極側集電体膜30]
正極側集電体膜30の成膜は、下記のスパッタリング装置および成膜条件で行った。
スパッタリング装置(アルバック社製、SMO−01特型)
ターゲット組成:Ti
ターゲットサイズ:Φ4インチ
スパッタリングガス:Ar70sccm、0.45Pa
スパッタリングパワー:1000W(DC)
膜厚:100nm
[正極活物質膜40]
正極側集電体膜30の成膜は、下記のスパッタリング装置および成膜条件で行った。
スパッタリング装置(アルバック社製、SMO−01特型)
ターゲット組成:LiFePO4
ターゲットサイズ:Φ4インチ
スパッタリングガス:Ar20sccm+N220sccm、0.26Pa
スパッタリングパワー:300W(RF)
膜厚:210nm
[固体電解質膜50]
固体電解質膜50の成膜は、下記のスパッタリング装置および成膜条件で行った。
スパッタリング装置(アルバック社製、SMO−01特型)
ターゲット組成:Li3PO4
ターゲットサイズ:Φ4インチ
スパッタリングガス:Ar20sccm+N220sccm、0.26Pa
スパッタリングパワー:600W(RF)
膜厚:480nm
[負極側集電体膜70]
負極側集電体膜70(Cu膜)の成膜は、下記のスパッタリング装置および成膜条件で行った。
スパッタリング装置(アルバック社製、SMO−01特型)
ターゲット組成:Cu
ターゲットサイズ:Φ4インチ
スパッタリングガス:Ar70sccm、0.45Pa
スパッタリングパワー:500W(DC)
膜厚:20nm
負極側集電体膜70(Ti膜)の成膜は、下記のスパッタリング装置および成膜条件で行った。
スパッタリング装置(アルバック社製、SMO−01特型)
ターゲット組成:Ti
ターゲットサイズ:Φ4インチ
スパッタリングガス:Ar70sccm、0.45Pa
スパッタリングパワー:1000W(DC)
膜厚:250nm
最後に、全体保護膜80を、紫外線硬化樹脂(ソニーケミカル&インフォメーションデバイス製、型番SK3200)を用いて形成し、さらに全体保護膜80上に無機絶縁膜20(成膜条件は上記と同様)を形成した。以上により、サンプル2−1の固体電解質電池を得た。すなわち、下記の膜構成を有するサンプル2−1の固体電解質電池を得た。
固体電解質電池の膜構成:
ポリカーボネート基板/SCZ(50nm)/Ti(100nm)/LixFeyPO4-zz(210nm)/Li3PO4x(480nm)/Cu(20nm)/Ti(250nm)/紫外線硬化樹脂(20μm)/SCZ(50nm)
(正極活物質膜40の分析)
サンプル1−1と同様にして、X線光電子分光法(XPS)により組成分析を行った。正極活物質膜40と同様の単層膜の組成は、LiFePO3.30.7であった。また、この単層膜を透過型顕微鏡(TEM)で観察したところ、TEM像において結晶粒が確認されず、電子回折像はアモルファスを示すハローリングが観察された。これにより、正極活物質膜40は、アモルファスであることを確認できた。
(充放電試験)
サンプル2−1の固体電解質電池の充放電試験を行った。充電は充電電流30μA、充電カットオフ電圧4.5Vで行った。放電は放電電流30μA、放電カットオフ電圧0.5Vで行った。なお、30μAは2C(0.5時間で理論容量を充放電する電流値)に相当する。図14に測定結果を示す。また、図15に、サイクル数に対して放電容量および充電容量をそれぞれプロットしたグラフを示す。
図14に示すように、放電容量および充放電容量は低い値を示すが、放電曲線では、2V以上のフラットな領域が得られており、良好に電池駆動していることが確認された。また、図15に示すように、50サイクルまでは、80%の電池容量を保持していた。
<サンプル2−2>
正極活物質膜40を以下の成膜条件で成膜した点以外は、サンプル2−1と同様にして、サンプル2−2の固体電解質電池を作製した。
[正極活物質膜40]
正極側集電体膜30上に、下記の成膜条件で、正極活物質膜40を成膜した。
スパッタリング装置(アルバック社製、SMO−01特型)
ターゲット組成:LiFePO4
ターゲットサイズ:Φ4インチ
スパッタリングガス:Ar20sccm、0.15Pa
スパッタリングパワー:300W(RF)
膜厚:260nm
サンプル2−2は、正極活物質膜40形成時に、LiFePO4に窒素をドープしない点以外はサンプル2−1と同様にして作製した固体電解質電池である。すなわち、サンプル2−2は、アニールを行わないで形成した正極活物質膜40(LixFeyPO4-zz膜)が、アモルファス状態で機能することが特異的な現象であることを示すために、作製した固体電解質電池である。なお、LiFePO4は内部インピーダンスが非常に高く、結晶材料であっても数10nmオーダーの微粒子化をしなければ良好に電池駆動しないことが知られている。
(充放電試験)
サンプル2−2の固体電解質電池の充放電試験を行った。充電は充電電流30μA、充電カットオフ電圧4.5Vで行った。放電は放電電流30μA、放電カットオフ電圧0.5Vで行った。なお、30μAは2C(0.5時間で理論容量を充放電する電流値)に相当する。図16に測定結果を示す。
