JP5511893B2 - スタータ - Google Patents

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この発明は、例えば内燃機関に用いられるスタータに関するものである。
従来公知のピニオン押込みスプリングを有する電磁押込み式スタータでは、電磁スイッチが作動したときに、プランジャが勢いよく作動するので、慣性によってピニオン押込みスプリングが撓み、ピニオンがリングギアに当接して押圧力が発生する前、若しくはピニオンスプリングが十分に撓む前に、接点が閉じてモータが回転を開始してしまうため、ピニオンとリングギヤが噛合わずいわゆる噛合不良を生じやすい問題点がある。
この対策として、一般的にはピニオン押込みスプリングを強くする方法があるが、作動性から電磁スイッチの電磁力を大きくしなければならず、電磁スイッチが大型化する欠点がある。しかも、電磁力を増加すると、プランジャの勢いも増すので、ピニオン押込みスプリングを強化し、かつ電磁力を増加した方法での効果は、電磁スイッチが大型化するにも拘わらず、わずかな効果しか得られないという問題点があった。
また、これらを解決する電磁スイッチとして、例えば特許3542309号公報が知られている。当該特許に記載されている電磁スイッチでは、図5に示すように、プランジャ14に備えたフック7とシャフト12との間に設けた空隙15の気密性を高くし、エアダンパー効果を持たせることで、ピニオン押込みスプリング11が撓む速度を遅らせる手段が設けられている。
特許第3542309号公報
上述した従来のスタータは、ピニオン押込みスプリング11の撓み速度を遅らせるに十分なエアダンパー効果を得るためには、プランジャ14とフック7、シャフト12で形成される空間には非常に高い気密性を要することから、高い加工精度が必要となり、コスト高となるという問題点があった。
また、このような手段では、撓んだピニオン押込みスプリング11が戻る際にも、エアダンパー効果を発揮してしまい、戻り時間が長くなるという問題があった。
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、その目的は、スタータの初期位置からピニオンギアがリングギアに当接付近までの間では電磁スイッチの電磁力を低減するとともに、当接以降は電磁力を向上させることができるスタータを提供するものである。
この発明に係わるスタータは、回転力を発生するモータと、前記モータの回転力を伝達する出力軸と、前記出力軸に前後自在にヘリカルスプライン嵌合され、内燃機関を始動するためのリングギアに回転力を伝えるピニオンと、前記リングギアと前記ピニオンを歯合させるための推力を発生させ、前記モータの接点を開閉する電磁スイッチと、前記電磁スイッチの推力を前記出力軸に伝達して前記ピニオンを軸方向に移動させるシフトレバーと、前記電磁スイッチと前記出力軸の間に配設され、前記ピニオンを前記リングギアに歯合させるための荷重を発生するピニオン押込みスプリングと、前記電磁スイッチの外郭をなし磁気回路を形成するケースと、前記ケースの一端側に固定されたコアと、前記コアの対向面と第1の空隙を介して対向し、電磁力の発生に伴い、前記コア側へ吸引されるプランジャと、前記コア及び前記プランジャの一部を取り囲むように前記ケース内に配置され、コイルが巻回されるボビンと、前記ボビンの一部内径側で前記プランジャと接触しない位置に配設され、前記プランジャから前記第1の空隙を介して前記コアに向かう磁束の一部を分流する略円筒状の補助コアと、前記プランジャの外周側と前記補助コアとの間および前記プランジャと対向する前記コアの外周側に形成される第2の空隙とを備え、前記第2の空隙は前記ピニオンと前記リングギアとが当接したときの前記第1の空隙とおおよそ等しく設定し、前記第1の空隙>前記第2の空隙のときは電磁力を低減し、前記第1の空隙<前記第2の空隙のときは電磁力を増大するものである。
この発明に係わるスタータによれば、スタータの初期位置からピニオンギアがリングギアに当接付近までの間では電磁スイッチの電磁力を低減できるとともに、当接以降は電磁力を向上させることができるスタータを得ることができる。
この発明の実施の形態1に係わるスタータを示す部分断面図である。 この発明の実施の形態1に係わるスタータにおける電磁スイッチの電磁力とスプリング荷重と空隙との関係を示す図である。 この発明の実施の形態2に係わるスタータを示す部分断面図である。 この発明の実施の形態2に係わるスタータにおけるにおける電磁スイッチの電磁力とスプリング荷重と空隙との関係を示す図である。 従来のスタータを示す部分断面図である。
実施の形態1.
