JP5499610B2 - アルミニウム合金部材およびその製造法 - Google Patents

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本発明は、切削性に優れたアルミニウム合金部材、特に低融点金属元素が添加されておらず、切削性に優れたアルミニウム合金部材、および、それらの製造方法に関する。
アルミニウム合金のバルク材から切削加工によって、各種電気部品、電子部品、自動車部品などを製造する場合、長く連なった切り屑が発生すると、切削加工面に圧痕疵などの表面欠陥の発生、連続無人作業性の阻害など切削加工時の各種の不具合が発生する。従って、精密加工を要求される製品を切削加工する場合、この様な不具合が発生し難い高切削性を有するアルミニウム合金が考案され、使用されてきた。
従来の高切削性アルミニウム合金は、展伸材分野ではA2011合金(Cu:5.0〜6.0%、Pb:0.2〜0.6%、Bi:0.2〜0.6%、残部Al)およびA6262合金(Si:0.4〜0.8%、Mg:0.8〜1.2%、Cu:0.15〜0.4%、Pb:0.4〜0.7%、Bi:0.4〜0.7%、残部Al)に代表されるように、有効添加元素としてPb、Bi、Sn等の低融点金属を含有する。これら低融点金属はアルミニウム中にほとんど固溶せず、アルミニウム合金中に粒状粒子としてミクロ偏析し、その低融点金属粒子が切削加工時の加工発熱により溶融して切粉を分断し、アルミニウム合金の切削性を向上させる(例えば、特許文献1−4)。
しかしながら、近年、地球温暖化および環境保護の要求が高まり、国内では「品目別廃棄物処理・再資源化ガイドライン」が設定され、さらに環境配慮設計に関する法規制が進められている。欧州では欧州連合EUが2006年7月に施行した有害物質規制RoHS指令によって、Pbの使用が規制されている。そのような背景から近年、Pbを使用せず、SnおよびBiを添加した合金が開発されている(例えば、特許文献5および6)。
アルミニウム合金部材をリサイクルする場合、Pb、Bi、Sn等を必要とする合金種は限られているため、Pb、Bi、Sn等の低融点金属元素の添加されたアルミニウム合金部材は、リサイクル性において、不利となる。さらに、これらの低融点金属元素が添加されたアルミニウム合金には、耐食性の低下、アルマイト性、特に不完全な皮膜になる欠点さらに熱脆性による切削時の割れの発生などの問題も存在する。それらの欠点を解決する方法の一つとして、Pb、Bi、Sn等の低融点金属元素に代わって、SiおよびSi系化合物などの第2相硬質粒子を形成させる合金が開発された(例えば、特許文献7−11)。このような第2相硬質粒子は切削時に切粉に発生する結晶すべりを止め、ここにすべり線が集積して微小な空洞をつくり、これが切粉の分断の起点となるため、優れた切削性が得られる。
また、アルミニウム合金の製造方法については、切削用展伸アルミニウム合金の多くは熱処理型合金である。それを製造する場合、強度を確保するため、鋳塊の均質化処理→熱間加工→溶体化処理→冷間加工→時効の工程で製造される。製造上の均質化処理、溶体化処理などの熱処理は煩雑であり、工程的および熱エネルギー的の何れからしても不利であり、また、溶体化処理後の焼入れによって残留応力が導入され、その残留応力が切削加工で解放されて微小変形を生じるので、たとえ精度の高い切削加工が施されても、その後矯正加工工程を必要とするなどの不利点を有している。したがってこの観点からは、鋳造状態で使用できることが最も望ましい。溶体化処理に伴う熱エネルギー的不利並びに焼入れ残留応力の導入による不利を解決するために、低融点金属元素を含有しないAl−Mg系非熱処理型切削用アルミニウム合金(例えば、特許文献7および11)、低融点金属元素を含有するAl−Mg系非熱処理型切削用アルミニウム合金(例えば、特許文献3)が開発されている。
