JP5499974B2 - 非調質型窒化クランクシャフト - Google Patents

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本発明は、非調質型の窒化処理が施されたクランクシャフトに関する。より詳しくは、自動車、産業機械、建設機械などに用いられる、所要の形状に鍛造および機械加工した後で、焼入れ−焼戻しの調質処理を行うことなく、窒化処理を施して製造されるクランクシャフトに関する。
以下、上記の「窒化処理が施されたクランクシャフト」を「窒化クランクシャフト」という。焼入れ−焼戻しの調質処理を受けず、生地の組織がフェライトとパーライトの混合組織である窒化クランクシャフトを「非調質型窒化クランクシャフト」と称する。
高い耐摩耗性および高い疲労強度(なかでも、高い曲げ疲労強度)が要求されるクランクシャフトには、鍛造と機械加工の後に高周波焼入れ処理、窒化処理などの表面硬化処理が施される。
窒化処理は、A1点以下の温度で窒素、または窒素と炭素を拡散浸透処理するものであり、熱処理温度が低い。このため、窒化処理では、高周波焼入れ処理などに比べて、熱処理ひずみが小さくなるので、近年、窒化処理が適用されるクランクシャフトが増えている。窒化処理を施したクランクシャフトの表面には、ナイタル腐食により白く観察される数μmから40μm深さの化合物層(おもに、Fe3Nなどの窒化物が生成した層)が、さらに、化合物層と生地の間には浸透した窒素、または窒素と炭素により硬化された数100μm深さの拡散層が形成される。
上述のように、窒化処理した場合の熱処理ひずみは、高周波焼入れ処理した場合に比べて小さいが、皆無ではない。したがって、回転軸部品であるクランクシャフトでは、軽微な熱処理ひずみによる寸法精度の低下が問題となることがある。そのため、窒化処理後に曲げ矯正を行って寸法精度を高める必要がある。
ところが、窒化クランクシャフトに曲げ矯正を行うと、表層からき裂が発生する場合がある。このようなき裂は応力が集中するため曲げ疲労強度を低下させる。したがって、窒化クランクシャフトには、曲げ矯正を行った場合にもき裂が発生しないこと、すなわち、曲げ矯正性にも優れることが求められる。
さらに、近年、環境に対する配慮が要求されるようになり、窒化クランクシャフトも例外ではなく軽量小型化が志向され、例えば、700MPa以上という高い曲げ疲労強度が求められるようになっている。このような高い曲げ疲労強度を得るためには、拡散層の最表層部の硬さ(以下、「表層硬さ」ともいう。)が、ビッカース硬さ(以下、「HV硬さ」という。)で少なくとも380以上であることが必要である。「拡散層の最表層部」とは、具体的には、窒化処理後の、表面から深さ0.05mmの位置を意味する。
しかしながら、表層硬さが、HV硬さで380以上になると、窒化クランクシャフトに曲げ矯正を行った際に、き裂が発生しやすくなる。
加えて、近年、低コスト化、省資源化、排出CO2の削減のため、製造時の熱処理を簡略化することも求められている。したがって、窒化クランクシャフトの素材となる鋼として、焼入れ−焼戻しの調質処理を施さない、フェライトとパーライトの混合組織(以下、「フェライト・パーライト組織」という。)を有する非調質鋼が使用されている。
しかし、一般に、フェライト・パーライト組織は、焼入れ−焼戻し組織に比べて粗大である。このため、非調質鋼は、調質処理した鋼に比べて、曲げ疲労強度および曲げ矯正性に劣る。
このような状況の下、700MPa以上という高い曲げ疲労強度と十分な曲げ矯正性を有する非調質型窒化クランクシャフトに対する要望がきわめて大きくなり、例えば、次のような技術が開示されている。
すなわち、特許文献1に、
質量%で、C:0.2〜0.6%、Si:0.05〜1.0%、Mn:0.25〜1.0%、S:0.03〜0.2%、Cr:0.2%以下、s−Al:0.045%以下、Ti:0.002〜0.010%、N:0.005〜0.025%およびO:0.001〜0.005%を含有し、必要に応じてさらに、Pb:0.01〜0.40%、Ca:0.0005〜0.0050%およびBi:0.005〜0.40%のうちの1種または2種以上を含有し、かつ0.12×Ti%<O%<2.5×Ti%および0.04×N%<O%<0.7×N%の条件を満たし、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、
熱間鍛造後の組織がフェライトとパーライトの混合組織であること、
を特徴とする「軟窒化用非調質鋼」が開示されている。
特許文献2に、
