以下、本発明の一実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施例の制御装置を有する車両の動力伝達装置であって、前置エンジン前輪駆動(FF)を基本とする前後輪駆動車両すなわち4輪駆動車両を示している。図において、主原動機として機能するエンジン10は、ガソリンエンジン、ディーゼルエンジンなどの内燃機関であって、その出力トルクは、トルクコンバータ12、変速機14、前輪用差動歯車装置16、車軸18を介して1対の前輪20へ伝達されるようになっている。そして、専ら発電のためのジェネレータ24が上記エンジン10に設けられている。上記エンジン10から前輪20までが前輪駆動系に対応している。このような形式の車両は、プロペラシャフトを用いない4輪駆動車両である。
また、副原動機として機能する電気モータ/ジェネレータ(以下、MGと称す)28の出力トルクは、後輪用差動歯車装置30、および車軸32を介して1対の後輪34へ伝達されるようになっている。上記MG28から後輪34までが後輪駆動系に対応している。このMG28によって後輪34が駆動されるときに4輪駆動状態となる。なお、上記MG28は、車両の制動エネルギによって回転駆動されることにより発電し、発電電力(回生エネルギ)を出力する発電機(ジェネレータ)としての機能も兼ね備えている。好適には、4輪駆動時においてMG28に電力を直接的に供給する場合がある前記ジェネレータ24はそのMG28の容量よりも若干大きな容量の発電能力を備えている。
上記変速機14は、たとえば常時噛み合い型平行2軸式の手動変速機、複数組の遊星歯車装置の要素が油圧式摩擦係合装置によって選択的に連結されたり回転停止させられることによって複数のギヤ段が達成される自動変速機、有効径が可変の1対のプーリに伝動ベルトが巻き掛けられたベルト式無段変速機などにより構成される。
エンジンおよび変速用電子制御装置38は、予め記憶された関係から、実際のエンジン回転速度NE、吸入空気量Q/Nまたは吸気管圧力に基づいて燃料噴射時間を制御する燃料噴射制御、予め記憶された関係から、実際のエンジン回転速度NE、吸入空気量Q/Nに基づいて基本点火時期を制御する点火時期制御、エンジン10のアイドル時における目標アイドル回転速度を決定し、実際のアイドル回転がその目標アイドル回転速度となるようにアイドル制御弁を制御するアイドル回転制御、変速機14がたとえば自動変速機である場合には予め記憶された変速線図から実際の車速Vおよびアクセル開度θ(アクセルペダル36の踏込量Acc或いはスロットル弁開度θTH)に基づいて変速ギヤ段を決定し、その変速ギヤ段に切り換える自動変速制御などを実行する。また、通常は、スロットル弁41の開度θTHがアクセルペダル36の踏込量Accに対応する大きさとなるようにスロットルアクチュエータ43を制御する。
トラクション制御用電子制御装置40は、1対の前輪20および1対の後輪34にそれぞれ設けられた車輪速度センサ42FR、42FL、42RR、42RLからの信号に基づいて、車輪車速(車輪回転速度に基づいて換算される車体速度)VFR、VFL、VRR、VRL、前輪車速VF〔=(VFR+VFL)/2〕、後輪車速VR〔=(VRR+VRL)/2〕、および車体速度V(たとえば車輪車速VFR、VFL、VRR、VRLのうちの最も遅い速度が車体速度Vすなわち車速Vとして推定される)を算出する一方で、たとえばエンジン10に駆動されない後輪34から得られる後輪車速VRと主駆動輪である前輪20から得られる前輪車速VFとの差であるスリップ速度ΔVが予め設定された制御開始スリップ速度ΔV2を越えることにより主駆動輪(前輪20)のスリップ判定が行われると発進時における車両の牽引力を高くするためのトラクション制御を実行し、そのスリップ速度ΔVと前輪車速VFとの割合であるスリップ率RS〔=(ΔV/VF)×100%〕が予め設定された目標スリップ率範囲RS *内に入るように、スロットル弁41を駆動するスロットルアクチュエータ43或いは図示しない燃料噴射弁を用いてエンジン10の出力を抑制すると同時に前輪ブレーキ44を用いて前輪20の回転を制御して、前輪20の駆動力を抑制する。路面に対する車輪の摩擦係数μはたとえば図2に示すように変化する性質があるので、上記目標スリップ率範囲RS *はその車輪の摩擦係数μが最大となる領域に設定されている。
モータ制御用電子制御装置46は、たとえば図3の2重線の区間に示すように、車両制動時において、MG28から出力される回生電力をキャパシタ48に蓄えさせる回生制御と、たとえば図3の太線の区間に示すように、通常の路面やドライ路などの高摩擦係数路面(高μ路)での発進、加速走行時において、予め記憶された関係からたとえば実際のアクセル開度θおよびアクセル開度変化率dθ/dtに基づいて車両の全駆動トルクのうちのたとえば20乃至30%程度の所定の割合の基本アシストトルクを決定し、その基本アシストトルクが得られるようにキャパシタ48に予め蓄えられた電力をインバータ50を通してMG28へ供給することにより、MG28の駆動力をエンジン10の駆動力に加えて車両の加速を助勢(アシスト)して燃費を高める高μ路アシスト制御や、凍結路、圧雪路などの低摩擦係数路面(低μ路)での発進走行時において、車両の発進能力を高めるためにMG28の駆動と同時に変速機14をシフトダウンさせる低μ路アシスト制御などを実行する。上記MG28の出力電流および駆動電流、ジェネレータ24の出力電流、キャパシタ48の蓄電電流および出力電流は、上記モータ制御用電子制御装置46により制御されるインバータ50により電流制御されるようになっている。
路面勾配センサ52は、車速略零時において用いられるGセンサ或いは傾斜計から構成されるものであり、路面傾斜角θROAD或いは勾配(傾斜)α(=tan θROAD)を表す信号を上記モータ制御用電子制御装置46に供給する。アクセル開度センサ54は、アクセルペダル36の操作量からアクセル開度θを検出し、そのアクセル開度θを表す信号をエンジンおよび変速用電子制御装置38へ供給する。パワーモード選択スイッチ56は、変速機14の変速比が低くなるように変速線を変更することにより加速性を重視した走行とするモードを選択する場合に操作されるものであり、パワーモード選択信号をモータ制御用電子制御装置46に供給する。上記エンジンおよび変速用電子制御装置38、トラクション制御用電子制御装置40、モータ制御用電子制御装置46は、CPU、ROM、RAM、入出力インターフェースなどを備えた所謂マイクロコンピュータであって、RAMの一時記憶機能を利用しつつROMに予め記憶されたプログラムに従って入力信号を処理し、制御信号を出力するものであり、それらの入力信号、記憶信号、演算値は必要に応じて通信回線を介して相互に授受されるようになっている。
図4は、主として上記モータ制御用電子制御装置46の制御機能の要部を説明する機能ブロック線図である。図4において、高μ路判定手段60は、車両の走行路の路面摩擦係数μが高いか否かすなわちドライ路(乾燥路)であるか否かすなわち凍結路、圧雪路のように路面摩擦係数μの低い低μ路でないか否かを加速時或いは制動時の主駆動輪である前輪20のスリップ状態に基づいて判定する。たとえば、高μ路判定は、前記スリップ速度ΔVが予め設定された制御開始スリップ速度ΔV2以下であることに基づいて行われる。車両走行状態判定手段62は、上記高μ路判定手段60により路面の摩擦係数が高い高μ路すなわちドライ路であると判定された場合において、車両が発進状態であるか或いは車両が走行状態であるかをたとえば車速Vに基づいて判定する。車速Vが、たとえば数km/h程度に設定された判断車速VX1以下であれば発進状態であり、その判断車速VX1を越える場合は走行状態であると判断される。要求出力量判定手段64は、運転者による要求出力量が小さいか或いは大きいかをたとえば要求出力が小さい、中程度、大きいの3段階のいずれに該当するか否かを、たとえば実際のスロットル開度θおよびその変化率dθ/dtに基づいて判定する。上記要求出力量判定手段64により要求出力が小さいと判定された場合には、蓄電量判定手段66により、エネルギ蓄積手段に対応するキャパシタ48においてその蓄積エネルギすなわちアシストトルクを発生させるための充電残量SOCが、MG28によるアシスト作動を実行するために必要な量を判定するように予め設定された判定値SOC0を越えているか否かが判断される。
