JP5508382B2 - 燃料電池システム - Google Patents

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Description

本発明は、アイドルストップ状態時における動作制御を改善した燃料電池システムに関する。
従来、燃料電池を搭載した燃料電池車両では、燃料ガスを効率的に利用するため、燃料電池と2次電池とを併用して、適宜使い分ける制御を行う場合がある。例えば、通常時には両者を併用して車両の駆動源であるモータに電力を供給するが、低速走行時やアイドリング時等の低負荷や燃料電池の発電効率が低くなるような運転状態時には、燃料電池システム全体の稼動を停止状態にすることなく、発電に直接係わる空気コンプレッサ等の燃料電池駆動用補機類の動作を停止して燃料電池による発電を停止し燃料電池をアイドルストップ状態とし、2次電池のみからの給電によりモータを駆動するといった制御を行っている。
このようなアイドルストップ機能を備えた燃料電池システムでは、アイドルストップ中は、燃料ガスの例えば水素と酸化剤ガスの例えば空気(酸素)の供給が停止されているので、電解質膜を介してアノード極の残留水素がカソード極に透過する。これにより、透過した水素がカソード極の空気と反応し、カソード極の空気の濃度が低下する。
カソード極の空気濃度が低下すると、燃料電池システムがアイドルストップ状態から通常の発電状態に復帰する際に、カソード極で空気不足となり、発電遅れが生じするおそれがあった。また、カソード極の空気が不足すると、燃料電池のセル電圧が低下し、燃料電池から電流の取り出しを制御するPM(パワーマネージャー)の入力電圧が低下して定格値を下回り、PMの電流取り出し制御に不具合を生じるおそれがあった。
このような不具合を回避するために、燃料電池システムのアイドルストップ中にカソード極に定期的(間欠的)に空気を供給する、例えば以下に示す文献に記載された技術が知られている(特許文献1参照)。
この文献1に記載された技術では、簡潔運転モードで燃料電池の発電を停止しているときに、所定期間が経過する毎に所定の時間空気コンプレッサを駆動して燃料電池に空気を定期的(間欠的)に供給し、カソード極の空気不足を回避している。
特開2004−172028号公報
このような従来の燃料電池システムにおいて、カソード極に供給される空気の量は、時間で規定されていたので、カソード極に空気が過剰に供給されるおそれがあった。空気が過剰に供給されると、燃料電池の電圧が上昇し、上昇した電圧が燃料電池の劣化を引き起こす電圧を超えると、燃料電池の劣化を促進させてしまうという不具合を招くおそれがあった。
そこで、本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、アイドルストップ時の空気供給制御を改善して、燃料電池の劣化を抑制した燃料電池システムを提供することにある。
上記目的を達成するために、本発明の課題を解決する手段は、燃料ガス供給手段により供給される燃料ガスと、酸化剤ガス供給手段により供給される酸化剤ガスとの電気化学反応により発電を行う燃料電池スタックを備え、電力の要求がない場合には、燃料電池スタックに酸化剤ガスの供給を停止し、燃料電池スタックの発電を停止する燃料電池システムにおいて、燃料電池スタックの電圧を計測する電圧測手段と、酸化剤ガス供給手段に電力を供給可能な電力供給源と、燃料電池スタックの発電で得られた電流を燃料電池スタックから取り出す電流取り出し手段と、燃料電池スタックの発電が停止し、かつ、酸化剤ガス供給手段の稼働が停止しているときに、所定の条件が成立すると電力供給源の電力により酸化剤ガス供給手段を再稼働させ、電圧計測手段で計測された燃料電池スタックの電圧が燃料電池セルの劣化が促進されない電圧値である上限電圧値を越えないように、電圧計測手段で計測された燃料電池スタックの電圧に応じて、酸化剤ガス供給手段を制御するとともに、燃料電池スタックの発電を再開しつつ電流取り出し手段による取り出し電流を制御する制御手段と、を有し、前記制御手段は、前記所定の条件が成立すると、先ず前記酸化剤ガス供給手段のみを再稼働させるとともに、前記酸化剤ガス供給手段の再稼働によって上昇する前記燃料電池スタックの電圧が前記上限電圧に達すると、前記電流取り出し手段による電流の取り出しを実施することを特徴とする。