表面に窒化処理または軟窒化処理が施された鋼よりなる、ピン部およびジャーナル部を有するクランクシャフトであって、
前記鋼が合金成分として、C:0.07質量%以上0.12質量%以下、Si:0.05質量%以上0.25質量%以下、Mn:0.1質量%以上0.5質量%以下、Cu:0.8質量%以上1.5質量%以下、Ni:2.4質量%以上4.5質量%以下、Al:0.8質量%以上1.5質量%以下、Ti:0.5質量%以上1.5質量%以下を含有し、必要に応じてさらに、S:0.01質量%以上0.10質量%、Ca:0.0010質量%以上0.0050質量%のうちの1種または2種を含有し、残部がFe及び不可避不純物からなり、
かつ、窒化処理の影響を受けていない中心部から採片した鋼試料を1200℃にて1時間溶体化した後、900℃以上300℃以下までの温度範囲を0.3℃/秒以上1.5℃/秒以下に設定される適当な冷却速度にて冷却することにより、鋼組織に占めるベイナイトの比率を80%以上、HV硬さを200以上300以下とすることができ、
前記窒化処理又は軟窒化処理が施された前記ピン部および前記ジャーナル部の内部硬さがHV硬さで350以上500以下であり、かつ表面から0.05mmの位置におけるHV硬さが650以上950以下であること、
を特徴とする「クランクシャフト」が開示されている。
特開2002−226939号公報 特開2007−177309号公報
特許文献1に開示されている技術によって、非調質型窒化クランクシャフトを得ることができる。しかしながら、得られた窒化クランクシャフトは、表層硬さが低いため、曲げ疲労強度が低く、700MPaに達しない。
特許文献2に開示されている技術によって、高い疲労強度を有する窒化クランクシャフトを得ることができる。しかしながら、得られた窒化クランクシャフトは、表層硬さが高くなりすぎる。したがって、窒化処理時に生じた熱処理ひずみを解消するために曲げ矯正を行うと、表層からき裂が発生することを避けがたい。
さらに、窒化部品の化合物層はHV硬さで500以上という硬い層であり、従来は窒化部品の摺動面の耐摩耗性を高める効果があるといわれてきた。しかしながら、化合物層が耐摩耗性に優れるのは摺動面の面圧の小さい場合であり、700MPa以上という曲げ疲労強度が求められるような面圧の高い環境下では化合物層が剥離して粉状になり、粉状の化合物層は窒化部品の摺動面においてむしろ研磨剤のように作用し、窒化部品の耐摩耗性を著しく低下させることが問題となってきた。
特許文献1および特許文献2では、このような高い面圧下で使用する窒化部品において生じる化合物層の剥離についても何ら考慮されていない。
本発明は、上記現状に鑑みてなされたもので、700MPa以上という高い曲げ疲労強度および十分な曲げ矯正性を有し、かつ化合物層の耐剥離性に優れた、非調質型窒化クランクシャフトを提供することを目的とする。
本発明者らは、前記した課題を解決するために種々の検討を実施した結果、下記(A)〜(K)の知見を得た。
(A)窒化処理した鋼材の表層から薄板試験片を採取して引張試験を行ったところ、化合物層を除去した試験片では化合物層を除去していない試験片に比べ、引張試験の伸びが大幅に向上する。
(B)上記引張試験後の薄板試験片の破面を観察した結果、化合物層を除去していない試験片では化合物層が脆性破壊して割れの起点となっているのに対して、化合物層を除去した試験片では延性破面である。
(C)窒化処理した鋼材の表層の化合物層を除去することにより、曲げ矯正時の破壊形態が化合物層を起点とした脆性破壊から延性破壊へと変化し、このため窒化クランクシャフトの曲げ矯正性を改善することができる。
(D)窒化部品の表層の化合物層を除去すれば、窒化処理後の表層硬さをHV硬さで380以上としても、実用上十分な曲げ矯正性を得ることができる。
(E)但し、窒化クランクシャフトの表層硬さが、HV硬さで600以上と過剰に高くなった場合には、たとえ化合物層を除去しても、実用上十分な曲げ矯正性を得ることができない。
(F)曲げ疲労強度は、化合物層除去前後でほとんど変化がなく、表層硬さがHV硬さで380以上であれば、700MPa以上の高い曲げ疲労強度を得ることができる。
(G)しかしながら、化合物層を除去しようとしても、HV硬さで380以上の表層硬さを付与した拡散層を除去せずに、化合物層だけを完全に除去することは難しい。
(H)そして、化合物層が除去されずに残ってしまうと、700MPa以上という曲げ疲労強度が求められるような面圧の高い環境下では、前述のように化合物層が剥離して粉状になり、研磨剤のように作用し窒化クランクシャフトの耐摩耗性を著しく低下させてしまう。
