図1は、本発明が適用される車両8(図5参照)を構成する動力伝達装置としての変速機構10を説明する骨子図である。図1において、変速機構10は、車体に取り付けられる非回転部材としてのトランスアクスル(T/A)ケース12(以下、ケース12という)内において、走行用の駆動力源として例えばガソリンエンジンやディーゼルエンジン等の内燃機関であるエンジン14側から順番に、そのエンジン14の出力軸(例えばクランク軸15)に作動的に連結されてエンジン14からのトルク変動等による脈動を吸収するダンパー16、そのダンパー16を介してエンジン14によって回転駆動させられる入力軸18、第1電動機M1、動力分配機構として機能する遊星歯車装置20、及び第2電動機M2を備えている。
この変速機構10は、例えば車両において横置きされるFF(フロントエンジン・フロントドライブ)型車両に好適に用いられるものであり、エンジン14の動力をカウンタギヤ対32の一方を構成する変速機構10の出力回転部材としての出力歯車24から、動力伝達装置としてのカウンタギヤ対32、ファイナルギヤ対34、差動歯車装置(終減速機)36、及び一対の車軸38等を順次介して一対の駆動輪40へ伝達する(図5参照)。
入力軸18は、両端がボールベアリング26及び28によって回転可能に支持されており、一端がダンパー16を介してエンジン14に連結されることでエンジン14により回転駆動させられる。また、他端には潤滑油供給装置としてのオイルポンプ30が連結されており入力軸18が回転駆動されることによりオイルポンプ30が回転駆動させられて、変速機構10の各部例えば遊星歯車装置20、ボールベアリング26、28やカウンタギヤ対32やファイナルギヤ対34等に潤滑油が供給される。
遊星歯車装置20は、所定のギヤ比ρを有するシングルピニオン型の遊星歯車装置であり、サンギヤS、ピニオンギヤP、そのピニオンギヤPを自転及び公転可能に支持するキャリヤCA、ピニオンギヤPを介してサンギヤSと噛み合うリングギヤRを回転要素(要素)として備えている。尚、サンギヤSの歯数をZS、リングギヤRの歯数をZRとすると、上記ギヤ比ρはZS/ZRである。そして、遊星歯車装置20は、入力軸18に伝達されたエンジン14の出力を機械的に分配する機械的機構であって、エンジン14の出力を第1電動機M1及び出力歯車24に分配する。つまり、この遊星歯車装置20においては、キャリヤCAは入力軸18すなわちエンジン14に連結され、サンギヤSは第1電動機M1に連結され、リングギヤRは出力歯車24に連結されている。これより、遊星歯車装置20の3要素であるサンギヤS、キャリヤCA、リングギヤRは、それぞれ相互に相対回転可能とされて差動作用が作動可能なすなわち差動作用が働く差動状態とされることから、エンジン14の出力が第1電動機M1及び出力歯車24に分配されると共に、第1電動機M1に分配されたエンジン14の出力で第1電動機M1が発電され、その発電された電気エネルギが蓄電されたりその電気エネルギで第2電動機M2が回転駆動されるので、変速機構10は例えば無段変速状態(電気的CVT状態)とされて、エンジン14の所定回転に拘わらず出力歯車24の回転が連続的に変化させられる電気的な無段変速機として機能する。
このように、変速機構10は、エンジン14に動力伝達可能に連結された差動機構としての遊星歯車装置20と遊星歯車装置20に動力伝達可能に連結された差動用電動機としての第1電動機M1とを有し第1電動機M1の運転状態が制御されることにより遊星歯車装置20の差動状態が制御される電気式差動部すなわち電気式無段変速機である。また、変速機構10には、出力歯車24と一体的に回転するように作動的に連結されて走行用の駆動力源として機能する第2電動機M2が備えられている。つまり、この第2電動機M2は、駆動輪40に動力伝達可能に連結された走行用電動機である。本実施例の第1電動機M1及び第2電動機M2は、発電機能をも有する所謂モータジェネレータであるが、第1電動機M1は反力を発生させるためのジェネレータ(発電)機能を少なくとも備え、第2電動機M2は走行用の駆動力源として駆動力を出力するためのモータ(電動機)機能を少なくとも備える。そして、このように構成された変速機構10では、変速を実行するための作動油(潤滑油)の供給がなくとも、遊星歯車装置20が変速機として機能させられると共にモータ走行が可能な動力伝達装置が構成される。
図2は、変速機構10において各回転要素の回転速度の相対関係を直線上で表すことができる共線図を示している。この図2の共線図は、遊星歯車装置20のギヤ比ρの関係を示す横軸と、相対的回転速度を示す縦軸とから成る二次元座標であり、横線X1が回転速度零を示し、横線X2が回転速度「1.0」すなわち入力軸18に作動的に連結されたエンジン14の回転速度NEを示している。
また、変速機構10を構成する遊星歯車装置20の3つの要素に対応する3本の縦線Y1、Y2、Y3は、左側から順に第2回転要素(第2要素)RE2に対応するサンギヤS、第1回転要素(第1要素)RE1に対応するキャリヤCA、第3回転要素(第3要素)RE3に対応するリングギヤRの相対回転速度を示すものであり、それらの間隔は遊星歯車装置20のギヤ比ρに応じて定められている。詳細には、共線図の縦軸間の関係においてサンギヤとキャリヤとの間が「1」に対応する間隔とされるとキャリヤとリングギヤとの間が遊星歯車装置のギヤ比ρに対応する間隔とされる。すなわち、変速機構10では縦線Y1とY2との縦線間が「1」に対応する間隔に設定され、縦線Y2とY3との間隔はギヤ比ρに対応する間隔に設定される。
図2の共線図を用いて表現すれば、本実施例の変速機構10は、遊星歯車装置20の第1回転要素RE1(キャリヤCA)が入力軸18すなわちエンジン14に連結され、第2回転要素RE2が第1電動機M1に連結され、第3回転要素(リングギヤR)RE3が出力歯車24及び第2電動機M2に連結されて、入力軸18の回転を出力歯車24を介して駆動輪40へ伝達するように構成されている。このとき、Y2とX2の交点を通る斜めの直線L0によりサンギヤSの回転速度とリングギヤRの回転速度との関係が示される。例えば、変速機構10(遊星歯車装置20)においては、第1回転要素RE1乃至第3回転要素RE3が相互に相対回転可能とされる差動状態とされており、直線L0と縦線Y3との交点で示されるリングギヤRの回転速度が車速Vに拘束されて略一定である場合には、第1電動機M1の回転速度NM1を制御することによって直線L0と縦線Y1との交点で示されるサンギヤSの回転速度が上昇或いは下降させられると、直線L0と縦線Y2との交点で示されるキャリヤCAの回転速度すなわちエンジン回転速度NEが上昇或いは下降させられる。
図3は、本実施例の変速機構10を制御するための電子制御装置80に入力される信号及びその電子制御装置80から出力される信号を例示している。この電子制御装置80は、CPU、ROM、RAM、及び入出力インターフェースなどから成る所謂マイクロコンピュータを含んで構成されており、RAMの一時記憶機能を利用しつつROMに予め記憶されたプログラムに従って信号処理を行うことによりエンジン14、第1電動機M1、第2電動機M2などに関するハイブリッド駆動制御等の車両制御を実行するものである。
