JP5500910B2 - ジルコニアゾル及びその製造方法 - Google Patents
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しかしながら、特許文献1に記載されるジルコニアゾルは、pHが10〜14と強塩基性を示すことから、酸性〜中性を示す原材料と混合すると中和反応により他原材料の沈澱、ゲル化を生じる為に好ましくない。また、低温での熱処理においては、有機酸を用いる為に炭素の残留により機能性の低下を招く恐れがある。
しかしながら、ジルコニアゾルの安定化については何ら記載されていない。
すなわち、本発明は、
(1)リン酸イオン、アンモニウムイオン及びヒドロキシルイオンを含有するジルコニアゾルであって、
リン酸イオン(PO 4 3− )/ZrO 2 のモル比が0.05〜0.5であり、
前記ジルコニアゾルはpHが5〜9であり、
前記ジルコニアゾル中のジルコニア粒子の平均粒子径は、100nm以下である、
ことを特徴とするジルコニアゾル。
(2)ジルコニアゾルに、リン酸及びリン酸化合物の1種以上を加えた後、塩基性物質を添加するジルコニアゾルの製造方法であって、
前記塩基性物質が、アンモニア、アンモニア水、重炭酸アンモニウム、炭酸アンモニウムおよびこれらの化合物から選ばれる1種以上であり、
リン酸イオン(PO 4 3− )/ZrO 2 のモル比が0.05〜0.5であり、
前記ジルコニアゾルのpHが5〜9であり、
前記ジルコニアゾル中のジルコニア粒子の平均粒子径が、100nm以下である、
ことを特徴とするジルコニアゾルの製造方法。
特に、分散安定性に優れ、様々な原材料と混合、複合化できることから、光学用フィルムや金属表面処理剤等の用途において好適に用いることが出来る
なお、本発明において、平均粒子径とは動的光散乱法で測定した粒子径分布の累積頻度が50体積%となる粒子径を言う。
先ず、本発明のジルコニアゾルは、リン酸イオン、アンモニウムイオン及びヒドロキシルイオンを含有することを特徴とするが、別の表現では、「リン酸及びリン酸化合物の1種以上と塩基性物質を含有する」とも記載できる(「リン酸及びリン酸化合物」及び「塩基性物質」の詳細については、2.ジルコニアゾルの製造方法のところで、詳細に記載してある)。
本発明のジルコニアゾルの最大の特徴は、このようにリン酸イオンとアンモニウムイオンの対イオンであるヒドロキシルイオンにより、安定化されたジルコニアゾルにある。リン酸イオンは、ジルコニアに配位・吸着し、ヒドロキシイオンと対となり、ジルコニアゾル中のジルコニア粒子の静電気的反発に寄与していると考えられる。
なお、本発明において、「安定化された」とは、「室温で1週間静置後も、沈殿、ゲル化は確認されない」ことを意味する。
次に、本発明のジルコニアゾルのpHは5以上で、上限は特に限定されるものではないが、通常、10程度であり、好ましいpHの範囲は7〜9である。
pHが5未満では、安定化に寄与すると考えられる、リン酸イオン、アンモニウムイオンの減少により、ジルコニアゾルの安定性が低下し、増粘、ゲル化する恐れがある為、好ましくない。
0.01未満では、pH調整を行なう際、ジルコニアゾルの安定化が不足する為に、ジルコニアの沈殿物を生じ、0.5を超えると、過剰のリン酸、リン酸化合物を中和する為に、大量の塩基性物質を使用する為、好ましくない。また、これ以上のリン酸、リン酸化合物を添加してもゾルの安定性への量的効果は乏しく経済的ではない。
又、ジルコニアゾル中のジルコニア(ZrO2換算)濃度は、特に限定されないが、通常、5〜50%(本発明において、「%」とは質量%を意味する。以下、同様である。)である。5%未満では、ジルコニア含有率が低く、他原材料と混合する場合に、希釈されてしまう。又、50%を超えるとジルコニアゾルの経時安定性に欠けるので、好ましくない。
以下、本発明のジルコニアゾルの製造方法について詳細に記載する。
本発明の製造方法は、ジルコニアゾルに、リン酸及びリン酸化合物の1種以上を加えた後、塩基性物質を添加することを特徴とするが、リン酸及びリン酸化合物の1種以上と塩基性物質を交互に添加する、等の別法も考えられ、本発明の目的に反しない範囲内で、これらも本発明の範囲内に入ることは自明のことである。
