以下、本発明の実施例を図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施例の駆動制御装置が適用された4輪駆動車両すなわち前後輪駆動車両の動力伝達装置の構成を説明する骨子図である。この前後輪駆動車両は、前輪系を第1原動機を備えた第1駆動装置すなわち主駆動装置10にて駆動し、後輪系を第2原動機を備えた第2駆動装置すなわち副駆動装置12にて駆動する形式の車両である。
上記主駆動装置10は、空気および燃料の混合気が燃焼させられることにより作動させられる内燃機関であるエンジン14と、電気モータおよび発電機として選択的に機能するモータジェネレータ(以下、MGという)16と、ダブルピニオン型の遊星歯車装置18と、変速比が連続的に変化させられる無段変速機20とを同心に備えている。上記エンジン14は第1原動機すなわち主原動機として機能し、MG16も車両の駆動源である原動機として機能している。上記エンジン14は、その吸気配管の吸入空気量を制御するスロットル弁の開度θTHを変化させるためにそのスロットル弁を駆動するスロットルアクチュエータ21を備えている。
上記遊星歯車装置18は、機械的に力を合成し或いは分配する合成分配機構であって、共通の軸心まわりに独立して回転可能に設けられた3つの回転要素、すなわち上記エンジン14にダンパ装置22を介して連結されたサンギヤ24と、第1クラッチC1を介して無段変速機20の入力軸26に連結され且つ上記MG16の出力軸が連結されたキャリヤ28と、第2クラッチC2を介して無段変速機20の入力軸26に連結され且つブレーキB1を介して非回転部材たとえばハウジング30に連結されるリングギヤ32とを備えている。上記キャリヤ28は、サンギヤ24およびリングギヤ32とかみ合い且つ相互にかみ合う1対のピニオン(遊星歯車)34および36を、それらの自転可能に支持している。上記第1クラッチC1、第2クラッチC2、ブレーキB1は、いずれも互いに重ねられた複数枚の摩擦板が油圧アクチュエータによって押圧されることにより係合させられたり、その押圧解除により解放されたりする油圧式摩擦係合装置である。
上記遊星歯車装置18とそのキャリヤ28に連結されたMG16は、エンジン14の作動状態すなわちサンギヤ24の回転状態においてMG16の発電量を制御することすなわちMG16の回転駆動トルクである反力が逐次大きくなるようにキャリヤ28に発生させられることにより、リングギヤ32の回転数を滑らかに増加させて車両の滑らかな発進加速を可能とする電気トルコン(ETC)装置を構成している。このとき、遊星歯車装置18のギヤ比ρ(サンギヤ24の歯数/リングギヤ32の歯数)がたとえば一般的な値である0.5とすると、リングギヤ32のトルク:キャリヤ28のトルク:サンギヤ24のトルク=1/ρ:(1−ρ)/ρ:1の関係から、エンジン14のトルクが1/ρ倍たとえば2倍に増幅されて無段変速機20へ伝達されるので、トルク増幅モードと称される。
また、上記無段変速機20は、入力軸26および出力軸38にそれぞれ設けられた有効径が可変の1対の可変プーリ40および42と、それら1対の可変プーリ40および42に巻き掛けられた無端環状の伝動ベルト44とを備えている。それら1対の可変プーリ40および42は、入力軸26および出力軸38にそれぞれ固定された固定回転体46および48と、その固定回転体46および48との間にV溝を形成するように入力軸26および出力軸38に対して軸心方向に移動可能且つ軸心まわりに相対回転不能に取付られた可動回転体50および52と、それら可動回転体50および52に推力を付与して可変プーリ40および42の掛かり径すなわち有効径を変化させることにより変速比γ(=入力軸回転速度/出力軸回転速度)を変更する1対の油圧シリンダ54および56とを備えている。
上記無段変速機20の出力軸38から出力されたトルクは、減速装置58、差動歯車装置60、および1対の車軸62、64を介して1対の前輪66、68へ伝達されるようになっている。なお、本実施例では、前輪66、68の舵角を変更する操舵装置が省略されている。
前記副駆動装置12は、第2原動機すなわち副原動機として機能するリヤモータジェネレータ(以下、RMGという)70を備え、そのRMG70から出力されたトルクは、減速装置72、差動歯車装置74、および1対の車軸76、78を介して1対の後輪80、82へ伝達されるようになっている。
図2は、前記主駆動装置10の遊星歯車装置18を種々の作動モードに切り換えるための油圧制御回路の構成を簡単に示す図である。運転者によりP、R、N、D、Bの各レンジ位置へ操作されるシフトレバー90に機械的に連結されたマニアル弁92は、シャトル弁93を利用しつつ、シフトレバー90の操作に応答して、Dレンジ、Bレンジ、Rレンジにおいて第1クラッチC1の係合圧を調圧する第1調圧弁94へ図示しないオイルポンプから出力された元圧を供給し、Dレンジ、BレンジにおいてクラッチC2の係合圧を調圧する第2調圧弁95へ元圧を供給し、Nレンジ、Pレンジ、RレンジにおいてブレーキB1の係合圧を調圧する第3調圧弁96へ元圧を供給する。上記第2調圧弁95、第3調圧弁96は、ハイブリッド制御装置104によって駆動されるリニヤソレイド弁97からの出力信号に従って第2クラッチC2およびブレーキB1の係合圧を制御し、第1調圧弁94は、ハイブリッド制御装置104によってデューティー駆動される三方弁である電磁開閉弁98からの出力信号に従って第1クラッチC1の係合圧を制御する。
図3は、本実施例の前後輪駆動車両に設けられた制御装置の構成を説明する図である。エンジン制御装置100、変速制御装置102、ハイブリッド制御装置104、蓄電制御装置106、ブレーキ制御装置108は、CPU、RAM、ROM、入出力インターフェースを備えた所謂マイクロコンピュータであって、CPUはRAMの一時記憶機能を利用しつつ予めROMに記憶されたプログラムに従って入力信号を処理し、種々の制御を実行する。また、上記の制御装置は、相互に通信可能に接続されており、所定の制御装置から必要な信号が要求されると、他の制御装置からその所定の制御装置へ適宜送信されるようになっている。
エンジン制御装置100は、エンジン14のエンジン制御を実行する。例えば、燃料噴射量制御のために図示しない燃料噴射弁を制御し、点火時期制御のために図示しないイグナイタを制御し、トラクション制御ではスリップ中の前輪66、68が路面をグリップするようにエンジン14の出力を一時的に低下させるためにスロットルアクチュエータ21を制御する。
上記変速制御装置102は、たとえば、無段変速機20の伝動ベルト44の張力が必要かつ十分な値となるように予め設定された関係から、実際の変速比γおよび伝達トルクすなわちエンジン14およびMG16の出力トルクに基づいて、ベルト張力圧を調圧する調圧弁を制御し、伝動ベルト44の張力を最適な値とするとともに、エンジン14が最小燃費率曲線或いは最適曲線に沿って作動するように予め記憶された関係から、実際の車速Vおよびエンジン負荷たとえばスロットル開度θとして表現されるスロットル弁開度θTH或いはアクセルペダル操作量ACCに基づいて目標変速比γm を決定し、実際の変速比γがその目標変速比γm と一致するように無段変速機20の変速比γを制御する。
また、上記エンジン制御装置100および変速制御装置102は、たとえば図4に示す最良燃費運転線に沿ってエンジン14の作動点すなわち運転点が移動するように、たとえば上記スロットルアクチュエータ21や燃料噴射量を制御するとともに無段変速機20の変速比γを変更する。また、ハイブリッド制御装置104からの指令に応じて、上記エンジン14の出力トルクTE または回転数NE を変更するために上記スロットルアクチュエータ21や変速比γを変更し、エンジン14の運転点を移動させる。
上記ハイブリッド制御装置104は、電池などから成る蓄電装置112からMG16に供給される駆動電流或いはそのMG16から蓄電装置112へ出力される発電電流を制御するインバータ114を制御するためのMG制御装置116と、蓄電装置112からRMG70に供給される駆動電流或いはそのRMG70から蓄電装置112へ出力される発電電流を制御するインバータ118を制御するためのRMG制御装置120とを含み、シフトレバー90の操作位置PSH、スロットル(アクセル)開度θ(アクセルペダル122の操作量ACC)、車速V、蓄電装置112の蓄電量SOCに基づいて、たとえば図5に示す複数の運転モードのうちからいずれか1つの選択を行うとともに、スロットル開度θ、ブレーキペダル124の操作量BF に基づいて、MG16或いはRMG70の発電に必要なトルクにより制動力を発生させるトルク回生制動モード、或いはエンジン14の回転抵抗トルクにより制動力を発生させるエンジンブレーキモードを選択する。
シフトレバー90がBレンジ或いはDレンジへ操作された場合、たとえば比較的低負荷の発進或いは定速走行ではモータ走行モードが選択され、第1クラッチC1が係合させられ且つ第2クラッチC2およびブレーキB1が共に解放されることにより、専らMG16により車両が駆動される。なお、このモータ走行モードにおいて、蓄電装置112の蓄電量SOCが予め設定された下限値を下回った不足状態となった場合や、駆動力をさらに必要とするためにエンジン14を始動させる場合には、後述のETCモード或いは直結モードへ切り換えられて、それまでの走行を維持しながらMG16或いはRMG70が駆動され、そのMG16或いはRMG70により蓄電装置112が充電される。
また、比較的中負荷走行または高負荷走行では直結モードが選択され、第1クラッチC1および第2クラッチC2が共に係合させられ且つブレーキB1が解放されることにより遊星歯車装置18が一体的に回転させられ、専らエンジン14によりまたはそのエンジン14およびMG16により車両が駆動されたり、或いは専らエンジン14により車両が駆動されると同時にMG16により蓄電装置112の充電が行われる。この直結モードでは、サンギヤ24の回転数即ちエンジン回転数NE (rpm )とキャリヤ部材28の回転数すなわちMG16の回転数NMG(rpm )とリングギヤ32の回転数即ち無段変速機20の入力軸26の回転速度NIN(rpm )とは同じ値であるから、二次元平面内において3本の回転数軸(縦軸)すなわちサンギヤ回転数軸S、リングギヤ回転数軸R、およびキャリヤ回転数軸Cと変速比軸(横軸)とから描かれる図6の共線図では、たとえば1点鎖線に示されるものとなる。なお、図6において、上記サンギヤ回転数軸Sとキャリヤ回転数軸Cとの間隔は1に対応し、リングギヤ回転数Rとキャリヤ回転数軸Cとの間隔はダブルピニオン型遊星歯車装置18のギヤ比ρに対応している。
また、たとえば発進加速走行では、ETCモードすなわちトルク増幅モードが選択され、第2クラッチC2が係合させられ且つ第1クラッチC1およびブレーキB1が共に解放された状態でMG16の発電量(回生量)すなわちそのMG16の反力(MG16を回転させる駆動トルク)が徐々に増加させられることにより、エンジン14が所定の回転数に維持された状態で車両が滑らかに零発進させられる。このようにエンジン14によって車両およびMG16が駆動される場合には、エンジン14のトルクが1/ρ倍たとえばρ=0.5とすると2倍に増幅されて無段変速機20へ伝達される。すなわち、MG16の回転数NMGが図6のA点(負の回転速度すなわち発電状態)である場合には、無段変速機20の入力軸回転数NINは零であるため車両は停止しているが、図6の破線に示すように、そのMG16の発電量が増加させられてその回転数NMGがその正側のB点へ変化させられることにともなって無段変速機20の入力軸回転数NINが増加させられて、車両が発進させられるのである。
シフトレバー90がNレンジ或いはPレンジへ操作された場合、基本的にはニュートラルモード1または2が選択され、第1クラッチC1、第2クラッチC2、およびブレーキB1が共に解放され、遊星歯車装置18において動力伝達経路が解放される。この状態において、蓄電装置112の蓄電量SOCが予め設定された下限値を下回った不足状態となった場合などにおいては、充電・エンジン始動モードとされ、ブレーキB1が係合させられた状態で、MG16によりエンジン14が始動させられる。シフトレバー90がRレンジへ操作された場合、たとえば軽負荷後進走行ではモータ走行モードが選択され、第1クラッチC1が係合させられるとともに第2クラッチC2およびブレーキB1が共に解放されることにより、専らMG16により車両が後進走行させられる。しかし、たとえば中負荷或いは高負荷後進走行ではフリクション走行モードが選択され、第1クラッチC1が係合させられ且つ第2クラッチC2が解放されるとともに、ブレーキB1がスリップ係合させられる。これにより、車両を後進させる駆動力としてMG16の出力トルクにエンジン14の出力トルクが加えられる。