本発明によれば、燃料電池システムのアイドルストップ状態時において、最大セル電圧が上限電圧を超えないように酸化剤ガスの供給を制御することで、セルの劣化促進を抑制することができる。
本発明の実施形態1に係る燃料電池システムを搭載した燃料電池車両の構成を示す図である。 本発明の実施形態1に係る燃料電池システムの構成を示す図である。 燃料電池システムのアイドルストップ状態への移行手順を示すフローチャートである。 燃料電池システムのアイドルストップ状態の解除手順を示すフローチャートである。 アイドルストップ状態時の空気コンプレッサの制御手順を示すフローチャートである。 実施形態1に係るセル電圧ならびに空気コンプレッサ回転数のタイミングチャートである。 実施形態1に係るセル電圧ならびに空気コンプレッサ回転数の他のタイミングチャートである。 (第2の所定電圧−セル最大電圧)と空気コンプレッサ回転数との関係を示す図である。 実施形態1に係るセル電圧ならびに空気コンプレッサ回転数の他のタイミングチャートである。 セル最大電圧の単位時間あたりの上昇量と空気コンプレッサ回転数の減少量との関係を示す図である。 電流取り出しの制御手順を示すフローチャートである。 実施形態2に係るセル電圧、空気コンプレッサ回転数ならびに取り出し電流のタイミングチャートである。 実施形態2に係るセル電圧、空気コンプレッサ回転数ならびに取り出し電流の他のタイミングチャートである。 実施形態2に係るセル電圧、空気コンプレッサ回転数ならびに取り出し電流の他のタイミングチャートである。
以下、図面を用いて本発明を実施するための実施形態を説明する。
(実施形態1)
図1は本発明の実施形態1に係る燃料電池システムが搭載された燃料電池車両の基本構成を示す図であり、図2は本発明の実施形態1に係る燃料電池システムの構成を示す図である。
図1において、燃料電池車両は、車両本体101に駆動電源として燃料電池システム102を搭載してなるものであり、更にインバータ103、駆動モータ104、駆動輪105、車速センサ106、2次電池107、リレー108ならびに制御コントローラ109を備えている。また、燃料電池車両は、車両のシフト位置を検出するシフト位置センサ111、ブレーキの有無を検出するブレーキセンサ112、ならびにアクセルの開度を検出するアクセル開度センサ113を備えている。
燃料電池システム102は、駆動モータ104が消費する電力や2次電池107の充電に必要な電力が発電できるように、燃料電池スタックに供給する燃料ガスの水素や酸化剤ガスの空気の圧力、ならびに流量等が図2に示す圧力調整弁、コンプレッサ等で制御される。
インバータ103は、燃料電池システム102で発電される直流電力を交流電力に変換し、制御コントローラ109から指示される駆動モータ104を駆動する出力トルクとなるように、駆動モータ104を制御する。
駆動輪105は、駆動モータ104と機械的に接続されており、駆動モータ104で得られた駆動トルクが伝達されて、駆動力を発生させて車両を駆動する。車速センサ106は駆動輪105の回転速度を検出する。
2次電池107は、車両のアイドリング時や燃料電池システムのアイドルストップ時など、燃料電池システム102から電力が供給されない場合に、駆動モータ104や、燃料電池システム102が発電するために必要となる補機の圧力調整弁やコンプレッサに電力を供給する。2次電池107には、2次電池107の電圧を検出する電圧センサ114ならびに電流を検出する電流センサ115が設けられており、この電圧センサ114ならびに電流センサ115で検出された電圧ならびに電流に基づいて、2次電池107の充電量が推定される。
リレー108は、制御コントローラ109からの指令に基づいて、燃料電池システム102と負荷とを接続/切断する。
制御コントローラ109は、本燃料電池車両の運転を制御する制御中枢として機能し、プログラムに基づいて各種動作処理を制御するコンピュータに必要な、CPU、記憶装置、入出力装置等の資源を備えた例えばマイクロコンピュータ等により実現される。制御コントローラ109は、本車両における上記各センサならびにこれらのセンサで得られない燃料電池車両の運転に必要な情報を収集するセンサ(図示せず)からの信号を読み込み、読み込んだ各種信号ならびに予め内部に保有する制御ロジック(プログラム)に基づいて、本車両の各構成要素に指令を送り、以下に説明する、本車両のアイドリングストップ移行後の燃料電池システム102の動作処理を含む本車両の運転/停止動作に必要なすべての動作を統括管理して制御する。