特開昭54−143714 特開昭57−174432 特開昭62−37338 特開平10−265884 特許第3969672号 特許第4017105号 特開平11−217647 特開2001−131720 特開2002−206132 特開2003−13164 特開2009−24265 特開昭60−184658
低融点金属元素の添加は切削性が向上する半面、低融点金属元素の添加に伴うアルマイト性の低下(酸化皮膜の形成の困難さによる仕上がり表面の不均一な光沢、色調)、熱脆化による切削時の割れの発生、並びにスクラップのリサイクルの困難性などの改善点を有していた。さらに、低融点金属元素に代えてSiを添加し、Si粒子またはSi系化合物粒子を利用する場合、切削性が向上する反面、“かしめ”などの冷間加工性が劣ること、並びに耐食性が低下するなどの改善点があった。
また、これらのアルミニウム合金部材の製造方法において、展伸アルミニウム合金部材に一般的に行われる均質化処理は、強度の向上、均一な特性、加工性の向上などの利点がある反面、高温で長時間の熱処理に伴う多大のエネルギーの消費があり、製造コストの増大だけでなく、地球環境へ大きな負担を与えていた。また、従来の非熱処理型合金部材は、溶体化処理およびその後の焼入れに伴う工程的およびエネルギー的、残留応力の発生などの熱処理型合金の有する不利は解消されているものの、切削性のさらなる改善が望まれていた。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、切削性、耐食性およびアルマイト性に優れ、リサイクル性の高いアルミニウム合金部材を提供することを目的とする。本発明はまた、製造工程でのエネルギー消費の削減により環境負荷の低減されたアルミニウム合金部材の製造方法を提供することも目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するため、鋭意研究開発を行った結果、従来、切削性を向上させるために添加されていたSn、Bi、Pbなどの低融点金属元素を添加せず、一般的な合金添加元素であるMg、Si、Cuのみを添加しているにも関わらず、合金組成の最適化ならびに鋳造組織の最適化制御によって、良好な切削性、耐食性、アルマイト性を確保したアルミニウム合金部材の完成に至った。さらに、特定の合金組成と製造工程とを組み合わせることにより、均質化処理および溶体化処理を省略することができるため、環境面でも有利であるアルミニウム合金部材の製造方法も完成するに至った。
第一の発明では、Mg:2.0〜8.0質量%およびSi:1.0〜5.0質量%を含有し、MgとSiとの間のMg/Si比が1.4以上であり、さらにCu:0.05〜0.5質量%、Ti:0.01〜0.15質量%、B:0.0005〜0.01質量%を含有し、残部がAlおよび不可避不純物からなるアルミニウム合金部材が提供される。このアルミニウム合金部材は、結晶粒界に連続したαAl−MgSiの共晶粒子の鋳造組織を有する鋳塊より製造される。
このアルミニウム合金部材は、特定の合金組成および鋳造組織を有するために、切削性および耐食性に優れる。
第二の発明では、上記の合金組成を有し、鋳造組織を有する連続鋳塊を用い、均質化処理および溶体化処理を行わず、1)鋳造のまま、2)熱間押出および冷間加工後、あるいは3)冷間加工後に、人工時効を行うことを特徴とする、アルミニウム合金部材の製造方法が提供される。
この製造方法によれば、切削性および耐食性に優れたアルミニウム合金部材を、省エネルギーで製造することが可能となる。
本発明のアルミニウム合金部材は、低融点金属元素が添加されていないにも関わらず、切削性および耐食性に優れている。さらに、本発明の合金部材、あるいは本発明の製造方法は、省エネルギーなどの点において有利である。
