以下、本発明に係る色選択方法についてそれを実施する画像処理装置並びに印刷システムとの関係において好適な実施形態を挙げ、添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本実施の形態に係る画像処理装置16が組み込まれた印刷システム10の斜視説明図である。
印刷システム10は、LAN12と、編集装置14と、画像処理装置16と、印刷機18と、測色計20とを基本的に備える。
LAN12は、イーサネット(登録商標)等の通信規格に基づいて構築されているネットワークである。編集装置14と、画像処理装置16と、データベースDBとは、LAN12を介して有線又は無線により相互に接続されている。
編集装置14は、文字、図形、絵柄や写真等から構成されるカラー画像の配置をページ毎に編集が自在であり、ページ記述言語(以下、PDLという。)による電子原稿、例えば、4色(CMYK)や3色(RGB)のカラーチャンネルからなる8ビット画像データを生成する。
ここで、PDLとは、印刷や表示等の出力単位である「ページ」内で文字、図形等の書式情報、位置情報、色情報(濃度情報を含む)等の画像情報を記述する言語である。例えば、PDF(Portable Document Formatの略で、ISO32000−1:2008に規定)、AdobeSystems社のPostScript(登録商標)やXPS(XML Paper Specification)等が知られている。
また、編集装置14には図示しないカラースキャナが接続されており、該カラースキャナは、所定の位置にセットされたカラー原稿を光学的に読み取ることで、前記電子原稿の構成要素となるカラー画像データを取得可能である。
画像処理装置16は、PDLによる電子原稿をラスタ形式(例えば、Bitmap)に展開し、所望の画像処理、例えば、色変換処理、画像拡縮処理や配置処理等を行い、印刷機18の印刷方式に適した印刷制御信号に変換し、前記印刷機18に前記印刷制御信号を送信する各機能を有している。
また、画像処理装置16は、CPU・メモリ等を有する本体22と、カラー画像を表示する表示装置24と、入力部としての入力装置26(キーボード28及びマウス30)を備えており、さらに測色計20が接続されている。
印刷機18は、C、M、Y、Kの各色(プロセスカラー)からなる標準インクと、LC、LM等の淡色やW(白色)等のオプションインクとを組み合わせてカラー画像を形成するインクジェット方式の印刷装置である。この印刷機18は、外部(例えば、画像処理装置16)から受信した印刷制御信号に基づいて各色のインクの射出制御を行うことにより、印刷媒体としてのメディア32(図1では、ロール状の未印刷のメディア32)上にカラー画像を印刷し、印刷物34(指定色調整用カラーチャート34cが含まれる。)を形成する。
メディア32の基材には、合成紙・厚紙・アルミ蒸着紙等の紙類、塩化ビニル・PET等の樹脂やターポリン等を用いることができる。
測色計20は、測定対象物の色値を測定する。ここで色値とは、三刺激値XYZ、均等色空間の座標値L*a*b*等のみならず、波長に対する光学物理値の特性、例えば、分光放射分布、分光感度分布、分光反射率又は分光透過率が含まれる。
図2は、指定色調整用カラーチャート34cの概略正面図である。
指定色調整用カラーチャート34cは、メディア32上に印刷された、色の異なる27個の略同形状のカラーパッチ36と、該カラーパッチ36の行方向及び列方向の配列位置を特定する行番号38及び列番号40と、前記指定色調整用カラーチャート34cの印刷条件を識別する情報からなる印刷情報42とから構成される。
各カラーパッチ36は、メディア32の左側部、中央部及び右側部に、縦方向及び横方向に3個ずつ、所定間隔の隙間を設けるように配置されている。各カラーパッチ36の色は、CMYK値の各信号レベルの範囲(百分率では0%〜100%、8ビット階調である場合は0〜255)の所定の値が設定されている。
識別情報としての行番号38は上から順番に(1)、(0)、(−1)からなり、それぞれ各カラーパッチ36の左方部にその位置に対応するように設けられている。一方、識別情報としての列番号40は、左から順番に(1’)、…、(−1”)からなり、各カラーパッチ36の上方部にその位置に対応するように設けられている。
印刷情報42には、印刷機18の機種、シリアル番号若しくは登録名、後述する印刷モード、メディア32の種類、印刷日時等が印刷されている。
図3は、本実施形態に係る画像処理装置16の構成ブロック図である。なお、電子原稿は白抜実線矢印の方向に、カラーチャート用画像データは白抜破線矢印の方向に、その他の各種データは実線矢印の方向にそれぞれ供給されることを表す。
画像処理装置16の本体22は、編集装置14側から供給される電子原稿を入力するI/F50と、該I/F50を介して供給された電子原稿のPDL形式をラスタ形式に展開するRIP52(ラスタイメージングプロセッサ)と、該RIP52により展開された電子原稿のCMYK値(あるいはRGB値)に対して所定の色変換処理を施して新たなCMYK値の画像データを得る色変換処理部54と、該色変換処理部54により色変換されて得られた新たなCMYK値の画像データを印刷機18に適した印刷制御信号(インク射出制御データ)に変換する印刷機ドライバ56(印刷制御部)と、該印刷機ドライバ56により変換された印刷制御信号を印刷機18側に出力するI/F58とを備える。
また、本体22は、印刷機18毎にプロファイルを管理する色管理部60と、指定色調整用カラーチャート34c又は図示しないプロファイル用カラーチャートを印刷するための画像データを生成する画像データ生成部62と、表示装置24との接続を可能とするI/F64と、入力装置26(キーボード28及びマウス30)との接続を可能とするI/F66と、測色計20との接続を可能とするI/F68とを備える。
さらに、本体22は、その内部の各構成要素から供給される各種データを記憶し、あるいは記憶する各種データを各構成要素に供給する記憶部70を備えている。該記憶部70は、RIP52と、色変換処理部54と、色管理部60と、画像データ生成部62と、I/F64と、I/F66と、I/F68とにそれぞれ接続されている。
なお、色変換処理部54は、デバイス依存データからデバイス非依存データに変換する目標プロファイル処理部72と、デバイス非依存データからデバイス依存データに変換するする印刷プロファイル処理部74とを備える。ここで、デバイス依存データとは、各種デバイスを適切に駆動するためのCMYK値、RGB値等で定義されるデータである。また、デバイス非依存データとは、HSL、HSB、CIELAB座標系、CIELUV座標系、XYZ等の表色系で定義されるデータである。
また、画像データ生成部62は、指定色調整用カラーチャート34cを印刷するための画像データを生成する指定色調整用データ生成部76と、図示しないプロファイル用カラーチャートを印刷するための画像データを生成するプロファイル用データ生成部78と、指定色調整用カラーチャート34c上の複数のカラーパッチ36の配設位置を模擬した画像データを生成する模擬データ生成部79とを備える。
さらに、色管理部60は、印刷機18毎にプロファイルを生成・補正するプロファイル生成部80(補正部)と、印刷機18毎に指定色を管理する指定色管理部82とを備える。ここで、指定色とは、印刷機18を用いて印刷物34上で再現させるべく、カラーチップの色見本等により指定された色である。
さらにまた、指定色管理部82は、後述するカラーチャート条件(基準色、色差間隔及びガマットマッピング方法)を設定するカラーチャート条件設定部84(設定部)と、印刷機18の色値のずれを補正する色ずれ補正部86と、所定のカラーパッチのL*a*b*値(デバイス非依存データ)を取得し、該L*a*b*値をCMYK値(デバイス依存データ)に変換するパッチ色データ変換部88(取得部、第1取得部、データ変換部)と、所定の色が出力デバイス(印刷機18を含む。)のガマットの範囲内の色か否かを判定するガマット内外判定部90(判定部)と、複数のガマットマッピングアルゴリズム(以下、「マッピング方法」という。)に従って第1ガマットを第2ガマットに色変換するマッピング部92と、複数のマッピング方法から一のマッピング方法を選択するマッピング選択部94(選択部)と、表示された指定色調整用カラーチャート34cの模擬画像上の指示座標に対応する色が有する色値を算出する指示色算出部96とから構成される。
さらに、RIP52は、電子原稿のラスタ形式化の際に、印刷機18の解像度等に対応した画像拡縮処理や、印刷フォーマットに対応した回転・反転処理等の種々の画像処理を行うことができる。
さらに、印刷機ドライバ56は、CMYK値からインク各色(CMYK、LC、LM、又はW)に対応するインク射出制御用データを作成する。このインク射出制御用データは、印刷機18のインク射出動作(ON・OFFやインクドット径の大小等)との間でその印刷機18固有のデータ定義に従って関連付けられている。その際、8ビット多階調画像から2値画像等の低階調画像への変換を要するが、ディザマトリクス法や誤差拡散法等の公知のアルゴリズムを用いることができる。
