JP4816872B2 - 燃料電池システム - Google Patents

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Description

本発明は、発電要求のない場合には、発電動作に係わる補機類の駆動を停止して発電を停止するアイドリングストップ機能を備えた燃料電池システムに関する。
従来、この種の技術としては、例えば以下に示す文献に記載されたものが知られている(特許文献1参照)。この文献1には、車両の状態が所定のアイドル状態と判断されたときに、コンプレッサを停止して燃料電池の発電を停止する機能を備えた燃料電池車両のアイドル制御装置に関する技術が記載されている。この技術では、アイドル停止中にキャパシタの残容量が所定値以下に低下した時には、キャパシタの電力によりコンプレッサを駆動して燃料電池を再起動し、再起動された燃料電池を通常時の運転領域よりも発電効率の良い運転領域で発電させて、キャパシタを充電させるようにしている。
特開2004−056868
以上説明したように、従来の燃料電池車両のアイドル制御装置において、アイドリングストップ状態を解除して燃料電池スタックを発電状態とする条件としては、車両の運転者がアクセルを踏み込んで電力要求が増大した場合、ならびに燃料電池システムの要件でこれ以上アイドリングストップ状態を継続することができない場合、もしくは運転者が要求すると推定される電力を燃料電池システムが十分に供給することができない場合とが想定される。
このように、アイドリングストップ状態を解除して発電を再開する条件にはいくつかのパターンがあるが、アイドリングストップ状態を解除して発電を再開する手法は一通りであった。すなわち、それぞれのパターンに応じてアイドリングストップ状態を解除する手法を変えていなかった。このため、例えば運転者が駆動力を要求していない状態、すなわち燃料電池システムの要件でアイドリングストップ状態を解除する場合には、空気コンプレッサが停止状態から発電が行える状態に駆動される。したがって、燃料電池システムでは、空気コンプレッサが停止して非常に静かな状態から、空気コンプレッサの駆動音によりシステムの稼働音が大きな状態へ移行する。これにより、音振性能の悪化を招き、運転者に対して違和感や不快感を与えるといった問題があった。
そこで、本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、アイドリングストップを解除する際の音振性能を向上した燃料電池システムを提供することにある。
上記目的を達成するために、本発明の課題を解決するための手段は、燃料ガスと、空気コンプレッサによって供給される空気に含まれる酸化剤ガスとの電気化学反応により発電を行う燃料電池と、燃料ガスと酸化剤ガスの供給を一時的に停止し、前記燃料電池の発電を一時的に停止してアイドリングストップ状態に移行する一方、アイドリングストップ状態を解除して燃料ガスと酸化剤ガスの供給を再開し発電を再開するアイドリングストップ機能を備えた制御手段とを有する燃料電池システムにおいて、前記制御手段は、アイドリングストップ状態を解除して発電状態に移行する際の解除要件には、運転者の操作が伴ってアイドリングストップ状態を解除する解除要件と、運転者の操作が伴わずに前記燃料電池システム側の要件でアイドリングストップ状態を解除する解除要件と、を備え、運転者の操作が伴わずに前記燃料電池システム側の要件でアイドリングストップ状態を解除する場合には、運転者の操作が伴ってアイドリングストップ状態を解除する場合に比べて、前記空気コンプレッサの回転数の上昇速度を緩やかにして酸化剤ガスを前記燃料電池に供給することを特徴とする。
本発明によれば、アイドリングストップ状態を解除する際の解除要件に応じた酸化剤ガスの供給方法を複数備えることで、解除要件に応じて酸化剤ガスの供給方法を使い分けることが可能となる。これにより、発電で得られた電力の供給能力と音振特性の双方を満足させることができる。
以下、図面を用いて本発明を実施するための最良の実施例を説明する。
図1は本発明の実施例1に係る燃料電池システムが搭載された燃料電池車両の基本構成を示す図であり、図2は本発明の実施例1に係る燃料電池システムの構成を示す図である。
