JP5508542B2 - 二次電池 - Google Patents

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Description

本発明は、紫外線照射により金属酸化物の光励起構造変化を利用して、バンドギャップ中に新たなエネルギー準位を形成して電子を捕獲する動作原理に基づく、安全性、耐環境性に優れた無機固体の二次電池に関する。
化石燃料の枯渇や二酸化炭素の増大に伴う温暖化など地球環境問題に対する意識が高まる中で、クリーンなエネルギー源としての太陽電池やエネルギーを貯蔵する二次電池が注目されている。
特に自動車においては、化石燃料を燃焼して動力源とし、二酸化炭素等の有害物質を排出して走ることから、低燃費化と排出ガス削減が重要な課題となっており、このために、電気モータ駆動を併用したHEV(Hybrid Electric Vehicle)や、全てを電気化したEV(Electric Vehicle)が今後の主力となるもの考えられている。
また、最近のモバイル機器の普及は著しく、充電電源の容量の増大が期待されている。
現在のHEVやEVあるいはモバイル機器に使用されている二次電池は、ニッケル−水素二次電池が多く搭載されている。最近では、より高出力化、大容量化の可能な二次電池としてリチウムイオン電池が開発され、実用化が開始されている段階にある。
リチウムイオン電池は、正極にリチウムを含有する金属複酸化物、負極に炭素などリチウムを受容し、放出できる材料を使用して、イオン乖離可能なリチウム塩とそれを溶解可能な有機溶媒からなる電解液を含浸させる。高性能且つ大容量化のために改良した黒鉛粉末による炭素電極が開示されている(例えば特許文献1、特許文献2等参照)。さらに、負極をシート状にして、シート状負極に導電剤として繊維状炭素質物を含ませ、結着剤として熱可塑性樹脂を用いることにより高性能なリチウムイオン二次電池用シート状負極を低コストで提供する例もある(特許文献3等参照)。
リチウムイオン電池の正極の活物質として遷移重金属酸化物を用いる場合、元素の比重が大きいため、大容量電池の製造が原理的に困難であり、このため電気化学的な酸化還元反応である充電および放電の少なくとも一方の過程でラジカル反応により生成したラジカル化合物を安定化することにより、ラジカル化合物を電池等のエネルギー蓄積装置の活物質として利用し、エネルギー密度が高く、大容量で安定性に優れた電池の開示がされている(特許文献4等参照)。
また、電解液は液体であるため、漏液の可能性があること、可燃物が使用されているため、誤使用時の電池の安全性を高める必要があることから、電解液の代わりに固体電解質を用いた全固体リチウム二次電池の開示もある(例えば特許文献5等参照)。
特開2002−124256号公報 特開2002−141062号公報 特開2009−146581号公報 特開2002−170568号公報 特開2007−5279号公報
リチウムイオン電池は、従来のニッケル−水素二次電池に対して、高性能かつ大容量の二次電池として期待されているが、現状では例えばEVにおいては、走行距離が100km程度であり、更なる二次電池の大容量化が課題とされている。また、コスト的にも二次電池がEVの半分近くを占め、低コスト化の要求もある。
本発明は、簡単な構成により低コスト化及び安定な動作が可能で、リチウムイオン電池の容量を大きく超える技術を提供することを目的としている。
本発明は、簡単な構成により大容量の二次電池を実現するために、基板と、導電性の第1電極と、絶縁性物質で覆われたn型金属酸化物半導体を光励起構造変化させることによりバンドギャップ中にエネルギー準位を形成して電子を捕獲する充電層と、P型半導体層と、導電性の第2電極とを積層して構成されている。充電層へは、第1電極と第2電極間に電源を接続して充電することを特徴とする。
二次電池の構成として、第1電極と充電層の間にn型金属酸化物半導体の層を設けることにより、さらに安定な動作が行える。第1電極と第2電極は金属電極で構成する。基板を導電性の材料として第1電極と兼用させてもよい。