上記MG28のアシスト作動には、車両を加速させる加速トルクを発生させるために用いられる加速トルク用蓄電量SOC1と、アシスト終了ショックを防止するために加速後において徐々にMG28のアシストトルクを減少させる徐減トルクを発生させるために用いられる徐減トルク用蓄電量SOC2とが必要であるため、キャパシタ48には、図5に示すように、それらの加速トルク用蓄電量SOC1と徐減トルク用蓄電量SOC2とが蓄電されるようになっている。前記判定値SOC0は、上記加速トルク用蓄電量SOC1と徐減トルク用蓄電量SOC2の合計値(SOC1+SOC2)と略同じ値またはそれよりも所定値大きい値に設定される。
上記蓄電量判定手段66により充電残量SOCが判定値SOC0を越えていると判定された場合には、低燃費モードアシスト制御手段68において、低燃費を得るためのアシストトルクが出力されるようにインバ─タ50が制御され、キャパシタ48からMG28へ供給される電気エネルギが制御される。すなわち、低燃費モードアシスト制御手段68は、スロットル開度θおよびその変化率dθ/dtに基づいて要求出力に対応した必要駆動トルクの所定割合の基本アシストトルク或いは基本アシストエネルギを決定し、その基本アシストトルクがたとえば図6に示すようになるべく長い期間で一定出力トルクとして出力されるようにMG28から出力されるアシストトルクを決定する低燃費モードアシストトルク決定手段70と、たとえば図7に示すようなエンジン回転速度NEを表す軸およびエンジン出力トルクTEを表す軸から成る二次元座標内において、上記低燃費モードアシストトルク決定手段70により決定されたアシストトルクが出力されたときのエンジン10の運転点(□印)を算出し、エンジン10の運転点が現在位置(○印)からそのアシストトルク出力後の運転点(□印)へ変化したときに最良燃費曲線上に位置するように上記アシストトルクの大きさ或いは割合を補正するアシストトルク補正手段72とを備え、補正後のアシストトルクがMG28から出力されるようにキャパシタ48からそのMG28への出力エネルギの大きさ(電力:KW)をたとえば図8に示すように制御する。一般に、エンジン10は、その運転点が上記最良燃費曲線上に位置するように変速制御されている。なお、図6および図8において、tNはたとえば数秒程度の時間であり、その時間tNまでは加速トルクおよびそれを発生させるための電力を示し、時間tN以後は徐減トルクおよびそれを発生させるための電力を示している。また、図8の矢印は、運転者が要求する全加速出力であり、その加速出力と上記キャパシタ48からそのMG28への出力との差がエンジン10により負担される。
前記要求出力量判定手段64により要求出力が中程度と判定された場合には、蓄電量判定手段74により、前記蓄電量判定手段66と同様に、キャパシタ48の充電残量SOCが予め設定された判定値SOC0を越えているか否かが判断される。この蓄電量判定手段74によりキャパシタ48の充電残量SOCが予め設定された判定値SOC0を越えていると判断される場合は、加速モードアシスト制御手段78において、好適な発進加速性を得るためのアシストトルクが出力されるようにキャパシタ48からMG28へ供給される電気エネルギが制御される。すなわち、加速モードアシスト制御手段78は、スロットル開度θおよびその変化率dθ/dtに基づいて要求出力に対応した必要駆動トルクの所定割合の基本アシストトルク或いは基本アシストエネルギを決定し、その基本アシストエネルギがたとえば図9に示すようになるべく短期間で前記低燃費モード時よりも大きなアシストトルクとして出力されるようにMG28から出力されるアシストトルクを決定する加速モードアシストトルク決定手段80と、たとえば図7に示すようなエンジン回転速度NEを表す軸およびエンジン出力トルクTEを表す軸から成る二次元座標内において、上記加速モードアシストトルク決定手段80により決定されたアシストトルクが出力されたときのエンジン10の運転点(□印)を算出し、エンジン10の運転点が現在位置(○印)からそのアシストトルク出力後の運転点(□印)へ変化したときに上記最良燃費曲線上に位置するように上記アシストトルクの大きさ或いは割合を補正するアシストトルク補正手段82とを備え、補正後のアシストトルクTMがMG28から出力されるようにキャパシタ48からそのMG28への出力エネルギの大きさ(電力:KW)をたとえば図10に示すように一定値となるように制御する。なお、図9および図10において、tAはたとえば2秒程度の時間であり、その時間tAまでは加速トルクおよびそれを発生させるための電力を示し、時間tA以後は徐減トルクおよびそれを発生させるための電力を示している。
上記低燃費モードアシストトルク決定手段70および加速モードアシストトルク決定手段80では、要求出力量判定手段64により判定される運転者の要求出力量が小さい状態から大きくなると、比較的長いtN時間において一定のアシストトルクTMが出力される状態(図6および図8)から、それよりも短いtA時間内において上記一定のアシストトルクTMよりも大きいトルクで一定のエネルギが出力される状態(図9および図10)とされることから、それら低燃費モードアシストトルク決定手段70および加速モードアシストトルク決定手段80は、運転者の要求する出力が高くなる程、出力またはトルクが高くなるように且つ作動時間が短くなるように、MG28を作動させるものであるので、第1制御手段に対応している。
また、上記低燃費モードアシストトルク決定手段70および加速モードアシストトルク決定手段80では、スロットル開度θおよびその変化率dθ/dtに基づいて要求出力に対応した必要駆動トルクの所定割合の基本アシストトルク或いは基本アシストエネルギを決定し、その基本アシストトルク或いは基本アシストエネルギが図6或いは図9に示すパターンで出力されるようなアシストトルクを決定するものであるから、運転者の要求に基づいてエンジン10を作動させると同時にそのエンジン10に対して所定の出力割合でMG28を作動させるものであるので、アシスト制御手段に対応している。また、上記アシストトルク補正手段72およびアシストトルク補正手段82は、エンジン10の運転点が現在位置(○印)からアシストトルクが出力されたときのエンジン10の運転点(□印)へ変化したときに最良燃費曲線上に位置するようにアシストトルクの大きさ或いはアシストトルクの割合を補正することから、MG28の作動開始後のエンジン10のエネルギ消費状態に基づいてそのMG28の作動を修正するものであるので、第4制御手段に対応している。
エンジン出力制限手段84は、前記低燃費モードアシスト制御手段68によるアシスト制御期間、或いは前記加速モードアシスト制御手段78によるアシスト制御期間内において、予め設定された関係から要求出力量に基づいて決定される目標加速度GMと実際の加速度Gとを算出し、実際の加速度Gが目標加速度GMを越えないようにスロットル弁開度θTHを制御することにより、エンジン10の出力を抑制する。このエンジン出力制限手段84は、路面摩擦係数判定手段に対応する高μ路判定手段60により路面の摩擦係数μが高いと判定されている状態では、MG28の作動量すなわちアシストトルクが大きくなるのに応じてエンジン10の出力を制限する第3制御手段に対応している。