図1において、燃料電池車両は、車両本体101に駆動電源として燃料電池システム102を搭載してなるものであり、更にインバータ103、駆動モータ104、駆動輪105、車速センサ106、2次電池107、リレー108ならびにコントローラ109を備えている。また、燃料電池車両は、車両のシフト位置を検出するシフト位置センサ111、ブレーキの有無を検出するブレーキセンサ112、ならびにアクセルの開度を検出するアクセル開度センサ113を備えている。
燃料電池システム102は、駆動モータ104が消費する電力や2次電池107の充電に必要な電力が発電できるように、燃料電池システム102に供給する燃料ガスの水素や酸化剤ガスの空気の圧力、ならびに流量等が図2に示す圧力調整弁、コンプレッサ等で制御される。
インバータ103は、燃料電池システム102で発電される直流電力を交流電力に変換し、コントローラ109から指示される駆動モータ104を駆動する出力トルクとなるように、駆動モータ104を制御する。
駆動輪105は、駆動モータ104と機械的に接続されており、駆動モータ104で得られた駆動トルクが伝達されて、駆動力を発生させて車両を駆動する。車速センサ106は駆動輪105の回転速度を検出する。
2次電池107は、車両のアイドリングストップ時など、燃料電池システム102から電力が供給されない場合に、駆動モータ104や、燃料電池システム102が発電するために必要となる補機の圧力調整弁やコンプレッサに電力を供給する。2次電池107には、2次電池107の電圧を検出する電圧センサ114ならびに電流を検出する電流センサ115が設けられており、この電圧センサ114ならびに電流センサ115で検出された電圧ならびに電流に基づいて、2次電池107の充電量が推定される。
リレー108は、コントローラ109からの指令に基づいて、燃料電池システム102と負荷とを接続/切断する。
コントローラ109は、本燃料電池車両の運転を制御する制御中枢として機能し、プログラムに基づいて各種動作処理を制御するコンピュータに必要な、CPU、記憶装置、入出力装置等の資源を備えた例えばマイクロコンピュータ等により実現される。コントローラ109は、本車両における上記各センサ類からの信号を読み込み、読み込んだ各種信号ならびに予め内部に保有する制御ロジック(プログラム)に基づいて、本車両の各構成要素に指令を送り、以下に説明する、燃料電池システム102のアイドリングストップに係わる動作処理を含む本車両の運転/停止動作に必要なすべての動作を統括管理して制御する。
次に、図2を参照して、燃料電池システム102について説明する。
図2において、燃料電池システム102は、発電を行う燃料電池スタック201と、この燃料電池スタック201に燃料ガスである水素(あるいは水素リッチガス)を供給するための水素供給系と、燃料電池スタック201に酸化剤ガスである酸素を含む空気を供給するための空気供給系とを有している。
燃料電池スタック201は、水素が供給される水素極(アノード極)と酸素(空気)が供給される空気極(カソード極)とが電解質・電極触媒複合体を挟んで重ね合わされた発電セルが多段積層され、水素と酸素との電気化学反応により化学エネルギーを電気エネルギーに変換する発電部を構成する。
燃料電池スタック201の水素極では、水素が供給されることで水素イオンと電子に解離し、水素イオンは電解質を通り、電子は外部回路を通って電力を発生させ、空気極にそれぞれ移動する。空気極では、供給された空気中の酸素と上記水素イオン及び電子が反応して水が生成され、外部に排出される。
燃料電池スタック201の電解質としては、高エネルギー密度化、低コスト化、軽量化等を考慮して、例えば固体高分子電解質が用いられる。固体高分子電解質は、例えばフッ素樹脂系イオン交換膜等、イオン(プロトン)伝導性の高分子膜からなるものであり、飽和含水することによりイオン伝導性電解質として機能する。
水素供給系は、水素供給手段から供給される水素を水素極通路を介して燃料電池スタック201の水素極へと導く。すなわち、この水素供給系は、水素供給手段として水素を高圧で貯蔵する水素タンク202、燃料電池スタック201で行われる発電に必要となる水素が燃料電池スタック201に供給されるように燃料電池スタック201に供給される水素の圧力を調整する水素調圧弁203、燃料電池スタック201から排出された水素オフガスをエゼクタ204を介して燃料電池スタック201の入口側に戻すために水素オフガスを水素循環配管205を循環させる水素循環ポンプ206、ならびに水素極通路となる水素供給配管207を有している。