また、前記ハイブリッド制御装置104は、前輪66、68の駆動力に従った車両の発進時或いは急加速時において、車両の駆動力を一時的に高めるために、所定の駆動力配分比に従ってRMG70を作動させ、後輪80、82からも駆動力を発生させる高μ路アシスト制御や、凍結路、圧雪路のような低摩擦係数路(低μ路)における発進走行時において、車両の発進能力を高めるために、RMG70により後輪80、82を駆動すると同時に、たとえば無段変速機20の変速比γを低くさせて前輪66、68の駆動力を低下させる低μ路アシスト制御を実行する。
蓄電制御装置106は、電池、コンデンサなどの蓄電装置112の蓄電量SOCが予め設定された下限値SOCD を下回った場合には、MG16或いはRMG70により発電された電気エネルギで蓄電装置112を充電あるいは蓄電するが、蓄電量SOCが予め設定された上限値SOCU を上まわった場合には、そのMG16或いはRMG70からの電気エネルギで充電することを禁止する。また、上記蓄電に際して、蓄電装置112の温度TB の関数である電力或いは電気エネルギの受入制限値WINと持出制限値WOUT との間の範囲を、実際の電力見込み値Pb 〔=発電電力PMG+消費電力PRMG (負)〕が越えた場合には、その受入れ或いは持ち出しを禁止する。
ブレーキ制御装置108は、たとえばTRC制御、ABS制御、VSC制御などを実行し、低μ路などにおける発進走行時、制動時、旋回時の車両の安定性を高めたり或いは牽引力を高めるために、油圧ブレーキ制御回路を介して各車輪66、68、80、82に設けられたホイールブレーキ66WB、68WB、80WB、82WBを制御する。たとえば、TRC制御では各車輪に設けられた車輪回転(車輪速)センサからの信号に基づいて、車輪車速(車輪回転速度に基づいて換算される車体速度)たとえば右前輪車輪車速VFR、左前輪車輪車速VFL、右後輪車輪車速VRR、左後輪車輪車速VRL、前輪車速〔=(VFR+VFL)/2〕、後輪車速〔=(VRR+VRL)/2〕、および車体車速(VFR、VFL、VRR、VRLのうちの最も遅い速度)を算出する一方で、たとえば主駆動輪である前輪車速と非駆動輪である後輪車速との差であるスリップ速度ΔVが予め設定された制御開始判断基準値ΔV1 を越えると、前輪にスリップ判定をし、且つスリップ率RS 〔=(ΔV/VF )×100%〕が予め設定された目標スリップ率RS1内に入るようにスロットルアクチュエータ21、ホイールブレーキ66WB、68WBなどを用いて前輪66、68の駆動力を低下させる。また、ABS制御では、制動操作時において、各車輪のスリップ率が所定の目標スリップ範囲内になるようにホイールブレーキ66WB、68WB、80WB、82WBを用いて前輪66、68、後輪80、82の制動力を維持し、車両の方向安定性を高める。また、VSC制御では、車両の旋回走行時において、図示しない舵角センサからの舵角、ヨーレートセンサからのヨーレート、2軸Gセンサからの前後加速度および左右(横)加速度などに基づいて車両のオーバステア傾向或いはアンダーステア傾向を判定し、そのオーバステア或いはアンダーステアを抑制するように、ホイールブレーキ66WB、68WB、80WB、82WBのいずれか、およびスロットルアクチュエータ21を制御する。
図7は、上記ハイブリッド制御装置104などの制御機能の要部を説明する機能ブロック線図である。図7において、出力トルク領域記憶手段130は、たとえばハイブリッド制御装置104のRAM内に設けられたものであり、RMG70の出力トルクを制限するための特性を表す複数種類の出力トルク領域が記憶されている。この複数種類の出力トルク領域には、本実施例では図8に示されるように、RMG70の回転速度NRMG を表す回転速度軸132とRMG70の出力トルクTRMG を表す出力トルク軸134との二次元座標内に設定された複数種類の領域であって、A1 線により示される最大トルク値がA2 線よりも相対的に高い第1出力トルク領域すなわちA1 線の内側の領域と、トルク値が低いA2 線により示される最大トルク値がA1 線よりも相対的に低い第2出力トルク領域すなわちA2 線の内側の領域とが含まれる。上記第1出力トルク領域は、たとえばRMG70の最大定格(5分定格のような短時間定格)を表すものであり、上記第2出力トルク領域はたとえば30分定格のような長時間定格を表すものである。
車両運転状態判定手段136は、シフトレバー90の位置、アクセル開度θ、車速Vなどに基づいて車両の発進走行であるか否かを判定する車両発進判定手段138と、右前輪車輪車速VFR、左前輪車輪車速VFL、右後輪車輪車速VRR、左後輪車輪車速VRLに基づいて車輪特に主駆動輪である前輪66、68のスリップの発生を判定する車輪スリップ判定手段140と、舵角およびヨーレートなどに基づいて車両の旋回走行におけるアンダーステアを判定するアンダーステア判定手段142と、舵角が所定値よりも大きいことなどに基づいて車両の旋回走行を判定する旋回走行判定手段144と、アクセル開度変化率dθ/dtすなわちアクセルペダル122の操作速度が所定値以上であることに基づいて車両の加速操作を判定する加速操作判定手段146と、アクセル開度θが所定値以上であることに基づいて車両の高負荷走行を判定する高負荷走行判定手段148と、アクセル開度θおよび車速Vに基づいて車両の減速走行(非制動)を判定する減速走行判定手段150とを備え、車両の運転(走行)状態、すなわち、車両の発進走行、車輪のスリップ、アンダーステア、旋回走行、加速操作、高負荷走行、減速走行のいずれかを判定する。
出力トルク領域選択手段152は、車両の運転状態たとえば車両発進、車輪スリップ、又はアンダステアの有無に基づいて、上記出力トルク領域記憶手段130に予め記憶された複数種類の出力トルク領域から1つの出力トルク領域を選択する。出力トルク領域選択手段152は、車両の発進状態、エンジン14により駆動される前輪66、68のスリップ状態、或いはアンダーステア状態では、そのような車両状態ではない場合に比較して、最大トルク値が高い出力トルク領域を選択する。すなわち、車両運転状態判定手段136により、車両発進、車輪スリップ、アンダステアのいずれかが判定された場合には、第1出力トルク領域が選択され、旋回走行、加速操作、高負荷走行、減速走行のいずれかが判定された場合には、第2出力トルク領域が選択される。すなわち、4輪駆動を行うRMG70の出力トルクの程度を運転状態に応じて切り換えるために、出力トルク領域が選択される。
第2原動機作動制御手段154は、上記出力トルク領域選択手段152により車両の運転状態に基づいて選択された1つの出力トルク領域に基づいて、RMG70を作動させる。第2原動機作動制御手段154は、基本的には、前後輪の静的荷重分配比或いは動的荷重分配比に対応した大きさの駆動力分配比で後輪80、82から駆動力を発生させるように、選択された出力トルク領域内でRMG70を作動させる。すなわち、選択された出力トルク領域から外れないように、換言すれば選択された出力トルク領域の最大トルク値を越えないようにRMG70を作動させるのである。第2原動機作動制御手段154は、車両発進、車輪スリップ、アンダステアのいずれかの車両状態である場合には、4輪駆動効果を高く得るために、出力トルク領域選択手段152により選択された第1出力トルク領域に基づいてRMG70を作動させ、旋回走行、加速操作、高負荷走行、減速走行のいずれかの車両状態である場合には、4輪駆動効果を長く得るために、出力トルク領域選択手段152により選択された第2出力トルク領域に基づいてRMG70を作動させる。
また、上記第2原動機作動制御手段154は、車両運転状態判定手段136により、車両の発進走行、前輪66、68のスリップ、アンダーステア、旋回走行、加速操作、高負荷走行のいずれも判定されない場合には、4輪駆動の不要と判定し、判定のばたつきを防止するために、予め設定された遅れ時間後にRMG70の作動を休止させる。。
また、上記第2原動機作動制御手段154は、出力トルク領域選択手段152により選択された出力トルク領域がそれまでのものの最大トルク値よりも低い最大トルク値の出力トルク領域である場合すなわち第1出力トルク領域に代えて第2出力トルク領域が選択された場合は、出力トルク領域がそれまでのものの最大トルク値よりも高い最大トルク値の出力トルク領域が選択された場合すなわち第2出力トルク領域に代えて第1出力トルク領域が選択された場合に比較して、緩やかにRMG70の出力トルクを低下させ、後輪80、82の駆動力の急減を防止する。
ABS制御判定手段158は、前記ブレーキ制御装置108によるABS制御の実行中、すなわち前記車輪速センサからの信号を利用して車両の制動操作時において車輪のスリップ率が予め設定されたスリップ率範囲内となるように各車輪の制動力を制御する制御の実行中であるか否かを判定する。VSC制御判定手段160は、前記ブレーキ制御装置108によるVSC制御の実行中、すなわち車両の旋回中においてステアリングホイールの舵角から車体方向が外れないように左右の車輪の制動力或いは車輪の駆動力を制御してアンダーステア或いはオーバステアを防止する制御の実行中であるか否かを判定する。車輪速センサ異常判定手段164は、上記車輪速センサの異常を、右前輪車輪車速VFR、左前輪車輪車速VFL、右後輪車輪車速VRR、左後輪車輪車速VRLの相対値に基づいて判定する。低温状態判定手段162は、図示しない温度センサにより検出された外気温度が予め設定された判断基準値を下回った低温状態たとえば路面凍結が発生し得る温度状態となったか否かを判定する。舵角センサ異常判定手段166は、VSC制御に用いるステアリングホイールの舵角を検出するための舵角センサの異常を判定する。ヨーレートセンサ異常判定手段168は、VSC制御に用いるヨーレートを検出するためのヨーレートセンサの異常を判定する。
第2原動機作動制御手段154は、車輪速センサ異常判定手段164により車輪速センサの異常が判定された時、ABS制御判定手段158によるABS制御の作動判定時或いはVSC制御判定手段160によるVSC制御の作動判定時には、たとえ4輪駆動の作動条件が成立して実行している状態であってもRMG70の作動を休止させる。また、第2原動機作動制御手段154は、低温状態判定手段162によって低温状態であると判定された場合には、RMG70を優先的に作動させて4輪駆動状態とする。さらに、上記第2原動機作動制御手段154は、舵角センサ異常判定手段166により舵角センサの異常が判定される場合、または、ヨーレートセンサ異常判定手段168によりヨーレートセンサの異常が判定された場合は、たとえアンダーステア判定手段142によりアンダーステアが判定されたとしてもRMG70を作動させず、4輪駆動を開始しない。
図9および図10は、ハイブリッド制御装置104などの制御作動の要部を説明するフローチャートであって、図9は4輪駆動を行うRMG70の出力トルク領域を切り換えるための出力トルク領域切換ルーチンを示し、図10は、異常時或いは制御干渉時において4輪駆動を中止或いは禁止する4輪駆動中止ルーチンを示している。
図9の出力トルク領域切換および後輪切換制御ルーチンでは、前記低温状態判定手段162に対応するSA1において、外気温度が路面摩擦係数変化を生じ得るような低温状態であるか否かが判断される。このSA1の判断が肯定される場合は、SA16において4WD不要カウンタがリセットされるとともに、前記出力トルク領域選択手段152に対応するSA17において、RMG70の出力トルク領域として最大トルク値がA1 線により示された第1出力トルク領域が選択される。次いで、前記第2原動機作動制御手段154に対応するSA18において、4輪駆動を実行するためにRMG70が第1出力トルク領域内において作動させられる。
前記SA1の判断が否定される場合は、前記車両発進判定手段138に対応するSA2において、車両の発進状態であるか否かが、シフトレバー90の位置、スロットル開度θ、車速Vなどに基づいて判断される。このSA2の判断が肯定される場合は、SA16以下が実行されて4輪駆動を実行するためにRMG70が第1出力トルク領域内において作動させられる。しかし、上記SA2の判断が否定される場合は、前記車輪スリップ判定手段140に対応するSA3において、エンジン14により駆動される主駆動輪である前輪66、68のスリップが発生したか否かが判断される。このSA3の判断が肯定される場合は、SA14において、前輪66、68のスリップ率が所定値よりも大きいか否かが判断される。この所定値は、出力トルク領域の切り換えに対応するスリップの程度を判断するためのものである。このSA14の判断が肯定される場合は、SA16以下が実行されて4輪駆動を実行するためにRMG70が第1出力トルク領域内において作動させられるが、SA14の判断が否定される場合は、SA19において4WD不要カウンタがリセットされ、SA20において現在のRMG70の使用点すなわち図8の二次元図表内に表される作動点がA2 線以上であるか否かが判断される。このSA20の判断が否定される場合はSA21において第2出力トルク領域が選択されるが、肯定される場合はSA22において、RMG70の出力トルクを徐々に減少させるために第1出力トルク領域から第2出力トルク領域へすなわちA1 線からA2 線へ徐々に変化させられる。本実施例では、上記SA20乃至SA22も前記出力トルク領域選択手段152に対応している。