材料としては、第1電極と充電層との間に設けたn型金属酸化物半導体は二酸化チタン、p型半導体は酸化ニッケル又は銅アルミ酸化物である。充電層におけるn型金属酸化物半導体は、酸化スズ、二酸化チタン又は酸化亜鉛のいずれか1つ、又は、これらを組み合わせた複合物であり、n型金属酸化物半導体を覆う絶縁性物質は、絶縁性樹脂又は無機絶縁物である。
充電層の製造方法としては、n型金属酸化物半導体の元素に有機物を結合した有機金属塩と絶縁物を有機溶媒に溶解し、基板に設けられた第1電極、又は、第1電極上に設けられたn型金属酸化物半導体の層上に塗布する工程と、塗布後に乾燥し焼成する工程と、焼成後に絶縁性物質で覆われたn型金属酸化物半導体の金属塩の層を、紫外線を照射し光励起構造変化させる工程とからなる製造工程により製造される。
基板は樹脂シートを使用して、フレキシビリティを持たせることで、使い勝手を良くすることができる。
第1電極の表面を凹凸形状とすることにより、重ねて積層するn型金属酸化物半導体の層及び充電層との密着性を向上でき、二次電池としても充放電量と充放電速度が改善される。また、電極を透明として、光照射によりエネルギーを充電層に充電する場合には、凹凸形状により表面積が広くなり、より効率良く光エネルギーの吸収をすることができる。
本発明による二次電池によれば、充電層構造は、金属酸化物の光励起構造変化を利用した技術によりn型金属酸化物半導体のバンドギャップ内に新たなエネルギー準位を形成しているため、低エネルギーで充電可能であり、大容量の二次電池を実現できる。さらに、本発明による二次電池は電解質を用いない無機固体構造であり、製造が簡単なため、低コストで、安定な動作と長寿命化が可能である。
また、電解質を用いない無機固体構造であるために、充電時間を短縮でき、急速充電が可能であるばかりか、光による充電も可能であるため、充電用電源がない場合であっても充電層への充電が可能である。
本発明による二次電池の構成を示す図。 本発明による二次電池の充電層を説明する図。 光励起構造変化させた充電層の製造工程を説明する図。 光励起構造変化を説明するバンド図。 光励起構造変化により形成された新しいエネルギー準位を説明するバンド図。 本発明による二次電池の充放電機能を説明するバンド図。 光励起構造変化による電子の挙動を説明する図。 本発明による二次電池の充放電機能を説明する図。 本発明による二次電池の基本構成を示す図。 本発明による二次電池の充電状態と放電状態を説明する図。 二次電池の第1電極をピラミッド型の凹凸を形成してTEXTURE型とした二次電池の図。
本発明は、充電層に光励起構造変化技術を採用した新たな充電原理に基づく二次電池である。
光励起構造変化とは、光の照射により励起された物質の原子間距離が変化する現象であり、酸化スズ等非晶質の金属酸化物であるn型金属酸化物半導体が光励起構造変化を生ずる性質を有している。光励起構造変化現象により、n型金属酸化物半導体のバンドギャップ内に新たなエネルギー準位が形成される。
図1は、本発明による二次電池の断面構造を示す図である。図1において、二次電池10は、基板12に、導電性の第1電極14が形成され、さらに、n型金属酸化物半導体層16、エネルギーを充電する充電層18、p型金属酸化物半導体層20と第2電極22が積層されている。
基板12は、絶縁性の物質でも導電性の物質でもよく、例えば、ガラス基板や高分子フィルムの樹脂シート、あるいは金属箔シートが使用可能である。
第1電極14と第2電極22は、導電膜が形成されればよく、例えば金属電極として、アルミニウム(Al)を含む銀(Ag)合金膜等がある。その形成方法としては、スパッタリング、イオンプレーティング、電子ビーム蒸着、真空蒸着、化学蒸着等の気相製膜法を挙げることができる。また、金属電極は電解メッキ法、無電解メッキ法等により形成することができる。メッキに使用される金属としては、一般に銅、銅合金、ニッケル、アルミ、銀、金、亜鉛又はスズ等を使用することが可能である。