また、燃料電池スタック201の水素極の入口近傍には、燃料電池スタック201に供給される水素の圧力を検出する水素圧力センサ208、ならびに水素濃度を検出する水素濃度センサ209が設けられている。
水素供給源である水素タンク202から供給される水素ガスは、水素調圧弁203を通って水素供給配管207へと送り込まれ、燃料電池スタック201の水素極に供給される。このとき、水素調圧弁203は、水素圧力センサ208で検出された水素圧力に基づいて調圧制御され、燃料電池スタック201の水素極及び水素極通路内の圧力が負荷に応じた圧力になるように、供給される水素ガスの圧力を調整している。
燃料電池スタック201では、供給された水素ガスが全て消費されるわけではなく、消費されずに燃料電池スタック201から排出された水素オフガスは、水素循環配管205を通って水素循環ポンプ206により循環され、エゼクタ204で新たに供給される水素ガスと混合されて、再び燃料電池スタック201の水素極に供給される。これにより、水素のストイキ比(供給流量/消費流量)を1以上にすることができ、セル電圧が安定化する。
水素供給系における燃料電池スタック201の出口側には、パージ弁210及びパージ配管211が設けられている。パージ弁210は、通常は閉じられており、燃料電池スタック201の水詰まりや不活性ガスの蓄積等によるセル電圧の低下を検知すると開放される。水素循環配管205内には水素ガスを循環させることで不純物や窒素等が蓄積され、これにより水素分圧が降下して燃料電池スタック201の発電効率が低下する場合がある。そこで、燃料電池スタック201の出口側にパージ弁210やパージ配管211を設け、必要に応じてパージ弁210を開放して水素パージを行うことで、水素循環配管205内から不純物や窒素等を除去できるようにしている。
燃料電池スタック201の空気供給系は、空気供給手段からの空気を空気極通路によって燃料電池スタック201の空気極へと導く。すなわち、この空気供給系は、空気供給手段としての空気コンプレッサ212や空気調圧弁213と、空気極通路となる空気供給配管214を有している。
空気コンプレッサ212は、燃料電池スタック201の空気極に空気を送り込むものであり、例えばモータ駆動により圧縮した空気を空気供給配管214を通して燃料電池スタック201の空気極へと供給する。
空気調圧弁213は、空気コンプレッサ212によって燃料電池スタック201に供給される空気の圧力を調整するものであり、燃料電池スタック201の空気極の出口側の排気管215に設けられている。
燃料電池スタック201の空気極の入口近傍には、空気圧力センサ216が設けられており、空気調圧弁213は、この空気圧力センサ216で検出された空気の圧力に基づいて調圧制御され、燃料電池スタック201の空気極及び空気極通路内の圧力が負荷に応じた圧力になるように、空気コンプレッサ212によって供給される空気の圧力を調整している。
燃料電池スタック201で消費されなかった酸素及び空気中の他の成分は、燃料電池スタック201から排気管215ならびに空気調圧弁213を介して排出される。
上述した固体高分子電解質膜を用いた燃料電池スタック201は、適正な作動温度が80℃前後と比較的低く、過熱時には冷却することが必要である。このため、通常は燃料電池スタック201内に冷却水を循環させて燃料電池スタック201を冷却し、燃料電池スタック201を最適な温度に維持する冷却機構が設けられている。
すなわち、この冷却機構は、冷却水供給手段として冷却水ポンプ217、冷却水を適宜冷却するラジエタ218、ならびに冷却水の通路となる冷却水配管219を有している。また、燃料電池スタック201の冷却水入口近傍には、燃料電池スタック201に供給される冷却水の温度を検出する冷却水温度センサ220が設けられている、冷却水ポンプ217は、冷却水温度センサ220で検出された冷却水温度に基づいて駆動制御され、冷却水配管219を流通する冷却水温度が80℃前後となるように冷却水の流量を調整している。
燃料電池スタック201の温度は、燃料電池スタック201の水素極から排出された水素オフガスの温度、空気極から排出された空気オフガスの温度、冷却水温度センサ220で検出された冷却水の温度、もしくは外気温のいずれか1つの温度で代用される。水素オフガスの温度で代用する場合には、水素極の出口近傍に燃料電池スタック201から排出された水素オフガスの温度を検出する温度センサ221を設け、空気オフガスの温度で代用する場合には、空気極の出口近傍に燃料電池スタック201から排出された空気オフガスの温度を検出する温度センサ222を設け、外気温で代用する場合には、燃料電池スタック201の近傍に外気温を検出する温度センサ(図示せず)を設けるようにすればよい。