SA3の判断が否定される場合は、前記アンダステア判定手段142に対応するSA4において、アンダステアが発生しているか否かが舵角、前後左右の2軸加速度、ヨーレートなどに基づいて判断される。このSA4の判断が肯定される場合は、SA15において、アンダステアが所定値以上の大きさであるか否かが判断される。この所定値は出力トルク領域の切り換えに対応するアンダステアの程度を判断するためのものである。このSA15の判断が肯定される場合は前記SA16以下が実行され、4輪駆動を実行するためにRMG70が第1出力トルク領域内において作動させられる。しかし、SA15の判断が否定される場合は、上記SA19以下が実行され、4輪駆動を実行するためにRMG70が第2出力トルク領域内において作動させられる。
SA4の判断が否定される場合は、前記旋回走行判定手段144に対応するSA5において、ステアリングホイールの舵角が所定値よりも大きいか否かが判断される。この所定値は4輪駆動を必要とする程の舵角を判断するための値である。上記SA5の判断が否定される場合は、前記加速操作判定手段146に対応するSA6において、アクセル要求駆動力すなわちスロットル開度の変化率dθ/dtが所定値よりも大きいか否かが判断される。この所定値も4輪駆動を必要とする程のスロットル開度変化率を判断するための値である。このSA6の判断が否定される場合は、前記高負荷走行判定手段148に対応するSA7において、スロットル開度θが所定値よりも大きいか否かが判断される。この所定値も4輪駆動を必要とする程のスロットル開度θを判断するための値である。このSA7の判断が否定される場合は、前記減速走行判定手段150に対応するSA8において、車両の減速走行すなわちブレーキ操作しない非加速走行であるか否かが、シフトレバー90の操作位置、スロットル開度θ、車速Vなどに基づいて判断される。
上記SA5乃至SA8の判断のいずれかが肯定された場合は、前記SA19以下が実行されることにより、4輪駆動を実行するためにRMG70が第2出力トルク領域内において作動させられる。しかし、SA1乃至SA8の判断がいずれも否定された場合、すなわち低温状態でなく、車両の発進中ではなく、前輪66、68のスリップおよびアンダステアが発生せず、旋回走行中ではなく、加速要求操作がなく、高負荷走行ではなく、減速走行でもない場合は、SA9において4WDカウンタがインクリメントされた後、SA10において、その4WDカウンタの内容が数秒程度の所定値以上となったか否かが判断される。この4WDカウンタは、上記SA8の判断が否定されてからの経過時間を計数するためのものであり、その所定値が、4輪駆動状態から2輪(FF)駆動状態へ切り換える際のばたつきを防止するために設定された遅れ時間に対応している。
当初は上記SA10の判断が否定されることから、SA20以下が実行される。このとき、第1出力トルク領域が選択されしかもRMG70の作動点がA2 線以上の位置である場合は、第1出力トルク領域から第2出力トルク領域へ徐々に変更され、第1出力トルク領域が選択され且つRMG70の作動点がA2 線より下である場合は、第1出力トルク領域から第2出力トルク領域へ直ちに切り換えられ、第2出力トルク領域が選択されている場合はそれが維持される。
以上のステップが繰り返し実行されるうちに4WDカウンタの内容が所定値以上となってSA10の判断が肯定されると、SA11において、車両の現在の駆動状態が2輪(FF)駆動状態であるか否かが判断される。このSA11の判断が否定される場合は、前記第2原動機作動制御手段154に対応するSA12において、RMG70の駆動力が零に向かって緩やかに低下させられることにより4輪駆動状態から2輪(FF)駆動状態へ徐々に変化させられる。しかし、SA11の判断が肯定される場合は、2輪(FF)駆動状態が維持される。
図10の4輪駆動中止制御ルーチンでは、前記車輪速センサ異常判定手段164に対応するSB1において、各車輪毎に設けられた車輪速センサのいずれかが異常であるか否かが判断される。このSB1の判断が否定される場合は、前記ABS制御判定手段158に対応するSB2においてABS制御中が判定されているか否かが判断される。このSB2の判断が否定される場合は、前記VSC制御判定手段160に対応するSB3においてVSC制御中が判定されているか否かが判断される。上記SB1乃至SB3の判断のいずれかが肯定される場合は、前記第2原動機作動制御手段154に対応するSB4において、4輪駆動作動すなわちRMG70の作動が中止或いは禁止される。
しかし、上記SB1乃至SB3の判断がいずれも否定される場合は、前記舵角センサ異常判定手段166に対応するSB5において舵角センサが異常であるか否かが判断され、このSB5の判断が否定される場合は、前記ヨーレートセンサ異常判定手段168に対応するSB6においてヨーレートセンサが異常であるか否かが判断される。上記SB5およびSB6の判断のいずれかが肯定される場合は、前記第2原動機作動制御手段154に対応するSB7において、4輪駆動作動すなわちRMG70の作動が中止或いは禁止される。しかし、上記SB5およびSB6の判断のいずれもが否定される場合は本ルーチンが終了させられる。
上述のように、本実施例によれば、第2原動機作動制御手段154(SA18)によって、出力トルク領域選択手段152(SA17、SA21、SA22)により記憶された複数種類の出力トルク領域から車両の運転状態に基づいて選択された1つの出力トルク領域に基づいてRMG70が作動させられることから、車両の運転状態に応じた必要かつ十分な出力トルク範囲でRMG70が作動させられるので、所定の走行条件下におけるRMG70の使用が制限されることが少なくなり、4輪駆動としての車両の走行性能が可及的に得られる。
また、本実施例によれば、出力トルク領域記憶手段130に記憶された複数種類の出力トルク領域は、RMG70の回転速度NRMG を表す回転速度軸132とそのRMG70の出力トルクTRMG を表す出力トルク軸134との二次元座標内に設定された複数種類の領域であって、図8に示すような、最大トルク値が相対的に高い第1出力トルク領域と、最大トルク値が相対的に低い第2出力トルク領域とを含むものであることから、4輪駆動の必要度合いにより、最大トルク値が相対的に高い第1出力トルク領域と最大トルク値が相対的に低い第2出力トルク領域とから車両の運転状態或いは走行状態に応じて必要かつ十分な出力トルク領域が選択されることができるので、最大トルク値が高い第1出力トルク領域での常時作動が防止され、RMG70の作動が確保される。
また、本実施例によれば、第2原動機作動制御手段154(SA18)は、出力トルク領域選択手段152(SA17、SA21、SA22)により選択された出力トルク領域がそれまでのものの最大トルク値よりも低い最大トルク値の出力トルク領域である場合すなわち第1出力トルク領域に代えて第2出力トルク領域が選択された場合は、その出力トルク領域選択手段152により選択された出力トルク領域がそれまでのものの最大トルク値よりも高い最大トルク値の出力トルク領域である場合すなわち第2出力トルク領域に代えて第1出力トルク領域が選択された場合に比較して、緩やかにRMG70の出力トルクを低下させることから、第1出力トルク領域に代えて第2出力トルク領域が選択された場合のMG70により駆動される後輪80、82の駆動力の急減が防止され、車両挙動の安定性が高められる。
また、本実施例によれば、第2原動機作動制御手段154(SA12)は、4輪駆動状態からRMG70を作動させない2輪駆動状態へ切り換える場合には、RMG70の出力トルクを零に向かって緩やかに或いは徐々に低下させることから、4輪駆動状態から2輪駆動状態への切り換え時における後輪80、82の駆動力の急減が防止され、車両挙動の安定性が高められる。
また、本実施例によれば、出力トルク領域選択手段152(SA17、SA21、SA22)は、車両の発進状態、エンジン14により駆動される前輪66、68のスリップが大きい状態、或いはアンダーステアが大きい状態では、そのような車両状態ではない場合に比較して、最大トルク値が高い第1出力トルク領域を選択するものであることから、車両の発進状態、エンジン14により駆動される前輪66、68のスリップが大きい状態、或いはアンダーステアが大きい状態では、RMG70により駆動される後輪80、82の駆動力が十分に高められることができるので、4輪駆動の必要度合いに応じてRMG70が作動させられることにより、発進時には十分な駆動力が得られるとともに、発生した前輪66、68のスリップの解消、車両のアンダーステアの解消が好適に得られると同時に、可及的にRMG70の過熱が抑制されて、その使用機会が拡大される利点がある。
また、本実施例によれば、各車輪速センサの異常を判定する車輪速センサ異常判定手段164(SB1)と、各車輪速センサからの信号を利用し、車両の制動操作時において車輪のスリップ率が予め設定されたスリップ率範囲内となるようにその車輪の制動力を制御するABS制御を判定するABS制御判定手段158(SB2)と、車両の旋回中においてステアリングホイールの舵角から車体方向が外れないように左右の車輪の制動力或いは車輪の駆動力を制御してアンダーステア或いはオーバステアを防止するVSC制御を判定するVSC制御判定手段162(SB3)とが備えられ、第2原動機作動制御手段154(SA12)は、上記車輪速センサの異常時、またはそのABS制御判定手段158或いはVSC制御判定手段160によるABS制御或いはVSC制御の作動判定時には、RMG70の作動を休止させるものであることから、車輪速センサの異常時、またはそのABS制御手段或いはVSC制御手段の作動時には、自動的に前輪66、68による前輪駆動状態に切り換えられるので、車輪車速VFR、VFL、VRR、VRLのいずれかの異常に起因するABS制御或いはVSC制御の異常が回避され、或いは制御干渉が防止されて、安全性が高められる。
また、本実施例によれば、外気温が走行路面の摩擦係数の変化が予測される予め定められた温度を下まわった低温状態を判定する低温状態判定手段162(SA1)が設けられ、第2原動機作動制御手段154(SA17)は、その低温状態判定手段162により低温状態が判定された場合には、第1出力トルク領域に基づいてRMG70を優先的に作動させるものであることから、低温状態となると自動的にRMG70が作動させられて4輪駆動状態となるので、車両の安定性が確保される。
また、本実施例によれば、車両の発進走行であるか否かを判定する車両発進判定手段138(SA2)と、主駆動輪である前輪66、68のスリップの発生を判定する車輪スリップ判定手段140(SA3)と、舵角およびヨーレートに基づいて車両の旋回走行におけるアンダーステアを判定するアンダーステア判定手段142(SA4)と、舵角が所定値よりも大きいことを判定する旋回走行判定手段144(SA5)と、アクセルペダル操作速度すなわちdθ/dtが所定値以上であることなどに基づいて加速操作を判定する加速操作判定手段146(SA6)と、アクセルペダル操作量すなわちスロットル開度θが所定値以上である高負荷走行を判定する高負荷走行判定手段148(SA7)と、車両の減速走行を判定する減速走行判定手段150(SA8)とを備え、第2原動機作動制御手段154は、車両の発進走行、車輪のスリップ、アンダーステア、旋回走行、加速操作、高負荷走行のいずれかが判定された場合には、4輪駆動が必要な状態と判定してRMG70を作動させるので、4輪駆動の必要状態となると自動的に第2原動機が作動させられるので、車両の安定性が確保される。
また、本実施例によれば、第2原動機作動制御手段154は、上記車両の発進走行、車輪のスリップ、アンダーステア、旋回走行、加速操作、高負荷走行のいずれも判定されない場合には、4輪駆動の不要と判定して予め設定された遅れ時間後にRMG70の作動を休止させて2輪駆動状態とすることから、可及的にRMG70の作動が少なくされてその過熱が防止されるとともに、4輪駆動不要が判定されてから所定の遅れ時間後に第2原動機の作動が休止されることによって判定のばたつきが防止される。
また、本実施例によれば、ステアリングホイールの舵角を検出する舵角センサの異常を判定する舵角センサ異常判定手段166(SB5)、または、ヨーレートを検出するヨーレートセンサの異常を判定するヨーレートセンサ異常判定手段168(SB6)が備えられ、第2原動機作動制御手段154は、その舵角センサ異常判定手段166により舵角センサの異常が判定された場合、またはヨーレートセンサ異常判定手段168によりヨーレートセンサの異常が判定された場合は、前記アンダーステア判定手段142によりアンダーステアが判定されてもRMG70を作動させないので、舵角センサ異常或いはヨーレートセンサ異常により誤ってアンダーステアが判定された場合は4輪駆動とされない利点がある。