電子制御装置80には、図3に示すような各センサやスイッチなどから、エンジン水温THWを表す信号、シフトレバー52(図4参照)のシフトポジションPSHを表す信号、エンジン14の回転速度であるエンジン回転速度NEを表す信号、モータ走行(EV走行)モードを設定するためのスイッチ操作の有無を表す信号、エアコンの作動を表す信号、出力歯車24の回転速度(以下、出力回転速度)NOUTに対応する車速Vを表す信号、潤滑油の油温THOILを表す信号、フットブレーキ操作を表す信号、車両に対する運転者(ユーザ)の加速要求を示す運転者アクセル操作量に対応するアクセルペダル70(図5参照)の操作量であるアクセル開度Accを表す信号、電子スロットル弁のスロットル弁開度θTHを表す信号、車両の前後加速度Gを表す信号、各車輪の車輪速を表す信号、第1電動機M1の回転速度NM1(以下、第1電動機回転速度NM1という)を表す信号、第2電動機M2の回転速度NM2(以下、第2電動機回転速度NM2という)を表す信号、第1電動機M1の温度(以下、第1電動機温度という)THM1を表す信号、第2電動機M2の温度(以下、第2電動機温度という)THM2を表す信号、蓄電装置56(図5参照)の温度(以下、蓄電装置温度という)THBATを表す信号、蓄電装置56の充電電流または放電電流(以下、充放電電流或いは入出力電流という)ICDを表す信号、蓄電装置56の電圧VBATを表す信号、上記蓄電装置温度THBAT、充放電電流ICD、及び電圧VBATに基づいて算出された蓄電装置56の充電状態(充電容量)SOCを表す信号、運転者により操作されて車両電源のオン状態(車両電源ON、Ready-on)とオフ状態(車両電源OFF、Ready-off)とを切り替える為の車両電源スイッチにおけるスイッチ操作を表すパワースイッチ信号等が、それぞれ供給される。
また、電子制御装置80からは、エンジン出力を制御するエンジン出力制御装置58(図5参照)への制御信号例えばエンジン14の吸気管60に備えられた電子スロットル弁62のスロットル弁開度θTHを操作するスロットルアクチュエータ64への駆動信号や燃料噴射装置66による吸気管60或いはエンジン14の筒内への燃料供給量を制御する燃料供給量信号や点火装置68によるエンジン14の点火時期を指令する点火信号、電動機M1及びM2の作動を指令する指令信号、制動時の車輪のスリップを防止するABSアクチュエータを作動させるためのABS作動信号、シフトインジケータを作動させるためのシフトポジション(操作位置)表示信号、電動エアコンを作動させるための電動エアコン駆動信号、EV走行モードが選択されていることを表示させるEVモード表示信号等が、それぞれ出力される。
図4は複数種類のシフトポジションPSHを人為的操作により切り換える切換装置としてのシフト操作装置50の一例を示す図である。このシフト操作装置50は、例えば運転席の横に配設され、複数種類のシフトポジションPSHを選択するために操作されるシフトレバー52を備えている。
シフトレバー52は、変速機構10を動力伝達経路が遮断されたニュートラル状態とし且つ出力歯車24をロックするための駐車ポジション「P(パーキング)」、後進走行のための後進走行ポジション「R(リバース)」、例えば第1電動機M1及び第2電動機M2の作動を強制的に停止して出力歯車24における駆動力を零とすることで変速機構10をニュートラル状態とするためのニュートラルポジション「N(ニュートラル)」、変速機構10の変速可能な範囲内で無段階に変速比γ0を変化させて自動変速制御を実行させる前進自動変速走行ポジション「D(ドライブ)」、アクセルオフと同時に第2電動機M2を用いた回生ブレーキによる減速を行ってより大きなエンジンブレーキ効果を得るためのエンジンブレーキポジション「B(ブレーキ)」へ手動操作されるように設けられている。
上記「P」乃至「B」ポジションに示す各シフトポジションPSHにおいて、「P」ポジション及び「N」ポジションは、車両を走行させないときに選択される非走行ポジションであって、動力伝達経路の動力伝達遮断状態へ切換えを選択するための非駆動ポジションでもある。また、「R」ポジション及び「D」ポジションは、車両を走行させるときに選択される走行ポジションであって、動力伝達経路の動力伝達可能状態への切換えを選択するための駆動ポジションでもある。
図5に示す蓄電装置56は、充放電可能な直流電源であり、例えばニッケル水素やリチウムイオン等の二次電池から成る。例えば、車両加速走行時には、エンジン14の出力に対する反力をとるときに第1電動機M1により発電された電気エネルギ(電力)がインバータ54を通して蓄電装置56に蓄電される。また、車両減速走行時の回生制動の際には、第2電動機M2により発電された電力がインバータ54を通して蓄電装置56に蓄電される。また、第2電動機M2によるモータ走行時には、蓄電された電力がインバータ54を通して第2電動機M2へ供給される。
図5は、電子制御装置80による制御機能の要部を説明する機能ブロック線図である。図5において、ハイブリッド制御部すなわちハイブリッド制御手段82は、エンジン出力制御装置58を介してエンジン14の駆動を制御するエンジン駆動制御手段としての機能と、インバータ54を介して第1電動機M1及び第2電動機M2による駆動力源又は発電機としての作動を制御する電動機作動制御手段としての機能を含んでおり、それら制御機能によりエンジン14、第1電動機M1、及び第2電動機M2によるハイブリッド駆動制御等を実行する。
例えば、ハイブリッド制御手段82は、エンジン14を効率のよい作動域で作動させる一方で、エンジン14と第2電動機M2との駆動力の配分や第1電動機M1の発電による反力を最適になるように変化させて変速機構10の電気的な無段変速機としての変速比γ0を制御する。例えば、そのときの走行車速Vにおいて、運転者の出力要求量としてのアクセル開度Accや車速Vから車両の目標(要求)出力(ユーザ要求パワー)を算出し、その車両の目標出力と充電要求値(充電要求パワー)とから必要なトータル目標出力を算出し、そのトータル目標出力が得られるように伝達損失、補機負荷、第2電動機M2のアシストトルク等を考慮して目標エンジン出力(要求エンジン出力、エンジン要求パワー)PE *を算出し、その目標エンジン出力PE *が得られるエンジン回転速度NEとエンジン14の出力トルク(エンジントルク)TEとなるようにエンジン14を制御すると共に各電動機Mの出力乃至発電を制御する。
つまり、ハイブリッド制御手段82は、動力性能や燃費向上などの為にエンジン14及び各電動機Mの制御を実行する。このようなハイブリッド制御では、エンジン14を効率のよい作動域で作動させる為に定まるエンジン回転速度NEと車速V等で定まる出力回転速度NOUTとを整合させる為に、変速機構10が電気的な無段変速機として機能させられる。すなわち、ハイブリッド制御手段82は、例えばエンジン回転速度NEとエンジントルクTEとで構成される二次元座標内において無段変速走行の時に運転性と燃費性とを両立するように予め実験的に求められた例えば図6の破線に示すような良く知られたエンジン14の動作曲線の一種である最適燃費率曲線(燃費マップ、関係)LEを予め記憶している。そして、ハイブリッド制御手段82は、その最適燃費率曲線LEにエンジン14の動作点(以下、「エンジン動作点」と表す)PEGが沿わされつつエンジン14が作動させられるように、例えば上記トータル目標出力を充足する為に必要な目標エンジン出力PE *を発生する為のエンジントルクTEとエンジン回転速度NEとの各目標値を定め、その目標値が得られるようにエンジン14の出力制御を実行すると共に変速機構10の変速比γ0をその変速可能な変化範囲内で無段階に制御する。
より具体的には、例えば必要なエンジン出力PEが目標エンジン出力PE *Aであるときには、図6に示すように、最適燃費率曲線LE上にてその目標エンジン出力PE *Aが得られるエンジン動作点PEGAでエンジン14が作動させられる。また、例えば必要なエンジン出力PEが目標エンジン出力PE *Bであるときには、図6に示すように、最適燃費率曲線LE上にてその目標エンジン出力PE *Bが得られるエンジン動作点PEGBでエンジン14が作動させられる。ここで、上記エンジン動作点PEGとは、エンジン回転速度NE及びエンジントルクTEなどで例示されるエンジン14の動作状態を示す状態量を座標軸とした二次元座標においてエンジン14の動作状態を示す動作点である。尚、本実施例では、燃費とは例えば単位燃料消費量当たりの走行距離であったり、車両全体としての燃料消費率(=燃料消費量/駆動輪出力)等である。
