JP5503152B2 - 乗物用シート - Google Patents
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Description
しかし、ばね係数を小さくする技術や、低反発クッション部材による技術では、乗物の後方側へ身体の沈み込みを大きくする(即ち、移動量を大きくする)ことができないという不都合があった。
しかし、特許文献3で示される技術は、固定フレームと可動フレームが、下部の取付軸で固定されているため、下部位置近傍での固定フレームと可動フレームの可動が非常に少なく、着座している身体の全体を乗物の後方側へ沈み込ませることができないという不都合がある。また特許文献3のばねは、大きく移動するに従って反力が大きくなって動きにくくなるだけでなく、固定フレームと可動フレームとの可動範囲は、極めて限定された移動範囲となり、大きく沈み込ませる移動量を確保することが難しいという問題があった。そして、可動フレームを用いているため、全体として装置が大きくなり、軽量化が困難であるという不都合もあった。
そこで、乗物用シートとして、後面衝突時に、身体の全体をシート内へ沈み込む量を大きくすることが望まれており、特に、腰部の移動量が大きくすることが望まれている。
また、乗物用シートとして、後面衝突時に、荷重伝達効率の良い身体の全体の沈み込み移動が望まれる。特に、後面衝突時にはシートバックが後方へ傾倒する為、シートバックの移動を考慮した上で、乗員からの荷重を有効活用して支持部材の移動量を十分に確保することが望まれる。
また、本発明の他の目的は、必要以上の剛性が不要で、部品点数が少なく、小型化及び軽量化が図れ、低コストで、ヘッドレストと独立して後面衝突時における身体の全体を乗物の後方側へ沈み込ませて、頸部等への衝撃を効果的に軽減できる乗物用シートを提供することにある。
本発明の更に他の目的は、後面衝突時におけるシートバックの後方への傾倒に移動を考慮し、乗員からの荷重を有効活用して支持部材の移動量を十分に確保し、腰部の移動量を含めて身体の全体をシート内へ沈み込む量を大きくすることができ、頸部等への衝撃を効果的に軽減できる乗物用シートを提供することにある。
そして、シートバック全体が沈み込むために、乗員の身体が、着座姿勢を保ったまま、乗物後方へ移動することになり、前方へ移動させるためのヘッドレストと連携した機構を設けなくても、着座姿勢を保持した状態で、乗物後方側に身体が沈み込み頭部がヘッドレストに近づくので、乗員の頭部がヘッドレストに当接できるようになる。従って、後面衝突時に頭部或いは頸部に加わる衝撃を効果的に軽減することが可能となる。
さらに本発明によれば、後面衝突時におけるシートバックの後方への傾倒に移動を考慮し、乗員からの荷重を有効活用して支持部材の移動量を十分に確保し、腰部の移動量を含めて身体の全体をシート内へ沈み込む量を大きくすることができ、頸部等への衝撃を効果的に軽減できる。
着座フレーム2は、上述のようにクッションパッド2aを載置して、クッションパッド2aの上から表皮材2bによって覆われており、乗員を下部から支持する構成となっている。着座フレーム2は脚部で支持されており、この脚部には、図示しないインナレールが取り付けられ、車体フロアに設置されるアウタレールとの間で、前後に位置調整可能なスライド式に組み立てられている。
また着座フレーム2の後端部は、リクライニング機構11を介してシートバックフレーム1と連結されている。
なお、本実施形態のシートバックフレーム1は、サイドフレーム15と上部フレーム16と下部フレーム17との別部材で形成されているが、一体のパイプフレーム、一体の板状フレーム等で形成することもできる。
また、前縁部15bの突起部15dから付勢手段としての引張りコイルばね35が配設される位置には、乗物前方側に切り欠いて幅を少なくした切り欠き部15eが形成されている。この切り欠き部15eにより、引張りコイルばね35との干渉を防止することができる。