図11は、上記ハイブリッド制御装置104などに設けられた他の制御機能の要部を説明する機能ブロック線図である。図11において、4WD開始判定手段230は、4輪駆動状態の開始条件すなわち2輪駆動状態から4輪駆動状態への切換条件が成立したか否かを、車両の運転走行状態に基づいて判定する。たとえば、車両の発進走行、車輪のスリップ、アンダーステア、旋回走行、加速走行、高負荷走行、減速走行のいずれかに基づいて4輪駆動開始条件が成立したと判定する。実スリップ率算出手段232は、主駆動輪である前輪66、68の回転速度NF を左前輪車輪66の回転速度NFLと右前輪車輪68の回転速度NFRとの平均値を求めることにより算出するとともに、副駆動輪である後輪80、82の回転速度NR を左後輪車輪80の回転速度NRLと右後輪車輪82の回転速度NRRとの平均値を求めることにより算出し、それら前輪66、68の回転速度NF と後輪80、82の回転速度NR との差(NF −NR )を前輪回転速度NF および後輪回転速度NR のいずれか低い値で除することに基づいて実スリップ率S〔=100%×(NF −NR )/min (NF 、NR )〕を逐次算出する。また、目標スリップ率設定手段234には、望ましい4輪駆動を得るために予め求められた目標スリップ率SO が設定され、記憶されている。この目標スリップ率SO は一定値でもよいが、4輪駆動の走行状態に応じて相互に異なる値とされてもよい。
トルク配分フィードバック制御手段236は、上記実スリップ率Sと目標スリップ率SO とのスリップ率偏差δsr1 (=S1 −SO 1 )を算出し、たとえば数式1に示す予め設定されたフィードバック制御式を用いて上記スリップ率偏差δsr1 が解消するようにすなわち実スリップ率Sと目標スリップ率SO 1 とが一致するように、制御操作量である後輪トルク分担比Rr を算出する。この後輪トルク分担比Rr は、4輪駆動時において運転者要求トルクに対応する車両の駆動力(駆動トルク)のうちの後輪80、82が分担する比率であり、1より小さい値である。したがって、前輪トルク分担比は(1−Rr )となる。
(数式1)
Rr =WRr +Kp1・δsr1 +Kd1・dδsr1 /dt+Ki1・∫δsr1 dt+C1
但し、WRr は後輪荷重分担比、Kp1は比例定数すなわち比例項ゲイン、Kd1は微分定数すなわち微分項ゲイン、Ki1は積分定数すなわち積分ゲイン、C1 は定数である。
そして、第2原動機作動制御手段238は、前記トルク配分フィードバック制御手段236から出力されたトルク配分たとえば後輪トルク分担比Rr と運転者要求駆動力Tdrv とに基づいて、そのトルク配分が達成されるようにRMG70を作動させる。すなわち、運転者要求トルクTdrv と後輪トルク分担比Rr とから後輪トルク(Tdrv ×Rr )を算出し、その後輪トルクが出力されるようにRMG70を駆動するのである。この運転者要求トルクTdrv は、たとえば図13に示す予め記憶された関係から車速Vおよびスロットル開度θに基づいて算出される。
トラクション制御中判定手段240は、前記ブレーキ制御装置108によるトラクション(TRC)制御の実行中であるか否かを判定する。フィードバック制御作動変更手段242は、トラクション制御中判定手段240によりトラクション制御中であると判定された場合には、上記トルク配分フィードバック制御手段236によるフィードバック制御作動を、後輪トルク分担比Rr すなわちRMG70の駆動力が数式1の場合よりも増加するように、好ましくは、4輪駆動状態の車両の駆動力が低下しないように、或いは運転者要求トルクTdrv が略維持されるように変更する。
たとえば、フィードバック制御作動変更手段242は、トラクション制御中において、数式1のフィードバック制御式の制御偏差値である前記スリップ率偏差δsr1 (=S1 −SO 1 )、またはそのスリップ率偏差δsr1 を算出するための制御目標値である目標スリップ率SO 1 および実際値である実スリップ率S1 の少なくとも一方を、制御式の出力値である後輪80、82のトルク分担率(後輪トルク分担比Rr )を数式1の場合よりも上昇させるように変更する。たとえば、スリップ率偏差δsr1 或いは実スリップ率S1 を所定値だけ増加させた値δsr2 或いはS2 としたり、目標スリップ率SO 1 を所定値だけ減少させた値SO 2 とすることにより、数式1により算出される後輪トルク分担比Rr を増加させる。
或いは、フィードバック制御作動変更手段242は、上記とは別に或いは上記に併せて、トラクション制御の実行中は、トルク配分フィードバック制御手段236により用いられるフィードバック制御式のフィードバックゲインKp1、Kd1、Ki1を、RMG70により駆動される後輪80、82のトルク分担率(後輪トルク分担比Rr )を上昇させるように変更する。たとえば、フィードバックゲインKp1、Kd1、Ki1の少なくとも1つを、それらよりも所定値だけ大きい値Kp2、Kd2、Ki2に更新し、定数C1 をC2 に変更することにより、数式1により算出される後輪トルク分担比Rr を数式1の場合よりも増加させる。
或いは、フィードバック制御作動変更手段242は、上記とは別に或いは上記に併せて、トラクション制御の実行中は、トルク配分フィードバック制御手段236により用いられる数式1のフィードバック制御式から得られた制御出力値である後輪トルク分担比Rr を、所定値だけ増加側に補正することにより逐次変更する。
図12は、前記ハイブリッド制御装置104などに設けられた他の制御作動の要部を説明するフローチャートである。図12において、前記4WD開始判定手段230に対応するSC1では、4輪駆動の開始条件が成立したか否かが車両の運転状態に基づいて判断される。このSC1の判断が否定される場合は、後輪トルク分担比Rr が零に設定された後、前記第2原動機作動制御手段238に対応するSC6において、運転者の要求駆動トルクTdrv および上記後輪トルク分担比Rr に基づいて後輪80、82の駆動トルクが算出され、RMG70からその駆動トルクが出力される。この場合は、上記SC2において後輪トルク分担比Rr が零に設定されているので、RMG70の出力トルクは零とされ、専ら前輪66、68の駆動力で走行する2輪走行が行われる。
しかし、上記SC1の判断が肯定されると、前記トラクション制御中判定手段240に対応するSC3において、前記ブレーキ制御装置108によるトラクション制御の実行中であるか否かが判断される。このSC3の判断が否定される場合は、前記トルク配分フィードバック制御手段236に対応するSC4において、実スリップ率Sと目標スリップ率SO とのスリップ率偏差δsr1 (=S1 −SO 1 )が算出され、たとえば数式1に示す予め設定されたフィードバック制御式から実際のスリップ率偏差δsr1 に基づいてそれが解消するような後輪トルク分担比Rr が算出される。次いで、前記第2原動機作動制御手段238に対応するSC6において、運転者の要求駆動トルクTdrv および上記後輪トルク分担比Rr に基づいて後輪80、82の駆動トルク(Tdrv ×Rr )が算出され、後輪80、82からその駆動トルクが出力されるようにRMG70が駆動される。
トラクション制御中は上記SC3の判断が肯定されるので、前記フィードバック制御作動変更手段242に対応するSC5において、上記SC4の場合よりも後輪トルク分担比Rr が大きい値となるように、フィードバック制御作動が変更される。たとえば、数式1のフィードバックゲインKp1、Kd1、Ki1をそれよりも所定値だけ大きい値Kp2、Kd2、Ki2に変更したフィードバック制御式が用いられることにより後輪トルク分担比Rr が算出される。そして、SC6では、運転者の要求駆動トルクTdrv および上記後輪トルク分担比Rr に基づいて後輪80、82の駆動トルク(Tdrv ×Rr )が算出され、後輪80、82からその駆動トルクが出力されるようにRMG70が駆動される。これにより、トラクション制御中において車両の駆動力を確保するために、数式1を用いた場合よりも大きな駆動トルクが後輪80、82から出力される。
以下において、上記本実施例の作動を図14のタイムチャートを用いて説明する。たとえば凍結路などの低μ路のためにt1 時点において4輪駆動走行が開始されたとすると、トラクション制御が実行されない場合は、実線に示すように、前輪66、68のスリップにより前輪回転速度NF および実スリップ率Sが変化し、運転者要求トルクTdrv が維持されるように数式1のフィードバック制御式に従って後輪トルク分担比Rr が実線に示すように増加させられる。そして、この走行が継続するうちに前輪66、68のスリップが収束して前輪回転速度NF が低下するにともなって後輪トルク分担比Rr も本来の値たとえば0.5程度に低下させられる。しかし、トラクション制御が実行される場合は、そのトラクション制御の効果によって前輪回転速度NF および実スリップ率Sの上昇が抑制されるので、数式1のフィードバック制御式を用いた場合には、スリップ率偏差δsr1 (=S1 −SO 1 )が小さくなって後輪トルク分担比Rr がそれほど増加させられず、車両全体の駆動力が小さくなって運転者要求トルクTdrv を下回り、車両の動力性能が得られなかったのである。すなわち、トルク配分フィードバック制御236によるフィードバック制御作動によりRMG70のトルク配分が調節されると、トラクション制御の実行によりエンジン14により駆動される前輪66、68のスリップが抑制されて前後輪の実スリップ率が目標値に接近させられるので、制御装置104は上記トルク配分のフィードバック制御効果が得られたように見て、RMG70の出力すなわち後輪80、82へのトルク配分を小さくするので、車両の動力性能が低下させられてしまうのである。
しかしながら、本実施例によれば、フィードバック制御作動変更手段242(SC5)において、たとえば、数式1のフィードバックゲインKp1、Kd1、Ki1をそれよりも所定値だけ大きい値Kp2、Kd2、Ki2に変更したフィードバック制御式が用いられることにより、数式1のフィードバック制御式の場合よりも大きな値の後輪トルク分担比Rr が算出されるので、トルク分担比Rr が大きい値となるように、フィードバック制御作動が変更される。このため、トラクション制御中において数式1の場合よりも大きな駆動トルクが後輪80、82から出力され、車両の動力性能が確保されるのである。図14には、理解を容易にするために、フィードバック制御作動変更手段242により目標スリップ率SO 2 が小さく変更された場合が示されている。この場合でも、スリップ率偏差δsr2 (=S2 −SO 2 )が大きく得られることから、フィードバック制御式により算出される後輪トルク分配比Rr も大きくなるので、大きな駆動トルクが後輪80、82から出力され、車両の動力性能が得られるのである。実スリップ率S1 がそれよりも大きいS2 に変更されたり、算出されたスリップ率偏差δsr2 を所定値だけ大きくなるように補正したりしても上記と同様の効果が得られるし、数式1のフィードバック制御式により算出された制御出力値である後輪トルク分配比Rr を直接所定値だけ大きくなるように補正したりしても上記と同様の効果が得られる。
図15は、前記ハイブリッド制御装置104などに設けられた他の制御機能の要部を説明する機能ブロック線図である。図15において、第1電動機作動制御手段330は、4輪駆動状態では、運転者要求トルクTdrv のうちの前輪荷重分担比である前輪トルク分担比(1−Ktr)に相当する前輪駆動トルクを算出し、その前輪駆動トルクが前輪66、68から出力されるようにMG16を制御する。たとえば直結モードにおいてエンジン14とMG16とが同時に作動する場合には、そのエンジン14の出力と併せて上記前輪トルクとなるようにMG16を制御する。また、第1電動機作動制御手段330は、制動時においても、ブレーキペダル124の操作量や惰行走行時の車速変化量などに基づいて決まる要求制動トルクのうちの前輪トルク分担比(1−Ktr)に相当する前輪回生トルクを算出し、その前輪回生トルクが前輪66、68から出力されるようにMG16を制御する。
第2電動機作動制御手段332は、4輪駆動状態では、運転者要求トルクTdrv のうちの後輪荷重分担比である後荷重トルク分担比Ktrに相当する後輪駆動トルクを算出し、その後輪駆動トルクが後輪80、82から出力されるようにRMG70を制御する。また、第2電動機作動制御手段332は、制動時においても、ブレーキペダル124の操作量や惰行走行時の車速変化量などに基づいて決まる要求制動トルクのうちの後輪トルク分担比Ktrに相当する後輪回生トルクを算出し、その後輪回生トルクが後輪80、82から出力されるようにRMG70を制御する。なお、上記運転者要求トルクTdrv は、たとえば図13に示す予め記憶された関係から実際の車速Vおよびスロットル開度θに基づいて決定される。また、上記前輪荷重分担比(1−Ktr)および後輪トルク分担比Ktrは、目標値でもあり、静的な前後輪荷重分担比(一定値)、或いは車両の前後加速度(前後G)を加味した動的な前後輪荷重分担比(前後Gの関数)に基づいて決定される。