また、燃料電池システムは、システム制御部225(制御手段)を備えている。システム制御部225は、本燃料電池システムの運転を制御する制御中枢として機能し、プログラムに基づいて各種動作処理を制御するコンピュータに必要な、CPU、記憶装置、入出力装置等の資源を備えた例えばマイクロコンピュータ等により実現され、例えば図1に示すコントローラ109の一部機能として実現される。システム制御部225は、本燃料電池システムにおける上記各センサ類からの信号を読み込み、読み込んだ各種信号ならびに予め内部に保有する制御ロジック(プログラム)に基づいて、本燃料電池システムの各構成要素に指令を送り、以下に説明する、燃料電池システムの発電状態とアイドリングストップ状態との間の移行動作を含む、本燃料電池システムの運転/停止に必要なすべての動作を統括管理して制御する。
このような燃料電池システム102を搭載した燃料電池車両において、車速センサ106、アクセル開度センサ113、ブレーキセンサ112、シフト位置センサ111から与えられるそれぞれの情報、ならびに2次電池107の充電量(SOC)に基づいてコントローラ109で燃料電池車両が所定のアイドル状態であると判定された場合には、燃料電池システム102へ供給する水素、空気ならびに冷却水を遮断し、燃料電池システム102をアイドリングストップ状態とする。一方、燃料電池車両が所定のアイドル状態ではないと判定された場合には、速やかに燃料電池システム102のアイドリングストップ状態を解除して燃料電池システム102に水素、空気ならびに冷却水の供給を再開し、燃料電池システム102を発電状態へ復帰させる。
次に、図3の制御手順を示すフローチャートを参照して、システム制御部225の制御の下で実行される、燃料電池システムの発電状態とアイドリングストップ状態との制御動作を説明する。なお、図3に示す制御手順は、予め設定された周期毎に繰り返し実行される。
図3において、燃料電池システムのアイドリングストップの制御動作を行う場合に、先ず燃料電池システムがアイドリングストップ状態にあるか否かを判別し(ステップS301)、アイドリングストップ状態にない場合には、続いて予め設定されたアイドリングストップ状態に移行できる許可条件が成立しているか否かを判別する(ステップS302)。判別の結果、許可条件が成立している場合には、燃料電池スタック201での発電を停止しても構わないが、発電を停止した後(数分程度以内)に発電を再開する必要が生まれる可能性が高いので、システムの運転停止操作ではなく、燃料電池システムをアイドリングストップ状態に移行する処理を実行し(ステップS303)、燃料電池システムがアイドリングストップ状態に入る(ステップS304)一方、許可条件がすべて成立していない場合には、発電を継続する(ステップS305)。
ここで、アイドリングストップ状態に移行できる許可条件(要件)としては、先ず要求発電量(車両の運転者の駆動力要求)が予め設定された所定値以下とし、例えばアクセル開度が5%程度未満とし、もしくはアクセル開度から算出される駆動力要求値が1kw程度未満であるとする。また、他の許可条件は、車速が予め設定された所定の速度以下であるとし、例えば車速が4km/h程度未満であるとする。また、他の許可条件は、2次電池107の充電容量が十分であり、例えば2次電池107のSOC(充電状態)が70%程度以上であるとする。また、他の許可条件は、燃料電池スタック201のアノード電極内の窒素濃度が予め設定された所定濃度以下であるとし、例えばアノード電極内の窒素濃度が30%程度未満であるとする。これらの許可条件がすべて成立しているか否かを判定する。
なお、これらの許可条件の成立を判定するときに、シフトレバーの位置がPレンジまたはNレンジか否か、Rレンジか否か、ブレーキを踏み込んでいるか否かなどの要件を判定に用いてもよい。また、許可条件の判定については、従来技術と同様、他の運転パラメータを追加してもよいし、また他の判定方法を適用してもよい。