そして、本実施形態の回動部材30は、回動可能な軸部32と、この軸部32から所定距離の位置に形成された連結部材の係止部31と、付勢手段の係止部(係止孔33)と、回動を阻止する回動阻止部39(ストッパ部39a,39b)と、を備えている。
この回動阻止部39(ストッパ部39a,39b)は、後述する付勢手段(引張りコイルばね35)や連結部材(ワイヤ22)と干渉しない位置に形成される。
本実施形態では、回動部材30が、両側のサイドフレーム15に取付けられているが、これら両側に取り付けられた回動部材30は、互いに独立して回動するように構成されている。このため、荷重が偏って生じた場合において、荷重に合わせて両側のサイド部で回動部材30が、各々独立して回動することになり、衝撃荷重の大きさに応じて、乗員の身体を沈み込ませることができる。
ここで、回動部材30が回動を始める力の閾値について、通常着座している状態(ここでは、着座衝撃や乗物の急発進によって生じる小さな衝撃は除いている)でシートバックS1にかかる荷重は150N程度であるので、閾値は150Nより大きい値が好ましい。この値より小さいと、通常の着座時に移行してしまい、安定性に欠けるため、好ましくない。
さらに通常の着座時に生じる着座衝撃や、乗物の急発進等によって生じる加速時の荷重を考慮して、250Nより大きな値に設定することが好ましく、このようにすると、後面衝突以外では回動部材30が作動せず、安定した状態を維持することができる。
回動部材30の回動前の初期位置においては、ワイヤ22を係止する係止部31と引張りコイルばね35の下端部を係止する係止孔33は、軸部32よりも乗物前方に位置するように配置されており、引張りコイルばね35の上端部は回動部材30の上方に位置するサイドフレーム15の突起部15dに形成された係止孔34に係止されている。
すなわち、回動部材30の回動量と、引張りコイルばね35の引張り荷重(たわみ量)は比例しない構成となっており、さらに換言すれば、回動部材30の回動角度と、引張りコイルばね35により与えられる前方回動方向のトルク(回転力)は単純に比例しない関係となっている。
このため、回動部材30が回動を始める時の、ワイヤ22を介して生じる張力に対して、ストッパ39bに当接して回動が抑止されるとき(回動が終了するとき)に生じる張力は、略同じ値となっている。
M1=F2×a、M1′=F2′×a′
M1,M1′回転モーメント
F1,F1′後方への荷重
F2,F2′ばねの引張り力
a,a′回動中心と付勢手段(ばね)の固定位置との距離であり、詳しくは付勢手段の両端を結ぶ第1仮想線L1と、この第1仮想線L1に平行で回動中心を通る第2仮想線L2との間の距離で、aは回動前の距離、a′は回動後の距離、
b,b′回動中心と連結部材(ワイヤ)との距離であり、衝撃低減部材と連結部材(ワイヤ)の連結部分を通る水平線と平行な第3仮想線L3と、この第3仮想線L3に平行で回動中心を通る第4仮想線L4との間の距離で、bは回動前の距離、b′は回動後の距離、
x,x′ばねの伸び、
F2′=F2+Δx×k、ここでk:ばね定数、Δx=x′−xである。
例えば、ばねの引張り力F2′が2倍で、回動中心とばねの固定位置との距離a′が半分より少なくなっていれば、衝撃低減部材を回動させる力が弱くなっていることが理解できる。
F1×b≦F2×a ・・・(式1)
F1′×b′≧F2′×a′ ・・・(式2)
また、引張りコイルばね35が回動部材30を初期状態に復帰させる力が、回動部材30が回動するにしたがって低下していく。
そのため、後面衝突により回動部材30が回動を始めるとストッパ39bで制止されるまで、途中で停止することなく回動することになり、確実に乗員をシートバックS1の内部に沈み込ませることができる。
本実施形態では、両側に配設する衝撃低減部材としてスライド部材60を用いた例を示すものである。スライド部材60は、図12で示すように、摺動部61と、連結部材との係止部62と、付勢手段との当接部63(63a,63b)とから構成されており、当接部63は、後述するトーションばね64の一端側と当接する第1当接部63aと、第2当接部63bとから構成されており、第1当接部63aは下方(図11)へ急な傾斜となっており、第2当接部63bは緩やかな傾斜となっている。