(I)化合物層は上記(B)のように脆性破壊するものの、意外にも化合物層はその硬さが高いほど化合物層の耐剥離性が向上する。
(J)そして、生地の鋼材のC、Cr、MnおよびMoの含有量を適正に制御すれば化合物層の硬さは高くなる。
(K)生地の鋼材のC、Cr、MnおよびMoの含有量を適正に制御し、かつ、化合物層の深さを5μm以下に制御することにより、化合物層の耐剥離性にも優れた窒化クランクシャフトを得ることができる。
本発明は、上記の知見に基づいて完成されたものであり、その要旨は、下記(1)に示す非調質型窒化クランクシャフトにある。
(1)生地の鋼材が、質量%で、C:0.25〜0.60%、Si:0.10〜1.0%、Mn:0.60〜2.0%、P:0.08%以下、S:0.10%以下、Al:0.05%以下、Cr:0.20〜1.0%およびN:0.0030〜0.0250%を含有し、残部はFeおよび不純物からなり、下記の(1)式を満たす非調質型窒化クランクシャフトであって、表面から深さ0.05mm位置のHV硬さが380〜600であり、かつ、少なくともピンフィレット部、ジャーナルフィレット部およびピン部の化合物層深さが5μm以下であることを特徴とする非調質型窒化クランクシャフト。
40−C+2Mn+5.5Cr≧43.0・・・(1)
上記の(1)式中の元素記号は、その元素の質量%での含有量を意味する。
「非調質型窒化クランクシャフト」とは、焼入れ−焼戻しの調質処理を受けず、生地の組織がフェライトとパーライトの混合組織である窒化クランクシャフトを指す。
残部としての「Feおよび不純物」における「不純物」とは、鉄鋼材料を工業的に製造する際に、原料としての鉱石、スクラップ、または製造環境などから混入するものを指す。
化合物層深さは、クランクシャフトのピンフィレット部、ジャーナルフィレット部およびピン部において5μm以下であれば十分であり、少なければ少ないほど望ましい。また、表面から深さ0.05mm位置のHV硬さが380〜600を確保できていれば、化合物層はなくても構わない。
本発明の非調質型窒化クランクシャフトは、焼入れ−焼戻しによる調質処理を必要とせず、700MPa以上の曲げ疲労強度および十分な曲げ矯正性を有するとともに、化合物層の耐剥離性にも優れる。このため、本発明の非調質型窒化クランクシャフトは、自動車、産業機械、建設機械などのクランクシャフトとして用いることができ、クランクシャフトの軽量小型化という要求に応えることが可能である。
化合物層の深さ方向の中央位置におけるHV硬さと「40−C+2Mn+5.5Cr」または「40−C+2Mn+5.5Cr+26Mo」との関係を示す図である。なお、図では、「40−C+2Mn+5.5Cr」と「40−C+2Mn+5.5Cr+26Mo」をまとめて「fn1」として表記した。 クランクシャフトの要部を示す模式図である。 実施例で用いた溝付き小野式回転曲げ疲労試験片の形状を示す図である。図における寸法の単位は「mm」である。 実施例で用いた4点曲げ試験片の形状を示す図である。図における寸法の単位は「mm」である。 実施例で用いたスクラッチ試験片の形状を示す図である。図における寸法の単位は「mm」である。 図5のスクラッチ試験片の表面を、70Nの荷重をかけたビッカース圧子で直径20mmの円状に1周スクラッチし、形成された溝を走査電子顕微鏡で観察して化合物層の剥離状況を調査した結果のうちで、化合物層に剥離が生じた場合の一例を模式的に示す図である。 図5のスクラッチ試験片の表面を、70Nの荷重をかけたビッカース圧子で直径20mmの円状に1周スクラッチし、形成された溝を走査電子顕微鏡で観察して化合物層の剥離状況を調査した結果のうちで、化合物層に剥離が生じなかった場合の一例を模式的に示す図である。
以下、本発明の各要件について詳しく説明する。なお、以下の説明における各元素の含有量の「%」表示は「質量%」を意味する。
<生地の鋼材の化学組成>
C:0.25〜0.60%
Cは、表層硬さを高めることによって曲げ疲労強度を高める効果を有する。この効果を得るためには、0.25%以上のCを含有する必要がある。しかしながら、Cの含有量が0.60%を超えると、表層硬さがあまりにも大きくなって曲げ矯正性が低下し、さらに、表面の化合物層の硬さが低くなって、化合物層の耐剥離性も低下する。したがって、Cの含有量を0.25〜0.60%とした。Cの含有量は0.27%以上、0.50%以下とすることが好ましい。
Si:0.10〜1.0%