上記MG16およびRMG70は、そのコイルを絶縁する材料の絶縁性能を確保するなどのために、その温度TMGおよびTRMG によって使用が制限されるものであり、たとえば図16に示す出力トルク領域内で作動させられる必要がある。MG16の温度TMGまたはRMG70の温度TRMG がTa 度である場合は、図16のT=Ta に示される最大トルク線の内側の領域内すなわち出力制限値と回生制限値との範囲内で作動させられればよいが、Tc 度である場合は、図16のT=Tc に示される最大トルク線の内側の小さな領域内で作動させられねばならないのである。また、前記蓄電装置112は、その電解質の劣化、内部損傷、或いは寿命の低下を防止するなどのために、その温度TB によってその持出電力或いは受入電力が制限されるものであり、たとえば図17に示すような、持出制限値WOUT と受入制限値WINとの間の範囲内で使用される必要がある。
このため、第1電動機作動制限手段334は、たとえば図16の関係からMG16の温度TMGで決まる出力制限値或いは回生制限値や、たとえば図17の関係から蓄電装置112の温度TB で決まる持出制限値WOUT および受入制限値WINに基づいて、MG16の駆動作動或いは回生作動を制限する。同様に、第2電動機作動制限手段336は、たとえば図16の関係からRMG70の温度TRMG で決まる出力制限値或いは回生制限値や、たとえば図17の関係から蓄電装置112の温度TB で決まる持出制限値WOUT 或いは受入制限値WINに基づいて、RMG70の駆動作動或いは回生作動を制限する。
第1電動機作動増大手段338は、上記第2電動機作動制限手段336によってRMG70の駆動作動或いは回生作動が制限された場合は、車両全体の駆動力或いは回生制動力を維持するためにすなわち変化させないために、その制限に相当する分だけMG16の駆動出力或いは回生出力を増大させる。また、第2電動機作動低減手段340は、前記第1電動機作動制限手段334によってMG16の駆動作動或いは回生作動が制限された場合は、車両の前後輪のトルク分担率を維持するためにすなわち前後輪の駆動力配分比或いは制動力配分比を予め定めらえた目標配分比とするために、その制限に相当する分だけRMG70の駆動出力或いは回生出力を低減させる。
図18は、前記ハイブリッド制御装置104の他の制御作動の要部を説明するフローチャートであって、エンジン14およびMG16を用いた直結走行モードにおける前後輪トルク分配制御ルーチンを示している。図18において、SD1の前処理では、図17の関係から蓄電装置112の実際の温度TB に基づいて受入制限値WIN、持出制限値WOUT が算出され、図16の関係からMG16の温度TMGに基づいて温度制限済のMG16の最大許容トルクTMGmax および最小許容トルクTMGmin が算出され、図16の関係からRMG70の温度TRMG に基づいて温度制限済のRMG70の最大許容トルクTRMGmaxおよび最小許容トルクTRMGminが算出され、図示しない回転センサからの信号に基づいて、MG16の回転速度NMG、RMG70の回転速度NRMG 、および無段変速機20の入力軸回転速度NINが算出され、たとえば図13に示す関係から実際の車速Vおよびスロットル開度θに基づいて運転者要求トルクTdrv が算出され、その運転者要求トルクTdrv 、補機駆動トルク、必要充電トルクなどに基づいて必要エンジン出力PV が算出される。ここで、上記運転者要求トルクTdrv や後述の出力或いは出力トルクは、回生制動力或いはトルクを表す負の値をも含むものであり、それらの増加或いは減少という表現はそれらの絶対値に基づいている。
続いて、SD2では、エンジン14に出力させるトルクの指令値を算出するために、図19のエンジン指令トルク算出ルーチンが実行される。すなわち、SD21では、上記必要エンジン出力PV およびエンジン回転速度NE に基づいて、エンジン14に出力させるためのエンジン出力トルク基本値TEbase (=PV /NE )が算出される。次いで、SD22では、そのエンジン出力トルク基本値TEbase に対してエンジン14の仕様に関連する上限値TEmaxおよび下限値「0」の制限が加えられ(0≦TEbase ≦TEmax)、制限済の値がエンジン出力トルク指令値TE とされる。エンジン14は、その出力トルクがそのエンジン出力トルク指令値TE となるように制御される。
続くSD3では、たとえば図20に示すリヤモータトルク仮決定ルーチンが実行されることにより、RMG70の出力トルク仮決定値TRMGtmpが算出される。すなわち、図20のSD31では、持出制限値WOUT に基づいてRMG70の出力トルクの上限値TRMGmaxp が算出される。すなわち、数式2および数式3からPRMG が求められ、これがRMG70の最大出力PRMGmaxp とされる。次いで、このPRMGmaxp とRMG70の回転速度NRMG から数式4を満足するTRMG が求められ、これがRMG70の最大出力トルクTRMGmaxp とされる。数式3において、EFMGはMG16の効率、EFCVT は無段変速機20の効率、EFRMG はRMG70の効率である。数式4において、PRMGloss (NRMG ,TRMG )はRMG70のパワー損失である。
(数式2)
PMG+PRMG =WOUT
(数式3)
〔(PMG×EFMG+NE ×TEbase )×EFCVT 〕:(PRMG ×EFRMG )
=(1−Ktr):Ktr
(数式4)
NRMG ×TRMG +PRMGloss (NRMG ,TRMG )=PRMGmaxp
SD32では、受入制限値WINに基づいてRMG70の出力トルクの下限値TRMGminp が算出される。すなわち、数式5および数式6からPRMG が求められ、これがRMG70の最小出力PRMGminp とされる。次いで、このPRMGminp とRMG70の回転速度NRMG から数式7を満足するTRMG が求められ、これがRMG70の最小出力トルクTRMGminp とされる。
(数式5)
PMG+PRMG =WIN
(数式6)
〔(PMG×EFMG+NE ×TEbase )×EFCVT 〕:(PRMG ×EFRMG )
=(1−Ktr):Ktr
(数式7)
NRMG ×TRMG +PRMGloss (NRMG ,TRMG )=PRMGminp
続いて、前記第2電動機作動制御手段332に対応するSD33では、RMG70の出力トルク基本値TRMGbase を、数式8から算出する。この出力トルク基本値TRMGbase は、RMG70から出力される基本トルクであり、原則的にはこの値が出力されるようにRMG70が駆動されるが、実際には、後述の上下限ガード処理後の値が出力されるようにRMG70が駆動される。数式8において、GRRは副駆動装置12(減速装置72)の減速比である。
(数式8)
TRMGbase =Tdrv ×Ktr/GRR
そして、前記第2電動機作動制限手段336に対応するSD34では、上記出力トルク基本値TRMGbase に対して、蓄電装置112に由来する制限およびRMG70の温度に由来する制限を行うための、上記TRMGmaxp およびTRMGminp 、前記TRMGmaxおよびTRMGminによる上下限ガード処理が数式9および数式10に従って実行され、上下限ガード処理後の値がRMG70の出力トルク仮決定値TRMGtmpとして決定される。
(数式9)
TRMGminp ≦TRMGbase ≦TRMGmaxp
(数式10)
TRMGmin≦TRMGbase ≦TRMGmax
図18に戻って、SD4では、たとえば図21に示すフロントモータトルク仮決定ルーチンが実行されることにより、MG16の出力トルク仮決定値TMGtmp が算出される。すなわち、図21のSD41では、持出制限値WOUT に基づいてMG16の出力トルクの上限値TMGmax が算出される。すなわち、数式11から上記RMG70の出力トルク仮決定値TRMGtmpに基づいてRMG70の出力PRMG が算出され、そのRMG70の出力PRMG からMG16の最大出力PMG(=WOUT −PRMG )が算出され、数式12からそのMG16の最大出力PMG(=WOUT −PRMG )に基づいてMG16の最大出力トルクTMGが求められ、これがTMGmaxpとされる。また、RMG70の出力PRMG からMG16の最小出力PMG(=WIN−PRMG )が算出され、数式12からそのMG16の最小出力PMG(=WIN−PRMG )に基づいてMG16の最小出力トルクTMGが求められ、これがTMGminpとされる。数式12において、PMGloss(NMG,TMG)はMG16の損失である。
(数式11)
PRMG =NRMG ×TRMGtmp+PRMGloss (NRMG ,TRMG )
(数式12)
NMG×TMG+PMGloss(NMG,TMG)=PMG
次いで、前記第1電動機作動制御手段330に対応するSD42では、MG16の出力トルク基本値TMGbaseを、数式13から運転者要求トルクTdrv およびRMG70の出力トルク仮決定値TRMGtmp、エンジン出力トルク基本値TEbase に基づいて算出し、その出力トルク基本値TMGbaseがMG16から出力されるように指令する。数式13において、GRFは主駆動装置(遊星歯車装置18および無段変速機20)の減速比である。数式13では、運転者要求トルクTdrv からRMG70の出力トルク仮決定値TRMGtmpに減速比GRRを差し引いた値に基づいてMG16の出力トルク基本値TMGbaseが算出されているので、たとえばSD34においてRMG70の出力トルクが制限されたときは、その分だけMG16の出力トルク基本値TMGbaseが増加させられて、車両の合計駆動力或いは回生制動力が一定に保持されるようになっている。したがって、本実施例では、このSD42は、前記第1電動機作動増大手段338にも対応している。
(数式13)
TMGbase=(Tdrv −TRMGtmp×GRR)/GRF−TEbase
続いて、前記第1電動機作動制限手段334に対応するSD43では、上記出力トルク基本値TMGbaseに対して、蓄電装置112に由来する制限およびMG16の温度に由来する制限を行うための、上記TMGmaxpおよびTMGminp、前記TMGmax およびTMGmin による上下限ガード処理が数式14および数式15に従って実行され、上下限ガード処理後の値がMG16の出力トルク仮決定値TMGtmp として決定される。
(数式14)
TMGminp≦TMGbase≦TMGmaxp
(数式15)
TMGmin ≦TMGbase≦TMGmax
図18に戻って、SD5では、前輪(車軸)の仮トルクTftmpが数式16から算出され、後輪(車軸)の仮トルクTrtmpが数式17から算出される。
(数式16)
Tftmp=(TMG+TEbase )×(NIN/NOUT )×EFCVT ×GRF
(数式17)
Trtmp=TRMGtmp×GRR
次に、SD6において、上記後輪の仮トルク|Trtmp|が、前輪の仮トルクTftmpと後輪の仮トルクTrtmpとの合計値|Tftmp+Trtmp|に後輪トルク分配比Ktrを掛けた値以下であるか否か、すなわち、合計値|Tftmp+Trtmp|に対する後輪の仮トルク|Trtmp|の割合(|Trtmp|/|Tftmp+Trtmp|)が後輪トルク分配比Ktr以下であるか否かが判断される。このSD6の判断が肯定される場合は、SD7において、上記後輪の仮トルクTRMGtmpがRMG70の出力トルクTRMG として決定される。
しかし、上記SD6の判断が否定される場合は、SD8において、RMG70の出力トルクが再計算された後、上記SD7が実行される。このSD8では、たとえば図22に示すリヤモータ出力トルク再計算ルーチンが実行される。図22のSD81では、数式18から前輪仮トルクTftmpと前輪トルク配分比(1−Ktr)および後輪トルク配分比Ktrの割合〔Ktr/(1−Ktr)〕とに基づいて後輪のトルクTrtmpが算出され、SD82では、数式19からその後輪のトルクTrtmpと副駆動装置12の減速比GRRとに基づいてRMG70の仮出力トルク値TRMGtmpが算出される。ここで、たとえば、前記SD43によりMG16の出力トルクが制限されたために、前輪の仮トルクTftmpと後輪の仮トルクTrtmpとの合計値|Tftmp+Trtmp|に対する後輪の仮トルク|Trtmp|の割合(|Trtmp|/|Tftmp+Trtmp|)が後輪トルク分配比Ktrを上まわった場合には、上記数式18によって、前輪仮トルクTftmpおよび後輪仮トルクTrtmpの分配比(Trtmp/Tftmp)が予め定められた目標分配比である前輪トルク配分比(1−Ktr)および後輪トルク配分比Ktrの分配比〔Ktr/(1−Ktr)〕となるように、すなわち実際の前後輪の駆動力配分比或いは回生制動力配分比が目標分配比〔Ktr/(1−Ktr)〕となるように後輪仮トルクTrtmpが上記MG16の出力トルクの制限量に対応して低減されるので、上記SD8は前記第2電動機作動低減手段340に対応している。