このとき、ハイブリッド制御手段82は、例えば第1電動機M1により発電された電気エネルギをインバータ54を通して蓄電装置56や第2電動機M2へ供給するので、エンジン14の動力の主要部は機械的に出力歯車24へ伝達されるが、エンジン14の動力の一部は第1電動機M1の発電のために消費されてそこで電気エネルギに変換され、インバータ54を通してその電気エネルギが第2電動機M2へ供給され、電気エネルギにより第2電動機M2が駆動されてその第2電動機M2から出力される駆動力が出力歯車24へ伝達される。この発電に係る第1電動機M1による電気エネルギの発生から駆動に係る第2電動機M2で消費されるまでに関連する機器により、エンジン14の動力の一部が電気エネルギに変換され、その電気エネルギが機械的エネルギに変換されるまでの電気パスが構成される。
また、ハイブリッド制御手段82は、車両の停止中又は走行中に拘わらず、すなわち車速V(駆動輪40)に拘束される出力回転速度NOUTに拘わらず、変速機構10の電気的CVT機能によって例えば第1電動機回転速度NM1を制御してエンジン回転速度NEを略一定に維持したり任意の回転速度(例えばエンジン回転速度NEの目標値)に回転制御させられる。つまり、ハイブリッド制御手段82は、遊星歯車装置20を介して入力軸18(すなわちエンジン14の出力軸)に作動的に連結される第1電動機M1をその入力軸18に動力伝達可能な回転駆動装置として機能させることで、第1電動機M1によりエンジン14を回転駆動させられる。例えば、ハイブリッド制御手段82は車両走行中にエンジン回転速度NEを引き上げる場合には、出力回転速度NOUTを略一定に維持しつつ第1電動機回転速度NM1の引き上げを実行する。
また、ハイブリッド制御手段82は、スロットル制御のためにスロットルアクチュエータ64により電子スロットル弁62を開閉制御させる他、燃料噴射制御のために燃料噴射装置66による燃料噴射量や噴射時期を制御させ、点火時期制御のためにイグナイタ等の点火装置68による点火時期を制御させる指令を単独で或いは組み合わせてエンジン出力制御装置58に出力して、必要な目標エンジン出力PE *を発生する為のエンジントルクTEの目標値が得られるようにエンジン14の出力制御を実行するエンジン出力制御手段を機能的に備えている。また、このエンジン出力制御装置58は、ハイブリッド制御手段82による指令に従って、スロットル制御のためにスロットルアクチュエータ64により電子スロットル弁62を開閉制御する他、燃料噴射制御のために燃料噴射装置66による燃料噴射を制御し、点火時期制御のためにイグナイタ等の点火装置68による点火時期を制御するなどしてエンジントルク制御を実行する。
また、ハイブリッド制御手段82は、エンジン14の運転を停止した状態で蓄電装置56からの電力により第2電動機M2を駆動してその第2電動機M2のみを駆動力源として走行するモータ走行(EV走行)を実行することができる。例えば、このハイブリッド制御手段82によるEV走行は、一般的にエンジン効率が高トルク域に比較して悪いとされる比較的低出力トルクTOUT域すなわち低エンジントルクTE域、或いは車速Vの比較的低車速域すなわち低負荷域で実行される。
ハイブリッド制御手段82は、このEV走行時には、運転を停止しているエンジン14の引き摺りを抑制して燃費を向上させるために、例えば第1電動機M1を無負荷状態とすることにより空転させて、変速機構10の電気的CVT機能(差動作用)により必要に応じてエンジン回転速度NEを零乃至略零に維持する。つまり、ハイブリッド制御手段82は、EV走行時には、エンジン14の運転を単に停止させるのではなく、エンジン14の回転(回転駆動)も停止させる。
また、ハイブリッド制御手段82は、車両停止中やEV走行中にエンジン14の始動(起動)を行うエンジン始動制御手段を機能的に備えている。例えば、ハイブリッド制御手段82は、第1電動機M1に通電して第1電動機回転速度NM1を引き上げることですなわち第1電動機M1をスタータとして機能させることでエンジン回転速度NEを完爆可能な所定回転速度NE’以上に引き上げると共に、所定回転速度NE’以上にて例えばアイドル回転速度以上の自律回転可能なエンジン回転速度NEにて燃料噴射装置66により燃料を供給(噴射)し点火装置68により点火してエンジン14を始動する。
また、ハイブリッド制御手段82は、エンジン14を駆動力源とするエンジン走行中には、上述した電気パスによる第1電動機M1からの電気エネルギ及び/または蓄電装置56からの電気エネルギを第2電動機M2へ供給し、その第2電動機M2を駆動して駆動輪40にトルクを付与することにより、エンジン14の動力を補助するための所謂トルクアシストが可能である。
また、ハイブリッド制御手段82は、第1電動機M1を無負荷状態として自由回転すなわち空転させることにより、変速機構10がトルクの伝達を不能な状態すなわち変速機構10内の動力伝達経路が遮断された状態と同等の状態であって、且つ第2電動機M2を無負荷状態として変速機構10からの出力が発生されない状態とすることが可能である。すなわち、ハイブリッド制御手段82は、電動機M1、M2を無負荷状態とすることにより変速機構10をニュートラル状態とすることが可能である。
前述したように、本実施例の車両8においては、例えばアクセル開度Acc等に基づいて必要なトータル目標出力が算出され、そのトータル目標出力を充足する為に必要な目標エンジン出力PE *を発生する為のエンジントルクTEとエンジン回転速度NEとの目標値が定められ、その目標値が得られるようにエンジン14の出力制御と変速機構10の変速制御とが実行されて車両走行が制御される。ここで、図7のアクセル踏み込み時のタイムチャートにおける破線に示すように、運転者によるアクセルペダル70の踏み込み操作によりアクセル開度Accが例えばステップ的に増大させられると、それに伴ってエンジン回転速度NEの目標値(以下、目標エンジン回転速度)NE *もステップ的に増大させられる。そして、図7の二点鎖線に示すように、実際のエンジン回転速度(以下、実エンジン回転速度)NEが、ステップ的に増大させられた目標エンジン回転速度NE *に向かって車速Vに拘束されることなく上昇させられる。
しかしながら、このようなステップ的に増大させられた目標エンジン回転速度NE *に伴う実エンジン回転速度NEの上昇は、必ずしも運転者のドライバビリティを向上させるとは限らない可能性がある。例えば、一般に、アクセル開度Accがステップ的に増大させられたとしても、車速Vはステップ的に増速されるものではなく、例えば図7に示すように、寧ろアクセル開度Accのステップ的な増大に比べて緩やかに増速されていく。このとき、良く知られた有段式自動変速機においてアクセル踏み込み時に変速段が一定である(つまり変速が発生しない)とすれば、車速Vに拘束されるエンジン回転速度NEはアクセル開度Accがステップ的に増大させられたとしても、ステップ的な増大でなく車速Vの上昇に合わせて緩やかに上昇させられる。従って、運転者にとっては、車両8の加速感と実エンジン回転速度NEの上昇変化とに感覚的なずれが生じ難いと考えられる。一方、本実施例の変速機構10は車速Vに拘束されずに例えば第1電動機M1よりエンジン回転速度NEを任意に回転制御可能な無段変速機として機能させられるものであり、ステップ的に増大される目標エンジン回転速度NE *に合わせて実エンジン回転速度NEを上昇させられる反面、実エンジン回転速度NEの上昇に比べて車速Vの上昇は緩やかなので、運転者にとっては、実際の車速上昇に伴う車両8の加速感と実エンジン回転速度NEの上昇変化やエンジン音の増大等から感じる加速感とに感覚的なずれが生じ易いと考えられる。