次に、図2を参照して、燃料電池システム102について説明する。
図2において、燃料電池システム102は、発電を行う燃料電池スタック201と、この燃料電池スタック201に燃料ガスである水素(あるいは水素リッチガス)を供給するための水素供給系と、燃料電池スタック201に酸化剤ガスである酸素を含む空気を供給するための空気供給系とを有している。
燃料電池スタック201は、水素が供給される水素極と酸素(空気)が供給される空気極とが電解質・電極触媒複合体を挟んで重ね合わされた発電セルが多段積層され、水素と酸素との電気化学反応により化学エネルギーを電気エネルギーに変換する発電部を構成する。
燃料電池スタック201の水素極では、水素が供給されることで水素イオンと電子に解離し、水素イオンは電解質を通り、電子は外部回路を通って電力を発生させ、空気極にそれぞれ移動する。空気極では、供給された空気中の酸素と上記水素イオン及び電子が反応して水が生成され、外部に排出される。
燃料電池スタック201の電解質としては、高エネルギー密度化、低コスト化、軽量化等を考慮して、例えば固体高分子電解質が用いられる。固体高分子電解質は、例えばフッ素樹脂系イオン交換膜等、イオン(プロトン)伝導性の高分子膜からなるものであり、飽和含水することによりイオン伝導性電解質として機能する。
水素供給系は、水素供給手段から供給される水素を水素極通路を介して燃料電池スタック201の水素極へと導く。すなわち、この実施形態1の水素供給系は、水素供給手段として水素を高圧で貯蔵する水素タンク202、燃料電池スタック201で行われる発電に必要となる水素が燃料電池スタック201に供給されるように燃料電池スタック201に供給される水素の圧力を調整する水素調圧弁203、燃料電池スタック201から排出された水素オフガスをエゼクタ204を介して燃料電池スタック201の入口側に戻すために水素オフガスを水素循環配管205を循環させる水素循環ポンプ206、ならびに水素極通路となる水素供給配管207を有している。
水素供給源である水素タンク202から供給される水素ガスは、水素調圧弁203を通って水素供給配管207へと送り込まれ、燃料電池スタック201の水素極に供給される。このとき、水素調圧弁203は、燃料電池スタック201の水素極及び水素極通路内の圧力が負荷に応じた圧力となるように、供給される水素ガスの圧力を調整している。
燃料電池スタック201では、供給された水素ガスが全て消費されるわけではなく、消費されずに燃料電池スタック201から排出された水素オフガスは、水素循環配管205を通って水素循環ポンプ206により循環され、エゼクタ204で新たに供給される水素ガスと混合されて、再び燃料電池スタック201の水素極に供給される。これにより、水素のストイキ比(供給流量/消費流量)を1以上にすることができ、セル電圧が安定化する。
水素供給系における燃料電池スタック201の出口側には、パージ弁210及びパージ配管211が設けられている。パージ弁210は、通常は閉じられており、燃料電池スタック201の水詰まりや不活性ガスの蓄積等によるセル電圧の低下を検知すると開放される。水素循環配管205内には水素ガスを循環させることで不純物や窒素等が蓄積され、これにより水素分圧が降下して燃料電池スタック201の発電効率が低下する場合がある。そこで、燃料電池スタック201の出口側にパージ弁210やパージ配管211を設け、必要に応じてパージ弁210を開放して水素パージを行うことで、水素循環配管205内から不純物や窒素等を除去できるようにしている。
燃料電池スタック201の空気供給系は、空気供給手段からの空気を空気極通路によって燃料電池スタック201の空気極へと導く。すなわち、実施形態1の空気供給系は、空気供給手段としての空気コンプレッサ212ならびに空気調圧弁213と、空気極通路となる空気供給配管214を有している。
空気コンプレッサ212は、燃料電池スタック201の空気極に空気を送り込むものであり、例えばモータ駆動により圧縮した空気を空気供給配管214を通して燃料電池スタック201の空気極へと供給する。空気コンプレッサ212には、コンプレッサの回転数を検出する回転数センサ216が設けられいる。
空気調圧弁213は、空気コンプレッサ212によって燃料電池スタック201に供給される空気の圧力を調整するものであり、燃料電池スタック201の空気極の出口側の排気管215に設けられている。空気調圧弁213は、燃料電池スタック201の空気極及び空気極通路内の圧力が負荷に応じた圧力になるように、空気コンプレッサ212によって供給される空気の圧力を調整している。