燃料電池システムをアイドリングストップ状態に移行する動作は、図4のフローチャートに示す手順にしたがって実行される。図4において、先ず水素調圧弁203を閉じて水素の供給を停止した後(ステップS41)、燃料電池スタック201の水素の圧力が所定の圧力以下、例えば大気圧よりも低い所定の負圧になったか否かを判別する(ステップS42)。水素の圧力が所定の圧力以下になると、パージ弁210を閉じて水素循環ポンプ206の駆動を停止し(ステップS43)、かつ空気コンプレッサ212の駆動を停止するとともに空気調圧弁213を閉じて空気の供給を停止する(ステップS44)。続いて、冷却水ポンプ217の駆動を停止して(ステップS45)、燃料電池スタック201の発電を停止し、燃料電池システムをアイドリングストップ状態に移行する。
このように、燃料電池システムをアイドリングストップ状態にすることで、水素循環ポンプ206や空気コンプレッサ212の補機類の運転を止め、燃費の向上に加えて、音振性能の向上、低消費電力化を図っている。
図3に戻って、先のステップS301の判別処理において、燃料電池システムがアイドリングストップ状態にある場合には、アイドリングストップ状態を解除するアイドリングストップ解除条件1が成立しているか否かを判別する(ステップS306)。ここで、アイドリングストップ状態を解除する解除条件1は、要求発電量(運転者の駆動力要求)が予め設定された所定値以上であるとし、シフトレバーの位置がDレンジ又はRレンジであり、ブレーキを踏み込んでいない場合である。
判別の結果、これらの解除条件1がすべて成立した場合には、アイドリングストップ状態を解除する解除処理1を行ってアイドリングストップ状態を解除し(ステップS307)、発電を再開する(ステップS308)。
一方、先のステップS306の判別処理において、解除条件1がすべて成立しない場合には、先の解除条件1とは異なるアイドリングストップ状態を解除する解除条件2が成立しているか否かを判別する(ステップS309)。この解除条件2は、車速が予め設定された所定の速度以上であるとし、例えば車速が7km/h程度以上であるとする。また、他の解除条件2は、2次電池107の充電容量が十分でないとする。この判断は、アイドリングストップ状態が解除されるときに補機にて消費される電力と、アイドリングストップ状態が解除されて燃料電池スタック201が電力を発電できるようになるまでに駆動モータ104で消費される電力が賄えないことをもって充電容量が十分でないと判断し、例えば2次電池107のSOCが60%程度以下であるとする。
また、他の解除条件2は、アノード電極内の窒素濃度が予め設定された所定値以上であるとし、例えば窒素濃度が40%程度以上であるとする。
アノード電極内の不活性ガス(窒素)濃度が高い場合には、各セルの発電が十分になされずに発電電力の低下、しいては燃料電池スタック201の劣化に至る。このような状態を防止するために、アノード電極内の不活性ガス濃度が所定濃度以上になった場合には、一旦燃料電池スタック201を発電状態にし、アノード電極内の不活性ガスをパージして不活性ガス濃度を下げる必要がある。
ここで、アノード電極内の窒素濃度が上昇するのは、カソード電極から透過してくる窒素が主たる要因であるので、アイドリングストップ時間と窒素濃度の上昇幅はほぼ比例の関係にある。したがって、アノード電極内の窒素濃度を測定する代わりに、アイドリングストップ時間をシステム制御部225で計測し、上述した関係を利用して計測した時間に基づいてアノード電極内の窒素濃度を推定する手法を用いてもよい。
アイドリングストップ解除条件1とアイドリングストップ解除条件2との違いは運転者の操作が伴う条件か否かで区別される。
なお、アイドリングストップ解除の判定については、従来技術と同様、他の運転パラメータを追加してもよいし、また他の判定方法を適用してもよい。このような場合であっても、上述したように運転者の操作が伴う場合は、アイドリングストップ解除条件1に含まれ、運転者の操作が伴わない場合にはアイドリングストップ解除条件2に含まれるものとする。
これらの解除条件2の少なくとも1つが成立した場合には、先の解除処理1とは異なるアイドリングストップ状態を解除する解除処理2を実行してアイドリングストップ状態を解除し(ステップS310)、発電を再開する(ステップS308)。
一方、先のステップS309の判別処理において、アイドリングストップ状態の解除条件2が成立しなかった場合には、アイドリングストップ状態を解除せずにアイドリングストップ状態を継続する(ステップS311)。