このように、本実施例の変速機構10においては、アクセル踏み込み時にアクセル開度Accに合わせて車速Vとは無関係に実エンジン回転速度NEが上昇するというCVTフィーリング(CVT感)が増大する可能性がある。そこで、本実施例では、アクセル踏み込み時の実エンジン回転速度NEの上昇がその時の車速Vの上昇と感覚的なずれが生じ難くされる為に、例えば実エンジン回転速度NEの上昇を車速Vに拘束されて上昇させられる良く知られた有段式自動変速機と同様の上昇変化に近づける為に、ユーザ操作量としてのアクセル開度Accを直接的に車両走行の制御に用いず、このアクセル開度Accに向かって漸近させる処理を行った処理後のアクセル開度を用いて目標エンジン回転速度NE *等を定める。尚、このCVTフィーリングは、例えばメータ上における視覚的な実車速Vの上昇と実エンジン回転速度NEの上昇とで感じ取ることができるものであるが、体感的な車両8の加速感とエンジン音となどでも感じ取ることができるものである。また、本明細書等を通してアクセル開度Accの文言を明確に区別する為に、検出値としてのアクセル開度Accである運転者アクセル操作量としてドライバアクセル開度t_usrを用い、前記車両走行の制御に用いる上記処理後のアクセル開度である制御内アクセル操作量として制御内アクセル開度saccrcvtを用いる。
具体的には、信号保持部すなわち信号保持手段84は、後述する図10のフローチャートにおける1回の制御サイクルにおいて用いられる各種信号の値をそれぞれ保持(設定)する。例えば、信号保持手段84は、今回の制御サイクルにおけるアクセル開度Accの検出値saccusrを今回の制御サイクルにおけるドライバアクセル開度(今回値)t_usrとする。また、信号保持手段84は、前回の制御サイクルにおいて処理した制御内アクセル開度saccrcvtを今回の制御サイクルにおける制御内アクセル開度(前回値)t_accrcvtoとする。また、信号保持手段84は、今回の制御サイクルにおける車速Vの検出値snpを今回の制御サイクルにおける車速t_snpとする。
制御内操作量処理部すなわち制御内操作量処理手段86は、前記車両走行の制御に用いる制御内アクセル開度saccrcvtをドライバアクセル開度t_usrに基づいて処理する。例えば、制御内操作量処理手段86は、アクセルオン時のCVT感抑制の為に、運転者によるアクセルペダル70の踏み込み操作によりドライバアクセル開度t_usrが増大させられた際には、図7に示すように、所定の勾配にてドライバアクセル開度t_usrに漸近するように制御内アクセル開度saccrcvtを増加処理する所謂アクセル漸近処理を実行する。
例えば、制御内操作量処理手段86は、アクセル漸近処理時の開始初期値としてのアクセル開度ヒスを算出するアクセル開度ヒス算出部すなわちアクセル開度ヒス算出手段88と、アクセル開度ヒスに続いてドライバアクセル開度t_usrに漸近する際の上記所定の勾配としてのヒス内漸近レートを算出するヒス内漸近レート算出部すなわちヒス内漸近レート算出手段90とを備え、制御内アクセル開度saccrcvtをドライバアクセル開度t_usrに漸近するように増加処理する(すなわちアクセル漸近処理を実行する)。
アクセル開度ヒス算出手段88は、例えばアクセル漸近処理を実行した際の目標エンジン回転速度NE *の開始初期値が所定の開始エンジン回転速度NESとなる為の予め求められて設定された関係(マップA、mapA)から車速t_snp及びドライバアクセル開度(今回値)t_usrに基づいてアクセル開度ヒスとしてのアクセル増加側ヒスt_uphscvtを算出する。上記開始エンジン回転速度NESは、例えばその回転速度域を超えるとエンジン音が運転者に比較的感じ取りやすくなる為にアクセル漸近処理を実行してCVTフィーリングを抑制する必要があるエンジン回転速度として予め求められたものである。上記マップAは、例えば図8に示すように、例えば車速t_snpとドライバアクセル開度(今回値)t_usrとで構成される二次元座標内においてアクセル増加側ヒスt_uphscvtを算出する為に予め実験的に求められたアクセル増加側ヒスt_uphscvtの分布図である。このマップAにおいて、車速t_snpが低車速である程、ドライバアクセル開度(今回値)t_usrが低開度である程、アクセル増加側ヒスt_uphscvtが小さくされる傾向があり、それぞれ零近辺ではアクセル増加側ヒスt_uphscvtは零とされる。
ヒス内漸近レート算出手段90は、例えばアクセル漸近処理を実行した際にアクセル増加側ヒスt_uphscvtからドライバアクセル開度t_usrに到達するまでの時間が所定の漸近期間となる為の予め求められて設定された関係(マップB、mapB)から車速t_snp及びドライバアクセル開度(今回値)t_usrに基づいてヒス内漸近レートt_accrcvtrtを算出する。上記所定の漸近期間は、例えばCVTフィーリングを適切に抑制する為のアクセル漸近処理の実行時間として予め求められたものである。上記マップBは、例えば図9に示すように、例えば車速t_snpとドライバアクセル開度(今回値)t_usrとで構成される二次元座標内においてヒス内漸近レートt_accrcvtrtを算出する為に予め実験的に求められたヒス内漸近レートt_accrcvtrtの分布図である。このマップBにおいて、車速t_snpが低車速である程、ドライバアクセル開度(今回値)t_usrが低開度である程、ヒス内漸近レートt_accrcvtrtが小さくされる傾向があり、それぞれ零近辺ではヒス内漸近レートt_accrcvtrtは零とされる。
そして、制御内操作量処理手段86は、制御内アクセル開度saccrcvtを制御内アクセル開度(前回値)t_accrcvtoにヒス内漸近レートt_accrcvtrtを加算した値(=t_accrcvto+t_accrcvtrt)とする。尚、上記マップA及びマップBにおいて、例えばアクセル増加側ヒスt_uphscvtが零とされる領域とヒス内漸近レートt_accrcvtrtが零とされる領域は略同じである。このようなマップ領域では、制御内操作量処理手段86は、制御内アクセル開度saccrcvtをドライバアクセル開度(今回値)t_usrとする。
より具体的には、アクセル開度比較判定部すなわちアクセル開度比較判定手段92は、制御内アクセル開度(前回値)t_accrcvtoがヒス領域上限値としてのドライバアクセル開度(今回値)t_usrを超えているか否かを判定する。また、アクセル開度比較判定手段92は、制御内アクセル開度(前回値)t_accrcvtoがヒス領域下限値としてのアクセル増加側ヒスt_uphscvt未満であるか否かを判定する。
制御内操作量処理手段86は、アクセル開度比較判定手段92により制御内アクセル開度(前回値)t_accrcvtoがドライバアクセル開度(今回値)t_usrを超えていると判定された場合には、制御内アクセル開度saccrcvtをドライバアクセル開度(今回値)t_usrとする。例えば、前記アクセル漸近処理の実行中にドライバアクセル開度(今回値)t_usrが減少させられて、制御内アクセル開度(前回値)t_accrcvtoがドライバアクセル開度(今回値)t_usrを超えてしまうときには、今回の制御内アクセル開度saccrcvtとしてヒス領域上限値であるドライバアクセル開度(今回値)t_usrが指示される。
制御内操作量処理手段86は、アクセル開度比較判定手段92により制御内アクセル開度(前回値)t_accrcvtoがアクセル増加側ヒスt_uphscvt未満であると判定された場合には、制御内アクセル開度saccrcvtをアクセル増加側ヒスt_uphscvtとする。例えば、前記アクセル漸近処理の実行中にドライバアクセル開度(今回値)t_usrが増大させられて、制御内アクセル開度(前回値)t_accrcvtoがアクセル増加側ヒスt_uphscvtを下回るときには、今回の制御内アクセル開度saccrcvtとしてヒス領域下限値であるアクセル増加側ヒスt_uphscvtが指示される。