燃料電池スタック201で消費されなかった酸素及び空気中の他の成分は、燃料電池スタック201から排気管215ならびに空気調圧弁213を介して排出される。
上述した固体高分子電解質膜を用いた燃料電池スタック201は、適正な作動温度が80℃前後と比較的低く、過熱時には冷却することが必要である。このため、通常は燃料電池スタック201内に冷却水を循環させて燃料電池スタック201を冷却し、燃料電池スタック201を最適な温度に維持する冷却機構(図示せず)が設けられている。
また、燃料電池システムは、電圧センサ223、PM(パワーマネージャー)224ならびにシステム制御部225(制御手段)を備えている。電圧センサ223は、燃料電池スタック201の各セルに設けられており、各セルの電圧を検出してシステム制御部225に与える。
PM224は、システム制御部225から与えられる制御指令に基づいて、燃料電池スタック201の発電で得られた電流の取り出しを制御し、燃料電池スタック201から取り出した電流を駆動モータ104や2次電池107等の負荷に供給する。PM224は、燃料電池スタック201から取り出される電流の値を検出する電流センサ(図示せず)を備え、この電流センサで検出された取り出し電流値はシステム制御部225に与えられる。
システム制御部225は、本燃料電池システム102の運転を制御する制御中枢として機能し、プログラムに基づいて各種動作処理を制御するコンピュータに必要な、CPU、記憶装置、入出力装置等の資源を備えた例えばマイクロコンピュータ等により実現され、例えば図1に示す制御コントローラ109の一部機能として実現される。システム制御部225は、本燃料電池システム102における上記各センサ類、ならびにこれらのセンサ類で得られない燃料電池システム102の運転に必要な情報を収集するセンサ(図示せず)からの信号を読み込み、読み込んだ信号ならびに予め内部に保有する制御ロジック(プログラム)に基づいて、燃料電池システム102の各構成要素に指令を送り、以下に説明する、燃料電池システム102のアイドルストップ状態における動作を含む、燃料電池システム102の運転/停止に必要なすべての動作を統括管理して制御する。
燃料電池システム102をアイドルストップ状態に移行する動作は、図3のフローチャートに示す手順にしたがって実行される。
図3において、先ず水素調圧弁203を閉じて燃料ガスの水素の供給を停止した後(ステップS31)、燃料電池スタック201の水素の圧力が所定の圧力以下、例えば大気圧よりも低い所定の負圧にする減圧処理を行う(ステップS32)。その後、水素圧が所定の圧力以下になったか否かを判別し(ステップS33)、所定の圧力以下になると、減圧処理が終了したものとする(ステップS34)。そして、パージ弁210を閉じて水素循環ポンプ206の駆動を停止し、空気コンプレッサ212の駆動を停止して空気の供給を停止し(ステップS35)、冷却水を停止する(ステップS36)。これにより、燃料電池スタック201の発電を停止し、燃料電池システムをアイドルストップ状態に移行する。
このように、燃料電池システムをアイドルストップ状態にすることで、水素循環ポンプ206や空気コンプレッサ212の補機類の運転を止め、燃費の向上に加えて、音振性能の向上、低消費電力化を図っている。
燃料電池システムのアイドルストップ状態を解除して発電を再開する手順は、図4に示すフローチャートにしたがって行われる。
図4において、先ず水素調圧弁203を開いて水素の供給を開始するとともに(ステップS41)、空気コンプレッサ212を駆動し空気調圧弁213を開き空気の供給を開始する(ステップS42)。その後、発電を開始するとともに(ステップS43)、冷却水の供給を開始する(ステップS44)。これにより、PM224の制御の下に燃料電池スタック201から電流が取り出され、燃料電池システム102はアイドルストップ状態から通常の発電状態に戻る。
次に、このようなアイドルストップ機能を備えた燃料電池システム102において、燃料電池システム102がアイドルストップ状態にあるときの、燃料電池スタック201のカソード極への空気の供給制御について説明する。
図5はアイドルストップ状態における燃料電池システム102の空気供給系を構成する空気コンプレッサ212の制御手順を示すフローチャートである。このフローチャートに示す制御手順は、システム制御部225の制御の下に行われる。