パワーモード選択判定手段86は、車両に設けられたパワーモード選択スイッチ56が操作されているか否かに基づいて、加速性を重視した走行モードであるパワーモードが選択されているか否かを判定する。エンジン出力制限禁止手段88は、上記パワーモード選択判定手段86によりパワーモードが選択されていると判定された場合には、上記エンジン出力制限手段84によるエンジン10の出力抑制を禁止することにより、車両の加速度或いは駆動力を一層高める。したがって、前記低燃費モードアシスト制御手段68、加速モードアシスト制御手段78、エンジン出力制限手段84、パワーモード選択判定手段86、エンジン出力制限禁止手段88は、その低燃費モードアシスト制御手段68によるアシスト制御期間、或いは前記加速モードアシスト制御手段78によるアシスト制御期間内において、運転者の出力要求が低く且つ運転者がパワーモード非選択時においてMG28をアシスト作動させるとともにエンジン10の出力を制限し、運転者の出力要求が高く且つ運転者がパワーモードを選択したときには、出力またはトルクが高くなるように且つ作動時間が短くなるようにMG28をアシスト作動させるとともにエンジン10の出力制限を緩和する第5制御手段に対応している。
前記蓄電量判定手段66或いは蓄電量判定手段74においてキャパシタ48の充電残量SOCが判定値SOC0を下まわっていると判定された場合には、蓄電不足時直行アシスト制御手段90は、運転者による加速操作すなわち出力要求増大操作時において、変速機14のシフトダウン或いはトルクコンバータ12のロックアップクラッチの解放などを行ってエンジン10の回転速度NEを積極的に所定幅上昇させた状態で、エンジン10により駆動されるジェネレータ24から出力された電力をMG28へ直接的に供給することにより、比較的大きなアシストトルクを直ちに発生させる。
パワーモード選択判定手段92は、前記蓄電量判定手段66或いは蓄電量判定手段74においてキャパシタ48の充電残量SOCが判定値SOC0を下まわっていると判定された場合には、加速性を重視した走行モードである前記パワーモードが選択されているか否かを判定する。アシスト遅延手段94は、上記パワーモード選択判定手段92によりパワーモードが選択されていると判定された場合は、前記蓄電不足時直行アシスト制御手段90によるアシスト作動を運転者による加速操作すなわち出力要求増大時から所定時間後まで遅らせる。上記パワーモード選択判定手段92およびアシスト遅延手段94は、エンジン10により駆動されるジェネレータ24(エネルギ発生手段)からMG28へエネルギを供給させる際に、パワーモード選択時には運転者の出力要求増大から所定時間後にMG28を作動させ、パワーモード非選択時には運転者の出力要求増大と同時にMG28を作動させるものであるので、第8制御手段に対応している。
前記要求出力量判定手段64において要求出力が大きいと判定された場合には、高加速モードアシスト制御手段96によるアシスト制御が実行される。この高加速モードアシスト制御手段96は、加速開始(アクセルオン)からの所定時間後においてエンジン10により駆動されるジェネレータ24から出力された電力をMG28へ直接的に供給する直行アシストを開始させた後、加速度がピークに到達する付近の時期からキャパシタ48に蓄電された蓄電エネルギに基づくアシストを開始させ且つそれをたとえば2乃至3秒程度の所定期間持続させ、図11の2点鎖線に示す加速度Gを得る。図11の2点鎖線は、直行アシストおよびキャパシタによるアシストが行われた場合を示している。図11の実線はエンジン10のみによる加速度の変化を示し、図11の破線は加速開始から直行アシストのみを適用した場合の上乗せ分を示し、1点鎖線は加速開始から所定時間後において直行アシストのみを適用した場合の上乗せ分を示している。加速操作と同時に直行アシストを開始した場合において、その加速操作が行われた直後の区間ではエンジン10の出力トルクはエンジン回転速度NEの上昇に消費されるので、車両の加速度Gはアシストトルクも寄与せずそれほど上昇しないが、エンジン回転速度NEがアクセル開度θに応じた所定値に飽和する値に近接するに従って車両の加速度Gが急速に上昇し、エンジン10の出力トルクに基づく加速度が飽和する近傍となると直行アシストトルクによる上乗せ分(破線)が顕著に表れた後、その上乗せ分が消滅する。直行アシストトルクを出力するMG28はエンジン10により駆動されるジェネレータ24から供給される電気エネルギにより駆動される。加速操作開始から所定時間後すなわちエンジンエネルギを抜かずエンジン10自身のトルクでエンジン回転速度NEを十分高めた後において直行アシストを開始した場合には、直行アシストが顕れる時期が遅れるので、車両の加速度Gのピークが高められる。つまり、エンジン10はジェネレータ24により所定のエネルギを消費されたにも拘わらず、さらにトータルエネルギは同じであるがMG28の低速ほど同じエネルギでもトルクが高い特性の効果によって車両の駆動力が向上し、加速Gが高められる。さらに、キャパシタ48に蓄電された電気エネルギによるアシストをそのピーク付近から加えることにより、2点鎖線に示すように、所定期間にわたって車両の加速度Gが高められ、加速の伸びが得られるのである。上記高加速モードアシスト制御手段96は、加速操作時において、エンジン10により駆動されるジェネレータ24からMG28へエネルギを供給させた後、所定時間経過後にはキャパシタ48により蓄積された電気エネルギをそのMG28へ供給させるので、第9制御手段に対応している。
加速不足判定手段98は、車両の加速不足状態を、たとえば予め設定された関係から実際の要求出力に基づいて車両の目標加速度GMを算出し、車速Vの変化率から求められる実際の車両の加速度Gがその目標加速度GMに到達しないことにより判定する。加速アシスト量補正手段100は、上記加速不足判定手段98により車両の加速不足が判定された場合には、高加速モードアシスト制御手段96に代えてたとえば加速モードアシスト制御78と同様のキャパシタ48によるアシストトルク制御を用い、上記目標加速度GMが達成されるようにキャパシタ48によるアシストトルクのアシスト量を増量補正する。また、加速不足時直行アシスト制御手段102は、上記加速アシスト量補正手段100により補正されたアシストトルクでは未だ加速不足である場合すなわち未だ目標加速度GMが達成されない場合には、上記キャパシタ48に基づくMG28のアシストトルク(増量補正後)に加えて、エンジン10により駆動されるジェネレータ24から出力された電力をMG28へ直接的に供給することによりアシストトルクを直ちに発生させる直行アシストを実行する。または、加速不足時直行アシスト制御手段102は、加速アシスト量補正手段100によりアシストトルクが補正されると同時に、直行アシストを実行する。本実施例では、前記低燃費モードアシスト制御手段68、加速モードアシスト制御手段78、上記高加速モードアシスト制御手段96、加速不足判定手段98、加速アシスト量補正手段100および加速不足時直行アシスト制御手段102は、車両の駆動力をそれほど必要としない場合にはキャパシタ48に蓄積された電気エネルギがMG28に供給されるとともにそのMG28が低出力で作動させられ、たとえば登坂路や車両重量が重く要求出力通りの加速が得られないなどのように車両の駆動力を必要とする場合には、キャパシタ(エネルギ蓄積手段)48に蓄積されたエネルギおよびエンジン10により駆動されるジェネレータ(エネルギ発生手段)24からのエネルギをMG28に供給するとともに、要求出力が低い場合すなわち低燃費モードアシスト制御が実行される場合などに比較して出力またはトルクが高くなるように且つ作動時間が短くなるようにそのMG28を作動させるものであるので、第6制御手段に対応している。
ここで、上記のような直行アシストでは、エンジン10の出力の一部がジェネレータ24によって消費されることにより前輪20の駆動力が低下させられると同時に、MG28からアシストトルクが出力されることに基づいて後輪34が駆動されるが、車両の発進時では、エンジン10からMG28へエネルギを供給したことによる前輪20の駆動トルク低下分よりもMG28の発進初期のトルク(MG28のトルク特性で低速時高トルクが得られる)のほうが大きいので、車両発進時ではキャパシタ48からのアシストと同様の助勢効果がある。図12は、エンジン10の出力トルクTEの特性であって破線は上記直行アシストが開始される前の特性を示し、実線は上記直行アシストにより低下させられた場合を示し、それら破線と実線との差が上記前輪20の駆動トルク低下分に対応している。図13は、MG28の出力トルクTMの特性を示し、回転速度NMの零付近が初期トルクを示している。