また、透明な導電性電極としては、スズをドープした酸化インジュームITO(Indium Tin Oxide)の導電膜を使用することができる。
n型金属酸化物半導体層16は、材料的には二酸化チタン(TiO2)、酸化スズ(SnO2)又は酸化亜鉛(ZnO)を材料として用いる。
充電層18には、絶縁性の被膜に覆われた微粒子のn型金属酸化物半導体が充填され、紫外線照射により光励起構造変化して、充電機能を備えた層となっている。n型金属酸化物半導体は、シリコーンの絶縁性被膜で覆われている。充電層18で使用可能なn型金属酸化物半導体材料としては、二酸化チタン、酸化スズ、酸化亜鉛が好適であり、二酸化チタンと酸化スズと酸化亜鉛のうちいずれか2つを組み合わせた材料、あるいは3つを組み合わせた材料としてもよい。
充電層18上に形成したp型金属酸化物半導体は、上部の第2電極22からの電子の注入を防止するために設けられている。p型金属酸化物半導体層20の材料としては、酸化ニッケル(NiO)、銅アルミ酸化物(CuAlO2)等が使用可能である。
次に実際に試作した例を示す。
基板12はガラスを用いた。このガラスの基板12上に、第1電極14として、スズをドープした酸化インジュームITO(Indium Tin Oxide)の導電膜を、さらにITO上にn型金属酸化物半導体層16として二酸化チタン(TiO2)をスパッタリング法で形成した。p型金属半導体層20は酸化ニッケルをスパッタリングにより形成し、第2電極22は、第1電極14と同じくITOにより形成した。
充電層18については、その構造と製造方法について以下に詳細を説明する。
図2は、図1における充電層18の構造を詳細に説明する図である。充電層18は、絶縁性被膜28としてシリコーンを、n型金属酸化物半導体26として二酸化チタンを使用しており、シリコーンで覆われた二酸化チタンが充填された構造となっている。二酸化チタンが紫外線照射されて光励起構造変化により、エネルギーを蓄えることができる機能を有している。
充電層18に使用されるn型金属酸化物半導体26の材料としては、二酸化チタン、酸化スズ、酸化亜鉛であり、金属の脂肪族酸塩から製造工程で分解して生成される。このため、金属の脂肪族酸塩としては、酸化性雰囲気下で紫外線を照射すること、又は焼成することにより分解又は燃焼し、金属酸化物に変化しうるものが使用される。脂肪族酸としては、例えば、脂肪族モノカルボン酸や、脂肪族ジカルボン酸、脂肪族トリカルボン酸、脂肪族テトラカルボン酸等の脂肪族ポリカルボン酸が使用可能である。
より具体的には、飽和脂肪族モノカルボン酸として、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ステアリン酸等が挙げられる。不飽和脂肪族モノカルボン酸としては、アクリル酸、ブテン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、リノレン酸、オレイン酸等の高度不飽和モノカルボン酸が使用可能である。
また、脂肪族酸塩は、加熱により分解又は燃焼しやすく、溶剤溶解性が高く、分解又は燃焼後の膜が緻密であり、取り扱い易く安価であり、金属との塩の合成が容易である等の理由から、脂肪族酸と金属との塩が好ましい。
絶縁被膜28には、シリコーンの他、無機絶縁物として鉱油、酸化マグネシウム(MgO)、二酸化ケイ素(SiO2)等でもよく、絶縁性樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリブタジエン、ポリ塩化ビニル、ポリメチルメタクリレート、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリイミド、酢酸セルロースなどの熱可塑性樹脂、フェノール樹脂、アミノ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アリル樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタンなどの熱硬化性樹脂でもよい。