図5において、先ず燃料電池スタック201の発電が停止して燃料電池システム102がアイドルストップ状態であるか否かを判別する(ステップS51)。判別の結果、燃料電池システム102がアイドルストップ状態である場合には、続いて、空気コンプレッサ212が稼動されているか否かを判別する(ステップS52)。判別の結果、空気コンプレッサ212が稼動されていない場合には、引き続いて空気コンプレッサ212の稼動条件が成立しているか否かを判別する(ステップS53)。
ここで、空気コンプレッサ212を稼動するか否かの判別要件は、様々に考えられるが、例えば燃料電池スタック201の各セルに設けられた電圧センサ223で検出された各セルのセル電圧の内、最小セル電圧(最小値)が所定の下限電圧(第1の所定電圧)に達したか否かとして設定される。この第1の所定電圧は、燃料電池システム102がアイドルストップ状態から通常の発電状態に復帰する際の、カソード極の空気不足による発電遅れや、PM224の仕様によって決まるPM224の最低入力電圧を確保できる電圧に設定される。なお、セル電圧とカソード極の空気不足との関係は、予め実験や机上検討等によって取得し、取得した関係に基づいて、空気不足とならないセル電圧を設定する。
ステップS53の判別の結果、空気コンプレッサ212の稼動条件が成立した場合には、空気調圧弁213を開放した後空気コンプレッサ212を稼動してカソード極に空気を供給する(ステップS54)。これにより、図6のタイミングチャートに示すように、最小セル電圧は下降から上昇に転じる。
次に、図5に戻って、先のステップS52の判別結果において、空気コンプレッサ212が稼動していると判別された場合には、続いて稼動している空気コンプレッサ212を停止する停止条件が成立しているか否かを判別する(ステップS55)。
ここで、空気コンプレッサ212の稼動を停止するか否かの判別要件は、燃料電池スタック201の各セルに設けられた電圧センサ223で検出された各セルのセル電圧の内、最大セル電圧(最大値)が所定の上限電圧(第2の所定電圧)を超えないように設定される。したがって、空気コンプレッサ212の稼動を停止するか否かの判別要件は、例えば最大セル電圧が第2の所定電圧よりも低い値に設定された第3の所定電圧に達したか否かとして設定される。
上記第2の所定電圧は、カソード極に空気が供給されることでセル電圧が上昇してセルの劣化が促進されない最大の電圧として設定される。このセルの劣化が促進されない最大電圧は、それぞれの燃料電池スタック201を構成するセルの仕様によって様々であるので、予め実験や机上検討等を行って取得する。一方、第3の所定電圧は、空気コンプレッサ212を停止した直後の最大セル電圧の多少の上昇分を見込んで設定され、空気コンプレッサ212を停止する最大セル電圧と停止後の最大セル電圧の上昇分は、予め実験等により取得する。
ステップS55の判別の結果、空気コンプレッサ212の停止条件が成立した場合には、空気コンプレッサ212の稼動を停止してカソード極への空気の供給を停止する(ステップS56)。これにより、図6に示すように、最大セル電圧は第2の所定電圧を上回ることなく上昇から低下に転じる。したがって、燃料電池システム102のアイドルストップ状態における空気の供給制御において、セルの劣化を防止することが可能となる。
一方、先のステップS51の判別結果において、燃料電池システム102がアイドルストップ状態でない場合には、空気コンプレッサ212は通常運転時の制御が行われる(ステップS57)。
空気コンプレッサ212は、図6に示すように、稼働後は所定の回転数で駆動制御されているが、図7のタイミングチャートに示すように、最大セル電圧が上記第2の所定電圧に近づくにしたがって空気コンプレッサ212の回転数を徐々に低下させるようにしてもよい。このときに、最大セル電圧と第2の所定電圧との差分(第2の所定電圧−セル電圧最大値)と空気コンプレッサ212の回転数との関係は、例えば図8に示すような比例関係となり、上記差分が「0」になった時点で空気コンプレッサ212の回転数も「0」となるように上記両者の関係を設定する。
このように、空気コンプレッサ212の回転数を徐々に低下させることで、空気コンプレッサ212の稼動を停止するとほぼ同時に最大セル電圧も低下するので、最大セル電圧を第2の所定電圧を超えない直近まで上昇させてカソード極に十分空気を供給することが可能となる。