Siは、溶製時の脱酸用として必要な元素であり、また、曲げ疲労強度を高める効果を有する。このような効果を得るためには少なくとも0.10%の含有量とする必要がある。しかしながら、Siの含有量が1.0%を超えると、表層硬さがあまりにも高くなって、曲げ矯正性が低下する。したがって、Siの含有量を0.10〜1.0%とした。なお、Siの含有量は、0.15%以上、0.80%以下とすることが望ましい。
Mn:0.60〜2.0%
Mnは、窒化した場合の表層硬さを高めることによって、曲げ疲労強度を高める効果を有する。Mnは、表面の化合物層の硬さを高め、化合物層の耐剥離性を高める作用も有する。このような効果を得るためには、少なくとも0.60%のMnを含有させる必要がある。一方、Mnの含有量が2.0%を超えると、表層硬さがあまりにも高くなって、曲げ矯正性が低下する。したがって、Mnの含有量を0.60〜2.0%とした。なお、Mnの含有量は、0.65%以上、1.8%以下とすることが望ましい。
P:0.08%以下
Pは、不純物として含有される元素であり、曲げ疲労強度を低下させてしまう。特に、その含有量が0.08%を超えると、曲げ疲労強度の低下が著しくなる。したがって、Pの含有量を0.08%以下とした。なお、Pの含有量は、0.04%以下とすることが望ましい。
S:0.10%以下
Sは、不純物として含有される元素である。また、Sは、積極的に含有させると、被削性を高める作用を有する。その含有量が多くなりすぎ、0.10%を超えると、曲げ疲労強度および曲げ矯正性が低下する。したがって、Sの含有量を0.10%以下とした。なお、Sの含有量は、0.08%以下とすることが望ましい。被削性向上効果を得たい場合には、0.02%以上のSを積極的に含有させることが望ましい。
Al:0.05%以下
Alは、不純物として含有される元素である。また、Alは、脱酸のため添加する場合のある元素である。その含有量が多くなりすぎ、0.05%を超えると、曲げ矯正性が低下する。したがって、Alの含有量を0.05%以下とした。なお、Alの含有量は、0.04%以下とすることが望ましい。脱酸効果を得たい場合には、0.02%以上のAlを積極的に含有させることが望ましい。
Cr:0.20%〜1.0%
Crは、表層硬さを高めることによって、曲げ疲労強度を高める作用を有する。Crは、表面の化合物層の硬さを高め、化合物層の耐剥離性を高める作用も有する。このような効果を得るためには、0.20%以上のCrを含有させる必要がある。しかしながら、Crの含有量が1.0%を超えると、表層硬さがいたずらに高くなって、曲げ矯正性が低下する。このため、Crの含有量を0.20〜1.0%とした。なお、Crの含有量は、0.25%以上、0.9%以下とすることが望ましい。
N:0.0030%〜0.0250%
Nは、曲げ疲労強度および曲げ矯正性を向上させる元素である。このような効果を得るためには、0.0030%以上のNを含有させる必要がある。しかしながら、Nを0.0250%を超えて含有させてもその効果は飽和するばかりか、製造コストがいたずらに高くなる。したがってNの含有量を0.0030〜0.0250%とした。なお、Nの含有量は0.0040%以上、0.0220%以下とすることが望ましい。
本発明の非調質型窒化クランクシャフトは、生地の鋼材が、上述のCからNまでの元素を含有し、残部はFeおよび不純物からなり、かつ、前記の(1)式を満足するものである。
既に述べたように、不純物とは、鉄鋼材料を工業的に製造する際に、原料としての鉱石、スクラップ、または製造環境などから混入するものを指す。
(1)式については、(1')式とともに後述する。
本発明の非調質型窒化クランクシャフトは、生地の鋼材が、上述のCからNまでの元素を含有するとともに、前記〈1〉から〈3〉までに掲げた元素から選択される1種以上を含有させてもよい。但し、その場合、前記の(1')式を満足するものとする。
以下、〈1〉〜〈3〉のそれぞれに属する元素の作用効果と、含有量の限定理由について説明する。
〈1〉Cu:1.0%以下、Ni:0.5%以下、Mo:0.5%以下およびV:0.3%以下
〈1〉に属する元素であるCu、Ni、MoおよびVは、いずれも、曲げ疲労強度を高める作用を有する。したがって、上記の効果を得たい場合には、これらの元素を以下に述べる範囲で含有させてもよい。
Cu:1.0%以下
Cuは、曲げ疲労強度を向上させる作用を有する。このため、必要に応じてCuを含有させてもよい。しかしながら、Cuの含有量が1.0%を超えると、熱間加工性の低下をきたす。したがって、含有させる場合のCuの量を1.0%以下とした。含有させる場合のCuの量は、0.4%以下とすることが望ましく、0.3%以下とすることが一層望ましい。一方、前記したCuの効果を安定して得るためには、含有させる場合のCuの量は、0.05%以上とすることが望ましい。