さらに、目標プロファイル処理部72又は印刷プロファイル処理部74は、印刷機18の印刷モードに応じてプロファイルを補正することができる。ここで、印刷モードとは、印刷ヘッドのノズル数、印刷ヘッドの走査時におけるインク射出タイミング(片方向・双方向)、パス数、搭載インク色数及びその種類、インク射出制御用データ作成のアルゴリズム等の、印刷に関する各種設定をいう。
さらに、CPU等で構成される制御部(不図示)は、この画像処理に関するすべての制御を行う。すなわち、本体22内部の各構成要素の制御(例えば、記憶部70のデータ読出し・書込み)のみならず、I/F64を介して表示装置24に表示制御信号を送信する制御や、I/F68を介して測色計20から測色データを取得する制御等も含まれる。
本実施形態の画像処理装置16は以上のように構成され、上述した各画像処理機能は、基本ソフトウェア(オペレーティングシステム)上で動作する、例えば記憶部70に記憶された応用ソフトウェア(プログラム)を用いて実現することができる。
図4は、本実施形態に係る指定色の入力のための設定画面の例を示す図である。
設定画面100には、左上から右下の方に順番に、6つのラジオボタン102a〜102fと、3個のテキストボックス104と、3個のテキストボックス105と、4個のテキストボックス106と、2個のプルダウンメニュー107、108と、2個のプルダウンメニュー109、110と、[測色]と表示されたボタン112と、カラーホイール114と、参照パッチ116と、[中止]、[OK]と表示されたボタン118、120とが設けられている。
ラジオボタン102a〜102fの右方には、「L*a*b*で指定」、「RGBで指定」、「CMYKで指定」、「測色計で測定」、「特色名で指定」、「カラーホイールで指定」とそれぞれ表示されている。
3個のテキストボックス104、3個のテキストボックス105、4個のテキストボックス106には、キーボード28(図1参照)を用いて数字を含む各種文字の入力が自在である。
プルダウンメニュー107は、3個のテキストボックス105の右方に設けられており、欄には「sRGB」からなる文字が表示されている。また、プルダウンメニュー108は、4個のテキストボックス106の右方に設けられており、欄には「ISO coated」からなる文字が表示されている。
プルダウンメニュー109、110は、4個のテキストボックス106の下方に設けられており、欄には「測色計の機種名」、「特色名のリスト」からなる文字がそれぞれ表示されている。
カラーホイール114は、カラーパレット122、環状ポインタ124、カラーバー126、三角ポインタ128とから構成される。
カラーパレット122は矩形状であり、その領域内には連続的に変化する色が表示されている。カラーパレット122の左方には「L」なる文字と上下方向を向く2本の矢印とが、その下方には「C」なる文字と左右方向を向く2本の矢印とがそれぞれ設けられている。また、カラーパレット122の領域内(図4では右上部)には環状ポインタ124が設けられており、その領域内での移動が自在である。
カラーパレット122の右方には、上下方向に延在する縦長のカラーバー126が設けられている。カラーバー126には、その上下方向に連続的に変化する色が表示されている。また、カラーバー126の右方には三角ポインタ128が設けられており、カラーバー126に沿って上下方向に移動が自在である。
カラーホイール114の右方に設けられた矩形状の参照パッチ116には、環状ポインタ124が指示する色と同一色が表示されている。
図5は、本実施形態に係る指定色の調整のための第一の設定画面の例を示す図である。
設定画面130には、上から順番に、プルダウンメニュー132と、[推奨メディア]と表示されたボタン133と、表示欄134と、カラーパレット136と、グラフ138と、上下方向に並設された3個のスピンボタン付テキストボックス140と、グラフ142と、[中止]、[次へ]と表示されたボタン144、146が設けられている。
プルダウンメニュー132の左方部には「印刷プロファイル」なる文字列が表示されている。表示欄134には、上から順番に「ガマット内」、「ガマット境界」及び「ガマット外」からなる欄が設けられており、「ガマット外」の左方別欄には「○」が表示されている。
カラーパレット136は、「指定色」と表示された色見本パッチ148と、「印象一致(A)」、「明度一致(B)」、「彩度一致(C)」及び「最短距離(D)」と表示され、それぞれ類似する色からなる候補色パッチ150a、150b、150c及び150d、「基準色」と表示された基準色パッチ150eとから構成されている。また、その左方部には「マッピング方法設定」なる文字列が表示されている。
3個のスピンボタン付テキストボックス140は、キーボード28又はマウス30の所定の操作により、後述する基準色におけるL*a*b*値をそれぞれ独立に設定可能である。
グラフ138及び142は、L*a*b*空間の所定の断面図が二次元座標系(L*−a*平面、a*−b*平面、L*−b*平面のいずれかの座標系)として表示されたものであり、その二次元座標系には数点のプロットがなされている。
図6は、本実施形態に係る指定色の調整のための第二の設定画面の例を示す図である。
設定画面160には、上から順番に、パッチ選択画像162と、上下方向に並設されたスピンボタン付テキストボックス164、166(2組)と、[カラーチャート印刷]、[戻る]、[確定]、[中止]と表示されたボタン168、170、172、174とが設けられている。
パッチ選択画像162は、指定色調整用カラーチャート34cの描画を模した画像から構成されており、行番号176と、列番号178と、マトリクス画像180と、[詳細設定]と表示されたボタン182とを備える。
さらに、マトリクス画像180は、太線で示される外枠184と、27個のカラーパッチ186と、破線で示される12本の補助線188と、十字形状のポインタ190とから構成される。
12本の補助線188は、縦線9本、横線3本から構成されており、各カラーパッチ186の中心位置を通るように格子状に設けられている。
2組のスピンボタン付テキストボックス164、166は、キーボード28又はマウス30の所定の操作により、基準色の色値(L*,a*,b*)、色差間隔(ΔL*,Δa*,Δb*)の値をそれぞれ独立に設定可能である。
図7は、本実施形態に係る指定色の調整のための第三の設定画面の例を示す図である。
設定画面200には、上から順番に、「指定色設定一覧」と表示された表示欄202と、「電子原稿の修正値」と表示された表示欄204と、「特色DBの修正値」と表示された表示欄206と、[戻る]、[終了]と表示されたボタン208、210とが設けられている。
表示欄202には、特色名が表示された欄212と、L*a*b*値が表示された欄214と、RGB値が表示された欄216と、CMYK値が表示された欄218と、色値等の指定方法が表示された欄220とから構成される。
表示欄204には、L*a*b*値が表示された欄222と、RGB値が表示された欄224と、CMYK値が表示された欄226と、デバイス依存データがRGB値である目標プロファイルの種類の設定が自在であるプルダウンメニュー228と、デバイス依存データがCMYK値である目標プロファイルの種類の設定が自在であるプルダウンメニュー230とが設けられている。
表示欄206には、RGB値が表示される欄232と、CMYK値が表示される欄234とから構成される。なお、RGB値、CMYK値のいずれの値も0〜100%の百分率で表示されている。
図8は、本実施形態に係るカラーチャート条件の設定画面の例を示す図である。
設定画面240には、上から順番に、パッチ選択画像242と、スライダバー244、246と、[戻る]、[設定変更]と表示されたボタン248、250とが設けられている。
パッチ選択画像242は、図6に示すパッチ選択画像162と類似した外観構成であり、行番号252と、列番号254と、太線で示される外枠256と、破線で示される30本の補助線258とを備える。なお、30本の補助線258は、縦線25本、横線5本から構成されており、格子状に設けられている。
スライダバー244は、設定画面240の左右方向に延在するゲージ260と、該ゲージ260上に左右方向に移動が自在であるスライダ262が設けられている。ゲージ260左端の左方部には「カラーパッチ個数」なる文字が表示されており、スライダ262の下方部には目盛「5」の位置を指示する矢印264が表示されている。
スライダバー246は、設定画面240の左右方向に延在するゲージ266と、該ゲージ266上に左右方向に移動が自在であるスライダ268が設けられている。ゲージ266左端の左方部には「次の色差間隔」なる文字が表示されており、スライダ268の下方部には目盛「大」寄りの位置を指示する矢印270が表示されている。
