JP2012026005A - 非調質型窒化クランクシャフト - Google Patents
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Abstract
【解決手段】C:0.25〜0.60%、Si:0.10〜1.0%、Mn:0.60〜2.0%、P≦0.08%、S≦0.10%、Cr:0.20〜1.0%及びN:0.0030〜0.0250%を含有し、残部はFeと不純物からなり、〔40−C+2Mn+5.5Cr≧43.0〕を満たす非調質型窒化クランクシャフトであって、表面から深さ0.05mm位置のHV硬さが380〜600で、かつ、少なくともピンフィレット部、ジャーナルフィレット部およびピン部の化合物層深さが5μm以下である非調質型窒化クランクシャフト。この非調質型窒化クランクシャフトは、さらにCu、Ni、Mo、V、Ti、Caの一種以上を含んでもよい。但し、〔40−C+2Mn+5.5Cr+26Mo≧43.0〕を満たす必要がある。
【選択図】なし
Description
質量%で、C:0.2〜0.6%、Si:0.05〜1.0%、Mn:0.25〜1.0%、S:0.03〜0.2%、Cr:0.2%以下、s−Al:0.045%以下、Ti:0.002〜0.010%、N:0.005〜0.025%およびO:0.001〜0.005%を含有し、必要に応じてさらに、Pb:0.01〜0.40%、Ca:0.0005〜0.0050%およびBi:0.005〜0.40%のうちの1種または2種以上を含有し、かつ0.12×Ti%<O%<2.5×Ti%および0.04×N%<O%<0.7×N%の条件を満たし、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、
熱間鍛造後の組織がフェライトとパーライトの混合組織であること、
を特徴とする「軟窒化用非調質鋼」が開示されている。
表面に窒化処理または軟窒化処理が施された鋼よりなる、ピン部およびジャーナル部を有するクランクシャフトであって、
前記鋼が合金成分として、C:0.07質量%以上0.12質量%以下、Si:0.05質量%以上0.25質量%以下、Mn:0.1質量%以上0.5質量%以下、Cu:0.8質量%以上1.5質量%以下、Ni:2.4質量%以上4.5質量%以下、Al:0.8質量%以上1.5質量%以下、Ti:0.5質量%以上1.5質量%以下を含有し、必要に応じてさらに、S:0.01質量%以上0.10質量%、Ca:0.0010質量%以上0.0050質量%のうちの1種または2種を含有し、残部がFe及び不可避不純物からなり、
かつ、窒化処理の影響を受けていない中心部から採片した鋼試料を1200℃にて1時間溶体化した後、900℃以上300℃以下までの温度範囲を0.3℃/秒以上1.5℃/秒以下に設定される適当な冷却速度にて冷却することにより、鋼組織に占めるベイナイトの比率を80%以上、HV硬さを200以上300以下とすることができ、
前記窒化処理又は軟窒化処理が施された前記ピン部および前記ジャーナル部の内部硬さがHV硬さで350以上500以下であり、かつ表面から0.05mmの位置におけるHV硬さが650以上950以下であること、
を特徴とする「クランクシャフト」が開示されている。
40−C+2Mn+5.5Cr≧43.0・・・(1)
上記の(1)式中の元素記号は、その元素の質量%での含有量を意味する。
〈1〉Cu:1.0%以下、Ni:0.5%以下、Mo:0.5%以下およびV:0.3%以下
〈2〉Ti:0.050%以下
〈3〉Ca:0.010%以下
40−C+2Mn+5.5Cr+26Mo≧43.0・・・(1')
上記の(1')式中の元素記号は、その元素の質量%での含有量を意味する。
C:0.25〜0.60%