また上記摺動部61の上下部分には、ガイドピン65が摺動方向に複数配置されており、スライド部材60の移動を案内している。ガイドピン65は、張り出した頭部と、軸部65aとを有しており、ガイドピンが抜けないように抜け止め部材65d(図11,12では不図示)が配設されている。
したがって、後面衝突によりスライド部材60が移動を始めると、途中で停止することなく移動することになり、確実に乗員をシートバックS1の内部に沈み込ませることができる。
そして、後面衝突時にはシートバックS1が後方へ傾倒するため、シートバックS1の移動に沿って、乗員からの荷重を有効に活用できることになり、支持部材である受圧部材20の移動量を十分に確保でき、身体の全体の沈み込みを十分行なうことが可能となる。
この実施形態では、スライド部材60の当接部63に連続するガイドピン65に案内されるガイド面の形状に特徴があり、図16で示すように、スライド部材60は、第1当接部63aの第2当接部63bと反対側に、第1当接部63aと連続したガイド面である円弧状凹部68aが形成されており、この円弧状凹部68aの反対側の面には、円弧状凸部68bが形成されている。
このように構成すると、部品点数を少なくするだけでなく、支持部材と連結部材とを別々に組付ける作業を一度で済むことになり、作業の効率化を図ることが可能となる。
つまり、乗物用シートSとしては、衝撃低減部材(回動部材30、スライド部材60)と支持部材(受圧部材20,中央側21b,22b)との連結部(係止部31,62)を上方向に移動させて、支持部材(受圧部材20,中央側21b,22b)の全体が、通常の着座荷重よりも大きな所定の衝撃荷重により乗物後方へ移動するように構成することができる。
このとき、乗員の背部がシートバックS1に沈み込むことで後方に移動しているが、ヘッドレストS3の位置は相対的に変わらないため、ヘッドレストS3と頭部の隙間が縮まり、ヘッドレストS3で頭部を支持することができるため、頸部へ加わる衝撃を効果的に軽減する効果を奏する。
S1 シートバック
S2 着座部
S3 ヘッドレスト
F シートフレーム
1 シートバックフレーム
2 着座フレーム
1a,2a,3a クッションパッド(パッド材)
1b,2b,3b 表皮材
11 リクライニング機構
15 サイドフレーム
15a 側板
15b 前縁部
15c 後縁部
15d 突起部
15e 切り欠き部
15f 長穴
16 上部フレーム
16a 側面部
17 下部フレーム
17a 延長部
17b 中間部
18 ピラー支持部
19 ヘッドレストピラー
20 受圧部材(支持部材)
21,22 ワイヤ(連結部材、支持部材及び連結部材)
21a,22a 凹凸部
21b,22b 中央側(支持部材)
22c 鈎部
21d,22d 端部側(連結部材)
24 爪部
30 回動部材(衝撃低減部材)
30a ベース部
30b 第1立上り部
30c 形成部
30d 第2立上り部
31 係止部(連結部)
32 軸部
32a 軸部材
32b 軸孔
32c 孔部
32d 嵌め合わせ部材
33,34 係止孔
35 引張りコイルばね(付勢手段)
35a フック
37 取付けフック
39 回動阻止部
39a,39b ストッパ部
60 スライド部材(衝撃低減部材)
61 摺動部
62 係止部(連結部)
63 当接部
63a 第1当接部
63b 第2当接部
64 トーションばね(付勢手段)
64a コイル部
64b 一端側
64c 他端側
65 ガイドピン
65a 軸部
65b 端部
65c 連結ばね
65d 抜け止め部材
66 保持ピン
67 係止ピン
68a 円弧状凹部(ガイド面)
68b 円弧状凸部(ガイド面)
Claims (12)
- 両側に位置するサイド部と、上方に配設されたアッパー部とを少なくとも備えたシートバックフレームと、
該シートバックフレームの上方に配設されるヘッドレストと、
前記シートバックフレームに連結部材を介して連結され、前記ヘッドレストと独立して移動する乗員の身体を支持する支持部材と、