図1は、連続状共晶組織(写真1)および不連続球状共晶組織(写真2)を示す、倍率100倍の光学顕微鏡写真である。
本発明者らは、上記課題を解決するため、鋭意研究開発を行った結果、従来、切削性を向上させるために添加されていたSn、Bi、Pbなどの低融点金属元素を添加せず、一般的な合金添加元素であるMg、Si、Cuのみを添加しているにも関わらず、合金組成の最適化ならびに鋳造組織の最適化制御によって、良好な切削性、リサイクル性、アルマイト性などを確保したアルミニウム合金部材の完成に至った。さらに、特定の合金組成と製造工程とを組み合わせることにより、均質化処理および溶体化処理を省略することができるため、環境面でも有利であるアルミニウム合金部材の製造方法も完成するに至った。
本発明に係るアルミニウム合金部材は、特定の組成の元素の組み合わせにより、低融点金属元素が添加されていないにも関わらず、優れた切削性を有しており、さらに良好な耐食性も有している。また、本発明に係るアルミニウム合金部材は、高いアルマイト性も有している。さらに、本発明に係るアルミニウム合金部材は、均質化処理および溶体化処理を行うことなく、良好な切削性と耐食性とを達成することができるため、リサイクル性や省エネルギーの点でも有利である。本発明に係るアルミニウム合金部材は、その良好な切削性、耐食性、および優れたリサイクル性および省エネルギー性等により、特に、鋳造または加工されたバルク材から各種電気部品、電子部品、自動車部品などを切削加工する際に好適に用いることができる。
以下に各元素の添加理由および添加量の限定理由等を説明する。なお、本明細書において、「〜」という記号は「以上」および「以下」を意味し、例えば、「A〜B」なる記載は、A以上でありB以下であることを意味する。
〔Mg量:2.0〜8.0質量%〕
Mgは、SiとMgSi共晶粒子を形成し、連続鋳造時にMgSi共晶粒子として結晶粒界に連続的に晶出し、切削時の切粉分断効果をもたらす。また、MgSi相として人工時効時に晶出し、時効硬化性を向上させるので、素材の強度を高める効果も得られる。これらの効果は、2.0質量%以上で特に高いが、8.0質量%を越えると変形抵抗が増加し押出性が低下したり、冷間加工性も低下するなどの問題が生じ得る。したがって、切削性、強度、押出性に与える影響も考慮した本発明の合金におけるMg量は、2.0〜8.0質量%とする。同様の理由から、Mg量のより好ましい範囲は、2.0〜6.0質量%であり、さらに好ましい範囲は、2.0〜5.0質量%である。
〔Si量:1.0〜5.0質量%〕
Siは、MgとMgSi共晶粒子を形成し、連続鋳造時にMgSi共晶粒子として結晶粒界に連続的に晶出し、切削時の切粉分断効果をもたらす。またMgSi相として人工時効時に晶出し、時効硬化性を向上させるので、素材の強度を高める効果が得られる。その効果は、1.0質量%以上で特に高い。他方、5.0質量%を越えて添加すると、変形抵抗が増加し押出性が低下し、また冷間加工性が低下する。したがって、切削性、強度、押出性、冷間加工性に与える影響も考慮した本発明の合金におけるSi量は、1.0〜5.0質量%とする。同様の理由から、Si量のより好ましい範囲は、1.0〜4.0質量%であり、さらに好ましい範囲は、1.0〜3.0質量%である。
〔Mg/Si比:Mg/Si≧1.4〕
MgSi相共晶粒子として連続鋳造時にMgSi共晶粒子として結晶粒界に連続的に晶出し切削時の切粉分断効果をもたらす。Mg/Siが1.4以上でSi相が減少し、耐食性が向上する。したがって、本発明の合金におけるMg/Si比は、1.4以上とする。また、Mg/Si比は、1.6以上であれば、さらなる切削性の向上と耐食性の向上が得られる。また、Mg/Si比が2.0以下では、変形抵抗が減少し押出性が向上するため、本発明の合金におけるMg/Si比は、2.0以下であることがさらに好ましい。