Cは、表層硬さを高めることによって曲げ疲労強度を高める効果を有する。この効果を得るためには、0.25%以上のCを含有する必要がある。しかしながら、Cの含有量が0.60%を超えると、表層硬さがあまりにも大きくなって曲げ矯正性が低下し、さらに、表面の化合物層の硬さが低くなって、化合物層の耐剥離性も低下する。したがって、Cの含有量を0.25〜0.60%とした。Cの含有量は0.27%以上、0.50%以下とすることが好ましい。
Siは、溶製時の脱酸用として必要な元素であり、また、曲げ疲労強度を高める効果を有する。このような効果を得るためには少なくとも0.10%の含有量とする必要がある。しかしながら、Siの含有量が1.0%を超えると、表層硬さがあまりにも高くなって、曲げ矯正性が低下する。したがって、Siの含有量を0.10〜1.0%とした。なお、Siの含有量は、0.15%以上、0.80%以下とすることが望ましい。
Mnは、窒化した場合の表層硬さを高めることによって、曲げ疲労強度を高める効果を有する。Mnは、表面の化合物層の硬さを高め、化合物層の耐剥離性を高める作用も有する。このような効果を得るためには、少なくとも0.60%のMnを含有させる必要がある。一方、Mnの含有量が2.0%を超えると、表層硬さがあまりにも高くなって、曲げ矯正性が低下する。したがって、Mnの含有量を0.60〜2.0%とした。なお、Mnの含有量は、0.65%以上、1.8%以下とすることが望ましい。
Pは、不純物として含有される元素であり、曲げ疲労強度を低下させてしまう。特に、その含有量が0.08%を超えると、曲げ疲労強度の低下が著しくなる。したがって、Pの含有量を0.08%以下とした。なお、Pの含有量は、0.04%以下とすることが望ましい。
Sは、不純物として含有される元素である。また、Sは、積極的に含有させると、被削性を高める作用を有する。その含有量が多くなりすぎ、0.10%を超えると、曲げ疲労強度および曲げ矯正性が低下する。したがって、Sの含有量を0.10%以下とした。なお、Sの含有量は、0.08%以下とすることが望ましい。被削性向上効果を得たい場合には、0.02%以上のSを積極的に含有させることが望ましい。
Alは、不純物として含有される元素である。また、Alは、脱酸のため添加する場合のある元素である。その含有量が多くなりすぎ、0.05%を超えると、曲げ矯正性が低下する。したがって、Alの含有量を0.05%以下とした。なお、Alの含有量は、0.04%以下とすることが望ましい。脱酸効果を得たい場合には、0.02%以上のAlを積極的に含有させることが望ましい。
Crは、表層硬さを高めることによって、曲げ疲労強度を高める作用を有する。Crは、表面の化合物層の硬さを高め、化合物層の耐剥離性を高める作用も有する。このような効果を得るためには、0.20%以上のCrを含有させる必要がある。しかしながら、Crの含有量が1.0%を超えると、表層硬さがいたずらに高くなって、曲げ矯正性が低下する。このため、Crの含有量を0.20〜1.0%とした。なお、Crの含有量は、0.25%以上、0.9%以下とすることが望ましい。
Nは、曲げ疲労強度および曲げ矯正性を向上させる元素である。このような効果を得るためには、0.0030%以上のNを含有させる必要がある。しかしながら、Nを0.0250%を超えて含有させてもその効果は飽和するばかりか、製造コストがいたずらに高くなる。したがってNの含有量を0.0030〜0.0250%とした。なお、Nの含有量は0.0040%以上、0.0220%以下とすることが望ましい。
〈1〉に属する元素であるCu、Ni、MoおよびVは、いずれも、曲げ疲労強度を高める作用を有する。したがって、上記の効果を得たい場合には、これらの元素を以下に述べる範囲で含有させてもよい。