図3は、充電層18の製造方法の工程を説明する図である。
まず、ガラス基板12上にITOと二酸化チタンをスパッタリング法により層を形成した基板を用意する。そして脂肪酸チタンとシリコーンオイルを溶媒に混合して攪拌し、塗布液を作製する(S1)。次に、用意した基板を回転させながらスピナーにより、塗布液を二酸化チタンの層上にスピンコートする(S2)。基板の回転により、0.3〜1μmの薄い層が形成される。この層は、具体的にはシリコーンが被膜された二酸化チタンの金属塩がシリコーン層中に埋められている構造と考えられ、空隙部は存在しない。
次に、50℃の雰囲気に10分間程度放置して乾燥させ(S3)、その後に焼成した(S4)。焼成温度は300℃〜400℃、焼成時間は10分〜1時間である。これにより脂肪族酸塩が分解してシリコーンの絶縁膜に覆われた二酸化チタンの微粒子層が形成される。
シリコーンの絶縁被膜で覆われた二酸化チタンの層形成した上記製作方法は、塗布熱分解法と言われている方法である。
次の製造工程は、紫外線照射工程(S5)である。紫外線照射は、波長254nm、強度20mW/cm2で、約40分間照射する。この紫外線照射により、充電層の二酸化チタンの原子間距離を変化させて光励起構造変化現象を生起させる。この結果、二酸化チタンのバンドギャップ内に新たなエネルギー準位が形成される。この新たなエネルギー準位に電子が捕獲されることによりエネルギーの充電が可能となる。
図4(A)、(B)は、紫外線照射された物質が光励起構造変化によって新たなエネルギー準位が形成される現象を説明するためのバンド図である。まず基本的な原理を説明するため、ITOに、酸化スズと酸化マグネシウムが複合された層(SnO2―MgO複合層)が積層されている場合を考える。
図4(A)は、バンド図であり、ITO52と中間結晶層54とSnO2―MgO複合層56からなる構造である。伝導帯58と価電子帯60の間にはフェルミレベル62が存在し、ITO52のフェルミレベル62は伝導帯58に近く、SnO2―MgO複合層56のフェルミレベル62は、伝導帯58と価電子帯60の中間に存在する。紫外線66が照射されると、中間結晶層54の価電子帯60の電子64は伝導体58に励起される。
図4(B)に示した紫外線照射中の状態では、紫外線66の照射によって、中間結晶層54の領域における価電子帯60の電子64が伝導帯58に励起され、励起された電子64は伝導帯58の傾斜によりITO52の伝導帯58に収容される。一方、価電子帯60には電子64の抜けた正孔65が溜まっている。中間結晶層54においては、紫外線励起と再結合の間に時間差が発生し、この時間差があることにより原子の再配列が行われる。このため、中間結晶層54の価電子帯60に残留している正孔65が、バンドギャップ中に移動し、新たなエネルギー準位70を形成する。
図5は、紫外線照射により、中間結晶層54にバンドギャップ中に新たなエネルギー準位が形成された再結合後の状態を示している。ITO52とSnO2―MgO複合層56の界面にのみバンドギャップ中の電子密度の増加が観測されており、内殻電子のケミカルシフトも観測されていることから、原子間隔が変化したと考えられる。
このように、SnO2―MgO複合層56に紫外線を照射することでバンドギャップ内に新たなエネルギー準位70を形成できることを説明したが、二次電池としては、新たに形成されたエネルギー準位70を利用することになり、電極とn型金属酸化物半導体との間に絶縁層を形成して電子をコントロールする必要がある。
図1に示した充電層18は、図1及び図2で説明したように、シリコーンによる絶縁被膜28が形成された二酸化チタンを材料としたn型金属酸化物半導体26である。この場合にバンド図は、二酸化チタンとITOの間に絶縁層による障壁を持つことになる。