加速操作判定手段106は、車両の加速操作が行われたか否かをたとえばスロットル開度θの変化量および/または変化率dθ/dtに基づいて判定する。低μ路アシスト制御手段108は、スロットル開度θ或いはその変化率dθ/dtに基づいて要求出力に対応した必要駆動トルクの所定割合の基本アシストトルク或いは基本アシストエネルギを決定し、好適な発進加速性を得るためのアシストトルクが出力されるようにキャパシタ48からMG28へ供給される電気エネルギを制御する。この低μ路アシスト制御手段108では、好適には、前記低燃費モードアシスト制御68および加速モードアシスト制御70と同様に、要求出力量が低い場合には、アシストトルクが比較的長時間に一定値が出力されるようにキャパシタ48からMG28へ供給される電気エネルギが制御され、要求出力量が中程度以上となると上記アシストトルクが低要求出力時よりも短い時間且つ高いトルク値が出力されるようにキャパシタ48からMG28へ供給される電気エネルギが制御される。すなわち、運転者の出力要求が高くなるほど、より短時間且つ高い出力或いはトルクでMG28が作動させられる。
蓄電量判定手段110は、前記蓄電量判定手段66および74と同様に、キャパシタ48の充電残量SOCが予め設定された判定値SOC0を越えているか否かを判定する。蓄電不足時直行アシスト制御手段112は、上記蓄電量判定手段110によりキャパシタ48の充電残量SOCの不足と判定された場合、すなわち充電残量SOCが予め設定された判定値SOC0を下まわると判定された場合には、上記低μ路アシスト制御手段108によるキャパシタ48に基づくアシストトルクの出力に加えて、エンジン10により駆動されるジェネレータ24から出力された電力をMG28へ直接的に供給することによりアシストトルクを直ちに発生させる。さらに、変速比補正手段114は、車両の駆動力が増加するように変速機14の変速比を補正する。たとえば、変速比補正手段114は中車速或いは低車速では変速機14をシフトダウンさせるか或いはトルクコンバータ12のロックアップクラッチを解放させて前輪20の駆動力ダウンより以上の後輪34の駆動力を発生させて車両の加速度を増加させ、高車速では専ら変速機14をシフトダウンさせて車両の加速度を前記低μ路アシスト制御手段108によるアシストトルク程度に増加させる。本実施例では、上記蓄電不足時直行アシスト制御手段112および変速比補正手段114は、蓄電量判定手段(蓄積量判定手段)110によりキャパシタ48の蓄電残量SOCの量が不十分であると判定された場合には、エンジン10により駆動されるジェネレータ24からMG28へエネルギを供給させるとともに、駆動力が高くなる側へエンジン10側の変速機14の変速比を増大させるものであるので、第7制御手段に対応している。
スリップ判定手段118は、エンジン10により駆動される車輪(前輪20)のスリップが発生したか否かを、たとえば後輪車速VRと前輪車速VFとの差であるスリップ速度ΔVが所定値を越えたことに基づいて判定する。低μ路直行アシスト制御手段120は、上記スリップ判定手段118により車両のスリップの発生が判定された場合には、上記低μ路アシスト制御手段108によるキャパシタ48に基づくアシストトルクの出力に加えて、エンジン10により駆動されるジェネレータ24から出力された電力をMG28へ直接的に供給することによりアシストトルクを直ちに発生させる。低μ路エンジン出力制限手段122は、上記低μ路直行アシスト制御手段120による直行アシスト制御が行われると同時に、スロットル開度θ、燃料噴射量、点火時期、前輪ブレーキ44などの少なくとも1つを制御してエンジン10の前輪(駆動輪)20への出力を制限し、前輪20のスリップを抑制するとともに後輪34を駆動する。上記のような直行アシストでは、エンジン10の出力の一部がジェネレータ24によって消費されることにより前輪20の駆動力が低下させられると同時に、MG28からアシストトルクが出力されることに基づいて後輪34が駆動される。本実施例では、それに加えて、積極的にエンジン10の出力が制限されるので、一層前輪20のスリップ発生時の車両の駆動力が全体として高められるようになっている。上記低μ路直行アシスト制御手段120および低μ路エンジン出力制限手段122は、スリップ判定手段118により前輪20がスリップする程度に路面の摩擦係数が低いと判定された場合にはエンジン10の出力を低下させるとともにMG28を作動させる第2制御手段に対応している。
図14、図15、図16、図17、図18は、前記モータ制御用電子制御装置46の制御作動の要部を説明するフローチャートであって、図14は高μ路発進時の低中要求出力アシスト制御ルーチンを、図15は高μ路発進時の高要求出力アシスト制御ルーチンを、図16は蓄電不足時直行アシスト制御ルーチンを、図17は高μ路走行時のアシスト制御ルーチンを、図18は低μ路スリップ走行時アシスト制御ルーチンを示している。
図14において、前記高μ路判定手段60に対応するステップ(以下、ステップを省略する)SA1では、車両の走行路の路面摩擦係数μが高いか否かすなわちドライ路(乾燥路)であるか否かが加速時或いは制動時の主駆動輪である前輪20のスリップ状態に基づいて判定される。このSA1の判断が肯定された場合は、SA2において、車両が走行状態であるかがたとえば車速Vに基づいて判定される。このSA2の判断が否定された場合は、SA3において、実際の車速Vが予め設定された判断車速V0を下まわるか否かすなわち車両の発進状態かまたは低速走行状態否かが判断される。これらSA2およびSA3は前記車両走行状態判定手段62に対応している。
上記SA3の判断が肯定された場合は、前記要求出力量判定手段64に対応するSA4、SA5、SA6、SA7において運転者による実際の要求出力量が小さいか中程度であるか大きいかがスロットル開度θおよびその変化率dθ/dtに基づいて判断される。すなわち、SA4においてスロットル開度θが判断基準値θ1よりも小さいか否かが判断され、そのSA4の判断が否定された場合はSA5においてスロットル開度θが判断基準値θ1よりも大きい値に設定された判断基準値θ2よりも小さいか否かが判断される。また、SA4の判断が肯定された場合はSA6においてスロットル開度θの変化率dθ/dtが予め設定された判断基準値dθ1/dtよりも小さいか否かが判断され、そのSA6の判断が否定された場合は或いはSA5の判断が肯定された場合はSA7においてスロットル開度θの変化率dθ/dtが判断基準値dθ1/dtよりも大きい値に設定された判断基準値dθ2/dtよりも小さいか否かが判断される。
上記SA4およびSA6の判断が共に肯定された場合は、10モード或いは15モードのような市街地走行程度の要求出力が低い状態であるので、前記蓄電量判定手段66に対応するSA8において、キャパシタ48の充電残量SOCが予め設定された判断基準値SOC0を越えているか否かが判断される。このSA8の判断が肯定された場合は、前記低燃費モードアシスト制御手段68に対応するSA9において、小さな要求出力量に対応した発進加速を得るために、たとえば図19に示す低燃費モードアシスト制御ルーチンが実行される。この図19の低燃費モードアシスト制御ルーチンでは、前記低燃費モードアシストトルク決定手段70に対応するSA91において、図示しない予め記憶された関係から実際のスロットル開度θおよびその変化率dθ/dtに基づいて要求出力に対応した必要駆動トルクの所定割合たとえば20%程度の基本アシストトルクが算出され、その基本アシストトルクがたとえば図6に示すようになるべく長い期間で一定出力トルクとして出力されるようにMG28から出力される出力パターンのアシストトルクが決定される。次いで前記アシストトルク補正手段72に対応するSA92において、たとえば図7に示す二次元座標内において、上記SA91において決定されたアシストトルクが出力されたときのエンジン10の運転点(□印)を算出し、エンジン10の運転点が現在位置(○印)からそのアシストトルク出力後の運転点(□印)へ変化したときに最良燃費曲線上に位置するように上記アシストトルクの大きさ(一定値)が補正される。