燃料電池システムをアイドリングストップ状態から発電を再開する解除処理1ならびに解除処理2の手順は、図5に示すフローチャートにしたがって行われる。図5において、先ず水素調圧弁203を開いて水素の供給を開始した後(ステップS51)、冷却水ポンプ217を駆動して燃料電池スタック201に冷却水を循環させる(ステップS52)。
その後、空気コンプレッサ212を駆動する(ステップS53)。ここで、先の図3のステップS307で実行する解除処理1と、ステップS310で実行する解除処理2とでは、空気コンプレッサ212の駆動方法が異なるようにしている。
この駆動方法について、図6のタイミングチャートを参照して説明する。
アイドリングストップ解除条件1の成立によりアイドリングストップを解除する解除処理1の場合は、運転者の操作が伴うので、比較的速やかに燃料電池スタック201を発電(アイドル)状態にすることが重要である。したがって、図6(a)に示すように、空気コンプレッサ212の回転数を解除処理を開始した時間t1から速やかに発電のために必要とされる回転数R1まで立ち上げる。
一方、アイドリングストップ解除条件2の成立によりアイドリングストップを解除する解除処理2の場合には、運転者の操作が伴わずにシステム側の要件で解除される。このため、電力の供給要求がないので、速やかに空気を燃料電池スタック201に供給する必要はない。このような状況のときには、アイドリングストップ解除条件1で述べたような空気コンプレッサ212の回転数を先のように速やかに立ち上げると、アイドリングストップ状態が非常に静粛な状態であるために、その静かさの差が大きくなり、運転者に対して不快感、もしくは違和感を与えることになる。
そこで、アイドリングストップ解除条件2によりアイドリングストップ状態を解除する場合には、図6(a)に示すように、空気コンプレッサ212の目標回転数を時間t1から時間t3にかけて徐々に緩やかに発電のために必要とされる目標回転数R1まで上昇させる。
このように空気コンプレッサ212の駆動を制御することで、アイドリングストップの非常に静かな状態から発電状態に急に音の大きさを変化させることなく発電を再開するすることができる。これにより、運転者に不快感や違和感を与えることは回避される。
このとき、アイドリングストップ解除条件1と解除条件2とで立ち上げ時の空気コンプレッサ212の目標回転数を変えてもよい。すなわち、図6(b)に示すように、解除条件2の場合には先と同様であるが、解除条件1の場合には、発電に必要となる目標回転数R1よりも高い目標回転数R2に時間t1から速やかに立ち上げ、その後時間t2までその回転数R2を維持した後、回転数を落として目標回転数R1とするように駆動制御する。
このような駆動制御により、アイドリングストップ解除条件1の場合には解除条件2の場合に比べて空気コンプレッサ212の回転数を高めにすることでより早く燃料電池スタック201をアイドリングストップ状態から発電状態へ移行させることができる。
このように空気コンプレッサ212の駆動を制御して、燃料電池スタック201に供給される空気の供給速度もしくは供給量(供給圧)を可変制御することで、車両の動力性能ならびに音振性能の双方を向上させることが可能となる。
このようにして空気コンプレッサ212が駆動された後、空気調圧弁213を開いて空気の圧力が所定の圧力となるように調圧し(ステップS54)、空気の供給を開始する(ステップS54)。引き続いて、パージ弁210を一旦開いて窒素等の不純物を排出した後(ステップS55)閉じ、その後発電を開始して燃料電池スタック201から電力を取り出す。
以上説明したように、上記実施例においては、アイドリングストップ機能を備えた燃料電池システムにおいて、アイドリングストップ状態から発電状態に復帰移行する際に、アイドリングストップ状態を解除するときの解除方法を複数持ち、発電状態に移行する条件によって解除の方法を切り替えることができる。これにより、例えばドライバの操作を伴うアイドリングストップ状態の解除のときは、動力性能を短時間で確保できるように発電するまでの時間を短くするため、空気コンプレッサ212の回転数を高めに設定する一方、ドライバの操作の伴わない要件によるアイドリングストップ状態の解除のときは、音振性能を重要視して空気コンプレッサ212の回転数を低めに設定し、かつ回転数の上昇速度を緩やかにして音の変化を極力小さくするというように、復帰の仕方を最適に切り替えることができる。