図6(A),(B)は、ITO52と二酸化チタン57の間に絶縁層68が存在する場合に、光励起構造変化により新たなエネルギー準位の形成状態を説明するバンド図である。伝導帯58には、絶縁層68による障壁が存在する。
図6(A)は、二酸化チタン57とITO52の間に絶縁層68を有する場合に、紫外線66を照射した状態である。絶縁被膜された二酸化チタン57に紫外線66が照射されると、二酸化チタン57の価電子帯60にある電子64が、伝導帯58に励起される。ITO52との界面付近では、この電子64がある確率で絶縁層68を通り抜けて一時的にITO52に移動する。二酸化チタン57の光励起構造変化は、電子の不在中に起こり、価電子帯60の電子64が抜けた部位の原子間距離が変化する。このときのエネルギー準位70は、バンドギャップ内に移動している。
図6(B)は、紫外線66が照射されている間に上述した現象が繰り返し起こり、バンドギャップ内に多数のエネルギー準位70が形成された状態である。しかし、これらエネルギー準位70に捕らえられるべき電子は紫外線66により励起されてITO52に移動している。こうして生じた電子不在のバンドギャップ内のエネルギー準位70は、紫外線照射を終えた後も残存する。
絶縁層68の役割はITO52と二酸化チタン57との間に障壁を作り、励起された電子64をトンネル効果により通過させ、電子不在のバンドギャップ内のエネルギー準位70を形成することである。ITO52に移動した電子64は、絶縁層68周辺の帯電電位によりITO52に留まる。
図7は、絶縁被膜28で覆われた二酸化チタン57が、紫外線照射により光励起構造変化が生じて、電子がITO52に移動した状態を、模式的に表現した図である。電子64は、絶縁被膜28による障壁をトンネリングにより通過してITO52に移動し、絶縁被膜28の電位により生ずる弱い捕獲力で残留している。
二次電池としては、さらに充電層18に重ねてp型金属酸化物半導体層20を積層してブロッキング層を形成し、さらに第2電極22を設けている。このような構造によるに二次電池の原理については、図8のバンド図で説明する。
図8(A)は、第1電極14を構成するITO52と第2電極22を構成するとITO74に挟まれて、充電層18での絶縁層68と二酸化チタン57と、p型金属酸化物半導体20として機能する酸化ニッケル72で構成される二次電池に対して、ITO52にマイナス電圧を印加し、ITO74を接地して0Vとした場合のバンド図である。
バンドギャップ内にエネルギー準位70をもつ二酸化チタン57は、バイアス電界(−)を印加すると、ITO52の電子64が絶縁層68による障壁を通過(トンネリング)して二酸化チタン57に移動する。移動した電子64は、酸化ニッケル72によりITO74への更なる移動がブロックされるから、二酸化チタン57のバンドギャップ間に存在するエネルギー準位70に捕獲されることになり、エネルギーが蓄えられる。即ち、充電状態であり、充電層18に電子が充満した状態となる。この状態は、バイアス電界の印加をやめても維持されるから、二次電池としての機能を有することになる。
図8(B)は、負荷(図示せず。)をITO52とITO74に接続して、放電する場合のバンド図である。バンドギャップに捕獲されていた電子64は、伝導帯58の自由電子となる。この自由電子はITO52に移動し、負荷に流れる。この現象がエネルギーの出力状態であり、放電状態である。そして、最終的にはバンドギャップ内のエネルギー準位70に電子64のない状態になり、エネルギーが全て使用される。
以上説明したように、二酸化チタンのバンドギャップに形成されたエネルギー準位に、外部から電圧を印加することにより電界を形成して電子を充満させ、電極に負荷を接続することで、電子を放出してエネルギーを取り出し、電池としての機能を果たす。この現象を繰り返し行うことで、二次電池として使用できる。これが本発明による基本的な二次電池の原理である。
図9は本発明による基本的な二次電池50の構成を示している。図9において、二次電池50は、基板12に、導電性の第1電極14が形成され、エネルギーを充電する充電層18、p型金属酸化物半導体層20と第2電極22が積層された構成である。