このように、制御内アクセル開度(前回値)t_accrcvtoがヒス領域を外れる場合に、制御内アクセル開度saccrcvtがヒス領域から外れることが回避される。尚、このヒス領域は、ドライバアクセル開度(今回値)t_usrを上限とし且つアクセル増加側ヒスt_uphscvtを下限とする領域であって、前記アクセル漸近処理の影響を受けているアクセル開度領域である。
これに対して、アクセル開度比較判定手段92により制御内アクセル開度(前回値)t_accrcvtoがドライバアクセル開度(今回値)t_usr以下且つアクセル増加側ヒスt_uphscvt以上であると判定された場合には、制御内操作量処理手段86は、制御内アクセル開度saccrcvtを制御内アクセル開度(前回値)t_accrcvtoにヒス内漸近レートt_accrcvtrtを加算した値(=t_accrcvto+t_accrcvtrt)とする。すなわち制御内アクセル開度(前回値)t_accrcvtoがヒス領域内にあるときには、例えば図7の実線に示すように、今回の制御内アクセル開度saccrcvtとして上記加算した値(=t_accrcvto+t_accrcvtrt)が指示される。
但し、上記加算した値(=t_accrcvto+t_accrcvtrt)がヒス領域の上限を超えてしまう場合には、制御内アクセル開度saccrcvtをドライバアクセル開度(今回値)t_usrとする上限処理が行われる。具体的には、アクセル開度比較判定手段92は、上記加算した値(=t_accrcvto+t_accrcvtrt)がドライバアクセル開度(今回値)t_usrを超えているか否かを判定する。そして、制御内操作量処理手段86は、アクセル開度比較判定手段92により上記加算した値(=t_accrcvto+t_accrcvtrt)がドライバアクセル開度(今回値)t_usrを超えていると判定された場合には、今回の制御内アクセル開度saccrcvtをドライバアクセル開度(今回値)t_usrとする。一方、 制御内操作量処理手段86は、アクセル開度比較判定手段92により上記加算した値(=t_accrcvto+t_accrcvtrt)がドライバアクセル開度(今回値)t_usr以下であると判定された場合には、今回の制御内アクセル開度saccrcvtを上記加算した値(=t_accrcvto+t_accrcvtrt)とする。
このように、制御内操作量処理手段86は、アクセル漸近処理時の開始初期値としてのアクセル増加側ヒスt_uphscvtまでは制御内アクセル開度saccrcvtをドライバアクセル開度(今回値)t_usrとすると共に、その後、制御内アクセル開度(前回値)t_accrcvtoがヒス領域内にあるときには、ドライバアクセル開度(今回値)t_usrを上限且つアクセル増加側ヒスt_uphscvtを下限として、制御内アクセル開度saccrcvtをアクセル増加側ヒスt_uphscvtからヒス内漸近レートt_accrcvtrtにてドライバアクセル開度(今回値)t_usrに漸近させる増加処理すなわちアクセル漸近処理を実行する(図7参照)。これにより、ドライバアクセル開度t_usrを用いて設定された目標エンジン回転速度NE *(図7の破線)に比べて、制御内アクセル開度saccrcvtを用いて設定された目標エンジン回転速度NE *(図7の太実線)の方が過渡的には小さくされる。そして、ドライバアクセル開度t_usrを用いる場合の実エンジン回転速度NEの上昇(図7の二点鎖線)に比べて、制御内アクセル開度saccrcvtを用いる場合の実エンジン回転速度NEの上昇(図7の細実線)の方がその上昇が緩和される。よって、CVTフィーリングが抑制され、アクセル踏み込み時の実エンジン回転速度NEの上昇と車速Vの上昇との感覚的なずれが生じ難くされる。
ところで、運転者がアクセルペダル70を踏み込み操作した直後において、例えば制御内操作量処理手段86によるアクセル漸近処理の実行中である期間内において、アクセルペダル70を踏み戻した場合、制御内アクセル開度saccrcvtはドライバアクセル開度t_usrに到達するまでの間は、ドライバアクセル開度t_usrの増減に関わりなく上記所定の勾配(一定の変化レート例えばヒス内漸近レートt_accrcvtrt)でドライバアクセル開度t_usrに漸近して増加し続ける(図11の(a)参照)。そうすると、運転者がアクセルペダル70を踏み戻したにも拘わらず、引き続き制御内アクセル開度saccrcvtが増加させられてしまうことにより目標エンジン回転速度NE *も上昇し続け、車両加速が維持されて運転者に加速感を感じさせてしまう可能性がある。これにより、アクセルペダル70を踏み戻しても加速感を感じるという違和感によってドライバビリティを低下させる可能性がある。
そこで、本実施例では、制御内操作量処理手段86は、アクセルペダル70の踏み戻し時の上記加速感の発生を抑制する為に、ドライバアクセル開度t_usrに漸近する制御内アクセル開度saccrcvtの増加処理中に(すなわち前記アクセル漸近処理の実行中に)ドライバアクセル開度t_usrが減少させられた場合は、前記所定の勾配にて漸近する増加処理(すなわち前記アクセル漸近処理)を中止する。
具体的には、信号保持手段84は、更に、前回の制御サイクルにおけるアクセル開度Accの検出値saccusroを今回の制御サイクルにおけるドライバアクセル開度(前回値)t_usroとする。また、アクセル開度比較判定手段92は、更に、ドライバアクセル開度(今回値)t_usrがドライバアクセル開度(前回値)t_usro未満であるか否かを判定する。
そして、制御内操作量処理手段86は、上記アクセル漸近処理の実行中に、アクセル開度比較判定手段92によりドライバアクセル開度(今回値)t_usrがドライバアクセル開度(前回値)t_usro未満であると判定された場合には、ヒス内漸近レートt_accrcvtrtを零とすることで、前記アクセル漸近処理を中止する。例えば、制御内操作量処理手段86は、ドライバアクセル開度(今回値)t_usrがドライバアクセル開度(前回値)t_usroよりも減少させられた時点での制御内アクセル開度(前回値)t_accrcvtoをそのまま維持して今回の制御内アクセル開度saccrcvtとすることで上記アクセル漸近処理を中止する。そして、制御内操作量処理手段86は、その維持した制御内アクセル開度(前回値)t_accrcvtoが前記減少させられるドライバアクセル開度(今回値)t_usrに等しくなった後は制御内アクセル開度saccrcvtをドライバアクセル開度(今回値)t_usrの減少に追随させる。より具体的には、制御内操作量処理手段86は、制御内アクセル開度(前回値)t_accrcvtoが減少させられたドライバアクセル開度(今回値)t_usrを超えないことを条件として、その制御内アクセル開度(前回値)t_accrcvtoをそのまま維持して今回の制御内アクセル開度saccrcvtとする。一方で、制御内操作量処理手段86は、制御内アクセル開度(前回値)t_accrcvtoが減少させられたドライバアクセル開度(今回値)t_usrを超える場合には、そのドライバアクセル開度(今回値)t_usrを今回の制御内アクセル開度saccrcvtとする。
見方を換えれば、制御内操作量処理手段86は、上記アクセル漸近処理の実行中に、ドライバアクセル開度(今回値)t_usrが減少する場合には、上記加算した値(=t_accrcvto+t_accrcvtrt)におけるヒス内漸近レートt_accrcvtrtを零として、今回の制御内アクセル開度saccrcvtを制御内アクセル開度(前回値)t_accrcvtoに維持する所謂制御内アクセル開度ホールド制御を実行する。このとき、前述した上記アクセル漸近処理に際して行われる上記加算した値(=t_accrcvto+t_accrcvtrt)がヒス領域の上限を超えることを回避する為の上記上限処理と同様に、制御内アクセル開度(前回値)t_accrcvtoがヒス領域の上限を超えることを回避する為の上限処理が実行される。