Ni:0.5%以下
Niは、曲げ疲労強度を向上させる作用を有する。このため、必要に応じてNiを含有させてもよい。しかしながら、0.5%以上のNiを含有させても、上記の効果が飽和するので経済性を損なう。したがって、含有させる場合のNiの量を0.5%以下とした。含有させる場合のNiの量は、0.3%以下とすることが望ましく、0.2%以下とすることが一層望ましい。一方、前記したNiの効果を安定して得るためには、含有させる場合のNiの量は、0.05%以上とすることが望ましい。
Mo:0.5%以下
Moは、曲げ疲労強度を向上させる作用を有する。Moは、表面の化合物層の硬さを高め、化合物層の耐剥離性を高める作用も有する。このため、必要に応じてMoを含有させてもよい。しかしながら、0.5%以上のMoを含有させても、上記の効果が飽和するので経済性を損なう。したがって、含有させる場合のMoの量を0.5%以下とした。含有させる場合のMoの量は、0.4%以下とすることが望ましい。一方、前記したMoの効果を安定して得るためには、含有させる場合のMoの量は、0.05%以上とすることが望ましく、0.10%以上とすることがさらに望ましい。
V:0.3%以下
Vは、曲げ疲労強度を向上させる作用を有する。このため、必要に応じてVを含有させてもよい。しかしながら、Vの含有量が0.3%を超えると、曲げ矯正性が低下する。したがって、含有させる場合のVの量を0.3%以下とした。含有させる場合のVの量は、0.25%以下とすることが望ましい。一方、前記したVの効果を安定して得るためには、含有させる場合のVの量は、0.05%以上とすることが望ましく、0.1%以上とすることが一層望ましい。
上記のCu、Ni、MoおよびVは、そのうちのいずれか1種のみ、または、2種以上の複合で含有させることができる。含有させる場合、上記元素の合計含有量は、Cuが1.0%、NiとMoがそれぞれ0.5%で、Vが0.3%の場合の2.3%であっても構わないが、0.8%以下とすることが望ましい。
〈2〉Ti:0.050%以下
Tiは、窒化物を形成し、結晶粒を微細化して、曲げ矯正性を向上させる作用を有する。このため、必要に応じてTiを含有させてもよい。しかしながら、Tiの含有量が0.050%を超えると、窒化物が粗大となり、曲げ疲労強度が低下する。したがって、含有させる場合のTiの量を0.050%以下とした。含有させる場合のTiの量は、0.035%以下とすることが望ましい。一方、前記したTiの効果を安定して得るためには、含有させる場合のTiの量は、0.005%以上とすることが望ましい。
〈3〉Ca:0.010%以下
Caは、被削性を向上させる効果を有する。このため、必要に応じてCaを含有させてもよい。しかしながら、Caの含有量が0.010%を超えると、粗大介在物が生じることが避けられないので、曲げ疲労強度が低下する。したがって、含有させる場合のCaの量を0.010%以下とした。含有させる場合のCaの量は、0.005%以下とすることが望ましい。一方、前記したCaの効果を安定して得るためには、含有させる場合のCaの量は、0.0003%以上とすることが望ましく、0.0005%以上とすることが一層望ましい。
〔40−C+2Mn+5.5Cr〕または〔40−C+2Mn+5.5Cr+26Mo〕:43.0以上
本発明の非調質型窒化クランクシャフトは、生地の鋼材が、前記CuからCaまでの元素から選択される1種以上を含まない場合には、〔40−C+2Mn+5.5Cr〕が43.0以上、つまり、
40−C+2Mn+5.5Cr≧43.0・・・(1)
で表される(1)式を、前記CuからCaまでの元素から選択される1種以上を含む場合には、〔40−C+2Mn+5.5Cr+26Mo〕が43.0以上、つまり、
40−C+2Mn+5.5Cr+26Mo≧43.0・・・(1')
で表される(1')式を、それぞれ、満たす必要がある。上記の各式におけるC、Mn、CrおよびMoは、その元素の質量%での含有量を意味する。
窒化処理した場合、化合物層の硬さが高いほど化合物層の耐剥離性が高くなる。
CからCaまでの各元素が前述した範囲内にある生地の鋼材を窒化処理した場合、(1)式と(1')式の左辺をまとめて「fn1」と表記すれば、図1に示すように、化合物層のHV硬さはfn1と正の相関関係を有する。なお、図1は、化合物層の深さ方向の中央位置におけるHV硬さとfn1との関係を示す図である。