以下、この発明の実施の形態1を図1および図2に基づいて説明するが、各図において、同一、または相当部材、部位については同一符号を付して説明する。
スタータは、図1に示すように、回転力を発生するモータ1と、このモータ1で発生した回転力を減速する減速機構部2と、減速機構部2により減速された回転力を後述するオーバーランニングクラッチ3へ伝達する出力軸2aと、この出力軸2aにヘリカルスプライン嵌合によって軸方向に摺動自在に支持され、回転力の一方向のみを伝達するオーバーランニングクラッチ3と、内燃機関を始動するためのリングギア4に回転力を伝えるピニオン3aとを備えている。
オーバーランニングクラッチ3はシフトレバー5と回転自在に連結されており、シフトレバー5の反対側は電磁スイッチ6のフック7に連結されている。
電磁スイッチ6は、外郭をなし磁気回路を形成するケース8と、通電することで磁界を発生するコイル9と、このコイル9が巻回されるボビン10と、磁界の発生により電磁力を発生し、ピニオン押込みスプリング11を介してフック7を吸引しつつ、可動接点12aを備えたシャフト12をカバー13に備えた固定接点13aに押し付けるプランジャ14と、このプランジャ14に対向し、初期状態で空隙21を有して配されるコア16と、可動接点12aを固定接点13aに押し付ける荷重を発生する接点スプリング17と、電磁スイッチ6の動作が完了した際に、プランジャ14を元の位置に戻す荷重を発生するプランジャスプリング18と、およびリターンスプリング19とを備えている。
また、電磁スイッチ6のボビン10の一部内径側でプランジャ14と接触しない位置で、プランジャ14から第1の空隙21を介してコア16に向かう磁束の一部を分流する略円筒状の補助コア20を配置している。そして、プランジャ14の外周側と補助コア20との間およびプランジャ14と対向するコア16の外周側にそれぞれ第2の空隙22を設けるように配置されている。尚、可動接点12aおよび固定接点13aはモータ1を駆動させる接点である。
更に、スタータは減速機構部2、オーバーランニングクラッチ3、シフトレバー5などを内包するフロントブラケット23を備えている。
次に動作について説明する。まず、図示しないキースイッチの動作信号を受けて、コイル9が通電され、プランジャ14がコア16側へ移動する。プランジャ14の移動に伴い、ピニオン押込みスプリング11、フック7、シフトレバー5を介してピニオン3aを含むオーバーランニングクラッチ3がリングギア4へ移動し、ピニオン3aとリングギア4が歯合する。
このとき、ピニオン3aとリングギア4の軸方向の端面が当接すると噛合することができないが、プランジャ14は更にピニオン押込みスプリング11を撓ませながらコア側16へ移動し接点を閉じる。
接点が閉じることでモータ1は回転力を発生し減速機構部2を介して、ピニオン3aがリングギア4の端面上を歯合が可能な位置まで回転し、歯合することできる。
一連の動作について図2を用いて説明すると、第1の空隙21の位置aは初期状態、位置bでピニオン3aとリングギア4が当接、区間Bはピニオン押込みスプリング11が撓み、更に、区間Cでリターンスプリング19が撓み、位置dで接点が閉じることを意味し、破線で示す曲線Pが従来の電磁スイッチの電磁力を示している。
従来の電磁スイッチでは、プランジャ14の勢いが強いため、即ち、区間Aにおける電磁力とスプリング荷重との差が大きいために、オーバーランニングクラッチ3の慣性に負けて、ピニオン3aがリングギア4に当接する前からピニオン押込みスプリング11が撓んで接点を閉じてしまい、ピニオン3aが回転を始めてしまう。この状態では、静止しているリングギア4とピニオン3aには大きな回転差が生じてうまく歯合することできない。
また、プランジャ14の勢いを低減するために、例えばコイル9に通電する電流を下げて電磁力を低減すると、ピニオン押込みスプリング11の意図しない撓みを低減することは可能となるが、今度は電磁力がスプリング荷重に負けて接点を閉じることができなくなる危険性が高まる。即ち、噛合うことができなくなる。
この発明の実施の形態1にかかる電磁スイッチ6では、コイル9で発生した磁束の一部を第2の空隙22を介して分岐するように、プランジャ14の外周部に補助コア20が配設され、第2の空隙22はピニオン3aとリングギア4が当接した状態での第1の空隙21とおおよそ等しい大きさに設定され、補助コア20の磁路面積とプランジャ14のピニオン押込みスプリング11の外径側磁路面積との合計がコア16にプランジャ14が対向する面の断面積と同等に設定されている。
従って、第1の空隙21>第2の空隙22の状態では、磁束の一部は補助コア20を通ってプランジャ14を迂回してコア16へ流れるので電磁力を低減するように働き、第1の空隙21<第2の空隙22の状態では、補助コア20がプランジャ14のピニオン押込みスプリング11を内包する付近の狭くなった磁路面積を補うように磁束が流れるので、電磁力が増大するように働く。
即ち、図2の実線の曲線Qで示すように、区間Aにおける電磁力を低減して、プランジャ14の加速度を低減できるので、意図しないピニオン押込みスプリング11の撓みを低減することができる。また、ピニオン3aとリングギア4が当接した以降の区間B、区間C、区間Dでは従来の電磁スイッチより電磁力を増大することができるので、図2の実線の曲線Rで示すように、スプリング荷重に負けることなく、素早く接点を閉じて、歯合の動作に移行できる。
実施の形態2.