スライダバー244の右方部には、「矢印の指示値は現在の推奨値です。」からなる文字列272が表示されている。
図9は、本実施形態に係る推奨するメディア32の種類を表示する画面の例を示す図である。
確認画面280には、上から順番に、プルダウンメニュー282、284と、2個のラジオボタン286a、286bと、2個のラジオボタン288a、288bと、表示欄290と、[戻る]と表示されたボタン292とが設けられている。
プルダウンメニュー282の左方には「印刷機名」なる文字列が、プルダウンメニュー284の左方には「メディア属性」なる文字列が、それぞれ表示されている。
ラジオボタン286aの左方には「表示項目」と、ラジオボタン286aの右方には「推奨のみ」と、ラジオボタン286bの右方には「すべて」とそれぞれ表示されている。ラジオボタン288aの左方には「表示順」と、ラジオボタン288aの右方には「ガマット距離」と、ラジオボタン288bの右方には「メディア属性」とそれぞれ表示されている。
表示欄290は、「メディア属性」を表示する欄294と、「メディア品目」を表示する欄295と、「ガマット境界までの距離」を表示する欄296と、該欄296の右側に設けられたスクロールバー298とから構成される。なお、表示欄290には、8行分(最上行の見出し欄を除く。)の各種情報を同時に表示可能である。
この実施形態に係る印刷システム10は、基本的には以上のように構成されるものであり、次にその動作について説明する。
図10は、本実施形態に係る印刷システム10を用いて適切な色の印刷物34を得るためのフローチャートである。図1及び図10を主に参照しながら説明する。
先ず、作業者は、形成しようとする印刷物34に関する印刷条件やその観察態様を調査する(ステップS1)。ここで、印刷条件には、印刷に使用する印刷機18の種類、メディア32の種類、又は前述した印刷モード等が含まれる。また、観察態様には、観察光源としての光源の属性(種類、分光データ)のみならず、観察しようとする印刷物34の画像種別も含まれる。この画像種別として、反射画像(反射光源を主光源とする画像)、透過画像(透過光源を主光源とする画像)、又は、混合画像(反射光源及び透過光源を主光源とする画像)が挙げられる。
次いで、作業者は、印刷機18に適切なプロファイルを選定する(ステップS2)。通常、目標プロファイル又は印刷プロファイルは、本体22の記憶部70に保存されている。印刷機18に適切なプロファイルが登録(図3に示す記憶部70に記憶)されていない場合は、印刷プロファイルを別途生成することができる。
次いで、印刷機18を用いて電子原稿を印刷し、印刷物34を得る(ステップS3)。ここで、図示しないラミネート処理装置を用いて印刷物34にラミネート処理を施し、その画像形成面上に保護膜を設けてもよい。そうすれば、画像の擦過性・堅牢性を向上させることができる。
次いで、印刷物34の画像の色を評価し(ステップS4)、画像の色が適切か否かを判断する(ステップS5)。所望の色合いが得られたか否かについての評価方法としては、画像の全体的外観又は部分的外観に着目し、作業者等の目視により良否を判断する方法、あるいは、測色計20を用いて印刷物34の所定の箇所を測色し、その値が所望の範囲内に収まるか否かで判断する方法等を用いることができる。
特に、本実施形態では、カラー画像の所定の箇所に対して指定色(色見本の現物等)が指定されており、当該箇所の色と前記指定色とが略同色であるか否かで判断される。
この画像評価の結果、印刷物34の画像が適切でないと判断された場合は、プロファイルの変更等を行うことにより色の微調整を行う(ステップS6)。この具体的方法としては、プロファイルの再設定・再生成、プロファイルの微調整(現在設定されているプロファイルの補正)、又は電子原稿の印刷データの補正等が挙げられる。
以下、印刷と評価を繰り返すことにより(ステップS3〜S6)、所望の色の印刷物34が得られる。
ここで、プロファイルの生成(ステップS2)の際の、画像処理装置16による画像処理の流れについて、図3を参照しながら詳細に説明する。
記憶部70により記憶された所定のCMYK値データに基づいて、プロファイル用データ生成部78により生成された画像データは、図3に示すように矢印R1の経路から印刷機ドライバ56に供給され、電子原稿の印刷と同様の動作により印刷機18側に供給される。このようにして得られた図示しないプロファイル用カラーチャートの各カラーパッチを、画像処理装置16に接続された測色計20を用いて測色し、L*a*b*の色値を取得する。この色値のデータは記憶部70に一旦記憶される。その後、指定されたCMYK値と得られたL*a*b*との対応関係に基づいて3次元−4次元変換LUTをデータとして含む印刷プロファイルを生成することができる。
また、電子原稿の印刷(ステップS3)の際の、画像処理装置16による画像処理の流れについて、図3を参照しながら詳細に説明する。
編集装置14から供給された電子原稿(PDL形式)が、LAN12及びI/F50を介して画像処理装置16に入力されると、前記電子原稿は、RIP52によりそれぞれ8ビットのCMYKラスタ形式(デバイス依存の画像データ)に展開され、目標プロファイル処理部72によりL*a*b*(デバイス非依存の画像データ)に変換され、印刷プロファイル処理部74によりCMYK値(デバイス依存の画像データ)に変換され、印刷機ドライバ56により印刷制御信号(すなわち、インク射出制御データ)に変換され、I/F58を介して印刷機18に供給される。その後、印刷機18により所望の印刷物34が印刷される。
このとき、複数の設定条件に対応する目標プロファイル及び印刷プロファイルが予め記憶部70に記憶されているので、予め設定された各種条件に応じて選択的に目標プロファイル及び印刷プロファイルが目標プロファイル処理部72及び印刷プロファイル処理部74に供給される。ここで、各プロファイルに対して印刷機18の印字モード等を加味した補正を適宜行うように構成すれば、さらに適切な色変換処理を行うことができる。
以上、本実施形態に係る画像処理方法を用いて適切な印刷物34を得るためのフローチャートについて説明した。次いで、ステップS6での色の微調整方法(プロファイルの変更方法を含む。)について更に詳細に説明する。
図11は、指定色調整用カラーチャート34cを用いた指定色の調整方法(ステップS6)に関するフローチャートである。
先ず、指定色の色値を入力する(ステップS61)。
図4に示すように、作業者は、表示装置24(図1参照)により表示される設定画面100において、提示されている指定色の色値の入力方法(図4では6通り)のうち1つを選択し、その入力方法に対応するラジオボタン102a〜102fをクリックする。
ラジオボタン102aに対応する「L*a*b*で指定」とは、既知の指定色のL*a*b*値を数字で直接入力する方法である。具体的には、キーボード28(図1参照)を用いて、3個のテキストボックス104に、設定画面100の左側からL*、a*、b*の配列順に色値を入力する。
この入力例として、作業者は、カラーチップ等の色見本を画像処理装置16とは接続されていない外部の測色計(不図示)により測色し、そのL*a*b*値を入力することができる。
ラジオボタン102bに対応する「RGBで指定」とは、既知の指定色のRGB値の数値を直接入力する方法である。具体的には、キーボード28(図1参照)を用いて、3個のテキストボックス105に、設定画面100の左側からR、G、Bの配列順に色値を入力する。
この入力例として、作業者は、色見本の現物を所持していないが、指定色としてのRGB値を知っている場合には、この値を直接入力することができる。
また、作業者は、電子原稿のデータの属性に応じて適切な目標プロファイルを選択し、プルダウンメニュー107を用いて設定する。そうすると、選択された目標プロファイル(図4では、「sRGB」)に対応するRGB−L*a*b*変換式により、3個のテキストボックス105に入力されたRGB値は、L*a*b*値に変換される。
ラジオボタン102cに対応する「CMYKで指定」とは、既知の指定色のCMYK値の数値を直接入力する方法である。具体的には、キーボード28(図1参照)を用いて、4個のテキストボックス106に、設定画面100の左側からC、M、Y、Kの配列順に色値を入力する。
この入力例として、作業者は、色見本の現物を所持していないが、指定色としてのCMYK値を知っている場合には、この値を直接入力することができる。
また、作業者は、電子原稿の画像データの属性に応じて適切な目標プロファイルを選択し、プルダウンメニュー108を用いて設定する。そうすると、選択された目標プロファイル(図4では、「ISO coated」)に対応するCMYK−L*a*b*変換式により、4個のテキストボックス106に入力されたCMYK値は、L*a*b*値に変換される。