図10は、電子制御装置80の制御作動の要部すなわちドライバアクセル開度t_usrに基づいて車両走行を制御する際に運転者のドライバビリティを向上させる為の制御作動を説明するフローチャートであり、例えば数msec乃至数十msec程度の極めて短いサイクルタイムで繰り返し実行される。また、図11は、図10のフローチャートに示す制御作動に対応するタイムチャートである。
図10において、先ず、信号保持手段84に対応するステップ(以下、ステップを省略する)S10において、今回の制御サイクルにおけるアクセル開度Accの検出値saccusrが今回の制御サイクルにおけるドライバアクセル開度(今回値)t_usrとされる。また、前回の制御サイクルにおけるアクセル開度Accの検出値saccusroが今回の制御サイクルにおけるドライバアクセル開度(前回値)t_usroとされる。また、前回の制御サイクルにおいて処理された制御内アクセル開度saccrcvtが今回の制御サイクルにおける制御内アクセル開度(前回値)t_accrcvtoとされる。また、今回の制御サイクルにおける車速Vの検出値snpが今回の制御サイクルにおける車速t_snpとされる。次いで、アクセル開度ヒス算出手段88に対応するS20において、図8に示すようなマップA(mapA)から車速t_snp及びドライバアクセル開度(今回値)t_usrに基づいてアクセル増加側ヒスt_uphscvtが算出される。次いで、アクセル開度比較判定手段92に対応するS30において、制御内アクセル開度(前回値)t_accrcvtoがヒス領域上限値としてのドライバアクセル開度(今回値)t_usrを超えているか否かが判定される。このS30の判断が肯定される場合は制御内操作量処理手段86に対応するS40において、制御内アクセル開度saccrcvtがドライバアクセル開度(今回値)t_usrとされる。反対に、このS30の判断が否定される場合はアクセル開度比較判定手段92に対応するS50において、制御内アクセル開度(前回値)t_accrcvtoがヒス領域下限値としてのアクセル増加側ヒスt_uphscvt未満であるか否かが判定される。このS50の判断が肯定される場合は制御内操作量処理手段86に対応するS60において、制御内アクセル開度saccrcvtがアクセル増加側ヒスt_uphscvtとされる。反対に、このS50の判断が否定される場合はアクセル開度比較判定手段92に対応するS70において、ドライバアクセル開度(今回値)t_usrがドライバアクセル開度(前回値)t_usro未満であるか否かが判定される。このS70の判断が肯定される場合は制御内操作量処理手段86に対応するS80において、ヒス内漸近レートt_accrcvtrtが零とされることで前記アクセル漸近処理が中止される(図11のt2時点以降)。反対に、このS70の判断が否定される場合はヒス内漸近レート算出手段90に対応するS90において、図9に示すようなマップB(mapB)から車速t_snp及びドライバアクセル開度(今回値)t_usrに基づいてヒス内漸近レートt_accrcvtrtが算出される(図11のt1時点乃至t2時点)。上記S80或いはS90に続いてアクセル開度比較判定手段92に対応するS100において、制御内アクセル開度(前回値)t_accrcvtoにヒス内漸近レートt_accrcvtrtを加算した値(=t_accrcvto+t_accrcvtrt)がドライバアクセル開度(今回値)t_usrを超えているか否かが判定される。このS100の判断が肯定される場合は制御内操作量処理手段86に対応するS110において、今回の制御内アクセル開度saccrcvtがドライバアクセル開度(今回値)t_usrとされる。反対に、このS100の判断が否定される場合は同じく制御内操作量処理手段86に対応するS120において、今回の制御内アクセル開度saccrcvtが上記加算した値(=t_accrcvto+t_accrcvtrt)とされる。
尚、一連のアクセル漸近処理の実行において、開始初期値としてのアクセル増加側ヒスt_uphscvtまでは制御内アクセル開度saccrcvtがドライバアクセル開度(今回値)t_usrとされる。また、例えばアクセル増加側ヒスt_uphscvtが零とされる程ドライバアクセル開度t_usrが低開度であるとき(加えてヒス内漸近レートt_accrcvtrtが零とされる程ドライバアクセル開度t_usrが低開度であるとき)には、制御内アクセル開度saccrcvtがドライバアクセル開度(今回値)t_usrとされる。
上述のように、本実施例によれば、ドライバアクセル開度t_usrが増大させられた際には、制御内操作量処理手段86により車両走行の制御に用いられる制御内アクセル開度saccrcvtが所定の勾配(ヒス内漸近レートt_accrcvtrt)にてドライバアクセル開度t_usrに漸近するように増加処理(すなわち前記アクセル漸近処理)されるので、例えば車両走行を制御する際に用いられる目標値(例えば電気式無段変速機として機能する変速機構10の変速比γ0を制御する際に用いられる目標エンジン回転速度NE *)の設定にドライバアクセル開度t_usrをそのまま用いることに比較して、ドライバアクセル開度t_usrがステップ的に増大させられた際のその目標値(目標エンジン回転速度NE *)のステップ的な変化(上昇)が抑制される。これにより、目標値となるように変化させられる制御対象(エンジン回転速度NE)の変化(上昇)も抑制されることから、例えば車両走行状態(車速V)の変化(上昇)がドライバアクセル開度t_usrの変化(増大)に比べて緩やかな場合に、運転者にとっては車両走行状態(車速V)の変化(上昇)と制御対象(エンジン回転速度NE)の変化(上昇)とに感覚的なずれが生じ難くなる。例えば、車速Vに拘束されることなくエンジン回転速度NEを変化可能な電気式無段変速機に特有の所謂CVTフィーリング、例えばアクセルオン時に車速Vの上昇よりも早い感覚でエンジン回転速度が上昇するというCVTフィーリングを抑制することができる。よって、運転者のドライバビリティを向上させることができる。
また、アクセル漸近処理の実行中にドライバアクセル開度t_usrが減少させられた場合は、制御内操作量処理手段86によりそのアクセル漸近処理が中止させられるので、例えば制御内アクセル開度saccrcvtを用いた車両走行の制御(変速機構10の変速比制御)において、車両走行を制御(変速機構10の変速比を制御)する際に用いられる目標値(目標エンジン回転速度NE *)がドライバアクセル開度t_usrに対応する目標値へ向かって漸近され続けることが中止される。これにより、目標値となるように変化させられる制御対象(エンジン回転速度NE)の変化(上昇)が抑制されることから、例えば増大させられたドライバアクセル開度t_usrに制御内アクセル開度saccrcvtが未だ到達していないときにドライバアクセル開度t_usrが減少させられてもなおそのドライバアクセル開度t_usrへ向かって漸近され続けることに比較して、ドライバアクセル開度t_usrが減少させられたにも拘わらず制御対象(エンジン回転速度NE)の変化(上昇)がドライバアクセル開度t_usrの増大側への変化となることが抑制される。例えば、運転者がアクセルペダル70を踏み戻したにも拘わらず引き続き制御内アクセル開度saccrcvtが増加させられてしまうことにより目標エンジン回転速度NE *の上昇と共に実エンジン回転速度NEも上昇し続けて運転者に加速感を感じさせてしまうという可能性が抑制される。よって、運転者のドライバビリティを一層向上させることができる。