〔40−C+2Mn+5.5Cr〕または〔40−C+2Mn+5.5Cr+26Mo〕が43.0を下回る場合には、後述の化合物層深さを満たす場合であっても、化合物層の耐剥離性が低下する。したがって、〔40−C+2Mn+5.5Cr〕または〔40−C+2Mn+5.5Cr+26Mo〕が43.0以上を満たす必要がある。〔40−C+2Mn+5.5Cr〕および〔40−C+2Mn+5.5Cr+26Mo〕は43.2以上であることが好ましい。一方、〔40−C+2Mn+5.5Cr〕および〔40−C+2Mn+5.5Cr+26Mo〕の上限は、Cの下限値、Mn、CrおよびMoのそれぞれの上限値から求められる値である。
<表層硬さ>
生地の鋼材が前述の元素からなる非調質型窒化クランクシャフトは、表層硬さ(つまり、表面から深さ0.05mm位置の硬さ)がHV硬さで380〜600でなければならない。
表層硬さがHV硬さで380以上であれば、700MPa以上の高い曲げ疲労強度を得ることができる。しかしながら、表層硬さがHV硬さで600を超える場合には、実用上十分な曲げ矯正性を得ることができない。表層硬さはHV硬さで400以上であることが望ましく、550以下であることが望ましい。
<化合物層深さ>
生地の鋼材が前述の元素からなる非調質型窒化クランクシャフトは、さらに、少なくとも応力集中部および摺動面の化合物層深さが5μm以下でなければならない。
応力集中部とは、クランクシャフトのピンフィレット部およびジャーナルフィレット部であり、応力集中部の化合物層深さを5μm以下とすることにより、曲げ疲労強度を低下させることなく、曲げ矯正性を向上させることができる。ピンフィレット部およびジャーナルフィレット部とは、図2に例示したクランクシャフトの要部の模式図のそれぞれ、1および2の部分をいう。
摺動面とは、すべり軸受および潤滑油を介してコネクティングロッドと摺動するクランクシャフトのピン部であり、摺動面についても、化合物層深さが5μm以下であれば、700MPa以上という高い曲げ疲労荷重がかかる状況においても、化合物層が剥離しない。このため、上記のような過酷な環境下でも耐摩耗性が低下することがない。ピン部とは、図2に例示したクランクシャフトの模式図の3の部分をいう。
クランクシャフトのピンフィレット部、ジャーナルフィレット部およびピン部の化合物層深さは、好ましくは4μm以下であり、少なければ少ないほど望ましい。また、表面から深さ0.05mm位置のHV硬さが380〜600を確保できていれば、化合物層はなくても構わない。
所望の表層硬さと化合物層深さは、例えば、次の(i)〜(iv)の処理によって得ることができる。
(i)本発明で規定する化学組成を満たす鋼を熱間鍛造して、または、熱間鍛造後、さらに焼きならし処理を行って、フェライト・パーライト組織を有する鋼材を作製する。
(ii)次いで、上記のフェライト・パーライト組織を有する鋼材を所定形状のクランクシャフトに機械加工する。
(iii)上記の機械加工して得たクランクシャフトを、RXガスとアンモニアガスを1:1に混合した、温度が600℃の雰囲気中で2時間保持して軟窒化処理し、その後90℃の油中に冷却する。
(iv)その後、ピンフィレット部、ジャーナルフィレット部およびピン部をラッピングなどの機械加工によって研磨する。
なお、上記の「RXガス」は変成ガスの一種で、ガスの商標名である。
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明する。
表1に示す化学組成の鋼A〜Mを、真空溶解炉にて150kg溶製した後、熱間鍛造して直径90mmの棒鋼に加工した。熱間鍛造後は、大気中で放冷して室温まで冷却した。
表1における鋼AおよびGは、化学組成が本発明で規定する範囲内にある鋼である。一方、鋼I〜Mは、化学組成が本発明で規定する条件から外れた鋼である。また、鋼B〜FおよびHは、参考例の鋼である。
なお、表1には、CuからCaまでの任意元素を含まない場合の(1)式の左辺である「40−C+2Mn+5.5Cr」と、CuからCaまでの任意元素を1種以上含む場合の(1')式の左辺である「40−C+2Mn+5.5Cr+26Mo」を「fn1」として併記した。以下、(1)式の左辺と(1')式の左辺をまとめて「fn1」という。
Figure 0005499974
このようにして得た各鋼の直径90mmの棒鋼を、1200℃に加熱し、1050〜1000℃の仕上温度で熱間鍛造して、直径50mmの棒鋼を作製した。熱間鍛造後は、大気中で放冷して室温まで冷却した。
鋼Gおよび鋼Hについては、上記の直径50mmの棒鋼をさらに、900℃に加熱して1時間保持した後、大気中で放冷して室温まで冷却した。