図16に示すように、サンプル2−2では、サンプル2−1と比較すると、まず容量が非常に低く、十分にリチウムが取り出せていないことが分かる。さらに、2サイクル、30サイクル、60サイクル、90サイクル、120サイクルと徐々に電池容量が増えてきている。これは、充放電を繰り返すことにより若干結晶化が進むために、インピーダンスが低下し、電池容量が増えたからと考えられる。
4.他の実施の形態
この発明は、上述したこの発明の実施形態に限定されるものでは無く、この発明の要旨を逸脱しない範囲内で様々な変形や応用が可能である。例えば固体電解質電池の膜構成は、上述したものに限定されるものではない。例えば、第1〜第3の実施の形態において、無機絶縁膜20を省略した構成としてもよい。
また、積層体の複数が順次、積層されて形成され、直列に電気的に接続され、全体保護膜80によって被覆された構成とすることもできる。また、基板の上に、積層体の複数が並置されて形成され、並列または直列に電気的に接続され、全体保護膜80によって被覆された構成とすることもできる。
また、例えば、固体電解質電池の構造は、上述の例に限定されるものではない。例えば、基板10に導電性材料を用いて正極側集電体膜30を省略した構造を有する固体電解質電池などにも適用が可能である。また、例えば、正極集電体材料からなる金属板で、正極側集電体膜30を構成してもよい。負極集電体材料からなる金属板で負極側集電体膜70を構成してもよい。
20・・・無機絶縁膜
30・・・正極側集電体膜
40・・・正極活物質膜
50・・・固体電解質膜
60・・・負極活物質膜
64・・・負極電位形成層
70・・・負極側集電体膜
80・・・全体保護膜

Claims (8)

  1. 正極活物質層を有する正極側層と、
    負極側層と、
    上記正極側層および上記負極側層との間に形成された固体電解質層と
    を備え、
    上記正極活物質層は、アモルファス状態の式(1)で表されるリチウム複合酸化物を含む固体電解質電池。
    式(1)
    LixyPO4-zz
    (式中、Mは鉄(Fe)または銅(Cu)である。xはリチウムの組成比を示す。yはMの組成比を示す。zは窒素の組成比を示す。xは0.5≦x≦5.0である。yは1.0≦y≦3.2である。0.3≦z≦0.7である。)
  2. 上記負極側層は、負極側集電体層と、負極電位形成層とで構成され、
    充電時に上記固体電解質層の負極側の界面にリチウム過剰層が形成される
    請求項1記載の固体電解質電池。
  3. 上記負極側層は、負極側集電体層と、負極活物質層とで構成された
    請求項1記載の固体電解質電池。
  4. 上記正極側層を構成する層、上記負極側層を構成する層および上記固体電解質層が、薄膜で形成された
    請求項1〜3の何れか一項に記載の固体電解質電池。
  5. 上記固体電解質層は、物理気相成長法、化学気相成長法、電気めっき、無電解めっき、塗布法、ゾル−ゲル法、固相エピタキシー法またはラングミュア−ブロジェット法により形成された薄膜である請求項1〜4の何れか一項に記載の固体電解質電池。
  6. 式(1)で表されるリチウム複合酸化物であって、
    該リチウム複合酸化物はアモルファス状態であるリチウムイオン二次電池用の正極活物質。
    式(1)
    LixyPO4-zz
    (式中、Mは鉄(Fe)または銅(Cu)である。xはリチウムの組成比を示す。yはMの組成比を示す。zは窒素の組成比を示す。xは0.5≦x≦5.0である。yは1.0≦y≦3.2である。0.3≦z≦0.7である。)
  7. オリビン型結晶構造を有するリチウムリン酸化合物粒子と、
    該リチウムリン酸化合物粒子の表面の少なくとも一部に形成された被覆層とを有し、
    上記被覆層は、アモルファス状態の式(2)で表されるリチウム複合酸化物で構成されたリチウムイオン二次電池用の正極活物質。
    式(2)
    LixFeyPO4-zz
    (式中、xはリチウムの組成比を示す。yは鉄の組成比を示す。zは窒素の組成比を示す。xは0.5≦x≦5.0である。yは1.0≦y≦3.2である。0.3≦z≦0.7である。)
  8. 正極活物質を含む正極と、
    負極と、
    電解質と
    を有し、
    上記正極活物質は、オリビン型結晶構造を有するリチウムリン酸化合物粒子と、
    該リチウムリン酸化合物粒子の表面の少なくとも一部に形成された被覆層とを有し、
    上記被覆層は、アモルファス状態の式(2)で表されるリチウム複合酸化物で構成された電池。
    式(2)
    Li x Fe y PO 4-z z
    (式中、xはリチウムの組成比を示す。yは鉄の組成比を示す。zは窒素の組成比を示す。xは0.5≦x≦5.0である。yは1.0≦y≦3.2である。0.3≦z≦0.7である。)
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