Cuは、曲げ疲労強度を向上させる作用を有する。このため、必要に応じてCuを含有させてもよい。しかしながら、Cuの含有量が1.0%を超えると、熱間加工性の低下をきたす。したがって、含有させる場合のCuの量を1.0%以下とした。含有させる場合のCuの量は、0.4%以下とすることが望ましく、0.3%以下とすることが一層望ましい。一方、前記したCuの効果を安定して得るためには、含有させる場合のCuの量は、0.05%以上とすることが望ましい。
Niは、曲げ疲労強度を向上させる作用を有する。このため、必要に応じてNiを含有させてもよい。しかしながら、0.5%以上のNiを含有させても、上記の効果が飽和するので経済性を損なう。したがって、含有させる場合のNiの量を0.5%以下とした。含有させる場合のNiの量は、0.3%以下とすることが望ましく、0.2%以下とすることが一層望ましい。一方、前記したNiの効果を安定して得るためには、含有させる場合のNiの量は、0.05%以上とすることが望ましい。
Moは、曲げ疲労強度を向上させる作用を有する。Moは、表面の化合物層の硬さを高め、化合物層の耐剥離性を高める作用も有する。このため、必要に応じてMoを含有させてもよい。しかしながら、0.5%以上のMoを含有させても、上記の効果が飽和するので経済性を損なう。したがって、含有させる場合のMoの量を0.5%以下とした。含有させる場合のMoの量は、0.4%以下とすることが望ましい。一方、前記したMoの効果を安定して得るためには、含有させる場合のMoの量は、0.05%以上とすることが望ましく、0.10%以上とすることがさらに望ましい。
Vは、曲げ疲労強度を向上させる作用を有する。このため、必要に応じてVを含有させてもよい。しかしながら、Vの含有量が0.3%を超えると、曲げ矯正性が低下する。したがって、含有させる場合のVの量を0.3%以下とした。含有させる場合のVの量は、0.25%以下とすることが望ましい。一方、前記したVの効果を安定して得るためには、含有させる場合のVの量は、0.05%以上とすることが望ましく、0.1%以上とすることが一層望ましい。
Tiは、窒化物を形成し、結晶粒を微細化して、曲げ矯正性を向上させる作用を有する。このため、必要に応じてTiを含有させてもよい。しかしながら、Tiの含有量が0.050%を超えると、窒化物が粗大となり、曲げ疲労強度が低下する。したがって、含有させる場合のTiの量を0.050%以下とした。含有させる場合のTiの量は、0.035%以下とすることが望ましい。一方、前記したTiの効果を安定して得るためには、含有させる場合のTiの量は、0.005%以上とすることが望ましい。
Caは、被削性を向上させる効果を有する。このため、必要に応じてCaを含有させてもよい。しかしながら、Caの含有量が0.010%を超えると、粗大介在物が生じることが避けられないので、曲げ疲労強度が低下する。したがって、含有させる場合のCaの量を0.010%以下とした。含有させる場合のCaの量は、0.005%以下とすることが望ましい。一方、前記したCaの効果を安定して得るためには、含有させる場合のCaの量は、0.0003%以上とすることが望ましく、0.0005%以上とすることが一層望ましい。
本発明の非調質型窒化クランクシャフトは、生地の鋼材が、前記CuからCaまでの元素から選択される1種以上を含まない場合には、〔40−C+2Mn+5.5Cr〕が43.0以上、つまり、
40−C+2Mn+5.5Cr≧43.0・・・(1)
で表される(1)式を、前記CuからCaまでの元素から選択される1種以上を含む場合には、〔40−C+2Mn+5.5Cr+26Mo〕が43.0以上、つまり、
40−C+2Mn+5.5Cr+26Mo≧43.0・・・(1')
で表される(1')式を、それぞれ、満たす必要がある。上記の各式におけるC、Mn、CrおよびMoは、その元素の質量%での含有量を意味する。
生地の鋼材が前述の元素からなる非調質型窒化クランクシャフトは、表層硬さ(つまり、表面から深さ0.05mm位置の硬さ)がHV硬さで380〜600でなければならない。