鋼A〜Fおよび鋼I〜Mの熱間鍛造した直径50mmの棒鋼ならびに、鋼Gおよび鋼Hの900℃で熱処理した直径50mmの棒鋼のR/2部(「R」は棒鋼の半径を表す。)から鍛錬軸に平行に、図3に示す形状の溝付き小野式回転曲げ疲労試験片、図4に示す形状の4点曲げ試験片および図5に示す形状のスクラッチ試験片を切り出した。図3の試験片においては3Rの溝底が応力集中部となる。同様に、図4の試験片においては3Rのノッチ底が応力集中部となる。なお、図3〜5に示した前述の各試験片における寸法の単位は全て「mm」である。
上記のようにして得た3種類の試験片を、RXガスとアンモニアガスを1:1に混合した、温度が600℃の雰囲気中で2時間保持して軟窒化処理し、その後90℃の油中に冷却した。なお、既に述べたように、上記の「RXガス」は変成ガスの1種で、ガスの商標名である。
上記の軟窒化処理と油冷の後(以下、単に「軟窒化後」という。)、スクラッチ試験片を用いて、化合物層の硬さを調査した。
具体的には、スクラッチ試験片の縦断面が被検面になるようにして樹脂に埋め込み、鏡面研磨した後、SHIMADZU社製ダイナミック超微小硬度計を用いて、化合物層の深さ方向の中央位置のダイナミック硬度を測定した。測定は15点実施し、それらの算術平均値を、標準硬さ試料によって作成した検量線を用いてビッカース硬さに換算し、これを化合物層の硬さとした。
表2に、上記のようにして求めた化合物層の硬さを示す。
Figure 0005499974
溝付き小野式回転曲げ疲労試験片の溝底、4点曲げ試験片のノッチ底およびスクラッチ試験片のスクラッチ面について、化合物層を5μm以下にするために、電解研磨法を用いた。電解研磨法は研磨面表面積によって研磨時間が異なるため、所望の研磨量を得るためには各試験片の研磨面積に適した研磨時間で実施する必要がある。そこで、下記の条件で各試験片ごとに研磨時間を変えながら電解研磨を実施し、化合物層深さが5μm以下となるのに十分な電解研磨時間をあらかじめ求めた。
・電解液:過塩素酸(HClO4):酢酸(CH3COOH)=1:9、
・電流値:0.14A、
・研磨面積:小野式回転曲げ疲労試験片の場合:160mm2
4点曲げ試験片の場合:96mm2
スクラッチ試験片の場合:552mm2
その結果、小野式回転曲げ疲労試験片の場合には970秒、4点曲げ試験片の場合には590秒、スクラッチ試験片の場合には、3350秒の研磨時間で電解研磨を行えば、全ての鋼について化合物層深さが5μm以下となるのに十分であることが判った。
そこで、軟窒化後の各鋼の溝付き小野式回転曲げ疲労試験片の溝底、4点曲げ試験片のノッチ底およびスクラッチ試験片のスクラッチ面について、上記条件によって、上記の研磨時間で電解研磨を実施し、
・小野式回転曲げ疲労試験による曲げ疲労強度の調査、
・4点曲げ試験による曲げ矯正性の調査、
・スクラッチ試験による化合物層の耐剥離性の調査、
を実施した。
また、溝付き小野式回転曲げ疲労試験片、4点曲げ試験片およびスクラッチ試験片を用いて、表層硬さ(つまり、試験片の表面から深さ0.05mm位置の硬さ)と化合物層深さを調査した。
鋼Aおよび鋼Bについては、軟窒化後の電解研磨を行わないものについても上記の各調査を実施した。
以下、上記各調査の内容について説明する。
〈1〉曲げ疲労強度の調査:
溝付き小野式回転曲げ疲労試験を、室温、大気中、回転数3000rpmの両振りの条件で行い、曲げ疲労強度(以下、「σw」という。)を調査した。σwの目標は、700MPa以上であることとした。
〈2〉曲げ矯正性の調査:
4点曲げ試験片のノッチ底に2mmの歪ゲージを接着し、ゲージが断線するまで曲げ矯正歪を付与した。ゲージが断線した時点でのゲージの読みを曲げ矯正性として評価した。曲げ矯正性の目標は、ゲージの読みが10000μ(曲げ矯正歪1.0%に相当)以上であることとした。
〈3〉化合物層の耐剥離性の調査
スクラッチ試験片の表面を、70Nの荷重をかけたビッカース圧子で直径20mmの円状に1周スクラッチし、得られた溝を走査電子顕微鏡にて詳細に観察した。
図6に化合物層に剥離が生じた場合の一例を、図7に化合物層に剥離が生じなかった場合の一例を、それぞれ模式的に示す。
図6に示すように、化合物層の剥離はスクラッチ溝の縁から発生しており、最大幅が50μmを超える化合物層剥離の存在の有無によって化合物層の耐剥離性を評価した。化合物層の耐剥離性の目標は、最大幅が50μmを超える化合物層剥離が生じないこととした。
〈4〉表層硬さ:
溝付き小野式回転曲げ疲労試験片の溝底縦断部位、4点曲げ試験片のノッチ底縦断部位およびスクラッチ試験片の縦断面が被検面になるようにして樹脂に埋め込んだ後、前記の面が鏡面仕上げになるように研磨し、ビッカース硬さ計を使用して表層硬さを調査した。
具体的には、JIS Z 2244に記載の「ビッカース硬さ試験−試験方法」に準拠して、溝付き小野式回転曲げ疲労試験片の溝底部表面および4点曲げ試験片のノッチ底部の表面から、それぞれ深さ0.05mmの位置における任意の6点でのHV硬さを、試験力を2.94Nとしてビッカース硬さ計で測定し、その値を算術平均して表層硬さとした。
〈5〉化合物層深さ:
前記〈4〉で用いた樹脂埋めした試験片を再度鏡面研磨した試料を、ナイタールで腐食した。次いで、溝付き小野式回転曲げ疲労試験片は溝底部、4点曲げ試験片はノッチ底部、スクラッチ試験片は任意の表面部を、400倍の倍率で5視野光学顕微鏡を用いて撮影した。各視野で撮影した白く観察された部分を「化合物層」として、それぞれの深さを測定し、その値を算術平均して化合物層深さとした。
表3に、上記の各調査結果をまとめて示す。表3の「化合物層の耐剥離性」欄における「○」および「×」は、それぞれ、最大幅が50μmを超える化合物層剥離が生じなかったこと、および生じたことを示す。
Figure 0005499974
表3から、生地の鋼材が本発明で規定する化学組成条件を満たし、かつ、表層硬さ、化合物層深さが本発明で規定する条件を満たす試験番号1および7の場合、目標とする曲げ疲労強度、曲げ矯正性および化合物層の耐剥離性を有することが明らかである。
これに対して、試験番号9の場合、生地の鋼材は本発明で規定する化学組成条件を満足するが、化合物層深さが本発明で規定する条件を満たさないため、化合物層の耐剥離性、あるいは曲げ矯正性と化合物層の耐剥離性が目標に達していない。
試験番号11〜15の場合は、鋼I〜Mの化学組成が本発明で規定する条件から外れているので、曲げ疲労強度、曲げ矯正性あるいは化合物層の耐剥離性のいずれかに劣っている。
すなわち、試験番号11の場合は、生地の鋼材である鋼IのCr含有量が本発明で規定する範囲を下回り、このため表層硬さも規定の硬さを下回り、曲げ疲労強度に劣っている。さらに、鋼Iのfn1が本発明で規定する範囲を下回り、このため化合物層の硬さが低く、化合物層の耐剥離性にも劣っている。
試験番号12の場合は、生地の鋼材である鋼JのC含有量が本発明で規定する範囲を下回り、このため表層硬さも規定の硬さを下回り、曲げ疲労強度に劣っている。
試験番号13の場合は、生地の鋼材である鋼KのMn含有量が本発明で規定する範囲を下回り、このため表層硬さが規定の硬さを下回り、曲げ疲労強度に劣っている。さらに、鋼Kのfn1が本発明で規定する範囲を下回り、このため化合物層の硬さが低く、化合物層の耐剥離性にも劣っている。
試験番号14の場合は、生地の鋼材である鋼LのCr含有量が本発明で規定する範囲を上回り、このため表層硬さも規定の硬さを超え、曲げ矯正性に劣っている。
試験番号15の場合は、生地の鋼材である鋼Mのfn1が本発明で規定する範囲を下回り、このため化合物層の硬さが低く、化合物層の耐剥離性が劣っている。
本発明の非調質型窒化クランクシャフトは、焼入れ−焼戻しによる調質処理を必要とせず、700MPa以上の曲げ疲労強度および十分な曲げ矯正性を有するとともに、化合物層の耐剥離性にも優れる。このため、本発明の非調質型窒化クランクシャフトは、自動車、産業機械、建設機械などのクランクシャフトとして用いることができ、クランクシャフトの軽量小型化という要求に応えることが可能である。
1:ピンフィレット部
2:ジャーナルフィレット部
3:ピン

Claims (1)

  1. 生地の鋼材が、質量%で、C:0.25〜0.60%、Si:0.10〜1.0%、Mn:0.60〜2.0%、P:0.08%以下、S:0.10%以下、Al:0.05%以下、Cr:0.20〜1.0%およびN:0.0030〜0.0250%を含有し、残部はFeおよび不純物からなり、下記の(1)式を満たす非調質型窒化クランクシャフトであって、表面から深さ0.05mm位置のHV硬さが380〜600であり、かつ、少なくともピンフィレット部、ジャーナルフィレット部およびピン部の化合物層深さが5μm以下であることを特徴とする非調質型窒化クランクシャフト。
    40−C+2Mn+5.5Cr≧43.0・・・(1)
    上記の(1)式中の元素記号は、その元素の質量%での含有量を意味する。
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