続くSA10では、上記図6の時間tNまでに示すような一定トルクがなるべく長期間出力されるようにキャパシタ48に蓄電された電気エネルギがMG28に供給される。次いで、SA11では、キャパシタ48の蓄電残量SOCが徐減トルク用蓄電量SOC2よりも多いか否かすなわち加速トルク用蓄電量SOC1が残存しているか否かが判断される。このSA11の判断が否定されるうちは上記SA10が繰り返し実行されるが、SA11の判断が肯定されるとすなわち加速トルク用蓄電量SOC1が無くなると、SA12において上記図6の時間tNまでに示すようにキャパシタ48からMG28に供給されていた電気エネルギが徐々に減少させられる。次いで、SA13において、キャパシタ48の蓄電残量SOCが零以下であるか否かすなわち徐減トルク用蓄電量SOC2が残存しているか否かが判断される。このSA13の判断が否定されるうちは上記SA12が繰り返し実行されるが、SA13の判断が肯定されると、SA14においてMG28によるアシスト制御が完了させられる。
運転者による要求出力量が中程度である発進の場合は、前記SA4の判断が否定され且つSA5およびSA7の判断が共に肯定されるか、或いは前記SA6の判断が否定され且つSA7の判断が肯定されるので、前記蓄電量判定手段74に対応するSA15において、SA8と同様に、キャパシタ48の充電残量SOCが予め設定された判断基準値SOC0を越えているか否かが判断される。このSA15の判断が肯定された場合は、前記パワーモード選択判定手段86およびエンジン出力制限禁止手段88に対応するSA16において、車両に設けられたパワーモード選択スイッチ56が操作されているか否かに基づいて、加速性を重視した走行モードであるパワーモードが選択されているか否かが判定される。
上記SA16の判断が否定される場合は、前記エンジン出力制限手段84に対応するSA17およびSA18において、実際のスロットル開度θに基づいて決定される目標加速度GMを実際の加速度Gが越えないようにエンジン10の出力が制限される。すなわち、SA17において実際の加速度Gが目標加速度GMを越えたか否かが判断され、このSA17の判断が否定される場合はSA18が実行されないが、肯定される場合はSA18において実際の加速度Gが目標加速度GMに収まるようにスロットル開度θ、燃料噴射量、前輪ブレーキ44などの少なくとも1つが操作されることによりエンジン10の出力すなわち前輪20の駆動力が自動的に制限される。すなわちMG28のアシストトルクが大きくなるほどスロットル弁開度θTH或いは燃料噴射量がアクセルペダル36の操作量に対応した値から減少させられるので、MG28の作動量に応じてエンジン10の出力が制限される。また、上記SA16の判断が肯定された場合は、上記SA17およびSA18がスキップさせられる。したがって、上記SA16は、パワーモードが選択されていると判定された場合には、車両の加速度或いは駆動力を一層高めるためにエンジン10の出力制限を禁止する前記エンジン出力制限禁止手段88に対応している。
そして、前記加速モードアシスト制御手段78に対応するSA19が実行され、ドライ路において要求出力量に応じた好適な発進加速性を得るためにたとえば図20に示す加速モードアシスト制御ルーチンが実行される。この図20の加速モードアシスト制御ルーチンでは、前記加速モードアシストトルク決定手段80に対応するSA191において、スロットル開度θおよびその変化率dθ/dtに基づいて要求出力に対応した必要駆動トルクの所定割合の基本アシストトルク或いは基本アシストエネルギが決定され、その基本アシストエネルギがたとえば図9に示すようになるべく短期間で前記低燃費モード時よりも大きなアシストトルクとして出力されるようにMG28から出力されるアシストトルクが決定される。次いで、前記アシストトルク補正手段82に対応するSA192では、上記SA191により決定されたアシストトルクが出力されたときのエンジン10の運転点(□印)を算出し、エンジン10の運転点が現在位置(○印)からそのアシストトルク出力後の運転点(□印)へ変化したときに最良燃費曲線上に位置するように上記アシストトルクの大きさが補正される。なお、上記加速モードアシスト制御手段78に対応するSA19においては、SA16においてパワーモードが選択されていると判定された場合には、MG28のアシストトルクがたとえば一層大きな値とされ且つ短時間の出力とされる。
そして、前記SA10以下が実行されることにより、図10に示すようにキャパシタ48から電気エネルギが出力させられて、図9に示すアシストトルクがMG28から出力される。このMG28から出力されるアシストトルクは、図6の低燃費モードの場合と比較して大きな値とされ且つ短時間とされている。
前記SA5の判断が否定されるか或いはSA7の判断が否定される場合すなわち運転者の加速操作における要求出力量が大きいと判断された場合は、図15の高μ路発進時の高要求出力アシスト制御ルーチンすなわちドライ路加速アシスト制御ルーチンが実行される。先ず、運転者による加速操作が大きな要求出力量を示すものであるか否かを判定するために、SD1ではスロットル開度θが判断基準値θ2よりも大きいか否かが判断され、そのSD1の判断が肯定された場合は、SD2においてスロットル開度θの変化率dθ/dtが判断基準値dθ2/dtよりも大きいか否かが判断される。上記判断基準値θ2はスロットル開度θの最大領域を判断するための値であってたとえば80%程度の値が採用される。また、上記判断基準値dθ2/dtはアクセルペダル36の踏込速度の最大領域を判断するための値である。上記SD1およびSD2の判断のいずれかが否定された場合は図14の高μ路発進時の低中要求出力アシスト制御ルーチンに戻るが、上記SD1およびSD2の判断が共に肯定される場合は、高加速アシストモードとされ、前記加速不足判定手段98に対応するSD3において、実際の加速度Gがスロットル開度θの関数として決定される目標加速度GMよりも大きいか否かが判断される。
上記SD3の判断が肯定された場合すなわちスロットル開度θに応じて十分な加速度が得られる場合は、SD4においてキャパシタ48における充電残量SOCが判断基準値SOC0よりも多いか否かが判断される。このSD4の判断が肯定された場合は、前記高加速モードアシスト制御手段96に対応するSD5において、図11の2点鎖線に示す加速度Gを得るために図21に示すようなステップSD51乃至SD54が実行されることにより、加速開始(アクセルオン)から所定時間t1後においてエンジン10により駆動されるジェネレータ24から出力された電力をMG28へ直接的に供給する直行アシストが開始させられ、車両の加速度がそのピーク付近に到達するとすなわち加速開始(アクセルオン)からの経過時間が設定時間t2(t1<t2)に到達すると、キャパシタ48に蓄電された蓄電エネルギに基づくアシストが開始させられ且つそれをたとえば2乃至3秒程度の所定期間持続させられる。次いで、SD6乃至SD9では、前述のSA11乃至SA14と同様に、キャパシタ48によるアシストトルクが徐減させられてアシスト制御が終了させられる。