〔Cu量:0.05〜0.5質量%〕
Cuは、人工時効硬化性能を増大させ、切削性と強度を向上させる効果を有するが、本発明の組成においては、0.05質量%以上で特に高い効果を有し、0.5%を越えるとその効果は飽和する。したがって、強度、切削性、耐食性に与える影響も考慮した本発明の合金におけるCu量は、0.05〜0.5質量%である。同様の理由から、Cu量のより好ましい範囲は、0.1〜0.4質量%であり、さらに好ましい範囲は、0.2〜0.3質量%である。
〔Ti量:0.01〜0.15質量%〕
Tiは、Bと共存して、鋳塊の結晶粒微細化および鋳塊組織の均一性の増加に効果を奏し、0.01質量%以上で十分な微細化効果および鋳塊組織の均一性増加効果を奏する。他方、0.15質量%を越えると、これらの効果が飽和するため、本発明の合金におけるTi量は、0.01〜0.15質量%とする。より好ましくは、0.05質量%以上添加すると、耐食性の向上効果も得られる。
〔B量:0.0005〜0.01質量%〕
Bは、Tiと共存して、鋳塊の結晶粒微細化に効果を奏し、0.0005質量%以上で十分な微細化効果を奏する。他方、0.01質量%を越えると、この効果が飽和するため、本発明の合金におけるB量は、0.0005〜0.01質量%とする。
〔その他の不純物元素〕
原料等から混入する不可避的不純物も含め、Fe、Mn、Cr、V、Zr、Sn、Bi、Pb等は不純物元素扱いとなるが、それぞれ、Fe:0.25質量%未満、Mn、Cr、V、Zr:0.05質量%未満、Sn、Bi、Pb:0.05質量%未満であれは、本発明に係るアルミニウム合金の特性の劣化が少ないため許容される。
〔鋳塊の鋳造組織:結晶粒界に連続したαAl−MgSiの共晶粒子の鋳造組織を有する鋳塊〕
本発明の組成を有するアルミニウム合金部材を、結晶粒界に生成するMgSi相共晶粒子が連続に存在する鋳塊を用いて製造すると、製造されたアルミニウム合金部材は、切粉分断性が良好で切削性に優れる。この条件を満足しない鋳塊から、本発明の組成を有するアルミニウム合金部材を製造した場合は、良好な切粉分断性が得られない。結晶粒界に連続したαAl−MgSiの共晶粒子の鋳造組織を有するか否かの判断は、当業者に公知の方法で判断してよいが、例えば、100倍の倍率で、光学顕微鏡で観察し、結晶粒界に連続したαAl−MgSiの共晶粒子の鋳造組織を有するものと判断してもよい。写真1、2に結晶粒界に連続したαAl−MgSiの共晶粒子の鋳造組織を有するものとそうでないものの光学顕微鏡によるミクロ組織を示す。
また、このような鋳造組織を有する鋳塊を製造するには、通常のAl−Mg−Si系合金である6061合金等を用いた場合では困難であり、MgSi量として例えば、2.5%程度は必要であるため、Si量は1.0〜5.0%、Mg量は2.0〜8.0%必要となる。
上述した合金組成のアルミニウム合金からなる合金部材は、結晶粒界に連続したαAl−MgSiの共晶粒子の鋳造組織を有する鋳塊を用いて製造し、本発明の効果が保たれる限り、如何なる方法で製造してもよい。好ましくは、上述の合金部材は、各工程を通じて、鋳塊の鋳造組織が少なくとも一部保持される方法により製造され、製造された合金部材にも鋳造組織の少なくとも一部が保持される。より好ましくは、上述の合金部材は、結晶粒界に連続したαAl−MgSiの共晶粒子の鋳造組織を有するように製造され、製造された合金部材は結晶粒界に連続したαAl−MgSiの共晶粒子の鋳造組織を有する。
具体的には、本発明の合金部材は、これに限られるものではないが、例えば、以下に示す製造方法により好適に製造することができる。すなわち、本発明の合金組成および鋳造組織を有する連続鋳塊を用い、均質化処理および溶体化処理を行わず、1)鋳造のまま、2)熱間押出および冷間加工後、あるいは3)冷間加工後に、人工時効を行うことにより、アルミニウム合金部材を製造する。