(数式18)
Trtmp=Tftmp×〔Ktr/(1−Ktr)〕
(数式19)
TRMGtmp=Trtmp×GRR
上述のように、本実施例によれば、MG16(第1電動機)とRMG70(第2電動機)との熱定格の相互関係が特定の状態とされるため、前後輪駆動車両がその駆動力バランスを考慮したものとされることができ、走行安定性が保持されることができる。
また、本実施例によれば、MG16(第1電動機)の熱定格がRMG70(第2電動機)の熱定格よりも高くされたものであることから、後輪80、82を駆動するRMG70の熱定格が前輪66、68を駆動するMG16の熱定格よりも低く、後輪側のRMG70の出力が先に制限されるが、後輪80、82であるために比較的車両の安定性が保持される利点がある。
また、本実施例によれば、第2電動機作動制限手段336(SD34)によるRMG70の作動制限時(駆動作動制限時或いは回生作動制限時)において、第1電動機作動増大手段338(SD42)によりMG16の作動(駆動作動或いは回生作動)が増大させられるため、比較的車両の安定性を保ちつつ、車両の全駆動力或いは回生制動力が確保される。たとえば、RMG70の出力制限時においては運転者要求トルクTdrv に対応する車両の全駆動力を変化させないようにMG16の出力が増大させられ、RMG70の回生制限時においては車両の全回生制動トルクを変化させないようにMG16の回生が増大させられることにより、車両の安定性が保持されつつ、車両の全駆動力或いは回生制動力が確保される。
また、本実施例によれば、第1電動機作動制限手段334(SD43) によるMG16の作動制限時において、第2電動機出力低減手段340(SD8)により前後輪の分配比を目標分配比とするためにすなわち後輪80、82のトルク分配比をKtrとするためにRMG70の作動が低減させられるため、車両の安定性が確保される。たとえば、MG16の出力制限時においては前後輪のトルク分担比すなわち後輪トルク分担比Ktrが維持されるように、またはそれよりも前輪駆動(FF)となるようにRMG70の出力が低減させられ、また、MG16の回生制限時においても同様にRMG70の回生が低減させられることにより、車両の安定性が保持されつつ、車両の全駆動力或いは回生制動力が確保される。
図23は、図9の他の制御作動を説明するフローチャートである。このフローチャートにおいては、図9に比較して、SA1が削除され、且つSA2の判断が肯定されたときに実行されるSA30が設けられている点において相違し、他は同様である。図9と共通する部分には同一の符号を付して説明を省略する。
上記SA30では、外気温度が路面摩擦係数変化を生じ得るような所定温度以下の低温状態であり、且つ路面勾配が所定角度以上の登坂走行であるか否かが判断される。この登坂走行は、たとえば図示しない前後Gセンサからの信号に基づいて判断される。或いは、車両の停止時或いはアクセルペダル122が操作されない惰行走行時に記憶された前後加速度と発進直前の加速度との加速度差が路面勾配に対応することを利用して、その加速度差が所定値を越えた場合に登坂走行を判定してもよい。この場合、平坦路における高加速度発進においても登坂と誤判定されない利点がある。
上記SA30の判断が肯定される場合は、SA16以下が実行されることにより相対的に大きな駆動力を得ることができる第1出力トルク領域が選択され、その第1出力トルク領域に従ってRMG70が駆動される。これにより、大きな駆動力が得られる4輪駆動走行が行われる。しかし、上記SA30の判断が否定される場合は、SA19以下が実行されることにより、第1出力トルク領域よりは最大トルクが小さく設定された第2出力トルク領域が選択されるので、その第2出力トルク領域に従ってRMG70が駆動される。これにより、平坦路や高μ路においては十分であるが、電力消費が抑制された4輪駆動走行が行われ、RMG70の駆動負荷が軽減される。
なお、上記SA30において、外気温度が路面摩擦係数変化を生じ得るような所定温度以下の低温状態であるか、或いは路面勾配が所定角度以上の登坂走行であるか否かが判断されるようにしてもよい。この場合、外気温度が路面摩擦係数変化を生じ得るような所定温度以下の低温状態であるとき、および路面勾配が所定角度以上の登坂走行であるときには、共にSA16以下が実行されることにより相対的に大きな駆動力を得ることができる第1出力トルク領域が選択され、その第1出力トルク領域に従ってRMG70が駆動される。しかし、外気温度が路面摩擦係数変化を生じ得るような所定温度以下の低温状態でなく、しかも路面勾配が所定角度以上の登坂走行でない場合に、SA19以下が実行されることにより、第1出力トルク領域よりは最大トルクが小さく設定された第2出力トルク領域が選択されるので、その第2出力トルク領域に従ってRMG70が駆動される。
図24は、前記ハイブリッド制御装置104などに設けられた他の制御機能の要部、すなわち前輪66、68の駆動力に従った車両の登坂発進時において、車両の駆動力を一時的に高めるために所定の駆動力配分比に従ってRMG70を作動させ、後輪80、82からも駆動力を発生させる高μ路アシスト制御を説明する機能ブロック線図である。図24において、目標出力決定手段348は、たとえば図25に示す予め記憶された関係から実際の運転者による出力操作手段の操作程度たとえばアクセルペダル122の操作量(アクセル開度)θA と車速Vとに基づいて目標駆動力FT1を決定する。上記図25に示す関係は、運転者の要求駆動力或いは要求加速力を実現するために予め実験的に求められたものである。
坂路発進アシスト制御手段350は、車両の発進操作に先立ち且つアクセルペダル122の操作により車両が所定速度に到達するまで、道路勾配に対応した大きさの駆動力であって、登坂発進時の車両の後退速度すなわちずり落ち速度が零より大きな所定車速以下たとえば1〜3km/h程度の微速とする大きさの駆動力を車両に付与するようにする。すなわち、坂路発進アシスト制御手段350は、車両が発進しようとする路面の勾配(角度)検出するためにたとえば勾配に対応する停車時前後加速度Gxstpを車両停止且つブレーキ操作時の図示しない前後加速度センサの出力信号に基づいて記憶する路面勾配検出手段352と、たとえば図26に示す予め記憶された関係から実際の勾配に対応する停車時前後加速度Gxstpに基づいて登坂発進時の後退を抑制するために付加すべき仮補正駆動力dFK を決定する仮補正駆動力決定手段354と、その仮補正駆動力決定手段354により決定された仮補正駆動力dFK に基づいて、たとえば図27に示すように、出力開始時にはたとえば0.2秒程度の立ち上がり期間(t0 〜t1 )で相対的に速やかに増加して仮補正駆動力dFK に到達するが、出力終了時にはたとえば1乃至2秒程度の立ち下がり期間(t2 〜t3 )でその仮補正駆動力dFK から相対的に緩やかに減少する補正駆動力dFを発生させる補正駆動力発生手段355と、その補正駆動力dFを車両の駆動力に付与するために前記目標駆動力FT1に加算する補正駆動力付与手段356とを備えている。上記図26に示す関係は、登坂発進時の車両の後退速度すなわちずり落ち速度が零より大きな所定車速以下たとえば1〜3km/h程度の微速となるように予め実験的に求められたものであり、所定の勾配範囲内すなわち停車時前後加速度GxstpがG1 乃至G2 の範囲内において、停車時前後加速度Gxstpの増加に伴って比例的に仮補正駆動力dFK が増加するように決定されている。停車時前後加速度GxstpがG1 よりも小さい場合は補正駆動力dFを付与しなくても後退速度が緩やかであり、停車時前後加速度GxstpがG2 よりも大きい場合はそれ以後の後退速度を路面傾斜に伴って大きくするために仮補正駆動力dFK の増加が飽和させられている。
また、アクセル開度θA がたとえば図28に示すような予め設定された関係θA1=f(Gxstp、W)から実際の路面勾配Gxstpおよび車重Wに基づいて求められた判断基準値θA1を越えたか否かに基づいて駆動力の坂路発進アシスト補正が不要であるか否かを判定する補正開始不可判定手段358と、アクセル開度θA が予め設定された判断基準値θA2を越えたか否かに基づいて補正駆動力dFを付与する登坂発進アシスト制御を中止するか否かを判定する補正中止判定手段360とが設けられており、上記坂路発進アシスト制御手段350すなわち補正駆動力付与手段356は、補正開始不可判定手段358により駆動力の補正が不要であると判定された場合は登坂発進アシスト制御は行わないが、アクセル開度θA がたとえば10°程度の勾配に対応する20%程度の判断基準値θA1を越えたと判定された場合は登坂発進アシスト制御を開始する。また、上記坂路発進アシスト制御手段350すなわち補正駆動力付与手段356は、登坂発進アシスト制御中において上記補正中止判定手段360によりアクセル開度θA が予め設定された判断基準値θA2を越えたと判定された場合はアクセルペダル122の加速操作に基づく駆動力が高められるので、発進アシスト制御を中止或いは終了させる。
車速Vが1〜3km/h程度に予め設定された判断基準車速V1 以上であるか否かを判定する車速判定手段362と、ブレーキペダル124の非操作が所定時間T1 以上継続されているか否かを判定するブレーキ非操作継続判定手段364とが設けられている。前記坂路発進アシスト制御手段350すなわち補正駆動力付与手段356は、車速判定手段362により車速Vが予め設定された判断基準車速V1 以上ではない(判断基準車速V1 よりも低い)と判定されるか、或いはブレーキ非操作継続判定手段364によりブレーキペダル124が所定時間T1 以上連続操作されていないと判定された場合には上記補正駆動力dFを車両の駆動力に付与するが、車速Vが予め設定された判断基準車速V1 以上であると判定されるか、或いはブレーキペダル124の非操作が所定時間T1 以上継続されている場合には上記補正駆動力dFを車両の駆動力に付与する登坂発進アシスト制御は行わない。すなわち、上記坂路発進アシスト制御手段350すなわち補正駆動力付与手段356による登坂発進アシスト制御は、車両の停車中或いは車速Vが極めて低い判断基準車速V1 よりも低い場合、ブレーキオン操作がされているか或いはオフ操作がされていても所定時間T1 以上連続していない場合に行われる。
原動機駆動制御手段366は、補正駆動力付与手段356により補正駆動力dFが加算された目標駆動力FT2(=FT1+dF)が得られるように車両の原動機の出力を制御する。たとえば、前輪系の原動機であるエンジン14および/またはMG16から目標駆動力FT1を出力させ、後輪系の原動機であるRMG70から登坂発進のための補正駆動力dFを出力させることにより、アクセルペダル122の操作前では専ら補正駆動力dFにより車両の後退を1〜3km/h程度の僅かな速度にとどめ、アクセルペダル122の操作により登坂発進が開始された場合は4輪駆動状態として車両の総駆動力を目標駆動力FT2とする。
図29および図30は、本実施例のハイブリッド制御装置104の制御作動の要部を説明するフローチャートであって、図29は駆動力制御ルーチンを、図30は登坂発進補正駆動力算出ルーチンをそれぞれ示している。
図29において、SE1では、図示しないセンサの出力信号から車速V、アクセルペダル122の操作量であるアクセル開度θA 、前後加速度Gx などが読み込まれる。次いで、前記目標出力決定手段348に対応するSE2では、たとえば図25に示す予め記憶された関係から実際のアクセルペダル122の操作量(アクセル開度)θA と車速Vとに基づいて、運転者の要求駆動力である目標駆動力FT1が決定される。続いて、前記坂路発進アシスト制御手段350に対応するSE3およびSE4では、車両の発進操作に先立ち且つアクセルペダル122の操作により車両が所定速度に到達するまで、道路勾配に対応した大きさの駆動力であって、登坂発進時の車両の後退速度すなわちずり落ち速度が零より大きな所定車速以下たとえば1〜3km/h程度の微速とする大きさの駆動力が車両に付与されるようにする。
図30は、上記SE3の作動を詳しく説明する登坂発進補正駆動力を算出するルーチンを示している。図30において、前記補正開始不可判定手段358に対応するSE31では、アクセル開度θA がたとえば図28に示すような予め設定された関係θA1=f(Gxstp、W)から実際の路面勾配Gxstpおよび車重Wに基づいて求められた判断基準値θA1を越えたか否かに基づいて駆動力の坂路発進アシスト補正が不要であるか否かが判断される。このSE31の判断が肯定された場合は、アクセルペダル122が発進のためにたとえば20%以上となるように比較的大きく操作された状態であるので、SE32において、算出される補正駆動力dFを零とするために路面勾配に対応する停車時前後Gセンサ値Gxstpの内容が強制的に「0」に設定されることにより、実質的に補正駆動力の算出が開始されないようにする。