この発明の実施の形態2を図3および図4に基づいて説明するが、各図において、同一、または相当部材、部位については同一符号を付して説明する。
上述した実施形態1との構造の相違は、ピニオン3aがオーバーランニングクラッチ3と軸方向に前後自在に摺動できるようにスプライン嵌合をなし、一端をストッパ3cによって規制され、もう一端をリングギア4側に付勢する方向に荷重を発生するピニオンスプリング3bを備えていることにある。
このピニオンスプリング3bの荷重は、ピニオン押込みスプリング11の荷重よりも小さく設定され、電磁スイッチ6によってピニオン3aがリングギア4に押し付けられた場合は、ピニオンスプリング3bが優先的に撓むように設定されている。
次に、この構造による動作を説明する。まず図示しないキースイッチの動作信号を受けて、コイル9が通電され、プランジャ14がコア16側へ移動する。プランジャ14の移動に伴い、ピニオン押込みスプリング11、フック7、シフトレバー5を介してピニオン3a、ピニオンスプリング3b、ストッパ3cを含むオーバーランニングクラッチ3がリングギア4へ移動し、ピニオン3aとリングギア4が歯合する。
このとき、ピニオン3aとリングギア4の軸方向の端面が当接すると噛合することができず、ピニオン3aはリングギア4の軸方向の端面で移動を規制さされてしまう。しかし、この発明の実施の形態2における構造であれば、ピニオンスプリング3bが撓むことで、オーバーランニングクラッチ3はリングギア4側へ前進することができる。
このとき、出力軸2aとオーバーランニングクラッチ3とはヘリカルスプライン嵌合されているのでオーバランニングクラッチ3は回転を伴った前進動作となる。この回転はピニオン3aにも伝達されるので、結果、ピニオン3aはピニオンスプリング3bによる押込み力と合せて、リングギア4に歯合する動作を得ることができる(第一段階の噛合い)。
この歯合動作ではモータ1の回転力によらない弱い回転力と、ピニオン押込みスプリング11より弱い荷重を発生するピニオンスプリング3bによって歯合できるので、ピニオン3aとリングギア4の摩耗を格段に低減することができる。
更に、この動作によっても歯合することができなかった場合は、更にプランジャ14はピニオン押込みスプリング11を撓ませながらコア側16へ移動し接点を閉じる。接点が閉じることでモータ1は回転力を発生し減速機構部2を介して、ピニオン3aがリングギア4の端面上を歯合が可能な位置まで回転し、歯合することできる(第二段階の噛合い)。この二段階の歯合手段により歯合をより確実にすることができる。
一連の動作について図4を用いて説明すると、第1の空隙21の位置aは初期状態、位置bでピニオン3aとリングギア4が当接、区間B’はピニオンスプリング3bが撓み、第一段階の噛合いとなる。更に区間Cでピニオン押込みスプリング11とリターンスプリング19が撓み、位置dで接点が閉じることを意味し、破線で示す曲線P1が従来の電磁スイッチの電磁力を示している。
ここで従来の電磁スイッチでは、プランジャ14の勢いが強いため、即ち、区間A、区間B’における電磁力とスプリング荷重との差が大きいために、オーバーランニングクラッチ3の慣性に負けて、第一段階の噛合いで十分な回転動作を得る前にピニオン押込みスプリング11が撓んで接点を閉じてモータ1が回転を始めてしまい、第一段階の噛合いの回転動作が打ち消されてしまう問題があった。
更に、この噛合い手段では、必然的に上述した実施の形態1よりも図4に示す区間B’の長さを大きく設定する必要があり、意図せぬピニオン押込みスプリング11の撓みを低減して、この噛合い手段を成立させることは困難である。
また、プランジャ14の勢いを低減するために、例えばコイル9に通電する電流を下げ
て電磁力を低減すると、ピニオン押込みスプリング11の意図しない撓みを低減することは可能となるが、今度は電磁力がスプリング荷重に負けて接点を閉じることができなくなる危険性が高まる。即ち、噛合うことができなくなる。