また、本実施例によれば、制御内操作量処理手段86は、ドライバアクセル開度t_usrが減少させられた時点での制御内アクセル開度saccrcvtをそのまま維持することでアクセル漸近処理を中止すると共に、その維持した制御内アクセル開度saccrcvtがその減少させられるドライバアクセル開度t_usrに等しくなった後は制御内アクセル開度saccrcvtをドライバアクセル開度t_usrの減少に追随させる。このようにすれば、ドライバアクセル開度t_usrが減少させられた場合に、アクセル漸近処理が適切に中止させられる。また、アクセル漸近処理を中止した後、制御内アクセル開度saccrcvtがドライバアクセル開度t_usrに等しくなった場合には、制御内アクセル開度saccrcvtが適切にドライバアクセル開度t_usrとされる。
また、本実施例によれば、制御内操作量処理手段86は、前回の制御内アクセル開度saccrcvtが減少させられたドライバアクセル開度t_usrを超えないことを条件として、その前回の制御内アクセル開度saccrcvtをそのまま維持する一方で、前回の制御内アクセル開度saccrcvtが減少させられたドライバアクセル開度t_usrを超える場合には、その減少させられたドライバアクセル開度t_usrを制御内アクセル開度saccrcvtとする。このようにすれば、ドライバアクセル開度t_usrが減少させられた時点での制御内アクセル開度saccrcvtが適切にそのまま維持されると共に、その維持された制御内アクセル開度saccrcvtが減少させられるドライバアクセル開度t_usrに等しくなった後はそのドライバアクセル開度t_usrの減少に適切に追随させられる。
また、本実施例によれば、制御内操作量処理手段86は、アクセル漸近処理における所定の勾配(ヒス内漸近レートt_accrcvtrt)を零とすることでそのアクセル漸近処理を中止する。このようにすれば、ドライバアクセル開度t_usrが減少させられた場合に、そのドライバアクセル開度t_usrが減少させられた時点での制御内アクセル開度saccrcvtがそのまま維持されて、アクセル漸近処理が適切に中止させられる。
次に、本発明の他の実施例を説明する。なお、以下の説明において実施例相互に共通する部分には同一の符号を付して説明を省略する。
前述の実施例では、アクセル漸近処理中のアクセルペダル70の踏み戻しに対応して、アクセル漸近処理における所定の勾配(ヒス内漸近レートt_accrcvtrt)を零として制御内アクセル開度saccrcvtをそのまま維持することによりアクセル漸近処理を中止した。これは、運転者がアクセルペダル70を踏み戻したにも拘わらず運転者に加速感を感じさせてしまうという可能性を抑制する為であるが、制御内アクセル開度saccrcvtをそのまま維持しなくとも、すなわち前記制御内アクセル開度ホールド制御を実行しなくとも、少なくとも制御内アクセル開度saccrcvtを増加させることを回避すればアクセル漸近処理を中止することができると考えられる。
図12は、アクセル漸近処理中のアクセル踏み戻しに対して、制御内アクセル開度ホールド制御に替えて、制御内アクセル開度saccrcvtを低下させてアクセル漸近処理を中止する場合の一例を示す図である。この図12に示すように、本実施例では、前述の実施例に替えて、制御内操作量処理手段86は、上記アクセル漸近処理の実行中に、アクセル開度比較判定手段92によりドライバアクセル開度(今回値)t_usrがドライバアクセル開度(前回値)t_usro未満であると判定された場合には、所定の勾配(ヒス内漸近レートt_accrcvtrt)を負側とすることでアクセル漸近処理を中止する。例えば、制御内操作量処理手段86は、減少させられるドライバアクセル開度t_usrに基づいて、ドライバアクセル開度(今回値)t_usrがドライバアクセル開度(前回値)t_usroよりも減少させられた時点での制御内アクセル開度(前回値)t_accrcvtoから低下させて今回の制御内アクセル開度saccrcvtとすることで前記アクセル漸近処理を中止する。そして、制御内操作量処理手段86は、その低下させた制御内アクセル開度(前回値)t_accrcvtoが前記減少させられるドライバアクセル開度(今回値)t_usrに等しくなる場合は制御内アクセル開度saccrcvtをドライバアクセル開度(今回値)t_usrの減少に追随させる。より具体的には、制御内操作量処理手段86は、制御内アクセル開度(前回値)t_accrcvtoが減少させられたドライバアクセル開度(今回値)t_usrを超えないことを条件として、その制御内アクセル開度(前回値)t_accrcvtoから低下させて今回の制御内アクセル開度saccrcvtとする。一方で、制御内操作量処理手段86は、制御内アクセル開度(前回値)t_accrcvtoが減少させられたドライバアクセル開度(今回値)t_usrを超える場合には、そのドライバアクセル開度(今回値)t_usrを今回の制御内アクセル開度saccrcvtとする。
見方を換えれば、制御内操作量処理手段86は、上記アクセル漸近処理の実行中に、ドライバアクセル開度(今回値)t_usrが減少する場合には、上記加算した値(=t_accrcvto+t_accrcvtrt)におけるヒス内漸近レートt_accrcvtrtを減少させられるドライバアクセル開度t_usrに基づいた負の値として、今回の制御内アクセル開度saccrcvtを制御内アクセル開度(前回値)t_accrcvtoから低下させる所謂制御内アクセル開度低下制御を実行する。このとき、前述した上記アクセル漸近処理に際して行われる上記加算した値(=t_accrcvto+t_accrcvtrt)がヒス領域の上限を超えることを回避する為の上記上限処理と同様に、制御内アクセル開度(前回値)t_accrcvtoがヒス領域の上限を超えることを回避する為の上限処理が実行される。
図12において、図12(a)は、アクセル漸近処理中のアクセル踏み戻し時点以降のドライバアクセル開度t_usrの低下傾向と平行となるように制御内アクセル開度saccrcvtを低下させる場合である。すなわち、ヒス内漸近レートt_accrcvtrtを d(t_usr−t_usro)/dt とした場合である。この場合には、制御内アクセル開度(前回値)t_accrcvtoが減少させられたドライバアクセル開度(今回値)t_usrを超えることなく、ドライバアクセル開度t_usrよりも先に制御内アクセル開度saccrcvtが開度零とされる可能性がある。しかしながら、ドライバアクセル開度t_usrが下がり続けるのであれば、制御内アクセル開度saccrcvtがドライバアクセル開度t_usrに追随することがなくても問題は生じ難いと考えられる。
また、図12(b)は、アクセル漸近処理中のアクセル踏み戻し時点におけるドライバアクセル開度(前回値)t_usroと制御内アクセル開度(前回値)t_accrcvtoとの割合D(=t_usro/t_accrcvto)と同割合となるように、ドライバアクセル開度(今回値)t_usrに対して制御内アクセル開度saccrcvtを低下させる場合である。すなわち、制御内アクセル開度saccrcvtを t_usr/D とした場合である。例えば、制御内アクセル開度saccrcvtが t_usr/D となるようにヒス内漸近レートt_accrcvtrtを処理した場合である。この場合には、ドライバアクセル開度t_usrと制御内アクセル開度saccrcvtとは略同時に開度零とされる。しかしながら、上記図12(a)の場合と同様に、ドライバアクセル開度t_usrが下がり続けるのであれば、制御内アクセル開度saccrcvtがドライバアクセル開度t_usrに追随することがなくても問題は生じ難いと考えられる。