上記のアルミニウム合金部材の製造方法では、均質化処理および溶体化処理を行うことなく、良好な切削性と耐食性とを有するアルミニウム合金部材を製造することが可能となるため、リサイクル性や省エネルギー(省コスト)の点でも有利である。上記のアルミニウム合金部材の製造方法は、得られるアルミニウム合金部材の良好な切削性、耐食性および優れたリサイクル性や、製造方法の省エネルギー性等により、特に、鋳造または加工されたバルク材から各種電気部品、電子部品、自動車部品などのための切削加工部材を製造する際に好適に用いることができる。
上記製造方法の特徴(製造条件)を以下に説明する。
〔均質化処理および溶体化処理〕
均質化処理を行った場合、結晶粒界に連続したMgSi相共晶粒子が存在する鋳造組織が失われ、その結果、切削性が低下する傾向があるため、この製造方法においては、均質化処理を行わない。また、溶体化処理を行なうと、結晶粒界に連続したMgSi相共晶粒子が存在する鋳造組織が失われ、その結果切削性が低下する傾向があるため、この製造方法においては、溶体化処理は行わない。
〔人工時効〕
連続鋳造された鋳塊は、MgおよびSiをα−Al相中に多く固溶しているため、本発明の目的に適するが、このような鋳塊は、自然時効だけでは十分な強度向上が得られないため、最終的に人工時効を行う。さらに高い強度を必要とする場合は、冷間加工(冷間引抜き加工)、あるいは熱間押出しおよび冷間引抜き加工を施した後に、人工時効を行う。人工時効の条件としては、これに限定されるものではないが、例えば、140〜200℃で、2〜10時間処理することができる。
〔その他の工程〕
上記の製造方法において、さらに、本発明の効果を損なわない範囲で、鋳造、押出および引抜などの工程を用いてもよく、これらの工程をさらに含んだ製造方法であってもよい。各工程については、特記しない限り、一般的な条件あるいは当業者の通常の条件検討の範囲内で設定された条件が用いられるが、一例としては、例えば、以下のような条件が挙げられる。
鋳造:鋳造温度:700〜740℃、鋳造速度:60〜140mm/min
押出:300〜400℃、8〜20m/min
引抜:引抜率:20〜30%
例えば、一般的なT8調質の引抜材は、鋳造→均質化処理(HO処理)→押出→溶体化処理→引抜→時効処理の各工程を経て製造されるが、上記製造方法によれば、例えば、(1)鋳造のまま、(2)鋳造→時効処理、(3)鋳造→引抜→時効処理、または(4)鋳造→押出→引抜き→時効処理、といった工程により製造される。
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
〔実施例1〕
表1に示す合金組成1〜11を有する合金からなる直径97mmのビレットを、表2に示す条件1で半連続鋳造した。次に熱間押出加工により直径23mmの丸棒に押出し、20mmまで24%冷間引抜きし、最後に160℃で6時間の人工時効をした(これを製造方法P3とする)。製造方法P3により合金1〜11より製造した合金部材を、各々合金部材1P3〜11P3とした。
製造したアルミニウム合金部材について、表3に示す条件で切削性(切粉分断性)を測定した。さらに、引張試験によって、0.2%耐力、引張強さ、伸びを測定した。さらに、表4に示す条件で、JISZ2371に準拠し、塩水噴霧500時間後の腐食減量を測定して、耐食性を評価した。また、表5に示す条件でアルマイト処理して皮膜厚さと皮膜外観の均一性(色むら、異常模様等)を評価した。ビレットの金属組織は、光学顕微鏡にて観察した。評価条件および評価基準を表3〜表5に示す。