上記SD3の判断が否定された場合すなわちアクセル開度θに応じた目標加速度GMが得られない加速不足の場合は、SD10の加速モードアシスト制御においてたとえば図22に示すステップSD101乃至SD103が実行される。先ず、前記加速アシスト量補正手段100に対応するSD101では、たとえばSA19の加速モードアシストトルク制御と同様のものが用いられ、上記目標加速度GMが達成されるようにキャパシタ48によるアシストトルクのアシスト量が増量補正され、アシストトルクが高く且つ短時間とされる。次いで、SD102において上記SD101により補正されたキャパシタ48によるアシストトルクが不足であるか否かがさらに判定される。このSD102の判断が否定された場合は本ルーチンが終了させられるが、肯定された場合は、前記加速不足時直行アシスト制御手段102に対応するSD103において、上記キャパシタ48に基づくMG28のアシストトルク(増量補正後)に加えて、エンジン10により駆動されるジェネレータ24から出力された電力がMG28へ直接的に供給されることにより、高出力のアシストトルクが直ちに発生させられる。この直行アシストによりMG28から出力されるアシストトルクは、図13に示すように、エンジン出力トルクの低下分よりも大きな値となり、大きなアシスト効果が得られる。
前記SA8、SA15、SD4の判断が否定された場合、すなわち前記蓄電量不足判定手段66、74、110に対応するステップにおいてキャパシタ48の充電量が不足していると判定された場合は、図16の蓄電不足時直行アシスト制御ルーチンが実行される。すなわち、先ず、SC1において、車速Vが判断基準値V1よりも低いか否かが判断される。このSC1の判断が肯定された場合すなわち低速以下である場合は、前記パワーモード選択判定手段92に対応するSC2においてパワーモードが選択されたか否かが判断される。このSC2の判断が否定された場合は、前記蓄電不足時直行アシスト制御手段90に対応するSC3において、高μ路発進/低速加速アシスト制御が実行され、加速操作(パワーオン)と同時に直行アシストが開始される。この直行アシストでは、変速機14のシフトダウン或いはトルクコンバータ12のロックアップクラッチの解放によりエンジン10の回転速度NEが高められ、前輪20の駆動力低下以上の大きさの後輪34の駆動力が得られ、十分な加速アシスト効果が得られる。
次いで、SC4において運転者による加速操作(パワーオン)から数秒程度の所定時間経過したか否かが判断される。このSC4の判断が否定される場合は上記SC3以下が繰り返し実行されるが、肯定される場合は、SC5においてアシスト制御が終了させられた後、SC6において、車両の減速走行時における回生が行われてMG28から発生させられた電気エネルギがキャパシタ48に蓄電される。また、SC7において、車両の減速走行が所定時間以上ない場合には、エンジン10により駆動されるジェネレータ24からキャパシタ48に蓄電される。上記SC6およびSC7は、次の発進、加速に備えるために設けられているのである。
前記SC2においてパワーモードが選択されたと判定された場合は、前記アシスト遅延手段94に対応するSC8において、エンジン回転速度NEの吹き上がりを待ってアシストすることにより車両の加速度の最大値を一層高めるために、運転者による加速操作(パワーオン)から数秒程度の所定時間経過後に直行アシストが開始される。この直行アシストでも、変速機14のシフトダウン或いはトルクコンバータ12のロックアップクラッチの解放によりエンジン10の回転速度NEが所定幅上昇させられた状態で行われるので、前輪20の駆動力低下以上の大きさの後輪34の駆動力が得られ、十分な加速アシスト効果が得られる。
車速Vが判断基準値V1以上であるため前記SC1の判断が否定された場合すなわち車両の速度が中速以上である場合は、前記変速比補正手段114に対応するSC9において、加速操作時に変速機14のシフトダウンが実行され、前記蓄電不足時直行アシスト制御手段112に対応するSC10において、高μ路中速以上の追越し加速のための直行アシストが開始される。この直行アシストでは、前記SC3およびSC8の場合よりも大きなアシストトルクが発生させられる。そして、SC11では、加速操作から上記直行アシストを実行するための所定時間が経過したか否かが判断される。このSC11の判断が否定されるうちは上記直行アシストが継続されるが、肯定されると、前記SC5以下が実行される。
図14のSA2の判断が肯定された場合或いはSA3の判断が否定された場合、すなわち車両の走行中であると判断された場合或いは極低車速の発進ではないと判断された場合は、図17の高μ路走行中加速アシスト制御ルーチンが実行される。先ずSB1では、車速Vが車両の走行中を判断するために予め設定された判断基準値V1よりも高いか否かが判断される。このSB1の判断が否定された場合は図14のルーチンに戻されるが、肯定された場合は、SB2において、車両の加速中であるか否かが車速Vの変化に基づいて判断される。このSB2の判断が否定された場合は本ルーチンが終了させられるが、肯定された場合は、SB3において、車速Vが上記判断基準値V1よりも高い値に予め設定された判断基準値V2よりも低いか否かが判断される。この判断基準値V2は比較的高速走行中の加速操作であるか否かを判断するための値である。
次いで、上記SB3の判断が肯定された場合は、SB4においてスロットル開度θが予め設定された値θ1よりも大きいか否かが判断され、このSB4の判断が肯定された場合は、SB5において、スロットル開度の変化率dθ/dtが予め設定された値dθ1/dtよりも大きいか否かが判断される。上記SB4およびSB5の判断が共に肯定された場合は、通常走行中において追越しなどのために比較的大きな加速操作が行われた場合であるので、SB6の追越し加速アシスト制御が開始される。この追越し加速アシスト制御では、たとえば図6および図8に示すように、一定値のアシストトルクがMG28から所定のtN時間だけ出力されるように決定される。そして、SB8乃至SB12では、前述のSA10乃至SA14と同様にして、図6に示すように一定値のアシストトルクがMG28から所定のtN時間だけ出力された後、徐々に減少させられてアシストが終了させられる。
上記SB4およびSB5の判断の少なくとも一方が否定された場合は、SB7の追越し加速アシスト制御が、SB6の場合よりも小さなアシストトルクがSB6の場合よりも長時間出力されるように決定される。車両の加速の伸びを重視して滑らかな加速を実現するためである。そして、SB8乃至SB12において、そのアシストトルクが前記と同様に出力される。また、前記SB3の判断が否定された場合、すなわち車速VがV2よりも高い比較的高速走行中の加速である場合は、SB13の追越し加速アシスト制御が実行される。このSB13の追越し加速アシスト制御では、前記SB6の場合よりも大きく且つMG28の最高値に近い大きさのアシストトルクがSB6の場合よりも短い時間内で出力されるように決定される。そして、SB8乃至SB12において、そのアシストトルクが同様に出力される。
図14のSA1の判断が否定された場合すなわち凍結路や圧雪路のような摩擦係数の低い低μ路である場合は、図18の低μ路スリップ走行時アシスト制御ルーチンが実行される。先ず、SE1では、車速Vが判断基準値V1以下であるか否かが判断される。このSE1の判断が否定された場合は、前記加速操作判定手段106に対応するSE2において加速操作が行われたか否かがたとえばスロットル開度θの変化に基づいて判断される。上記SE1の判断が肯定されるかSE2の判断が否定された場合は本ルーチンが終了させられるが、上記SE1の判断が否定され且つSE2の判断が肯定された場合は、SE3において、キャパシタ48の充電残量SOCが判断基準値SOC0より多いか否かが判断される。SE3の判断が肯定された場合は、前記低μ路アシスト制御手段108に対応するSE4においてキャパシタ48に蓄電された電気エネルギ或いはジェネレータ24により発電された電気エネルギに基づいて低μ路に適したアシスト割合のアシスト制御が短時間実行され、SE3の判断が否定された場合は、SE5において、エンジン10により駆動されるジェネレータ24から供給される電気エネルギに基づいて直行アシスト制御が短時間実行される。