また、図12(c)は、アクセル漸近処理中のアクセル踏み戻し時点以降のドライバアクセル開度t_usrの低下傾向より以上に制御内アクセル開度saccrcvtを低下させる場合である。例えば、ヒス内漸近レートt_accrcvtrtを d(t_usr−t_usro)/dt よりも負側に所定値大きくした場合である。この場合にも、上記図12(a)の場合と同様に、ドライバアクセル開度t_usrよりも先に制御内アクセル開度saccrcvtが開度零とされる可能性があるが、ドライバアクセル開度t_usrが下がり続けるのであれば、制御内アクセル開度saccrcvtがドライバアクセル開度t_usrに追随することがなくても問題は生じ難いと考えられる。
尚、図示はしないが、上記図12(c)とは反対に、アクセル漸近処理中のアクセル踏み戻し時点以降のドライバアクセル開度t_usrの低下傾向より緩めに制御内アクセル開度saccrcvtを低下させても良い。例えば、ヒス内漸近レートt_accrcvtrtを d(t_usr−t_usro)/dt よりも負側に所定値小さくした場合である。この場合には、上記図12(a)の場合と異なり、制御内アクセル開度(前回値)t_accrcvtoが減少させられたドライバアクセル開度(今回値)t_usrを超える可能性がある。制御内アクセル開度(前回値)t_accrcvtoが減少させられたドライバアクセル開度(今回値)t_usrを超える場合には、そのドライバアクセル開度(今回値)t_usrが今回の制御内アクセル開度saccrcvtとされる。すなわち、制御内アクセル開度saccrcvtがドライバアクセル開度t_usrに追随させられる。
また、本実施例では、ドライバアクセル開度t_usrに基づいて車両走行を制御する際に運転者のドライバビリティを向上させる為の制御作動を説明するフローチャートについては図示をしないが、図10のフローチャートにおけるステップS80が制御内アクセル開度低下制御となって、減少させられるドライバアクセル開度t_usrに基づいてヒス内漸近レートt_accrcvtrtが負側とされる点が図10のフローチャートとは主に相違する。
本実施例においても、アクセル漸近処理の実行中にドライバアクセル開度t_usrが減少させられた場合は、制御内操作量処理手段86によりそのアクセル漸近処理が中止させられるので、前述の実施例と同様の効果が得られる。尚、アクセル漸近処理中のアクセルペダル70の踏み戻しに対応して、前述の実施例のように制御内アクセル開度ホールド制御を実行する方が、本実施例のように制御内アクセル開度低下制御を実行することに比較して、次のアクセルペダル70の踏み込みに対して制御内アクセル開度saccrcvtをドライバアクセル開度t_usrに速やかに漸近させられ易いと考えられる。
また、本実施例によれば、制御内操作量処理手段86は、減少させられるドライバアクセル開度t_usrに基づいて、制御内アクセル開度saccrcvtをドライバアクセル開度t_usrが減少させられた時点での制御内アクセル開度saccrcvtから低下させることでアクセル漸近処理を中止すると共に、その低下させた制御内アクセル開度saccrcvtが減少させられるドライバアクセル開度t_usrに等しくなる場合は制御内アクセル開度saccrcvtをドライバアクセル開度t_usrの減少に追随させる。このようにすれば、ドライバアクセル開度t_usrが減少させられた場合に、アクセル漸近処理が適切に中止させられる。また、アクセル漸近処理を中止した後、制御内アクセル開度saccrcvtがドライバアクセル開度t_usrに等しくなった場合には、制御内アクセル開度saccrcvtが適切にドライバアクセル開度t_usrとされる。
また、本実施例によれば、制御内操作量処理手段86は、前回の制御内アクセル開度saccrcvtが減少させられたドライバアクセル開度t_usrを超えないことを条件として、その前回の制御内アクセル開度saccrcvtから低下させる一方で、前回の制御内アクセル開度saccrcvtが減少させられたドライバアクセル開度t_usrを超える場合には、その減少させられたドライバアクセル開度t_usrを制御内アクセル開度saccrcvtとする。このようにすれば、ドライバアクセル開度t_usrが減少させられた時点での制御内アクセル開度saccrcvtからその制御内アクセル開度saccrcvtが適切に低下させられると共に、その低下させられる制御内アクセル開度saccrcvtが減少させられるドライバアクセル開度t_usrに等しくなった場合はそのドライバアクセル開度t_usrの減少に適切に追随させられる。
また、本実施例によれば、制御内操作量処理手段86は、減少させられるドライバアクセル開度t_usrに基づいて所定の勾配(ヒス内漸近レートt_accrcvtrt)を負側とすることでアクセル漸近処理を中止する。このようにすれば、ドライバアクセル開度t_usrが減少させられた場合に、そのドライバアクセル開度t_usrが減少させられた時点での制御内アクセル開度saccrcvtからその制御内アクセル開度saccrcvtが低下させられて、アクセル漸近処理が適切に中止させられる。
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はその他の態様においても適用される。
例えば、前述の実施例では、本発明が適用される車両8を構成する動力伝達装置として電気式無段変速機である変速機構10を例示したが、ドライバアクセル開度t_usrに基づいて車両走行を制御する車両であれば本発明は適用され得る。特に、変速機構10にように車速Vに拘束されることなくエンジン回転速度を目標値に向かって制御可能な動力伝達装置に本発明は適用される。このような動力伝達装置としては、上記電気式無段変速機である変速機構10の他、変速比が無段階に連続的に変化させられる機械式の無段変速機である公知のベルト式無段変速機やトラクション型無段変速機が想定される。このような機械式の無段変速機では、制御内アクセル開度saccrcvtに基づいてその無段変速機の入力回転速度関連値(例えば無段変速機の入力軸の回転速度、入力側に連結された動力源の回転速度)の目標値が設定され、その目標値となるように無段変速機の変速比が制御される。そして、変速機構10の場合と同様の効果が得られる。
また、前述の実施例2では、制御内操作量処理手段86は減少させられるドライバアクセル開度t_usrに基づいて所定の勾配(ヒス内漸近レートt_accrcvtrt)を負側とすることでアクセル漸近処理を中止したが、必ずしもドライバアクセル開度t_usrに基づいた所定の勾配としなくとも良い。例えば、アクセル漸近処理の実行中にドライバアクセル開度t_usrが減少させられた場合は、ドライバアクセル開度t_usrの減少具合に拘わらず、予め求められて記憶された一定の変化勾配にて制御内アクセル開度saccrcvtを低下させても良い。このようにしても、本発明の一定の効果は得られる。
また、前述の実施例では、変速機構10は差動機構として遊星歯車装置20を備えていたが、その遊星歯車装置20に替えて、例えばエンジン14によって回転駆動されるピニオンと、そのピニオンに噛み合う一対のかさ歯車が第1電動機M1及び出力歯車24に作動的に連結された差動歯車装置を差動機構として備えるものであっても良い。また、遊星歯車装置20はシングルプラネタリであるが、ダブルプラネタリであっても良い。
また、前述の実施例においては、第2電動機M2は出力歯車24に直接的に連結されているが、第2電動機M2の連結位置はそれに限定されず、変速機、遊星歯車装置、係合装置等を介して間接的に連結されていても良い。
尚、上述したのはあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。