2次電池107の出力可能電力が低下したことにより、アイドリングストップ状態から発電を再開するときに十分なバッテリアシストが期待できず、その状態でドライバが加速操作を行った場合、所望の駆動力が得られないことによりドライバが不快感をもつ可能性がある。この場合には、予めアイドリングストップ状態を解除して2次電池への充電を行うことが知られているが、このときドライバは特に解除のための操作をしているわけではないので、突然アイドリングストップ状態を解除すると、前後の音の大きさの差が顕著となりドライバに対して不快感や違和感を与える可能性がある。
このような場合には、音の最も大きな要因である空気コンプレッサ212の回転数を低めに、かつ回転数の上昇速度を緩やかにして音の変化を極力小さくすることで、ドライバに対して違和感を与えずに燃料電池システムを発電状態に復帰させることができる。一方、ドライバの要求によりアイドリングストップ状態を解除する場合は、瞬時にかつ高めに空気コンプレッサ212の回転数を上昇させことで、速やかに燃料電池システムを発電状態へ移行させることが可能となる。
2次電池107の出力可能電力の低下を2次電池107の充電状態(SOC)に基づいて推定することで、簡易なシステムにて上記効果を得ることができる。
燃料電池システムの発電可能電力が低下したことにより、アイドリングストップ状態から発電状態に移行するときに十分な発電電力が得られず、その状態でドライバが車両の加速操作を行った場合には、所望の駆動力を得られないことによりドライバが不快感をもつ可能性がある。このような場合には、予めアイドリングストップ状態を解除して燃料電池システムの発電可能電力を回復したり、ドライバの加速要求に瞬時に対応できるようにする必要がある。このとき、ドライバは特に操作をしているわけではないので、突然アイドリングストップ状態が解除されると、前後の音の大きさの差が顕著でありドライバに対し不快感や違和感を与える可能性がある。
このような場合には、音の最も大きな要因である空気コンプレッサ212の回転数を低めに、かつ回転数の上昇速度を緩やかにして音の変化を極力小さくすることで、ドライバに対して違和感を与えずに燃料電池システムを発電状態に復帰させることができる。
燃料電池システムの発電可能電力が低下する原因の一つとして、アイドリングストップ中にカソード電極からアノード電極に透過してきた窒素の濃度が上昇することが挙げられる。したがって、アイドリングストップ中の窒素濃度を計測もしくは推定し、その結果に基づいて窒素濃度が所定濃度以上になったときにはアイドリングストップ状態を解除することで、発電可能電力を的確に回復することができる。
上記窒素濃度をアイドリングストップ状態にある経過時間に基づいて、予め実験や机上検討等で求めた窒素濃度と経過時間との関係を参照して算出することで、簡易なシステムにて上記効果を得ることができる。
燃料電池システムの発電可能電力が低下する原因の一つとして、燃料電池スタック201の温度がある。アイドリングストップ中の燃料電池スタックの温度を計測もしくは推定し、その結果に基づいて燃料電池スタック201の温度が所定温度以上もしくは所定温度以下になったときにアイドリングストップを解除することで、発電可能電力を的確に回復することができる。
本発明の実施例1に係る燃料電池システムを搭載した燃料電池車両の構成を示す図である。 本発明の実施例1に係る燃料電池システムの構成を示す図である。 本発明の実施例1に係る処理動作の手順を示すフローチャートである。 燃料電池システムがアイドリングストップ状態に移行する際の処理手順を示すフローチャートである。 燃料電池システムがアイドリングストップ状態から解除される際の処理手順を示すフローチャートである。 アイドリングストップ状態を解除した後の空気コンプレッサの回転数の変化を示す図である。
符号の説明
101…車両本体
102…燃料電池システム
103…インバータ
104…駆動モータ
105…駆動輪
106…車速センサ
107…2次電池
108…リレー
109…コントローラ
111…シフト位置センサ
112…ブレーキセンサ
113…アクセル開度センサ
114…電圧センサ
115…電流センサ
201…燃料電池スタック
202…水素タンク
203…水素調圧弁
204…エゼクタ
205…水素循環配管
206…水素循環ポンプ
207…水素供給配管
208…水素圧力センサ
209…水素濃度センサ
210…パージ弁