また、図9のタイミングチャートに示すように、空気コンプレッサ212の稼動を開始した後のセルの最も速い電圧上昇速度が、所定の速度以下となるように空気コンプレッサ212の回転数を低下させるように空気コンプレッサ212を駆動制御する。すなわち、セル電圧の上昇速度が大きい場合には、空気コンプレッサ212の回転数を低下させる速度を速くする。このときに、最大セル電圧の単位時間あたりの上昇量(V/sec)と空気コンプレッサ212の回転数の減少量との関係は、例えば図10に示すような比例関係となり、上記上昇量が「0」で上記減少量が「0」となるように上記両者の関係が設定される。
このような制御手法を採用することで、先の空気コンプレッサ212の回転数を徐々に低下させる制御手法を採用することで得られる効果と同様の効果を得ることが可能となる。
さらに、図6、図7ならびに図9のタイミングチャートに示す空気コンプレッサ212の制御手法では、稼働開始時に空気コンプレッサ212を所定の回転数までいっきに立ち上げているが、空気コンプレッサ212の回転数の上昇速度を所定の速度以下に抑えるようにしてもよい。これにより、停止していた空気コンプレッサ212が稼動した際に、空気コンプレッサ212の駆動音が急変することによる燃料電池車両の乗員への違和感を低減することができる。したがって、上記所定の速度は、一般的に乗員が違和感を感じない程度とし、予め実験等で確認して設定する。
(実施形態2)
次に、本発明の実施形態2について説明する。この実施形態2の特徴とするところは、先の実施形態1で説明した空気コンプレッサ212の制御に加えて、燃料電池スタック201の取り出し電流を制御したことにあり、燃料電池システム102の構成は図2と同様である。
図11はアイドルストップ状態においてPM224による電流取り出しの制御手順を示すフローチャートである。このフローチャートに示す制御手順は、PM224へのシステム制御部225の制御指令の下に行われる。
図11において、先ず燃料電池スタック201の発電が停止して燃料電池システム102がアイドルストップ状態であるか否かを判別する(ステップS111)。判別の結果、燃料電池システム102がアイドルストップ状態である場合には、続いて、PM224で燃料電池スタック201から電流が取り出されているか否かを判別する(ステップS112)。判別の結果、電流が取り出されていない場合には、引き続いて燃料電池スタック201から電流を取り出す取り出し条件が成立しているか否かを判別する(ステップS113)。
ここで、電流を取り出すか否かの判別要件は、空気コンプレッサ212の稼動を停止して最大セル電圧が第2の所定電圧に達した否かとして設定される。この第2の所定電圧は、先の実施形態1で説明したものと同様である。
ステップS113の判別の結果、セルの最大電圧が上記第2の所定電圧に達して電流の取り出し要件が成立した場合には、PM224で燃料電池スタック201からPM224で電流を取り出す(ステップS114)。空気コンプレッサ212を停止した後に、最大セル電圧が第2の所定電圧以上となる分を電流として取り出すことで、最大セル電圧を低下させて第2の所定電圧を超えないように制御する。
ここで、取り出す電流の値は、例えば燃料電池車両のアイドル時に燃料電池スタック201から取り出される電流値よりも小さい値に設定する。もしくは、電流を取り出すことで水素ガスのSR(ストイキ比)が不足しない値に設定する。あるいは、電流を取り出すことによって電圧センサ223で検出された各セルのセル電圧のばらつきが予め実験等を行って決められた所定電圧以内となるような値に設定される。
これにより、図12のタイミングチャートに示すように、空気コンプレッサ212の稼動を停止しても燃料電池スタック201から電流を取り出すことで最大セル電圧の上昇が回避され、セル電圧がセルの劣化を促進する電圧を上回ることが防止できる。
次に、図11に戻って、先のステップS112の判別結果において、電流が取り出されている場合には、続いて電流の取り出し停止要件が成立しているか否かを判別する(ステップS115)。
電流を取り出した際の電流値は、最大セル電圧が第2の所定電圧を超える分だけの値となり、電流を取り出して最大セル電圧が第2の所定電圧以下になることで取り出し電流も0となる。したがって、電流の取り出しの停止要件は、最大セル電圧が第2の所定電圧以下になったことに設定される。あるいは、電流の取り出しの停止要件は、例えば予め実験等で決めた所定の時間が経過したことに設定される。