以上の評価試験の結果を表6に示す。本発明の合金組成および金属組織を有する合金部材1P3〜5P3は、何れも切削性、耐食性、アルマイト性が良好であった。一方、本発明の合金組成および/または金属組織を有さない合金部材6P3〜11P3は、切削性、耐食性およびアルマイト性を同時に満足することが出来なかった。
以上の結果から、本発明に係るアルミニウム合金部材は、切削性、耐食性およびアルマイト性に優れたアルミニウム合金部材であることが確認された。
〔実施例2〕
表1中の合金3の合金組成を有する合金を直径97mmのビレットに、表2に示す条件1で半連続鋳造した。この鋳塊から、以下の(1)〜(5)の何れかの方法により、アルミニウム合金部材を製造した。
(1)鋳造のままの状態で、160℃で6時間の人工時効をした(製造方法P2)。
(2)鋳塊を直径23mmの丸棒切削し、直径20mmまで24%冷間引抜きし、最後に160℃で6時間の人工時効をした(製造方法P1)。
(3)直径97mmの鋳塊を、熱間押出加工により直径23mmの丸棒に押出し、20mmまで24%冷間引抜きし、最後に160℃で6時間の人工時効をした(製造方法P3)。
(4)鋳塊を、均質化処理を行うことなく熱間押出加工により直径23mmの丸棒に押出し、540℃で20分間の溶体化処理後、水焼き入れし、20mmまで24%冷間引抜し、最後に160℃で6時間の人工時効をした(製造方法C1)。
(5)鋳塊を540℃で8時間の均質化処理し、23mm直径に熱間押出し、540℃で20分間の溶体化処理し、水焼き入れ、20mmまで24%冷間引抜し、最後に165℃で4時間の人工時効をした(製造方法C2)。
合金3から、上記の製造方法P1〜C2により製造した合金部材を、各々合金部材3P1〜3C2とした。
上記の製造方法は以下のようにまとめられる。
P1:鋳造→引抜→時効処理
P2:鋳造→時効処理
P3:鋳造→押出→引抜→時効処理
C1:鋳造→押出→溶体化処理→引抜→時効処理
C2:鋳造→均質化処理(HO処理)→押出→溶体化処理→引抜→時効処理(一般的な引抜T8材)
上記の製造方法で製造したアルミニウム合金部材について、表3に示す条件で切削性(切粉分断性)を測定した。さらに、引張試験によって、0.2%耐力、引張強さ、伸びを測定した。さらに、表4に示す条件で、JISZ2371に準拠し、塩水噴霧500時間後の腐食減量を測定して、耐食性を評価した。また、表5に示す条件でアルマイト処理して皮膜厚さと皮膜外観の均一性(色むら、異常模様等)を評価した。ビレットの金属組織は、光学顕微鏡にて観察した。
以上の評価試験の結果を表7に示す。製造方法P1、P2またはP3により製造された合金部材は、優れた切削性と耐食性を合わせ持っていた。これに対して、従来型の製造方法C1またはC2では、良好な耐食性の合金部材は得られたものの、その合金部材は良好な切削性を合わせ持ってはいなかった。
以上の結果から、本発明に係るアルミニウム合金部材の製造方法は、良好な切削性と耐食性を有するアルミニウム合金部材を製造することのできる方法であることが確認された。
〔実施例3〕
表1に示す合金組成3または7を有する直径203mmのビレットを、表2に示す条件2により半連続鋳造し、熱間押出加工により直径96mmの丸棒に押出し、83mmまで25%冷間引抜きし、最後に160℃で6時間の人工時効をした(製造方法P3)。さらに、表1に示す合金組成3および7を有する直径203mmのビレットを、半連続鋳造法で作成し、540℃で8時間の均質化処理し、96mm直径に熱間押出し、540℃で20分間の溶体化処理し、水焼き入れ、83mmまで25%冷間引抜し、最後に160℃で6時間の人工時効をした(製造方法C2)。
合金3または7から、上記の製造方法P3またはC2により製造した合金部材を、各々合金部材3−2P3〜7−2C2とした。