ラジオボタン102dに対応する「測色計で測定」とは、カラーチップ等の色見本を測色計20により測色し、そのL*a*b*値を入力する方法である。具体的には、測色計20で測色可能な状態となるように色見本をセットした後、[測色]ボタン112をクリックすると、測色計20により得られた色値が、I/F68を介して、画像処理装置16側に自動的に取得され、その後記憶部70に記憶される。
ラジオボタン102eに対応する「特色名で指定」とは、記憶部70やデータベースDB等に記憶・管理されている特色名を参照することにより、該特色名に対応するL*a*b*の色値を取得する方法である。
ラジオボタン102fに対応する「カラーホイールで指定」とは、カラーホイール114を用いてL*a*b*の色値を取得する方法である。具体的には、作業者は、マウス30のドラッグ操作により、カラーパレット122上の環状ポインタ124を移動させる。そうすると、横方向は彩度(C)、縦方向は明度(L)を変数として指定色を変化させることができる。また、作業者は、マウス30のドラッグ操作により、カラーバー126上の三角ポインタ128を上下方向に移動させる。そうすると、縦方向は色相(H)を変数として指定色を変化させることができる。
環状ポインタ124、三角ポインタ128を移動させると、現在の指示値が更新され、該指示値(LCH)がL*a*b*値に変換され、該L*a*b*値が表示装置24のプロファイルによりRGB値に変換され、該RGB値に基づいて表示装置24が駆動され、参照パッチ116として表示装置24の画面上に表示される。
ラジオボタン102a〜102eにより選択された入力方法により色値が入力されていると、その値がカラーホイール114上の環状ポインタ124、三角ポインタ128の指示値に反映されている。その値から参照パッチ116に表示されている色と、色見本の現物とを比較観察しながら、入力値をさらに微調整することができる。
作業者は、6通りのうち一の入力方法を選択し、指定色に関する情報を入力した後、[OK]ボタン120をクリックする。そうすると、入力された指定色の色値は記憶部70に記憶される。なお、[中止]ボタン118のクリックにより、指定色の入力作業は中止される。
次いで、作業者は、基準色の初期値を設定する(ステップS62)。ここで、基準色の初期値の設定方法に関して、図12のフローチャートを参照しながら説明する。
先ず、指定色の色値が読み出される(ステップS621)。読み出されるL*a*b*値は、設定画面100(図4)から設定された値であって、記憶部70により記憶されている。
次いで、読み出されたL*a*b*値が、印刷機18のガマット内の色か否かを判定する(ステップS622)。この判定は、ガマット内外判定部90により行われる。
作業者は、図5に示す設定画面130において、プルダウンメニュー132を用いて色調整を行おうとする印刷機18及びメディア32の組み合わせの種類を選択する。そうすると、選択された印刷機18及びメディア32の組み合わせの種類に応じて、記憶部70に記憶されている印刷プロファイルが取得される。
使用するメディア32の種類が予め決定されている場合はその種類を選択すればよい。しかし、使用可能なメディア32の種類が多数存在しその中から1種類を選択する場合、各メディア32の印刷特性を知らない作業者にとってその選択が困難である。そこで、推奨するメディア32を別の画面に表示させることができる。
作業者は、プルダウンメニュー132の右方にある[推奨メディア]ボタン133をクリックする。そうすると、設定画面130は図9に示す確認画面280に遷移される。
作業者は、この確認画面280上で、プルダウンメニュー282を用いて実際に印刷物34を印刷させる印刷機18の名称を選択する。次いで、作業者は、プルダウンメニュー284を用いて候補として抽出されるメディア32の属性を選択する。図9では、例えば「反射メディアすべて」を選択しているので、反射画像を印刷するためのメディア32が候補として抽出される。その他のメディア属性としては、透過画像を印刷するためのメディア32を抽出する「透過メディアすべて」や、基材がポリ塩化ビニルからなるメディア32を抽出する「塩化ビニル」や、すべてのメディア32を抽出する「すべて」等が選択できる。
作業者は、メディア32の表示項目のうち、「推奨のみ」か「すべて」のいずれかをラジオボタン286a、286bで択一的に選択する。ラジオボタン286aにより「推奨のみ」が選択されると、プルダウンメニュー284の選択により抽出されたメディア32群のうち、推奨条件を満たすメディア32のみが表示欄290に表示される。一方、ラジオボタン286bにより「すべて」が選択されると、プルダウンメニュー284の選択により抽出されたメディア32群のすべてが表示される。
なお、上記推奨条件は種々設けることができるが、本実施形態では入力された指定色がガマット内の色であることとする。
作業者は、メディア32の表示順のうち、「ガマット距離」か「メディア属性」のいずれかをラジオボタン288a、288bで択一的に選択する。ラジオボタン288aにより「ガマット距離」が選択されると、指定色の色値と各メディア32のガマット境界との距離Δe(以下、「ガマット距離」という。)が大きい順に表示される。このガマット距離は、ガマット内の色は正の値、ガマット境界上の色は0、ガマット外の色は負の値をとるように定義される。ガマット内の色はガマット境界から離れるほど値が大きく、ガマット外の色はガマット境界から離れるほど値が小さくなる(数値の絶対値は大きくなる)。一方、ラジオボタン288bにより「メディア属性」が選択されると、欄294に表示される「メディア属性」について所定の順(例えば、アルファベット順)に表示される。
印刷機18等の各種選択がなされると同時に、ガマット内外判定部90により、各メディア32の印刷プロファイルが取得され、指定色が各メディア32のガマット内の色であるか否かがそれぞれ判定される。
図9では、プルダウンメニュー282により「PRINTER−1」が、プルダウンメニュー284により「反射メディアすべて」が、ラジオボタン286aにより「推奨のみ」が、ラジオボタン288aにより「ガマット距離」がそれぞれ選択されている。よって、印刷機名が「PRINTER−1」である印刷機18を用いて「反射メディアすべて」を印刷する際、ガマット距離が正の値であるメディア32に関する情報のみが、ガマット距離が大きい順番に上から表示欄290に表示される。
メディア32に関する情報として、例えば、欄294にはメディア属性が表示され、欄295にはメディア品目が表示され、欄296には、欄295に示すメディア32のガマット距離Δeの値が表示される。表示欄290に表示されるメディア32の種類の数が8を超える場合は、スクロールバー298を上下方向に移動させることで他の種類が表示可能である。
なお、指定色がガマット外の色であることを表記する方法は符号(マイナス)に限られず、文字や欄等の表示色を異ならせる方法等により識別してもよい。また、推奨しないメディア32の種類を、推奨するメディア32の種類と併せて表示欄290に表示する場合には、その箇所にハッチングを付す等により、そのメディア32を除外すべき旨を明示してもよい。
作業者は、推奨されるメディア32の種類を確認した後、表示欄290の右方にある[戻る]ボタン292をクリックする。そうすると、確認画面280は図5に示す設定画面130に遷移される。
作業者による印刷プロファイルの種類の選択後、ガマット内外判定部90(図3参照)により、前記印刷プロファイルが備える色変換LUTを用いて、設定された基準色についての印刷機18のガマットの属否が判定される。ここで、「ガマットの属否」とは、所定の色がガマット内の色であるか否かの属性をいう。
もし、ガマット内の色であると判定された場合、表示欄134の「ガマット内」欄の左方にある別欄に丸印が付される。
作業者は、表示欄134で「ガマット内」であることを確認すると、[次へ]ボタン146を押す。そうすると、指定色の色値が基準色として設定される(ステップS623)。
なお、本実施の形態では、ガマット内の色であるか否か(すなわち、ガマット外の色であるか)の判定のみならず、ガマット内であってもガマット境界近傍の色かをも判定することができる。この場合、表示欄134の「ガマット内」欄の左方にある別欄に丸印が付される。
一方、ガマット外の色であると判定された場合、指定色は、複数のマッピング方法によりマッピングがなされる(ステップS624)。マッピング部92により、印象一致によるマッピング方法、明度一致によるマッピング方法、彩度一致によるマッピング方法、最短距離によるマッピング方法を用いて、色値がそれぞれガマットの範囲内の色にマッピングされる。以下、このマッピングされた色を「変換色」という。
マッピングされた各変換色の色値は、マッピング部92から記憶部70に供給され、その後記憶部70に記憶される。