先ず、公知の方法で製造されたジルコニアゾルを用い、ジルコニアゾルを純水等にて希釈し、ついでリン酸及びリン酸化合物の1種以上を添加後、塩基性物質を添加し、ろ過により、目的のpHになるまで、精製・濃縮を行う。
先ず、本発明で用いる出発原料であるジルコニアゾルは、特に限定されるものでなく、公知の方法で製造されたものを用いることが出来る。すなわち、ジルコニウム塩水溶液を加熱、加水分解することにより得られたもの(加水分解法)、ジルコニウム塩水溶液にアルカリを加えてジルコニウム水酸化物としこれを解膠したもの(解膠法)、ジルコニウム水酸化物に酸およびアルカリを加えた後オートクレーブ等を用いて水熱処理することにより得られるもの(水熱合成法)及び金属アルコキシド法で得られたもの等が例示される。
又、ジルコニアゾル中のジルコニア(ZrO2換算)濃度は、特に限定されないが、通常、5〜50%である。
なお、ジルコニアゾル中のジルコニア平均粒径は、100nm以下、好ましくは10〜80nmである。
なお、リン酸及びリン酸化合物の添加量(モル比)は、特に限定されるものでないが、ジルコニアゾル中のジルコニアに対して、リン酸イオン(PO4 3−)/ZrO2のモル比=0.15〜1.0であり、好ましくは、0.20〜0.75である。0.15未満では、ジルコニアゾルの安定性が低下し塩基性物質を添加した際に、沈澱が生じる為に、好ましくない。又、1.0を超えてリン酸及びリン酸化合物を添加しても量的効果は乏しく、ろ過により過剰のリン酸及びリン酸化合物を除去する為に、大量の水が必要であり、好ましくない。
また、塩基性物質の添加量としては、pHを10以上になるまで、添加すればよく、添加する塩基性物質の濃度は特に限定されない。
なお、pHが10未満では、過剰のリン酸イオン、およびジルコニアゾルに含有する、アニオン(塩素イオン、硝酸イオン等)をろ過等により効率よく、系外に排出することができず、ジルコニアゾル中に不純物イオンとして残存する可能性があるので好ましくない。
なお、ろ過による精製・濃縮は、本発明のジルコニアゾルのpHが5以上、好ましくは7〜9、そして、リン酸イオン(PO4 3−)/ZrO2のモル比が0.01以上、好ましくは0.03〜0.1となるように行う。
この結果、リン酸イオン、アンモニウムイオン及びヒドロキシルイオンを含有し、安定化されているジルコニアゾルを製造することができる。
ジルコニアゾルの平均粒子径は、15nm、リン酸イオン(PO4 3−)/ZrO2のモル比は、0.074であり、室温で1週間静置後も、沈殿、ゲル化は確認されなかった。
ジルコニアゾルの平均粒子径は、13nm、リン酸イオン(PO4 3−)/ZrO2のモル比は、0.069であり、実施例1同様に室温で1週間静置後も、沈殿、ゲル化は確認されなかった。
ジルコニアゾルの平均粒子径は、84nm、リン酸イオン(PO4 3−)/ZrO2のモル比は、0.09であり、実施例1同様に室温で1週間静置後も、沈殿、ゲル化は確認されなかった。
Claims (2)
- リン酸イオン、アンモニウムイオン及びヒドロキシルイオンを含有するジルコニアゾルであって、
リン酸イオン(PO 4 3− )/ZrO 2 のモル比が0.05〜0.5であり、
前記ジルコニアゾルはpHが5〜9であり、
前記ジルコニアゾル中のジルコニア粒子の平均粒子径は、100nm以下である、
ことを特徴とするジルコニアゾル。 - ジルコニアゾルに、リン酸及びリン酸化合物の1種以上を加えた後、塩基性物質を添加するジルコニアゾルの製造方法であって、
前記塩基性物質が、アンモニア、アンモニア水、重炭酸アンモニウム、炭酸アンモニウムおよびこれらの化合物から選ばれる1種以上であり、
リン酸イオン(PO 4 3− )/ZrO 2 のモル比が0.05〜0.5であり、
前記ジルコニアゾルのpHが5〜9であり、
前記ジルコニアゾル中のジルコニア粒子の平均粒子径が、100nm以下である、
ことを特徴とするジルコニアゾルの製造方法。
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