ステップS115の判別の結果、電流の取り出し停止要件が成立した場合には、電流の取り出しが停止される(ステップS116)。これにより、図12のタイミングチャートに示すように、最大セル電圧は第2の所定電圧を上回ることなく低下に転じる。したがって、燃料電池システム102のアイドルストップ状態における空気の供給制御において、セルの劣化を防止することが可能となる。
一方、先のステップS111の判別結果において、燃料電池システム102がアイドルストップ状態でない場合には、PM224による電流の取り出しは通常運転時の制御が行われる(ステップS117)。
燃料電池スタック201からの電流の取り出しは、空気コンプレッサ212の稼動を停止した後電流の取り出しを開始しているが、図13のタイミングチャートに示すように、空気コンプレッサ212の稼動を停止する前に電流の取り出しを開始し、電流の取り出しを開始した後取り出し電流を徐々に増加し、空気コンプレッサ212の稼動を停止した後取り出し電流が徐々に低下する制御手法を採用しても、上述したと同様の効果を得ることができる。
また、図14のタイミングチャートに示すように、空気コンプレッサ212の稼働後最大セル電圧が第2の所定電圧に達したときに、空気コンプレッサ212の駆動を停止せずに電流を取り出すことで最大セル電圧の上昇を抑え、その後空気コンプレッサ212の駆動を停止し、停止後電流の取り出しを停止するような制御手法を採用しても、上述したと同様の効果を得ることができる。さらに、空気コンプレッサ212を稼動しているときの最大セル電圧の上昇速度が予め設定された所定の上昇速度以下となるように電流を取り出す制御手法を採用してもよい。
101…車両本体
102…燃料電池システム
103…インバータ
104…駆動モータ
105…駆動輪
106…車速センサ
107…2次電池
108…リレー
109…制御コントローラ
111…シフト位置センサ
112…ブレーキセンサ
113…アクセル開度センサ
114,223…電圧センサ
115…電流センサ
201…燃料電池スタック
202…水素タンク
203…水素調圧弁
204…エゼクタ
205…水素循環配管
206…水素循環ポンプ
207…水素供給配管
210…パージ弁
211…パージ配管
212…空気コンプレッサ
213…空気調圧弁
214…空気供給配管
215…排気管
216…回転数センサ
224…PM(パワーマネージャー)
225…システム制御部

Claims (2)

  1. 燃料ガス供給手段により供給される燃料ガスと、酸化剤ガス供給手段により供給される酸化剤ガスとの電気化学反応により発電を行う燃料電池スタックを備え、電力の要求がない場合には、前記燃料電池スタックに酸化剤ガスの供給を停止し、前記燃料電池スタックの発電を停止する燃料電池システムにおいて、
    前記燃料電池スタックの電圧を計測する電圧測手段と、
    前記酸化剤ガス供給手段に電力を供給可能な電力供給源と、
    前記燃料電池スタックの発電で得られた電流を前記燃料電池スタックから取り出す電流取り出し手段と、
    前記燃料電池スタックの発電が停止し、かつ、前記酸化剤ガス供給手段の稼働が停止しているときに、所定の条件が成立すると前記電力供給源の電力により前記酸化剤ガス供給手段を再稼働させ、前記電圧計測手段で計測された前記燃料電池スタックの電圧が前記燃料電池セルの劣化が促進されない電圧値である上限電圧値を越えないように、前記電圧計測手段で計測された前記燃料電池スタックの電圧に応じて、前記酸化剤ガス供給手段を制御するとともに、前記燃料電池スタックの発電を再開しつつ前記電流取り出し手段による取り出し電流を制御する制御手段と、を有し、
    前記制御手段は、前記所定の条件が成立すると、先ず前記酸化剤ガス供給手段のみを再稼働させるとともに、前記酸化剤ガス供給手段の再稼働によって上昇する前記燃料電池スタックの電圧が前記上限電圧に達すると、前記電流取り出し手段による電流の取り出しを実施する
    ことを特徴とする燃料電池システム。
  2. 前記制御手段は、前記酸化剤ガス供給手段の再稼働後、前記電流取り出し手段で電流を取り出し、その後、前記酸化剤ガス供給手段の稼働を停止し、その後、前記電流取り出し手段による電流の取り出しを停止す
    ことを特徴とする請求項1に記載の燃料電池システム。
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