なお、マッピング部92は、上記した方法以外の方法でマッピングしてもよく、上記した4つ全てのマッピング方法を用いてマッピングする必要はない。マッピング部92は、複数のマッピング方法を用いて取得したガマット外にある色をガマット内の色にマッピングすればよい。
次いで、指定色と、マッピング後の複数の変換色とを表示装置24に同時に隣接させ、比較表示をさせる(ステップS625)。候補色パッチ150a〜150dの背景は、各種マッピング方法に基づいてマッピングされた各変換色が表示されている。
カラーパレット136内の縦長の色見本パッチ148の背景は指定色で表示されている。ここで、図5に示される指定色とは、設定画面100(図4参照)において入力された色であり、以降の色調整作業において変更されない色である。
基準色パッチ150eの背景は基準色で表示されている。ここで、図5に示される基準色とは、現在基準として設定された色であり、再設定により変更が自在な色である。
候補色パッチ150aには「印象一致」が、候補色パッチ150bには「明度一致」が、候補色パッチ150cには「彩度一致」が、候補色パッチ150dには「最短距離」が、それぞれマッピング方法として適用されている。なお、各マッピング方法の具体的内容については後述する。
このように、基準色の初期色としての指定色と、現在の基準色と、前記指定色のマッピング後の各色とを同一画面に且つ隣接して表示させることにより、各色の比較が容易になり、マッピング方法の選択の一助となる。
また、グラフ138には各マッピング方法の概念図が表示されており、均等色空間上での指定色のマッピング結果が各プロットと対応付けられている。これにより、作業者は、マッピング方法とその色変換の傾向を十分に理解することができるので、色調整作業への納得感が得られる。
作業者は、指定色に最も近い色となったマッピング方法、又は、所望する色に近い色となった一のマッピング方法を選択する。なお、候補色パッチ150a〜150dを表示させることなく、一のマッピング方法を単に選択できるようにしてもよい。
作業者は、複数のマッピング方法(図5では、4種類)のうち一のマッピング方法(例えば、「明度一致」とする。)を選択し、該方法に対応する候補色パッチ150bをマウス30でクリックすると、候補色パッチ150bの外周に選択枠152が択一的に設定される。
ガマット内外判定部90では、マッピング方法が選択されたか否かが判断される(ステップS626)。マッピング方法が選択されていないと判断されると、選択されるまでステップS626に留まる。一方、ステップS626でマッピング方法が選択されたと判断すると、選択されたマッピング方法によってマッピングされた変換色が、基準色として設定される(ステップS627)。
設定された基準色がOKであると判断した場合は、作業者は「次へ」ボタン146をクリックする(ステップS628)。
一方、色値の調整の要否を判断し(ステップS629)、必要に応じて色値の調整を行う(ステップS630)。
3個のスピンボタン付テキストボックス140を用いて、各色値L*、a*、b*をそれぞれ独立に調整することができる。また、各色値L*、a*、b*の更新の都度、色値及びの色の表示が変更される(ステップS631)。
さらに、表示装置24上にカラーパレット136の色を適切に表示させるため、記憶部70に記憶された表示装置24の表示プロファイルを用いて色変換した後に、指定色等を表示させることが好ましい。
指定色の色値について既に設定されているので、その値を基準色として用いてもよい。しかし、作業者は、色調整の効率をさらに向上させるために、設定画面130の下方に設けられたグラフ142を参照しながら、予め設定された基準色(L* 0,a* 0,b* 0)を微調整することができる。
基準色の微調整には、スピンボタン付テキストボックス140が用いられる。スピンボタン付テキストボックス140に、設定画面100(図4参照)により既に設定された指定色の色値が表示されている。作業者は、キーボード28によるテキストボックスへの直接入力や、マウス30を用いたスピンボタンの操作により、基準色の値を微調整できる。
グラフ142には、各色のプロットが均等色空間上に表示されている。図示される4点のプロットは、上述の4種類のマッピング方法に対応する。基準色の値を変更すると、グラフ142のプロット位置に即時に反映される。
なお、グラフ142には、ガマットの断面のみならず、その表面を2次元で表示させてもよい。また、4点のプロットは、マッピング方法に応じて異なる色で表示してもよい。これにより、作業者は、マッピング方法とそのマッピング後の色との対応付けについて視覚的に把握できる。
また、基準色の設定値の変更には、図5に示される構成に限られず、スライダバーやカラーホイール等の種々のGUIに関する構成を採り得る。
次いで、指定色調整用カラーチャート34cの色差間隔の初期設定を行う(ステップS63)。色差間隔(ΔL*,Δa*,Δb*)の初期値に関しては、色調整作業の経験則上、適切な値を設けておくことができる。作業者の嗜好に応じて、色差間隔を初期の段階で変更できるようにしてもよい。
このようにして、基準色(L* 0,a* 0,b* 0)及び色差間隔(L* 0,a* 0,b* 0)の初期設定を行う(ステップS62、S63)。これらの値は、GUIを介して画像処理装置16に取得され、記憶部70により記憶され、カラーチャート条件設定部84(図3参照)により設定される。
作業者は、基準色を入力した後、[次へ]ボタン146をクリックする。そうすると、設定画面130は図6に示す設定画面160に遷移される。
次いで、印刷機18の色値のずれを補正する(ステップS64)。所定のカラーパッチ36における色の設計値(L*(des),a*(des),b*(des))に対して、測色計20による実測値(L*(meas),a*(meas),b*(meas))が得られたとする。このとき、補正量L*(diff)、a*(diff)、b*(diff)を(1)〜(3)式のように算出することができる。
L*(diff)=L*(meas)−L*(des) …(1)
a*(diff)=a*(meas)−a*(des) …(2)
b*(diff)=b*(meas)−b*(des) …(3)
このように、画像データを生成する際、各色の設計値に補正量L*(diff)、a*(diff)、b*(diff)を加算することにより、印刷色の僅かな色ずれが補正可能であり、色再現精度を更に向上させることができる。なお、この作業に印刷物34は、後に印刷する指定色調整用カラーチャート34cを援用することができる。
この補正量の値は、記憶部70により一旦記憶される。その後、前記補正量は、色ずれ補正部86(図3参照)に供給されるので、印刷色の色ずれを補正した適切な印刷プロファイルが生成される。
次いで、指定色調整用カラーチャート34cを印刷する(ステップS65)。
色の異なる複数のカラーパッチ36を二次元的に配置する際の色の決定方法の一つとして、均等色空間CIELAB系の3つの変数(L*,a*,b*)についてカラーパッチ36の位置毎に徐々に変化させる方法が考えられる。具体的には、各カラーパッチ36に対応する画素値を、(4)〜(6)式のように決定することができる。
L* i=L* 0+ΔL*×i (iは整数) …(4)
a* j=a* 0+Δa*×j (jは整数) …(5)
b* k=b* 0+Δb*×k (kは整数) …(6)
この場合、基準色は(L* 0,a* 0,b* 0)からなる色に相当し、色差間隔は(ΔL*,Δa*,Δb*)に相当する。指定色調整用カラーチャート34cが有する各カラーパッチ36により形成される色領域のことを「提示領域」と呼ぶことにする。
図13は、例えば、図2に示す指定色調整用カラーチャート34c上のカラーパッチ36の色の設計値を示している。表の左方部、上方部に示される番号は、行番号38、列番号40にそれぞれ対応しており、各欄の上段、中段及び下段はそれぞれ(4)式に示す「i」の値、(5)式に示す「j」の値及び(6)式に示す「k」の値を示す。
このように、指定色調整用データ生成部76(図3参照)により、隣接するカラーパッチ36の色差が略等間隔になるような画像データが生成される。なお、この基準色及び色差間隔は、カラーチャート条件設定部84により予め設定され記憶部70に記憶されているデータを読み出して用いることができる。
指定色調整用データ生成部76により生成された画像データは、図3に示すように矢印R2の経路から印刷プロファイル処理部74に供給され、電子原稿の印刷と同様の動作により印刷機18側に供給される。このようにして得られた指定色調整用カラーチャート34c(図2参照)の各カラーパッチ36は、予め設計した色(L*,a*,b*)を略再現する。
ここで、指定色調整用カラーチャート34cを印刷するための画像データは、TIFFやBitmap等のラスタ画像データに限られず、PDFやPostScript(登録商標)等のPDL形式の画像データでもよい。