具体的には、ガラス基板12上にITOを第1電極14として積層し、さらに絶縁膜で覆われ光励起構造変化した二酸化チタンで充電層18を構成し、酸化ニッケルによるP型金属酸化物半導体層20、ITOによる第2電極を積層した。
図10(A)、(B)は、上記に説明した本発明による基本的な二次電池の充放電状態を説明する図である。
図10(A)は、充電状態を示している。第1電極14と第2電極22に電源30を接続して充電層18に電界を加えると、第1電極14の伝導帯から充電層18内にある二酸化チタンのバンドギャップに形成されたエネルギー準位に電子が注入され、エネルギーを蓄え充電される。このとき、p型金属酸化物半導体層20は、第2電極22への電子の移動を防御している。
また、本発明の二次電池構造では、例えば第2電極22がITOのように透明であれば図10(A)に示すように、太陽光36を透明な第2電極22側から照射することで、電子が充電層18内に移動する。即ち二次電池50は充電される。勿論、基板12と第1電極が透明であれば、基板12側からの太陽光36の照射でもよい。
二次電池は、基本的にp型半導体とn型半導体を電極で挟んだ構造となっており、このpn接合に光起電力効果が発生する。即ちn型領域の電子がp型領域に,p型領域の正孔がn型領域に移動するのを遮る方向の電位である。この状態にバンドギャップ以上のエネルギーを持つ光を照射すると,電子−正孔対(キャリア)が形成される。電子および正孔は拡散によりpn接合部に達し,pn接合の電界により電子はn型領域に、正孔はP領域に分離する。
本発明では、p型金属酸化物半導体とn型金属酸化物半導体がpn接合をしているが、n型金属酸化物半導体は、二酸化チタンを紫外線により光励起構造変化させ、バンドギャップ中にエネルギー準位を形成しているから、バンドギャップ以下のエネルギーによる光照射で、電子がエネルギー準位に注入される。この過程により光を照射した場合でも、図10(A)で示したような、電源を接続したと同様の効果が発生し、充電層に電子が移動し充電する。光を照射する場合は、電極が透明であることが必要である。ITOは、透明な電極材料であり、光充電する場合に適している。
図10(B)は、放電状態を説明する図である。第1電極14と第2電極22に負荷32を接続すると、充電層18に注入されていた電子が第1電極14に移動し、これによって負荷32に電流が流れ、放電状態となる。放電によりエネルギーを失った場合は、再度充電して使用する。
図11は、第1電極をTEXTURE型として、表面に微細なピラミッドを形成した構造である。第1電極14表面のTEXTURE型構造面74は、ピラミッド形状の凹凸により、充電層18との密着性が向上し、太陽光を照射する場合は、入射光を効率よく吸収することができ、光エネルギーの損失を低減することができる。
このように、本発明による二次電池は、太陽光等の光によっても充電可能であることを特徴としており、充電機能は、バンドギャップを超えての電子の移動ではなく、バンドギャップ内に形成されたエネルギー準位への電子の注入であるから、低い光エネルギーでの充電が可能である。
本発明による二次電池では、充電層において、二酸化チタンに絶縁被膜を行って、伝導帯に障壁を持たせている。この機能を第1電極と充電層の間に、スパッタリングにより二酸化チタンの薄層を形成して、障壁機能を補強する構造とすることができ、これが図1に示した二次電池の構造である。
充電層の二酸化チタンはシリコーンにより絶縁被膜が形成されているが、均一な皮膜となるとは限らずバラツキが生じ、著しい場合は皮膜が形成されずに電極に直接接する場合も生ずる。このような場合は、再結合により電子が酸化チタンに注入されてしまい、バンドギャップ中にエネルギー準位が形成されず、充電容量が低下する。従って、充電容量の低下を抑え、より高性能な二次電池とするために、図1に示したように第1電極と充電層の間に、二酸化チタンの薄層を形成している。