211…パージ配管
212…空気コンプレッサ
213…空気調圧弁
214…空気供給配管
215…排気管
216…空気圧力センサ
217…冷却水ポンプ
218…ラジエタ
219…冷却水配管
220…冷却水温度センサ
221,222…温度センサ
225…システム制御部

Claims (10)

  1. 燃料ガスと、空気コンプレッサによって供給される空気に含まれる酸化剤ガスとの電気化学反応により発電を行う燃料電池と、
    燃料ガスと酸化剤ガスの供給を一時的に停止し、前記燃料電池の発電を一時的に停止してアイドリングストップ状態に移行する一方、アイドリングストップ状態を解除して燃料ガスと酸化剤ガスの供給を再開し発電を再開するアイドリングストップ機能を備えた制御手段と
    を有する燃料電池システムにおいて、
    前記制御手段は、アイドリングストップ状態を解除して発電状態に移行する際の解除要件には、運転者の操作が伴ってアイドリングストップ状態を解除する解除要件と、運転者の操作が伴わずに前記燃料電池システム側の要件でアイドリングストップ状態を解除する解除要件と、を備え、
    運転者の操作が伴わずに前記燃料電池システム側の要件でアイドリングストップ状態を解除する場合には、運転者の操作が伴ってアイドリングストップ状態を解除する場合に比べて、前記空気コンプレッサの回転数の上昇速度を緩やかにして酸化剤ガスを前記燃料電池に供給する
    ことを特徴とする燃料電池システム。
  2. 前記燃料電池の発電で得られた電力で充電される2次電池を備え、
    前記制御手段は、前記2次電池から供給可能な電力を推定し、推定した電力の推定値が予め設定された所定値を下回った場合には、運転者の操作が伴わずに前記燃料電池システム側の要件でアイドリングストップ状態を解除する
    ことを特徴とする請求項1記載の燃料電池システム。
  3. 前記2次電池から供給可能な電力は、前記2次電池の充電状態に基づいて推定する
    ことを特徴とする請求項2記載の燃料電池システム。
  4. 前記制御手段は、発電再開後に前記燃料電池で発電可能な電力を推定し、推定した電力の推定値が予め設定された所定値を下回った場合には、運転者の操作が伴わずに前記燃料電池システム側の要件でアイドリングストップ状態を解除する
    ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の燃料電池システム。
  5. 発電再開後に前記燃料電池で発電可能な電力は、前記燃料電池のアノード電極の窒素濃度に基づいて推定する
    ことを特徴とする請求項4記載の燃料電池システム。
  6. 前記燃料電池のアノード電極の窒素濃度は、アイドリングストップ状態の経過時間に基づいて推定する
    ことを特徴とする請求項5記載の燃料電池システム。
  7. 発電再開後に前記燃料電池で発電可能な電力は、前記燃料電池の温度に基づいて推定する
    ことを特徴とする請求項4記載の燃料電池システム。
  8. 運転者の操作が伴ってアイドリングストップ状態を解除する場合と、運転者の操作が伴わずに前記燃料電池システム側の要件でアイドリングストップ状態を解除する場合とでは、酸化剤ガスの供給速度が異なる
    ことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の燃料電池システム。
  9. 運転者の操作が伴ってアイドリングストップ状態を解除する場合と、運転者の操作が伴わずに前記燃料電池システム側の要件でアイドリングストップ状態を解除する場合とでは、酸化剤ガスの供給量(供給圧)が異なる
    ことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の燃料電池システム。
  10. 前記制御手段は、運転者の操作が伴わずに前記燃料電池システム側の要件でアイドリングストップ状態を解除する場合は、前記運転者の操作が伴ってアイドリングストップ状態を解除する場合に比べて、駆動停止状態の前記空気コンプレッサの回転数を発電に必要な回転数まで立ち上げる際の上昇速度を緩やかにする
    ことを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の燃料電池システム。
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