指定色調整用カラーチャート34cを印刷する場合における画像処理装置16の動作原理について、図示しないプロファイル用カラーチャートの場合と同様であるため説明を割愛する。
次いで、作業者は、印刷された指定色調整用カラーチャート34cのうちカラーパッチ36を1個選択する(ステップS66)。具体的には、カラーチップや、表示装置24の画面上に表示された色等である目標となる指定色を表す色見本と、指定色調整用カラーチャート34cとを比較観察し、指定色に最も近い色であるカラーパッチ36を選択する。
このように構成しているので、作業者が指定色調整用カラーチャート34cを観察する際にカラーパッチ36の色の変化が略等間隔で視認されるため、指定色に最も近い色であるカラーパッチ36を容易に選択できる。
なお、カラーパッチ36の選択に関して、指定色との近似性が極めて高い場合は1個を選択してもよいし、隣接する4個のカラーパッチ36の中間位置として選択してもよい。また、27個のカラーパッチ36が提示する色のいずれにも該当しない場合は、その範囲外であるとの選択をしてもよい。
あるいは、作業者は、測色計20を用いて各カラーパッチ36を直接測色し、その測色値を手掛かりに指定色に最も近い色であるカラーパッチ36を選択してもよい。
次いで、作業者は、選択したカラーパッチ36の識別情報を入力する(ステップS67)。具体的には、作業者は、入力装置26により、選択されたカラーパッチ36の配置位置に対応した行番号38、列番号40が表す値(図2参照)を入力する。
なお、入力されるカラーパッチ36の識別情報として、配置位置に関する情報のみならず、色情報を用いてもよい。色情報とは、色を特定するための各種情報であり、色見本の現物のみならず、その色値又は種類等が含まれる。色見本の色値には、デバイス依存データあるいはデバイス非依存データが含まれる。色見本の種類には、製造業者名、色見本番号等が含まれる。
予め決定されたカラーパッチ36の個数と色差間隔の値が模擬データ生成部79に供給され、該模擬データ生成部79により、指定色調整用カラーチャート34c上の各カラーパッチ36の配置を模擬した画像データが生成される。図示しない制御部(表示制御部)の表示制御により、前記画像データは、I/F64を介して表示装置24にマトリクス画像180(図6参照)として表示される。設定画面160において、マトリクス画像180の領域内のいずれかの位置を、指示部としてのマウス30(図1参照)でクリックすると、その位置にポインタ190が配置される。
そうすると、マトリクス画像180の一部として表示された各カラーパッチ186と、ポインタ190との相対的位置関係によって、カラーパッチ36の物理的間隔、すなわち色差間隔(ΔL*,Δa*,Δb*)よりも高い分解能で選択色の指示が可能となる。指示色算出部96(図3参照)により、ポインタ190の指示位置からその位置に対応する色値(選択色値)が算出される。その算出例を以下に示す。
図14A及び図14Bは、図6に示すポインタにより所定の色が選択されたときのパッチ選択画像の一部拡大概略図である。例えば、なお、行番号176、列番号178の配置は図6と比較して異なるが、説明の便宜上変更している。
図14Aにおいて、行番号(0)、列番号(0’)を中心として、二次元座標を表示している。
カラーパッチ36の中心位置であるC1の色は(L* 0+ΔL*,a* 0,b* 0)で表される。そうすると、(x,y)=(0.5,0.5)を指示するポインタ190aの位置の色は、内挿による補間演算によって、(L* 0+ΔL*,a* 0+0.5・Δa*,b* 0+0.5・Δb*)と算出される。
図14Bにおいて、行番号(0)、列番号(0”)を中心として、二次元座標を表示している。
C2の色は(L* 0−ΔL*,a* 0,b* 0)で表される。そうすると、(x,y)=(−0.7,1.7)を指示するポインタ190bの位置の色は、外挿による補間演算によって、(L* 0−ΔL*,a* 0−0.7・Δa*,b* 0+1.7・Δb*)と算出される。
あるいは、カラーパッチ36の提示領域を超えた場合、すなわち、x<−1、1<x(又はy<−1、1<y)のときには、カラーパッチ36の色の提示範囲の圏外と判断し、別の演算を施してもよい。
なお、ガマット外の色のように色再現できない領域や、ガマット近傍の色のように非線形性が強く色再現精度が低下する領域にある色のカラーパッチ36を印刷する際に、作業者への注意喚起という観点で、音声や画面表示等による警告を促すことが好ましい。
また、そのカラーパッチ36の位置に対応するカラーパッチ186(図6参照)に識別印を付すことが好ましい。識別印を付すことには、カラーパッチ186の周辺にマークを付するのみならず、カラーパッチ186自体を変形させることも含まれる。
例えば、(4)〜(6)式に基づいて算出された色(L*,a*,b*)がガマット外の色である場合は、その色に対応するカラーパッチ186の画素値を置き換え、黒色パッチを表示させることが好ましい。そうすれば、作業者は、指定色調整用カラーチャート34cの印刷前に、黒色パッチの箇所は選択候補から除外されている旨を知ることができる。
また、ガマット内の色であるが、ガマット境界の近傍色である場合は、その色に対応するカラーパッチ186の外周に太線の枠を付し、太枠パッチを表示させることが好ましい。そうすれば、作業者は、指定色がガマットの境界近傍であることを意識しながら色調整を行うことができる。
さらに、指定色調整用カラーチャート34cと同等の描画仕様にしているので、作業者にとって対応関係が明確になり好ましい。
さらに、ガマットの属否を明確にするため、黒色パッチと太枠パッチのように、異なる形態で表示されることがさらに好ましい。さらにまた、識別印を付する手段は、黒色パッチの代わりに白色にしてもよいし、カラーパッチ186の周辺に所定の識別印(○×等)を付してもよいことはいうまでもない。
次いで、作業者は、選択された1個のカラーパッチ36によって指定色と略同色を再現できたか否かを判断する(ステップS68)。その結果、略同色でなく更に選択の余地があるものと判断した場合は、作業者は次の基準色及び色差間隔を再設定する(ステップS69)。
作業者は、図6に示すマトリクス画像180内の所定位置でマウス30(図1参照)のクリック操作を行うと、ポインタ190の指示位置が変更され、スピンボタン付テキストボックス164の表示値が即時に自動更新され、新たな基準値が設定される。
色差間隔に関しては、スピンボタン付テキストボックス166を用いて再設定できる。例えば、さらに詳細に色調整を行いたい場合は色差間隔を小さく設定すればよく、指定色がカラーパッチ36の提示領域の範囲外にあると判断した場合は、色差間隔を大きく設定すればよい。
このような作業には、ある程度の色に関する知識と熟練度を要する。そこで、推奨値を参照しながらカラーチャートの設定を行うことができる。作業者が[詳細設定]ボタン182をクリックすると、設定画面160は図8に示す設定画面240に遷移される。
設定画面240の上方部に設けられたパッチ選択画像242は、指定色調整用カラーチャート34cの二次元的配置を模した画像である。縦線及び横線から構成される補助線258の各交点が各カラーパッチ36の中央位置に相当する。
なお、本実施の形態でのパッチ選択画像242には、各カラーパッチ36の形状が省略して表示されているが、カラーパッチ36との配置関係が把握できる描画仕様であれば、その表示態様は問わない。
スライダバー244のスライダ262は、現在、ゲージ260上の「5」の位置を指し示している。これは、正方状に配設されたカラーパッチ36の各段における一辺あたりの個数(以下、「パッチ個数」という。)を表している。よって、L*、a*、b*のいずれも5通りの値を取り得ることから、5×5×5=125個のカラーパッチ36が配設されることになる。
作業者は、スライダ262を左右方向に移動させることにより、3〜7個の範囲でパッチ個数を変更することができる。そして、パッチ個数の設定を変更すると、前記パッチ個数に対応するように、パッチ選択画像242の描画仕様が即時に変更される。
スライダバー246のスライダ268は、現在、ゲージ266上の略中央位置を指し示している。作業者は、スライダ268を左右方向に移動させることにより、予め設定された範囲内で次の色差間隔を変更することができる。
矢印264、270は、「パッチ個数」及び「次の色差間隔」の現在の推奨値に相当するゲージ260、266上の位置を指示する(文字列272の表記を参照)。この推奨値は、カラーパッチ36の過去の選択履歴、入力された指定色の色値、印刷機18のガマット特性等を総合的に考慮して、決定することができる。
作業者は、推奨値に従って、あるいは自らの好みで指定色調整用カラーチャート34cの各設定を変更する場合は[設定変更]ボタン250をクリックし、かかる設定の変更を行わない場合は[戻る]ボタン248をクリックする。そうすると、設定画面240は図6に示す設定画面160に再び遷移される。