表3に示す条件で切削性(切粉分断性)を測定した。さらに、引張試験によって、0.2%耐力、引張強さ、伸びを測定した。さらに、表4に示す条件で、JISZ2371に準拠し、塩水噴霧500時間後の腐食減量を測定して、耐食性を評価した。また、表5に示す条件でアルマイト処理して皮膜厚さと皮膜外観の均一性(色むら、異常模様等)を評価した。ビレットの金属組織は、光学顕微鏡にて観察した。
以上の評価試験の結果を表8および表9に示す。製造方法P1により、合金3から製造された合金部材は、良好な切削性並びに耐食性ならびにアルマイト性を合わせ持っていた。これに対して、従来型の製造方法C2によって、あるいは合金7を用いて製造した場合は、良好な切削性およびアルマイト性を併せ持つ合金部材は得られなかった。
以上の結果から、本発明の組成を有するアルミニウム合金を、本発明に係るアルミニウム合金部材の製造方法を用いることにより、切削性、耐食性およびアルマイト性に優れたアルミニウム合金部材を製造することができることが確認された。

Claims (8)

  1. Mg:2.0〜8.0質量%およびSi:1.0〜5.0質量%を含有し、MgとSiとの間のMg/Si比が1.4以上であり、さらにCu:0.05〜0.5質量%、Ti:0.01〜0.15質量%、B:0.0005〜0.01質量%を含有し、残部がAlおよび不可避不純物からなり、結晶粒界に連続したαAl−Mg Siの共晶粒子の鋳造組織を有する、切削性、耐食性およびアルマイト性に優れたアルミニウム合金部材。
  2. Mg:2.0〜8.0質量%およびSi:1.0〜5.0質量%を含有し、MgとSiとの間のMg/Si比が1.4以上であり、さらにCu:0.05〜0.5質量%、Ti:0.01〜0.15質量%、B:0.0005〜0.01質量%を含有し、残部がAlおよび不可避不純物からなるアルミニウム合金部材であって、結晶粒界に連続したαAl−MgSiの共晶粒子の鋳造組織を有する鋳塊より、均質化処理および溶体化処理を行わず、1)鋳造のまま、2)冷間加工後、または、3)300〜400℃での熱間押出及び冷間加工後に、人工時効を行うことを特徴とする方法により製造された切削性、耐食性およびアルマイト性に優れたアルミニウム合金部材。
  3. 請求項1に記載の合金組成を有する連続鋳塊を用い、均質化処理および溶体化処理を行わず、鋳造のまま、人工時効を行うことを特徴とする、切削性、耐食性およびアルマイト性に優れたアルミニウム合金部材の製造方法。
  4. 請求項1に記載の合金組成を有する連続鋳塊を用い、均質化処理および溶体化処理を行わず、300〜400℃での熱間押出および冷間加工後に、人工時効を行うことを特徴とする、切削性、耐食性およびアルマイト性に優れたアルミニウム合金部材の製造方法。
  5. 請求項1に記載の合金組成を有する連続鋳塊を用い、均質化処理および溶体化処理を行わず、冷間加工後に、人工時効を行うことを特徴とする、切削性、耐食性およびアルマイト性に優れたアルミニウム合金部材の製造方法。
  6. 請求項2に記載の合金組成および鋳造組織を有する連続鋳塊を用い、均質化処理および溶体化処理を行わず、鋳造のまま、人工時効を行うことを特徴とする、切削性、耐食性およびアルマイト性に優れたアルミニウム合金部材の製造方法。
  7. 請求項2に記載の合金組成および鋳造組織を有する連続鋳塊を用い、均質化処理および溶体化処理を行わず、300〜400℃での熱間押出および冷間加工後に、人工時効を行うことを特徴とする、切削性、耐食性およびアルマイト性に優れたアルミニウム合金部材の製造方法。
  8. 請求項2に記載の合金組成および鋳造組織を有する連続鋳塊を用い、均質化処理および溶体化処理を行わず、冷間加工後に、人工時効を行うことを特徴とする、切削性、耐食性およびアルマイト性に優れたアルミニウム合金部材の製造方法。
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