しかし、上記SE31の判断が否定される場合は、アクセルペダル122が未だ発進操作されない状態であるので、前記路面勾配検出手段352に対応するSE33、SE34、SE35が実行される。SE33では車両が停車中であるか否かがたとえば車速Vに基づいて判断され、SE34ではブレーキペダル124が操作されているか否かがたとえば図示しないブレーキスイッチからの出力信号に基づいて判断される。SE33およびSE34の判断が共に肯定された場合は、SE35において、そのときの前後Gセンサの出力値が路面勾配を表す重力値Gxstpとして記憶される。
次いで、前記補正中止判定手段360に対応するSE36において、アクセルペダル122の操作による発進時の駆動力増加により登坂発進のための補正が不要となったか否かを判断するために、アクセル開度θA が予め設定された判断基準値θA2を越えたか否かが判断される。このSE36の判断が肯定される場合は、SE37において算出される補正駆動力dFを零とするために路面勾配に対応する停車時前後Gセンサ値Gxstpの内容が優先的に「0」に設定されることにより、実質的に補正駆動力の算出が開始されないようにする。
しかし、上記SE36の判断が否定される場合は、前記仮補正駆動力決定手段354に対応するSE38において、たとえば図26に示す予め記憶された関係から実際の勾配に対応する停車時前後加速度Gxstpに基づいて登坂発進時の後退を抑制するために付加すべき仮補正駆動力dFK が決定される。次いで、前記補正駆動力発生手段355に対応するSE39において、上記仮補正駆動力dFK に基づき、たとえば図27に示すように、補正駆動力付与開始直後にはたとえば0.2秒程度の立ち上がり期間(t0 〜t1 )で相対的に速やかに増加して仮補正駆動力dFK に到達するが、補正駆動力付与終了時にはたとえば1乃至2秒程度の立ち下がり期間(t2 〜t3 )でその仮補正駆動力dFK から相対的に緩やかに減少する補正駆動力dFが発生させられる。
前記SE33の判断が否定される場合は、前記車速判定手段362に対応するSE40において、実際の車速Vが1〜3km/h程度に予め設定された判断基準車速V1 以上となったか否かが判断される。このSE40の判断が否定される場合は、車両が未だ登坂発進により車速が出ない状態であるので、登坂発進のための補正駆動力を付与するための制御を継続させるためにSE36以下が実行されるが、そのSE40の判断が肯定される場合は、登坂発進時に車両がすでに前進開始させられた状態であって登坂発進のための補正駆動力を付与する必要がなくなった状態であるので、その補正駆動力を付与する制御を実質的に終了させるために前記SE32以下が実行される。
また、前記SE34の判断が否定される場合は、前記ブレーキ非操作継続判定手段364に対応するSE41において、ブレーキペダル124がたとえば1秒程度に設定された所定時間T1 以上連続操作されていないか否かが判断される。このSE41の判断が否定される場合は、運転者の前進意図が存在する可能性がある状態であるので、登坂発進のための補正駆動力を付与するための制御を継続させるためにSE36以下が実行されるが、そのSE41の判断が肯定される場合は、運転者の前進意図が存在しないと考えられ、登坂路の車両のずり下がりを従来通りにした方がよい状態であるので、その補正駆動力を付与する制御を実質的に終了させるために前記SE32以下が実行される。
次いで、図29に戻って、前記補正駆動力付与手段356に対応するSE4では、上記SE39において算出された補正駆動力dFを車両の駆動力に付与するために、前記SE2において求められた目標駆動力FT1に加算されることにより補正後の最終的な目標駆動力FT2が算出される。そして、前記原動機駆動制御手段366に対応するSE5において、SE39において算出された補正駆動力dFが加算された目標駆動力FT2(=FT1+dF)が得られるように車両の原動機の出力が制御する。たとえば、前輪系の原動機であるエンジン14および/またはMG16から目標駆動力FT1を出力させ、後輪系の原動機であるRMG70から登坂発進のための補正駆動力dFを出力させることにより、車両の総駆動力が目標駆動力FT2とされる。
なお、上記SE4では、SE31(補正開始不可判定手段358)により駆動力の補正が不要であると判定された場合、登坂発進アシスト制御中においてSE36(上記補正中止判定手段360)によりアクセル開度θA が予め設定された判断基準値θA2を越えたと判定された場合、SE40(車速判定手段362)により車速Vが予め設定された判断基準車速V1 以上ではない(判断基準車速V1 よりも低い)と判定される場合、或いはSE41(ブレーキ非操作継続判定手段364)によりブレーキペダル124が所定時間T1 以上連続して操作されていないと判定された場合には、停車時前後加速度Gxstpが零に設定され且つそれから求められる補正駆動力dFも零とされるので、実質的に補正駆動力dFを車両の駆動力に付与する登坂発進アシスト制御が行われない。
上述のように、本実施例の車両の駆動力制御において、坂路発進アシスト制御手段350によれば、道路勾配を表す停車時前後加速度Gxstpに対応して車両の駆動輪に駆動力を付与する車両の駆動制御を行う場合に、車両の登坂発進時において後退車速が零より大きい所定車速以下となるように車両の駆動力FT2(=FT1+dF)が設定されることから、車両の坂路発進に際してはアクセルペダル122の踏込前では所定車速以下で僅かに後退させられるので、車両のずり下がりが抑制されるとともに運転者が道路勾配を正確に知ることができる。このため、運転者は車両の発進に際して坂路勾配に応じて踏込を行うことができるようになる。すなわち、重力に基づく車両後退方向の付勢力と摩擦などの固定クリープ力との差である従来の車両の後退力FR は、図31に示すように路面傾斜角すなわち停車時前後加速度Gxstpが大きくなるほど大きくなる性質があるが、前述のように仮補正駆動力dFK が図26に示す関係から停車時前後加速度Gxstpが大きくなるほど大きくなるように決定されて前進方向の車両駆動力に付与されていることから、上記重力に基づく車両後退方向の付勢力と目標駆動力FT2(車両停止中では仮補正駆動力dFK となる)との差である実際の後退力FR ' は上記従来の車両の後退力FR よりも小さくされ、且つ略一定とされている。たとえば、停車時前後加速度Gxstpが順次大きくなるGa 、Gb 、Gc において、従来の後退力はFRa、FRb、FRcであったのに対し、本実施例では仮補正駆動力dFK 分だけ小さなFRa' 、FRb' 、FRc' とされており、それらFRa' 、FRb' 、FRc' は相互に略同等の値とされているのである。
また、本実施例によれば、道路勾配を表す停車時前後加速度Gxstpに対応して車両の駆動輪に駆動力を付与する車両の駆動制御を行う場合に、登坂発進に際して、ブレーキ非操作継続判定手段364により車両の停車中にブレーキペダル124の非操作継続時間が1秒程度の所定のT1 時間よりも長いと判定された場合には、道路勾配に対応した駆動力dFの付与が中止されることから、運転者の前進意図のない状態では車両のずり下がりが許容されるので、運転者に道路勾配の程度を知らせることができる。
また、本実施例の補正駆動力付与手段356によれば、車両の登坂発進時に道路勾配を表す停車時前後加速度Gxstpに対応して駆動輪に駆動力を付与する車両の駆動制御を行う場合に、道路勾配に対応した駆動力dFの付与を実行開始する時には速やかに駆動力を上昇させ、道路勾配に対応した駆動力dFの付与の中止或いは終了時には緩やかに駆動力を減少させられることから、駆動力dFの付与の実行を開始する時には登坂路発進時でのずり下がりの抑制が速やかに行われるとともに、駆動力dFの付与の中止或いは終了時には違和感なく駆動力の付与が中止される。
また、本実施例によれば、前輪66、68および後輪80、82の一方を第1原動機たとえばエンジン14およびMG16で駆動可能とし、他方を第2原動機たとえばMG70により駆動可能とした4輪駆動車において、その4輪駆動車の制御装置が、運転者の出力操作手段の操作程度たとえばアクセル開度θA と車速Vとに基づき目標駆動力FT1が求められ(目標出力決定手段348)、その目標駆動力FT1に基づいて前輪側および後輪側から出力すべき駆動力FT2が、車両発進時において道路勾配を表す停車時前後加速度Gxstpに基づいて補正された値となるように前輪66、68および後輪80、82の駆動力が制御される(補正駆動力発生手段355、補正駆動力付与手段356)ので、運転者の要求に合った目標駆動力が達成されると同時に、登坂発進走行時にはその勾配に合った前後輪の駆動力配分とされる。
また、本実施例によれば、前記路面道路勾配を表す停車時前後加速度Gxstpに対応して車両の駆動輪に駆動力を付与する制御すなわち登坂アシスト制御を行う車両の駆動制御において、仮補正駆動力決定手段354により所定の道路勾配の範囲内すなわちG1 乃至G2 の範囲内において後退車速が所定車速以下となるように道路勾配に対応して車両の駆動力が設定されることから、道路勾配が所定の道路勾配を越える場合には、後退車速が所定車速以下となるように設定される車両の駆動力がそれ以上増加させられなくなるので、運転者が道路勾配を一層正確に知ることができる。
また、本実施例によれば、前記仮補正駆動力決定手段354、補正駆動力発生手段355、補正駆動力付与手段356により、路面道路勾配を表す停車時前後加速度Gxstpに対応して車両の駆動輪に駆動力を付与するに際して、車両の登坂発進時において後退車速が零より大きい所定車速以下となるように車両の駆動力FT2(=FT1+dF)が設定される場合に、その所定車速は数キロメータたとえば1乃至3km/hの車速とされるので、登坂路のずり下がりが好適な値に抑制される。
また、本実施例によれば、補正中止判定手段360により、前記運転者の要求する要求駆動力FT1すなわちその要求駆動力FT1に対応するアクセル開度θA が零でない所定値θA2以上となったと判定された場合には、道路勾配に対応した駆動力dFの付与が中止されるものであることから、要求駆動力FT1すなわちその要求駆動力FT1に対応するアクセル開度θA が零から所定値θA2までの範囲内であるときには、道路勾配が大きくなるのに対応して大きくなる駆動力が付与され、車両の後退(ずり落ち)が好適に防止される。
図32は、ハイブリッド制御装置104による車両の駆動力制御の他の制御機能の要部を説明する機能ブロック線図である。図32において、目標駆動力算出手段380は、たとえば図33に示す予め記憶された関係から実際の運転者による出力操作手段の操作程度たとえばアクセルペダル122の操作量(アクセル開度)θA と車速Vとに基づいて目標駆動力すなわち目標駆動トルクTT を決定する。上記図33に示す関係は、運転者の要求駆動力或いは要求加速力を実現するために予め実験的に求められたものである。後輪分配比低減係数算出手段382は、たとえば図34に示す予め記憶された関係から上記目標駆動力算出手段380により求められた目標駆動トルクTT に基づいて後輪分配比低減係数Kcreep を算出する。この図34に示す関係は、目標駆動力が小さい場合にはRMG70の作動を可及的に少なくする図35の特性を得るために予め実験的に求められたものである。理想後輪分配比算出手段384は、たとえば前記図12のSC4にて用いられている関係式から荷重配分に基づく前後輪の理想駆動力配分を実現するための理想後輪分配比Ktro を算出する。車両発進判定手段386は、車両が発進状態であるか否かをアクセル開度θA および車速などに基づいて判定する。後輪分配比算出手段388は、車両発進判定手段386により車両の発進状態が判定されると、上記後輪分配比低減係数算出手段382により求められた後輪分配比低減係数Kcreep と上記理想後輪分配比算出手段384により求められた理想後輪分配比Ktro とを乗算することにより、後輪分配比Ktrを算出する。前輪駆動力算出手段390は、上記目標駆動トルクTT および後輪分配比Ktrから前輪駆動力(前輪駆動トルク)TF (=TT ×(1−Ktr))を算出し、後輪駆動力算出手段392は、上記目標駆動トルクTT および後輪分配比Ktrから後輪駆動力(後輪駆動トルク)TR (=TT ×Ktr)を算出する。原動機駆動制御手段394は、上記前輪駆動力算出手段390により算出された前輪駆動力(前輪駆動トルク)TF が得られるようにその前輪66、68を駆動するエンジン14およびMG16を制御するとともに、上記後輪駆動力算出手段392により算出された後輪駆動力(後輪駆動トルク)TR が得られるようにその後輪80、82を駆動するRMG70を制御して4輪駆動走行を行う。