生地の鋼材が前述の元素からなる非調質型窒化クランクシャフトは、さらに、少なくとも応力集中部および摺動面の化合物層深さが5μm以下でなければならない。
・電流値:0.14A、
・研磨面積:小野式回転曲げ疲労試験片の場合:160mm2、
4点曲げ試験片の場合:96mm2、
スクラッチ試験片の場合:552mm2。
・小野式回転曲げ疲労試験による曲げ疲労強度の調査、
・4点曲げ試験による曲げ矯正性の調査、
・スクラッチ試験による化合物層の耐剥離性の調査、
を実施した。
溝付き小野式回転曲げ疲労試験を、室温、大気中、回転数3000rpmの両振りの条件で行い、曲げ疲労強度(以下、「σw」という。)を調査した。σwの目標は、700MPa以上であることとした。
4点曲げ試験片のノッチ底に2mmの歪ゲージを接着し、ゲージが断線するまで曲げ矯正歪を付与した。ゲージが断線した時点でのゲージの読みを曲げ矯正性として評価した。曲げ矯正性の目標は、ゲージの読みが10000μ(曲げ矯正歪1.0%に相当)以上であることとした。
スクラッチ試験片の表面を、70Nの荷重をかけたビッカース圧子で直径20mmの円状に1周スクラッチし、得られた溝を走査電子顕微鏡にて詳細に観察した。
溝付き小野式回転曲げ疲労試験片の溝底縦断部位、4点曲げ試験片のノッチ底縦断部位およびスクラッチ試験片の縦断面が被検面になるようにして樹脂に埋め込んだ後、前記の面が鏡面仕上げになるように研磨し、ビッカース硬さ計を使用して表層硬さを調査した。
前記〈4〉で用いた樹脂埋めした試験片を再度鏡面研磨した試料を、ナイタールで腐食した。次いで、溝付き小野式回転曲げ疲労試験片は溝底部、4点曲げ試験片はノッチ底部、スクラッチ試験片は任意の表面部を、400倍の倍率で5視野光学顕微鏡を用いて撮影した。各視野で撮影した白く観察された部分を「化合物層」として、それぞれの深さを測定し、その値を算術平均して化合物層深さとした。
2:ジャーナルフィレット部
3:ピン
Claims (2)
- 生地の鋼材が、質量%で、C:0.25〜0.60%、Si:0.10〜1.0%、Mn:0.60〜2.0%、P:0.08%以下、S:0.10%以下、Al:0.05%以下、Cr:0.20〜1.0%およびN:0.0030〜0.0250%を含有し、残部はFeおよび不純物からなり、下記の(1)式を満たす非調質型窒化クランクシャフトであって、表面から深さ0.05mm位置のHV硬さが380〜600であり、かつ、少なくともピンフィレット部、ジャーナルフィレット部およびピン部の化合物層深さが5μm以下であることを特徴とする非調質型窒化クランクシャフト。
40−C+2Mn+5.5Cr≧43.0・・・(1)
上記の(1)式中の元素記号は、その元素の質量%での含有量を意味する。 - 生地の鋼材が、質量%で、C:0.25〜0.60%、Si:0.10〜1.0%、Mn:0.60〜2.0%、P:0.08%以下、S:0.10%以下、Al:0.05%以下、Cr:0.20〜1.0%およびN:0.0030〜0.0250%を含有するとともに、下記の〈1〉から〈3〉までに掲げる元素から選択される1種以上を含有し、残部はFeおよび不純物からなり、かつ、下記の(1')式を満たす非調質型窒化クランクシャフトであって、表面から深さ0.05mm位置のHV硬さが380〜600であり、かつ、少なくともピンフィレット部、ジャーナルフィレット部およびピン部の化合物層深さが5μm以下であることを特徴とする非調質型窒化クランクシャフト。
〈1〉Cu:1.0%以下、Ni:0.5%以下、Mo:0.5%以下およびV:0.3%以下
〈2〉Ti:0.050%以下
〈3〉Ca:0.010%以下
40−C+2Mn+5.5Cr+26Mo≧43.0・・・(1')
上記の(1')式中の元素記号は、その元素の質量%での含有量を意味する。
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