この発明の実施の形態2にかかる電磁スイッチ6では、上述した実施の形態1と同様に、コイル9で発生した磁束の一部を第2の空隙22を介して分岐するように、プランジャ14の外周部に補助コア20が配設され、第2の空隙22はピニオンスプリング3bが撓みきる位置での第1の空隙21よりも大きく設定され、補助コア20の磁路面積とプランジャ14のピニオン押込みスプリング11の外径側磁路面積との合計がコア16にプランジャ14が対向する面の断面積と同等に設定されているので、図4の実線の曲線Q1で示すように、区間A、区間B’における電磁力を低減して、プランジャ14の加速度を低減できるので、意図しないピニオン押込みスプリング11の撓みを低減することができる。
また、第一段階の噛合いで噛合えずピニオンスプリング3bが撓みきってしまった以降の区間C、区間Dでは従来の電磁スイッチより電磁力を増大することができるので、図4の実線の曲線R1で示すように、スプリング荷重に負けることなく、素早く接点を閉じて、歯合の動作に移行できる。
なお、この発明は、その発明の範囲内において、各実施の形態を自由に組み合わせたり、各実施の形態を適宜、変形、省略することが可能である。
この発明は、スタータの初期位置からピニオンギアがリングギアに当接付近までの間では電磁スイッチの電磁力を低減できるとともに、当接以降は電磁力を向上させることができるスタータの実現に好適である。
1 モータ 2 減速機構部 2a 出力軸
3 オーバーランニングクラッチ 3a ピニオン
3b ピニオンスプリング 3c ストッパ 4 リングギア
5 シフトレバー 6 電磁スイッチ 8 ケース
9 コイル 10 ボビン 11 ピニオン押込みスプリング
12 シャフト 12a 可動接点 13 カバー
13a 固定接点 14 プランジャ 16 コア
20 補助コア 21 第1の空隙 22 第2の空隙

Claims (3)

  1. 回転力を発生するモータと、前記モータの回転力を伝達する出力軸と、前記出力軸に前後自在にヘリカルスプライン嵌合され、内燃機関を始動するためのリングギアに回転力を伝えるピニオンと、前記リングギアと前記ピニオンを歯合させるための推力を発生させ、前記モータの接点を開閉する電磁スイッチと、前記電磁スイッチの推力を前記出力軸に伝達して前記ピニオンを軸方向に移動させるシフトレバーと、前記電磁スイッチと前記出力軸の間に配設され、前記ピニオンを前記リングギアに歯合させるための荷重を発生するピニオン押込みスプリングと、前記電磁スイッチの外郭をなし磁気回路を形成するケースと、前記ケースの一端側に固定されたコアと、前記コアの対向面と第1の空隙を介して対向し、電磁力の発生に伴い、前記コア側へ吸引されるプランジャと、前記コア及び前記プランジャの一部を取り囲むように前記ケース内に配置され、コイルが巻回されるボビンと、前記ボビンの一部内径側で前記プランジャと接触しない位置に配設され、前記プランジャから前記第1の空隙を介して前記コアに向かう磁束の一部を分流する略円筒状の補助コアと、前記プランジャの外周側と前記補助コアとの間および前記プランジャと対向する前記コアの外周側に形成される第2の空隙とを備え、前記第2の空隙は前記ピニオンと前記リングギアとが当接したときの前記第1の空隙とおおよそ等しく設定し、前記第1の空隙>前記第2の空隙のときは電磁力を低減し、前記第1の空隙<前記第2の空隙のときは電磁力を増大することを特徴とするスタータ。
  2. 前記ピニオンは前記リングギア方向へ付勢するピニオンスプリングが設けられ、前記ピニオンが前記リングギアに噛合うことなく、互いの軸方向の端面が衝突した状態から前記接点が閉じる前に、前記ピニオンスプリングを撓ませながら前記ピニオンが前進するに伴い、前記ヘリカルスプラインによって前記ピニオンが回転できるように設定され、この回転と前記ピニオンスプリングの付勢によっても噛合することを特徴とする請求項1に記載のスタータ。
  3. 前記ピニオンスプリングが撓み切った状態での前記第1の空隙と前記第2の空隙とはおおよそ等しく設定されていることを特徴とする請求項2に記載のスタータ。
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