前記スリップ判定手段118に対応するSE6では、上記キャパシタ48に蓄電された電気エネルギに基づくアシスト制御が実行された状態で車輪のスリップが発生したか否かがスリップ速度ΔVが予め設定された判断基準値ΔV2よりも大きくなったことに基づいて判定される。また、SE6の判断が肯定された場合は、SE7において、アシストによる効果が発生したか否かすなわち車速Vが上昇したか否かが今回の車速Vt+1 が前回の車速Vt より大きいことに基づいて判定される。上記SE6の判断が否定されるか或いはSE7の判断が肯定される場合、すなわちスリップが発生しないか或いはスリップが発生したとしても車速Vが増加した場合は本ルーチンが終了させられるが、SE6の判断が肯定され且つSE7の判断が否定される場合、すなわちスリップが発生し且つ車速増加がない場合は、前記低μ路直行アシスト制御手段120に対応するSE8において、エンジン10により駆動されるジェネレータ24から供給される電気エネルギがMG28へ供給されることに基づいて低μ路に適した低μ路アシスト制御が実行される。この低μ路アシスト制御では、要求出力が大きい場合またはジェネレータ24が熱的制限によりその出力が低下した場合にはキャパシタ48に蓄電された電気エネルギもMG28へ供給される。
続くSE9では、未だスリップが発生しているか否かが、スリップ速度ΔVが前記判断基準値ΔV2よりも小さい値に予め設定された判断基準値ΔV1よりも大きくなったことに基づいて判定される。このSE9の判断が肯定された場合は、直行アシストによりエンジン10にジェネレータ24の電気負荷が加えられてもスリップが未だ発生している状態であるので、前記低μ路エンジン出力制限手段122に対応するSE10において、アクセルペダル36の操作位置がそのままの状態においてスロットル弁開度θTHがそれまでの値よりも小さくされることによりエンジン10の出力がそれまでよりも小さくされ、前輪20の駆動力がさらに減少させられる。
次いで、SE12、SE13、SE14ではアシスト終了条件が成立したか否かが判断される。すなわち、SE12ではスロットル開度θが全閉(0%)となったか否かが判断され、SE13ではスリップ速度ΔVが前記判断基準値ΔV1よりも小さくなったか否かが判断され、SE14では運転者により加速操作されてからの経過時間が所定値たとえば5秒に到達したか否かが判断される。当初は、上記SE12、SE13、SE14の判断がいずれも否定されるので、前記SE8以下が繰り返し実行される。
上記のSE8以下が繰り返し実行されるうち、エンジン10の出力抑制により車両のスリップが解消されてSE9の判断が否定されるようになると、SE11においてエンジン10の出力制限が終了させられるが、直行アシストは継続される。そして、運転者の加速終了の意思を示すスロットル開度θが全閉とされるか、車両のスリップが解消されてスリップ速度ΔVが前記判断基準値ΔV1よりも小さくなるか、或いは加速操作開始からの経過時間が所定値に到達するかのいずれかが成立するかして、前記SE12、SE13、SE14のいずれかの判断が肯定されると、SE15においてアシスト制御が終了させられる。そして、SE16においてキャパシタ48の充電残量SOCが判断基準値SOC0を越えているか否かが判断され、そのSE16の判断が否定される場合は、SE17においてジェネレータ24によりキャパシタ48が充電される。そのSE16の判断が肯定されるようになると、SE18においてジェネレータ24によるキャパシタ48の充電が終了させられて、SE19においてフラグがクリアされることにより本ルーチンが終了させられる。
上述のように、本実施例によれば、エンジン10およびMG28を備えた車両の制御装置において、運転者の要求する出力が高くなる程、出力またはトルクが高くなるように且つ作動時間が短くなるようにMG28を作動させる第1制御手段(低燃費モードアシストトルク決定手段70、加速モードアシストトルク決定手段80)が設けられている。このため運転者の要求する出力が高くなる程、出力またはトルクが高くなるように且つ作動時間が短くなるようにMG28が作動させられるので、MG28の出力がより適切に制御される。すなわち、アクセルペダル36の踏み量に対して得られる動力性能が高められて、加速操作時においてアクセルペダル36の踏み増しによる出力操作量の増加が防止されるとともに、燃料消費量が低減される。
また、本実施例によれば、車両の走行する路面の摩擦係数μが高いか或いは低いかを判定する路面摩擦係数判定手段(高μ路判定手段60)と、その路面摩擦係数判定手段により路面の摩擦係数μが低いと判定された場合にはエンジン10の出力を低下させるとともにMG28を作動させる第2制御手段(低μ路直行アシスト制御手段120、低μ路エンジン出力制限手段122)とを含み、前記第1制御手段は、上記路面摩擦係数判定手段により路面の摩擦係数μが高いと判定された場合に、運転者の要求する出力が高くなる程、出力またはトルクが高くなるように且つ作動時間が短くなるようにMG28を作動させるものである。このように、第1制御手段により、路面摩擦抵抗が高いときすなわちドライ路において、運転者の要求する出力が高くなる程、出力またはトルクが高くなるように且つ作動時間が短くなるようにMG28が作動させられることから、車両の加速性が向上するので、一層、アクセルペダル36の踏み増しによる出力操作の増加が防止されるとともに、燃料消費量が低減される。また、低μ路では、第2制御手段によりエンジン10の出力が低下させられると同時にMG28が作動させられるので、低μ路における車両のスリップが好適に防止され、低μ路での車両の駆動力が得られる。
また、本実施例によれば、前記路面摩擦係数判定手段(高μ路判定手段60)により路面の摩擦係数μが高いと判定されている状態では、前記MG28の作動量に応じてエンジン10の出力を制限する第3制御手段(エンジン出力制限手段84)がさらに設けられることから、路面の摩擦係数μが高いと判定されている状態では、目標加速度GMに収めるべくMG28の作動量に応じてエンジン10の出力が制限されるので、路面摩擦係数μが高い走行路すなわちドライ路であっても、エンジン10の出力がMG28の作動量に応じて制限されるため、一層、車両の燃料消費量が低減される。すなわち、運転者による要求出力量に見合った目標加速度GMが得られる場合にはエンジン10への余分な燃料が削減されるので、燃費が一層向上させられる。
また、本実施例によれば、運転者の要求出力量に基づいてエンジン10を作動させると同時にそのエンジン10の出力に対する所定の出力割合でMG28を作動させるアシスト制御手段(低燃費モードアシストトルク決定手段70、加速モードアシストトルク決定手段80)と、そのMG28の作動開始後のエンジン10のエネルギ消費状態に基づいてMG28の作動を修正する第4制御手段(アシストトルク補正手段72、82)とが設けられていることから、エンジン10のエネルギ消費を低減するようにMG28のアシストトルクすなわち作動割合が修正され得るので、より適切な作動割合となって、車両の燃料消費量が低減される。
また、本実施例によれば、運転者の出力要求が低く且つ運転者のパワーモード非選択時においてはMG28を作動させるとともにエンジン10の出力を制限し、運転者の出力要求が高く且つ運転者のパワーモード選択時においては出力またはトルクが高くなるように且つ作動時間が短くなるようにMG28を作動させるとともにエンジン10の出力制限を緩和する第5制御手段(低燃費モードアシスト制御手段68、加速モードアシスト制御手段78、エンジン出力制限手段84、パワーモード選択判定手段86、エンジン出力制限禁止手段88)が設けられている。このため、燃費志向走行や車両重量の減少などにより運転者の出力要求が低く且つ運転者がパワーモード非選択時においてMG28が作動させられるとともにエンジン10の出力が制限され、加速志向走行や車両重量の増加などにより運転者の出力要求が高く且つ運転者のパワーモード選択時には、出力またはトルクが高くなるように且つ作動時間が短くなるようにMG28が作動させられるとともにエンジン10の出力制限が緩和されることから、運転者による運転モードの選択によりMG28の作動が変更されるため、MG28の出力がより適切となって燃料消費量が低減される。また、パワーモードが選択されたときにはエンジン10の出力制限が緩和されるので、車両の動力性能が向上させられる。