作業者は、パッチ個数、基準色及び色差間隔を再設定した後、図6に示す[カラーチャート印刷]ボタン168をクリックする。すると、これらの値が模擬データ生成部79に供給され、該模擬データ生成部79により新たに画像データが生成され、該画像データは表示装置24にマトリクス画像180として表示される。換言すれば、更新されたマトリクス画像180は、設定画面240で設定された描画仕様、すなわち、次に印刷される指定色調整用カラーチャート34cと同様の描画仕様を有している。
指定色調整用カラーチャート34cが印刷機18により印刷されると、設定の変更内容に応じてカラーパッチ36の個数が変更され、基準色及び色差間隔が変更される。
なお、カラーパッチ36の個数をスライダバー244(図8参照)で変更した後、その変更値に応じて、設定画面160(図6参照)や設定画面240(図8参照)に更新表示させるタイミングは問わない。例えば、指定色調整用カラーチャート34cを印刷する前に更新表示してもよいし、指定色調整用カラーチャート34cの印刷後であって、ポインタ190(図6参照)の指示操作により選択色値を取得した後に更新表示してもよい。
このように、再設定された次の基準色及び色差間隔に基づいて指定色調整用カラーチャート34cが印刷される。なお、指定色の調整(ステップS62)の途中で[中止]ボタン174をクリックするとこの作業は中止される。
以上のようにして、指定色調整用カラーチャート34c上において指定色と同色が再現されるまでこの作業を繰り返す(ステップS65〜S69)。一方、指定色と同色が再現されたと判断された場合、作業者は[確定]ボタン172をクリックする。
そうすると、ステップS64(図11参照)で算出された色ずれ補正量、ステップS69(同参照)で、設定画面160(図6参照)を介して、最後に設定された基準色の色値(L*,a*,b*)、色差間隔(ΔL*,Δa*,Δb*)及びポインタ190(図6参照)の指示値に基づいて印刷プロファイルは変更され(ステップS70)、指定色の調整作業は終了する。
具体的には、パッチ色データ変換部88により、指定色に最も近い色として、印刷された指定色調整用カラーチャート34cの中から選択されたカラーパッチ36に応じた色値(選択色値、第1の色値)が取得される。また、第2取得部としての入力装置26を介して、指定色の色値は、第2の色値として本体22側に入力され、取得される。そして、プロファイル生成部80により、パッチ色データ変換部88からの第1の色値と、入力装置26からの第2の色値に基づいて、印刷機18のプロファイルが補正される。
あるいは、印刷プロファイルを変更するのではなく、電子原稿のデータを直接補正するようにしてもよい。なお、電子原稿のデータには、写真やコンピュータグラフィック等のデータの他に、ロゴマーク等のイラストデータや、グラデーション等の色値を指定してあるデータも含まれる。以下、その一例を示す。
作業者が、設定画面160の[確定]ボタン172(図6参照)をクリックすると、ステップS64で算出された色ずれ補正量、ステップS69で、設定画面160(図6参照)を介して、最後に設定された基準色の色値(L*,a*,b*)、色差間隔(ΔL*,Δa*,Δb*)及びポインタ190(図6参照)の指示値に基づいて最終的な修正値L*a*b*が算出されるとともに、設定画面160は図7に示す設定画面200に遷移される。
図7の表示欄202には、設定画面100(図4参照)で入力された指定色に関する情報と同一の内容が表示されるので、作業者はその内容を容易に確認できる。例えば、特色名が提示された場合は、欄212にその特色名が表示される。あわせて、前記特色名に対応するL*a*b*値が欄214に表示され、前記特色名に対応するRGB値が欄216に表示され、前記特色名に対応するCMYK値が欄218に表示される。さらに、その色値の指定方法が「L*a*b*で指定」の旨も欄220に表示される。
なお、図4に示す「RGBで指定」で指定色が入力された場合、欄216にはRGB値が表示される。また、「CMYKで指定」で指定色が入力された場合、欄218にはCMYK値が表示される。「カラーホイールで指定」で指定色が入力された場合、欄214にはL*a*b*値が表示される。
プルダウンメニュー228、230には、初期設定として、図4に示す設定画面100のプルダウンメニュー107、108で設定された目標プロファイルが表示されている。選択された目標プロファイルに応じて、表示欄204の欄224にはRGB値、欄226にはCMYK値がそれぞれ自動的に表示される。
このRGB値は、プルダウンメニュー228で選択された目標プロファイルが備える3次元−3次元LUTに基づいて算出される。また、このCMYK値は、プルダウンメニュー230で選択された目標プロファイルが備える3次元−4次元LUTに基づいて算出される。
作業者は、L*a*b*値、RGB値、CMYK値の修正値又は特色名を確認した後、[終了]ボタン210をクリックする。その後、作業者は、図示しない設定画面に修正値又は特色名を入力する。すると、電子原稿のデータのうち、指定色として色が指定された箇所の修正値に置換することにより、印刷色を調整することができる。L*a*b*値の場合は直接的に置換され、RGB又はCMYKの場合は目標プロファイルを用いて得られたL*a*b*に置換することにより、電子原稿の色値を補正することができる。
さらに、自動又は手動により、特色データベースが管理する色情報{特色名と色値(L*a*b*又はCMYK)との対応付け}を新たな修正値に更新させることができる。この更新された特色データを用いることにより、印刷物34の色を調整することができる。例えば、特色データベースのL*a*b*を更新した場合はL*a*b*で定義された電子原稿のデータに対し、特色データベースのCMYKを更新した場合は印刷プロファイルを用いて印刷機18のCMYK値に変換された電子原稿のデータに対し、それぞれ色値を補正することができる。
このように、電子原稿の色値を補正するために、選択色値に応じたデバイス依存データ又はデバイス非依存データのうち少なくとも1つを表示装置24に表示させることで、作業者は、その表示された色値を参照しながら円滑に作業を行うことができる。そして、作業者が複数の補正方法から所望の方法を選択できるように、複数種の色値を併せて表示してもよい。
以上のようにして、指定色の調整作業が完了する(ステップS6)。
ところで、上述した各マッピング方法の概要について図15Aを参照しながら詳細に説明する。ガマットGはL*a*b*の均等色空間内の閉空間で表現されるが、ここでは、説明の便宜上、縦軸をL*とし、横軸をa*(又はb*)として二次元的に表記する。
印刷機18のガマットGは、ガマット境界300の内側の閉じた領域で表現されるものとする。指定色302は、ガマットGの範囲外であると判断された色である。この指定色302をガマットG内の所定の色に変換する。
色304は、印象一致によるマッピング方法によりマッピングされた色を示している。ここで、印象一致によるマッピング方法とは、指定色の色域(青色、黄色、緑色、赤色等)に応じて異なるマッピング方法を用いてマッピングする方法である。そうすれば、CIELAB系の均等色空間の歪み、すなわち、色の数値と視覚の感度特性との対応関係のずれを修正して、視覚の感度特性に一層近づけることができる。
例えば、青色の領域は彩度方向の変化に対する感度が低い傾向に鑑みて、指定色の色域が青色付近である場合はJCh空間での最短距離によるマッピング方法を選択すると好ましい。
色306は、明度一致によるマッピング方法によりマッピングされた色を示している。ここで、明度一致によるマッピング方法とは、指定色302の明度と略一致するガマットG内の色のうち、指定色302との色差が最小となる色にマッピングする方法である。
色308は、彩度一致によるマッピング方法によりマッピングされた色を示している。ここで、彩度一致によるマッピング方法とは、指定色302の彩度と略一致するガマットG内の色のうち、該指定色302との色差が最小となる色にマッピングする方法である。
色310は、最短距離によるマッピング方法によりマッピングされた色を示している。ここで、最短距離によるマッピング方法とは、指定色302との色差が最小となるガマットG内の色にマッピングする方法である。
図15Bは、図15Aに示す明度一致及び彩度一致のマッピング方法の変形例を示す図である。
図15Aの例では、明度又は彩度の差にのみに注目し、指定色302との色差の許容値に関しては一切考慮されていなかった。図15Bに示す変形例は、指定色302との色差の許容値を考慮しながらも、明度・彩度が略一致する色を選択するものである。
まず、指定色302とガマットGとの最短距離ΔC* minよりも大きい値であるΔC*を許容される色差(許容誤差)として設定する。すると、指定色302を中心とする半径ΔC*の円領域と、ガマットGの領域とが重複する重複領域312が選択され得る色の領域に該当する。