前記シートバックフレームの両側のサイド部の少なくとも一方側に配設されると共に、前記連結部材と連結され、前記支持部材に加わった所定の衝撃荷重により前記ヘッドレストと独立して回動軸を中心に回動可能な衝撃低減部材と、
該衝撃低減部材に形成された衝撃低減取付部に第1の端部を取付け、前記シートバックフレームに形成されたシートバックフレーム取付部に第2の端部を取付けて配設された付勢手段と、を備え、
前記衝撃低減部材には、前記シートバックフレームの後縁部に当接して前記衝撃低減部材の回動を阻止する回動阻止部が形成され、
前記付勢手段の前記第1の端部と前記第2の端部を結ぶ線分が、前記衝撃低減部材の作動前から作動後にかけて前記衝撃低減部材の回動軸心より乗物前方側に位置し、
前記支持部材の全体が、通常の着座荷重よりも大きな所定の衝撃荷重により乗物後方へ移動することを特徴とする乗物用シート。 - 前記付勢手段は、前記衝撃低減部材を介して前記連結部材を前記シートバックフレームの前方側に付勢し、
前記サイド部には、前記衝撃低減部材の上方位置にシート内側へ突出した突出部が設けられ、
前記付勢手段の前記第2の端部は、前記突出部に形成された前記シートバックフレーム取付部に係止されることを特徴とする請求項1に記載の乗物用シート。 - 前記衝撃低減部材の回動阻止部には、外周方向に延出した延出部が形成され、
前記延出部は、前記連結部材の前記衝撃低減部材への取付位置とは異なる位置に配置され、
前記延出部は、前記衝撃低減部材の後方移動を規制するストッパ部を有していることを特徴とする請求項1に記載の乗物用シート。 - 前記衝撃低減部材の回動阻止部には、前記付勢手段および前記連結部材と干渉しない位置に外周方向に延出した延出部が形成され、
前記延出部は、前記連結部材の前記衝撃低減部材への取付位置とは異なる位置に配置され、
前記延出部は、前記衝撃低減部材の後方移動を規制するストッパ部を有していることを特徴とする請求項1に記載の乗物用シート。 - 前記衝撃低減部材の回動阻止部には、前記付勢手段および前記連結部材と干渉しない位置に外周方向に延出した延出部が形成され、
前記延出部は、前記衝撃低減部材の後方移動を規制するストッパ部を有していることを特徴とする請求項1に記載の乗物用シート。 - 前記シートバックフレームの後縁部は、前記回動阻止部と当接して前記衝撃低減部材の回動許容範囲を規制し、
前記衝撃低減部材の回動軸は、前記衝撃低減部材が後方回動したときの前記回動阻止部と前記後縁部との当接位置より上方に位置することを特徴とする請求項1に記載の乗物用シート。 - 前記シートバックフレームの後縁部は、前記サイド部の後端部からシート内側へ屈曲して形成され、前記回動阻止部と当接して前記衝撃低減部材の回動を規制することを特徴とする請求項1に記載の乗物用シート。
- 前記衝撃低減部材は、シート内側に隆起した形成部を有し、
前記衝撃低減部材の下部であって前記形成部には、前記連結部材を係止するための孔部が形成され、該孔部は長孔からなり、
前記付勢手段の前記第2の端部は、前記衝撃低減部材の上方で前記サイド部に係止されることを特徴とする請求項1に記載の乗物用シート。 - 前記孔部と前記衝撃低減取付部は、前記衝撃低減部材の初期位置において、前記衝撃低減部材の回動軸より乗物前方側に位置するように配置されることを特徴とする請求項8に記載の乗物用シート。
- 前記サイド部間を連結し、支持部材を支持する弾性部材を有し、
前記サイド部には、前記弾性部材の端部を取り付ける取付部が設けられ、
前記衝撃低減部材の上端は前記取付部より下方に配置されることを特徴とする請求項1に記載の乗物用シート。 - 前記サイド部間を連結し、支持部材を支持する弾性部材を有し、
前記シートバックフレーム取付部は前記衝撃低減部材の上端より上方で、前記弾性部材より下方に配置されることを特徴とする請求項1に記載の乗物用シート。 - 前記衝撃低減部材の回動軸は、前記衝撃低減取付部より上方で、前記シートバックフレーム取付部より下方に配設されることを特徴とする請求項1に記載の乗物用シート。
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