また、本実施例によれば、車両の駆動力をそれほど必要としない場合には、キャパシタ48(エネルギ蓄積手段)に蓄積された電気エネルギをMG28に供給するとともにそのMG28を低出力で作動させ、駆動力を必要とする場合には、キャパシタ48に蓄積されたエネルギおよびエンジン10によって駆動されるジェネレータ(エネルギ発生手段)24からの電気エネルギをMG28に供給する直行アシストとするとともに出力またはトルクが高くなるように且つ作動時間が短くなるようにそのMG28を作動させる第6制御手段(低燃費モードアシスト制御手段68、加速モードアシスト制御手段78、高加速モードアシスト制御手段96、加速不足判定手段98、加速アシスト量補正手段100、加速不足時直行アシスト制御手段102)が設けられている。このため、燃費志向走行や車両重量の減少などにより車両の駆動力をそれほど必要としない場合には、キャパシタ48に蓄積されたエネルギがMG28に供給されるとともにそのMG28が低出力で作動させられ、加速志向走行や車両重量の増加などにより車両の駆動力を必要とする場合には、キャパシタ48に蓄積されたエネルギおよびエンジン10によって駆動されるジュエネレータ24からのエネルギがMG28に供給されるとともに出力またはトルクが高くなるように且つ作動時間が短くなるようにそのMG28が作動させられるので、MG28の作動がより適切とされ、車両重量が重いとき、大きなパワー要求があるときの動力性能が向上する。
また、本実施例によれば、キャパシタ(エネルギ蓄積手段)48のエネルギの蓄積量SOCが不十分であるか否かを判定する蓄電量判定手段(蓄積量判定手段)66、74、110と、その蓄電量判定手段66、74、110によりキャパシタ48のエネルギの蓄積量SOCが不十分であると判定された場合には、エンジン10により駆動されるジェネレータ(エネルギ発生手段)24からMG28へ電気エネルギを供給させるとともに、そのエンジン10側に設けられた変速機14の変速比を増大させる第7制御手段(蓄電不足時直行アシスト制御手段112、変速比補正手段114)が設けられている。このため、キャパシタ48の蓄電量が不十分であると判定された場合には、上記第7制御手段により、エンジン10により駆動されるジェネレータ24からMG28へ電気エネルギが供給させられる直行アシストが行われるとともに、そのエンジン10側に設けられた変速機14の変速比が増大させられるので、変速比の増大によりキャパシタ48の蓄電量が低下したときにもMG28が十分な大きさの出力が確保されるように作動可能となり、そのMG28の出力がより適切となる。すなわち、蓄電量不足に起因したアシスト減少などによる違和感の発生が防止される。
また、本実施例によれば、エンジン10により駆動されるジェネレータ(エネルギ発生手段)24からMG28へ電気エネルギを供給させる際に、パワーモード選択時には運転者の出力要求量増大時から所定時間後にMG28を作動させ、パワーモード非選択時には運転者の出力要求量増大時と同時にMG28を作動させる第8制御手段(パワーモード選択判定手段92、アシスト遅延手段94)が設けられる。このため、エンジン10により駆動されるジェネレータ24からMG28へ電気エネルギを供給させる際に、パワーモード選択時には運転者の加速操作時から所定時間後にMG28が作動させられ、パワーモード非選択時には運転者の加速操作と同時にMG28が作動させられることから、パワーモード選択時にはパワーオンすなわち加速操作から所定時間後にジェネレータ24が駆動されて加速度Gのピークが高められるために一時的に大きな動力性能が向上させられる。また、パワーモード非選択時にはパワーオンと同時にMG28が作動させられるために加速操作からの応答遅れ時間が短縮される。
また、本実施例によれば、加速操作時においてエンジン10により駆動されるジェネレータ(エネルギ発生手段)24からMG28へ電気エネルギを供給させた後、所定時間経過すると、キャパシタ(エネルギ蓄積手段)48により蓄積された電気エネルギをそのMG28へ供給させる第9制御手段(96:高加速モードアシスト制御手段)が設けられている。このため、加速操作時において、エンジン10により駆動されるジェネレータ24からMG28へ電気エネルギが供給された後、所定時間経過すると、キャパシタ48により蓄積された電気エネルギがそのMG28へ供給されるので、図11に示すように、車両加速操作時において、車両の加速度Gが高くなりしかもその加速補助期間が長くなり加速の延びが向上する。
本実施例では、エンジン10は車両の前輪駆動系を駆動する内燃機関であり、MG28は後輪駆動系を駆動する電気モータであるので、そのMG28が作動させられる期間では、前輪駆動系および後輪駆動系が共に駆動されるので、凍結路、圧雪路などの摩擦係数が低い路面の走行においても車両の駆動力或いは加速度が高められる。
以上、本発明の一実施例を図面に基づいて説明したが、本発明はその他の態様においても適用され得るものである。
たとえば、前述の実施例では、車両の前部に設けられたエンジン10により前輪20を駆動する前輪駆動(FF)を基本とし、後輪34をMG28にて駆動する所謂電気式4輪駆動車両が用いられていたが、前置エンジン後輪駆動(FR)を基本として前輪20をMG28にて駆動する電気式4輪駆動車両、後置エンジン後輪駆動(RR)を基本として前輪20をMG28にて駆動する電気式4輪駆動車両であってもよいし、エンジン10およびMG28が前輪20または後輪34を駆動する形式の車両であってもよい。また同一軸上にエンジン10とMG28がそれぞれに配置され、そのMG28がエンジン10へのアシスト機能を発揮する構成でもよい。
また、前述の実施例の車両では、複数の原動機としてエンジン10およびMG28を備えたものであったが、2つのモータジェネレータを備えたものや、エンジンおよびモータなどにより複合的に構成された原動機が複数箇所に設けられたものや、油圧モータなどのように作動原理が異なる他の種類の原動機がエンジン10或いはMG28に代えて用いられたものでも差し支えない。また、原動機と車輪との間に前述の実施例と異なる動力伝達装置が必要に応じて設けられても差し支えない。
また、前述の実施例では、誘電体の分極によって静電的に電気エネルギを蓄えるキャパシタ48が用いられていたが、電気化学的に電気エネルギを蓄える蓄電池などの蓄電装置であってもよい。
また、前述の実施例のジェネレータ24は、専ら発電機として用いられるものであったが、エンジン10を始動させるモータ、車両発進時においては駆動トルクを出力するモータとして作動させられてもよいし、車両停止時においてエンジン10を停止させたまま、エアコンのコンプレッサ、パワステのオイルポンプ等の補機を回転駆動させるように連結されていてもよい。
また、前述の図14、図15、図16、図17、図18の制御ルーチンにおいて、その機能が得られる範囲でステップの一部の削除、追加、変形されても差し支えない。
また、前述の実施例では、パワーモード選択判定手段92およびアシスト遅延手段94に対応する第8制御手段は、運転者によるパワーモード選択状態に基づいて、運転者の出力要求増大から所定時間後にMG28を作動させる態様と、運転者の出力要求増大と同時にMG28を作動させる態様とを切り換えるものであったが、車両の運転状態、運転者による他のモード選択状態、車両の駆動系の状態、たとえば、FF、FR、4WD、MT、AT、CVTの選択状態或いは作動状態などに基づいて、切り換えるものであってもよい。
なお、上述したのはあくまでも本発明の一実施例であり、本発明はその主旨を逸脱しない範囲において種々の変更が加えられ得るものである。