重複領域312内の色のうち、指定色302との明度の差が最小となる色314を選択しマッピングする方法が明度優先である。また、重複領域312内の色のうち、指定色302との彩度の差が最小となる色316を選択しマッピングする方法が彩度優先である。このようなマッピング方法を用いても良い。
次いで、指定色調整用カラーチャート34cのうち指定色に最も近いカラーパッチ36の選択結果を設定する別の方法について、図16〜図21を参照しながら詳細に説明する。
図16は、本実施形態の変形例に係る指定色の調整のための第二の設定画面である。
設定画面400の中央部には、指定色調整用カラーチャート34cを模したパッチ選択画像402が設けられている。パッチ選択画像402の上方には、左右方向に延在するカラーバー404が設けられている。カラーバー404の右端から左端にかけてL*が高くなるように連続階調の色で表示されている。パッチ選択画像402の左方には、上下方向に延在するカラーバー406が設けられている。カラーバー406の下端から上端にかけてa*が高くなるように連続階調の色で表示されている。パッチ選択画像402の左下方には、左右方向に延在するカラーバー408が設けられている。カラーバー408の右端から左端にかけてb*が高くなるように連続階調の色で表示されている。
パッチ選択画像402は、27個のカラーパッチ410で構成されており、カラーパッチ410の表示色は、上述した(1)式〜(3)式及び図13に示す通りである。27個のカラーパッチ410の中央に位置する中央パッチ412に表示される色は、現在設定されている基準色である。また、カラーバー404、406、及び408の中央位置の色は、いずれも基準色(中央パッチ412の色)となるように表示されている。
図17に示すように、別のウィンドウに設定画面414も併せて表示される。パッチ個数と色差間隔(ΔL*、Δa*、Δb*)をそれぞれ独立に変更が自在である4個のプルダウンメニュー416と、「中央位置の選択」と表示されたチェックボックス418、[更新]と表示されたボタン420とから構成される。
設定画面414のチェックボックス418をチェックした後に[更新]ボタン420をクリックすると、設定画面400が図18に示すように変化する。
新たな設定画面400Sには、カラーパッチ410の位置に重畳するように設けられた27個の表示パッチ422(3行3列を単位とした表示パッチ群424a、424b、424c)の外周に設けられた8個ずつの小ボタン426a、426b、426cと、カラーバー404に重畳する位置に設けられた3個の横長ボタン428a、428b、428cと、2個の小ボタン430、432と、2個の小ボタン434、436とから構成される。説明の便宜上、図17では、カラーパッチ410の図示を省略している。
いずれのボタンも白色で表示されており、且つ、表示パッチ422がカラーパッチ410の配設位置から僅かにずらして重畳表示されているので、作業者は、色選択作業を行いながら表示色を確認することができる。図18では、一例として中央パッチ412の配設位置を示している。
各表示パッチ422をマウス30(図1参照)でクリックすると、そのクリックされた表示パッチ422には太枠438(図19参照)によるマークが付される。このようにして、クリック操作により表示パッチ422の指定が可能であり、同様に指定の解除や再指定が自在である。
作業者は、指定色調整用カラーチャート34cの中から最も近い色のカラーパッチ36を選択し、そのカラーパッチ36の配設位置に対応する表示パッチ422をクリックする。その後、設定画面414の[更新]ボタン420(図17参照)をクリックすることにより、次の基準色が設定され、中央パッチ412の色が次の基準色になるように新たに表示色が更新される。
図19に示すように、指定された表示パッチ422が1個(表示パッチ440a)である場合、選択された表示パッチ422に対応する色が新たな基準色として設定され、パッチ選択画像402Sの表示色が更新される。
図20に示すように、上下左右に隣接する2個の表示パッチ422をクリックすることにより、上下左右に隣接する2個の表示パッチを同時に指定することができる。このように、指定された表示パッチ422が2個(表示パッチ440a、440b)である場合、選択された2個の表示パッチ422に対応する色の中間色が新たな基準色として設定され、パッチ選択画像402Sの表示色が更新される。
図21に示すように、斜め方向に隣接する2個の表示パッチ422(マウスポインタ442の位置)をクリックすることにより、その近接する4個の表示パッチ422を同時に指示することができる。このように、指示された表示パッチ422が4個(表示パッチ440a〜440d)である場合、選択された4個の表示パッチ422に対応する色の中間色が新たな基準色として設定され、パッチ選択画像402Sの表示色が更新される。
2個又は4個の表示パッチが同時に指示された状態で[更新]ボタン420(図17参照)をクリックすると、指定色の探索範囲がさらに絞られたものと判定され、次の色差間隔が自動的に小さく設定される。これにより、より詳細な色の探索を行うことができる。
図18に示す表示パッチ422の周辺に設けられた24個の小ボタン426a〜426cのうちのいずれか1個をクリックすると、表示色の移動が行われる。
上方中央の小ボタン426aをクリックすると、a*の値がΔa*だけ増加するように表示色の移動が行われる。また、上方左の小ボタン426aをクリックすると、a*及びb*の値がΔa*及びΔb*だけ増加するように表示色の移動が行われる。このように、小ボタン426a〜426cの配設位置と表示色の移動方向とが対応しているので操作性が高い。
また、L*を手動で調整する場合は、横長ボタン428a〜428cや小ボタン430、432、434、436を用いる。なお、以下の説明において、現在設定されている色差間隔(明度成分)がΔL*に設定されているものとする。
横長ボタン428a〜428cは、ΔL*の単位で表示色を移動させるボタンである。例えば、横長ボタン428bがクリックされると、その時点で指定されている表示パッチ422(例えば、表示パッチ群424aの中央のパッチとする。)が、クリックされた横長ボタン428bの下方の表示パッチ群424bの対応する位置(すなわち、表示パッチ群424bの中央のパッチの位置)になるように移動される。つまり、L*の値がΔL*だけ減少するように表示色の移動が行われる。
小ボタン430、432は、ΔL*/2の単位で表示色を移動させるボタンである。例えば、小ボタン430がクリックされると、表示パッチ群424a及び424bの中間値が、次の中央パッチ412の色となるように移動される。つまり、L*の値がΔL*/2だけ減少するように表示色の移動が行われる。
同様にして、小ボタン432がクリックされると、表示パッチ群424b及び424cの中間値が、次の中央パッチ412の色となるように移動される。つまり、L*の値がΔL*/2だけ増加するように表示色の移動が行われる。
小ボタン434、436は、2ΔL*の単位で表示色を移動させるボタンである。例えば、小ボタン434がクリックされると、現在の表示パッチ群424aの位置が次の表示パッチ群424cの位置になるように移動される。つまり、L*の値が2ΔL*だけ減少するように表示色の移動が行われる。
同様にして、小ボタン436がクリックされると、現在の表示パッチ群424cの位置が次の表示パッチ群424aの位置になるように移動される。つまり、L*の値が2ΔL*だけ増加するように表示色の移動が行われる。
なお、この発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、この発明の主旨を逸脱しない範囲で自由に変更できることは勿論である。
本実施形態では、指定色調整用カラーチャート34c上の各カラーパッチ36の形状は矩形であるがこれに限定されることはなく、例えば、三角形、六角形、円形等でもよい。
また、カラーパッチ36の配列方法についても、その識別情報との対応関係が明確である限り、種々の配列形態を採ることができる。例えば、カラーパッチ36が正六角形である場合は、ハニカム構造に配列することにより、色の配列方法を工夫することができる。
本実施形態では、指定色調整用カラーチャート34c上に付された行番号38及び列番号40(図2参照)を識別情報として、設定画面160(図6参照)を介して入力する構成を採っているが、識別情報の入力方法はこれらに限定されない。
本実施形態では、印刷機18がインクジェット方式である構成を採っているがこれに限定されることなく、電子写真、感熱方式等であっても本発明の作用効果を得ることができる。また、出力形態はハードコピーに限定されず、ソフトコピー、すなわち、画像表示装置(あるいは種々の表示方式)にも本発明が適用できることはいうまでもない。