図35は、上記目標(要求)駆動力TT 、前輪駆動力TF 、後輪駆動力(後輪駆動トルク)TR との関係を示している。後輪分配比低減係数Kcreep を求めるための図34に示す関係では、目標駆動力TT が所定値F1 に到達するまでは後輪分配比低減係数Kcreep が零であるとその所定値F1 からそれよりも大きい所定値F2 までの間は目標駆動力TT が増加するにともなって後輪分配比低減係数Kcreep が比例的に増加し、所定値F2 を越えると後輪分配比低減係数Kcreep が飽和して増加しないように設定されている。この所定値F2 は、凍結路、圧雪路などの低摩擦係数(μ)路において前輪66、68や後輪80、82がスリップしない駆動力の上限値(最大値)に基づいてそれに対応するように決定されている。したがって、目標駆動力TT が所定値F2 を越えると理想的な配分比で前輪66、68や後輪80、82から駆動力が出力され、その所定値F2 以下からクリープまでにおいては前後トルク配分比を前輪側に多く、後輪側に少なくされる。図35は、理想後輪配分比Ktro が0.5であるときの特性を示している。
図36は、図32の実施例におけるハイブリッド制御装置104の駆動力制御作動を説明するフローチャートである。図36において、SF1では、アクセル開度θA 、車速Vなどの入力信号が読み込まれる。次いで、前記目標駆動力算出手段380に対応するSF2では、たとえば図33に示す予め記憶された関係から実際のアクセル開度θA と車速Vとに基づいて運転者の要求駆動力に対応する目標駆動力すなわち目標駆動トルクTT が決定される。次に、前記理想後輪分配比算出手段384に対応するSF3において、たとえば前記図12のSC4にて用いられている関係式から荷重配分に基づく前後輪の理想駆動力配分を実現するための理想後輪分配比Ktro が算出される。そして、前記車両発進判定手段386に対応するSF4において車両の発進状態であるか否かが判断される。このSF4の判断が否定される場合は、前輪66、68による2輪駆動とするためにSF5において後輪分配比低減係数Kcreep の内容が「0」に設定される。
しかし、上記SF4の判断が肯定される場合は、前輪66、68および後輪80、82による4輪駆動とするために、前記後輪分配比低減係数算出手段382に対応するSF6において、たとえば図34に示す予め記憶された関係からSF2により求められた目標駆動トルクTT に基づいて後輪分配比低減係数Kcreep が算出される。続いて、前記後輪分配比算出手段388に対応するSF7では、上記理想後輪分配比Ktro に後輪分配比低減係数Kcreep を掛けることによって後輪分配比Ktrが算出される。次いで、前記後輪駆動力算出手段392に対応するSF8では、上記目標駆動トルクTT および後輪分配比Ktrから後輪駆動力(後輪駆動トルク)TR (=TT ×Ktr)が算出される。次に、前記前輪駆動力算出手段390に対応するSF9では、上記目標駆動トルクTT および後輪分配比Ktrから前輪駆動力(前輪駆動トルク)TF (=TT ×(1−Ktr))が算出される。そして、原動機駆動制御手段394に対応するSF10では、上記SF9により算出された前輪駆動力(前輪駆動トルク)TF が得られるようにその前輪66、68を駆動するエンジン14およびMG16が制御されるとともに、上記SF8により算出された後輪駆動力(後輪駆動トルク)TR が得られるようにその後輪80、82を駆動するRMG70が制御されて4輪駆動走行が行われる。これにより、図35に示すように、目標駆動力が所定値F2 よりも小さい場合にはRMG70の作動が可及的に少なくされ、その消費電力、熱損失が小さくされてその使用域が拡大される。
上述のように、本実施例によれば、4輪駆動車の制御装置において、たとえば図13、図25、或いは図33に示す予め記憶された関係から実際の運転者による出力操作手段の操作程度すなわちアクセル開度θA と車速Vとに基づいて求められた目標駆動力FT (目標駆動トルクTT )を前輪側および後輪側から出力させるために、車両状態(図15および段落0107の後輪荷重分担比)、車両の運転状態(図11および段落0093の前後輪回転速度差、図23および段落0137、0138の前後Gセンサ)、或いは道路状態(図23および段落0138、0139の路面μおよび道路勾配)に基づいて前輪駆動力および後輪駆動力が制御されるので、運転者が要求している目標駆動力FT を得るために、車両状態、車両の運転状態、或いは道路状態が適切に反映された4輪駆動が可能となる。
また、本実施例によれば、第1原動機は、複数の動力源、さらに詳しくは複数の相互に形式が異なる動力源すなわちエンジン14およびMG16から成る複合原動機であるので、それを構成する動力源の1つであるエンジン14がその効率の高い領域で作動させられ得るので、燃費が高められる。
また、本実施例によれば、第2原動機は、1個または2個以上の電動機或いは発電機能を備えたモータジェネレータから構成され得、本実施例では1個のRMG70から成るものであり、4輪駆動車の後輪80、82を駆動するものであるので、前輪駆動状態と4輪駆動状態との間で切換られる。
また、本実施例の4輪駆動車の制御装置は、前後輪間の駆動力配分に対応する理想後輪分配比Ktro を目標駆動力TT に基づいて変更するものである。たとえば、目標駆動力TT が所定値F2 を下まわるとき目標駆動力TT に基づいて決定された後輪分配比低減係数Kcreep をその後輪分配比Ktro に乗算することにより変更するものであるので、駆動力が小さい場合には可及的にRMG70の作動が抑制され、その温度上昇が回避されるようになっている。
また、本実施例では、車両の発進状態であるときにおいて前後輪間の駆動力配分が目標駆動力TT に基づいて変更されるので、4輪駆動車の発進時における前後輪間の駆動力配分が目標駆動力TT に基づいて適切に変更される利点がある。
また、本実施例では、車両の発進状態であるときにおいて、前後輪の駆動力配分比に対応する理想後輪分配比Ktro が、目標駆動力TT が所定値F2 以上であるときよりも、所定値F2 未満のときは第1原動機および第2原動機のうちの熱的に不利な方の原動機により駆動される車輪(本実施例ではRMG70により駆動される後輪80、82)の分配比を小さくするように変更されるものであることから、第1原動機および第2原動機のうちの熱的に不利な方の熱的負荷が軽減されるので、4輪駆動の継続が一層可能となる。
また、本実施例では、車両の発進状態であるときに、前後輪の駆動力配分比が、目標駆動力TT が所定値F2 以上であるときよりも、所定値F2 未満のときは第2原動機により駆動される車輪側である後輪分配比Ktrを小さくするように変更されることから、RMG70から出力される駆動力が小さくされるので、RMG70の温度上昇が抑制され、その使用範囲が拡大される。
また、本実施例では、駆動力配分比に対応する目標後輪分配比Ktro を変更するための所定値F2 は、所定の低摩擦係数路面で駆動輪がスリップに至らない最大駆動力から決定されたものであることから、駆動輪がスリップに至らない所定値F2 以下の目標駆動力範囲内において駆動力配分比に対応する目標後輪分配比Ktro が変更されて第2原動機に対応するRMG70の出力が小さくされ、その過熱が好適に防止される。
また、本実施例では、第2原動機作動制御手段154において、車両の運転状態が発進状態(車両発進判定手段138:図9のSA2)、加速状態(加速操作判定手段146:図9のSA6、SA7)、低摩擦係数路面走行状態(低温状態判定手段162、車輪スリップ判定手段140:図9のSA1、SA3)のうちのいずれかの状態であると判定される場合は前輪および後輪を駆動する4輪駆動とされ、いずれでもない場合は前輪および後輪の一方を駆動する2輪駆動とされることから、発進状態、加速状態、低摩擦係数路面走行状態のうちのいずれかの状態である場合は自動的に前輪および後輪を駆動する4輪駆動とされるので、運転状態に応じて不要な4輪駆動が回避され、4輪駆動とするために作動させられる第2原動機の過熱が好適に防止される。
また、本実施例の4輪駆動車の制御装置は、車両の軽負荷走行中、すなわち減速走行中、ブレーキ操作のない非加速走行中である場合は4輪駆動とする(図9のSA8)ものであるので、軽負荷走行時に自動的に4輪駆動に切り換えられる。
また、本実施例の第1原動機および第2原動機は回生制御可能な動力源すなわちMG16、RMG70を含むものであり、その第1原動機はエンジン14を含むものであるので、エンジン14が効率のよい領域で作動させられるように電動機として機能するMG16或いはRMG70から駆動力が発生させられ得る。
また、本実施例では、車両の発進時には、前記第1原動機または第2原動機に含まれる電動機のみ或いはエネルギ回生可能な電動機として機能するMG16或いはRMG70のみにより車輪が駆動される場合があるものである(図5、図9のSA2)ことから、エンジン14が非作動状態で発進させられるので、車両の燃費が改善される。
また、本実施例では、車両の制動時または惰行走行時は、電動機および発電機として機能するMG16或いはRMG70を用いた回生制御を行うものであるので、エネルギ回生率が向上して車両の燃費が改善される。
また、本実施例では、所定以上の負荷時に第1原動機はエンジン14のみにより車輪を駆動するか、エンジン14およびエネルギ回生可能な動力源或いは電動機として機能するMG16により車輪を駆動するものであるので、4輪駆動車において十分な駆動力が確保される。
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はその他の態様においても適用される。
たとえば、前述の実施例の車両は、前輪66、68をエンジン14およびMG16を備えた主駆動装置10が駆動し、後輪80、82をRMG70を備えた副駆動装置12が駆動する前後輪駆動(4輪駆動)形式であったが、逆に前輪66、68をRMG70を備えた副駆動装置12が駆動し、後輪80、82をエンジン14およびMG16を備えた主駆動装置10が駆動してもよい。またその原動機はエンジン、電動機、および油圧モータなどの少なくとも1つから構成されたものであってもよい。
また、前述の実施例では、複数種類の制御例が説明されていたが、それらの制御例は所定の車両において相互に適宜組み合わせて実施され得るものである。
また、前述の実施例では、前輪66、68および後輪80、82はそれぞれ別の原動機により駆動されていたが、共通の原動機により駆動される4輪駆動車であってもよい。この場合、前輪および後輪は共通の原動機に作動的に連結されるとともに、その原動機から出力された駆動力の前輪および後輪への駆動力配分比は、駆動力配分クラッチによって変化させられるものである。このような4輪駆動車の制御装置においても、前述と同様に、運転者の出力操作手段の操作程度(アクセル開度θA )と車速Vとに基づき目標駆動力TT を求め、その目標駆動力TT を基に前輪側および後輪側から出力すべき駆動力を車両状態に基づき制御することができる。この場合でも、運転者が要求している駆動力を得るために、車両状態が適切に反映された4輪駆動が可能となる。
また、前述の実施例では、補正駆動力発生手段355により登坂発進のための補正駆動力dFが予め求められ、目標駆動力FT1に対応する車両の駆動力に補正駆動力dFを付与するために補正駆動力付与手段356によりその補正駆動力dFが目標駆動力FT1に加算されていたが、登坂発進のための補正係数(1より大)が予め求められ、目標駆動力F1 に対応する車両の駆動力にその補正係数を付与するためにその補正係数が目標駆動力F1 に乗算されるようにしてもよい。
また、前述の実施例の原動機駆動力制御手段366では、上記補正駆動力dFをRMG70により駆動される後輪80、82から出力させていたが、エンジン14或いはMG16に駆動される前輪66、68から出力させてもよいし、4輪駆動状態であるときには、そのときの駆動力配分比を変化させないようにRMG70により駆動される後輪80、82およびエンジン14或いはMG16に駆動される前輪66、68から出力させてもよい。
また、前述の実施例の車両は、その動力伝達経路に無段変速機20を備えたものであったが、遊星歯車式或いは常時噛み合い型平行2軸式の有段変速機を備えたものであってもよい。
また、前述の実施例では、ハイブリッド制御装置104により図29、図30に示す車両の駆動力制御が行われていたが、他の制御装置により実行されても差し支えない。
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、これはあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更,改良を加えた態様で実施することができる。