この二酸化チタンの薄層は、絶縁層としての機能を果たし、素子の特性のバラツキが少なく、製造ラインでの安定性及び歩留まりの向上に効果的である。
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明はその目的と利点を損なうことのない適宜の変形を含み、更に、上記の実施形態よる限定は受けない。
10、50 二次電池
12 基板
14 第1電極
16 n型金属酸化物半導体層
18 充電層
20 P型金属酸化物半導体層
22 第2電極
26 n型金属酸化物半導体
28 絶縁被膜
30 電池
32 負荷
36 太陽光
52、74 ITO
54 中間結晶層
56 SnO2―MgO複合層
57 二酸化チタン
58 伝導帯
60 価電子帯
62 フェルミレベル
64 電子
65 正孔
66 紫外線
68 絶縁層
70 エネルギー準位
72 酸化ニッケル
75 TEXTURE型構造面

Claims (11)

  1. 基板と、
    導電性の第1電極と、
    絶縁性物質で覆われたn型金属酸化物半導体を光励起構造変化させることによりバンドギャップ中にエネルギー準位を形成して電子を捕獲する充電層と、
    p型半導体層と、
    導電性の第2電極と、
    を積層して構成され、
    前記充電層へは、前記第1電極と前記第2電極間に電源を接続して充電すること、
    を特徴とする二次電池。
  2. 請求項1に記載の範囲において、
    前記第1電極と前記充電層の間にn型金属酸化物半導体の層を設けたこと、
    を特徴とする二次電池。
  3. 請求項1又は請求項2のいずれかに記載の範囲において、
    前記第1電極と前記第2電極は金属電極であること、
    を特徴とする二次電池。
  4. 請求項1又は請求項2のいずれかに記載の範囲において、
    前記基板を導電性材料として前記第1電極を兼用させること、
    を特徴とする二次電池。
  5. 請求項1又は請求項2のいずれかに記載の範囲において、
    前記第1電極と前記充電層との間に設けたn型金属酸化物半導体は、二酸化チタンであること、
    を特徴とする二次電池。
  6. 請求項1又は請求項2のいずれかに記載の範囲において、
    前記P型半導体は、酸化ニッケル又は銅アルミ酸化物であること、
    を特徴とする二次電池。
  7. 請求項1又は請求項2のいずれかに記載の範囲において、
    前記充電層における前記n型金属酸化物半導体は、酸化スズ、二酸化チタン又は酸化亜鉛のいずれか1つ、又は、これらを組み合わせた複合物であること、
    を特徴とする二次電池。
  8. 請求項1又は請求項2のいずれかに記載の範囲において、
    前記n型金属酸化物半導体を覆う絶縁性物質は、絶縁性樹脂又は無機絶縁物であること、
    を特徴とする二次電池。
  9. 請求項1又は請求項2のいずれかに記載の範囲において、前記充電層は、
    n型金属酸化物半導体の元素に有機物を結合した有機金属塩と絶縁物を有機溶媒に溶解し、前記基板に設けられた前記第1電極上、又は、第1電極上にn型金属酸化物半導体の層を設ける場合はn型金属酸化物半導体の層上に塗布する工程と、
    塗布後に乾燥し焼成する工程と、
    絶縁性物質で覆われた前記n型金属酸化物半導体の金属塩の層を焼成した後に、紫外線を照射し光励起構造変化させる工程と、
    からなる製造工程により製造されることを特徴とする二次電池。
  10. 請求項1又は請求項2のいずれかに記載の範囲において、
    前記基板は樹脂シートであること、
    を特徴とする二次電池。
  11. 請求項1又は請求項2のいずれかに記載の範囲において、
    前記第1電極の表面を凹凸形状とすること、
    を特徴とする二次電池。
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